説明

物質中の細菌を破壊するためのまたは細菌の増殖をコントロールするための方法

細菌増殖を、食品基質に対して、動物筋肉組織および/または当該タンパク質由来のペプチドから単離した酸性水溶性タンパク質を溶液を適用することにより、食品基質の調査または破壊を行う。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
本発明は食材中の細菌などの、固体、気体、または液体の物質中もしくは物質上の細菌の増殖をコントロールするための、または細菌を破壊するための方法に関する。より具体的には、本発明は、食材に動物筋肉組織から単離した酸性タンパク質水溶液、濃縮酸性タンパク質水溶液および/または酸性ペプチド水溶液を加えることにより、食材中の細菌増殖を抑制する食材保存のための方法に関する。
【0002】
食品産業において、特に獣肉、鳥肉、および卵における主要な問題は食材中の病原性細菌の増殖であり、結果として吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、さらには死などの小腸障害をを引き起こす感染を引き起こす。もっとも一般的な6種類の細菌性食材汚染として挙げられるものは、サルモネラ、リステリア、E.coli 1057のようなベロ毒素(VT)を産生する大腸菌、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)である。
【0003】
微量の細菌により食材が汚染されると、細菌のすばやい分裂および増殖能により24時間以内には深刻な汚染状態となる。サルモネラは一般的に獣肉および鳥肉に見られる。ウェルシュ菌は未殺菌の牛乳、卵、生卵の加工品、獣肉、および鳥肉に見られる。リステリアは鳥肉および獣肉に見られ、加熱、食塩、亜硝酸塩、および酸などの通常の食品保存剤には抵抗性がある。カンピロバクターは食材汚染としてより一般的に同定される原因の一つであり、一般的に鳥肉、赤身の獣肉、および未殺菌の牛乳に見られる。大腸菌(E. coli)の多くの株(strain)は無害であるが、ベロ毒素(VT)を産生する株は深刻な疾病を引き起こす可能性がある。
【0004】
したがって、食材などの物質中の細菌を破壊するか、または細菌の増殖を安全なレベルまでコントロール出来、それにより人間による食品の安全な消費を可能にする方法を提供することが望ましい。
【0005】
発明の概要
本発明に従い、動物筋肉組織から単離された「酸性タンパク質水溶液」、または動物筋肉組織から単離された「濃縮酸性タンパク質水溶液」、および/または動物筋肉組織から単離されたタンパク質由来の「酸性ペプチド水溶液」を含む酸性組成物は、物質中の細菌を破壊するために食材などの物質に加えられる。これら食材は、調理前、調理後または部分的に調理後であってもよく、食材は酸性タンパク質水溶液、または濃縮酸性タンパク質水溶液、および/または酸性ペプチド水溶液をコーティング、混合、および/または注入される。この動物筋肉組織由来の酸性タンパク質水溶液は、米国特許番号6,005,073号、6,288,216号、および/または6,451,975号、および/または2002年6月4日に出願された米国特許出願第10/161,171号(それら全体を参考文献として本明細書中に援用する)中に開示され、粉砕した動物筋肉組織と生理学的に許容される酸との混合によって得られた組成物由来の筋原線維タンパク質および筋形質タンパク質の混合物を含む。本発明において有用なこの組成物は、米国特許番号6,005,073号、6,288,216号、6,451,975号、および出願番号10/161, 171号に記載されている酸性タンパク質水溶液から、酸性タンパク質水溶液を微孔ろ過(別名精密ろ過)、限外ろ過、逆浸透膜ろ過、または透析ろ過を含むろ過に供し、保持液中の濃縮酸性タンパク質水溶液(ミオシンタンパク質およびアクチンタンパク質を含む)水溶液の重量に基づき、約0.5重量%以上、好ましくは4.0重量%以上のタンパク質組成物重量となるようにして、そして保持液を回収することにより得ることができる。保持液は、本発明の濃縮酸性タンパク質水溶液として使用して、食材中の細菌を破壊することができる。また本発明に従い、動物筋肉組織から単離されたタンパク質由来の酸性ペプチド水溶液は、本発明で有用である。
【0006】
本明細書中で用いる「酸性タンパク質水溶液」という語句は、生理学的に許容される酸性溶液中に動物筋肉組織を溶解し、そして約3.5かそれ未満、好ましくは約1.5から約2.5の間のpHであるがタンパク質の機能に悪影響を及ぼすほど低くはないpHにすることにより得られた筋原線維タンパク質および筋形質タンパク質の水溶液のことを意味する。「酸性ペプチド水溶液」という語句は、動物筋肉組織から単離されたタンパク質由来のペプチドの酸性水溶液のことを意味する。このタンパク質は、タンパク質分子を低分子のアミノ酸鎖に分解する酵素を用いることによりペプチドに変換される。
【0007】
本発明に従い食材中の細菌を破壊するため、本発明での酸性タンパク質水溶液、および濃縮酸性タンパク質水溶液、および/または酸性ペプチド水溶液は、食材中に注入することが出来、または食材の表面に適用することが出来、および/または食材に混合することが出来る。加える水溶液のpHは、約3.5かそれ未満、好ましくは約1.5から約2.5の間である。本発明の方法を利用することにより、食材中もしくは食材上の細菌を、一週間またはそれ以上の長期間にわたっても、完全に破壊することが出来る。
【0008】
具体的な態様の説明
本発明に従い、細菌をコントロールまたは破壊させるべき食材などの物質を、動物筋肉組織から単離された酸性タンパク質水溶液および/または動物筋肉組織から単離されたタンパク質由来の酸性ペプチド水溶液でコーティングし、混合し、および/または注入する。この酸性タンパク質水溶液は、動物筋肉組織由来の筋原線維タンパク質および筋形質タンパク質の混合物を含み、米国特許番号6,005,073号、6,288,216号、6,451,975号、米国特許出願第10/161,171号(2002年6月4日出願)に開示された方法により本発明の方法として用いることが出来る最初の酸性水溶液の形状として得られる。この酸性水溶液は、粉砕した動物筋肉組織を生理学的に許容された酸と混合することによって形成される。他の方法として、タンパク質豊富な保持液を回収するため、最初の酸性水溶液を、精密ろ過、限外ろ過、または透析ろ過膜を用いてろ過することが出来る。保持液は、濃縮酸性タンパク質水溶液を含み、酸性溶液および/または塩溶液は透過へと方向付ける一方で、保持液中にミオシンタンパク質およびアクチンタンパク質を含むタンパク質組成物を回収するようにろ過条件化で得られる。透析ろ過では、塩および/または酸をフィルターから通して透過物中に拡散させるため、ろ過するタンパク質水溶液に加水する。保水液中の水分を減らすため、加水を停止し、そしてろ過を続ける。
【0009】
酸性タンパク質水溶液は、2つの方法の1つにより得られる。これらの方法(酸性条件下の方法)では、動物筋肉組織を小さい組織片にしたのちに、充分量の酸と混合し、3.5かそれ未満の、しかし例えば約1.0かそれ未満のような動物組織タンパク質に悪影響を及ぼすほど低くはないpHを有する組織水溶液を形成する。これら2方法のうちの1方法では、水溶液を遠心分離し、一番下の膜脂質層、酸性タンパク質水溶液の中間層、中性脂質(油脂)の上層を形成する。次いで、酸性タンパク質水溶液の中間層は、膜脂質層から分離されるか、または膜脂質層と中性脂質層の両方から分離される。2方法のうちのもう1方法は、開始動物筋肉組織が低濃度の不要な膜脂質や油脂の濃度を含有するため、遠心分離のステップを行わずに酸性タンパク質水溶液を回収する。これらどちらの方法においても、タンパク質混合物は筋原繊維や筋節(サルコメア)を含まない。これらどちらの方法においても、本発明において有用な濃縮酸性タンパク質水溶液を含むミオシンが豊富でアクチンが豊富な保持液を回収するため、ならびにコレステロールを含んでも含まなくてもよい酸溶液および/または塩溶液、または水を透過する操作を直接行うために、酸性タンパク質水溶液をろ過することが出来る。濃縮酸性タンパク質水溶液は、濃縮酸性タンパク質水溶液の重さに基づき0.5重量%以上、好ましくは4重量%のタンパク質を含み、細菌をコントロールまたは破壊するため、処置される食材などの物質に用いられることが出来る。濃縮酸性タンパク質水溶液の利用は、最初に酸性タンパク質水溶液のpHを上昇させ、その後にタンパク質沈殿のステップを行うステップを先行技術から排除する、一歩進んだ方法である。さらに、濃縮酸性タンパク質水溶液は、タンパク質の塩に対する重量比が約50を越えているため、ジェル状物質を形成することなしに、加熱して殺菌することが出来る。この水溶液がジェル状というより液体状であるため、本発明に従って処置される物質に接触させる操作を容易にしている。回収された濃縮酸性タンパク質水溶液は、調理または保存される食材に混合、注入、またはコーティングされる。
【0010】
ろ過は、精密ろ過(microporous filtration)、限外ろ過、または透析ろ過によって行うことができる。精密ろ過は、約0.01から5マイクロメートルの間の平均サイズを持つ微粒子をろ過させずに残すように作られたろ過膜のような水浸潤性の微孔膜を用いて行うことが出来る。限外ろ過は、約0.001から約0.02マイクロメートルの間の平均サイズを持つ微粒子を残すように設計された、水浸潤性の膜を用いて行うことが出来る。
【0011】
限外ろ過は、ミオシン重鎖タンパク質(約205,000ダルトン)やアクチンタンパク質(約42,000ダルトン)を捕捉する効果がある分画分子量(molecular weight cut-off)を持ち水浸潤性の限外ろ過膜を用いて行われる。代表的な適した限外ろ過膜は、分画分子量が約3,000ダルトンから約100,000ダルトンの間で、好ましくは約10,000ダルトンから約50,000ダルトンの間である。分画分子量が42,000ダルトンより大きい限外ろ過膜を、水溶液の酸性条件がタンパク質の構造異常化(unfold)を引き起こし、それにより限外ろ過膜による捕捉が促進されるため、ミオシンおよびアクチンの捕捉に利用することが出来る。限外ろ過は、限外ろ過膜上を単一または複数の流路による接線流濾過(tangential flow filtration;TFF)によって行われることが出来る。ろ過中に回収された保持液は、直接利用出来る、本発明で有用な濃縮酸性タンパク質水溶液を含む。本発明で有用な、保持液を含むこの濃縮酸性タンパク質水溶液は、ろ過前の最初の酸性タンパク質水溶液と比較して、水分量や塩濃度が低く、またおそらくは低分子量のタンパク質濃度も低い。この濃縮酸性タンパク質溶液は、酸性タンパク質水溶液の総重量に基づき、約0.5から約25重量%の間、好ましくは4から12重量%のタンパク質を含む。タンパク質は透過しないが水、または酸性水溶液、および/または塩溶液は透過出来る透析ろ過膜を用いたろ過もまた行うことが出来る。代表的な適した膜は、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、セルロースアセテートやセルロースニトレートなどのセルロースエステル、再生セルロース、ポリスチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、アクリル系ポリマー、メタクリル酸系ポリマー、これらのコポリマー、これらを組み合わせたものなどが含まれる。
【0012】
この酸性タンパク質水溶液または濃縮酸性タンパク質水溶液は、細菌のコントロールまたは破壊のため、単独で、または酸性ペプチド水溶液と混合して処理される食材に適用される。浸漬や噴霧またはタンブリングなどによるコーティングには、濃縮酸性タンパク質水溶液を用いるのが好ましい。この濃縮酸性タンパク質水溶液は、ジェル形成を回避しつつ、加熱による殺菌をすることが出来る。このことにより、噴霧や浸漬または注入などにより食材への適用の容易性を促進する。
【0013】
まとめると、希釈した酸性タンパク質水溶液または濃縮酸性タンパク質水溶液は、下記に示す代表的な方法によって得ることが出来る。
1. 粉砕した動物筋肉組織のpHを約3.5より低くなるように下げて、酸性タンパク質水溶液を作成し、この水溶液を遠心して脂質を多く含む層および水層とを形成し、酸性タンパク質水溶液を含み、膜脂質を実質的に含まない第一の酸性タンパク質水溶液を回収する。濃縮酸性タンパク質水溶液を含んだ保持液を単離するため、この酸性タンパク質水溶液は次にろ過される。
【0014】
2. 方法1によって得られた酸性タンパク質水溶液のpHを約5.0から5.5に上げて、タンパク質沈殿を行った後、約3.5から7%のタンパク質を含有する酸性タンパク質水溶液を作成するため、最少量の酸を用いてpHが約4.5かそれ未満になるように再調整する。保持液中の濃縮酸性タンパク質水溶液を回収するため、これらの酸性タンパク質水溶液はろ過することが出来る。
【0015】
3. 第一の酸性タンパク質水溶液を作成するため、粉砕した動物筋肉組織のpHを下げる。この酸性タンパク質水溶液を濾過して、本発明で有用な濃縮酸性タンパク質水溶液を生成することが出来る。
【0016】
この濃縮酸性タンパク質水溶液は、ジェル状物質に成形することが出来る。このジェル状物質はあらかじめ氷で冷却した粉砕機(chopper)にタンパク質を入れることによって形成される。タンパク質(粉末)1部に対し、冷水3.7部の割合で混合し、さらに2%のNaClを粉砕機に加える。材料は、必要であれば、pH 6.8-7.4に調整される。次にその材料は2-3分の間粉砕される。調理前のこのタンパク質は、74-82%の幅の水分含量を有しなければならない。粉砕されたタンパク質のペーストは、ポリマーの、例えばポリエチレンバッグにいれ、手で圧すことにより全ての空気を抜く。ペーストは厚さ3ミリになるように延伸され、電子レンジで強で25秒間加熱された後に冷却される。最終的に冷却された材料は、Kudoら(1973, Marine Fish. Rev. 32:10-15)に記載の方法によって折り曲げテストによる弾力を5段階評価される。
【0017】
本発明で利用されるタンパク質生成物は、多量の筋形質タンパク質をも含む、筋原線維タンパク質から主として構成されている。食材に混合、注入またはコーティングされるタンパク質生成物中の筋形質タンパク質は、酸性タンパク質水溶液または濃縮酸性タンパク質水溶液の総重量に基づいて、筋形質タンパク質が約6重量%以上、好ましくは約8重量%以上、さらに好ましくは約12重量%以上、もっとも好ましくは15重量%以上、約30重量%まで含まれる。酸性ペプチド水溶液は、2003年2月19日に出願された同時継続中の米国特許出願第10/367,026号中(参考文献として本明細書中に援用する)に開示された方法によって得られる。本発明で利用される酸性ペプチド水溶液は、酸性タンパク質水溶液または濃縮酸性タンパク質水溶液から、タンパク質をペプチドに分解する一種類または複数種類の酵素を用いることによって生成されることが出来る。
【0018】
さらに、ペプチドのためのタンパク質前駆体は、以下に記載したアルカリ方法によって得ることが出来る。アルカリ方法では、動物筋肉組織は小さい組織片にした後に、充分量の塩基性溶液と混合され、少なくとも75%の動物筋肉タンパクを可溶化するが、しかし動物組織タンパク質に悪影響を及ぼすほど高くはないpHを有する、組織水溶液を形成する。一方法では、水溶液を遠心分離し、一番下の膜脂質層、タンパク質を豊富に含む水溶液の中間層、中性脂質(油脂)の上層を形成する。次いで、タンパク質を豊富に含む中間層は、膜脂質層から分離され、または膜脂質層と中性脂質層の両方から分離される。第二の方法では、開始動物筋肉タンパク質が、低い濃度の不要な膜脂質や油脂を含有するため、遠心分離のステップを行わない。これらどちらの方法においても、タンパク質混合物は、筋原繊維や筋節(サルコメア)を含まない。これらどちらの方法においても、タンパク質が豊富な層のpHは、約3.5かそれ未満、好ましくは約2.5から3.5の間にまで低くすることが出来る。どちらの方法においても、酸性水溶液中のタンパク質は、遠心分離(行った場合には)の後に、または、蒸発または噴霧乾燥または凍結乾燥などの酸性タンパク質水溶液を乾燥させて、酸性水溶液中にこれを溶解した場合に低いpHを有する粉末産物を形成することにより、回収される。酸性タンパク質水溶液または乾燥タンパク質組成物は、その後、タンパク質をペプチド組成物へと分解する酵素と混ぜ合わされる。その後、ペプチド組成物は、蒸発、凍結乾燥または噴霧乾燥などの方法によって乾燥させることが出来、または調理前の肉、魚、または野菜に直接適用できる酸性ペプチド水溶液の状態で保存することが出来る。8.5よりも高いpHを有し、遠心分離(行った場合には)の後に回収される、塩基性水溶液中のタンパク質は、水溶液のpHを下げるために酸を混合することが出来、また噴霧乾燥または凍結乾燥などの方法によって乾燥させて粉末状に形成することが出来る。後述したこれら2方法の一面は、塩基性水溶液のpHをタンパク質沈殿を行うため約5.5に下げることが出来ることである。その後、沈殿タンパク質のpHは、6.5から8.5の間に上げられ、固形の生成物は噴霧乾燥、凍結乾燥または蒸発を含む乾燥によって回収するか、または粉砕し酵素を用いてペプチド組成物に分解することができる。酵素類はエキソプロテアーゼであってもよく、酸性pHで、アルカリ性pHで、もしくは中性pHで、ペプチド生成活性を有することができる。酸性pHで有用な代表的な適した酵素には、Enzeco Fungal Acid Protease (Enzyme Development Corp., New York, N.Y.);Newlase A(Amano, Troy, Va.);およびMilezyme 3.5(Miles Laboratories, Elkhart, Ind.)またはこれらの混合物が含まれる。アルカリ性pHで有用な代表的な適した酵素には、Alcalase 2.4 LFG(Novozymes, Denmark)が含まれる。中性pHで有用な代表的な適した酵素には、Neutrase 0.8 L(Novozymes, Denmark)、およびパパイン(Penta, Livingston, NJ)、またはこれらの混合物が含まれる。ペプチドが形成された後、細菌をコントロールするためのまたは破壊するための本発明における使用のため、ペプチド水溶液のpHは、3.5かそれ未満に調整される。ペプチドが形成された後、ペプチド水溶液のpHは、約3.5かそれ未満に調整される。
【0019】
酵素は、酵素とタンパク質の総重量に基づき、重量比約0.02%から約2%の間の量で、好ましくは約0.05%から約0.5%の間の量で、約4℃から約55℃の間の温度で、好ましくは約25℃から約40℃の温度で、約5分から約24時間の間、好ましくは約0.5時間から2時間の間、使用した。
【0020】
本発明に従い、酸性タンパク質水溶液、または筋原線維タンパク質および筋形質タンパク質を含む濃縮酸性タンパク質水溶液、および/または酸性ペプチド水溶液は、未調理、部分的に調理済み、または調理後の食材の表面に適用されるか、あるいはハンバーガー、形成牛肉、またはソーセージなどの食材に混合されるか、あるいは食材に注入される。本明細書中で使用される用語「表面」とは、肉または魚の表面であり、肉または魚の隣接するまたは複数の面から90度方向に位置する。さらに、「表面」は、互いに90度の関係にある2つの隣接している面をつなぐ接続面も含むことが出来る。好ましくは、食材の表面全体を、タンパク質水溶液および/またはペプチド水溶液でコーティングする。次いで、コーティングされた食材は、高い温度下において調理される。
【0021】
本発明に従って、本発明の酸性タンパク質水溶液、濃縮酸性タンパク質水溶液、および/または酸性ペプチド水溶液の未調理食材への添加が、微生物による食材の質の低下を抑制させることにおいて、予測しない保存効果を付与することが見いだされた。この保存効果を付与するためには、食材の表面に酸性タンパク質水溶液、濃縮酸性タンパク質水溶液、および/または酸性ペプチド水溶液を適用することが好ましい。
【0022】
本発明の一面では、例えばハンバーガーのような挽肉や魚の微粒食品(particulate food)は、酸性タンパク質水溶液、濃縮酸性タンパク質水溶液および/または酸性ペプチド水溶液と、食材の重量に基づき、約0.03%から約15重量%のタンパク質および/またはペプチドを含む比率で、好ましくは食材の重量に対して約0.5%から5重量%の間で、もっとも好ましくは食材の重量に対して0.5から約2重量%の間を含む比率で、混合する。濃縮酸性タンパク質水溶液および/または酸性ペプチド水溶液が、食材の少なくとも一つの表面に適用されるか、または注入により適用される場合、タンパク質水溶液および/またはペプチド水溶液の量は、食材と混合されるときに上述したように同じ重量比である。約0.03重量%未満の酸性タンパク質水溶液、濃縮酸性タンパク質水溶液、および/または酸性ペプチド水溶液を使用した場合、効果的な細菌の破壊は観察されない。約15重量%以上の酸性タンパク質水溶液、濃縮酸性タンパク質水溶液、および/または酸性ペプチド水溶液を使用した場合、調理後の食材が望ましくない粘着質の食感または粒子状になる。
【0023】
本発明に従って扱われる食材は、野菜、全卵を含む卵、鳥肉、獣肉および甲殻類動物(shell fish)を含む魚介類を含む。代表的な適している魚の例としては、骨を除いたヒラメ、シタビラメ(sole)、ハドック(haddock)、コッド(cod)、スズキ、サケ、マグロ、マスなどが含まれる。代表的な適した甲殻類動物の例としては、エビ、カニ、ザリガニ、ロブスター、ホタテガイ、カキといった材料のむき身、もしくは殻付きエビなどが含まれる。代表的な適した獣肉としては、ハム、牛肉、羊肉、豚肉、鹿肉、子牛肉、水牛肉など;ニワトリ、機械的に骨を除去した鳥肉、シチメンチョウ、カモ、狩猟鳥、またはガチョウなどの鳥肉が含まれ、切り身またはハンバーガーのような挽肉の形状のいずれかである。骨が、スペアリブ、ラムチョップ、またはポークチョップなどの肉の可食性に問題がない場合、獣肉には動物の骨が含まれていてもよい。さらに、ソーセージ組成物、ホットドッグ組成物のように動物筋肉組織を含んだ食肉加工製品や乳化製品などは、酸性タンパク質水溶液、酸性ペプチド水溶液、酸性タンパク質水溶液をコーティングし、注入し、または混合し、もしくはこれらの方法を組み合わせて適用することが出来る。ソーセージ組成物およびホットドッグ組成物には、肉または魚の挽肉、セージなどのハーブ、スパイス、砂糖、こしょう、塩、乳製品のような当技術分野において公知のつなぎ(filler)が含まれる。全卵を本発明に従って処理するときは、酸性タンパク質水溶液、濃縮酸性タンパク質水溶液、および/または酸性ペプチド水溶液を、殻の外側表面に適用する。
【0024】
次いで、酸性タンパク質水溶液、濃縮酸性タンパク質水溶液、および/または酸性ペプチド水溶液を含む食材は、オーブン焼き、直火焼き、揚げ物、フライパンでの調理、電子レンジなどの従来からの方法によって調理できる。
【0025】
上述した本発明は食材中の細菌の破壊または細菌の増殖のコントロールに関するが、酸性タンパク質水溶液、濃縮酸性タンパク質水溶液、および/または酸性ペプチド水溶液は、他の状況下においても細菌の破壊および/または細菌の増殖コントロールに用いることが出来ることは明白である。例えば、これらのタンパク質および/またはペプチド水溶液は、人体内の細菌の破壊または細菌増殖コントロールに利用出来る。これらのタンパク質および/またはペプチド水溶液を、連鎖球菌またはブドウ球菌などのような人体内で不必要な細菌を破壊するため、人体内に適用またはインプラント(implant)することができる。酸性タンパク質水溶液、濃縮酸性タンパク質水溶液、および/または酸性ペプチド水溶液は、開いた傷口などのような人体に噴霧などの方法によって、直接的に人体に適用することが出来、または、単独でヒトの体に直接、あるいは包帯または生理学的に許容できる生分解性ポリマー組成物などの生理学的に許容できる物質上に、適用することが出来る。酸性タンパク質水溶液、濃縮酸性タンパク質水溶液、および/または酸性ペプチド水溶液の酸性的特性は、細菌の破壊または増殖コントロールに作用する。これらの水溶液中のタンパク質および/またはペプチドは、新しい組織の成長をサポートする栄養成長因子を供給するように作用する。生分解性ポリマーは、使用した場合、体に移植しまたは適用したときに、身体の所望の部分に必要量の酸性構成物および栄養成長構成物の位置付けるように作用する。生分解性ポリマー組成物は、その後徐々に体内で代謝されて分解され、および排出され、細菌を破壊、または細菌の増殖をコントロールする酸性因子ならびに栄養成長因子および栄養成長因子を利用する組織生成物が残る。体内もしくは体外で細菌を破壊するか、または細菌の増殖をコントロールするこの方法は、コントロールが困難な抗生物質耐性菌が出現することも含めた、当技術分野で周知の望ましくない効果がある抗生物質の使用を排除することが出来るという利点を有する。代表的な適した生分解性ポリマーは、米国特許番号4,881,225号、4,906,474号、5,122,367号、5,618,563号、5,902,599号、3,297,033号、3,739,773号、6,214,285号、6,160,084号、3,839,297号、5,399,665号(それら全体を参考文献として本明細書中に援用する)中に開示されている。細菌を破壊しまたは細菌の増殖をコントロールするために用いることが出来る酸性タンパク質水溶液、濃縮酸性タンパク質水溶液、および/または酸性ペプチド水溶液の他の代表的な適した環境には、(大気中に噴霧するか、露出表面に適用する)食品加工装置、食品加工または医学的な(病院)の作業環境が含まれる。さらに、酸性タンパク質水溶液、濃縮酸性タンパク質水溶液、および/または酸性ペプチド水溶液は、気相中の細菌を破壊しまたはコントロールするために、例えばポリエチレンファイバーやポリプロピレンファイバーのようなファイバーから成るバルクフィルターなどのエアフィルターにコーティングとして使うことが出来る。
【0026】
以下の実施例は本発明を説明するが、本発明を限定することは意図されない。
【実施例】
【0027】
実施例1:豚肉の筋原線維および筋形質タンパク質の限外ろ過と豚肉中の細菌のコントロール
新鮮な豚ロイン肉はおよそ8分の1インチ(0.3175 cm)の大きさに挽き、900 mlの冷却濾過水(Millipore-Milli DI使用)を入れた5000 ml容量のプラスチックビーカーに移した。この筋肉−水混合物はPowerGen 700 ホモジェナイザー(Fisher Scientific)を用い、スピードを6にして2分間ホモジェナイズされた。このホモジネートは2 Nの塩酸を一滴ずつ加えることでpH 2.8に調整された。この酸性化した懸濁液はSorvall RC-5B冷却遠心機に入れたGS-30のローターで、11,000×g(遠心力)で30分間遠心した。タンパク質層は4枚に重ねたガーゼで濾過した。500 mlの分注液は、ポリエーテルスルホン限外ろ過カセットである分画分子量50,000ダルトンのペリコンXL(PXB050A50)を装着したミリポアラボスケールTFFシステム機にセットした。このユニットはフィード圧を30 psi、ポンプ出口圧(retentate pressure)を10 psiの条件での濃縮モードで稼動した。開始物質は、1.7 Brix%であり、タンパク質濃度は18.11 mg/mlであった。およそ12時間後、保持液物質は、5.6 Brix%であり、タンパク質濃度は44.80 mg/mlであった。開始物質は、水分含量が98.4%であり、コレステロール値は2.34 mg/100 gであった。保持物質は、水分含量が94.9%であり、コレステロールは検出されなかった。使用した方法は、AOAC第15版、1995年発行であった。およそ20 mlの保持物質は、プラスチック小皿に移し、30秒間電子レンジで加熱された後、冷却された。得られた物質は、残留水または遊離水のない柔らかいジェルであった。
【0028】
新鮮なケースレディ(case-ready)のポークチョップ(賞味期限はその翌日)を選抜し、処理を行う処理区と対照区との2つの群に分け、濃縮酸性タンパク質水溶液を加えた。対照区は、プラスチックのZiploc.RTM.g容器に移して華氏34度(摂氏1.1℃)の冷蔵庫内においた。処理したサンプルは、上述した保持物質(5.6 Brix%)に完全に浸してから、余分なタンパク質水溶液を除いた。処理区したサンプルは、対照区と共に、プラスチックのZiploc.RTM.の容器に入れて冷蔵庫で保存した。全てのサンプルは、視覚的調査および臭気発生調査を毎日、10日間行った。不快臭の発生まで、対照区は2-3日、処理サンプルでは9-10日を要した。
【0029】
実施例2
目的
本実施例は、ニワトリ肉タンパク質にサルモネラおよびリステリアの微生物を接種しコントロールされた冷蔵保存下で保持される場合の、ニワトリ肉タンパク質中に存在する生存微生物の数を決定するために行われた。
【0030】
サンプル同定
二種類のニワトリ肉タンパク質水溶液は、ニワトリ筋肉組織を粉砕し、その後粉砕組織をリン酸と混合することによって生成された。この水溶液は、固形の粒子を除くためろ過された。生成された一方のニワトリ肉タンパク質水溶液は、2.0のpHであった。第二のニワトリ肉タンパク質水溶液は、3.0のpHである。
【0031】
1. ニワトリ肉タンパク質水溶液−−pH=2.00(2.5%Brix%)
2. ニワトリ肉タンパク質水溶液−−pH=3.00(2.5%Brix%)
方法
4つの200 mlの各ニワトリ肉タンパク質水溶液サンプルに、下記の微生物の培養物を接種した。
【0032】
1. Salmonella Choleraesuis ATCC番号13311
1. Listeria monocytogenes ATCC番号 19115
適した濃度の供試微生物を、それぞれのニワトリ肉タンパク質水溶液に加えてよく混合することにより、接種直後の試験調製物の濃度は1 mlあたり微生物の数が1,200,000から1,300,000の間であった。
【0033】
各接種懸濁液中の生存微生物の数は、プレートカウント法による試験基づいて、生成物物の1 mlあたりの微生物の開始濃度から決定および計算された。
接種されたニワトリタンパク質水溶液サンプルは、華氏38度(摂氏3.3℃)のコントロールされた冷蔵保存条件で保存され、時間0、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目の間隔で、これらの生成物は、上記の間隔のそれぞれで存在する生存微生物の数を決定するためにそれぞれの微生物構成を評価された。さらに接種していないニワトリ肉タンパク質水溶液(対照区)は、始めに検査された。
【0034】
結果
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
考察
pH2.00のニワトリ肉タンパク質は、冷却温度で7日間インキュベートするまで反応させても、ニワトリタンパク質水溶液に偶然に汚染された微生物叢、または故意に加えられたサルモネラおよびリステリアの発育または増殖をサポートしないようである。ニワトリ肉タンパク質水溶液(pH3.00)は、サルモネラ菌の発育をサポートしない。pH3.00のニワトリ肉タンパク質水溶液は、リステリアの成育はサポートしないが、検査期間中を通してリステリア菌の明らかな減少が見られた。本研究は、不都合なpHが、冷却温度で7日間までの、ニワトリタンパク質に接種されたサルモネラやリステリアを接種した、ミクロフローラ(微生物叢)をサポートすることが出来ない原因であることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌の破壊または増殖コントロールを実現するために十分な時間、物質を、約3.5またはそれ未満のpHを有する動物筋肉組織から単離された酸性タンパク質水溶液、動物筋肉組織から単離されたタンパク質に由来しそして約3.5またはそれ未満のpHを有する酸性ペプチド水溶液、そしてこれらの混合物からなる群から選択される酸性組成物と接触させることを含む、物質上の細菌を破壊するためのまたは細菌の増殖をコントロールするための方法。
【請求項2】
酸性組成物が、動物筋肉組織に由来する濃縮酸性タンパク質水溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
物質が食材である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
物質が食材である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
食材が鳥肉である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
食材が獣肉である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
食材が魚である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
食材が全卵である、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
食材が鳥肉である、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
食材が獣肉である、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
食材が魚である、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
食材が全卵である、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
酸性組成物を、前記物質の少なくとも一つの表面に適用する、請求項1、2または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
酸性組成物を、前記物質のすべての表面に適用する、請求項1、2または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
酸性組成物を、前記物質と混合する、請求項1、2または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
タンパク質組成物および/またはペプチド組成物を、前記物質中に注入する、請求項1、2または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
タンパク質組成物および/またはペプチド組成物を、前記物質中に注入し、そして前記物質のすべての表面に適用する、請求項1、2または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
タンパク質組成物および/またはペプチド組成物を、前記物質と混合し、そして前記物質のすべての表面に適用する、請求項1、2または3のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−527994(P2008−527994A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552113(P2007−552113)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/034767
【国際公開番号】WO2006/080956
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(505107697)プロテウス・インダストリーズ・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】