説明

物質拡散装置および空気調和機

【課題】 低速で層流が形成される空間,流路においても効率よく目的物質を当該空間や流路中に拡散させる。
【解決手段】 流路内に放出しようとする物質の放出装置20が蓋体10に支持されている。蓋体10は,台座本体2に取り付けられ,全体として半円筒形の台座3が構成される。かかる構成を有する物質拡散装置1は,流路内において気流と直交して配置される。台座本体2の底部2a外形は半円柱形状であるから,カルマン渦が発生し周囲の気流は攪拌され,放出装置20から放出された物質は,気流中に効果的に拡散される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,気流中において物質,たとえば空気中におけるオゾン,香料,水分,化学剤や薬剤等の微粒子などを,効率よく拡散するための装置,および当該装置を有する空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば気体中の物質の拡散についていうと,従来は気体搬送路,たとえば空気調和機内の送風路中に物質の拡散を行う場合は,搬送路の壁面又は壁面から支柱を出した先端部分に,物質の放出を行う装置を設置していた。かかる場合,気流が乱流状態であれば物質放出装置から放出された物質は気体中に十分攪拌し,気流中に一様に分布させることが可能である。
【0003】
ところが現代の空気調和機は空調負荷に応じて送風機をインバータで制御しており,送風機が低回転することから機内が層流になりやすい。このように気流が層流状態の場合は,物質放出装置から放出された物質は気体の一様な流れの中で部分的な範囲でしか分布することができない。
【0004】
そのため従来では,空気調和機内に送風ファンとは別の専用プロペラやバッフル板等を取り付け,人工的に乱流状態を作り出し物質の気体中への拡散を促進しているが,プロペラやバッフル板で乱流状態を作ると,専用の動力が必要になったり,空気調和気機内の圧力損失が増大し不経済である。しかも専用プロペラやバッフル板の設置スペースを確保するのが困難である。
【0005】
これに関し,たとえば空気と特定ガス混合促進するためのリング状の混合促進リングを流路内に設けることが提案されている(特許文献1)。
しかしながらかかる従来の技術は,高速の気流が存在するガスエンジンにおける燃料ガスと空気との混合を促進させるためのものであり,たとえば既述した空気調和機のように,低速で層流を噴出させる機器においては,さほどの効果は得られない。
【0006】
【特許文献1】特開2001−314741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり,低速で層流が形成される空間,流路においても効率よく目的物質を当該空間や流路中に拡散させることを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため,本発明は,気体の流路内に設置される物質拡散装置であって,流路内に放出しようとする物質の放出装置と,前記放出装置を支持し,気流と直交して配置される台座とを有し,前記台座の外形は,前記気体の流路の下流側が半円柱形状をなし,前記放出装置は,前記台座の上流側に配置されていることを特徴としている。
【0009】
本発明によれば,流路内に流れる気体が低速の層流であっても,台座の下流側でカルマン渦が発生して,周囲の気体との攪拌が盛んに行われる。したがって放出装置から放出された物質は,流路内に効果的に拡散される。
【0010】
台座は,流路内に複数列,かつ間隔を空けて相互に平行となるように配置され,次列に位置する台座は,前列に位置する台座とは,流路内の気流方向からみて,重ならないように配置されれば,さらに放出物質が効果的に拡散され,極めて低速の層流であっても,流路内に効果的に拡散させることが可能である。
【0011】
台座を半円筒形状の中空構造とし,放出装置を支持する面が,台座本体と分離可能な蓋体によって構成すれば,台座内に方移出装置に必要な機器やケーブル等を収納させ,流路内の気流に影響を与えることがない。またこれら機器等の保護を図ることができる。
【0012】
かかる場合,蓋体が,台座本体の長手方向に沿ってスライド自在とすれば,蓋体の取り外しが容易である。そして台座本体において対向する縁部に,長手方向に沿って内側に突出する係止部を形成し,前記蓋体の下面に設けられた爪部が挿通可能な切欠部を当該係止部に形成すれば,蓋体の取り付け容易性を確保しつつ,蓋体が台座本体から容易に離脱することを防止できる。
【0013】
前記物質は,たとえばオゾンを適用することができる。もちろんこれに限らず,ガス分子,液体分子を放出させる装置として利用可能である。例えば殺菌剤,脱臭剤,芳香剤,さらには加湿用の湿り空気も拡散させる物質として適用することが可能である。
【0014】
本発明の空気調和機は,流路からの給気を室内に供給するための空気調和機において,前記流路内に,前記した物質拡散装置が設けられていることを特徴としており,給気中に,目的物質を一様に混合させた給気を供給することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば,攪拌させるための特別な動力が不要で,しかもバッフル板方式に較べ圧力損失が1/2〜1/3と少ない。また可動部材がなく,放出装置の取付用の台座を別途用意する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下,本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は,実施の形態にかかる物質拡散装置1の分解斜視図であり,台座本体2と,この台座本体2に取り付けられる蓋体10,放出装置20とを有している。台座本体2と蓋体10とで台座3が構成される。
【0017】
台座本体2は,全体として略半円筒形の形状を有し,底部2aの外形は半円柱形状である。台座本体2における対向した縁部は,各々長手方向に沿って内側に突出しており,係止部2b,2cを構成している。係止部2b,2cには,ほぼ中央の位置に,切欠部2dが形成されている。また各係止部2b,2cの両端近傍には,取り付け用のビス穴2eが形成されている。
【0018】
蓋体10は,全体として略長方形の平板形状を有している。蓋体10の両側下面には,前記切欠部2dに挿通自在な形状の爪部11が各々設けられている。爪部11は,前記切欠部2dが設けられた中央位置とは,ずれた位置に設けられている。また蓋体10の四隅近傍には,台座本体2のビス穴2eに対応する位置に,ビス穴10aが形成されている。
【0019】
以上の構成により,蓋体10は台座本体2に対して取り付け,分離可能になっている。すなわち台座本体2に蓋体10を固定する場合には,切欠部2dに爪部11を通して蓋体10を係止部2b,2cに当接し,そのまま蓋体10を一側,本実施の形態では手前方向にスライドさせ,蓋体10で台座本体2の上面開口部を覆う。そしてビス穴10aとビス穴2eに対して適宜のビス(図示せず)を締め付けて,蓋体10と台座本体2とを固定すればよい。
【0020】
蓋体10の上面には,放出装置20が取り付けられている。本実施例では,空気中にオゾン(イオン)を放出する装置を使用した。この種のオゾンを放出する装置は一般的に電力の供給による放電によって放出させるものが多いが,そのため装置に対して電源から電力を供給する電源ケーブルや,発停信号,制御信号を伝える信号ケーブルの配線が必要である。本実施の形態では,蓋体10と台座本体2との固定によって,台座3の内部には空間Sが形成されているので,図2に示したように,当該空間S内に,これら電源ケーブル4,信号ケーブル5を収納することができる。
【0021】
なお台座3の両側の開口部は,必要に応じて,図1に示したような半円形の側板6を適宜取り付けることにより,前記空間Sを密閉空間とすることが可能であり,たとえば精密制御機器や回路基板等を有する装置などを空間S内に収納しつつ,これらの機器を外部雰囲気から保護することができる。
【0022】
以上の構成にかかる物質拡散装置1は,図3に示したようにたとえば空気調和機30に使用される。すなわち図3,図4に示した空気調和機30は,外気等の処理空気の取り入れ口31から取り入れた空気を,流路32から脱臭フィルタ33を経由して,冷水コイル34,温水コイル35,気化式加湿器36によって恩湿度調整し,これを給気として送風機37によって給気口38から目的空間へと供給する構成を有しているが,当該給気にオゾンを均一に含有させる際に物質拡散装置1が使用される。
【0023】
流路32は,空気調和機30のフィルターセクション内に位置し,全体として略角筒状の形態を有し,この流路32内に,物質拡散装置1が複数配列されている。本実施の形態では,流路32の幅方向の長さにほぼ等しい物質拡散装置1を,気流と直交する方向に配置されている。そして図5にも示したように,2台の物質拡散装置1を水平方向に間隔をおいて平行に並べて1個の列Pを構成して,上流側から順に,第1列P1,第2列P2,第3列P3の順に,3つの物質拡散装置群が配列されている。
【0024】
この場合,各列における物質拡散装置1の台座3は,次列に位置する台座3が,直前の前列に位置する台座3とは,流路内の気流方向からみて,重ならないように配置されている。より詳述すれば,図5にも示したように,流路32内の気流方向(上下方向)からみて,たとえば第1列P1における2台の物質拡散装置1の間に,第2列P2の2台の物質拡散装置1のうちの1台が位置し,他の1台は,流路32の内壁と第1列P1における1台の物質拡散装置1との間に位置するように配置されている。そして第3列P3の2台の物質拡散装置1のうちの1台がも第2列P2における2台の物質拡散装置1の間に位置し,他の1台は,流路32の内壁と第2列P2における1台の物質拡散装置1との間に位置し,結果的に,第3列P3における2台の物質拡散装置1は,第1列P1における2台の物質拡散装置1と,気流方向に沿って同じ位置に配置されている。
【0025】
空気調和機30は以上のように構成されており,取り入れ口31から取り入れた空気は,流路32内に配置されている物質拡散装置1にぶつかったり,物質拡散装置1の間を通過する。そして物質拡散装置1にぶつかったり,あるいはその近傍の空気は,台座3の下流側の面,すなわち台座本体2の底部2aの外形が半円柱形状であるから,カルマン渦となる。これによって周囲の気流は攪拌される。したがって,かかる攪拌により,台座3の上流側に配置されている放出装置20から放出されたオゾンは,効果的に気流中に拡散され,下流に流れていく。それゆえオゾン濃度の高低が偏在せず,気流全体としては均一なオゾン濃度が実現できる。
【0026】
しかも本実施の形態においては,流路32内に配置された物質拡散装置1は,気流方向に沿って複数列配置され,また次列に位置する台座3は,前列に位置する台座3とは,流路内の気流方向からみて重ならないように配置されているので,流路32内を流れる気流が極めて低速の層流であっても,該気流を効果的に攪拌して,気流中にオゾンを拡散させることが可能である。
【0027】
そのうえ攪拌するにあたっては,プロペラやバッフル板を必要とせず,また流路32内の圧力損失もさほど増大しない。また設置の自由度も高い。さらに前記実施の形態では,放出装置20に必要な電源ケーブルや信号ケーブルも,台座3内に収納させることができるから,流路32内に不要な部材,機器が露出することはない。
【0028】
前記実施の形態では,放出装置20としてオゾンを放出させる装置を使用したが,もちろんこれに限らず香り空調のための芳香剤をはじめとして,放出される物質が気体分子,液体分子,粉体などの固体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態にかかる物質拡散装置の分解斜視図である。
【図2】図1の物質拡散装置の側面断面図である。
【図3】図1の物質拡散装置を有する空気調和機の正面図である。
【図4】図3の空気調和機の側面図である。
【図5】図3の空気調和機の流路内における物質拡散装置の配置状況を示す説明図である。
【図6】流路内の気流の様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 物質拡散装置
2 台座本体
3 台座
10 蓋体
20 放出装置
30 空気調和機
32 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体の流路内に設置される物質拡散装置であって,
流路内に放出しようとする物質の放出装置と,
前記放出装置を支持し,気流と直交して配置される台座とを有し,
前記台座の外形は,前記気体の流路の下流側が半円柱形状をなし,
前記放出装置は,前記台座の上流側に配置されていることを特徴とする,
物質拡散装置。
【請求項2】
台座は,流路内に複数列,かつ間隔を空けて相互に平行となるように配置され,
次列に位置する台座は,前列に位置する台座とは,流路内の気流方向からみて,重ならないように配置されていることを特徴とする,請求項1に記載の物質拡散装置。
【請求項3】
台座は半円筒形状の中空構造であり,放出装置を支持する面が,台座本体と分離可能な蓋体によって構成されていることを特徴とする,請求項1または2に記載の物質拡散装置。
【請求項4】
蓋体は,台座本体の長手方向に沿ってスライド自在であることを特徴とする,請求項3に記載の物質拡散装置。
【請求項5】
台座本体における対向する縁部には,長手方向に沿って内側に突出する係止部と,当該係止部には,前記蓋体の下面に設けられた爪部が挿通可能な切欠部が形成されていることを特徴とする,請求項4に記載の物質拡散装置。
【請求項6】
前記台座内に,前記放出装置を作動させるために必要なケーブルまたは機器が収納されていることを特徴とする,請求項3〜5のいずれかに記載の物質拡散装置。
【請求項7】
前記物質は,オゾンであることを特徴とする,請求項1〜6のいずれかに記載の物質拡散装置。
【請求項8】
流路からの給気を室内に供給するための空気調和機において,
前記流路内に,請求項1〜7のいずれかに記載の物質拡散装置が設けられていることを特徴とする,空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−15292(P2006−15292A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197745(P2004−197745)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【Fターム(参考)】