説明

特に、化粧品の分野における、とりわけ、皮膚及び表面的身体成長物を化粧するための、着色材料及びその使用

【課題】アルカリ金属ケイ酸塩と、加水分解性タンニン又はそれを含む植物抽出物と金属陽イオンの塩の水溶液中での反応によって得られる有色複合体の反応生成物の、水性媒体中での沈殿によって得られる固体着色材料及び化粧品の提供。
【解決手段】アルカリ金属ケイ酸塩と、少なくとも1種の加水分解性タンニン又は該少なくとも1種の加水分解性タンニンを含む植物抽出物と金属陽イオンの塩の水溶液中での反応によって得られる有色複合体の反応生成物の、水性媒体中での沈殿によって得られる固体着色材料を化粧品組成物へ適用する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な発明】
【0001】
本発明の主題は、新規着色材料及び組成物、特に、化粧品組成物におけるその使用である。
【0002】
本発明はより詳しくは、特に、皮膚又は表面的身体成長物(superficial body growth)を化粧することを目的とする着色化粧品組成物の調製に適用される。また、食料品の分野、医薬、インク、色素、塗料並びにグラフィックアート及び一般に装飾の分野に適用され得る製品の分野などのその他の産業分野のための任意の種類の着色組成物に適用される。
【0003】
本発明との関連で、表現「着色材料」とは、組み込まれている媒体中で、又は適用された材料若しくは支持体の表面上で色素として作用する物質を表す。
【0004】
化粧品分野では、天然又は合成起源の着色材料及び無機又は有機化学性質の着色材料と使用されることが極めて多い。それらは、メーキャップ化粧品の場合のように、皮膚又は表面的身体成長物に対して着色効果を生じるよう主に用いられる。
【0005】
これらの着色材料は、特に、植物起源のものであり得る。
植物色素は、液体媒体中で透明である。化粧品において使用できるものの中では、アントシアニン、カロテノイド、クルクミン及びクロロフィルが言及される。それらを用いて、皮膚又は表面的身体成長物に対する着色作用を何ら伴わずに、組成物を簡単に着色できる。しかし、メーキャップ用化粧品においては、又はより通常は、表面を着色するために、皮膚又は表面的身体成長物又は表面の色を満足のいくものにするために、それらを使用することが望まれる場合には、それらを不透明にすることが必要である。このために、それらは不溶性にされる。植物色素を不溶性にする主な技術は、それらを固体基板に固定することからなる。
【0006】
固体の形で得られる着色材料として、「レーキ(lakes)」が挙げられる。
レーキは、通常、3種の要素:色素、基板、例えば、アルミナ及び沈殿剤として作用する陽イオンからなり、特に、塗料、透明被膜及び釉薬の調製において用いられる。これらのレーキはまた、食品製品を着色するために用いられることもあるが、化粧品組成物ではめったに用いられない。
【0007】
最も広く使用される天然色素のレーキは、アカネ科の種々のアントラキノンを含む植物から出発して製造されており、この例は、コモンマダー(Rubia tinctorum L.)によって、いくつかのアントラキノンの豊富な昆虫から、又はいくつかのフラボノイド、ネオフラボノイド及び同種のその他の色素の豊富なその他の植物から提供される(モクセイソウ(mignonette)及び種々のクワ科のイエローレーキ、ログウッドのパープルレーキ、ジャケツイバラ科の種々のメンバーの木のピンク及びレッドレーキなど)。
【0008】
天然色素レーキを製造するための従来法は、植物、鉱物又は動物供給源と、金属塩、例えば、硫酸塩又は塩化物の形のアルミニウム塩に由来する有色又は非有色水性抽出物を一緒にして、有色有機金属複合体を形成すること、並びにこのように形成された前記複合体を、例えば、ナトリウム、カリウム又はカルシウム塩の形の陽イオンを添加することによって沈殿させることからなる。
【0009】
したがって、本発明の意義の範囲内で、「レーキ」とは、特に、水性抽出物への金属陽イオンの添加によって形成される、有色有機金属複合体を、陽イオンを用いて沈殿させることによって形成される有色固体として定義される。
【0010】
「複合体」とは、本明細書において、金属陽イオンを有機性リガンドと組み合わせることから得られる生成物を意味すると理解される。
【0011】
複合体の着色は、有色水性抽出物の使用に起因し得るか、又は金属陽イオンとの錯体形成反応の時点でのみ出現する場合もある。この着色は、複合体の調製のために選択される金属陽イオンによって変わり得る。
【0012】
有色有機金属複合体を形成できる分子として、タンニンのファミリーに属する分子が挙げられる。
製革業界は、なめし皮及び皮の調製において種々の金属塩に対するその天然の親和性を活用している(特に、タンニンを含むなめし皮をマグネシウム塩で再処理)。
【0013】
タンニン/鉄複合体はまた、液体インクの形で、又は布地の染色の分野における種々の適用のために太古から使用されている。
タンニンは、ほとんどの植物において、またそのすべての部分において、特に、樹皮(bark)、根又は葉において見られる。
【0014】
これらのタンニンは、糖のアルコール官能基のこれらの酸によるエステル化から生じるポリフェノール酸誘導体である。それらは、高度に可変性の化学構造を有するが、常に、ポリフェノール部分を含む。
【0015】
タンニンのうち顕著なものとして、天然カテキックアシッド(catechic acid)、例えば、没食子酸、コーヒー酸若しくはフェルラ酸又はそれらのオリゴマー若しくはポリマーのもの、例えば、ペンタガロイル没食子酸、デヒドロジ没食子酸、エラグ酸、ケブリン酸又はヘキサヒドロキシジ石炭酸、ノナヒドロキシトリ石炭酸、バロネン酸、サンギソルビン酸、トリロ酸(trilloic acid)又はガラグ酸(gallagic acid)と、天然アルコール、通常、糖(グルコース、ラムノース、ルチノース、フルクトース、ガラクトース、マンノース)などのポリオール、イノシトール、キナ酸又はシキミ酸の反応によって形成されるエステルである、加水分解性タンニンがある。
【0016】
これらの加水分解性タンニンは:
−モノエステル、例えば、グルコガリン、テオガリン又はクロロゲン酸;
−ポリエステル、例えば、ペンタガロイルグルコース、ヘキサガロイルグルコース、ゲラニン、ゲラナミン、タニック酸(tanic acids)、テリマグランジン、カスアリクチン又はペダンクラギン(pedunculagin);
−これらのポリエステルのオリゴマー、例えば、ゲミン、ルゴシン、イソルゴシン、コルヌシイン、コリアリン、オエノテイン、アグリモニン、サングイン(sanguins)、コリラジン、グラナンチン(granantins)及びCUP Archiveによって刊行された著作物「Plant Polyphenols:Vegetable Tannins Revisited」Haslam E.、特に、第3章、90〜153頁に引用される著者によって単離された他の加水分解性タンニン
であり得る。
【0017】
加水分解性タンニンの中でも、例として、制限するものではないが、特に、以下を記載する:
−没食子酸及びジ没食子酸(digallic acid)と、C又はC糖、例えば、グルコース又はハマメロース、リボース誘導体などの誘導体のエステルである、没食子タンニン(又はガロタンニン)、
−エラグ酸のエステルである、エラグタンニン(又はエラジタンニン)。
【0018】
加水分解性タンニンは、天然には有色ではないが、特に、ともに黒色の複合体を形成する鉄との、すでに説明されている過程によって有色物質をもたらす。
【0019】
しかし、加水分解性タンニンを含む有機金属複合体をベースとする色素レーキは、あまり良くない安定性しか示さないので、それほど大きな程度には使用されない。
【0020】
特に、没食子タンニン及び鉄のレーキは、特に、黒色のタンニン/鉄複合体は、沈殿させるのが極めて困難であり、同時に、極めて不安定であり、再溶解する傾向を有するので開発されていない。この場合には、「デレーキング(delaking)」現象が言及される。
【0021】
組成物、特に、化粧品組成物において、とりわけ、メーキャップ用化粧品において、加水分解性タンニン及び金属塩をベースとする色素レーキを使用することができるには、安定化し、デレーキング現象による経時的な色の有害な変化を、及びこれらの組成物の内在する特性の有害な変化を防ぐことが不可欠である。
【0022】
本発明者らの知る限り、加水分解性タンニンをベースとする安定化されたレーキは全く存在せず、このような加水分解性タンニンを含む植物抽出物から製造された固体着色材料も存在せず、その安定性によって、処方成分として使用されることが可能となる。
【0023】
本発明が解決しようとするのは、まさに、加水分解性タンニン及び金属陽イオンをベースとする色素レーキの安定化という問題である。
【0024】
本発明の意義の範囲内で、色素レーキは、レーキが適用の分野において標準的な溶媒に懸濁された場合に、何らかのデレーキング現象、すなわち、有色複合体の何らかの溶解、又は特に、光源に長期間さらされた後に色の有害な変化を示さない場合には安定である。
【0025】
本発明の発明者によって実施された研究によって、特に、デレーキングに関して安定である加水分解性タンニンをベースとする色素レーキを得ることが可能となり、これによって、多数の産業分野において着色組成物の調製、特に、化粧品組成物の調製において着色材料として使用することが可能となる。
【0026】
前記レーキの安定化は、加水分解性タンニン及び少なくとも1種の金属陽イオンをベースとする前記有色複合体を、極めて特定の固体基板に固定化することに起因し、これによって、前記有色複合体を不溶性にすることが可能となりながら、不溶性にされた有色複合体のデレーキングの現象及び色の有害な変化の現象はいずれも避けられる。
【0027】
したがって、第1の主題によれば、本発明は、新規固体着色材料に関する。
この第1の主題の本質的な特徴によれば、この固体着色材料は、アルカリ金属ケイ酸塩と、少なくとも1種の加水分解性タンニン又はそれを含む植物抽出物と金属陽イオンの塩との水溶液中での反応によって得られる有色複合体の反応生成物の、水性媒体中での沈殿によって得られる。
【0028】
第2の主題によれば、本発明は、第1の主題の着色材料の製造方法に関する。
【0029】
その本質的な特徴によれば、この方法は、
−前記有色複合体とアルカリ金属ケイ酸塩の水性媒体中の反応によって上記で定義される有色複合体を不溶性にして、前記着色材料を沈殿させる段階と、
−前記着色材料を回収する段階と
を含む。
【0030】
第3の主題によれば、本発明は、第1の主題の、又は第2の主題に従って得られる着色材料を含む、皮膚又は表面的身体成長物を化粧することを目的とする化粧品組成物に関する。
【0031】
第4の主題によれば、本発明は、第1の主題の、又は第2の主題の方法に従って得られる着色材料の、着色組成物の調製における使用に関する。
【0032】
最後の主題によれば、本発明は、上記で定義される着色材料を含む組成物の局所適用を含む、皮膚又は表面的身体成長物を化粧する方法に関する。
【0033】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明において明らかとなる。
上記で示したように、本発明は、少なくとも1種の加水分解性タンニンをベースとする有色複合体から出発し、安定なレーキを得ることが可能であり、これは、アルカリ金属ケイ酸塩と、この有色複合体の反応によって形成される固体基板に結合されて起こるという本発明者らによってなされた発見に起因する。
【0034】
本発明の着色材料の調製におけるケイ酸塩沈殿は、任意のアルカリ金属ケイ酸塩であり得る。しかし、選択は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム又はケイ酸リチウムからなされることが好ましく、ケイ酸ナトリウムからなされることが好ましい。
【0035】
文献で知られているように、加水分解性タンニンとともに固定化することによって有色複合体を形成する金属陽イオンは、広範囲内で選択され得る。この陽イオンは、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム及びチタンからなる群から選択されることが有利である。第一鉄(Fe2+)の選択がなされることが好ましい。
【0036】
加水分解性タンニンは、エラグタンニン又は没食子タンニンであることが好ましい。
加水分解性タンニンの有色複合体は、文献において、すでによく知られている。
【0037】
しかし、金属陽イオンが第一鉄である黒色の有色複合体の選択がなされることが特に好ましい。このような有色複合体は公知である。
【0038】
本発明の好ましい変形形態によれば、本発明の着色材料の調製において、特に、加水分解性タンニンを含む植物抽出物、特に、これらの加水分解性タンニンを含む、このような抽出物の水溶液から得られた有色複合体が活用される。
【0039】
有色複合体の調製において使用される抽出物は、水性抽出物であることが有利である。
一般に、有色複合体は、より詳しくは、少なくとも1種の加水分解性タンニン又はそれを含む植物抽出物及び鉄の、水溶液中での反応によって形成される。
【0040】
加水分解性タンニンが、植物材料から出発し、抽出によって得られる場合には、タンニンを抽出することを可能にするすべての方法、特に、上記の著作物においてHaslamによって列挙されるもの及びそれに引用される参考文献に列挙されるものを使用してよい。
【0041】
抽出は、特に、極性溶媒又は極性溶媒の混合物を用いる、圧搾、マセレーション、煎出又はスティーピングによって実施する。
極性溶媒は、特に、グリコール、アルコール又は水、又はそれらの混合物から、特に、水性/アルコール性混合物から選択される。
【0042】
植物組織からの加水分解性タンニンの抽出は、超音波の適用によって改善できる。
得られた植物抽出物は、直接使用してもよいし、又は、例えば、抽出溶媒を除去することによって処理し、乾燥抽出物を得てもよい。
【0043】
文献において知られているように、加水分解性タンニンを含む植物抽出物は、それを含む植物全体から、又は同植物の種々の地上部(aerial)若しくは地下部、例えば、葉、枝、花、根、樹皮、果実、種子、若しくは、通常、「虫こぶ(galls)」の総称によって知られる、寄生生物による攻撃による、若しくは、病原体による感染による組織外増殖からも得ることができる。
【0044】
好適な変形形態によれば、植物抽出物は、少なくとも1種の加水分解性タンニンを含む植物の地上部から、特に、樹皮から得られる。
本発明の特に好適な変形形態によれば、植物は、シクンシ科(the family of the Combretaceae)から選択される。
【0045】
極めて特に好適な変形形態によれば、植物は、アノゲイッスス(Anogeissus)属に属するものから、例えば、植物種アノゲイッスス・レイオカルプス(Anogeissus leiocarpus)、アノゲイッスス・ラティフォリア(Anogeissus latifolia)又はアノゲイッスス・アクミナタ(Anogeissus acuminata)、好ましくは、アノゲイッスス・レイオカルプスから選択される。
【0046】
植物アノゲイッスス・レイオカルプスの葉は、柄のある綿織物の作製において、含鉄泥と組み合わせて染色においてすでに使用されており、これは、「ボゴラン(bogolan)」スタイルである。
本発明にとっては、アノゲイッスス属に属する植物の樹皮の抽出物が活用されることが好ましい。
【0047】
本発明の特に好ましい実施によれば、アノゲイッスス・レイオカルプスの樹皮の抽出物が活用される。
着色材料の色は、本質的に、金属陽イオンの性質に応じて変わるが、さらに、錯体形成反応の、又は沈殿反応の条件によっても変わり得る。
【0048】
本発明の好適な変形形態によれば、黒色である複合体は、アノゲイッスス・レイオカルプス抽出物中に存在する、例えば、水相における前記植物の樹皮の抽出によって得られた加水分解性タンニンから、及びFe2+イオンの形態の鉄から出発して得られる。この有色複合体から出発して、このように形成される着色材料は黒色である。
【0049】
本発明の好適な変形形態によれば、着色材料は、微粉砕固体、好ましくは、黒色の微粉砕固体の形態である。
【0050】
上記で示したように、本発明の着色材料を調製する方法は、前記有色複合体と、アルカリ金属ケイ酸塩の水性媒体中での反応によって有色複合体を不溶性にし、これによって、粉末形態の着色材料を沈殿させることが可能となることと、次いで、この着色材料を回収することとからなる。
【0051】
この沈殿段階を実施するために使用される有色複合体は、少なくとも1種の加水分解性タンニン又はそれを含む植物抽出物を含む水溶液への、金属陽イオンの塩の添加によって得られることが有利である。
【0052】
したがって、本発明の好ましい変形形態によれば、本発明の方法は、少なくとも1種の加水分解性タンニン又はそれを含む植物抽出物を含む水溶液への、金属陽イオン、好ましくは、硫酸鉄の塩の添加による上記の有色複合体の調製の第1の段階を含む。
【0053】
前記水溶液は、上記で定義される植物抽出物の、特に、アノゲイッスス・レイオカルプス抽出物の水への溶解によって得られることが有利である。
【0054】
好適な変形の形態によれば、着色材料は、水性抽出によって得られる加水分解性タンニンを含む植物抽出物の水溶液から得られる。この水性抽出段階は、超音波抽出装置を用いて実施されることが有利である。
【0055】
有色複合体を不溶性にする段階は、有色複合体とアルカリ金属ケイ酸塩の、水性媒体中での反応によって得られる粒子の水性懸濁液の形成によって実施されることが好ましい。
【0056】
この不溶性にする段階は、有色複合体の水溶液を、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液とともに撹拌し、接触操作の間に混合物が反応して、前記有色固体粒子をインサイツ(in situ)で沈殿させることによって実施されることが有利である。
【0057】
水溶性アルカリ金属ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウムであることが好ましい。
この方法によれば、上記で定義される有色複合体が固定されている有色固体粒子の懸濁液が調製され、前記懸濁液は、有色複合体の水溶液中で有色固体粒子をインサイツで形成することによって、特に、前記有色複合体とアルカリ金属ケイ酸塩、例えば、ケイ酸ナトリウムの水性媒体中での反応によって得られる。
【0058】
これらの粒子は、その後、最終段階の間に回収される。
有色固体粒子は、任意の適当な固体/液体分離手段によって水性媒体を除去することによって回収される。
【0059】
したがって、方法は、本質的に有色複合体が固定される固体基板からなる着色材料から形成される粉末を回収することを目的とする沈下による分離及び/又は洗浄及び/又は濾過及び/又は乾燥及び/又は噴霧又は微粒化の少なくとも1つの段階を含むことが有利である。
【0060】
当業者ならば、種々の操作条件及びパラメータを変化させることができる。
しかし、温度の選択によって、不溶性にする反応の速度論に、また支持体の組成に作用することがあり得、これは最終着色材料の着色に対する効果を伴うということは留意されなければならない。このように、タンニン/鉄有色複合体が、冷条件下、例えば、約4℃で処理されると、「黒」がより強いことが観察され得る。
【0061】
タンニン/鉄有色複合体から黒色である着色材料が調製される本発明の方法の好ましい実施によれば、前記材料は、以下の段階によって調製される:
−アノゲイッスス属に属する植物の抽出物の、好ましくは、アノゲイッスス・レイオカルプスの樹皮の抽出物の水溶液への、鉄塩、好ましくは、硫酸第一鉄の添加による有色複合体の調製の段階、
−前記の有色複合体の水溶液を、撹拌しながら、アルカリ金属ケイ酸塩、好ましくは、ケイ酸ナトリウムの水溶液と接触させることによる、前記有色複合体のインサイツ沈殿の段階。
【0062】
好ましい実施によれば、水溶性鉄塩を、使用される乾燥植物抽出物の重量に対して少なくとも20重量%で加える。
【0063】
好ましい実施によれば、アルカリ金属ケイ酸塩を、鉄塩の重量と実質的に等しい割合、すなわち、使用される乾燥植物抽出物の重量に対して少なくとも20重量%で加える。
【0064】
本発明の着色材料は、化粧品組成物において、特に、皮膚又は表面的身体成長物を化粧することを目的とする化粧品組成物において特に使用される。
したがって、本発明は、上記で定義される着色材料を含む、着色組成物、特に、皮膚又は表面的身体成長物を化粧するための化粧品組成物に関する。
【0065】
本発明の意義の範囲内で、着色組成物とは、着色物質が、その着色特性を保持し、その他の化合物が、その特定の構造を変性させることのないものである。
化粧品の分野では、着色組成物は、通常、皮膚又は表面的身体成長物を化粧するための製品、特に、マスカラ、ファンデーション、アイシャドウ、アイライナー、マニキュア液又はルース(loose)若しくはコンパクトパウダーとなる。
【0066】
本発明の着色材料を含む化粧品組成物は、少なくとも1種の化粧品上許容される活性薬剤及び特に、真珠光沢剤、ポリマー、界面活性剤、レオロジー剤、香料、電解質、pH調整剤、抗酸化物質、保存料、それらの混合物及び場合により、その他の着色剤から選択される少なくとも1種の化粧品上許容される賦形剤を含み得る。
【0067】
本発明はまた、着色組成物の、特に、皮膚又は表面的身体成長物、とりわけ、睫毛又は爪を化粧するための化粧品組成物の調製における、上記の方法によって特に得られた前記着色材料の使用に関する。
【0068】
本発明は、特に、アノゲイッスス・レイオカルプスの樹皮の抽出物から調製された黒色着色材料の、それを含むことができる着色組成物中の、より詳しくは、化粧品組成物、特に、皮膚又は表面的身体成長物、とりわけ、睫毛又は爪を化粧することを目的とする組成物中の着色剤としての使用に関する。
【0069】
当業者ならば、本発明の組成物中に存在する着色材料の量は、組成物の種類及び望ましい作用に応じて大きく変わることは容易に理解する。
【0070】
最後に、本発明は、上記の組成物の、皮膚又は表面的身体成長物の少なくとも一部への適用を含む、皮膚又は表面的身体成長物、特に、睫毛又は爪を化粧する方法に関する。
【0071】
最後に、上記で示したように、本発明の着色材料はまた、化粧品の分野以外分野において、特に、食料品又は装飾用塗料の分野においても適用される。
【0072】
本発明のその他の目的、特徴及び利点は、例示として与えられ、したがって、決して、本発明の範囲を制限するものではない実施例を踏まえて、より明確に明らかになろう。
【実施例】
【0073】
実施例1:加水分解性タンニンをベースとする色素レーキの調製及びその安定性の研究
1−色素レーキの調製
ブルキナファソにおいて収集されたアノゲイッスス・レイオカルプスの樹皮からなる出発材料を、製粉し、次いで、ふるいにかけて、大きさが1mm未満である粗粉末を得る。
この植物出発材料を、27kHzの周波数の超音波抽出装置において60℃で30分間抽出する。濾過後、固体残渣を、同条件下で2回抽出する。
2種の濾過した濃縮溶液を合わせ、それに、硫酸第一鉄水溶液を、抽出に用いた粉末樹皮の重量に対して20重量%の硫酸第一鉄で加える。
20℃に冷却した後、その水の容積の3倍に希釈した、約40重量%のケイ酸ナトリウム溶液を撹拌しながら加える。溶液中に沈殿した着色材料のフレークが現れる。
沈下及び上清の除去によって分離した後、沈殿物を浸透水(osmosed water)で2回洗浄する。続いて、黒色である、固体粒子から形成された沈殿物を濾過して回収し、次いで、乾燥させ、次いで、今回は水中、エタノールの60°溶液を用いて再度洗浄し、最後にもう一度乾燥させる。
【0074】
2−レーキの安定性の研究
上記で得られたレーキを、その安定性を評価することに向けた試験に付す。
a)種々の媒体中での安定性
可能性あるデレーキングの現象の出現を調べるために、レーキを標準溶媒に懸濁して、タンニン/鉄複合体の可逆的溶解がないことを確認する。
分散媒におけるデレーキングを可視化する手順は、以下のとおりである:
上記で調製した0.1gのレーキ及び9.9gの溶媒を計りとる。撹拌を周囲温度で20分間実施する。試験される溶媒は、エタノール、酢酸エチル、ペンタシクロメチコン、グリセロール又はグリセロールトリカプレート/カプリレート(Miglyol(登録商標)、Prodasynth SAS、France)である。4500rev/分で45分間、遠心分離を実施して、処理したレーキ粒子を分離する。
デレーキングは、遠心分離後に回収された上清の着色によって反映される。
結果:
試験された溶媒がどんなものであれ、20℃でデレーキングは観察されない(無色の上清)。
分散物の安定性に関するこの試験は、水中、及び流動パラフィン中、80℃で反復する。
結果:
流動パラフィン中、1重量%懸濁液で、レーキ粒子のデレーキングは観察されない。同様に、水中、1重量%懸濁液で、レーキ粒子のデレーキングは観察されない。
これらの結果に基づいて、レーキの安定性は、化粧品において、よく用いられる種々の分散媒に関して許容可能である。
【0075】
b)光及びUV照射に向けた安定性
天然色素は、光に向けた低い安定性が知られている。これらの色素によって生じる色は、視覚的に生じる効果に関して有害である物理化学的改変を反映して、有害に変化する傾向を有する。
光に対する、及びUV照射に対するその抵抗性を調べるために、上記で調製したレーキのサンプルを、Heraeus Suntest(登録商標)CPS+装置を用い、光酸化試験(1500ワットで12時間)に付す。
色の変化は、視覚的に観察されない。
【0076】
実施例2:タンニン/鉄複合体をベースとする着色材料を含むメーキャップ化粧用組成物
実施例1に従って得られた着色材料は、濃い黒色である。それを、以下に記載される、マスカラ処方の脂肪相に加える:
実施例1の着色材料 8
マスカラ賦形剤(香料及び保存料を含む) 適量
水 適量100
このように得られるマスカラは、黒色である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属ケイ酸塩と、少なくとも1種の加水分解性タンニン又は該少なくとも1種の加水分解性タンニンを含む植物抽出物と金属陽イオンの塩の水溶液中での反応によって得られる有色複合体の反応生成物の、水性媒体中での沈殿によって得られる固体着色材料。
【請求項2】
前記金属陽イオンが、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム及びチタンからなる群から選択される、請求項1に記載の着色材料。
【請求項3】
前記有色複合体が黒色であり、前記金属陽イオンが第一鉄である、請求項2に記載の着色材料。
【請求項4】
前記加水分解性タンニンが、エラグ又は没食子タンニンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の着色材料。
【請求項5】
前記植物抽出物が、水性抽出物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の着色材料。
【請求項6】
前記植物抽出物が、加水分解性タンニンを含む植物の地上部から得られる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の着色材料。
【請求項7】
前記植物抽出物が、樹皮から得られる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の着色材料。
【請求項8】
前記植物が、シクンシ科に属する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の着色材料。
【請求項9】
前記植物が、アノゲイッスス属に属する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の着色材料。
【請求項10】
前記植物抽出物が、アノゲイッスス樹皮の抽出物である、請求項9に記載の着色材料。
【請求項11】
前記植物が、種アノゲイッスス・レイオカルプスに属する、請求項9又は10に記載される着色材料。
【請求項12】
前記アルカリ金属ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びケイ酸リチウムからなる群から選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の着色材料。
【請求項13】
有色複合体が、植物アノゲイッスス・レイオカルプスの樹皮の抽出物の水溶液と第一鉄の反応によって得られる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の着色材料。
【請求項14】
黒色である粉末の形である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の着色材料。
【請求項15】
皮膚又は表面的身体成長物を化粧することを目的とする化粧品組成物であって、請求項1〜12のいずれか一項に記載の着色材料を含む化粧品組成物。
【請求項16】
皮膚又は表面的身体成長物を化粧することを目的とする化粧品組成物であって、請求項13又は14に記載の黒色着色材料を含む化粧品組成物。
【請求項17】
マスカラ、ファンデーション、アイシャドウ、アイライナー、マニキュア液又はルース若しくはコンパクトパウダーである、請求項15又は16に記載の組成物。
【請求項18】
塗料又は装飾用塗料である、請求項15〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の着色材料の調製方法であって、
−前記有色複合体と、アルカリ金属ケイ酸塩の水性媒体中での反応によって、請求項1〜14のいずれか一項に記載の有色複合体を不溶性にして、前記着色材料を沈殿させる段階と、
−前記着色材料の回収の段階と
を含む方法。
【請求項20】
少なくとも1種の加水分解性タンニン又は該少なくとも1種の加水分解性タンニンを含む植物抽出物を含む水溶液への、金属陽イオンの塩の添加によって前記有色複合体が得られる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
水溶液中の前記植物抽出物が、水性抽出によって得られる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記植物抽出物が、アノゲイッスス抽出物である、請求項20又は21に記載の方法。

【公開番号】特開2010−195780(P2010−195780A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−33519(P2010−33519)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(502189579)エルブイエムエイチ レシェルシェ (68)
【Fターム(参考)】