説明

特に自動車のドアキャッチとロックとの間で運動を伝達するための装置

【課題】右側および左側ドアに兼用できる運動伝達装置を提供すること
【解決手段】本発明は、自動車のドアキャッチのような回転出力部材および自動車のドアロックのような機構の回転入力部材に関し、この装置は、前記2つの回転部材(18、23)の間に挿入された運動伝達機構と、伝達シャフトとを備え、前記伝達シャフトの2つの端部は、前記回転入力部材および前記回転出力部材と共に、関節接続ユニバーサルジョイントを構成し、この関節接続ユニバーサルジョイントは、ある程度の軸方向の不整合を許容し、各端部は相補的な回転部材の部品と協働する、全体がボール形状となっている。この装置は、前記伝達シャフトのキャッチ端部に設けられた少なくとも前記ボールが、ファセット付きボールとなっておりあり、このボールのファセット数が前記キャッチと前記ロックとの間の角度(α)に従って定められることを特徴とする。本発明は、自動車で使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアキャッチのような回転出力部材と運動伝達機構を含むタイプの、自動車のドアロックのような機構の回転入力部材との間で運動を伝達するための装置であり、前記運動伝達機構は、前記2つの回転部材の間に挿入され、伝達シャフトを含み、前記伝達シャフトの2つの端部は、前記回転入力部材および前記回転出力部材と共に、関節接続伝達ジョイントを構成し、この関節接続伝達ジョイントは、ある程度の軸方向の不整合を許容し、各端部は、相補的な回転部材の部品と協働する、全体がボール形状となっている、前記回転出力部材と前記回転入力部材との間で運動を伝達するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの伝達装置は、欧州特許第0943759号から公知である。図1は、本発明に関連して重要な装置の一部を示す。この図では、1は、回転出力部材、2は、ロック機構の回転入力部材、3は、出力部材から入力部材2へ運動を伝達するシャフトを示す。回転出力部材2内に嵌合されるようになっているシャフト3の端部4は、円筒形ヒンジピン6により部材1内に保持されており、ヒンジピン6は、部材1内のラジアルオリフィス7および周辺の各側面から中心に向かって狭くなっている径方向スロット8を貫通している。伝達シャフト3の他端部は、全体が球形をしたヘッド9も有し、このヘッドにはロック機構の入力部材2に属す相補的な軸方向スロット11内に嵌合するようになっている2つの径方向に突出するほぞ10が設けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この公知の装置は、比較的複雑な構造となっており、特に出力部材1と伝達シャフト3との間に枢動ジョイントを形成するために、別個の部品、例えばピン6が必要であり、更にこのことにより、別の組み立て作業も必要となるという欠点がある。更にこの公知の装置は、2本の異なる伝達シャフト、すなわち左側ドア用の伝達シャフトと右側ドア用の伝達シャフトを必要とする。
【0004】
本発明の目的は、これまで説明した欠点を有していない装置を提案することにある。
【0005】
この目的を達成するために、本発明に係わる装置は、前記伝達シャフトのキャッチ端部に設けられた少なくとも前記ボールは、ファセットすなわち切り子面付きボールであり、このボールのファセットの数は、前記キャッチと前記ロックとの間の角度(α)に従って定められることを特徴とする。
【0006】
本発明の特徴によれば、本発明に係わる装置は、自動車の右側ドアおよび左側ドアの双方に対し、同じ伝達装置を使用できるようにする手段を含む。
【0007】
本発明に別の特徴によれば、この手段は、ファセットの数の選択にかかっている。
【0008】
本発明の一実施例を例示した添付図面を参照し、次の説明を読めば、本発明について、より理解でき、本発明の他の目的、特徴、細部および利点がより明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明にかかわる自動車のドアキャッチとロックとの間で運動を伝達するための装置を示す図2において、13は、2つの組み立て可能な部品14、14’、およびボールアセンブリ15から製造されたステータを含むキャッチ機構を示し、17は、キャッチからロック(図示せず)へ運動を伝達するシャフトを示す。キャッチおよびロックと協働するようになっているシャフト17の2つの端部は、ファセット付きボール18、22として製造されており、キャッチ端部のボール18は、相補的な形状をしたボールジョイント端部取り付け具19内に嵌合されたユニバーサルジョイントボールとなっている。
【0010】
本発明の別の特徴によれば、組み立て誤差が生じる可能性を解消するように2つの組み立て位置しか許容されないように、ファセット付きユニバーサルジョイント18が構成されている。この目的のために設けられたフールプルーフ機構は、図示の例では、ユニバーサルジョイントボールの1つのファセット20から突出するほぞ、またはスタッド26と、ユニバーサルボールジョイント端部嵌合スロット19のうちの同じようにファセットが設けられた内側面内の2つの適当なスロット27とを備え、スタッドは、2つのスロットのうちの一方または他方に嵌合されるようになっている。図5および図6は、GおよびDでそれぞれ示されているように、左側ドアまたは右側ドアに、本発明に係わる1つの同じ伝達装置をどのように取り付けるかを示している。
【0011】
キャッチとロックとの間で所望する角度αをもって、かつ自動車の右側ドアと左側ドアで同じ装置を使用できるようにするために、ユニバーサルジョイント18上のファセットの数を定める1つの方法について、図7を参照して、以下説明する。図7におけるラインYおよびZ’は、それぞれ、キャッチから右側までの位置およびキャッチから左側までの位置を示す。このような兼用を保証するために、ラインZ’は、ラインZを生じるよう、直径を横断するように延びており、ラインZは、垂直ラインと共に同じように角度αを定めている。垂直ラインの左側およびファセットの角度Aに対する2つのラインYとZとの間のファセットの数Cに関して、次の関係が成り立つ。
180−2α=C×A
【0012】
他方の側のファセットの数をBとし、ファセットの総数をNとした場合、次の式が成り立つ。
180−2α=C×A
N=C+B
N×A=360°
B>C
ここで、N、CおよびZは、整数であり、Nは、できるだけ小さい数である。
【0013】
例えば自動車によって定められる角度α=10°に対し、これら式を適用することにより、値C=4、A=40°、B=5およびN=9を得ることができる。
【0014】
これまでの記載から、本発明により、左側ドアと右側ドアの双方に対して使用できる1つのユニバーサルジョイントを製造することが可能となり、従来技術を示す図1と図2とを比較すると。別の部品を不要にできることが明らかとなる。
【0015】
以上、自動車に対して実施した例により、本発明について説明した。しかしながら、自動車に関して解決した問題に関連するすべての場合において、本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来技術における、自動車のドアロックとキャッチとの間で運動を伝達するための装置の斜視略図である。
【図2】ロック部品を省略した、本発明に係わる装置の斜視図である。
【図3】左側ドアのためのキャッチに対するロック端部に設けられた、ユニバーサルボールジョイントを示す略図である。
【図4】右側ドアのためのキャッチに対するロック端部に設けられた、ユニバーサルボールジョイントを示す略図である。
【図5】左側ドアのための、図2の矢印Vの方向に見た、本発明に係わる装置の斜視図である。
【図6】右側ドアのための、図2の矢印Vの方向に見た、本発明に係わる装置の斜視図である。
【図7】本発明に係わるファセット付きボールタイプのユニバーサルジョイントのファセット数をどのように計算するかを示す略図である。
【符号の説明】
【0017】
13 キャッチ機構
14、14’ 組み立て可能な部品
15 ボールアセンブリ
17 シャフト
18 ユニバーサルジョイント
19 ボールジョイント端部取り付け具
20 ファセット
26 スタッド
27 スロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアキャッチのような回転出力部材と運動伝達機構を含むタイプの、自動車のドアロックのような機構の回転入力部材との間で運動を伝達するための装置であって、前記運動伝達機構は、前記2つの回転部材の間に挿入され、伝達シャフトを含み、前記伝達シャフトの2つの端部は、前記回転入力部材および前記回転出力部材と共に、関節接続伝達ジョイントを構成し、この関節接続伝達ジョイントは、ある程度の軸方向の不整合を許容し、各端部は、相補的な回転部材の部品と協働することができ、全体がボール形状となっている、前記回転出力部材と前記回転入力部材との間で運動を伝達するための装置において、
前記伝達シャフト(17)のキャッチ端部に設けられた少なくとも前記ボール(18)は、ファセット(20)付きであり、このボールのファセット(20)の数は、前記キャッチ(13)と前記ロックとの間の角度(α)に従って定められることを特徴とする装置。
【請求項2】
自動車の右側ドアおよび左側ドアの双方に対し、同じ伝達装置を使用できるようにする手段を含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記手段は、ファセット(20)の数の選択にかかっていることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ファセットの数は、前記キャッチと前記ロックとの間の角度(α)に従って決定され、右側ドアおよび左側ドアの双方に対して同じ伝達機構を使用することを特徴とする、請求項2および3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
自動車の右側ドアおよび左側ドアに取り付けるためのフールプルーフ機構(26、27)を備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記フールプルーフ機構は、前記ファセット(20)付きボール(18)の1つのファセット(20)から突出するスタッド(26)と、前記ソケット端部部品の面に設けられた2つのスロット(27)とを備え、これらスロットは、前記ボールを受け入れると共にボールと協働し、前記2つのスロットのうちの一方または他方に前記スタッドが嵌合されるようになっていることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ボールが備えるファセットの数Nは、次の式
180−2α=C×A
N=C+B
N×A=360°
B>C
(ここで、Cは、角度部分2αのファセットの数であり、
Bは、Cと相補的なファセットの数であり、
Aは、ファセットの角度であり、
αは、キャッチとロックとの間の角度であり、
N、CおよびDは、整数である)
に従って決定されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−533622(P2009−533622A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504730(P2009−504730)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053485
【国際公開番号】WO2007/116073
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(506415218)ヴァレオ セキュリテ アビタクル (36)