説明

特に航空機プロペラの縦軸線方向に調節可能なプロペラ羽根用のプロペラ羽根軸受装置

本発明は、特に航空機プロペラの縦軸線の周りに調節可能なプロペラ羽根(2)用のプロペラ羽根軸受装置であって、プロペラボス(1)において複数のプロペラ羽根(2)が、適当な数の羽根受入れ部(3)内に個々に取付けられているものに関する。各プロペラ羽根(2)が、その羽根基部(4)に、一次調節軸受(5)及び二次調節軸受(6)を持ち、かつ羽根受入れ部(3)内に回転可能に支持され、一次調節軸受(5)及び二次調節軸受(6)が、アンギュラコンタクト転がり軸受として構成され、それぞれ上部レース(7,9)及び下部レース(8,10)とこれらのレース(7,8,9,10)の間に設けられる転動体(11,12)を持っている。更にプロペラボス(1)に潤滑油だめ(13)が設けられ、プロペラの回転の際一次軸受(5)及び二次軸受(6)が、潤滑油だめから潤滑油を供給される。本発明により、各プロペラ羽根(2)が一次調節軸受(5)及び二次調節軸受(6)の両方のレース(7,9,8,10)及び転動体(11,12)と共にそれぞれ完全に予め組立てられる構造単位として構成され、一次調節軸受(5)及び二次調節軸受(6)の上部レース(7,9)が、下部レース(8,10)を軸線方向片側で包囲するその潤滑油制止壁環(16,17)とそれぞれ結合され、これらの潤滑油制止壁環により、プロペラボス(1)の潤滑油だめ(13)から上昇する潤滑油が、大部分調節軸受(5,6)内に貯蔵可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念を形成する特徴によるプロペラ羽根軸受装置、特に航空機プロペラの縦軸線の周りに調節可能なプロペラ羽根において有利に実現可能である。
【背景技術】
【0002】
航空機にあるプロペラ駆動装置の分野において、各プロペラ回転数に対して最適なプロペラ羽根位置を得るため、航空機プロペラの調節可能なプロペラ羽根がプロペラ効率の最適化に役立つことは、一般に知られている。この理由から、航空機プロペラのプロペラ羽根を個々にプロペラボスに取付け、適当な転がり軸受内に容易に調節可能に支持することが必要である。このようなプロペラ羽根軸受装置は、英国特許出願公開第2244525号明細書から公知で、実質的にプロペラボスから成り、このプロペラボスにおいて、複数のプロペラ羽根が、プロペラ保持環の適当な数のプロペラ受入れ部に個々に取付けられている。各プロペラ羽根は、その羽根基部に一次調節軸受及び二次調節軸受を持ち、プロペラ受入れ部内で縦軸線の周りに回転可能に支持され、その際一次調節軸受及び二次調節軸受はアンギュラコンタクト転がり軸受として構成され、縦軸線に沿って互いに離れて設けられ、かつ互いに締付けられている。両方の調節軸受は、それぞれ上部レースと下部レースとこれらのレースの間に設けられる1列の転動体とを持ち、具体的な構成において一次調節軸受はアンギュラコンタクト玉軸受として構成され、二次調節軸受はアンギュラコンタクトころ軸受として構成されている。プロペラ羽根用の全調節機構を潤滑するため、プロペラボスに潤滑油だめが設けられ、プロペラの回転の際摩耗を回避するため、この潤滑油だめから潤滑油が一次調節軸受及び二次調節軸受に供給される。
【0003】
公知のプロペラ羽根の組立ては、大体において、プロペラ羽根の羽根基部を包囲して調節軸受の上部レースの座を形成する軸受保持スリーブが、まず2つの半体を羽根基部に取付けられ、それから調節軸受の同様に2つの半体から成る上部レースが載せられ、適当なやり方で連続環となるように結合される。続いて2分割の保持器が二次調節軸受の上部レースの周りに置かれ、環となるように結合されるので、二次調節軸受の転動体を保持器へ挿入することができる。それから外側に部分的にねじを持ちかつ組立てられた状態でその内側と共に二次調節軸受の下部転動路を形成するスリーブが、一次調節軸受の転動体用保持器と共に、プロペラ羽根の羽根基部上へゆるくはめられ、続いて一次調節軸受の転動体が保持器へ挿入される。その後羽根基部にあるゆるいスリーブが、二次調節軸受の転動体上へ引寄せられて、この軸受の内側に下部レースとして当接し、一次調節軸受の続いて2分割の上部レースを内側に収容する同様に2分割の羽根受入れ部が、羽根基部の周りに締付けられて、一次調節軸受の上部レースがその転動体上に載るようにされる。最後に、組立てられる羽根収容部に支持されるねじ締付け環が、羽根基部のそれまでゆるかったスリーブのねじ上へねじはめられるので、一方では、ゆるいスリーブの内側により形成される二次調節軸受の外レースが転動体へ向かって締付けられ、他方では、プロペラ羽根軸受装置の両方の調節軸受が互いに締付けられる。同時に、内側に二次調節軸受の下部レースとして構成されているスリーブと軸受保持環との間及びこのスリーブと羽根受入れ部との間に設けられる2つの密封片によって、羽根受入れ部から羽根基部の出る個所が、油密に密封される。
【0004】
この公知のプロペラ羽根軸受装置の欠点は、プロペラ羽根用調節軸受の特殊な配置及び構成が、プロペラ軸受装置全体の大部分2分割の構成を必要とし、各プロペラ軸受装置のため多数の個別部分が必要となり、その組立ての際特に欠陥の危険を高めることである。これらの個別部分は更に極めて正確に又は互いに正しいはまり合いで製造されかつ組立てられねばならないので、その製造のための高い費用のほかに、プロペラボスへのプロペラ羽根の取付けのために著しい時間及び費用が生じるので、このようなプロペラ羽根軸受装置は全体として非常に高い製造費を生じる。更に安全技術上の観点から、プロペラの回転の際遠心力によりプロペラボスの潤滑油だめから上昇する潤滑油が、両方の調節軸受により妨げられることなくこれらを通って流れることができ、従って高いプロペラ回転数では、遠心加速度に相当する圧力で、羽根受入れ部から羽根基部の出る個所に設けられる2つの密封片に当たることが、この公知のプロペラ軸受装置の著しい欠点である。これは、航空機プロペラのプロペラ羽根軸受装置の1つにある密封片の破損の際、プロペラボスにある全潤滑油を失わせることになるので、プロペラ羽根軸受装置の調節機構及び調節軸受の潤滑の中止及び航空機の駆動装置における機能障害に至ることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
公知の従来技術の上述した欠点から始まって、本発明の基礎になっている課題は、特に航空機プロペラの縦軸線の周りに調節可能なプロペラ羽根のためのプロペラ羽根軸受装置を構想し、それにより軸受装置の個別部分の製造のための費用、及びプロペラボスへのプロペラ羽根の取付けのための費用が、最小に減少可能であり、軸受装置がフェイルセーフ機能を持つように構成され、羽根保持環から羽根基部の出る個所における密封片の破損の際、プロペラボス内の全潤滑油が失われるのを効果的にされるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、請求項1の上位概念に記載のプロペラ軸受装置において、各プロペラ羽根が一次調節軸受及び二次調節軸受の両方のレース及び転動体と共にそれぞれ完全に予め組立てられる構造単位として構成され、この構造単位が、プロペラ羽根の羽根基部の所で密封片を持つように構成される上部環状ナットにより、羽根保持環の羽根受入れ部内に潤滑油密にねじ止め可能である。その際一次調節軸受及び二次調節軸受の上部レースが、下部レースを軸線方向片側で包囲するその潤滑油制止壁環とそれぞれ結合され、これらの潤滑油制止壁環により、プロペラ羽根の回転の際遠心力によりプロペラボスの潤滑油だめから上昇する潤滑油が、大部分調節軸受内に貯蔵可能である。同時に潤滑油制止壁環により潤滑だめ内の所定の充填量に関連して、潤滑油が少量だけほぼ圧力なしに上部環状ナットの密封片に当接するのを保証される。
【0007】
本発明により構成されるプロペラ軸受装置の適切な展開では、一次調節軸受及び二次調節軸受が、これらの間に設けられる間隔片を介して、下部環状ナットにより、プロペラ羽根の羽根基部にある環状段部へ向かって締付けられている。この環状段部は、羽根基部からプロペラ羽根への円錐状移行範囲に設けられ、軸線方向に同時に一次調節軸受より直径を大きく構成される二次調節軸受の上部レース用の軸受座を形成している。これに反し一次調節軸受の軸受座は、その下部レースを介して実現され、プロペラ羽根の羽根基部に直接設けられ、プロペラ羽根の羽根基部の下端は、下部環状ナットの雌ねじに対して相補的な雄ねじを持つように構成されている。
【0008】
調節軸受の間の間隔片として、本発明により構成されるプロペラ羽根軸受装置の別の特徴として、一方では、一次調節軸受の下部レースと二次調節軸受の上部レースとの間に設けられる内側間隔スリーブが使用され、羽根基部の形状に合わされて上方へ円錐状に開く形状を持っている。他方では、一次調節軸受の上部レースと二次調節軸受の下部レースとの間に設けられる別の間隔片として、外側間隔環が設けられて、プロペラ羽根軸受装置の個別部分の数の減少及び組立て誤差の危険の減少のため、なるべく二次調節軸受の下部レースと一体の統一構造部分として構成されている。外側間隔環が二次調節軸受の下部レースと一体であるか、又は別個の構造部分として構成されているかに関係なく、この外側間隔環は、別の統一される素子として、その外側に付加的に直径の大きい環状突片を持ち、この環状突片を介してプロペラ羽根の羽根基部が、上部環状ナットにより、プロペラボスの羽根保持環の羽根受入れ部内にねじ止め可能である。
【0009】
本発明により構成されるプロペラ羽根軸受装置の有利な構成では、一次調節軸受の下部レースが、なるべくプロペラボスの縦中心軸線に関して180°回されたT字状輪郭断面を持ち、この輪郭の横脚辺の内側により一次調節軸受の軸受座を形成しながら、プロペラ羽根の羽根基部上に載せられている。この横脚辺の下側が同時に下部環状ナット用の押圧面として構成されて、一次調節軸受の下部レースの輪郭の縦脚辺と横脚辺の一部が、下部レースの転動体用転動面を形成している。更に一次調節軸受の下部レースの輪郭によりプロペラ羽根の羽根基部とこの輪郭の縦脚辺との間に形成される環状面が、有利に当接面として利用され、二次調節軸受の下部レースに当接する内側間隔スリーブが、一次調節軸受と二次調節軸受との間で、この当接面に支持されている。
【0010】
本発明により構成されるプロペラ羽根軸受装置の別の特徴では、一次調節軸受及び二次調節軸受の上部レースと結合されている潤滑油制止壁環が、なるべく上部レースと一体に構成される角形環として構成され、これらの角形環が、その輪郭の水平脚辺により上部レースの上側の延長部を形成し、その輪郭の垂直脚辺をプロペラボスの方へ向けられている。その際両方の調節軸受の潤滑油制止壁環の垂直脚辺が、それぞれの調節軸受の上部レースの高さにほぼ等しい長さを持つように構成するのが有利であり、それにより両方の調節軸受の上部レースが潤滑油制止壁環と共に比較的大きい環状空間を形成している。従って調節軸受の下部レースをそれぞれ包囲してプロペラボスの方へのみ開くこの環状空間内に、プロペラの回転の際プロペラボスの潤滑油だめから遠心力で加速される比較的多量の潤滑油がたまり、調節軸受の常に充分な潤滑を行うことができる。調節軸受の上部レースと潤滑油制止壁環との一体構成は、プロペラ軸受装置の個別部品数の減少に役立つけれども、これらの潤滑油制止壁環を別個の構造部分としても構成して、調節軸受の上部レースと適当に結合できることを除外するものではない。
【0011】
最後に本発明により構成されるプロペラ軸受装置の最後の特徴として、一次調節軸受の潤滑油制止壁環の垂直脚辺が、一次調節軸受の下部レースの輪郭の縦脚辺と内側間隔スリーブとの間に設けられて、潤滑油制止壁環の内側と下部レースの縦脚辺の外側との間及び内側間隔スリーブの外側と潤滑油制止壁環の内側との間に残る間隙が、二次調節軸受に対する潤滑油あふれラビリンスを形成するようにしていることが、提案される。同様に二次調節軸受の潤滑油制止壁環のプロペラボスの方へ向く垂直脚辺が、二次調節軸受の下部レースと上部環状ナットとの間に設けられて、潤滑油制止壁環の内側と下部レースの外側との間及び潤滑油制止壁環と上部環状ナットの外側との間に残る間隙が、上部環状ナットの密封片に対する潤滑油あふれラビリンスを形成するようにしている。
【0012】
両方の調節軸受にあるこれらの潤滑油あふれラビリンスは、プロペラの回転の際遠心力で加速されてプロペラボスから出る潤滑油の圧力減少に役立ち、この圧力減少により、上部環状ナットにあって羽根保持環の羽根受入れ部から羽根基部の出る個所を密封する密封片に、潤滑油がほぼ圧力なしで当接する。これは、プロペラボスから上昇する潤滑油が、まず潤滑油制止壁環により一次軸受に形成される環状空間のみを満たすように、行われる。もはや一次調節軸受に蓄えられない潤滑油は、遠心力により一次調節軸受にあるあふれラビリンスを通って、内側間隔スリーブと外側間隔環との間に形成される空所へ押込まれ、そこから遠心力により二次調節軸受内へ達し、そこで再びその潤滑油制止壁環により形成される環状空間に蓄えられる。潤滑油の充填量を適当に設定すると、少量の過剰な潤滑油のみが、二次調節軸受にある潤滑油あふれラビリンスを介して上部環状ナットにある密封片の所まで押し進むことができ、この少量の潤滑油は、損傷を引き起こす圧力負荷をもはや密封片へ及ぼさない。しかし上部環状ナットにある密封片に損傷が生じても、少量の潤滑油しか失われない。なぜならば、潤滑油の大部分は、潤滑油制止壁環によりプロペラ軸受装置の調節軸受に蓄えられるからである。
【0013】
従って本発明により構成されるプロペラ軸受装置は、従来技術から公知のプロペラ軸受装置に対して、一次調節軸受及び二次調節軸受により完全に予め組立てられる構造単位としてプロペラ羽根を構成することによって、プロペラ羽根軸受装置の個別部品の製造費、及びプロペラボスへのプロペラ羽根の取付け費が、最小に減少される。一次調節軸受及び二次調節軸受のために構造単位を予め組立てる際、そのレースのみを僅か変更して構成される公知のアンギュラコンタクト転がり軸受を使用することができ、その製造は安価であり、精確に設定される予荷重で羽根基部に取付けられる。こうして予め組立てられるプロペラ羽根は、羽根保持環の一体な羽根受入れ部に挿入し、上部環状ナットによりプロペラボスにねじ止めすることができるので、プロペラ羽根軸受装置の少数の個別部品によって、組立て費及び組立て欠陥の危険が著しく少なくされ、全体としてプロペラ羽根軸受装置の製造費が減少される。更に本発明により構成されるプロペラ羽根軸受装置は、それぞれ下部レースを軸線方向に包囲する潤滑油制止壁環を持つ一次調節軸受及び二次調節軸受の構成によって、調節機構及び調節軸受の常に充分な潤滑及びフェイルセーフ機能を持ち、この機能によって、密封片の損傷の際、羽根保持環から羽根基部の出る個所において、少量の潤滑油しか失われず、プロペラボス内で潤滑油が全部失われるのを効果的に防止される。
【0014】
本発明により構成されるプロペラ軸受装置の好ましい実施例が、添付図面を参照していかに説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図面から、航空機の縦軸線の周りに調節可能なプロペラ羽根用のプロペラ羽根軸受装置が明らかにわかり、この軸受装置は実質的に詳細には図示してないプロペラボス1から成り、このボスに、図面には部分的にのみ示す複数のプロペラ羽根2が、羽根保持環の対応する数の羽根受入れ部3に個々に取付けられている。各プロペラ羽根2は、その羽根基部4に一次調節軸受5及び二次調節軸受6を持ち、羽根受入れ部3内に縦軸線の周りに回転可能に支持され、一次調節軸受5及び二次調節軸受6はアンギュラコンタクト転がり軸受として構成され、かつ縦軸線に沿って離れて設けられ、互いに締付けられている。一次調節軸受5は、二次調節軸受6と同様に、上部レース7,9、下部レース8,10、及びこれらのレース7,9と8,10との間に設けられる転動体11,12を持ち、両方の調節軸受5,6は、具体的な構成では、異なる軸受孔を持つアンギュラコンタクト玉軸受により形成される。プロペラ羽根用の調節機構全体を潤滑するため、プロペラボス1に、図面には概略的にしか示してない潤滑油だめ13が設けられ、プロペラの回転の際遠心力により、この潤滑油だめ13から一次調節軸受5及び二次調節軸受6に、潤滑油が供給される。
【0016】
更に図面からわかるように、本発明によれば、各羽根2は、一次調節軸受5及び二次調節軸受6の両方のレース7,9,8,10及び転動体11,12により完全に予め組立てられる構造単位として構成され、プロペラ羽根2の羽根基部4に対する密封片14を持つように構成される上部環状ナット15により、この構造単位が羽根保持環の羽根受入れ部3に潤滑油密にねじ止め可能である。明らかにわかるように、一次調節軸受5及び二次調節軸受6の上部レース7及び9は、その下部レース8及び10の軸線方向片側をそれぞれ包囲する潤滑油制止壁環16,17と結合され、プロペラ羽根の回転の際遠心力によりプロペラボス1内の潤滑油だめ13から上昇する潤滑油の大部分が、これらの潤滑油制止壁環16,17により調節軸受5,6内に蓄えられ、潤滑油だめ13内の所定の充填量に関連して、潤滑油の少量がほぼ圧力なしに上部環状ナット15の密封片14に当接する。
【0017】
プロペラ羽根2及び完全な調節軸受5,6から成る予め組立てられた構造単位は、一次調節軸受5及び二次調節軸受6を、これらの間に設けられる間隔片を介して、下部環状ナット18によりプロペラ羽根2の羽根基部4にある環状段部9へ締付けることによって、形成される。図面に更に示すように、調節軸受5,6の間の間隔片は、一方では一次調節軸受5の下部レース8と二次調節軸受6の上部レース9との間に設けられる内側間隔スリーブ20として、他方では一次調節軸受5の上部レース7と二次調節軸受6の下部レース10との間に設けられる外側間隔環21として構成され、外側間隔環21は、二次調節軸受6の下部レース10と一体の統一構造部分として構成されている。付加的にこの外側間隔環21は、直径を増大された環状突片22を持ち、この環状突片22を介してプロペラ羽根2の羽根基部4が上部環状ナット15によりプロペラボス1の羽根受入れ部3内にねじ止めされる。
【0018】
更に図から明らかなように、一次調節軸受5の下部レース8は、プロペラボス1の縦中心軸線に関して180°回されたT字状輪郭断面を持ち、この輪郭の横脚辺23の内側を、プロペラ羽根の羽根基部4上に載せられている。この横脚辺23の下側24は、同時に下部環状ナット18用の押圧面として構成され、一次調節軸受5の下部レース8の輪郭の横脚辺23の一部は、玉溝として構成される転動体用転動面を形成している。一次調節軸受5の下部レース8の輪郭によりプロペラ羽根2の羽根基部4とこの輪郭の縦脚辺25との間に形成される環状面26は、更に当接面として利用され、一次調節軸受5と二次調節軸受6との間にあって一次調節軸受5の下部レース8に当接する内側間隔スリーブ20が、この当接面で一次調節軸受5に支持される。
【0019】
一次調節軸受5及び二次調節軸受6の上部レース7,9と結合されている潤滑油制止壁環16,17は、なお図面に示されているように、上部レース7,9と一体に構成される角形環を形成し、これらの角形環は、その輪郭の水平脚辺27,29により上部レース7,9の上側の延長部を形成し、その輪郭の垂直脚辺28,30をプロベラボス1の方へ向けられている。一次調節軸受5の潤滑油制止壁環16の垂直脚辺28は、一次調節軸受5の下部レース8の輪郭の縦脚辺25と内側間隔スリーブ20との間に設けられて、潤滑油制止壁環16の内側と下部レース8の縦脚辺25の外側との間、及び間隔スリーブ20の外側と潤滑油制止壁環16の内側との間に残る間隙が、二次調節軸受に対する潤滑油あふれラビリンス31を形成している。同じように潤滑油制止壁環17の垂直脚辺30も、二次調節軸受6の下部レース10と上部環状ナット15との間に設けられているので、この個所においても、潤滑油制止壁環17の内側と下部レース10の外側との間、及び潤滑油制止壁環17の外側と環状ナット15の内側との間に残る間隙が、上部環状間隙15の密封片14に対する潤滑油ラビリンス32を形成している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 本発明により構成されるプロペラ羽根の軸受装置の断面図を示す。
【符号の説明】
【0021】
1 プロベラボス
2 プロベラ羽根
3 羽根受入れ部
4 羽根基部
5 一次調節軸受
6 二次調節軸受
7 5の上部レース
8 5の下部レース
9 6の上部レース
10 6の下部レース
11 5の転動体
12 6の転動体
13 潤滑油だめ
14 密封片
15 上部環状ナット
16 5の潤滑油制止壁環
17 6の潤滑油制止壁環
18 下部環状ナット
19 環状段部
20 内側間隔スリーブ
21 外側間隔環
22 環状突片
23 横脚辺
24 下側
25 縦脚辺
26 環状面
27 16の水平脚辺
28 16の垂直脚辺
29 17の水平脚辺
30 17の垂直脚辺
31 潤滑油あふれラビリンス
32 潤滑油あふれラビリンス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に航空機プロペラの縦軸線の周りに調節可能なプロペラ羽根用のプロペラ羽根軸受装置であって、
プロペラ羽根軸受装置が実質的にプロペラボス(1)から成り、このプロペラボスにおいて複数のプロペラ羽根(2)が、羽根保持環の適当な数の羽根受入れ部(3)内に個々に取付けられ、
各プロペラ羽根(2)が、その羽根基部(4)に、一次調節軸受(5)及び二次調節軸受(6)を持ち、かつ羽根受入れ部(3)内に回転可能に支持され、
一次調節軸受(5)及び二次調節軸受(6)が、縦軸線方向に互いに離れて設けられかつ互いに締付けられるアンギュラコンタクト転がり軸受として構成され、
一次調節軸受(5)及び二次調節軸受(6)が、それぞれ上部レース(7,9)及び下部レース(8,10)とこれらのレース(7,8,9,10)の間に設けられる転動体(11,12)を持ち、
プロペラボス(1)に潤滑油だめ(13)が設けられ、プロペラの回転の際一次軸受(5)及び二次軸受(6)が、潤滑油だめから遠心力により潤滑油を供給される
ものにおいて、
各プロペラ羽根(2)が一次調節軸受(5)及び二次調節軸受(6)の両方のレース(7,9,8,10)及び転動体(11,12)と共にそれぞれ完全に予め組立てられる構造単位として構成され、
この構造単位が、プロペラ羽根(2)の羽根基部(4)の所で密封片(14)を持つように構成される上部環状ナット(15)により、羽根保持環の羽根受入れ部(3)内に潤滑油密にねじ止め可能であり、
一次調節軸受(5)及び二次調節軸受(6)の上部レース(7,9)が、下部レース(8,10)を軸線方向片側で包囲するその潤滑油制止壁環(16,17)とそれぞれ結合され、
これらの潤滑油制止壁環(16,17)により、プロペラ羽根(2)の回転の際遠心力によりプロペラボス(1)の潤滑油だめ(13)から上昇する潤滑油が、大部分調節軸受(5,6)内に貯蔵可能であり、
潤滑油制止壁環(16,17)により潤滑油だめ(13)内の所定の充填量に関連して、潤滑油が少量だけほぼ圧力なしに上部環状ナット(15)の密封片(14)に当接することを特徴とする、プロペラ羽根軸受装置。
【請求項2】
一次調節軸受(5)及び二次調節軸受(6)が、これらの間に設けられる間隔片を介して、下部環状ナット(18)により、プロペラ羽根(2)の羽根基部(4)にある環状段部(19)へ向かって締付けられていることを特徴とする、請求項1に記載のプロペラ羽根軸受装置。
【請求項3】
調節軸受(5,6)の間にある間隔片が、一方では、一次調節軸受(5)の下部レース(8)と二次調節軸受(6)の上部レース(9)との間に設けられる内側間隔スリーブ(20)として、他方では、一次調節軸受(5)の上部レース(7)と二次調節軸受(6)の下部レース(10)との間に設けられる外側間隔環(21)として構成されていることを特徴とする、請求項2に記載のプロペラ羽根軸受装置。
【請求項4】
一次調節軸受(5)と二次調節軸受(6)との間の外側間隔環(21)が、なるべく二次調節軸受(6)の下部レース(10)と一体の統一構造部分として構成され、かつ付加的に直径の大きい環状突片(22)を持ち、この環状突片を介してプロペラ羽根(2)の羽根基部(4)が、上部環状ナット(15)により、プロペラボス(1)の羽根保持環の羽根受入れ部(3)内にねじ止め可能であることを特徴とする、請求項3に記載のプロペラ羽根軸受装置。
【請求項5】
一次調節軸受(5)の下部レース(8)が、なるべくプロペラボス(1)の縦中心軸線に関して180°回されたT字状輪郭断面を持ち、この輪郭の横脚辺(23)の内側をプロペラ羽根(2)の羽根基部(4)上に載せられ、この横脚辺(23)の下側が同時に下部環状ナット(18)用の押圧面として構成されていることを特徴とする、請求項3に記載のプロペラ羽根軸受装置。
【請求項6】
一次調節軸受(5)の下部レース(8)の輪郭の縦脚辺(25)と横脚辺(23)の一部が、下部レース(8)の転動体用転動面を形成し、プロペラ羽根(2)の羽根基部(4)と縦脚辺(25)との間の環状面26が、一次調節軸受(5)と二次調節軸受(6)との間に設けられる内側間隔スリーブ(20)に対する一次調節軸受(5)の当接面として構成されていることを特徴とする、請求項5に記載のプロペラ羽根軸受装置。
【請求項7】
一次調節軸受(5)及び二次調節軸受(6)の上部レース(7,9)と結合されている潤滑油制止壁環(16,17)が、なるべく上部レース(7,9)と一体に構成される角形環として構成され、これらの角形環が、その輪郭の水平脚辺(27,29)により上部レース(7,9)の上側を形成し、その輪郭の垂直脚辺(28,30)をプロペラボス(1)の方へ向けられていることを特徴とする、請求項6に記載のプロペラ羽根軸受装置。
【請求項8】
一次調節軸受(5)の潤滑油制止壁環(16)の垂直脚辺(28)が、一次調節軸受(5)の下部レース(8)の輪郭の縦脚辺(25)と内側間隔スリーブ(20)との間に設けられて、潤滑油制止壁環(16)と下部レース(8)及び内側間隔スリーブ(20)との間に残る間隙が、二次調節軸受(6)に対する潤滑油あふれラビリンス(31)を形成するようにしていることを特徴とする、請求項7に記載のプロペラ羽根軸受装置。
【請求項9】
二次調節軸受(6)の潤滑油制止壁環(17)の垂直脚辺(30)が、二次調節軸受(6)の下部レース(10)と上部環状ナット(15)との間に設けられて、潤滑油制止壁環(17)と下部レース(10)及び上部環状ナット(15)との間に残る間隙が、環状ナット(15)の密封片(14)に対する潤滑油あふれラビリンス(32)を形成するようにしていることを特徴とする、請求項8に記載のプロペラ羽根軸受装置。

【図1】
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【公表番号】特表2008−523322(P2008−523322A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549790(P2007−549790)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【国際出願番号】PCT/DE2005/002248
【国際公開番号】WO2006/063572
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(506420843)シエフレル・コマンデイトゲゼルシヤフト (80)
【Fターム(参考)】