特定の癌の診断及び予後診断
本発明は、特定の癌の同定及び診断に用いられる核酸配列を提供するものである。核酸配列はまた、生物学的試料の発現プロファイルに基づいた対象の予後評価に用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年10月31日に出願された米国仮特許出願第60/983,944号及び2008年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/083,181号に対して、35U.S.C.§119(e)の元で優先権を主張するものであり、これらの特許出願は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれるものである。
【0002】
本発明は、全体として、特定のタイプの癌に関連するマイクロRNA分子、及びこれらに関連するか又はこれらに由来する様々な核酸分子に関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年、マイクロRNA(miR、miRNA)は、幅広い生物学的プロセスに対して著しい影響を有する、重要な新規なクラスの調節RNAとして浮上してきている。これらの小さな(典型的には18〜24ヌクレオチド長)の非コードRNA分子は、RNAの分解を促進すること、mRNAの翻訳を阻害すること、及びまた遺伝子の転写に影響することによって、タンパク質の発現パターンを調節し得る。miRは、成長及び分化、細胞増殖の制御、ストレス応答、並びに代謝などの様々なプロセスにおいて、極めて重要な役割を有する。現在では、約850個の既知のヒトmiRが存在する。多くのmiRの発現は、ヒトにおける多くのタイプの癌において改変していることが明らかにされており、いくつかの症例においては、このような改変が腫瘍の進行の原因となる役割を有し得るという推測を裏付けるものとして、強力な証拠が提示されている。マイクロRNAの発現は、非常に組織特異的であり、腫瘍の組織由来源の同定に有用である。
【0004】
中皮腫は、肺及び心臓などの胸腔の器官並びに消化管及び肝臓などの腹部器官をそれぞれ包む胸膜、心膜、及び腹膜の表面を被覆する中皮において生じる腫瘍である。広範性の胸膜中皮腫の症例において、胸壁の胸膜側への肋間神経の進入により胸痛が生じ、腫瘍の成長及び器官側での胸膜における胸膜液の蓄積により、呼吸器障害及び循環器障害が生じ得る。最終的には、心臓の直接的な浸潤に進行する、隣接する縦隔器官内への増殖、若しくは横隔膜を介した腹腔内への成長が生じるか、又は、さらなるリンパ行性転移若しくは循環による転移の結果、胸腔の外側での成長が生じ得る。
【0005】
臨床的な疾患病期の多くの異なる分類が中皮種に用いられており、疾患病期を分類するために用いられる方法が異なるため、中皮腫についてのこれまでの治療報告は、治療の結果を比較する際に困難を有するものである(Nakano、Respiration、Vol.18、No.9、916〜925ページ、1999)。さらに、悪性中皮腫は、その原因がアスベストへの暴露と関連しており、これはまた、動物実験においても実証されている(Tada、Journal of Clinical and Experimental Medicine(3月追補)、「呼吸器疾患(Respiratory Diseases)」、406〜408ページ、1999)。気道内に吸引されたアスベストは胸膜の真下の位置に到達し、そこで、腫瘍は最終的に、少なくとも約20年間の慢性的な刺激によって成長し、この腫瘍は、胸膜の全表面を覆う薄層に広がる。その結果、悪性中皮腫はアスベスト関連の疾患であると分類されるが、全ての悪性中皮種がアスベストによって生じるわけではなく、十分に記載されている暴露は、全患者の約半数においてしか観察されない。悪性の胸膜中皮腫は、予後が非常に不良であるために治療に対して耐性であり、対応策を迅速に取る必要がある(Nakano、Respiration、Vol.18、No.9、916〜925ページ、1999)。
【0006】
悪性中皮腫の予後は、疾患病期によって影響される。手術、及びアジュバント免疫治療(例えば、インターフェロン又はインターロイキン)は効果的な治療であり得るが、それは初期の病期での診断という稀な場合においてのみである。
【0007】
胸膜又は腹膜における中皮腫の可能性を扱う場合、考慮される差次的な徴候はわずかである。胸膜及び腹膜の両方が、異なる割合で二次性悪性腫瘍と原発性悪性腫瘍とを有し得、したがって、中皮腫と、二次性悪性腫瘍又は異なる由来源からの別の原発性悪性腫瘍との区別が重要である。病理学的診断は、観察者間で著しく変動し得、特異的なマーカーが存在しない場合には、中皮腫を他の上皮癌から同定することは難しい。
【0008】
肺癌は最も一般的な癌の一つであり、世界中で、癌に関連する死亡の主要な原因となっている。科学者により、バイオマーカー、並びに特定の肺癌の診断、治療、及び予後診断におけるそのバイオマーカーの考えられる役割が懸命に研究されている。
【0009】
正確な診断を行うこと、具体的には、肺扁平上皮癌と、限定はしないが肺腺癌などの他の非小細胞肺癌(NSCLC)とを区別することは、治療法の選択に実質的に重要である。重度の又は生命に関わる出血は、ベバシズマブ(アバスチン)療法を受けている肺扁平上皮癌患者に対する黒枠警告である。これまでに、扁平上皮NSCLCを非扁平上皮NSCLCと区別するための、客観的な標準化された試験は存在しない。
【0010】
様々なNSCLCの初期の検出及び正確な診断のためのバイオマーカーの探求はほとんど成功していない。固有の腫瘍マーカーの発見及び特徴付けに、非常に重きが置かれている。しかし、臨床上有用であるための適切な感度又は特異性を有するマーカーは同定されていないが、複数のマーカーの組合せは、診断の精度を上げることが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特定のタイプの癌に関連する特異的な且つ正確なマーカーに対する要求はいまだ満たされていない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、様々な癌の同定、分類、及び診断に用いられる特定の核酸配列を提供するものである。
【0013】
本発明は、特定の癌を分類する方法であって、対象から生物学的試料を得ること、前記試料から、配列番号2、10、11、24、41、1、3〜9、12〜23、25、26、44〜50、55、及び58〜87、その断片、又はそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される核酸配列の発現プロファイルを決定すること、並びに前記発現プロファイルを参照発現プロファイルと比較することを含み、前記比較の結果により前記特定の癌の分類が可能になる方法を提供する。
【0014】
本発明はさらに、中皮腫を診断する方法であって、対象から生物学的試料を得ること、前記試料から、配列番号2、10、11、24、41、1、3〜9、12〜23、25、26、及び58〜72、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される核酸配列の発現プロファイルを決定すること、並びに前記発現プロファイルを参照発現プロファイルと比較することを含み、前記決定された発現プロファイルと前記参照発現プロファイルとの比較により中皮腫の診断が可能になる方法を提供する。
【0015】
本発明はまた、中皮腫と他の癌とを区別する方法であって、対象から生物学的試料を得ること、前記試料において、配列番号2、10、11、24、41、1、3〜9、12〜23、25、26、及び58〜72、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される核酸配列の発現プロファイルを決定すること、並びに前記発現プロファイルを参照発現プロファイルと比較することを含み、前記決定された発現プロファイルと参照発現プロファイルとの比較により、中皮腫及び前記他の癌のうちの一方であることが示される方法を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、中皮種は胸膜中皮腫である。いくつかの実施形態によれば、中皮種は腹膜の中皮腫である。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、他の癌は腺癌である。腺癌は、肺、胃、腎臓、結腸、前立腺、頸部、食道、膵臓、小腸、及び胸部からなる群から選択される器官の腺癌であり得る。いくつかの実施形態によれば、他の癌は、結腸、腎臓、肝臓、膵臓、及び胃からなる群から選択される器官に由来する。腎臓に由来する癌は腎細胞癌であり得、肝臓に由来する癌は肝細胞癌であり得る。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、核酸配列は、配列番号2、10、11、24、及び41、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される。他の実施形態によれば、核酸配列は、配列番号2、10、11、及び41、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される。他の実施形態によれば、核酸配列は、配列番号2、10、24、及び41、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される。
【0019】
さらなる実施形態によれば、他の癌は腺癌であり、核酸配列は、配列番号1〜22、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号1、2、4〜9、11〜14、及び16〜22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、腺癌であることを示す。他の実施形態によれば、他の癌は腺癌であり、核酸配列は、配列番号1〜22、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号3、10、及び15、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に低いことが、腺癌であることを示す。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、他の癌は、結腸、腎臓、肝臓、膵臓、及び胃からなる群から選択される器官に由来する癌であり、核酸配列は、配列番号1〜7、9〜20、及び22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号1、2、4〜7、11〜14、及び16〜20、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、結腸、腎臓、肝臓、膵臓、及び胃からなる群から選択される器官に由来する癌であることを示す。いくつかの実施形態によれば、核酸配列は、配列番号1〜7、9〜20、及び22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号3、10、及び15、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に低いことが、結腸、腎臓、肝臓、膵臓、及び胃からなる群から選択される器官に由来する癌であることを示す。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、他の癌は肺癌であり、核酸配列は、配列番号1、3、5〜13、15、及び18〜22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号1、5〜9、11〜14、及び18〜22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、肺癌であることを示す。他の実施形態によれば、他の癌は肺癌であり、核酸配列は、配列番号1、3、5〜13、15、及び18〜22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号3、10、及び15、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に低いことが、肺癌であることを示す。肺癌は、肺扁平上皮細胞癌、肺未分化小細胞癌、肺未分化大細胞癌、肺腺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺カルチノイド、及び神経内分泌大細胞癌からなる群から選択され得る。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、他の癌は肝臓癌であり、核酸配列は、配列番号2、14、及び23〜25、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、前記核酸配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、肝臓癌であることを示す。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、生物学的試料は、体液、細胞系、及び組織試料からなる群から選択される。さらなる実施形態によれば、組織は、新鮮組織、冷凍組織、固定組織、ワックス包埋組織、又はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織である。いくつかの実施形態によれば、生物学的試料は、原発不明癌(CUP)、原発性癌、又は転移性癌の対象から得られる。さらなる実施形態によれば、本方法は、分類子アルゴリズムをさらに含む。分類子は、決定木分類子、ロジスティック回帰分類子、最近傍分類子、ニューラルネットワーク分類子、混合ガウスモデル(GMM)、及びサポートベクターマシン(SVM)分類子からなる群から選択され得る。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、核酸配列の発現プロファイルは、核酸のハイブリダイゼーション及び核酸増幅からなる群から選択される方法によって決定される。いくつかの実施形態によれば、核酸のハイブリダイゼーションは、固相核酸バイオチップアレイを用いて、又はin situでのハイブリダイゼーションにおいて実施される。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、核酸増幅の方法はリアルタイムPCRである。リアルタイムPCR法は、フォワードプライマー及びリバースプライマーを含み得る。いくつかの実施形態によれば、フォワードプライマーは、配列番号27、29、31、33、35、37、及び39、並びにそれと少なくとも約80%同一である配列からなる群から選択される配列を含む。さらなる実施形態によれば、リアルタイムPCR法はプローブをさらに含む。いくつかの実施形態によれば、プローブは、配列番号1、2、10、11、23、24、及び41から選択される配列に相補的な配列、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む。さらなる実施形態によれば、プローブは、配列番号28、30、32、34、36、38、40、及び43、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む。
【0026】
本発明により提供されるさらなる態様は、中皮腫と他の癌とを区別するためのキットであり、このキットは、配列番号1、2、10、11、23、24、及び41から選択される配列に相補的な配列、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含むプローブを含む。別の実施形態によれば、プローブは、配列番号28、30、32、34、36、38、40、及び43、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態において、他の癌は腺癌である。他の実施形態において、他の癌は、結腸、腎臓、肝臓、膵臓、胃、及び肺からなる群から選択される器官に由来する。
【0027】
本発明はさらに、対象から生物学的試料を得ること、前記試料において、配列番号8、21、25、44〜50、及び55、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される核酸配列の発現プロファイルを決定すること、並びに前記発現プロファイルを参照発現プロファイルと比較することを含む、扁平非小細胞肺癌(NSCLC)と非扁平NSCLCとを区別する方法であって、前記決定された発現プロファイルと参照発現プロファイルとの比較により、扁平NSCLC及び非扁平NSCLCのうちの一方であることを示す方法を提供する。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、配列番号8及び21、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、非扁平NSCLCであることを示す。他の実施形態によれば、配列番号49〜50、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に低いことが、非扁平NSCLCであることを示す。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、非扁平NSCLCは腺癌であり、配列番号8、21、25、44〜48、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、腺癌であることを示す。他の実施形態によれば、非扁平NSCLCは腺癌であり、配列番号49〜50、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、扁平NSCLCであることを示す。腺癌は、肺、胃、腎臓、結腸、前立腺、頸部、食道、膵臓、小腸、及び胸部からなる群から選択される器官の腺癌であり得る。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、生物学的試料は、体液、細胞系、及び組織試料からなる群から選択される。さらなる実施形態によれば、組織は、新鮮組織、冷凍組織、固定組織、ワックス包埋組織、又はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織である。いくつかの実施形態によれば、生物学的試料は、原発不明癌(CUP)、原発性癌、又は転移性癌の対象から得られる。さらなる実施形態によれば、本方法は、分類子アルゴリズムをさらに含む。分類子は、決定木分類子、ロジスティック回帰分類子、最近傍分類子、ニューラルネットワーク分類子、混合ガウスモデル(GMM)、及びサポートベクターマシン(SVM)分類子からなる群から選択され得る。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、核酸配列の発現プロファイルは、核酸のハイブリダイゼーション及び核酸増幅からなる群から選択される方法によって決定される。いくつかの実施形態によれば、核酸のハイブリダイゼーションは、固相核酸バイオチップアレイを用いて、又はin situでのハイブリダイゼーションにおいて実施される。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、核酸増幅の方法はリアルタイムPCRである。リアルタイムPCR法は、フォワードプライマー及びリバースプライマーを含み得る。いくつかの実施形態によれば、フォワードプライマーは、配列番号39、51、53、及び56、並びにそれと少なくとも約80%同一である配列からなる群から選択される配列を含む。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、リアルタイムPCR法はプローブをさらに含む。さらなる実施形態によれば、プローブは、配列番号8、41、49、55から選択される配列に相補的な配列、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む。さらなる実施形態によれば、プローブは、配列番号40、52、54、及び57、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む。
【0034】
提供されるさらなる態様は、扁平NSCLCと非扁平NSCLCとを区別するためのキットであり、このキットは、配列番号8、41、49、55から選択される配列に相補的な配列、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含むプローブを含む。別の実施形態によれば、このキットは、配列番号40、52、54、及び57、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含むプローブを含む。
【0035】
本発明のこれらの実施形態及び他の実施形態は、以下の図面、記載、及び特許請求の範囲と組み合わせて明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】肺胸膜中皮腫対腺癌のマイクロRNAアレイ結果(log2(蛍光)において)の分析を示す図である。x軸は肺胸膜中皮腫試料7個の正規化発現レベルの平均を示し、y軸は様々な由来の腺癌試料85個の正規化発現レベルの平均を示す。図のように、腺癌においてより高い発現レベルを有するmiRは、hsa−miR−141(配列番号1)、hsa−miR−192(配列番号2)、hsa−miR−194(配列番号4)、hsa−miR−200a(配列番号5)、hsa−miR−200b(配列番号6)、hsa−miR−200c(配列番号11)、hsa−miR−375(配列番号8)及びhsa−miR−429(配列番号9)を含む。
【図2】ロジスティック回帰を使用して4種のmiR:hsa−miR−200a(配列番号5)、hsa−miR−200b(配列番号6)、hsa−miR−200c(配列番号11)、及びhsa−miR−141(配列番号1)の発現レベルに基づいて肺胸膜中皮腫(丸)と腺癌(四角)とを識別するために使用される例示的分類子を示すグラフである。 図2Aは、4種のmiRNAの発現レベルシグナル(マイクロアレイによる)の対数において実施されたロジスティック回帰に基づく確率関数(y軸)を示す。試料(x軸)はそれらの確率スコアによって選別される。 図2Bは、4種のmiRNAのロジスティック回帰に基づく確率関数(y軸)を示す。各群の試料はそれらの確率スコアによって個々に選別される(x軸)。 図2Cは、確率関数の値(X軸)の各範囲についての出現数(Y軸)を示す各群中の確率関数の値のヒストグラムを示す。 図2Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示す。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図3】中皮腫対、大腸、腎臓、肝臓、膵臓及び胃からなる群から選択された器官に由来する癌のマイクロRNAアレイ結果(log2(蛍光)において)の分析を示す図である。x軸は肺胸膜中皮腫試料7個の正規化発現レベルの平均を示し、y軸は大腸、腎臓、肝臓、膵臓及び胃からなる群から選択された器官に由来する癌からの試料の正規化発現レベルの平均を示す。図のように、肺胸膜中皮腫において有意に高い発現を有するmiRはhsa−miR−193a(配列番号3)を含み、大腸、腎臓、肝臓、膵臓及び胃からなる群から選択された器官に由来する癌からの試料においてより高い発現レベルを有するmiRは、hsa−miR−141(配列番号1)、hsa−miR−192(配列番号2)、hsa−miR−194(配列番号4)、hsa−miR−200a(配列番号5)、hsa−miR−200b(配列番号6)、hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−429(配列番号9)を含む。
【図4】ロジスティック回帰を使用して2種のmiR:hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−194(配列番号4)の発現レベルに基づいて肺胸膜中皮腫(丸)と大腸、腎臓、肝臓、膵臓及び胃からなる群から選択された器官に由来する癌(四角)とを識別するために使用される例示的分類子を示すグラフである。 図4Aは、2種のmiRNAの発現レベルシグナル(マイクロアレイによる)の対数において実施されたロジスティック回帰に基づく確率関数(y軸)を示す。試料(x軸)はそれらの確率スコアによって選別される。 図4Bは、2種のmiRNAのロジスティック回帰に基づく確率関数(y軸)を示す。各群の試料はそれらの確率スコアによって個々に選別される(x軸)。 図4Cは、hsa−miR−194(配列番号4)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−200c(配列番号11)のmiRNAマイクロアレイ(x軸)を示す。 図4Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示す。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図5】肺胸膜中皮腫対腺癌のマイクロRNAアレイ結果(log2(蛍光)において)の分析を示す図である。x軸は肺胸膜中皮腫試料の正規化発現レベルの平均を示し、y軸は様々な由来の腺癌試料の正規化発現レベルの平均を示す。図のように、肺胸膜中皮腫において有意に高い発現を有するmiRは、hsa−miR−193a(配列番号3)を含み、腺癌においてより高い発現レベルを有するmiRは、hsa−miR−141(配列番号1)、hsa−miR−200a(配列番号5)、hsa−miR−200b(配列番号6)、hsa−miR−200c(配列番号11)、hsa−miR−375(配列番号8)及びhsa−miR−429(配列番号9)を含む。
【図6】ロジスティック回帰を使用して2種のmiR:hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−141(配列番号1)の発現レベルに基づいて肺胸膜中皮腫(丸)と肺腫瘍(四角)とを識別するために使用される例示的分類子を示すグラフである。 図6Aは、2種のmiRNAの発現レベルシグナル(マイクロアレイによる)の対数において実施されたロジスティック回帰に基づく確率関数(y軸)を示す。試料(x軸)はそれらの確率スコアによって選別される。 図6Bは、2種のmiRNAのロジスティック回帰に基づく確率関数(y軸)を示す。各群の試料はそれらの確率スコアによって個々に選別される(x軸)。 図6Cは、hsa−miR−141(配列番号1)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−200c(配列番号11)のmiRNAマイクロアレイ(x軸)を示す。 図6Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示す。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図7】ロジスティック回帰を使用して2種のmiR:hsa−miR−193a(配列番号3)及びhsa−miR−200a(配列番号5)の発現レベルに基づいて肺胸膜中皮腫と肺腫瘍とを識別するために使用される例示的分類子を示すグラフである。 図7Aは、2種のmiRNAの発現レベルシグナル(マイクロアレイによる)の対数において実施されたロジスティック回帰に基づく確率関数(y軸)を示す。試料(x軸)はそれらの確率スコアによって選別される。 図7Bは、2種のmiRNAのロジスティック回帰に基づく確率関数(y軸)を示す。各群の試料はそれらの確率スコアによって個々に選別される(x軸)。 図7Cは、hsa−miR−200a(配列番号5)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−193a(配列番号3)のmiRNAマイクロアレイ(x軸)を示す。 図7Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示す。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図8】線形結合を使用し、40試料で2種のmiR:hsa−miR−141(配列番号1)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)に基づくqRT−PCRを使用して肺胸膜中皮腫試料(丸)と肺腺癌試料(四角)とを識別するために使用される例示的分類子を示すグラフである。 図8Aは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。試料(x軸)はそれらの線形結合スコアによって選別される。 図8Bは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。各群の試料はそれらの線形結合スコアによって個々に選別される(x軸)。 図8Cは、hsa−miR−193a−3p(配列番号10)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−141(配列番号1)のmiRNA正規化Ct(x軸)を示す。 図8Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示し、ここでAUC=1である。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図9】線形結合を使用し、25試料で2種のmiR:hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−122a(配列番号23)に基づくqRT−PCRを使用して肺胸膜中皮腫試料(丸)と肝臓試料(四角)とを識別するために使用される例示的分類子を示すグラフである。 図9Aは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。試料(x軸)はそれらの線形結合スコアによって選別される。 図9Bは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。各群の試料はそれらの線形結合スコアによって個々に選別される(x軸)。 図9Cは、hsa−miR−122a(配列番号23)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−192(配列番号2)のmiRNA正規化Ct(x軸)を示す。 図9Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示し、ここでAUC=1である。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図10】線形結合を使用し、30試料で2種のmiR:hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)に基づくqRT−PCRを使用して肺胸膜中皮腫試料(丸)と膵臓又は大腸のいずれか由来の試料(四角)とを識別するために使用される例示的分類子を示すグラフである。 図10Aは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。試料(x軸)はそれらの線形結合スコアによって選別される。 図10Bは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。各群の試料はそれらの線形結合スコアによって個々に選別される(x軸)。 図10Cは、hsa−miR−193a−3p(配列番号10)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−192(配列番号2)のmiRNA正規化Ct(x軸)を示す。 図10Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示し、ここでAUC=1である。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図11】線形結合を使用し、25試料で2種のmiR:hsa−miR−141(配列番号1)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)に基づくqRT−PCRを使用して肺胸膜中皮腫試料(丸)と膀胱試料(四角)とを識別するために使用される例示的分類子を示すグラフである。 図11Aは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。試料(x軸)はそれらの線形結合スコアによって選別される。 図11Bは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。各群の試料はそれらの線形結合スコアによって個々に選別される(x軸)。 図11Cは、hsa−miR−193a−3p(配列番号10)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−141(配列番号1)のmiRNA正規化Ct(x軸)を示す。 図11Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示し、ここでAUC=1である。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図12】線形結合を使用し、25試料で2種のmiR:hsa−miR−141(配列番号1)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)に基づくqRT−PCRを使用して肺胸膜中皮腫試料(丸)と卵巣及び乳房の試料(四角)とを識別するために使用される例示的分類子を示すグラフである。 図12Aは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。試料(x軸)はそれらの線形結合スコアによって選別される。 図12Bは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。各群の試料はそれらの線形結合スコア(x軸)によって個々に選別される。 図12Cは、hsa−miR−193a−3p(配列番号10)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−141(配列番号1)のmiRNA正規化Ct(x軸)を示す。 図12Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示し、ここでAUC=1である。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図13】線形結合を使用し、26試料で2種のmiR:hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−122a(配列番号23)に基づくqRT−PCRを使用して肺胸膜中皮腫試料(丸)と腎臓試料(四角)とを識別するために使用される例示的分類子を示すグラフである。 図13Aは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。試料(x軸)はそれらの線形結合スコアによって選別される。 図13Bは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。各群の試料はそれらの線形結合スコア(x軸)によって個々に選別される。 図13Cは、hsa−miR−122a(配列番号23)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−192(配列番号2)のmiRNA正規化Ct(x軸)を示す。 図13Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示し、ここでAUC=0.915である。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図14】肺胸膜中皮腫試料(丸)と以下の型、肝臓、腎臓、膵臓、大腸、膀胱、卵巣、乳房及び肺の腫瘍試料(四角)とを識別するために使用する2ステップ例示的分類子を示す図である。hsa−miR−122(配列番号24)の正規化Ct(y軸)及びhsa−miR−192(配列番号2)の正規化Ct(x軸)を使用する分類子の第1ステップを示す。実線は、それより低い場合に試料が「非中皮腫」と同定された閾値を表す。点線は、低い信頼区間を表す。hsa−miR−122(配列番号24)の正規化Ctが5.5(点線最低値)より低い、又はhsa−miR−192(配列番号2)の正規化Ctが7(点線最左値)より低い17試料は高い信頼度を有して非中皮腫とみなされた。
【図15】肺胸膜中皮腫試料(丸)と以下の型、肝臓、腎臓、膵臓、大腸、膀胱、卵巣、乳房及び肺の腫瘍試料(四角)とを識別するために使用する2ステップ例示的分類子を示す図である。試料62個についてのhsa−miR−200c(配列番号11)(x軸)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)(y軸)の線形結合を使用する分類子の第2ステップを示す。実線は分類子を表す。点線は低い信頼区間を表す。
【図16】肺胸膜中皮腫試料(丸)と以下の型、肝臓、腎臓、膵臓、大腸、膀胱、卵巣、乳房及び肺の腫瘍試料(四角)とを識別するために使用する2ステップ例示的分類子を示す図である。試料29個についてhsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−122a(配列番号23)の線形結合を使用する分類子の第1ステップを示す。2種のmiRNAの組合せにおいて低くスコア化された試料は「非中皮腫」と同定された。他の試料は次のステップを継続した。 図16Aは、2種類のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。試料(x軸)は、それらの線形結合スコアによって選別される。 図16Bは、2種類のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。各群の試料はそれらの線形結合スコア(x軸)によって個々に選別される。感度:100%、特異性:16%。 図16Cは、hsa−miR−122a(配列番号23)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−192(配列番号2)の正規化Ct(x軸)を示す。 図16Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示し、ここでAUC=0.69298である。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図17】肺胸膜中皮腫試料(丸)と以下の型、肝臓、腎臓、膵臓、大腸、膀胱、卵巣、乳房及び肺の腫瘍試料(四角)とを識別するために使用する2ステップ例示的分類子を示す図である。試料65個についてhsa−miR−141(配列番号1)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)の線形結合を使用する分類子の第2ステップを示す。2種のmiRNAの組合せにおいて低くスコア化された試料は「非中皮腫」と同定された。2種のmiRNAの組合せにおいて高くスコア化された試料は「中皮腫」と同定された。 図17Aは、2種類のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。試料(x軸)は、それらの線形結合スコアによって選別される。 図17Bは、2種類のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。各群の試料はそれらの線形結合スコアによって個々に選別される(x軸)。 図17Cは、hsa−miR−193a−3p(配列番号10)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−141(配列番号1)の正規化Ct(x軸)を示す。 図17Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示し、ここでAUC=0.99468である。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図18】悪性胸膜中皮腫(MPM)、腺癌及び腎細胞癌(RCC)におけるマイクロRNA発現レベルの比較を示すグラフである。MPM試料7個での各マイクロRNAの正規化し反転した蛍光値のメジアン(X軸)を、腺癌試料81個での(図18AのY軸)、及びRCC試料16個での(図18BのY軸)これらのマイクロRNAの蛍光値のメジアンに対してプロットする。薄い×印は、対照プローブ及び両群において発現レベルが背景レベル(シグナルのメジアン<800)であったマイクロRNAを示す。少なくとも1群において背景レベルを超えるシグナルを有するマイクロRNA(濃い×印)は対応のない両側t検定によって統計的差異について検査された。丸印は、0.2の誤検出率(FDR)で発現値における統計的有意差を有するマイクロRNAを示す(p値はそれぞれ0.05及び0.04未満)。四角は、hsa−miR−200c(配列番号11)、hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)の発現レベルを強調する。 図18Cは、hsa−miR−200c(配列番号11)、hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)のMPM、腺癌及びRCC試料における発現レベルのボックスプロットであり、メジアン(横線)、25から75パーセンタイル(ボックス)及びデータの範囲(「ウィスカー」)を示す。マイクロアレイによる正規化された蛍光シグナルのlog2を単位とする。 図18Dは、MPM試料22個、腺癌試料39個及びRCC試料4個においてqRT−PCRによって測定されたこれらのマイクロRNAの発現レベル(正規化Ct)のボックスプロットである。
【図19】マイクロRNAの発現レベルを使用するHCC(肝細胞癌、丸印)、RCC(四角)及び腺癌(ひし形)からの中皮腫(星印)の鑑別診断を示すグラフである。hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−122(配列番号24)(図19A、図19C)並びにhsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)(図19B、図19D)の発現レベル(正規化し反転したCt)は、MPM試料20個、RCC試料10個、HCC試料5個及び腺癌44個(内10個は大腸又は膵臓組織由来)の訓練セットにおいて(図19A、図19B)、並びにMPM試料12個、RCC試料8個(5個は新規)、HCC試料5個及び腺癌42個(内8個は大腸又は膵臓組織由来)の別の盲検テストセットにおいて(図19C、図19D)qRT−PCRを使用して測定された。実線は、hsa−miR−192の発現レベル(図19A及び図19Cでの縦線)及びhsa−miR−200cとhsa−miR−193a−3pとを組合せた発現レベル(図19B及び図19Dでの斜線)の分類閾値を示す。平行する点線は、正規化し反転した1.5Ct単位の不確実性限界を示す。図19A及び図19Cでの横点線は、hsa−miR−122(配列番号24)の発現レベルでの予想される分類閾値を示す。訓練セット中の追加の中皮腫試料2個はhsa−miR−192(配列番号2)のはるかに低い発現(−5及び−5.5の正規化し反転したCt)を有し、最適なスケーリングのためにパネルAから省略された。訓練セットでの追加の腺癌試料1個及びテストセットでの追加の腺癌試料4個は、hsa−miR−193a−3pの低い発現(それぞれ−3.5並びに、−1.3、−4、−5.4及び−5.7の正規化し反転したCt)を有し、最適なスケーリングのためにパネルB及びDから省略された。
【図20】マイクロアレイデータでのmiR発現(蛍光(logスケールで示す))の平均の散布図であり、X軸は腺癌試料(n=60)での発現の平均を示し、Y軸は扁平上皮癌試料(n=62)での発現の平均を示す。丸付きの記号は、hsa−miR−29b(配列番号44)、hsa−miR−30b(配列番号47)、hsa−miR−375(配列番号8)及びhsa−miR−205(配列番号49)を含む、ボンフェローニ法によって決定された有意に差次的に発現されたmiRに関連する。中央の斜線は、非差次的に発現されたmiRNA(腺癌及び扁平上皮癌の試料において同じ発現レベル)について予想される発現を表し、他の斜線は2倍係数線を表す。
【図21】qRT−PCRを使用して、扁平上皮組織像を有する肺非小細胞癌(NSCLC)の試料(丸印)と非扁平上皮組織像を有するNSCLCの試料(四角−腺癌、プラス記号−大細胞癌)とを識別するために使用される例示的分類子を示す図である。Y軸は、hsa−miR−375(配列番号8)のCtでの発現レベルからhsa−miR−205(配列番号49)のCtでの発現レベルを減算することによって得られた値を示す(x軸は試料の実施順である)。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、特定の核酸(配列番号1〜87)を特定の癌の同定、分類、及び診断に用いることができるという発見に基づくものである。
【0038】
本発明は、異なる腫瘍由来源間を区別するために用いることができる、高感度の、特異的な、及び正確な方法を提供するものである。
【0039】
本発明はさらに、中皮腫と、限定はしないが腺癌、肺腫瘍、並びに結腸、腎臓、肝臓、膵臓、及び胃からなる群から選択される器官に由来する癌からの腫瘍を含む、他のタイプの癌とを区別するために用いることができる方法、さらにまた非小細胞肺癌(NSCLC)と非扁平上皮NSCLCとを区別する方法を提供する。
【0040】
悪性胸膜中皮腫
悪性胸膜中皮腫(MPM)は、多くの考えられる分子標的及び遺伝子標的が発見されているにもかかわらず効果的な治療法がいまだ存在しない、比較的稀な進行性の腫瘍である。充実性の、局所的に進行性の胸膜の腫瘍が、肺実質を覆い、その後そこに浸潤し、それが、生存率が非常に低い重度の臨床的に症候性の疾患をもたらす。この悪性腫瘍の成長についての多くの危険因子が記載されており、それらのうち最も主要なものはアスベストへの暴露、及びおそらくSV40ウイルスへの感染である。症例の遺伝的感受性及び家族集積性も観察されてきており、放射線及び慢性的な感染への暴露もまた危険因子であると考えられる。しかし、MPMが診断される、後期の疾患病期、及び暴露の一部と疾患の診断との間に存在する長期の潜在期間により、疾患の病因に対するこれらの危険因子のそれぞれ及びその下流の分子効果の影響を総合的に評価することが困難になっている。
【0041】
中皮腫の発生は、西ヨーロッパ及び北アメリカの全ての先進国において、そしておそらく後進国においても、近年明らかに増加しており、そのため、今後数年間における、この疾患を発症するであろう患者の推定数もまた増加している。アスベストへの暴露は依然として、症例数が増加し続けている原因となっている主要な因子である。中皮腫を発症している患者の数が増加し続けていることによってまた、前癌性の変化の初期の診断及び検出のためのより良好な手段を開発する重要性が明らかになっている。効果的な治療法はいまだ存在しないが、初期の病期の腫瘍を有する患者の予後が非常に向上したことは、初期の検出が生存率を顕著に向上させ得ること、及びさらに腫瘍の成長を予防し得ることを強く示唆するものである。
【0042】
MPMという用語は、異なる細胞構成を有する、異なるタイプの腫瘍、すなわち、上皮型、肉腫型、及び混合型を含むため、誤解を招くことが多い。中皮腫の大規模な研究において、上皮型中皮腫が最も一般的なタイプ(61.5%)であり、次いで混合型/二相性のタイプ(22%)、そして肉腫型(16.5%)であった。肉腫型の中皮腫と上皮型の中皮腫との区別は比較的容易であるが、上皮型のサブタイプ(混合型を含む)と、胸膜を伴う肺の腺癌との区別は容易及び単純ではないことが多い。70%を超える原発性肺癌は最終的には胸膜を伴い、多くの他の悪性腫瘍が肺及び胸膜に転移するため、悪性中皮腫の正確な診断及び他の癌からのその区別が非常に重要であることは明らかである。中皮腫の診断、並びに肺及び胸膜の他の癌からのその区別が、病理学者間において観察者間で変動するため、また、中皮腫の診断のための単一の特異的で信頼性のあるバイオマーカーが存在しないため、病理学者が優れた確信をもってこの区別を行うことを支援する、信頼性のある客観的なアッセイが必要とされていることは明らかである。
【0043】
胸膜の病変の病理学的な評価には、区別するのが困難であり得る様々な新生物の症状及び反応性の症状が含まれる。最も一般的な診断上の問題は、上皮の悪性中皮腫と腺癌との区別、及び反応性の上皮性又は線維性の増殖と上皮型中皮腫又は肉腫様の中皮腫との区別を伴う。これは、胸膜の浸出液又は小組織の試料のみが病理学的な評価に利用可能である場合にさらに困難となる。過去20年間にわたり、免疫組織化学が、中皮腫の診断のための信頼性のある客観的なツールの探求において最も広く研究された技術となっている。この集中的な取り組みにもかかわらず、悪性中皮腫又は転移性腫瘍の完全に決定的である単一の免疫染色は存在しない。さらに、文献に記録されている、及び市販されているほとんどの抗体では、これらの各抗体の診断上の価値及び免疫組織化学的パネルにおけるこれらの抗体の組合せの価値は、依然として議論中である。悪性中皮腫の全体的な発生が少ないため、多くの病理学者がこの腫瘍の組織学について十分に詳しくはなく、したがってほぼ全面的に免疫診断に依存するようになっており、そのため診断における不正確性が増しているという事実もある。
【0044】
免疫組織化学が進歩しているにもかかわらず、電子顕微鏡法は依然として、漿膜表面に影響する他の腫瘍から中皮種を差次的に診断するための「優れた基準」である。電子顕微鏡法は上皮の変異体の診断に最も寄与してきており、肉腫様の中皮種の同定においてはほとんど有用ではない。しかし、EMの診断に利用可能な組織の量が非常に限られており、組織の小片の採取には試料採取上の非常に大きな誤りが伴うため、EMの診断の必要性は、全ての通常の組織学的及び免疫組織化学的な評価が使い尽くされた後に初めて生じるものである。さらにその場合にも、正確な診断を得るための落とし穴が多い。
【0045】
マイクロアレイ、及び減法的な相補的DNA(cDNA)のハイブリダイゼーションにより決定される、悪性中皮種と正常な胸膜との間の差次的な遺伝子発現は、中皮種に関連するいくつかの遺伝子を示し得、腫瘍に対する潜在的な特徴を構成し得る。したがって、c−myc、fra−1、及びEGFRの上方調節は、発癌の異なる病期で実証された。中皮種において見られるオステオポンチン、ジキシン、及びインテグリン結合キナーゼの上方調節、並びにその後のCD44及びc−metの上方調節もまた、それらを潜在的な腫瘍マーカーとして適用することを可能にしており、そのいくつかは血清においても検出され得る。MPMにおける遺伝子発現プロファイルが、胸部の手術を受けた別個の患者群間において進行までの時間及び生存パターンを予測し得るということを示すこともまた可能となっている。驚くべきことに、腫瘍抑制遺伝子の従来のメンバーにおける頻繁な変化は、このような状況においては見られていない。p53突然変異がMPM細胞系において見られているが、一般的な意味では、MPMの発症におけるp53突然変異の影響はわずかなものである。しかし、pRb抑制遺伝子の活性に密接に関連しているp16/CDKN2Aのホモ接合性欠失は、70%を超える悪性中皮種において報告されており、予後の不良と関連している。
【0046】
マイクロRNA(miR、miRNA)及びそのプロセシング
miRNAをコードしている遺伝子は転写され、pri−miRNAとして知られているmiRNAの最初の転写産物の生産をもたらし得る。pri−miRNAは、ステム及びループを有するヘアピンを含み得る。ヘアピンのステムはミスマッチした塩基を含み得る。pri−miRNAは、いくつかのポリシストロニック構造のヘアピンを含み得る。
【0047】
ヘアピン構造は、RNアーゼIIIエンドヌクレアーゼであるDroshaによって認識され得る。Droshaはpri−miRNAの末端ループを認識し得、約2つのらせん曲部をステムに切断して、pre−miRNAとして知られている60〜70ntの前駆体を生じさせる。Droshaは、RNアーゼIIIエンドヌクレアーゼに典型的な互い違いの切断でpri−miRNAを切断して、5’リン酸及び約2ヌクレオチドの3’オーバーハングを有するpre−miRNAステムループを生じさせ得る。Droshaの切断部位を越えて伸びているステム(約10ヌクレオチド)の約1個のらせん曲部は、効率的なプロセシングに必須であり得る。pre−miRNAはその後、Ran−GTP及び搬出受容体Ex−portin−5により、核から細胞質へ活性的に輸送され得る。
【0048】
pre−miRNAは、同様にRNアーゼIIIエンドヌクレアーゼであるDicerによって認識され得る。Dicerはpre−miRNAの二本鎖ステムを認識し得る。Dicerは、さらなる5’リン酸及び約2ヌクレオチドの3’オーバーハングを残して、末端ループの2つのらせん曲部をステムループの塩基から切り離し得る。ミスマッチを有し得る、得られたsiRNA様二本鎖は、成熟miRNAと、miRNA*として知られている同様のサイズの断片とを含む。miRNA及びmiRNA*は、pri−miRNA及びpre−miRNAの対向するアームに由来し得る。miRNA*配列は、クローニングされたmiRNAのライブラリーにおいて見ることができるが、典型的にはその頻度はmiRNAよりも低い。
【0049】
miRNA*を有する二本鎖種として最初は存在するが、miRNAは最終的には、一本鎖RNAとして、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)として知られているリボ核タンパク質複合体内に組み込まれ得る。様々なタンパク質がRISCを形成し得、RISCは、miRNA/miRNA*二本鎖についての特異性、標的遺伝子の結合部位、miRNAの活性(抑制又は活性化)における多様性をもたらし得、miRNA/miRNA*二本鎖のいずれかの鎖がRISC内に取り込まれる。
【0050】
miRNA:miRNA*二本鎖のmiRNA鎖がRISCに取り込まれる場合、miRNA*は除去及び分解され得る。RISC内に取り込まれたmiRNA:miRNA*二本鎖の鎖は、5’末端があまり強固に対合していない鎖であり得る。miRNA:miRNA*の両端がほぼ等しい5’の対合を有する場合、miRNA及びmiRNA*の両方が遺伝子サイレンシング活性を有し得る。
【0051】
RISCは、miRNAとmRNAとの間の高レベルの相補性に基づいて、特にmiRNAのヌクレオチド2〜7によって、標的核酸を同定し得る。miRNAとその標的との間の相互作用がmiRNAの全長にわたって存在していたケースは、動物において1つだけ報告されている。これはmiR−196及びHox B8について示されており、また、miR−196がHox B8のmRNAの切断を仲介することもさらに示された(Yektaら、2004、Science、304〜594)。或いは、このような相互作用は植物においてのみ知られている(Bartel及びBartel、2003、Plant Physiol、132〜709)。
【0052】
多くの研究が、翻訳を効果的に阻害するために、miRNAとそのmRNA標的の間での塩基対合の必要性に焦点を当てている(Bartel、2004、Cell、116〜281により概説されている)。哺乳動物細胞において、miRNAの最初の8ヌクレオチドが重要であり得る(Doench及びSharp、2004、GenesDev、2004〜504)。しかし、マイクロRNAの他の部分もまた、mRNAの結合に関与している可能性がある。さらに、3’での十分な塩基対合は、5’での不十分な対合を補い得る(Brenneckeら、2005、PLoS 3−e85)。全ゲノムについてmiRNAの結合を分析する、計算による研究により、標的の結合における、miRNAの5’での塩基2〜7についての特定の役割が示唆されているが、通常は「A」であるとされる最初のヌクレオチドの役割もまた認識された(Lewisら、2005、Cell、120〜15)。同様に、ヌクレオチド1〜7又は2〜8も、標的を同定及び認証するために、Krekら(2005、Nat Genet、37〜495)によって用いられた。
【0053】
mRNAにおける標的部位は、5’UTR、3’UTR、又はコード領域にあり得る。興味深いことに、複数のmiRNAが、同一の又は複数の部位を認識することによって、同一のmRNA標的を調節し得る。最も一般的に同定される標的において複数のmiRNAの結合部位が存在することは、複数のRISCの共同作用が最も効率的な翻訳阻害をもたらすことを示し得る。
【0054】
miRNAは、miRNAの切断又は翻訳抑制という2つのメカニズムのいずれかによって、RISCに遺伝子発現を下方調節するよう働きかけ得る。miRNAは、mRNAがmiRNAに対してある程度の相補性を有している場合に、mRNAの切断を特定し得る。miRNAが切断を導く場合、切断は、miRNAの残基10及び11に対合しているヌクレオチドの間であり得る。或いは、miRNAがmRNAに対して必須な程度の相補性を有していない場合、miRNAは翻訳を抑制し得る。動物はmiRNAと結合部位との間の相補性の程度が低い可能性があるため、翻訳の抑制は、動物においてさらに多く見ることができる。
【0055】
miRNAとmiRNA*とのあらゆる対の5’末端及び3’末端において多様性があり得ることに注意されたい。この多様性は、切断部位に関するDrosha及びDicerの酵素的プロセシングにおける多様性に起因し得る。miRNA及びmiRNA*の5’末端及び3’末端の多様性はまた、pri−miRNA及びpre−miRNAのステム構造におけるミスマッチに起因し得る。ステム鎖のミスマッチにより、異なるヘアピン構造の集団が生じ得る。ステム構造における多様性により、Drosha及びDicerによる切断生成物における多様性も生じ得る。
【0056】
核酸
核酸が本明細書において提供される。核酸は、配列番号1〜87の配列又はその変異体を含み得る。変異体は、参照ヌクレオチド配列の相補体であり得る。変異体はまた、参照ヌクレオチド配列と実質的に同一であるヌクレオチド配列又はその相補体であり得る。変異体はまた、ストリンジェントな条件下で参照ヌクレオチド配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列、その相補体、又はそれと実質的に同一であるヌクレオチド配列であり得る。
【0057】
核酸は、10〜250ヌクレオチド長を有し得る。核酸は、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、又は250ヌクレオチド長を有し得る。核酸は合成し得るか、又は本明細書において記載される合成遺伝子を用いて細胞内で(インビトロ若しくはインビボで)発現させることができる。核酸は一本鎖分子として合成することができ、実質的に相補的な核酸とハイブリダイズして二本鎖を形成させることができる。核酸は、一本鎖若しくは二本鎖の形態で細胞、組織、若しくは器官に導入することができるか、又は参照することにより組み込まれる米国特許第6,506,559号に記載されているものを含む当業者に周知の方法を用いて、合成遺伝子によって発現され得る。
【0058】
核酸複合体
核酸はさらに、ペプチド、タンパク質、RNA−DNAハイブリッド、抗体、抗体断片、Fab断片、及びアプタマーの1つ又は複数を含み得る。
【0059】
pri−miRNA
核酸はpri−miRNAの配列又はその変異体を含み得る。pri−miRNAの配列は、45〜30000、50〜25000、100〜20000、1000〜1500、又は80〜100ヌクレオチドを含み得る。pri−miRNAの配列は、本明細書において説明するpre−miRNA、miRNA、及びmiRNA*、並びにその変異体を含み得る。pri−miRNAの配列は、配列番号1〜22、44〜50、55、及び58〜87の配列又はその変異体を含み得る。
【0060】
pri−miRNAはヘアピン構造を形成し得る。ヘアピンは、実質的に相補的な第1及び第2の核酸配列を含み得る。第1及び第2の核酸配列は、37〜50ヌクレオチドであり得る。第1及び第2の核酸配列は、8〜12ヌクレオチドの第3の配列によって隔てられ得る。ヘアピン構造は、その内容が本明細書に組み込まれるHofackerら、Monatshefte f.Chemie、125:167〜188(1994)に記載されている、既定のパラメータを用いたViennaアルゴリズムによって計算された、−25Kcal/mol未満の自由エネルギーを有し得る。ヘアピンは、4〜20、8〜12、又は10ヌクレオチドの末端ループを含み得る。pri−miRNAは、少なくとも19%のアデノシンヌクレオチド、少なくとも16%のシトシンヌクレオチド、少なくとも23%のチミンヌクレオチド、及び少なくとも19%のグアニンヌクレオチドを含み得る。
【0061】
pre−miRNA
核酸はまた、pre−miRNAの配列又はその変異体を含み得る。pre−miRNA配列は、45〜90、60〜80、又は60〜70ヌクレオチドを含み得る。pre−miRNAの配列は、本明細書において説明されるmiRNA及びmiRNA*を含み得る。pre−miRNAの配列はまた、pri−miRNAの5’末端及び3’末端から0〜160ヌクレオチドを除外した、pri−miRNAのpre−miRNAであり得る。pre−miRNAの配列はまた、Sanger miRBaseレジストリ(9.1版若しくは10版)において記載されている配列番号1〜22、44〜50、55、及び58〜87の配列、又はその変異体を含み得る。
【0062】
miRNA
核酸はまた、miRNA(miRNA*を含む)の配列又はその変異体を含み得る。miRNA配列は、13〜33、18〜24、又は21〜23ヌクレオチドを含み得る。miRNAはまた、全部で少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40ヌクレオチドを含み得る。miRNAの配列は、pre−miRNAの最初の13〜33ヌクレオチドであり得る。miRNAの配列はまた、pre−miRNAの最後の13〜33ヌクレオチドであり得る。miRNAの配列は、Sanger miRBaseレジストリ(9.1版若しくは10版)において記載されている配列番号1〜12、23〜25、44、47、49、55、及び58〜72の配列、又はその変異体を含み得る。
【0063】
抗miRNA
核酸はまた、pri−miRNA、pre−miRNA、miRNA、若しくはmiRNA*に結合すること(例えば、アンチセンス若しくはRNAサイレンシング)、又は標的結合部位に結合することなどにより、miRNA又はmiRNA*の活性を遮断し得る、抗miRNAの配列を含み得る。抗miRNAは、全部で5〜100又は10〜60ヌクレオチドを含み得る。抗miRNAはまた、全部で少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40ヌクレオチドを含み得る。抗miRNAの配列は、(a)miRNAの5’と実質的に同一であるか若しくは相補的である少なくとも5ヌクレオチド、及び、miRNAの5’末端からの標的部位の隣接領域と実質的に相補的である少なくとも5〜12ヌクレオチド、又は(b)miRNAの3’と実質的に同一であるか若しくは相補的である少なくとも5〜12ヌクレオチド、及びmiRNAの3’末端からの標的部位の隣接領域に実質的に相補的な少なくとも5ヌクレオチドを含み得る。抗miRNAの配列は、Sanger miRBaseレジストリ(9.1版若しくは10版)において記載されている配列番号1〜12、23〜25、44、47、49、55、及び58〜72の相補体、又はその変異体を含み得る。
【0064】
合成遺伝子
転写及び/又は翻訳調節配列に作用可能に結合している、本明細書において記載されている核酸を含む合成遺伝子もまた提供される。合成遺伝子は、本明細書において記載される核酸についての結合部位を有する標的遺伝子の発現を修飾する能力を有し得る。標的遺伝子の発現は、細胞、組織、又は器官において修飾され得る。合成遺伝子は、標準的な組換え技術によって自然に生じる遺伝子から合成することができるか、又はこの遺伝子に由来し得る。合成遺伝子はまた、合成遺伝子配列の転写単位の3’末端にターミネーターを含み得る。合成遺伝子はまた、選択可能なマーカーを含み得る。
【0065】
ベクター
本明細書において記載される合成遺伝子を含むベクターもまた提供される。ベクターは発現ベクターであり得る。発現ベクターは、さらなるエレメントを含み得る。例えば、発現ベクターは、2つの生物において、例えば発現のための1つの宿主細胞並びにクローニング及び増幅のための第2の宿主細胞(例えば細菌)において発現ベクターが維持されることを可能にする、2つの複製系を有し得る。発現ベクターを組み込むために、発現ベクターは、宿主細胞のゲノムに相同な少なくとも1つの配列を含み得、好ましくは、発現構築物に隣接する2つの相同な配列を含み得る。ベクターの組み込みは、ベクター内に含めるための適切な相同配列を選択することによって、宿主細胞における特定の遺伝子座に向かわせることができる。ベクターはまた、形質転換された宿主細胞の選択を可能にする選択可能なマーカーの遺伝子を含み得る。
【0066】
プローブ
本明細書において記載される核酸を含むプローブもまた提供される。プローブは、以下に概説するスクリーニング方法及び診断方法に用いることができる。プローブは、バイオチップなどの固体基質に付着させるか又は固定することができる。
【0067】
プローブは、8〜500、10〜100、又は20〜60ヌクレオチド長を有し得る。プローブはまた、少なくとも、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、又は300ヌクレオチド長を有し得る。プローブはさらに、10〜60ヌクレオチドのリンカー配列を含み得る。
【0068】
バイオチップ
バイオチップもまた提供される。バイオチップは、本明細書において記載される1つの付着したプローブ又は複数のプローブを含む固体基質を含み得る。プローブは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において標的配列とハイブリダイズし得る。プローブは、基質上の空間的に既定された場所に付着させることができる。1つの標的配列につき2つ以上のプローブを用いることができ、プローブは、オーバーラッピングしているプローブか、又は特定の標的配列の異なる区域に対するプローブである。プローブは、当業者に理解されている単一の障害に関連する標的配列とハイブリダイズし得る。プローブは、まず合成されその後バイオチップに付着され得るか、又はバイオチップ上に直接合成され得る。
【0069】
固体基質の材料は、プローブの付着又は関連に適切な不連続の個別の部位を含むように修飾され得、少なくとも1つの検出方法に適しているものであり得る。基質の代表的な例には、ガラス及び修飾又は官能化されたガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、及びスチレンのコポリマー、並びに他の材料、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロン(登録商標)Jなどを含む)、多糖、ナイロン又はニトロセルロース、樹脂、シリカ又はシリコン及び修飾シリコンを含むシリカベースの材料、カーボン、金属、無機ガラス及び無機プラスチックが含まれる。基質は、認め得る程に蛍光処理することなく、視覚的な検出を可能にし得る。
【0070】
基質は平削り板であり得るが、他の構造の基質も同様に用いることができる。例えば、プローブは、試料の容積を最小化するための流入試料分析のために、管の内表面上に置くことができる。同様に、基質は、特定のプラスチックで作られた循環式セル泡沫を含む柔軟な泡沫などのように、柔軟性を有し得る。
【0071】
バイオチップ及びプローブは、その後に2つを付着させるために、化学的官能基を用いて誘導体化することができる。例えば、バイオチップは、限定はしないがアミノ基、カルボキシル基、オキソ基、又はチオール基を含む化学的官能基を用いて誘導体化することができる。これらの官能基を用いて、リンカーを直接的又は間接的に用いて、プローブ上の官能基を用いてプローブを付着させることができる。プローブは、5’末端、3’末端によって、又は内部ヌクレオチドを介して、固体担体に付着させることができる。
【0072】
プローブはまた、非共有結合的に固体担体に付着させることができる。例えば、ビオチニル化したオリゴヌクレオチドを作製することができ、これは、ストレプトアビジンで共有結合的に被覆された表面に結合して付着をもたらし得る。或いは、プローブは、光重合及びフォトリソグラフィーなどの技術を用いて表面上に合成することができる。
【0073】
組成物
薬学的組成物もまた提供される。組成物は、本明細書において記載される核酸を含み得、場合により、薬学的に許容される担体を含み得る。組成物は、治療適用に用いることができる。薬学的組成物は、インビトロ又はインビボで核酸を所望の標的細胞内に導入する方法を含む、既知の方法によって投与することができる。
【0074】
核酸分子を送達するための方法は、Akhtarら(Trends Cell Bio.2、139、1992)に記載されている。WO94/02595は、RNA分子の送達の一般的な方法を記載している。これらのプロトコルは、ほぼ全ての核酸分子の送達に用いることができる。核酸分子は、制限はしないがリポソームへのカプセル化を含む当業者に知られている様々な方法によって、イオン導入によって、又はヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性のナノカプセル、及び生体接着性のミクロスフェアなどの他の媒体内への組み込みによって、細胞に投与することができる。或いは、核酸/媒体の組合せは、直接的な注入によって、又は点滴ポンプの使用によって、局所的に送達される。他の送達経路には、限定はしないが、経口(錠剤若しくはピルの形態)及び/又は髄腔内送達が含まれる(Gold、1997、Neuroscience、76、1153〜1158)。他のアプローチには、様々な輸送系及び運搬系の使用、例えばコンジュゲート及び生分解性ポリマーの使用を介したものが含まれる。核酸の送達及び投与のさらに詳細な記載は、例えばWO93/23569、WO99/05094、及びWO99/04819に示されている。
【0075】
核酸は、ウイルス感染、マイクロインジェクション、又は小胞の融合を含むあらゆる数の経路によって、組織又は宿主細胞内に導入することができる。Furthら(Anal Biochem、115、205:365〜368、1992)によって記載されているように、ジェット注入もまた筋肉内投与に用いることができる。文献に記載されているように(例えば、Tangら、Nature、356:152〜154、1992)、核酸は、金のマイクロ粒子上に被覆し、粒子衝撃装置、すなわち「遺伝子銃」によって皮内に送達することができ、金のマイクロ粒子はDNAで被覆されており、その後、皮膚細胞内に発射される。
【0076】
本発明の組成物は、適切な薬学的に許容される担体又は希釈剤と組み合わせることによって薬学的組成物に製剤することができ、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、坐剤、注射、吸入剤、及びエアロゾルなどの、固体、半固体、液体、又は気体の形態の調製物に製剤することができる。このように、作用物質の投与は、経口、口腔、直腸、非経口、腹腔内、皮内、経皮、気管内などを含む様々な方法で行うことができる。
【0077】
診断
診断の方法もまた提供される。この方法は、生物学的試料における癌に関連する核酸の差次的な発現レベルを検出することを含む。試料は患者に由来するものであり得る。患者における癌の状態の診断により、予後及び治療戦略の選択が可能になり得る。さらに、一時的に発現している疾患に関連する核酸を決定することにより、細胞の成長段階を分類することができる。
【0078】
標識されたプローブの、組織アレイへのin situでのハイブリダイゼーションを実施することができる。個体と標準との間のフィンガープリントを比較すると、当業者は所見に基づいて診断、予後診断、又は予測を行うことができる。診断を示す遺伝子が、予後を示す遺伝子と異なり得ること、及び細胞の状態の分子プロファイリングが、応答性の若しくは難治性の症状の区別をもたらし得るか又は結果を予測し得ることも、さらに理解されたい。
【0079】
キット
キットもまた提供され、このキットは、本明細書において記載される核酸を、アッセイ試薬、緩衝液、プローブ及び/又はプライマー、並びに無菌生理食塩水又は別の薬学的に許容されるエマルジョン及び懸濁液ベースのもののいずれか又は全てと共に含み得る。さらに、このキットは、本明細書において記載される方法を実施するための指示(例えばプロトコル)を含む指示書を含み得る。
【0080】
例えば、キットは、標的核酸配列の増幅、検出、同定、又は定量のためのキットであり得る。キットは、ポリ(T)プライマー、フォワードプライマー、リバースプライマー、及びプローブを含み得る。
【0081】
定義
本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を記載することを目的としたものにすぎず、限定することを意図したものではないことを理解されたい。明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単一形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、複数形の指示対象を含むことに注意されたい。
【0082】
異常な増殖
本明細書において用いる場合、「異常な増殖」という用語は、正常な、適当な、又は予想される過程から逸脱した細胞増殖を意味する。例えば、異常な細胞増殖には、DNA又は他の細胞成分が損傷を受けているか又は不良を有する細胞の不適切な増殖が含まれ得る。異常な細胞増殖には、不適切に高いレベルの細胞分裂、不適切に低いレベルのアポトーシス、又はその両方により生じるか、それにより仲介されるか、又はそれを生じさせる徴候に関連する特徴を有する細胞増殖が含まれ得る。このような徴候は、例えば、癌性又は非癌性の、良性又は悪性の、細胞、細胞群、又は組織(単数若しくは複数)の、単一の又は複数の局所的な異常な増殖に特徴を有し得る。
【0083】
約
本明細書において用いる場合、「約」という用語は+/−10%を言う。
【0084】
アンチセンス
本明細書において用いられる「アンチセンス」という用語は、特定のDNA又はRNA配列に相補的なヌクレオチド配列を言う。「アンチセンス鎖」という用語は、「センス」鎖に相補的な核酸鎖に関して用いられる。アンチセンス分子は、逆方向の目的の遺伝子(単数又は複数)を、相補鎖の合成を可能にするウイルスプロモーターにライゲーションすることによる合成を含む、あらゆる方法によって生産することができる。細胞内に導入されると、この転写された鎖は、細胞により生産される天然の配列と結合して、二本鎖を形成する。これらの二本鎖は次に、さらなる転写又は翻訳を遮断する。このようにして、突然変異体の表現型が生じ得る。
【0085】
付着
プローブ及び固体担体に関して本明細書において用いられる「付着した」又は「固定された」は、プローブと固体担体との間の結合が、結合、洗浄、分析、及び除去の条件下において安定であるために十分であることを意味し得る。結合は共有結合的又は非共有結合的であり得る。共有結合は、プローブと固体担体との間で直接的に形成され得るか、或いは、架橋剤によって、又は固体担体若しくはプローブ若しくは両方の分子上に特定の反応基を含めることによって形成され得る。非共有結合は、静電気的な、親水性の、及び疎水性の相互作用の1つ又は複数であり得る。非共有結合に含まれるものは、ストレプトアビジンなどの分子の、担体への共有結合的な付着、及びビオチン化されたプローブの、ストレプトアビジンへの非共有結合的な結合である。固定はまた、共有結合的な相互作用及び非共有結合的な相互作用の組合せを伴い得る。
【0086】
生物学的試料
本明細書において用いられる「生物学的試料」は、核酸を含む生物学的な組織又は流体の試料を意味する。このような試料には、限定はしないが、対象から単離された組織又は流体が含まれる。生物学的試料にはまた、生検及び解剖の試料、FFPE試料、組織学的な目的で採取された凍結切片、血液、血漿、血清、痰、便、涙、粘液、毛髪、及び皮膚などの、組織切片が含まれ得る。生物学的試料にはまた、動物又は患者の組織に由来する、移植片並びに初代細胞培養物及び/又は形質転換細胞培養物が含まれる。
【0087】
生物学的試料はまた、血液、血液画分、尿、浸出液、腹水、唾液、脳脊髄液、頸管分泌物、膣分泌物、子宮内膜分泌物、胃腸分泌物、気管支分泌物、痰、細胞系、組織試料、細針吸引(FNA)の細胞含有物、又は胸部からの分泌物であり得る。生物学的試料は、動物から細胞試料を取り出すことにより得ることができるが、事前に単離された細胞(例えば、別の時点で別の人により単離されたもの、及び/若しくは別の目的で単離されたもの)を用いることによって、又は本明細書において記載されている方法をインビボで実施することによっても得ることができる。治療又は進行の前歴を有するものなどの記録用の組織もまた用いることができる。
【0088】
癌
「癌」という用語は、組織病理学的タイプ又は侵襲の段階に関係なく、あらゆるタイプの癌性の成長若しくは発癌プロセス、転移性の組織、又は悪性的に形質転換した細胞、組織、若しくは器官を含むことを意味する。癌の例には、限定はしないが、アプドーマ、分離腫、鰓腫、悪性カルチノイド症候群、カルチノイド心疾患、癌腫(例えば、ウォーカー癌、基底細胞癌、基底有棘細胞癌、ブラウンピアース癌、腺管癌、エールリッヒ腫瘍、非小細胞肺癌、燕麦細胞癌、乳頭癌、細気管支癌、気管支癌、扁平上皮細胞癌、及び移行上皮癌)、組織球性障害、白血病(例えば、B細胞白血病、混合型白血病、ヌル細胞白血病、T細胞白血病、慢性T細胞白血病、HTLV−II関連白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、肥満細胞白血病、及び骨髄性白血病)、悪性組織球増殖症、ホジキン病、免疫増殖性小腸疾患、非ホジキンリンパ腫、形質細胞腫、細網内皮症、黒色腫、軟骨芽細胞腫、軟骨腫、軟骨肉腫、線維腫、線維肉腫、巨細胞腫、組織球腫、脂肪腫、脂肪肉腫、中皮腫、粘液腫、粘液肉腫、骨腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、滑液腫瘍、腺線維腫、腺リンパ腫、癌肉腫、脊索腫、頭蓋咽頭腫、未分化胚細胞腫、過誤腫、間葉腫、中腎腫、筋肉腫、エナメル上皮腫、セメント腫、歯牙腫、奇形腫、胸腺腫、絨毛性腫瘍、腺癌、腺腫、胆管腫、真珠腫、円柱腫、嚢胞腺癌、嚢胞腺腫、顆粒膜細胞腫、性索間質腫瘍、肝細胞癌、汗腺腫、島細胞腫、ライディッヒ細胞腫、セルトリ細胞腫、卵胞膜細胞腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫、筋芽細胞腫、筋肉腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、上衣腫、神経節細胞腫、神経膠腫、髄芽腫、髄膜腫、神経鞘腫、神経芽細胞腫、神経上皮腫、神経線維腫、神経腫、傍神経節腫、非クロム親和性傍神経節腫、角血管腫、好酸球性血管リンパ球増殖症、硬化性血管腫、血管腫症、グロムス血管腫、血管内皮腫、血管腫、血管周囲細胞腫、血管肉腫、リンパ管腫、リンパ管筋腫症、リンパ管肉腫、松果体腫、癌肉腫、軟骨肉腫、嚢肉腫、葉状腫瘍、線維肉腫、血管肉腫、平滑筋肉腫、白血球肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、筋肉腫、粘液肉腫、卵巣癌、横紋筋肉腫、肉腫(例えば、ユーイング肉腫、実験的肉腫、カポジ肉腫、及び肥満細胞肉腫)、神経線維腫症、及び子宮頸部形成異常、並びに細胞が不死化しているか又は形質転換している他の症状を含む、充実性腫瘍及び白血病が含まれる。
【0089】
分類
分類という用語は、個別の品目を、その品目に固有の1つ又は複数の特徴(形質、変数、特質、特性などと呼ばれる)についての定量的な情報に基づいて、並びにそれまでにラベル付けされている品目の統計モデル及び/又は訓練セットに基づいて群又はクラスに分けるための、手順及び/又はアルゴリズムを言う。「分類木」は、カテゴリー変数をクラスに分ける決定木である。
【0090】
相補体
核酸に関して本明細書において用いられる「相補体」又は「相補的な」とは、核酸分子のヌクレオチド又はヌクレオチド類似体間のワトソンクリック(例えば、A−T/U及びC−G)又はフーグスティーンの塩基対合を意味し得る。完全な相補体又は完全に相補的とは、核酸分子のヌクレオチド又はヌクレオチド類似体間の100%相補的な塩基対合を意味し得る。
【0091】
Ct
Ctシグナルは、増幅が蛍光の閾値(サイクル閾値)を超える、PCRの最初のサイクルを意味する。したがって、Ctの値が低いことは、マイクロRNAの存在量又は発現レベルが高いことを意味する。いくつかの実施形態において、PCRのCtシグナルは、標準化されたCtが発現レベルに反比例のままとなるように標準化される。他の実施形態において、PCRのCtシグナルは標準化され、その後逆転され、それにより、低い標準化された逆転されたCtが、マイクロRNAの存在量又は発現レベルが低いことを意味するようになり得る。
【0092】
データ処理手順
本明細書において用いる場合、「データ処理手順」は、得られたデータ(すなわち、アッセイ又は分析の最終的な結果)の生物学的有意性を決定するソフトウェアにおいて具体化され得るプロセスを言う。例えば、データ処理手順は、収集されたデータに基づいて組織由来源を決定することができる。本明細書における系及び方法において、データ処理手順はまた、決定された結果に基づいてデータ収集手順を制御することができる。データ処理手順及びデータ収集手順は統合され得、データ取得を行うためにフィードバックを提供し、したがって、アッセイに基づいた判別方法を提供する。
【0093】
データセット
本明細書において用いる場合、「データセット」という用語は、分析から得られた数値を言う。分析に関連するこれらの数値は、ピーク高さ及び曲線下のピーク領域などの値であり得る。
【0094】
データ構造
本明細書において用いる場合、「データ構造」という用語は、2つ以上のデータセットの組合せを言い、1つ若しくは複数の数学的操作を1つ若しくは複数のデータセットに適用して1つ若しくは複数の新たなデータセットを得るか、又は2つ以上のデータセットを、新たな方法でデータの視覚的例証を提供する形態に操作する。2つ以上のデータセットの操作から準備されたデータ構造の例は階層的クラスターである。
【0095】
検出
「検出」は、試料中における成分の存在を検出することを意味する。検出はまた、成分の不存在を検出することを意味する。検出はまた、量的又は質的に成分のレベルを測定することを意味する。
【0096】
差次的発現
「差次的発現」は、細胞及び組織内の、並びに細胞及び組織間の、一時的な及び/又は細胞の遺伝子発現パターンにおける質的又は量的な差を意味する。したがって、差次的に発現した遺伝子は、例えば正常な組織と疾患組織との間で、活性化又は不活性化を含む、その発現の質的な改変を有している可能性がある。遺伝子は、別の状態と比較して、特定の状態でオン又はオフされ得、したがって、2つ以上の状態の比較が可能となる。質的に調節される遺伝子は、標準的な技術によって検出することが可能な状態又は細胞型において発現パターンを示し得る。いくつかの遺伝子は1つの状態又は細胞型において発現し得るが、その両方においては発現し得ない。或いは、発現における差は、例えば発現が調節されて、すなわち上方調節されて転写産物の量が増大するか、又は下方調節されて転写産物の量が減少するという点で、量的であり得る。発現が異なる程度は、発現アレイ、定量的逆転写酵素PCR、ノーザン分析、リアルタイムPCR、in situでのハイブリダイゼーション、及びRNアーゼ保護などの標準的な特徴付け技術を介して定量するために十分に大きければよい。
【0097】
発現プロファイル
本明細書において用いられる「発現プロファイル」は、ゲノムの発現プロファイル、例えば、マイクロRNAの発現プロファイルを意味し得る。プロファイルは、核酸配列のレベルを決定するためのあらゆる都合の良い手段、例えば、マイクロRNA、標識されたマイクロRNA、増幅されたマイクロRNA、cRNAなどの定量的ハイブリダイゼーション、定量的PCR、定量のためのELISAなどによって得ることができ、2つの試料間の差次的な遺伝子発現の分析を可能にする。対象又は患者の腫瘍試料、例えば細胞又はその集合体、例えば組織がアッセイされる。試料は、当技術分野において知られている、あらゆる都合の良い方法によって回収される。目的の核酸配列は、上記の核酸配列を含む、指標となることが明らかにされている核酸配列であり、その発現プロファイルは、列挙された核酸配列の全てを含むものの5、10、20、25、50、100個又はそれ以上についての発現データを含み得る。発現プロファイルは、核酸のレベル若しくは存在量の測定に基づくものであり得るか、又はその測定値の組合せに基づくものであり得る。
【0098】
発現率
本明細書において用いられる「発現率」は、生物学的試料における対応する核酸の相対的な発現レベルを検出することにより決定される、2つ以上の核酸の相対的な発現レベルを言う。
【0099】
FDR
例えば複数のデータ特性における2つの群間のシグナルの比較において、複数の統計試験を行う場合、他の方法では統計的に有意であると判断されるであろうレベルに達し得る群間のランダムな差異により、偽陽性の結果が得られる可能性が高くなる。このような誤った発見の割合を制限するために、統計的有意性は、差が閾値未満のp値(両側t検定による)に達したデータ特性のみについて規定され、閾値は、実施された試験の数及びこれらの試験において得られたp値の分布に応じるものである。
【0100】
断片
「断片」は、本明細書において、核酸又はポリペプチドの全長ではない部分を示すために用いられる。したがって、断片はそれ自体もまた、それぞれ核酸又はポリペプチドである。
【0101】
遺伝子
本明細書において用いられる「遺伝子」は、転写及び/若しくは翻訳調節配列、並びに/又はコード領域、並びに/又は非翻訳配列(例えば、イントロン、5’及び3’非翻訳配列)を含む、天然の(例えばゲノムの)又は合成の遺伝子であり得る。遺伝子のコード領域は、アミノ酸配列、又はtRNA、rRNA、触媒RNA、siRNA、miRNA、若しくはアンチセンスRNAなどの機能的RNAをコードする、ヌクレオチド配列であり得る。遺伝子はまた、コード領域(例えば、エキソン及びmiRNA)に対応するmRNA又はcDNAであり得、それには、場合によって、それに結合している5’又は3’非翻訳配列が含まれる。遺伝子はまた、コード領域及び/又はそれに結合している5’若しくは3’非翻訳配列の全て又は一部を含む、インビトロで生産された、増幅された核酸分子であり得る。
【0102】
溝バインダー/副溝バインダー(MGB)
「溝バインダー」及び/又は「副溝バインダー」は、ほぼ同義で用いられ得、二本鎖DNAの副溝内に典型的には配列特異的な様式で適合する小分子を言う。副溝バインダーは、三日月様の形状を有し得る、長く平らな分子であり得、そのため、二重らせんの副溝内にぴったりと適合して、水を排除することが多い。副溝結合分子は、典型的には、フラン環、ベンゼン環、又はピロール環などの、自由にねじれる結合によって結合しているいくつかの芳香環を含み得る。副溝バインダーは、参照することにより内容が本明細書に組み込まれる、Nucleic Acids in Chemistry and Biology、第2版、Blackburn及びGait編、Oxford University Press、1996、及び公開されたPCT出願WO03/078450に記載されているものを含む、ネトロプシン、ジスタマイシン、ベレニル、ペンタミジン、及び他の芳香族ジアミジン、Hoechst33258、SN6999、クロモマイシン及びミトラマイシンなどのオーレオリン抗腫瘍薬、CC−1065、ジヒドロシクロピロロインドールトリペプチド(DPI3)、1,2−ジヒドロ−(3H)−ピロロ[3,2−e]インドール−7−カルボキシレート(CDPI3)、並びに関連する化合物及び類似体などの、抗生物質であり得る。副溝バインダーは、プライマー、プローブ、ハイブリダイゼーションタグ相補体の構成要素、又はその組合せであり得る。副溝バインダーは、それらが付着するプライマー又はプローブのTmを増大させ得、このようなプライマー又はプローブが高温で効果的にハイブリダイズすることを可能にする。
【0103】
同一性
2つ以上の核酸配列又はポリペプチド配列との関連において本明細書において用いられる「同一」又は「同一性」は、その配列が、特定の領域全体にわたって特定のパーセンテージの同一残基を有することを意味し得る。パーセンテージは、2つの配列を最適にアラインし、特定の領域にわたって2つの配列を比較し、両方の配列において同一の残基が生じる位置の数を決定して、適合した位置の数を得、適合した位置の数を特定の領域における位置の総数で割り、そしてその結果に100をかけて配列同一性のパーセンテージを得ることにより計算することができる。2つの配列が異なる長さであるか、又はアラインメントにより1つ若しくは複数の付着末端が生じ、且つ比較の特定の領域が単一の配列のみを含む場合、単一の配列の残基は、計算の分母に含まれるが分子には含まれない。DNAとRNAとを比較する場合、チミン(T)及びウラシル(U)は同等であると考えることができる。同一性は、手作業で、又はBLAST若しくはBLAST2.0などのコンピュータ配列アルゴリズムを用いることによって実施することができる。
【0104】
in situでの検出
本明細書において用いられる「in situでの検出」は、本明細書では生検などの組織試料におけるものを意味する元の部位における発現又は発現レベルの検出を意味する。
【0105】
標識
本明細書において用いられる「標識」は、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、又は他の物理的手段によって検出可能な組成物を意味し得る。例えば、有用な標識には、32P、蛍光染料、電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて一般に用いられるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、又はハプテン、及び検出可能にされ得る他の物質が含まれる。標識は、核酸及びタンパク質にあらゆる位置で組み込むことができる。
【0106】
ロジスティック回帰
ロジスティック回帰は、一般化線形モデルと呼ばれる統計モデルのカテゴリーの一部である。ロジスティック回帰により、連続変数、離散変数、二分変数、又はこれらのあらゆる物の混合であり得る変数集団からの群構成員などの離散的な結果を予測することが可能となる。従属変数又は応答変数は二分変数であり得、例えば、2つの考えられるタイプの癌の1つであり得る。ロジスティック回帰モデルは、異なる発現レベル(対数領域における)の線形の組合せとしての、オッズ比、すなわち、第2群(1−P)に属する確率に対する、第1群(P)に属する確率の比率の、自然対数である。ロジスティック回帰の結果は、Pが0.5又は50%を超えるならば、症例又は試料が第一のタイプに分類されることを規定することにより、分類子として用いることができる。或いは、計算された確率Pは、1D又は2Dの閾値分類子などの他の状況においては、変数として用いることができる。
【0107】
1D/2D閾値分類子
本明細書において用いられる「1D/2D閾値分類子」は、症例、又は癌試料などの試料を、2つのタイプの癌などの2つの考えられるタイプの1つに分類するためのアルゴリズムを意味し得る。1D閾値分類子では、決定は1つの変数及び1つの事前に決定された閾値に基づくものである。試料は、変数が閾値を超える場合には1つのクラスに割り当てられ、変数が閾値よりも小さい場合にはもう1つのクラスに割り当てられる。2D閾値分類子は、2つの変数の値に基づいて2つのタイプの1つに分類するためのアルゴリズムである。閾値は第1の変数の関数(通常は、連続関数であるか、又はさらに単調関数である)として計算することができる。決定は次に、1D閾値分類子と同様に、第2の変数を計算された閾値と比較することによって得られる。
【0108】
核酸
本明細書において用いられる「核酸」又は「オリゴヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド」は、共に共有結合された少なくとも2つのヌクレオチドを意味し得る。一本鎖の表示はまた、相補鎖の配列を規定する。したがって、核酸はまた、表示された一本鎖の相補鎖も包含する。核酸の多くの変異体が、所与の核酸と同一の目的で用いられ得る。したがって、核酸はまた、実質的に同一である核酸及びその相補体も包含する。一本鎖は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で標的配列とハイブリダイズし得るプローブを提供する。したがって、核酸はまた、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするプローブも包含する。
【0109】
核酸は、一本鎖若しくは二本鎖であり得るか、又は二本鎖配列及び一本鎖配列の両方の一部を含み得る。核酸は、DNA、ゲノムDNA及びcDNAの両方、RNA、又はハイブリッドであり得、核酸は、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドの組合せ、並びにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、及びイソグアニンを含む塩基の組合せを含み得る。核酸は、化学合成法又は組換え法によって得ることができる。
【0110】
核酸は通常はホスホジエステル結合を含むが、少なくとも1つの異なる結合、例えばホスホロアミデート結合、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、又はO−メチルホスホロアミダイト結合、並びにペプチド核酸の骨格及び結合を有し得る核酸類似体が含まれ得る。他の類似体核酸には、参照することにより組み込まれる米国特許第5,235,033号及び米国特許第5,034,506号に記載されているものを含む、陽性の骨格、非イオン性の骨格、及び非リボース性の骨格を有するものが含まれる。1つ又は複数の自然に生じない又は修飾されたヌクレオチドを含む核酸もまた、核酸の1つの定義に含まれる。修飾されたヌクレオチド類似体は、例えば核酸分子の5’末端及び/又は3’末端に位置し得る。ヌクレオチド類似体の代表的な例は、糖を修飾された、又は骨格を修飾されたリボヌクレオチドから選択され得る。しかし、核酸塩基を修飾されたリボヌクレオチド、すなわち、自然に生じる核酸塩基の代わりに自然に生じない核酸塩基を含むリボヌクレオチドもまた適していることに注意されたく、この自然に生じない核酸塩基は、例えば、5−(2−アミノ)プロピルウリジン、5−ブロモウリジンなどの、5位で修飾されているウリジン又はシチジン、8−ブロモグアノシンなどの、8位で修飾されているアデノシン及びグアノシン、7−デアザアデノシンなどのデアザヌクレオチド、N6−メチルアデノシンなどの、O−アルキル化及びN−アルキル化ヌクレオチドである。2’−OH基は、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2、又はCNから選択される基によって置換され得、Rは、C1−C6アルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、ハロは、F、Cl、Br、又はIである。修飾されたヌクレオチドにはまた、参照することにより本明細書に組み込まれるKrutzfeldtら、Nature、438:685〜689(2005)、Soutschekら、Nature、432:173〜178(2004)、及び米国特許出願公開第20050107325号に記載されているヒドロキシプロリノール結合などを介してコレステロールと結合したヌクレオチドが含まれる。さらなる修飾されたヌクレオチド及び核酸は、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20050182005号に記載されている。リボース−リン酸骨格の修飾は様々な理由で行うことができ、それは例えば、生理学的環境におけるこのような分子の安定性及び半減期を増大させるため、細胞膜を介した拡散を増強させるため、又はバイオチップ上のプローブとしてである。骨格の修飾はまた、細胞の厳しい細胞内環境などにおける分解に対する耐性を増強し得る。骨格の修飾はまた、肝臓及び腎臓などにおける、肝細胞による核酸のクリアランスを低減させ得る。自然に生じる核酸及び類似体の混合物を作成することができる。或いは、異なる核酸類似体の混合物と、自然に生じる核酸及び類似体の混合物とを作成することができる。
【0111】
プローブ
本明細書において用いられる「プローブ」は、1つ又は複数のタイプの化学結合を介して相補的配列の標的核酸に結合し得るオリゴヌクレオチドを意味し得、この化学結合は通常は相補的な塩基の対合を介するものであり、これは通常は水素結合の形成を介するものである。プローブは、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに応じて、プローブ配列との完全な相補性を有していない標的配列を結合し得る。標的配列と本明細書において記載される一本鎖核酸との間のハイブリダイゼーションに干渉する、あらゆる数の塩基対ミスマッチが存在し得る。しかし、突然変異の数が多すぎて最もストリンジェンシーの低いハイブリダイゼーション条件下でさえもハイブリダイゼーションが生じ得ない場合には、配列は相補的な標的配列ではない。プローブは、一本鎖であり得るか、又は部分的に一本鎖であり部分的に二本鎖であり得る。プローブのらせん性は、標的配列の構造、組成、及び特性により決定される。プローブは、直接標識することができるか、又はストレプトアビジン複合体がその後に結合し得るビオチンなどで、間接的に標識することができる。
【0112】
プロモーター
本明細書において用いられる「プロモーター」は、細胞における核酸の発現をもたらし得るか、活性化し得るか、又は増強し得る、合成分子又は天然由来の分子を意味し得る。プロモーターは、さらにその発現を増強させ、且つ/又は空間的発現及び/若しくは一過性発現を改変するための、1つ又は複数の特異的な転写調節配列を含み得る。プロモーターはまた、転写開始部位から数千塩基対も離れた場所に位置し得る、末端のエンハンサーエレメント又はリプレッサーエレメントを含み得る。プロモーターは、ウイルス、細菌、真菌、植物、昆虫、及び動物を含む由来源に由来し得る。プロモーターは、発現が生じる細胞、組織、若しくは器官に関して、又は発現が生じる成長段階に関して、又は生理学的ストレス、病原体、金属イオン、若しくは誘発剤などの外部刺激に応答して、構成的又は差次的に遺伝子成分の発現を調節し得る。プロモーターの代表的な例には、バクテリオファージT7プロモーター、バクテリオファージT3プロモーター、SP6プロモーター、lacオペレータープロモーター、tacプロモーター、SV40後期プロモーター、SV40初期プロモーター、RSV−LTRプロモーター、CMV IEプロモーター、SV40初期プロモーター又はSV40後期プロモーター、及びCMV IEプロモーターが含まれる。
【0113】
参照発現プロファイル
本明細書において用いる場合、「参照発現プロファイル」という表現は、基準となる発現値を言い、測定された値をこの発現値と比較して、肺癌を有する対象の検出を決定する。参照発現プロファイルは、核酸の存在量に基づくものであり得るか、又はその測定値の組合せに基づくものであり得る。
【0114】
選択可能なマーカー
本明細書において用いられる「選択可能なマーカー」は、宿主細胞に表現型をもたらすあらゆる遺伝子を意味し得、この宿主細胞においてこの遺伝子が発現して、遺伝子構築物をトランスフェクトされたか又はこの構築物で形質転換された細胞の同定及び/又は選択が容易になる。選択可能なマーカーの代表的な例には、アンピシリン耐性遺伝子(Ampr)、テトラサイクリン耐性遺伝子(Tcr)、細菌カナマイシン耐性遺伝子(Kanr)、ゼオシン耐性遺伝子、抗生物質オーレオバシジンAに対する耐性をもたらすAURI−C遺伝子、ホスフィノトリシン耐性遺伝子、ネオマイシンホスホトランフェラーゼ遺伝子(nptII)、ハイグロマイシン耐性遺伝子、β−グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子、緑色蛍光タンパク質(GFP)コード遺伝子、及びルシフェラーゼ遺伝子が含まれる。
【0115】
感度
本明細書において用いられる「感度」は、二元分類試験が症状をどの程度良好に正確に同定するか、例えばその試験が癌を2つの考えられるタイプのうち正しいタイプに正確に分類する頻度はどの程度かについての統計的測定を意味し得る。クラスAについての感度は、いくつかの絶対的基準又は優れた基準によって決定された、クラス「A」にある症例のうち、試験によってクラス「A」に属すると決定された症例の割合である。
【0116】
特異性
本明細書において用いられる「特異性」は、二元分類試験が症状をどの程度良好に正確に同定するか、例えばその試験が癌を2つの考えられるタイプのうち正しいタイプに正確に分類する頻度はどの程度かについての統計的測定を意味し得る。クラスAについての特異性は、いくつかの絶対的基準又は優れた基準によって決定された、「Aではない」クラスにある症例のうち、試験によって「Aではない」クラスに属すると決定された症例の割合である。
【0117】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件
本明細書において用いられる「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、核酸の複合混合物などにおいて、第1の核酸配列(例えばプローブ)が第2の核酸配列(例えば標的)とハイブリダイズする条件を意味し得る。ストリンジェントな条件は、配列依存的であり、異なる状況において異なる。ストリンジェントな条件は、所定のイオン強度、pHでの特異的な配列についての熱融点(Tm)よりも約5〜10℃低くなるように選択することができる。Tmは、標的に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列とハイブリダイズする(Tmで標的配列は過剰に存在しており、プローブの50%は平衡状態で占領されているため)温度(所定のイオン強度、pH、及び核酸濃度で)であり得る。ストリンジェントな条件は、pH7.0〜8.3で塩濃度が約1.0M未満のナトリウムイオン、例えば約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン濃度(又は他の塩)であり、温度が、短いプローブ(例えば約10〜50ヌクレオチド)では少なくとも約30℃、長いプローブ(例えば約50個超のヌクレオチド)では少なくとも約60℃であるものであり得る。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化剤を添加することで得ることができる。選択的な又は特異的なハイブリダイゼーションでは、陽性シグナルは、少なくとも2〜10回のバックグラウンドのハイブリダイゼーションであり得る。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、50%ホルムアミド、5×SSC、及び1%SDS、42℃でのインキュベーション、又は、5×SSC、1%SDS、65℃でのインキュベーション、さらに65℃で0.2×SSC及び0.1%SDSでの洗浄を含む。
【0118】
実質的に相補的
本明細書において用いられる「実質的に相補的」とは、第1の配列が、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100個、若しくはそれ以上のヌクレオチドの領域にわたり、第2の配列の相補体に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であること、又は2つの配列がストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることを意味し得る。
【0119】
実質的に同一
本明細書において用いられる「実質的に同一」とは、第1及び第2の配列が、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100個、若しくはそれ以上のヌクレオチド若しくはアミノ酸の領域にわたり、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であること、又は第1の配列が第2の配列の相補体に対して実質的に相補的である場合には、核酸に関してそうであることを意味し得る。
【0120】
対象
本明細書において用いる場合、「対象」という用語は、ヒト及び他の哺乳動物を含む哺乳動物を言う。本発明の方法は、好ましくはヒトの対象に適用される。
【0121】
標的
本明細書において用いられる「標的」は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で1つ又は複数のプローブにより結合され得るポリヌクレオチドを意味し得る。
【0122】
標的核酸
本明細書において用いられる「標的核酸」は、別の核酸によって結合され得る核酸又はその変異体を意味する。標的核酸はDNA配列であり得る。標的核酸はRNAであり得る。標的核酸は、mRNA、tRNA、shRNA、siRNA若しくはPiwi相互作用RNA、又はpri−miRNA、pre−miRNA、miRNA、若しくは抗miRNAを含み得る。
【0123】
標的核酸は、標的miRNA結合部位又はその変異体を含み得る。1つ又は複数のプローブが標的核酸に結合し得る。標的結合部位は、5〜100又は10〜60ヌクレオチドを含み得る。標的結合部位は、全部で5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30〜40、40〜50、50〜60、61、62、又は63ヌクレオチドを含み得る。標的部位の配列は、内容が本明細書に組み込まれる米国特許出願第11/384,049号、米国特許出願第11/418,870号、又は米国特許出願第11/429,720号において開示されている標的miRNA結合部位の配列の少なくとも5ヌクレオチドを含み得る。
【0124】
閾値発現プロファイル
本明細書において用いる場合、「閾値発現プロファイル」という表現は、基準となる発現プロファイルを言い、測定された値をこの発現プロファイルと比較して、癌を分類する。
【0125】
組織試料
本明細書において用いる場合、組織試料は、関連する医療分野において当業者に周知の方法を用いて組織生検から得られる組織である。本明細書において用いられる「癌性であると疑われる」という表現は、癌組織の試料が癌性細胞を含むことが、医療分野の当業者によって考えられることを意味する。生検から試料を得るための方法には、質量の総分配、顕微解剖、レーザーに基づく顕微解剖、又は当技術分野において知られている他の細胞分離法が含まれる。
【0126】
変異体
核酸に関して本明細書において用いられる「変異体」は、(i)参照ヌクレオチド配列の一部、(ii)参照ヌクレオチド配列若しくはその一部の相補体、(iii)参照核酸と実質的に同一である核酸若しくはその相補体、又は(iv)ストリンジェントな条件下で参照核酸とハイブリダイズする核酸、その相補体、若しくはそれと実質的に同一である配列を意味し得る。
【0127】
ベクター
本明細書において用いられる「ベクター」は、複製起点を含む核酸配列を意味する。ベクターは、プラスミド、バクテリオファージ、細菌人工染色体、又は酵母人工染色体であり得る。ベクターは、DNAベクター又はRNAベクターであり得る。ベクターは、自己複製型染色体外ベクター、又は宿主ゲノムに組み込まれるベクターであり得る。
【0128】
野生型
本明細書において用いる場合、「野生型」配列という用語は、その配列の天然の又は正常な機能を果たす対立遺伝子形態の配列である、コード配列、非コード配列、又は接合配列を言う。野生型配列には、複数の対立遺伝子形態の同族配列が含まれ、例えば、野生型配列の複数の対立遺伝子は、コード配列がコードするタンパク質配列に対するサイレントな又は保存的な変化をコードし得る。
【実施例】
【0129】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態をさらに十分に例示するために示される。しかしそれらは、本発明の広義の範囲を限定するとして全く解釈されるべきではない。
【0130】
(例1)
中皮腫と他の腫瘍とを識別するためのマイクロアレイアッセイ
1a)試料
腫瘍試料は、複数の供給元から得た。各施設のIRB又はIRBと同意義の指針に従って全ての試料について施設内承認審査を取得した。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料については、初期診断、組織型、グレード及び腫瘍百分率を、試料の最初及び/又は最後の切片で実施したヘマトキシリン−エオシン(H&E)染色スライドにおいて病理医が決定した。誤分類の症例については診療情報を再調査した。
【0131】
RNAを以下の供給源:肺胸膜中皮腫(試料7個)、肺腺癌(試料15個)、乳腺癌(試料14個)、子宮頸部腺癌(試料3個)、大腸腺癌(試料20個)、食道腺癌(試料2個)、食道−胃腺癌(試料12個)、膵臓腺癌(試料4個)、前立腺腺癌(試料3個)、小腸腺癌(試料1個)、原発不明の腺癌(試料11個)、大腸腫瘍(試料20個)、腎臓腫瘍(試料19個)、肝臓腫瘍(試料6個)、膵臓腫瘍(試料8個)、胃腫瘍(試料6個)、肺カルチノイド腫瘍(試料7個)、肺神経内分泌腫瘍(試料1個)、肺神経内分泌大細胞癌(試料1個)、肺非小細胞癌(試料1個)、肺非小−大細胞癌(試料5個)、肺腫瘍(試料2個)、肺小細胞癌(試料8個)及び肺非小細胞扁平上皮癌(試料9個)、由来のパラフィン包埋(FFPE)組織から抽出した。
【0132】
1b)アレイプラットホーム
カスタムマイクロアレイを、miRNA 688個を表すDNAオリゴヌクレオチドプローブをプリントすることによって産生した[Sanger database、version9.1(miRBase:microRNA sequences、targets and gene nomenclature. Griffiths−Jones S、Grocock RJ、van Dongen S、Bateman A、Enright AJ.NAR、2006、34、Database Issue、D140−D144)及び追加的にRosetta GenomicsでmiRを検証及び予測した]。各プローブは、コートガラススライドにプローブを結合させるために使用するアミノ基に加えてmiRNAの相補配列の3’端に22ntまでのリンカーを保有する。各プローブ20μMを2×SSC+0.0035%SDSに溶解し、Schott Nexterion(登録商標)Slide Eコートマイクロアレイスライドに、MicroGridの製造者の手引書に従ってGenomic Solutions(登録商標)BioRobotics MicroGrid IIを使用して3回反復でスポットした。陰性対照プローブ64個を様々なmiRNAのセンス配列を使用して設計した。陽性対照プローブ2群をアレイとハイブリダイズするように設計した、(1)合成スパイク低分子RNAを標識効率を確認するために標識する前にRNAに添加した、(2)大量の低分子RNA(例えば核内低分子RNA(U43、U49、U24、Z30、U6、U48、U44)、5.8s及び5sリボソームRNA)用のプローブをRNAの品質を確認するためにアレイにスポットした。スライドを50mMエタノールアミン、1M Tris(pH9.0)及び0.1%SDSを含有する溶液で20分間、50℃でブロックし、次いで水で十分にリンスし、遠心脱水した。
【0133】
1c)Cy−dye標識
全RNA 15μgを、RNAリンカーp−rCrU−Cy−dyeを3’端に連結することによってCy3又はCy5で標識した(Thomsonら、2004、Nat Methods 1、47〜53)(Dharmacon)。標識化反応物は、全RNA、スパイク(20〜0.1fmole)、RNA−リンカー−dye 500ng、15%DMSO、1×リガーゼ緩衝液及びT4 RNAリガーゼ(NEB)20単位を含有し、4℃で1時間、続いて37℃で1時間進行させた。標識RNAを3×ハイブリダイゼーション緩衝液(Ambion)と混合し、95℃に3分間加熱し、次いでアレイ上部に添加した。スライドを12〜16時間ハイブリダイズさせ、続いて1×SSC及び0.2%SDSで2回洗浄し、0.1×SSCで最終洗浄した。
【0134】
アレイをAgilent Microarray Scanner Bundle G2565BA(100%能力時に解像度10μm)を使用して走査した。データをSpotReaderソフトウェアを使用して分析した。
【0135】
1d)RNA抽出
FFPE試料由来の全RNAを以下の手順に従って抽出した:キシレン(Biolab)1mlを組織1〜2mgに加え、57℃で5分間インキュベートし、2分間10,000gで遠心分離した。上清を除去し、エタノール(100%)(Biolab)1mlを加えた。10分間、10,000gでの遠心分離に続いて、上清を廃棄し、洗浄操作を繰り返した。10〜15分間の風乾に続いて、緩衝液B(10mM NaCl、500mM Tris pH7.6、20mM EDTA、1%SDS)500μl及びプロテイナーゼK(50mg/ml)(Sigma)5ulを加えた。45℃、16時間のインキュベーションに続いて、100℃、7分間でのプロテイナーゼKの不活性化を実施した。酸フェノールクロロホルム(1:1)(Sigma)での抽出及び最大速度での4℃、10分間の遠心分離に続いて、追加的に3容量の100%エタノール、0.1容量のNaOAc(BioLab)及びグリコーゲン(Ambion)8μlを含む新たなチューブに上相を移し、−20℃に一晩置いた。最大速度での4℃、40分間の遠心分離、エタノール(85%)1mlでの洗浄及び乾燥に続いて、RNAをDDW 45μlに再懸濁した。
【0136】
RNA濃度を検査し、DNase Turbo(Ambion)をそれに応じて加えた(RNA10μgあたりデオキシリボヌクレアーゼ1μl)。室温、30分間のインキュベーション及び酸フェノールクロロホルムでの抽出に続いて、RNAをDDW 45μlに再懸濁した。RNA濃度を再び検査し、DNase Turbo(Ambion)をそれに応じて加えた(RNA10μgあたりデオキシリボヌクレアーゼ1μl)。室温での30分間のインキュベーション及び酸フェノールクロロホルムでの抽出に続いてRNAをDDW 20μlに再懸濁した。
【0137】
1e)シグナル算出及び正規化
初期データセットは、全ての試料に対する複数のプローブについて測定したシグナルからなった。3回反復スポットを、信頼できるスポットの対数平均を取ることによって各プローブについて1つのシグナルを作るために結合させた。分析用に、既知の又は検証されたヒトマイクロRNAの発現レベルを測定するために設計されたプローブについてのみシグナルを使用した。全てのデータを対数変換(自然底)し、分析は対数領域で実施した。正規化のための基準データベクトルRは、全ての試料にわたる各プローブについての発現レベルのメジアンをとることによって算出した。各試料データベクトルSについて、試料データと基準データとの最も良いフィッテイングを提供するようにR≒F(S)などの2次多項式Fを見出だした。離れたデータポイント(「外れ値」)は、多項式Fのフィッテイングのためには使用しなかった。試料での各プローブについて(ベクトルSの要素Si)、正規化した値(対数領域において)Miを初期値Siからそれを多項関数Fで変換することよって算出する、これによりMi=F(Si)。
【0138】
1f)ロジスティック回帰
ロジスティック回帰モデルの目的は、いくつかのマイクロRNAの発現レベルなどのいくつかの特徴が、可能性のある2つの群の内の1つに属する確率を決めるために使用することである。ロジスティック回帰は、オッズ比の自然対数、すなわち第2群に属する可能性(1−P)に対する第1群に属する可能性(P)の比を様々な発現レベルの線形結合としてモデル化する(対数領域において)。対数回帰は、
【数1】
を推定し、式中β0はバイアスであり、Miは分類に使用したi番目のマイクロRNAの発現レベル(正規化、対数領域において)であり、βiはそれに対応する係数である。
【0139】
ロジスティックモデル(P)の確率出力は、ここで1D閾値分類子を使用してPを閾値と比較することによって二分決定に変換され、PTHと記される、すなわちP>PTHの場合、試料は「第1群」に属し、逆の場合も同じである。PTHは、誤分類の数が最少となるように選択される。
【0140】
(例1.1)
特異的マイクロRNAは、中皮腫と腺癌とを識別できる
肺胸膜中皮腫(試料7個)対腺癌(試料85個)のアレイ結果の分析を図1に示す。結果は、表1に示すとおり、いくつかのmiRの発現様式における有意差を示した。
表1:
【表1】
miR名は、miRBase登録名(release9.1)である。
MIDは、成熟マイクロRNAの配列番号である。
HIDは、マイクロRNAヘアピン前駆体(プレマイクロRNA)の配列番号である。
p値は、試料の2群間での対応のない両側t検定の結果である。
【0141】
これらのmiRは、中皮腫と腺癌腫瘍(原発又は転移のいずれでも)とを識別するために使用できる。分類は単純閾値(1又は2次元閾値)、ロジスティック回帰モデル又は任意の他の分類子のいずれでも行うことができる。
【0142】
マイクロアレイで検出された4種のmiR:hsa−miR−200a(配列番号5)、hsa−miR−200b(配列番号6)、hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−141(配列番号1)に基づくロジスティック回帰を使用する例示的分類子を図2に示す。肺胸膜中皮腫の検出の感度は100%であり、シグナルの特異性は98%である。分類子のp値は、2.74e−24である。
【0143】
(例1.2)
特異的マイクロRNAは中皮腫と、大腸、腎臓、肝臓、膵臓又は胃由来の腫瘍とを識別できる
中皮腫(試料7個)対大腸、腎臓、肝臓、膵臓又は胃由来の腫瘍(試料59個)のアレイ結果の分析を図3に示す。結果は、表2に示すとおり、いくつかのmiRの発現様式における有意差を示した。
表2:
【表2】
miR名は、miRBase登録名(release9.1)である。
MIDは、成熟マイクロRNAの配列番号である。
HIDは、マイクロRNAヘアピン前駆体(プレマイクロRNA)の配列番号である。
p値は、試料の2群間での対応のない両側t検定の結果である。
【0144】
これらのmiRは、中皮腫と大腸、腎臓、肝臓、膵臓及び胃由来の腫瘍(原発又は転移のいずれでも)とを識別するために使用できる。分類は単純閾値(1又は2次元閾値)、ロジスティック回帰モデル又は任意の他の分類子のいずれでも行うことができる。
【0145】
マイクロアレイで検出された2種のmiR:hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−194(配列番号4)に基づくロジスティック回帰を使用する例示的分類子を図4に示す。
【0146】
hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−194(配列番号4)による中皮腫検出の感度は100%であり、シグナルの特異性は97%である。分類子のp値は、6.4186e−008である。
【0147】
(例1.3)
特異的マイクロRNAは中皮腫と、様々な組織型由来の肺腫瘍とを識別できる
中皮腫(試料7個)対肺腫瘍(試料49個)のアレイ結果の分析を図5に示す。結果は、表3に示すとおり、いくつかのmiRの発現様式における有意差を示した。
【0148】
これらのmiRは、中皮腫と肺腫瘍(原発又は転移のいずれでも)とを識別するために使用できる。分類は単純閾値(1又は2次元閾値)、ロジスティック回帰モデル又は任意の他の分類子のいずれでも行うことができる。
【0149】
マイクロアレイで検出された2種のmiR:hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−141(配列番号1)に基づくロジスティック回帰を使用する例示的分類子を図6に示す。
【0150】
hsa−miR−200c及びhsa−miR−141による中皮腫検出の感度は100%であり、シグナルの特異性は98%である。分類子のp値は、2.5278e−007である。
【0151】
マイクロアレイで検出された2種のmiR:hsa−miR−193a(配列番号3)及びhsa−miR−200a(配列番号5)に基づくロジスティック回帰を使用する別の例示的分類子を図7に示す。
【0152】
hsa−miR−193a及びhsa−miR−200aによる中皮腫検出の感度は100%であり、シグナルの特異性は96%である。分類子のp値は、3.7521e−007である。
表3:
【表3】
miR名は、miRBase登録名(release9.1)である。
MIDは、成熟マイクロRNAの配列番号である。
HIDは、マイクロRNAヘアピン前駆体(プレマイクロRNA)の配列番号である。
p値は、試料間での対応のないt検定の結果である。
【0153】
(例2)
中皮腫と、様々な組織型由来の非中皮腫腫瘍とを識別するためのqRT−PCRアッセイ
2a)試料
腫瘍試料は、複数の供給元から得た。各施設のIRB又はIRBと同意義の指針に従って全ての試料について施設内承認審査を取得した。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料については、初期診断、組織型、グレード及び腫瘍百分率を試料の最初及び/又は最後の切片で実施したヘマトキシリン−エオシン(H&E)染色スライドにおいて病理医が決定した。誤分類の症例については診療情報を再調査した。
【0154】
RNAを以下の供給源:肺胸膜での中皮腫原発性腫瘍試料20個(肉腫様2個、類上皮12個及び既知の亜型以外6個)、非小細胞腺癌原発性試料20個、腎臓試料10個[転移9個(肺胸膜への転移1個及び肺への転移9個)並びに原発性腫瘍1個]、膵臓原発性5個、大腸から肺への転移5個、肝臓原発性試料5個、膀胱原発性試料5個、乳房から肺への転移5個、卵巣試料4個(肺胸膜への転移1個、及び原発性腫瘍3個)、由来のパラフィン包埋(FFPE)組織の試料79個から抽出した。
【0155】
2b)PCR手順
以下のとおり混合物を調製した:
【表4】
この混合物6μlを適切なRNA試料4μl(又はRNAを含まない対照の超純水)に加え、37℃で1時間インキュベートした。
ポリ(T)アダプター(GCGAGCACAGAATTAATACGACTCACTATCGGTTTTTTTTTTTTVN、配列番号42)混合物を以下のとおり調製した。
【表5】
この混合物3μlを適切に表示したPCRチューブに入れた。ポリアデニル化RNA及びRNAを含まない対照から5μlを、混合物3μlを含むPCRチューブに移した。
【0156】
チューブをPCR装置に入れ、アニーリング工程を以下のアニーリングプログラムに従って実施した:
ステップ1:85℃、2分間
ステップ2:70℃から25℃へ20秒間の1サイクルごとに1℃ずつ下げた。
【0157】
逆転写混合物を以下のとおり調製した:
【表6】
組換えRnasin 1.5μl及びsuperscript II RT 1μl(1試料あたり)を上記の混合物に加えた。混合物12.5μlを、アニールしたポリA RNA及びRNAを含まない対照を含む各PCRチューブに直ちに加えた。
【0158】
チューブを直ちにサーモサイクラーに置き、以下の逆転写プログラムを実行した:
ステップ1:37℃、5分間
ステップ2:45℃、5分間
ステップ3:ステップ1〜2を5回繰り返す
ステップ4:4℃でプログラムを終了
【0159】
プライマー−プローブ混合物を調製した。各チューブで10μM Fwdプライマーを同じRNAに特異的である5μMの対応するMGBプローブの同容量と混合した。
【0160】
Fwdプライマー及びMGBプローブの配列を表4に示す。
表4:プライマー及びプローブの配列
【表7】
*Rosetta Genomicsでクローン化された。
【0161】
cDNAを最終濃度0.5ng/μlに希釈した。PCR混合物は以下のとおり:
【表8】
119μl(RNAを含まない対照用及びcDNAを含まない対照用)又は289μlのPCR混合物を適切に表示したマイクロチューブに分注した。cDNA(0.5ng/μl)17μlを混合物を含むマイクロチューブに分注した。混合物から18μlを各ウェルにリピーターピペットを使用して分注することによってPCRプレートを調製した。プライマープローブ混合物2μlを各ウェルにマルチチャンネルピペッターを使用して加えた。プレートをPCR装置に入れ、以下のプログラムを実行した:
段階1、Reps=1
ステップ1:95.0で10分間保持(MM:SS)、ランプ速度=100
段階2、Reps=40
ステップ1:95.0で0:15保持(MM:SS)、ランプ速度=100
ステップ2:60.0で1:00保持(MM:SS)、ランプ速度=100
標準7500モード
試料容量(μL):20.0
データ収集:段階2、ステップ2
【0162】
2c)qRT−PCRによって検出された発現レベルの処理
所望の核酸の発現レベルを上に記載のとおり定量的RT−PCRによって検出した。PCR Ctシグナルは、増幅物が蛍光の閾値を超える最初のサイクルを表す。CTの低い値は、マイクロRNAの高い存在量又は高い発現レベルを表す。
Ctの陰性対照ウェルは劣決定であった。
結果は、以下の概要の内の1つによって処理した:
A.3回反復の加重されたCtを3回反復のメジアンとして算出した。32Ct以下のメジアンについて、1Ctまでの外れ値を許容する。32を超えて37Ctより低いメジアンについては、1.5Ctまでの外れ値を許容する。37Ct以上のメジアンについては、2Ctまでの外れ値を許容する。3回反復が上の定義による外れ値2個を有する場合、それは除外された。
B.3回反復の加重されたCtを以下のとおり算出した:全ての反復が1Ct以内の差異であった場合、最小と最大のCtの間の差異が1未満であったことを意味し、それらの平均を以下のとおり算出した:
Ctmax−Ctmin≦1→加重されたCt=(Ctmax+Ctmedian+Ctmin)/3
外れ値のCtのそれぞれが中央値から1Ct未満の(又は1Ctと等しい)差異を有する場合、それらの平均を算出した。
Ctmax−Ctmedian≦1及びCtmedian−Ctmin≦1→加重されたCt=(Ctmax+Ctmedian+Ctmin)/3
外れ値のCtの内の1個がメジアンCtから1Ctを超える差異を有する場合−それは加重されたCtには使用しない。
データの解釈は、以下の判定基準に従った:
U6は、20から32の間の加重されたCtを有するはずである。そうでなければ実験は失敗であった。例2全体にわたってPCRシグナル(Ct)はこの試料についての各マイクロRNAの加重されたCtからこの試料についてのU6の加重されたCtを減算することによって各試料について正規化した。したがって正規化Ctは、正規化Ctの低い値がマイクロRNAの高い存在量又は高い発現レベルを表すように、発現レベルから反転したままである。
【0163】
(例2.1)
特異的マイクロRNAは、肺胸膜中皮腫と肺腺癌とを識別できる
PCRで検出された2種のmiR:hsa−miR−141(配列番号1)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)に基づく線形結合を使用する例示的分類子を図8に示す。検出感度は、100%であり、シグナルの特異性は100%である。
【0164】
(例2.2)
特異的マイクロRNAは、肺胸膜中皮腫と肝腫瘍とを識別できる
PCRで検出された2種のmiR:hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−122a(配列番号23)に基づく線形結合を使用する例示的分類子を図9に示す。検出感度は、100%であり、シグナルの特異性は100%である。
【0165】
(例2.3)
特異的マイクロRNAは、肺胸膜中皮腫と、大腸又は膵臓のいずれか由来の腫瘍とを識別できる
PCRで検出された2種のmiR:hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)に基づく線形結合を使用する例示的分類子を図10に示す。検出感度は、100%であり、シグナルの特異性は100%である。
【0166】
(例2.4)
特異的マイクロRNAは、肺胸膜中皮腫と膀胱腫瘍とを識別できる
PCRで検出された2種のmiR:hsa−miR−141(配列番号1)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)に基づく線形結合を使用する例示的分類子を図11に示す。検出感度は、100%であり、シグナルの特異性は100%である。
【0167】
(例2.5)
特異的マイクロRNAは、肺胸膜中皮腫と卵巣及び乳房の腫瘍とを識別できる
PCRで検出された2種のmiR:hsa−miR−141(配列番号1)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)に基づく線形結合を使用する例示的分類子を図12に示す。検出感度は、100%であり、シグナルの特異性は100%である。
【0168】
(例2.6)
特異的マイクロRNAは、肺胸膜中皮腫と腎臓腫瘍とを識別できる
PCRで検出された2種のmiR:hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−122a(配列番号23)に基づく線形結合を使用する例示的分類子を図13に示す。検出感度は、90%であり、シグナルの特異性は4個の誤りを含んで80%である。
【0169】
(例2.7)
中皮腫と様々な組織型由来の非中皮腫腫瘍とを識別するためのqRT−PCRアッセイの確立
2.7.1)アッセイ#1
hsa−miR−192(配列番号2)、hsa−miR−200c(配列番号11)hsa−miR−193a−3p(配列番号10)及びU6(配列番号41)の発現レベルを上の例2bに記載のPCR手順により測定した。
算出した加重されたCtを使用して、アッセイについての最終スコアを3種のmiRのそれぞれについて算出した加重されたCtのそれぞれから、U6の加重されたCtを減算することによって決定した:
NormCt(miR−192)=(加重されたCt(miR−192)−加重されたCt(U6);
NormCt(miR−193a−3p)=加重されたCt(miR−193a−3p)−加重されたCt(U6);
NormCt(miR−200c)=加重されたCt(miR−200c)−加重されたCt(U6);
【0170】
qRT−PCRアッセイの結果の分析は、2ステップで実施する:
ステップ1:hsa−miR−192(配列番号2)の正規化Ct、(NormCt(hsa−miR−192))を表5に示すとおり閾値と比較した。
低スコアリング試料を非中皮腫と決定した;
残りの試料は、ステップ2へ継続した。
ステップ2:hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)の正規化Ctの線形結合を算出し、表5に示すとおり閾値と比較した。
【0171】
算出及びアッセイ結果を表5に示す。
表5:
M1=NormCt(miR−192);
M2=NormCt(miR−200c)−1.5*NormCt(miR−193a−3p)
LC=低信頼度
HC=高信頼度
【表9】
【0172】
hsa−miR−192(配列番号2)、hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)による中皮腫検出の感度は、95%(19/20)であり、特異性は93%(55/59)である。非中皮腫癌のそれぞれについての検出の精度を表6に示す。
表6:
【表10】
【0173】
2.7.1)アッセイ#2
上の例2bに記載のPCR手順により、hsa−miR−192(配列番号2)、hsa−miR−122(配列番号24)hsa−miR−200c(配列番号11)hsa−miR−193a−3p(配列番号10)及びU6(配列番号41)の発現レベルは計測された。
算出した加重されたCtを使用して、アッセイについての最終スコアを4種のmiRのそれぞれについて算出した加重されたCtのそれぞれから、U6の加重されたCtを減算することによって決定した:
NormCt(miR−192)=加重されたCt(miR−192)−加重されたCt(U6);
NormCt(miR−122)=加重されたCt(miR−122)−加重されたCt(U6);
NormCt(miR−193a−3p)=加重されたCt(miR−193a−3p)−加重されたCt(U6);
NormCt(miR−200c)=加重されたCt(miR−200c)−加重されたCt(U6);
【0174】
qRT−PCRアッセイの結果の分析は、2ステップで実施する:
ステップ1:hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−122(配列番号24)の正規化Ct、(NormCt(hsa−miR−192)、NormCt(hsa−miR−122))を表7に記載のとおり閾値と比較した。
低スコアリング試料を非中皮腫と決定した;
残りの試料は、ステップ2へ継続した。
ステップ2:hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)の正規化Ctの線形結合を算出し、表7に記載のとおり閾値と比較した。
【0175】
算出及びアッセイ結果を表7に示す。
表7:
M1=NormCt(miR−192);
M2=NormCt(miR−122);
M3=NormCt(miR−200c)−1.5*NormCt(miR−193a−3p)
LC=低信頼度
HC=高信頼度
【表11】
【0176】
図14は、試料79個についてhsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−122a(配列番号23)を使用するアッセイ#2の分類子の第1ステップを示す。2種のmiRNAの組合せで低くスコア化された試料を「非中皮腫」と同定した。残りの試料は次のステップへ継続した。分類子の第2ステップを図15に示す。
【0177】
hsa−miR−192(配列番号2)、hsa−miR−122(配列番号24)hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)による中皮腫検出の感度は、95%(19/20)であり、特異性は93%(55/59)である。非中皮腫癌のそれぞれについての検出の精度を上の表6に示す。
【0178】
2.7.2)アッセイ#3
上の例2bに記載のPCR手順によるhsa−miR−192(配列番号2)、hsa−miR−122(配列番号24)hsa−miR−141(配列番号1)hsa−miR−193a−3p(配列番号10)及びU6(配列番号41)の発現レベル。
【0179】
算出した加重されたCtを使用して、アッセイについての最終スコアを4種のmiRのそれぞれについて算出した加重されたCtのそれぞれから、U6の加重されたCtを減算することによって決定した:
NormCt(miR−192)=加重されたCt(miR−192)−加重されたCt(U6);
NormCt(miR−122)=加重されたCt(miR−122)−加重されたCt(U6);
NormCt(miR−141)=加重されたCt(miR−141)−加重されたCt(U6);
NormCt(miR−193a−3p)=加重されたCt(miR−193a−3p)−加重されたCt(U6);
qRT−PCRアッセイの結果の分析は、2ステップで実施する:
ステップI:hsa−mir−192及びhsa−miR−122の正規化平均Ctを加えた:
正規化された加重されたCt(miR−192)+正規化された加重されたCt(miR−122)
低スコアリング試料を非中皮腫と決定した;
高スコアリング試料は表8に従って分析した:
表8:
【表12】
ステップII:正規化された加重されたCt(miR−141)から正規化された加重されたCt(miR−193a−3p)を減算した:正規化された加重されたCt(miR−141)−正規化された加重されたCt(miR−193a−3p)。
低スコアリング試料を非中皮腫と決定した;
高スコアリング試料を表9に従って中皮腫と決定した。
表9:
【表13】
【0180】
このアッセイの分類子の第1及び第2ステップをそれぞれ図16及び17にさらに示す。
【0181】
hsa−miR−192(配列番号2)、hsa−miR−122(配列番号24)hsa−miR−141(配列番号1)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)による中皮腫検出の感度は、95%(19/20)であり、特異性は98%(58/59)である。非中皮腫癌のそれぞれについての検出の精度を表10に示す。
表10:
【表14】
【0182】
(例3)
マイクロRNAは、腺癌及び腎細胞癌(RCC)からの中皮腫(MPM)の同定のための分子マーカーとして役立つ。
肺胸膜由来のMPM試料7個、RCC試料16個及び、大腸(n=17)、肺(n=15)、卵巣(n=10)、食道(n=11)、子宮内膜(n=9)、胃(n=6)、膵臓(n=6)、乳房(n=4)及び前立腺(n=3)由来の腺癌81個を含む、104個の保存された、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)癌試料をマイクロRNAマイクロアレイの使用によって特徴付けた。
【0183】
表11は、中皮腫と腺癌又はRCCのいずれかとの間で差次的に発現されるマイクロRNAについて、悪性胸膜中皮腫(MPM)、腺癌及びRCCの試料での蛍光の正規化されたメジアン値を示す。ベンジャミニ−ホッホバーグ誤検出率0.2を差次的に発現されるマイクロRNAを同定するために使用し、それぞれ0.05及び0.04のp値カットオフを得た。2種の比較のそれぞれについて、p値(対応のない両側t検定)、発現のメジアンの倍数変化(上方調節又は下方調節のいずれでも、メジアン値として示す)、及び各マイクロRNAの分類可能性を示唆する受信者動作特性(ROC)曲線下の面積であるAUCについての値を示す。マイクロRNAを2種の比較でのAUCの合計の減少値によって選別する。
表11:悪性胸膜中皮腫(MPM)と腺癌(Adeno)又は腎細胞癌(RCC)との間で差次的に発現されるマイクロRNA
【表15−1】
【表15−2】
【0184】
中皮腫試料と腺癌試料との間、及び中皮腫試料とRCC試料との間のマイクロRNA発現の比較を図18A及び18Bにそれぞれ示す。
【0185】
hsa−miR−193a−3p(配列番号10)は、腺癌及びRCCの両方と比較して中皮腫で有意に過剰発現された唯一のマイクロRNAであった。hsa−miR−200c(配列番号11)が最も強いシグナルを有して、hsa−miR−200ファミリーは腺癌試料で強く過剰発現された。hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−194(配列番号4)発現は、RCCにおいて最も高く、hsa−miR−192(配列番号2)でのシグナルが幾分強かった。総合して、これらのマイクロRNAは、腫瘍の各研究群における特異的発現を有するパネルを含む(図18C)。
【0186】
これらのマイクロRNAの発現をqRT−PCRプラットホームを使用して、MPM試料22個(マイクロアレイセットからの反復試料7個及び新たな試料15個)、腎細胞癌4個(反復試料2個を含む)、並びに肺(n=25)、乳房(n=4)、膀胱(n=2)、卵巣(n=4)、大腸(n=2)及び膵臓(n=2)の腺癌39個(内5個は反復)を含むFFPE腫瘍試料でのhsa−miR−200c(配列番号11)、hsa−miR−193a−3p(配列番号10)及びhsa−miR−192(配列番号2)の発現レベルを測定して検証した。U6 snRNA(配列番号41)の発現レベルを各試料で測定し、正規化に使用した。PCR Ctシグナルを、この試料についての各マイクロRNAのCtの平均からこの試料についてのU6のCtの平均を減算し、全ての試料にわたるU6のCtの平均を戻し加えることによって各試料について正規化した。次いでこのシグナルを、任意に選択した値40からこの正規化された値を減算することによって反転させた。これにより正規化し反転させたCtの低い値は、マイクロRNAの低い存在量又は低い発現レベルを表す。qRT−PCRプラットホームを使用して追加的な別の試料を測定し、発現における差異がこれらの組織の確実に測定できる一般的特質であることを示唆して、これらのマイクロRNAの発現レベルは同じ様式を維持した(図18D)。
【0187】
腺癌、RCC又はHCC(肝細胞癌)からの中皮腫の鑑別診断のために定量的診断アッセイを、明確な分類規則及びこれらのマイクロRNAの発現レベルの閾値を定義することによって開発した。qRT−PCRプラットホームをhsa−miR−200c(配列番号11)、hsa−miR−193a−3p(配列番号10)、hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−122(配列番号24)並びに正規化のためのU6(配列番号41)snRNAの発現レベルを各試料について[3回反復で]測定するために使用した。分類規則及び閾値を、MPM試料20個(前述のセットからの反復試料12個を含む)、RCC試料10個(反復試料4個を含む)、HCC試料5個並びに、肺(n=20)、膀胱(n=5)、大腸(n=5)、膵臓(n=5)、乳房(n=5)及び卵巣(n=4)の腺癌44個(内16個は反復)からなる試料79個のセットで試した。hsa−miR−192(配列番号2)の発現レベルは、HCC又は大腸及び膵臓組織由来の腺癌の試料から中皮腫試料を容易に識別できたが、RCC試料は発現レベルのより広い分布を有した(図19A)。hsa−miR−122(配列番号24)は、HCC試料において確実に非常に強く過剰発現された(図19A)。腺癌で過剰発現されるhsa−miR−200c(配列番号11)と、中皮腫で過剰発現されるhsa−miR−193a−3p(配列番号10)との組合せは、RCCがシグナルのより広い分布を示して、2つの群を正確に識別した(図19B)。
【0188】
これらの発現測定を使用して、所与の試料が中皮腫試料であるかどうかを決定する平易な分類規則を定義した。hsa−miR−192(配列番号24)の発現(正規化Ct)が6.5未満である場合(図19Aでの縦実線)、及びhsa−miR−200c(配列番号11)の発現足す1.5(正規化Ct単位)がhsa−miR−193a−3p(配列番号10)の正規化Ctの1.5倍未満である場合(図19Bでの斜実線)に試料は中皮腫であると同定され、そうでなければ他の型の腫瘍、RCC、HCC又は腺癌のいずれかであると同定される。図表において、発現値が図19Aの実線の左側にあり、且つ図19Bの斜線を超えている場合に試料は中皮腫であると同定される。これらの決定閾値の両側の1.5正規化Ctの限界(図19での実線に平行する点線)は、qRT−PCRアッセイの再現性を反映し、訓練セットでの正確な能力を提供する確実性の低い領域として選択され、訓練セットで示し得ない追加的生物学的変化を考慮する。異なる特異性を有する3種のマイクロRNAの発現を組み合わせるこの決定規則は、訓練セットにおいて94%の総合的な精度に達した。表12に示すとおり、91%の試料は高い信頼度で分類され、その内94%は正しく分類された。RCCは、発現レベルのより広い分布のため最も低い精度であったが、組合せ決定基準は試料10個の内7個の正確な同定を可能にし、その内5個は高い精度を有した。
表12:hsa−miR−192(配列番号24)、hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)の発現レベルに、定義した鑑別診断規則を使用する訓練試料及びテスト試料の分類。HC−高信頼度、LC−低信頼度。
【表16】
【0189】
中皮腫の鑑別診断におけるこれらのマイクロRNAの重要性及び有用性は、様々な試料セット及びプラットホームにおいて示された。選択した決定規則及び決定閾値の精度を検証するために、これらの閾値を新たな試料及び初期の発見ステップにおいて使用した試料を含む、訓練セットに含まれていない試料を分類するために使用した。訓練セットを使用して分類規則を定義した後、同じ手順を、中皮腫試料12個、RCC試料8個、HCC試料5個、並びに肺(n=15)、膀胱(n=9)、卵巣(n=6)、大腸(n=5)、乳房(n=4)及び膵臓(n=3)の腺癌42個を含むテストセットでのこれらのマイクロRNAの発現を測定するために使用した(図19C及び19D)。テストセットの試料67個の内、44個は独自の試料であり、試料23個(中皮腫9個、RCC3個及び腺癌11個)は初期の発見ステップからの反復であるが(図18)、決定規則又は閾値の試用では使用されなかった。あらかじめ定義した分類規則を使用して、各試料を4つのカテゴリー:「高信頼度の中皮腫」、「低信頼度の中皮腫」、「低信頼度の非中皮腫」又は「高信頼度の非中皮腫」の内の1つに帰属させた。表12に示すとおり、この分類規則は、テスト試料67個の内66個を正しく同定し(98.5%)、その内57個は高信頼度で分類された。新たなテスト試料44個の内、43個は正しく分類され、その内37個は高信頼度で分類され、中皮腫の同定について感度100%及び特異性98%を得た。
【0190】
結果は、3種のマイクロRNAの発現レベルを使用するマイクロRNAに基づくアッセイが、非常に高い感度及び特異性を有して悪性胸膜中皮腫(MPM)を正確に診断でき、且つそれを胸膜に関する他の上皮悪性腫瘍から識別できることを示す。このアッセイは、実施しやすく、再現性において高い信頼性があり、この癌を診断するために病理学者が使用する現在利用できる手段への少なくとも強力な補強である。分類のために少数のマイクロRNAが必要であり、これらのマイクロRNAの高い組織特異性及びパラフィンに包埋された保存用固定化組織からのそれらの決定の容易さは、それらを、この疾患についての信頼でき、且つ有力なバイオマーカーの非常に魅力的な候補にする。体液及び血清中でのそれらの保存性についての近年の実証は、関連する胸膜浸出液における中皮腫の早期且つ正確な診断及び中皮腫全般の早期検出のためのそれらの将来の使用も示すことができる。
【0191】
(例4)
扁平上皮癌と腺癌とを識別するためのマイクロアレイアッセイ
4a)試料
新鮮凍結試料及びFFPE試料を含む、NSCLC肺扁平上皮癌試料62個及びNSCLC肺腺癌試料60個をいくつかの供給元から得た。
【0192】
代表的なブロックからの組織を1.5mlマイクロ遠心チューブに切り取り(10マクロメートル切片5個)、切片での腫瘍の量を評価するためにヘマトキシリン−エオシン染色スライドの系列を各ブロックから得た。全ての試料は、無記名で、検証アッセイ及び分析を実施する調査者にわからないようにした。
FFPE組織をキシレンで脱パラフィン化し、エタノールで洗浄し、プロテイナーゼKで消化した。RNAを酸フェノール:クロロホルムで抽出し、続いてエタノール沈殿及びデオキシリボヌクレアーゼ消化した。凍結組織から全RNAをmiRvana microRNA isolation kit(Ambion)を使用して抽出した。
【0193】
4b)マイクロアレイ
カスタムマイクロRNAマイクロアレイを以下のとおり調製した:マイクロRNAを表すDNAオリゴヌクレオチドプローブ約650個をコートマイクロアレイスライド(Nexterion(登録商標)Slide E、Schott、Mainz、Germany)に3回反復でスポットした。全RNA3〜5μgをRNAリンカー、p−rCrU−Cy/dye(Dharmacon、Lafayette、CO;Cy3又はCy5)の3’端への連結によって標識した。スライドを標識RNAと12〜16時間、42℃でインキュベートし、次いで2回洗浄した。アレイを10μmの解像度で走査し、画像をSpotReaderソフトウェア(Niles Scientific、Portola Valley、CA)を使用して分析した。マイクロアレイスポットを組合せ、シグナルを正規化した。
【0194】
4c)マイクロアレイデータ分析及び統計
2つの群(扁平上皮癌試料又は腺癌試料)の少なくとも1つにおいて300を超える正規化した蛍光シグナルのメジアンをマイクロアレイにおける信頼できる発現とみなした。発現レベルにおける差異の有意性を対応のない両側t検定によって評価した。p値の閾値を0.05/141=0.00035に調整することによって多重仮説検定を制御するためにボンフェローニ法を使用した。
【0195】
4d)アッセイ
扁平上皮癌試料対腺癌試料のアレイ結果を図20に示す。
【0196】
扁平上皮癌試料におけるhsa−miR−205(配列番号49)の発現は、腺癌試料におけるその発現よりも有意に高い。対照的に、扁平上皮癌試料におけるhsa−miR−29b(配列番号44)、hsa−miR−30b(配列番号47)及びhsa−miR−375(配列番号8)の発現は、腺癌試料におけるそれらの発現よりも有意に低い。したがって、図21に示すとおりこれらのmiRは、扁平上皮癌試料と腺癌試料とを識別するための手段として役立つことができる。
【0197】
(例5)
扁平上皮及び非扁平上皮組織像を有する肺非小細胞癌(NSCLC)試料を識別するためのqRT−PCRアッセイ
5a)試料
新鮮凍結試料及びFFPE試料を含む試料47個(その内19個は肺扁平上皮癌であり、15個は腺癌であり、13個はラージNSCLCであった)をいくつかの供給元から得た。
【0198】
代表的なブロックからの組織を1.5mlマイクロ遠心チューブに切り取り(10マクロメートル切片5個)、切片での腫瘍の量を評価するためにヘマトキシリン−エオシン染色スライドの系列を各ブロックから得た。全ての試料は、無記名で、検証アッセイ及び分析を実施する調査者にわからないようにした。
【0199】
FFPE組織をキシレンで脱パラフィン化し、エタノールで洗浄し、プロテイナーゼKで消化した。RNAを酸フェノール:クロロホルムで抽出し、続いてエタノール沈殿及びデオキシリボヌクレアーゼ消化した。凍結組織から全RNAをmiRvana microRNA isolation kit(Ambion)を使用して抽出した。
【0200】
5b)PCRプライマー及びプローブ
PCRで使用するFwdプライマー及びMGBプローブの配列を以下に示す:
【表17】
miR−375(配列番号8)及びmiR−205(配列番号49)の発現レベルをhsa−miR−21(配列番号55)及びU6(配列番号41)で正規化した。
【0201】
5c)アッセイ
miR−375(配列番号8)の発現レベルは、扁平上皮試料においてよりも非扁平上皮試料において高く、一方miR−205(配列番号49)の発現レベルは、非扁平上皮試料においてよりも扁平上皮試料において高い。
【0202】
hsa−miR−375(配列番号8)の発現レベルからのmiR−205(配列番号49)の発現レベルの減算は、図21に示すとおり、扁平上皮及び非扁平上皮組織像を有するNSCLC試料の間の識別を提供する。
決定規則:
【表18】
感度100%;特異性100%;高信頼度で分類された試料の百分率は92.6である。
【0203】
具体的な実施形態の前述の記載は、過度の実験を行うことなく、且つ一般的概念から逸脱することなくそのような具体的な実施形態を、現在の知識を応用することによって容易に変更及び/又は種々の応用に適用できる本発明の性質全般を完全に明らかにし、したがってそのような適用及び変更は、開示される実施形態の等価物の意味及び範囲の中であると理解されると意図されるべきであり、意図される。発明は、その具体的な実施形態と併せて記載されているが、多数の別法、変更及び変化は当業者に明白である。したがって添付の特許請求の範囲の精神及び広い範囲内にある全てのそのような別法、変更及び変化を包含することは意図される。
【0204】
詳細な記載及び具体的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、本発明の精神及び範囲内での種々の変化及び変更がこの詳細な記載から当業者に明らかになることから、例示の目的でのみ示されることは理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年10月31日に出願された米国仮特許出願第60/983,944号及び2008年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/083,181号に対して、35U.S.C.§119(e)の元で優先権を主張するものであり、これらの特許出願は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれるものである。
【0002】
本発明は、全体として、特定のタイプの癌に関連するマイクロRNA分子、及びこれらに関連するか又はこれらに由来する様々な核酸分子に関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年、マイクロRNA(miR、miRNA)は、幅広い生物学的プロセスに対して著しい影響を有する、重要な新規なクラスの調節RNAとして浮上してきている。これらの小さな(典型的には18〜24ヌクレオチド長)の非コードRNA分子は、RNAの分解を促進すること、mRNAの翻訳を阻害すること、及びまた遺伝子の転写に影響することによって、タンパク質の発現パターンを調節し得る。miRは、成長及び分化、細胞増殖の制御、ストレス応答、並びに代謝などの様々なプロセスにおいて、極めて重要な役割を有する。現在では、約850個の既知のヒトmiRが存在する。多くのmiRの発現は、ヒトにおける多くのタイプの癌において改変していることが明らかにされており、いくつかの症例においては、このような改変が腫瘍の進行の原因となる役割を有し得るという推測を裏付けるものとして、強力な証拠が提示されている。マイクロRNAの発現は、非常に組織特異的であり、腫瘍の組織由来源の同定に有用である。
【0004】
中皮腫は、肺及び心臓などの胸腔の器官並びに消化管及び肝臓などの腹部器官をそれぞれ包む胸膜、心膜、及び腹膜の表面を被覆する中皮において生じる腫瘍である。広範性の胸膜中皮腫の症例において、胸壁の胸膜側への肋間神経の進入により胸痛が生じ、腫瘍の成長及び器官側での胸膜における胸膜液の蓄積により、呼吸器障害及び循環器障害が生じ得る。最終的には、心臓の直接的な浸潤に進行する、隣接する縦隔器官内への増殖、若しくは横隔膜を介した腹腔内への成長が生じるか、又は、さらなるリンパ行性転移若しくは循環による転移の結果、胸腔の外側での成長が生じ得る。
【0005】
臨床的な疾患病期の多くの異なる分類が中皮種に用いられており、疾患病期を分類するために用いられる方法が異なるため、中皮腫についてのこれまでの治療報告は、治療の結果を比較する際に困難を有するものである(Nakano、Respiration、Vol.18、No.9、916〜925ページ、1999)。さらに、悪性中皮腫は、その原因がアスベストへの暴露と関連しており、これはまた、動物実験においても実証されている(Tada、Journal of Clinical and Experimental Medicine(3月追補)、「呼吸器疾患(Respiratory Diseases)」、406〜408ページ、1999)。気道内に吸引されたアスベストは胸膜の真下の位置に到達し、そこで、腫瘍は最終的に、少なくとも約20年間の慢性的な刺激によって成長し、この腫瘍は、胸膜の全表面を覆う薄層に広がる。その結果、悪性中皮腫はアスベスト関連の疾患であると分類されるが、全ての悪性中皮種がアスベストによって生じるわけではなく、十分に記載されている暴露は、全患者の約半数においてしか観察されない。悪性の胸膜中皮腫は、予後が非常に不良であるために治療に対して耐性であり、対応策を迅速に取る必要がある(Nakano、Respiration、Vol.18、No.9、916〜925ページ、1999)。
【0006】
悪性中皮腫の予後は、疾患病期によって影響される。手術、及びアジュバント免疫治療(例えば、インターフェロン又はインターロイキン)は効果的な治療であり得るが、それは初期の病期での診断という稀な場合においてのみである。
【0007】
胸膜又は腹膜における中皮腫の可能性を扱う場合、考慮される差次的な徴候はわずかである。胸膜及び腹膜の両方が、異なる割合で二次性悪性腫瘍と原発性悪性腫瘍とを有し得、したがって、中皮腫と、二次性悪性腫瘍又は異なる由来源からの別の原発性悪性腫瘍との区別が重要である。病理学的診断は、観察者間で著しく変動し得、特異的なマーカーが存在しない場合には、中皮腫を他の上皮癌から同定することは難しい。
【0008】
肺癌は最も一般的な癌の一つであり、世界中で、癌に関連する死亡の主要な原因となっている。科学者により、バイオマーカー、並びに特定の肺癌の診断、治療、及び予後診断におけるそのバイオマーカーの考えられる役割が懸命に研究されている。
【0009】
正確な診断を行うこと、具体的には、肺扁平上皮癌と、限定はしないが肺腺癌などの他の非小細胞肺癌(NSCLC)とを区別することは、治療法の選択に実質的に重要である。重度の又は生命に関わる出血は、ベバシズマブ(アバスチン)療法を受けている肺扁平上皮癌患者に対する黒枠警告である。これまでに、扁平上皮NSCLCを非扁平上皮NSCLCと区別するための、客観的な標準化された試験は存在しない。
【0010】
様々なNSCLCの初期の検出及び正確な診断のためのバイオマーカーの探求はほとんど成功していない。固有の腫瘍マーカーの発見及び特徴付けに、非常に重きが置かれている。しかし、臨床上有用であるための適切な感度又は特異性を有するマーカーは同定されていないが、複数のマーカーの組合せは、診断の精度を上げることが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特定のタイプの癌に関連する特異的な且つ正確なマーカーに対する要求はいまだ満たされていない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、様々な癌の同定、分類、及び診断に用いられる特定の核酸配列を提供するものである。
【0013】
本発明は、特定の癌を分類する方法であって、対象から生物学的試料を得ること、前記試料から、配列番号2、10、11、24、41、1、3〜9、12〜23、25、26、44〜50、55、及び58〜87、その断片、又はそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される核酸配列の発現プロファイルを決定すること、並びに前記発現プロファイルを参照発現プロファイルと比較することを含み、前記比較の結果により前記特定の癌の分類が可能になる方法を提供する。
【0014】
本発明はさらに、中皮腫を診断する方法であって、対象から生物学的試料を得ること、前記試料から、配列番号2、10、11、24、41、1、3〜9、12〜23、25、26、及び58〜72、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される核酸配列の発現プロファイルを決定すること、並びに前記発現プロファイルを参照発現プロファイルと比較することを含み、前記決定された発現プロファイルと前記参照発現プロファイルとの比較により中皮腫の診断が可能になる方法を提供する。
【0015】
本発明はまた、中皮腫と他の癌とを区別する方法であって、対象から生物学的試料を得ること、前記試料において、配列番号2、10、11、24、41、1、3〜9、12〜23、25、26、及び58〜72、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される核酸配列の発現プロファイルを決定すること、並びに前記発現プロファイルを参照発現プロファイルと比較することを含み、前記決定された発現プロファイルと参照発現プロファイルとの比較により、中皮腫及び前記他の癌のうちの一方であることが示される方法を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、中皮種は胸膜中皮腫である。いくつかの実施形態によれば、中皮種は腹膜の中皮腫である。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、他の癌は腺癌である。腺癌は、肺、胃、腎臓、結腸、前立腺、頸部、食道、膵臓、小腸、及び胸部からなる群から選択される器官の腺癌であり得る。いくつかの実施形態によれば、他の癌は、結腸、腎臓、肝臓、膵臓、及び胃からなる群から選択される器官に由来する。腎臓に由来する癌は腎細胞癌であり得、肝臓に由来する癌は肝細胞癌であり得る。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、核酸配列は、配列番号2、10、11、24、及び41、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される。他の実施形態によれば、核酸配列は、配列番号2、10、11、及び41、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される。他の実施形態によれば、核酸配列は、配列番号2、10、24、及び41、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される。
【0019】
さらなる実施形態によれば、他の癌は腺癌であり、核酸配列は、配列番号1〜22、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号1、2、4〜9、11〜14、及び16〜22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、腺癌であることを示す。他の実施形態によれば、他の癌は腺癌であり、核酸配列は、配列番号1〜22、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号3、10、及び15、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に低いことが、腺癌であることを示す。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、他の癌は、結腸、腎臓、肝臓、膵臓、及び胃からなる群から選択される器官に由来する癌であり、核酸配列は、配列番号1〜7、9〜20、及び22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号1、2、4〜7、11〜14、及び16〜20、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、結腸、腎臓、肝臓、膵臓、及び胃からなる群から選択される器官に由来する癌であることを示す。いくつかの実施形態によれば、核酸配列は、配列番号1〜7、9〜20、及び22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号3、10、及び15、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に低いことが、結腸、腎臓、肝臓、膵臓、及び胃からなる群から選択される器官に由来する癌であることを示す。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、他の癌は肺癌であり、核酸配列は、配列番号1、3、5〜13、15、及び18〜22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号1、5〜9、11〜14、及び18〜22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、肺癌であることを示す。他の実施形態によれば、他の癌は肺癌であり、核酸配列は、配列番号1、3、5〜13、15、及び18〜22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号3、10、及び15、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に低いことが、肺癌であることを示す。肺癌は、肺扁平上皮細胞癌、肺未分化小細胞癌、肺未分化大細胞癌、肺腺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺カルチノイド、及び神経内分泌大細胞癌からなる群から選択され得る。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、他の癌は肝臓癌であり、核酸配列は、配列番号2、14、及び23〜25、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、前記核酸配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、肝臓癌であることを示す。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、生物学的試料は、体液、細胞系、及び組織試料からなる群から選択される。さらなる実施形態によれば、組織は、新鮮組織、冷凍組織、固定組織、ワックス包埋組織、又はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織である。いくつかの実施形態によれば、生物学的試料は、原発不明癌(CUP)、原発性癌、又は転移性癌の対象から得られる。さらなる実施形態によれば、本方法は、分類子アルゴリズムをさらに含む。分類子は、決定木分類子、ロジスティック回帰分類子、最近傍分類子、ニューラルネットワーク分類子、混合ガウスモデル(GMM)、及びサポートベクターマシン(SVM)分類子からなる群から選択され得る。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、核酸配列の発現プロファイルは、核酸のハイブリダイゼーション及び核酸増幅からなる群から選択される方法によって決定される。いくつかの実施形態によれば、核酸のハイブリダイゼーションは、固相核酸バイオチップアレイを用いて、又はin situでのハイブリダイゼーションにおいて実施される。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、核酸増幅の方法はリアルタイムPCRである。リアルタイムPCR法は、フォワードプライマー及びリバースプライマーを含み得る。いくつかの実施形態によれば、フォワードプライマーは、配列番号27、29、31、33、35、37、及び39、並びにそれと少なくとも約80%同一である配列からなる群から選択される配列を含む。さらなる実施形態によれば、リアルタイムPCR法はプローブをさらに含む。いくつかの実施形態によれば、プローブは、配列番号1、2、10、11、23、24、及び41から選択される配列に相補的な配列、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む。さらなる実施形態によれば、プローブは、配列番号28、30、32、34、36、38、40、及び43、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む。
【0026】
本発明により提供されるさらなる態様は、中皮腫と他の癌とを区別するためのキットであり、このキットは、配列番号1、2、10、11、23、24、及び41から選択される配列に相補的な配列、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含むプローブを含む。別の実施形態によれば、プローブは、配列番号28、30、32、34、36、38、40、及び43、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態において、他の癌は腺癌である。他の実施形態において、他の癌は、結腸、腎臓、肝臓、膵臓、胃、及び肺からなる群から選択される器官に由来する。
【0027】
本発明はさらに、対象から生物学的試料を得ること、前記試料において、配列番号8、21、25、44〜50、及び55、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される核酸配列の発現プロファイルを決定すること、並びに前記発現プロファイルを参照発現プロファイルと比較することを含む、扁平非小細胞肺癌(NSCLC)と非扁平NSCLCとを区別する方法であって、前記決定された発現プロファイルと参照発現プロファイルとの比較により、扁平NSCLC及び非扁平NSCLCのうちの一方であることを示す方法を提供する。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、配列番号8及び21、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、非扁平NSCLCであることを示す。他の実施形態によれば、配列番号49〜50、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に低いことが、非扁平NSCLCであることを示す。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、非扁平NSCLCは腺癌であり、配列番号8、21、25、44〜48、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、腺癌であることを示す。他の実施形態によれば、非扁平NSCLCは腺癌であり、配列番号49〜50、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、扁平NSCLCであることを示す。腺癌は、肺、胃、腎臓、結腸、前立腺、頸部、食道、膵臓、小腸、及び胸部からなる群から選択される器官の腺癌であり得る。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、生物学的試料は、体液、細胞系、及び組織試料からなる群から選択される。さらなる実施形態によれば、組織は、新鮮組織、冷凍組織、固定組織、ワックス包埋組織、又はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織である。いくつかの実施形態によれば、生物学的試料は、原発不明癌(CUP)、原発性癌、又は転移性癌の対象から得られる。さらなる実施形態によれば、本方法は、分類子アルゴリズムをさらに含む。分類子は、決定木分類子、ロジスティック回帰分類子、最近傍分類子、ニューラルネットワーク分類子、混合ガウスモデル(GMM)、及びサポートベクターマシン(SVM)分類子からなる群から選択され得る。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、核酸配列の発現プロファイルは、核酸のハイブリダイゼーション及び核酸増幅からなる群から選択される方法によって決定される。いくつかの実施形態によれば、核酸のハイブリダイゼーションは、固相核酸バイオチップアレイを用いて、又はin situでのハイブリダイゼーションにおいて実施される。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、核酸増幅の方法はリアルタイムPCRである。リアルタイムPCR法は、フォワードプライマー及びリバースプライマーを含み得る。いくつかの実施形態によれば、フォワードプライマーは、配列番号39、51、53、及び56、並びにそれと少なくとも約80%同一である配列からなる群から選択される配列を含む。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、リアルタイムPCR法はプローブをさらに含む。さらなる実施形態によれば、プローブは、配列番号8、41、49、55から選択される配列に相補的な配列、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む。さらなる実施形態によれば、プローブは、配列番号40、52、54、及び57、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む。
【0034】
提供されるさらなる態様は、扁平NSCLCと非扁平NSCLCとを区別するためのキットであり、このキットは、配列番号8、41、49、55から選択される配列に相補的な配列、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含むプローブを含む。別の実施形態によれば、このキットは、配列番号40、52、54、及び57、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含むプローブを含む。
【0035】
本発明のこれらの実施形態及び他の実施形態は、以下の図面、記載、及び特許請求の範囲と組み合わせて明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】肺胸膜中皮腫対腺癌のマイクロRNAアレイ結果(log2(蛍光)において)の分析を示す図である。x軸は肺胸膜中皮腫試料7個の正規化発現レベルの平均を示し、y軸は様々な由来の腺癌試料85個の正規化発現レベルの平均を示す。図のように、腺癌においてより高い発現レベルを有するmiRは、hsa−miR−141(配列番号1)、hsa−miR−192(配列番号2)、hsa−miR−194(配列番号4)、hsa−miR−200a(配列番号5)、hsa−miR−200b(配列番号6)、hsa−miR−200c(配列番号11)、hsa−miR−375(配列番号8)及びhsa−miR−429(配列番号9)を含む。
【図2】ロジスティック回帰を使用して4種のmiR:hsa−miR−200a(配列番号5)、hsa−miR−200b(配列番号6)、hsa−miR−200c(配列番号11)、及びhsa−miR−141(配列番号1)の発現レベルに基づいて肺胸膜中皮腫(丸)と腺癌(四角)とを識別するために使用される例示的分類子を示すグラフである。 図2Aは、4種のmiRNAの発現レベルシグナル(マイクロアレイによる)の対数において実施されたロジスティック回帰に基づく確率関数(y軸)を示す。試料(x軸)はそれらの確率スコアによって選別される。 図2Bは、4種のmiRNAのロジスティック回帰に基づく確率関数(y軸)を示す。各群の試料はそれらの確率スコアによって個々に選別される(x軸)。 図2Cは、確率関数の値(X軸)の各範囲についての出現数(Y軸)を示す各群中の確率関数の値のヒストグラムを示す。 図2Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示す。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図3】中皮腫対、大腸、腎臓、肝臓、膵臓及び胃からなる群から選択された器官に由来する癌のマイクロRNAアレイ結果(log2(蛍光)において)の分析を示す図である。x軸は肺胸膜中皮腫試料7個の正規化発現レベルの平均を示し、y軸は大腸、腎臓、肝臓、膵臓及び胃からなる群から選択された器官に由来する癌からの試料の正規化発現レベルの平均を示す。図のように、肺胸膜中皮腫において有意に高い発現を有するmiRはhsa−miR−193a(配列番号3)を含み、大腸、腎臓、肝臓、膵臓及び胃からなる群から選択された器官に由来する癌からの試料においてより高い発現レベルを有するmiRは、hsa−miR−141(配列番号1)、hsa−miR−192(配列番号2)、hsa−miR−194(配列番号4)、hsa−miR−200a(配列番号5)、hsa−miR−200b(配列番号6)、hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−429(配列番号9)を含む。
【図4】ロジスティック回帰を使用して2種のmiR:hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−194(配列番号4)の発現レベルに基づいて肺胸膜中皮腫(丸)と大腸、腎臓、肝臓、膵臓及び胃からなる群から選択された器官に由来する癌(四角)とを識別するために使用される例示的分類子を示すグラフである。 図4Aは、2種のmiRNAの発現レベルシグナル(マイクロアレイによる)の対数において実施されたロジスティック回帰に基づく確率関数(y軸)を示す。試料(x軸)はそれらの確率スコアによって選別される。 図4Bは、2種のmiRNAのロジスティック回帰に基づく確率関数(y軸)を示す。各群の試料はそれらの確率スコアによって個々に選別される(x軸)。 図4Cは、hsa−miR−194(配列番号4)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−200c(配列番号11)のmiRNAマイクロアレイ(x軸)を示す。 図4Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示す。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図5】肺胸膜中皮腫対腺癌のマイクロRNAアレイ結果(log2(蛍光)において)の分析を示す図である。x軸は肺胸膜中皮腫試料の正規化発現レベルの平均を示し、y軸は様々な由来の腺癌試料の正規化発現レベルの平均を示す。図のように、肺胸膜中皮腫において有意に高い発現を有するmiRは、hsa−miR−193a(配列番号3)を含み、腺癌においてより高い発現レベルを有するmiRは、hsa−miR−141(配列番号1)、hsa−miR−200a(配列番号5)、hsa−miR−200b(配列番号6)、hsa−miR−200c(配列番号11)、hsa−miR−375(配列番号8)及びhsa−miR−429(配列番号9)を含む。
【図6】ロジスティック回帰を使用して2種のmiR:hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−141(配列番号1)の発現レベルに基づいて肺胸膜中皮腫(丸)と肺腫瘍(四角)とを識別するために使用される例示的分類子を示すグラフである。 図6Aは、2種のmiRNAの発現レベルシグナル(マイクロアレイによる)の対数において実施されたロジスティック回帰に基づく確率関数(y軸)を示す。試料(x軸)はそれらの確率スコアによって選別される。 図6Bは、2種のmiRNAのロジスティック回帰に基づく確率関数(y軸)を示す。各群の試料はそれらの確率スコアによって個々に選別される(x軸)。 図6Cは、hsa−miR−141(配列番号1)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−200c(配列番号11)のmiRNAマイクロアレイ(x軸)を示す。 図6Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示す。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図7】ロジスティック回帰を使用して2種のmiR:hsa−miR−193a(配列番号3)及びhsa−miR−200a(配列番号5)の発現レベルに基づいて肺胸膜中皮腫と肺腫瘍とを識別するために使用される例示的分類子を示すグラフである。 図7Aは、2種のmiRNAの発現レベルシグナル(マイクロアレイによる)の対数において実施されたロジスティック回帰に基づく確率関数(y軸)を示す。試料(x軸)はそれらの確率スコアによって選別される。 図7Bは、2種のmiRNAのロジスティック回帰に基づく確率関数(y軸)を示す。各群の試料はそれらの確率スコアによって個々に選別される(x軸)。 図7Cは、hsa−miR−200a(配列番号5)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−193a(配列番号3)のmiRNAマイクロアレイ(x軸)を示す。 図7Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示す。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図8】線形結合を使用し、40試料で2種のmiR:hsa−miR−141(配列番号1)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)に基づくqRT−PCRを使用して肺胸膜中皮腫試料(丸)と肺腺癌試料(四角)とを識別するために使用される例示的分類子を示すグラフである。 図8Aは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。試料(x軸)はそれらの線形結合スコアによって選別される。 図8Bは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。各群の試料はそれらの線形結合スコアによって個々に選別される(x軸)。 図8Cは、hsa−miR−193a−3p(配列番号10)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−141(配列番号1)のmiRNA正規化Ct(x軸)を示す。 図8Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示し、ここでAUC=1である。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図9】線形結合を使用し、25試料で2種のmiR:hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−122a(配列番号23)に基づくqRT−PCRを使用して肺胸膜中皮腫試料(丸)と肝臓試料(四角)とを識別するために使用される例示的分類子を示すグラフである。 図9Aは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。試料(x軸)はそれらの線形結合スコアによって選別される。 図9Bは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。各群の試料はそれらの線形結合スコアによって個々に選別される(x軸)。 図9Cは、hsa−miR−122a(配列番号23)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−192(配列番号2)のmiRNA正規化Ct(x軸)を示す。 図9Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示し、ここでAUC=1である。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図10】線形結合を使用し、30試料で2種のmiR:hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)に基づくqRT−PCRを使用して肺胸膜中皮腫試料(丸)と膵臓又は大腸のいずれか由来の試料(四角)とを識別するために使用される例示的分類子を示すグラフである。 図10Aは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。試料(x軸)はそれらの線形結合スコアによって選別される。 図10Bは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。各群の試料はそれらの線形結合スコアによって個々に選別される(x軸)。 図10Cは、hsa−miR−193a−3p(配列番号10)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−192(配列番号2)のmiRNA正規化Ct(x軸)を示す。 図10Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示し、ここでAUC=1である。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図11】線形結合を使用し、25試料で2種のmiR:hsa−miR−141(配列番号1)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)に基づくqRT−PCRを使用して肺胸膜中皮腫試料(丸)と膀胱試料(四角)とを識別するために使用される例示的分類子を示すグラフである。 図11Aは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。試料(x軸)はそれらの線形結合スコアによって選別される。 図11Bは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。各群の試料はそれらの線形結合スコアによって個々に選別される(x軸)。 図11Cは、hsa−miR−193a−3p(配列番号10)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−141(配列番号1)のmiRNA正規化Ct(x軸)を示す。 図11Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示し、ここでAUC=1である。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図12】線形結合を使用し、25試料で2種のmiR:hsa−miR−141(配列番号1)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)に基づくqRT−PCRを使用して肺胸膜中皮腫試料(丸)と卵巣及び乳房の試料(四角)とを識別するために使用される例示的分類子を示すグラフである。 図12Aは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。試料(x軸)はそれらの線形結合スコアによって選別される。 図12Bは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。各群の試料はそれらの線形結合スコア(x軸)によって個々に選別される。 図12Cは、hsa−miR−193a−3p(配列番号10)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−141(配列番号1)のmiRNA正規化Ct(x軸)を示す。 図12Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示し、ここでAUC=1である。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図13】線形結合を使用し、26試料で2種のmiR:hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−122a(配列番号23)に基づくqRT−PCRを使用して肺胸膜中皮腫試料(丸)と腎臓試料(四角)とを識別するために使用される例示的分類子を示すグラフである。 図13Aは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。試料(x軸)はそれらの線形結合スコアによって選別される。 図13Bは、2種のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。各群の試料はそれらの線形結合スコア(x軸)によって個々に選別される。 図13Cは、hsa−miR−122a(配列番号23)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−192(配列番号2)のmiRNA正規化Ct(x軸)を示す。 図13Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示し、ここでAUC=0.915である。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図14】肺胸膜中皮腫試料(丸)と以下の型、肝臓、腎臓、膵臓、大腸、膀胱、卵巣、乳房及び肺の腫瘍試料(四角)とを識別するために使用する2ステップ例示的分類子を示す図である。hsa−miR−122(配列番号24)の正規化Ct(y軸)及びhsa−miR−192(配列番号2)の正規化Ct(x軸)を使用する分類子の第1ステップを示す。実線は、それより低い場合に試料が「非中皮腫」と同定された閾値を表す。点線は、低い信頼区間を表す。hsa−miR−122(配列番号24)の正規化Ctが5.5(点線最低値)より低い、又はhsa−miR−192(配列番号2)の正規化Ctが7(点線最左値)より低い17試料は高い信頼度を有して非中皮腫とみなされた。
【図15】肺胸膜中皮腫試料(丸)と以下の型、肝臓、腎臓、膵臓、大腸、膀胱、卵巣、乳房及び肺の腫瘍試料(四角)とを識別するために使用する2ステップ例示的分類子を示す図である。試料62個についてのhsa−miR−200c(配列番号11)(x軸)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)(y軸)の線形結合を使用する分類子の第2ステップを示す。実線は分類子を表す。点線は低い信頼区間を表す。
【図16】肺胸膜中皮腫試料(丸)と以下の型、肝臓、腎臓、膵臓、大腸、膀胱、卵巣、乳房及び肺の腫瘍試料(四角)とを識別するために使用する2ステップ例示的分類子を示す図である。試料29個についてhsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−122a(配列番号23)の線形結合を使用する分類子の第1ステップを示す。2種のmiRNAの組合せにおいて低くスコア化された試料は「非中皮腫」と同定された。他の試料は次のステップを継続した。 図16Aは、2種類のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。試料(x軸)は、それらの線形結合スコアによって選別される。 図16Bは、2種類のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。各群の試料はそれらの線形結合スコア(x軸)によって個々に選別される。感度:100%、特異性:16%。 図16Cは、hsa−miR−122a(配列番号23)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−192(配列番号2)の正規化Ct(x軸)を示す。 図16Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示し、ここでAUC=0.69298である。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図17】肺胸膜中皮腫試料(丸)と以下の型、肝臓、腎臓、膵臓、大腸、膀胱、卵巣、乳房及び肺の腫瘍試料(四角)とを識別するために使用する2ステップ例示的分類子を示す図である。試料65個についてhsa−miR−141(配列番号1)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)の線形結合を使用する分類子の第2ステップを示す。2種のmiRNAの組合せにおいて低くスコア化された試料は「非中皮腫」と同定された。2種のmiRNAの組合せにおいて高くスコア化された試料は「中皮腫」と同定された。 図17Aは、2種類のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。試料(x軸)は、それらの線形結合スコアによって選別される。 図17Bは、2種類のmiRNAの線形結合(y軸)を示す。各群の試料はそれらの線形結合スコアによって個々に選別される(x軸)。 図17Cは、hsa−miR−193a−3p(配列番号10)の正規化Ct(y軸)に対するhsa−miR−141(配列番号1)の正規化Ct(x軸)を示す。 図17Dは、例示的分類子の曲線下面積(AUC)を示し、ここでAUC=0.99468である。Y軸は感度を示し、X軸は(1−特異性)を示す。
【図18】悪性胸膜中皮腫(MPM)、腺癌及び腎細胞癌(RCC)におけるマイクロRNA発現レベルの比較を示すグラフである。MPM試料7個での各マイクロRNAの正規化し反転した蛍光値のメジアン(X軸)を、腺癌試料81個での(図18AのY軸)、及びRCC試料16個での(図18BのY軸)これらのマイクロRNAの蛍光値のメジアンに対してプロットする。薄い×印は、対照プローブ及び両群において発現レベルが背景レベル(シグナルのメジアン<800)であったマイクロRNAを示す。少なくとも1群において背景レベルを超えるシグナルを有するマイクロRNA(濃い×印)は対応のない両側t検定によって統計的差異について検査された。丸印は、0.2の誤検出率(FDR)で発現値における統計的有意差を有するマイクロRNAを示す(p値はそれぞれ0.05及び0.04未満)。四角は、hsa−miR−200c(配列番号11)、hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)の発現レベルを強調する。 図18Cは、hsa−miR−200c(配列番号11)、hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)のMPM、腺癌及びRCC試料における発現レベルのボックスプロットであり、メジアン(横線)、25から75パーセンタイル(ボックス)及びデータの範囲(「ウィスカー」)を示す。マイクロアレイによる正規化された蛍光シグナルのlog2を単位とする。 図18Dは、MPM試料22個、腺癌試料39個及びRCC試料4個においてqRT−PCRによって測定されたこれらのマイクロRNAの発現レベル(正規化Ct)のボックスプロットである。
【図19】マイクロRNAの発現レベルを使用するHCC(肝細胞癌、丸印)、RCC(四角)及び腺癌(ひし形)からの中皮腫(星印)の鑑別診断を示すグラフである。hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−122(配列番号24)(図19A、図19C)並びにhsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)(図19B、図19D)の発現レベル(正規化し反転したCt)は、MPM試料20個、RCC試料10個、HCC試料5個及び腺癌44個(内10個は大腸又は膵臓組織由来)の訓練セットにおいて(図19A、図19B)、並びにMPM試料12個、RCC試料8個(5個は新規)、HCC試料5個及び腺癌42個(内8個は大腸又は膵臓組織由来)の別の盲検テストセットにおいて(図19C、図19D)qRT−PCRを使用して測定された。実線は、hsa−miR−192の発現レベル(図19A及び図19Cでの縦線)及びhsa−miR−200cとhsa−miR−193a−3pとを組合せた発現レベル(図19B及び図19Dでの斜線)の分類閾値を示す。平行する点線は、正規化し反転した1.5Ct単位の不確実性限界を示す。図19A及び図19Cでの横点線は、hsa−miR−122(配列番号24)の発現レベルでの予想される分類閾値を示す。訓練セット中の追加の中皮腫試料2個はhsa−miR−192(配列番号2)のはるかに低い発現(−5及び−5.5の正規化し反転したCt)を有し、最適なスケーリングのためにパネルAから省略された。訓練セットでの追加の腺癌試料1個及びテストセットでの追加の腺癌試料4個は、hsa−miR−193a−3pの低い発現(それぞれ−3.5並びに、−1.3、−4、−5.4及び−5.7の正規化し反転したCt)を有し、最適なスケーリングのためにパネルB及びDから省略された。
【図20】マイクロアレイデータでのmiR発現(蛍光(logスケールで示す))の平均の散布図であり、X軸は腺癌試料(n=60)での発現の平均を示し、Y軸は扁平上皮癌試料(n=62)での発現の平均を示す。丸付きの記号は、hsa−miR−29b(配列番号44)、hsa−miR−30b(配列番号47)、hsa−miR−375(配列番号8)及びhsa−miR−205(配列番号49)を含む、ボンフェローニ法によって決定された有意に差次的に発現されたmiRに関連する。中央の斜線は、非差次的に発現されたmiRNA(腺癌及び扁平上皮癌の試料において同じ発現レベル)について予想される発現を表し、他の斜線は2倍係数線を表す。
【図21】qRT−PCRを使用して、扁平上皮組織像を有する肺非小細胞癌(NSCLC)の試料(丸印)と非扁平上皮組織像を有するNSCLCの試料(四角−腺癌、プラス記号−大細胞癌)とを識別するために使用される例示的分類子を示す図である。Y軸は、hsa−miR−375(配列番号8)のCtでの発現レベルからhsa−miR−205(配列番号49)のCtでの発現レベルを減算することによって得られた値を示す(x軸は試料の実施順である)。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、特定の核酸(配列番号1〜87)を特定の癌の同定、分類、及び診断に用いることができるという発見に基づくものである。
【0038】
本発明は、異なる腫瘍由来源間を区別するために用いることができる、高感度の、特異的な、及び正確な方法を提供するものである。
【0039】
本発明はさらに、中皮腫と、限定はしないが腺癌、肺腫瘍、並びに結腸、腎臓、肝臓、膵臓、及び胃からなる群から選択される器官に由来する癌からの腫瘍を含む、他のタイプの癌とを区別するために用いることができる方法、さらにまた非小細胞肺癌(NSCLC)と非扁平上皮NSCLCとを区別する方法を提供する。
【0040】
悪性胸膜中皮腫
悪性胸膜中皮腫(MPM)は、多くの考えられる分子標的及び遺伝子標的が発見されているにもかかわらず効果的な治療法がいまだ存在しない、比較的稀な進行性の腫瘍である。充実性の、局所的に進行性の胸膜の腫瘍が、肺実質を覆い、その後そこに浸潤し、それが、生存率が非常に低い重度の臨床的に症候性の疾患をもたらす。この悪性腫瘍の成長についての多くの危険因子が記載されており、それらのうち最も主要なものはアスベストへの暴露、及びおそらくSV40ウイルスへの感染である。症例の遺伝的感受性及び家族集積性も観察されてきており、放射線及び慢性的な感染への暴露もまた危険因子であると考えられる。しかし、MPMが診断される、後期の疾患病期、及び暴露の一部と疾患の診断との間に存在する長期の潜在期間により、疾患の病因に対するこれらの危険因子のそれぞれ及びその下流の分子効果の影響を総合的に評価することが困難になっている。
【0041】
中皮腫の発生は、西ヨーロッパ及び北アメリカの全ての先進国において、そしておそらく後進国においても、近年明らかに増加しており、そのため、今後数年間における、この疾患を発症するであろう患者の推定数もまた増加している。アスベストへの暴露は依然として、症例数が増加し続けている原因となっている主要な因子である。中皮腫を発症している患者の数が増加し続けていることによってまた、前癌性の変化の初期の診断及び検出のためのより良好な手段を開発する重要性が明らかになっている。効果的な治療法はいまだ存在しないが、初期の病期の腫瘍を有する患者の予後が非常に向上したことは、初期の検出が生存率を顕著に向上させ得ること、及びさらに腫瘍の成長を予防し得ることを強く示唆するものである。
【0042】
MPMという用語は、異なる細胞構成を有する、異なるタイプの腫瘍、すなわち、上皮型、肉腫型、及び混合型を含むため、誤解を招くことが多い。中皮腫の大規模な研究において、上皮型中皮腫が最も一般的なタイプ(61.5%)であり、次いで混合型/二相性のタイプ(22%)、そして肉腫型(16.5%)であった。肉腫型の中皮腫と上皮型の中皮腫との区別は比較的容易であるが、上皮型のサブタイプ(混合型を含む)と、胸膜を伴う肺の腺癌との区別は容易及び単純ではないことが多い。70%を超える原発性肺癌は最終的には胸膜を伴い、多くの他の悪性腫瘍が肺及び胸膜に転移するため、悪性中皮腫の正確な診断及び他の癌からのその区別が非常に重要であることは明らかである。中皮腫の診断、並びに肺及び胸膜の他の癌からのその区別が、病理学者間において観察者間で変動するため、また、中皮腫の診断のための単一の特異的で信頼性のあるバイオマーカーが存在しないため、病理学者が優れた確信をもってこの区別を行うことを支援する、信頼性のある客観的なアッセイが必要とされていることは明らかである。
【0043】
胸膜の病変の病理学的な評価には、区別するのが困難であり得る様々な新生物の症状及び反応性の症状が含まれる。最も一般的な診断上の問題は、上皮の悪性中皮腫と腺癌との区別、及び反応性の上皮性又は線維性の増殖と上皮型中皮腫又は肉腫様の中皮腫との区別を伴う。これは、胸膜の浸出液又は小組織の試料のみが病理学的な評価に利用可能である場合にさらに困難となる。過去20年間にわたり、免疫組織化学が、中皮腫の診断のための信頼性のある客観的なツールの探求において最も広く研究された技術となっている。この集中的な取り組みにもかかわらず、悪性中皮腫又は転移性腫瘍の完全に決定的である単一の免疫染色は存在しない。さらに、文献に記録されている、及び市販されているほとんどの抗体では、これらの各抗体の診断上の価値及び免疫組織化学的パネルにおけるこれらの抗体の組合せの価値は、依然として議論中である。悪性中皮腫の全体的な発生が少ないため、多くの病理学者がこの腫瘍の組織学について十分に詳しくはなく、したがってほぼ全面的に免疫診断に依存するようになっており、そのため診断における不正確性が増しているという事実もある。
【0044】
免疫組織化学が進歩しているにもかかわらず、電子顕微鏡法は依然として、漿膜表面に影響する他の腫瘍から中皮種を差次的に診断するための「優れた基準」である。電子顕微鏡法は上皮の変異体の診断に最も寄与してきており、肉腫様の中皮種の同定においてはほとんど有用ではない。しかし、EMの診断に利用可能な組織の量が非常に限られており、組織の小片の採取には試料採取上の非常に大きな誤りが伴うため、EMの診断の必要性は、全ての通常の組織学的及び免疫組織化学的な評価が使い尽くされた後に初めて生じるものである。さらにその場合にも、正確な診断を得るための落とし穴が多い。
【0045】
マイクロアレイ、及び減法的な相補的DNA(cDNA)のハイブリダイゼーションにより決定される、悪性中皮種と正常な胸膜との間の差次的な遺伝子発現は、中皮種に関連するいくつかの遺伝子を示し得、腫瘍に対する潜在的な特徴を構成し得る。したがって、c−myc、fra−1、及びEGFRの上方調節は、発癌の異なる病期で実証された。中皮種において見られるオステオポンチン、ジキシン、及びインテグリン結合キナーゼの上方調節、並びにその後のCD44及びc−metの上方調節もまた、それらを潜在的な腫瘍マーカーとして適用することを可能にしており、そのいくつかは血清においても検出され得る。MPMにおける遺伝子発現プロファイルが、胸部の手術を受けた別個の患者群間において進行までの時間及び生存パターンを予測し得るということを示すこともまた可能となっている。驚くべきことに、腫瘍抑制遺伝子の従来のメンバーにおける頻繁な変化は、このような状況においては見られていない。p53突然変異がMPM細胞系において見られているが、一般的な意味では、MPMの発症におけるp53突然変異の影響はわずかなものである。しかし、pRb抑制遺伝子の活性に密接に関連しているp16/CDKN2Aのホモ接合性欠失は、70%を超える悪性中皮種において報告されており、予後の不良と関連している。
【0046】
マイクロRNA(miR、miRNA)及びそのプロセシング
miRNAをコードしている遺伝子は転写され、pri−miRNAとして知られているmiRNAの最初の転写産物の生産をもたらし得る。pri−miRNAは、ステム及びループを有するヘアピンを含み得る。ヘアピンのステムはミスマッチした塩基を含み得る。pri−miRNAは、いくつかのポリシストロニック構造のヘアピンを含み得る。
【0047】
ヘアピン構造は、RNアーゼIIIエンドヌクレアーゼであるDroshaによって認識され得る。Droshaはpri−miRNAの末端ループを認識し得、約2つのらせん曲部をステムに切断して、pre−miRNAとして知られている60〜70ntの前駆体を生じさせる。Droshaは、RNアーゼIIIエンドヌクレアーゼに典型的な互い違いの切断でpri−miRNAを切断して、5’リン酸及び約2ヌクレオチドの3’オーバーハングを有するpre−miRNAステムループを生じさせ得る。Droshaの切断部位を越えて伸びているステム(約10ヌクレオチド)の約1個のらせん曲部は、効率的なプロセシングに必須であり得る。pre−miRNAはその後、Ran−GTP及び搬出受容体Ex−portin−5により、核から細胞質へ活性的に輸送され得る。
【0048】
pre−miRNAは、同様にRNアーゼIIIエンドヌクレアーゼであるDicerによって認識され得る。Dicerはpre−miRNAの二本鎖ステムを認識し得る。Dicerは、さらなる5’リン酸及び約2ヌクレオチドの3’オーバーハングを残して、末端ループの2つのらせん曲部をステムループの塩基から切り離し得る。ミスマッチを有し得る、得られたsiRNA様二本鎖は、成熟miRNAと、miRNA*として知られている同様のサイズの断片とを含む。miRNA及びmiRNA*は、pri−miRNA及びpre−miRNAの対向するアームに由来し得る。miRNA*配列は、クローニングされたmiRNAのライブラリーにおいて見ることができるが、典型的にはその頻度はmiRNAよりも低い。
【0049】
miRNA*を有する二本鎖種として最初は存在するが、miRNAは最終的には、一本鎖RNAとして、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)として知られているリボ核タンパク質複合体内に組み込まれ得る。様々なタンパク質がRISCを形成し得、RISCは、miRNA/miRNA*二本鎖についての特異性、標的遺伝子の結合部位、miRNAの活性(抑制又は活性化)における多様性をもたらし得、miRNA/miRNA*二本鎖のいずれかの鎖がRISC内に取り込まれる。
【0050】
miRNA:miRNA*二本鎖のmiRNA鎖がRISCに取り込まれる場合、miRNA*は除去及び分解され得る。RISC内に取り込まれたmiRNA:miRNA*二本鎖の鎖は、5’末端があまり強固に対合していない鎖であり得る。miRNA:miRNA*の両端がほぼ等しい5’の対合を有する場合、miRNA及びmiRNA*の両方が遺伝子サイレンシング活性を有し得る。
【0051】
RISCは、miRNAとmRNAとの間の高レベルの相補性に基づいて、特にmiRNAのヌクレオチド2〜7によって、標的核酸を同定し得る。miRNAとその標的との間の相互作用がmiRNAの全長にわたって存在していたケースは、動物において1つだけ報告されている。これはmiR−196及びHox B8について示されており、また、miR−196がHox B8のmRNAの切断を仲介することもさらに示された(Yektaら、2004、Science、304〜594)。或いは、このような相互作用は植物においてのみ知られている(Bartel及びBartel、2003、Plant Physiol、132〜709)。
【0052】
多くの研究が、翻訳を効果的に阻害するために、miRNAとそのmRNA標的の間での塩基対合の必要性に焦点を当てている(Bartel、2004、Cell、116〜281により概説されている)。哺乳動物細胞において、miRNAの最初の8ヌクレオチドが重要であり得る(Doench及びSharp、2004、GenesDev、2004〜504)。しかし、マイクロRNAの他の部分もまた、mRNAの結合に関与している可能性がある。さらに、3’での十分な塩基対合は、5’での不十分な対合を補い得る(Brenneckeら、2005、PLoS 3−e85)。全ゲノムについてmiRNAの結合を分析する、計算による研究により、標的の結合における、miRNAの5’での塩基2〜7についての特定の役割が示唆されているが、通常は「A」であるとされる最初のヌクレオチドの役割もまた認識された(Lewisら、2005、Cell、120〜15)。同様に、ヌクレオチド1〜7又は2〜8も、標的を同定及び認証するために、Krekら(2005、Nat Genet、37〜495)によって用いられた。
【0053】
mRNAにおける標的部位は、5’UTR、3’UTR、又はコード領域にあり得る。興味深いことに、複数のmiRNAが、同一の又は複数の部位を認識することによって、同一のmRNA標的を調節し得る。最も一般的に同定される標的において複数のmiRNAの結合部位が存在することは、複数のRISCの共同作用が最も効率的な翻訳阻害をもたらすことを示し得る。
【0054】
miRNAは、miRNAの切断又は翻訳抑制という2つのメカニズムのいずれかによって、RISCに遺伝子発現を下方調節するよう働きかけ得る。miRNAは、mRNAがmiRNAに対してある程度の相補性を有している場合に、mRNAの切断を特定し得る。miRNAが切断を導く場合、切断は、miRNAの残基10及び11に対合しているヌクレオチドの間であり得る。或いは、miRNAがmRNAに対して必須な程度の相補性を有していない場合、miRNAは翻訳を抑制し得る。動物はmiRNAと結合部位との間の相補性の程度が低い可能性があるため、翻訳の抑制は、動物においてさらに多く見ることができる。
【0055】
miRNAとmiRNA*とのあらゆる対の5’末端及び3’末端において多様性があり得ることに注意されたい。この多様性は、切断部位に関するDrosha及びDicerの酵素的プロセシングにおける多様性に起因し得る。miRNA及びmiRNA*の5’末端及び3’末端の多様性はまた、pri−miRNA及びpre−miRNAのステム構造におけるミスマッチに起因し得る。ステム鎖のミスマッチにより、異なるヘアピン構造の集団が生じ得る。ステム構造における多様性により、Drosha及びDicerによる切断生成物における多様性も生じ得る。
【0056】
核酸
核酸が本明細書において提供される。核酸は、配列番号1〜87の配列又はその変異体を含み得る。変異体は、参照ヌクレオチド配列の相補体であり得る。変異体はまた、参照ヌクレオチド配列と実質的に同一であるヌクレオチド配列又はその相補体であり得る。変異体はまた、ストリンジェントな条件下で参照ヌクレオチド配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列、その相補体、又はそれと実質的に同一であるヌクレオチド配列であり得る。
【0057】
核酸は、10〜250ヌクレオチド長を有し得る。核酸は、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、又は250ヌクレオチド長を有し得る。核酸は合成し得るか、又は本明細書において記載される合成遺伝子を用いて細胞内で(インビトロ若しくはインビボで)発現させることができる。核酸は一本鎖分子として合成することができ、実質的に相補的な核酸とハイブリダイズして二本鎖を形成させることができる。核酸は、一本鎖若しくは二本鎖の形態で細胞、組織、若しくは器官に導入することができるか、又は参照することにより組み込まれる米国特許第6,506,559号に記載されているものを含む当業者に周知の方法を用いて、合成遺伝子によって発現され得る。
【0058】
核酸複合体
核酸はさらに、ペプチド、タンパク質、RNA−DNAハイブリッド、抗体、抗体断片、Fab断片、及びアプタマーの1つ又は複数を含み得る。
【0059】
pri−miRNA
核酸はpri−miRNAの配列又はその変異体を含み得る。pri−miRNAの配列は、45〜30000、50〜25000、100〜20000、1000〜1500、又は80〜100ヌクレオチドを含み得る。pri−miRNAの配列は、本明細書において説明するpre−miRNA、miRNA、及びmiRNA*、並びにその変異体を含み得る。pri−miRNAの配列は、配列番号1〜22、44〜50、55、及び58〜87の配列又はその変異体を含み得る。
【0060】
pri−miRNAはヘアピン構造を形成し得る。ヘアピンは、実質的に相補的な第1及び第2の核酸配列を含み得る。第1及び第2の核酸配列は、37〜50ヌクレオチドであり得る。第1及び第2の核酸配列は、8〜12ヌクレオチドの第3の配列によって隔てられ得る。ヘアピン構造は、その内容が本明細書に組み込まれるHofackerら、Monatshefte f.Chemie、125:167〜188(1994)に記載されている、既定のパラメータを用いたViennaアルゴリズムによって計算された、−25Kcal/mol未満の自由エネルギーを有し得る。ヘアピンは、4〜20、8〜12、又は10ヌクレオチドの末端ループを含み得る。pri−miRNAは、少なくとも19%のアデノシンヌクレオチド、少なくとも16%のシトシンヌクレオチド、少なくとも23%のチミンヌクレオチド、及び少なくとも19%のグアニンヌクレオチドを含み得る。
【0061】
pre−miRNA
核酸はまた、pre−miRNAの配列又はその変異体を含み得る。pre−miRNA配列は、45〜90、60〜80、又は60〜70ヌクレオチドを含み得る。pre−miRNAの配列は、本明細書において説明されるmiRNA及びmiRNA*を含み得る。pre−miRNAの配列はまた、pri−miRNAの5’末端及び3’末端から0〜160ヌクレオチドを除外した、pri−miRNAのpre−miRNAであり得る。pre−miRNAの配列はまた、Sanger miRBaseレジストリ(9.1版若しくは10版)において記載されている配列番号1〜22、44〜50、55、及び58〜87の配列、又はその変異体を含み得る。
【0062】
miRNA
核酸はまた、miRNA(miRNA*を含む)の配列又はその変異体を含み得る。miRNA配列は、13〜33、18〜24、又は21〜23ヌクレオチドを含み得る。miRNAはまた、全部で少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40ヌクレオチドを含み得る。miRNAの配列は、pre−miRNAの最初の13〜33ヌクレオチドであり得る。miRNAの配列はまた、pre−miRNAの最後の13〜33ヌクレオチドであり得る。miRNAの配列は、Sanger miRBaseレジストリ(9.1版若しくは10版)において記載されている配列番号1〜12、23〜25、44、47、49、55、及び58〜72の配列、又はその変異体を含み得る。
【0063】
抗miRNA
核酸はまた、pri−miRNA、pre−miRNA、miRNA、若しくはmiRNA*に結合すること(例えば、アンチセンス若しくはRNAサイレンシング)、又は標的結合部位に結合することなどにより、miRNA又はmiRNA*の活性を遮断し得る、抗miRNAの配列を含み得る。抗miRNAは、全部で5〜100又は10〜60ヌクレオチドを含み得る。抗miRNAはまた、全部で少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40ヌクレオチドを含み得る。抗miRNAの配列は、(a)miRNAの5’と実質的に同一であるか若しくは相補的である少なくとも5ヌクレオチド、及び、miRNAの5’末端からの標的部位の隣接領域と実質的に相補的である少なくとも5〜12ヌクレオチド、又は(b)miRNAの3’と実質的に同一であるか若しくは相補的である少なくとも5〜12ヌクレオチド、及びmiRNAの3’末端からの標的部位の隣接領域に実質的に相補的な少なくとも5ヌクレオチドを含み得る。抗miRNAの配列は、Sanger miRBaseレジストリ(9.1版若しくは10版)において記載されている配列番号1〜12、23〜25、44、47、49、55、及び58〜72の相補体、又はその変異体を含み得る。
【0064】
合成遺伝子
転写及び/又は翻訳調節配列に作用可能に結合している、本明細書において記載されている核酸を含む合成遺伝子もまた提供される。合成遺伝子は、本明細書において記載される核酸についての結合部位を有する標的遺伝子の発現を修飾する能力を有し得る。標的遺伝子の発現は、細胞、組織、又は器官において修飾され得る。合成遺伝子は、標準的な組換え技術によって自然に生じる遺伝子から合成することができるか、又はこの遺伝子に由来し得る。合成遺伝子はまた、合成遺伝子配列の転写単位の3’末端にターミネーターを含み得る。合成遺伝子はまた、選択可能なマーカーを含み得る。
【0065】
ベクター
本明細書において記載される合成遺伝子を含むベクターもまた提供される。ベクターは発現ベクターであり得る。発現ベクターは、さらなるエレメントを含み得る。例えば、発現ベクターは、2つの生物において、例えば発現のための1つの宿主細胞並びにクローニング及び増幅のための第2の宿主細胞(例えば細菌)において発現ベクターが維持されることを可能にする、2つの複製系を有し得る。発現ベクターを組み込むために、発現ベクターは、宿主細胞のゲノムに相同な少なくとも1つの配列を含み得、好ましくは、発現構築物に隣接する2つの相同な配列を含み得る。ベクターの組み込みは、ベクター内に含めるための適切な相同配列を選択することによって、宿主細胞における特定の遺伝子座に向かわせることができる。ベクターはまた、形質転換された宿主細胞の選択を可能にする選択可能なマーカーの遺伝子を含み得る。
【0066】
プローブ
本明細書において記載される核酸を含むプローブもまた提供される。プローブは、以下に概説するスクリーニング方法及び診断方法に用いることができる。プローブは、バイオチップなどの固体基質に付着させるか又は固定することができる。
【0067】
プローブは、8〜500、10〜100、又は20〜60ヌクレオチド長を有し得る。プローブはまた、少なくとも、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、又は300ヌクレオチド長を有し得る。プローブはさらに、10〜60ヌクレオチドのリンカー配列を含み得る。
【0068】
バイオチップ
バイオチップもまた提供される。バイオチップは、本明細書において記載される1つの付着したプローブ又は複数のプローブを含む固体基質を含み得る。プローブは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において標的配列とハイブリダイズし得る。プローブは、基質上の空間的に既定された場所に付着させることができる。1つの標的配列につき2つ以上のプローブを用いることができ、プローブは、オーバーラッピングしているプローブか、又は特定の標的配列の異なる区域に対するプローブである。プローブは、当業者に理解されている単一の障害に関連する標的配列とハイブリダイズし得る。プローブは、まず合成されその後バイオチップに付着され得るか、又はバイオチップ上に直接合成され得る。
【0069】
固体基質の材料は、プローブの付着又は関連に適切な不連続の個別の部位を含むように修飾され得、少なくとも1つの検出方法に適しているものであり得る。基質の代表的な例には、ガラス及び修飾又は官能化されたガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、及びスチレンのコポリマー、並びに他の材料、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロン(登録商標)Jなどを含む)、多糖、ナイロン又はニトロセルロース、樹脂、シリカ又はシリコン及び修飾シリコンを含むシリカベースの材料、カーボン、金属、無機ガラス及び無機プラスチックが含まれる。基質は、認め得る程に蛍光処理することなく、視覚的な検出を可能にし得る。
【0070】
基質は平削り板であり得るが、他の構造の基質も同様に用いることができる。例えば、プローブは、試料の容積を最小化するための流入試料分析のために、管の内表面上に置くことができる。同様に、基質は、特定のプラスチックで作られた循環式セル泡沫を含む柔軟な泡沫などのように、柔軟性を有し得る。
【0071】
バイオチップ及びプローブは、その後に2つを付着させるために、化学的官能基を用いて誘導体化することができる。例えば、バイオチップは、限定はしないがアミノ基、カルボキシル基、オキソ基、又はチオール基を含む化学的官能基を用いて誘導体化することができる。これらの官能基を用いて、リンカーを直接的又は間接的に用いて、プローブ上の官能基を用いてプローブを付着させることができる。プローブは、5’末端、3’末端によって、又は内部ヌクレオチドを介して、固体担体に付着させることができる。
【0072】
プローブはまた、非共有結合的に固体担体に付着させることができる。例えば、ビオチニル化したオリゴヌクレオチドを作製することができ、これは、ストレプトアビジンで共有結合的に被覆された表面に結合して付着をもたらし得る。或いは、プローブは、光重合及びフォトリソグラフィーなどの技術を用いて表面上に合成することができる。
【0073】
組成物
薬学的組成物もまた提供される。組成物は、本明細書において記載される核酸を含み得、場合により、薬学的に許容される担体を含み得る。組成物は、治療適用に用いることができる。薬学的組成物は、インビトロ又はインビボで核酸を所望の標的細胞内に導入する方法を含む、既知の方法によって投与することができる。
【0074】
核酸分子を送達するための方法は、Akhtarら(Trends Cell Bio.2、139、1992)に記載されている。WO94/02595は、RNA分子の送達の一般的な方法を記載している。これらのプロトコルは、ほぼ全ての核酸分子の送達に用いることができる。核酸分子は、制限はしないがリポソームへのカプセル化を含む当業者に知られている様々な方法によって、イオン導入によって、又はヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性のナノカプセル、及び生体接着性のミクロスフェアなどの他の媒体内への組み込みによって、細胞に投与することができる。或いは、核酸/媒体の組合せは、直接的な注入によって、又は点滴ポンプの使用によって、局所的に送達される。他の送達経路には、限定はしないが、経口(錠剤若しくはピルの形態)及び/又は髄腔内送達が含まれる(Gold、1997、Neuroscience、76、1153〜1158)。他のアプローチには、様々な輸送系及び運搬系の使用、例えばコンジュゲート及び生分解性ポリマーの使用を介したものが含まれる。核酸の送達及び投与のさらに詳細な記載は、例えばWO93/23569、WO99/05094、及びWO99/04819に示されている。
【0075】
核酸は、ウイルス感染、マイクロインジェクション、又は小胞の融合を含むあらゆる数の経路によって、組織又は宿主細胞内に導入することができる。Furthら(Anal Biochem、115、205:365〜368、1992)によって記載されているように、ジェット注入もまた筋肉内投与に用いることができる。文献に記載されているように(例えば、Tangら、Nature、356:152〜154、1992)、核酸は、金のマイクロ粒子上に被覆し、粒子衝撃装置、すなわち「遺伝子銃」によって皮内に送達することができ、金のマイクロ粒子はDNAで被覆されており、その後、皮膚細胞内に発射される。
【0076】
本発明の組成物は、適切な薬学的に許容される担体又は希釈剤と組み合わせることによって薬学的組成物に製剤することができ、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、坐剤、注射、吸入剤、及びエアロゾルなどの、固体、半固体、液体、又は気体の形態の調製物に製剤することができる。このように、作用物質の投与は、経口、口腔、直腸、非経口、腹腔内、皮内、経皮、気管内などを含む様々な方法で行うことができる。
【0077】
診断
診断の方法もまた提供される。この方法は、生物学的試料における癌に関連する核酸の差次的な発現レベルを検出することを含む。試料は患者に由来するものであり得る。患者における癌の状態の診断により、予後及び治療戦略の選択が可能になり得る。さらに、一時的に発現している疾患に関連する核酸を決定することにより、細胞の成長段階を分類することができる。
【0078】
標識されたプローブの、組織アレイへのin situでのハイブリダイゼーションを実施することができる。個体と標準との間のフィンガープリントを比較すると、当業者は所見に基づいて診断、予後診断、又は予測を行うことができる。診断を示す遺伝子が、予後を示す遺伝子と異なり得ること、及び細胞の状態の分子プロファイリングが、応答性の若しくは難治性の症状の区別をもたらし得るか又は結果を予測し得ることも、さらに理解されたい。
【0079】
キット
キットもまた提供され、このキットは、本明細書において記載される核酸を、アッセイ試薬、緩衝液、プローブ及び/又はプライマー、並びに無菌生理食塩水又は別の薬学的に許容されるエマルジョン及び懸濁液ベースのもののいずれか又は全てと共に含み得る。さらに、このキットは、本明細書において記載される方法を実施するための指示(例えばプロトコル)を含む指示書を含み得る。
【0080】
例えば、キットは、標的核酸配列の増幅、検出、同定、又は定量のためのキットであり得る。キットは、ポリ(T)プライマー、フォワードプライマー、リバースプライマー、及びプローブを含み得る。
【0081】
定義
本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を記載することを目的としたものにすぎず、限定することを意図したものではないことを理解されたい。明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単一形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、複数形の指示対象を含むことに注意されたい。
【0082】
異常な増殖
本明細書において用いる場合、「異常な増殖」という用語は、正常な、適当な、又は予想される過程から逸脱した細胞増殖を意味する。例えば、異常な細胞増殖には、DNA又は他の細胞成分が損傷を受けているか又は不良を有する細胞の不適切な増殖が含まれ得る。異常な細胞増殖には、不適切に高いレベルの細胞分裂、不適切に低いレベルのアポトーシス、又はその両方により生じるか、それにより仲介されるか、又はそれを生じさせる徴候に関連する特徴を有する細胞増殖が含まれ得る。このような徴候は、例えば、癌性又は非癌性の、良性又は悪性の、細胞、細胞群、又は組織(単数若しくは複数)の、単一の又は複数の局所的な異常な増殖に特徴を有し得る。
【0083】
約
本明細書において用いる場合、「約」という用語は+/−10%を言う。
【0084】
アンチセンス
本明細書において用いられる「アンチセンス」という用語は、特定のDNA又はRNA配列に相補的なヌクレオチド配列を言う。「アンチセンス鎖」という用語は、「センス」鎖に相補的な核酸鎖に関して用いられる。アンチセンス分子は、逆方向の目的の遺伝子(単数又は複数)を、相補鎖の合成を可能にするウイルスプロモーターにライゲーションすることによる合成を含む、あらゆる方法によって生産することができる。細胞内に導入されると、この転写された鎖は、細胞により生産される天然の配列と結合して、二本鎖を形成する。これらの二本鎖は次に、さらなる転写又は翻訳を遮断する。このようにして、突然変異体の表現型が生じ得る。
【0085】
付着
プローブ及び固体担体に関して本明細書において用いられる「付着した」又は「固定された」は、プローブと固体担体との間の結合が、結合、洗浄、分析、及び除去の条件下において安定であるために十分であることを意味し得る。結合は共有結合的又は非共有結合的であり得る。共有結合は、プローブと固体担体との間で直接的に形成され得るか、或いは、架橋剤によって、又は固体担体若しくはプローブ若しくは両方の分子上に特定の反応基を含めることによって形成され得る。非共有結合は、静電気的な、親水性の、及び疎水性の相互作用の1つ又は複数であり得る。非共有結合に含まれるものは、ストレプトアビジンなどの分子の、担体への共有結合的な付着、及びビオチン化されたプローブの、ストレプトアビジンへの非共有結合的な結合である。固定はまた、共有結合的な相互作用及び非共有結合的な相互作用の組合せを伴い得る。
【0086】
生物学的試料
本明細書において用いられる「生物学的試料」は、核酸を含む生物学的な組織又は流体の試料を意味する。このような試料には、限定はしないが、対象から単離された組織又は流体が含まれる。生物学的試料にはまた、生検及び解剖の試料、FFPE試料、組織学的な目的で採取された凍結切片、血液、血漿、血清、痰、便、涙、粘液、毛髪、及び皮膚などの、組織切片が含まれ得る。生物学的試料にはまた、動物又は患者の組織に由来する、移植片並びに初代細胞培養物及び/又は形質転換細胞培養物が含まれる。
【0087】
生物学的試料はまた、血液、血液画分、尿、浸出液、腹水、唾液、脳脊髄液、頸管分泌物、膣分泌物、子宮内膜分泌物、胃腸分泌物、気管支分泌物、痰、細胞系、組織試料、細針吸引(FNA)の細胞含有物、又は胸部からの分泌物であり得る。生物学的試料は、動物から細胞試料を取り出すことにより得ることができるが、事前に単離された細胞(例えば、別の時点で別の人により単離されたもの、及び/若しくは別の目的で単離されたもの)を用いることによって、又は本明細書において記載されている方法をインビボで実施することによっても得ることができる。治療又は進行の前歴を有するものなどの記録用の組織もまた用いることができる。
【0088】
癌
「癌」という用語は、組織病理学的タイプ又は侵襲の段階に関係なく、あらゆるタイプの癌性の成長若しくは発癌プロセス、転移性の組織、又は悪性的に形質転換した細胞、組織、若しくは器官を含むことを意味する。癌の例には、限定はしないが、アプドーマ、分離腫、鰓腫、悪性カルチノイド症候群、カルチノイド心疾患、癌腫(例えば、ウォーカー癌、基底細胞癌、基底有棘細胞癌、ブラウンピアース癌、腺管癌、エールリッヒ腫瘍、非小細胞肺癌、燕麦細胞癌、乳頭癌、細気管支癌、気管支癌、扁平上皮細胞癌、及び移行上皮癌)、組織球性障害、白血病(例えば、B細胞白血病、混合型白血病、ヌル細胞白血病、T細胞白血病、慢性T細胞白血病、HTLV−II関連白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、肥満細胞白血病、及び骨髄性白血病)、悪性組織球増殖症、ホジキン病、免疫増殖性小腸疾患、非ホジキンリンパ腫、形質細胞腫、細網内皮症、黒色腫、軟骨芽細胞腫、軟骨腫、軟骨肉腫、線維腫、線維肉腫、巨細胞腫、組織球腫、脂肪腫、脂肪肉腫、中皮腫、粘液腫、粘液肉腫、骨腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、滑液腫瘍、腺線維腫、腺リンパ腫、癌肉腫、脊索腫、頭蓋咽頭腫、未分化胚細胞腫、過誤腫、間葉腫、中腎腫、筋肉腫、エナメル上皮腫、セメント腫、歯牙腫、奇形腫、胸腺腫、絨毛性腫瘍、腺癌、腺腫、胆管腫、真珠腫、円柱腫、嚢胞腺癌、嚢胞腺腫、顆粒膜細胞腫、性索間質腫瘍、肝細胞癌、汗腺腫、島細胞腫、ライディッヒ細胞腫、セルトリ細胞腫、卵胞膜細胞腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫、筋芽細胞腫、筋肉腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、上衣腫、神経節細胞腫、神経膠腫、髄芽腫、髄膜腫、神経鞘腫、神経芽細胞腫、神経上皮腫、神経線維腫、神経腫、傍神経節腫、非クロム親和性傍神経節腫、角血管腫、好酸球性血管リンパ球増殖症、硬化性血管腫、血管腫症、グロムス血管腫、血管内皮腫、血管腫、血管周囲細胞腫、血管肉腫、リンパ管腫、リンパ管筋腫症、リンパ管肉腫、松果体腫、癌肉腫、軟骨肉腫、嚢肉腫、葉状腫瘍、線維肉腫、血管肉腫、平滑筋肉腫、白血球肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、筋肉腫、粘液肉腫、卵巣癌、横紋筋肉腫、肉腫(例えば、ユーイング肉腫、実験的肉腫、カポジ肉腫、及び肥満細胞肉腫)、神経線維腫症、及び子宮頸部形成異常、並びに細胞が不死化しているか又は形質転換している他の症状を含む、充実性腫瘍及び白血病が含まれる。
【0089】
分類
分類という用語は、個別の品目を、その品目に固有の1つ又は複数の特徴(形質、変数、特質、特性などと呼ばれる)についての定量的な情報に基づいて、並びにそれまでにラベル付けされている品目の統計モデル及び/又は訓練セットに基づいて群又はクラスに分けるための、手順及び/又はアルゴリズムを言う。「分類木」は、カテゴリー変数をクラスに分ける決定木である。
【0090】
相補体
核酸に関して本明細書において用いられる「相補体」又は「相補的な」とは、核酸分子のヌクレオチド又はヌクレオチド類似体間のワトソンクリック(例えば、A−T/U及びC−G)又はフーグスティーンの塩基対合を意味し得る。完全な相補体又は完全に相補的とは、核酸分子のヌクレオチド又はヌクレオチド類似体間の100%相補的な塩基対合を意味し得る。
【0091】
Ct
Ctシグナルは、増幅が蛍光の閾値(サイクル閾値)を超える、PCRの最初のサイクルを意味する。したがって、Ctの値が低いことは、マイクロRNAの存在量又は発現レベルが高いことを意味する。いくつかの実施形態において、PCRのCtシグナルは、標準化されたCtが発現レベルに反比例のままとなるように標準化される。他の実施形態において、PCRのCtシグナルは標準化され、その後逆転され、それにより、低い標準化された逆転されたCtが、マイクロRNAの存在量又は発現レベルが低いことを意味するようになり得る。
【0092】
データ処理手順
本明細書において用いる場合、「データ処理手順」は、得られたデータ(すなわち、アッセイ又は分析の最終的な結果)の生物学的有意性を決定するソフトウェアにおいて具体化され得るプロセスを言う。例えば、データ処理手順は、収集されたデータに基づいて組織由来源を決定することができる。本明細書における系及び方法において、データ処理手順はまた、決定された結果に基づいてデータ収集手順を制御することができる。データ処理手順及びデータ収集手順は統合され得、データ取得を行うためにフィードバックを提供し、したがって、アッセイに基づいた判別方法を提供する。
【0093】
データセット
本明細書において用いる場合、「データセット」という用語は、分析から得られた数値を言う。分析に関連するこれらの数値は、ピーク高さ及び曲線下のピーク領域などの値であり得る。
【0094】
データ構造
本明細書において用いる場合、「データ構造」という用語は、2つ以上のデータセットの組合せを言い、1つ若しくは複数の数学的操作を1つ若しくは複数のデータセットに適用して1つ若しくは複数の新たなデータセットを得るか、又は2つ以上のデータセットを、新たな方法でデータの視覚的例証を提供する形態に操作する。2つ以上のデータセットの操作から準備されたデータ構造の例は階層的クラスターである。
【0095】
検出
「検出」は、試料中における成分の存在を検出することを意味する。検出はまた、成分の不存在を検出することを意味する。検出はまた、量的又は質的に成分のレベルを測定することを意味する。
【0096】
差次的発現
「差次的発現」は、細胞及び組織内の、並びに細胞及び組織間の、一時的な及び/又は細胞の遺伝子発現パターンにおける質的又は量的な差を意味する。したがって、差次的に発現した遺伝子は、例えば正常な組織と疾患組織との間で、活性化又は不活性化を含む、その発現の質的な改変を有している可能性がある。遺伝子は、別の状態と比較して、特定の状態でオン又はオフされ得、したがって、2つ以上の状態の比較が可能となる。質的に調節される遺伝子は、標準的な技術によって検出することが可能な状態又は細胞型において発現パターンを示し得る。いくつかの遺伝子は1つの状態又は細胞型において発現し得るが、その両方においては発現し得ない。或いは、発現における差は、例えば発現が調節されて、すなわち上方調節されて転写産物の量が増大するか、又は下方調節されて転写産物の量が減少するという点で、量的であり得る。発現が異なる程度は、発現アレイ、定量的逆転写酵素PCR、ノーザン分析、リアルタイムPCR、in situでのハイブリダイゼーション、及びRNアーゼ保護などの標準的な特徴付け技術を介して定量するために十分に大きければよい。
【0097】
発現プロファイル
本明細書において用いられる「発現プロファイル」は、ゲノムの発現プロファイル、例えば、マイクロRNAの発現プロファイルを意味し得る。プロファイルは、核酸配列のレベルを決定するためのあらゆる都合の良い手段、例えば、マイクロRNA、標識されたマイクロRNA、増幅されたマイクロRNA、cRNAなどの定量的ハイブリダイゼーション、定量的PCR、定量のためのELISAなどによって得ることができ、2つの試料間の差次的な遺伝子発現の分析を可能にする。対象又は患者の腫瘍試料、例えば細胞又はその集合体、例えば組織がアッセイされる。試料は、当技術分野において知られている、あらゆる都合の良い方法によって回収される。目的の核酸配列は、上記の核酸配列を含む、指標となることが明らかにされている核酸配列であり、その発現プロファイルは、列挙された核酸配列の全てを含むものの5、10、20、25、50、100個又はそれ以上についての発現データを含み得る。発現プロファイルは、核酸のレベル若しくは存在量の測定に基づくものであり得るか、又はその測定値の組合せに基づくものであり得る。
【0098】
発現率
本明細書において用いられる「発現率」は、生物学的試料における対応する核酸の相対的な発現レベルを検出することにより決定される、2つ以上の核酸の相対的な発現レベルを言う。
【0099】
FDR
例えば複数のデータ特性における2つの群間のシグナルの比較において、複数の統計試験を行う場合、他の方法では統計的に有意であると判断されるであろうレベルに達し得る群間のランダムな差異により、偽陽性の結果が得られる可能性が高くなる。このような誤った発見の割合を制限するために、統計的有意性は、差が閾値未満のp値(両側t検定による)に達したデータ特性のみについて規定され、閾値は、実施された試験の数及びこれらの試験において得られたp値の分布に応じるものである。
【0100】
断片
「断片」は、本明細書において、核酸又はポリペプチドの全長ではない部分を示すために用いられる。したがって、断片はそれ自体もまた、それぞれ核酸又はポリペプチドである。
【0101】
遺伝子
本明細書において用いられる「遺伝子」は、転写及び/若しくは翻訳調節配列、並びに/又はコード領域、並びに/又は非翻訳配列(例えば、イントロン、5’及び3’非翻訳配列)を含む、天然の(例えばゲノムの)又は合成の遺伝子であり得る。遺伝子のコード領域は、アミノ酸配列、又はtRNA、rRNA、触媒RNA、siRNA、miRNA、若しくはアンチセンスRNAなどの機能的RNAをコードする、ヌクレオチド配列であり得る。遺伝子はまた、コード領域(例えば、エキソン及びmiRNA)に対応するmRNA又はcDNAであり得、それには、場合によって、それに結合している5’又は3’非翻訳配列が含まれる。遺伝子はまた、コード領域及び/又はそれに結合している5’若しくは3’非翻訳配列の全て又は一部を含む、インビトロで生産された、増幅された核酸分子であり得る。
【0102】
溝バインダー/副溝バインダー(MGB)
「溝バインダー」及び/又は「副溝バインダー」は、ほぼ同義で用いられ得、二本鎖DNAの副溝内に典型的には配列特異的な様式で適合する小分子を言う。副溝バインダーは、三日月様の形状を有し得る、長く平らな分子であり得、そのため、二重らせんの副溝内にぴったりと適合して、水を排除することが多い。副溝結合分子は、典型的には、フラン環、ベンゼン環、又はピロール環などの、自由にねじれる結合によって結合しているいくつかの芳香環を含み得る。副溝バインダーは、参照することにより内容が本明細書に組み込まれる、Nucleic Acids in Chemistry and Biology、第2版、Blackburn及びGait編、Oxford University Press、1996、及び公開されたPCT出願WO03/078450に記載されているものを含む、ネトロプシン、ジスタマイシン、ベレニル、ペンタミジン、及び他の芳香族ジアミジン、Hoechst33258、SN6999、クロモマイシン及びミトラマイシンなどのオーレオリン抗腫瘍薬、CC−1065、ジヒドロシクロピロロインドールトリペプチド(DPI3)、1,2−ジヒドロ−(3H)−ピロロ[3,2−e]インドール−7−カルボキシレート(CDPI3)、並びに関連する化合物及び類似体などの、抗生物質であり得る。副溝バインダーは、プライマー、プローブ、ハイブリダイゼーションタグ相補体の構成要素、又はその組合せであり得る。副溝バインダーは、それらが付着するプライマー又はプローブのTmを増大させ得、このようなプライマー又はプローブが高温で効果的にハイブリダイズすることを可能にする。
【0103】
同一性
2つ以上の核酸配列又はポリペプチド配列との関連において本明細書において用いられる「同一」又は「同一性」は、その配列が、特定の領域全体にわたって特定のパーセンテージの同一残基を有することを意味し得る。パーセンテージは、2つの配列を最適にアラインし、特定の領域にわたって2つの配列を比較し、両方の配列において同一の残基が生じる位置の数を決定して、適合した位置の数を得、適合した位置の数を特定の領域における位置の総数で割り、そしてその結果に100をかけて配列同一性のパーセンテージを得ることにより計算することができる。2つの配列が異なる長さであるか、又はアラインメントにより1つ若しくは複数の付着末端が生じ、且つ比較の特定の領域が単一の配列のみを含む場合、単一の配列の残基は、計算の分母に含まれるが分子には含まれない。DNAとRNAとを比較する場合、チミン(T)及びウラシル(U)は同等であると考えることができる。同一性は、手作業で、又はBLAST若しくはBLAST2.0などのコンピュータ配列アルゴリズムを用いることによって実施することができる。
【0104】
in situでの検出
本明細書において用いられる「in situでの検出」は、本明細書では生検などの組織試料におけるものを意味する元の部位における発現又は発現レベルの検出を意味する。
【0105】
標識
本明細書において用いられる「標識」は、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、又は他の物理的手段によって検出可能な組成物を意味し得る。例えば、有用な標識には、32P、蛍光染料、電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて一般に用いられるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、又はハプテン、及び検出可能にされ得る他の物質が含まれる。標識は、核酸及びタンパク質にあらゆる位置で組み込むことができる。
【0106】
ロジスティック回帰
ロジスティック回帰は、一般化線形モデルと呼ばれる統計モデルのカテゴリーの一部である。ロジスティック回帰により、連続変数、離散変数、二分変数、又はこれらのあらゆる物の混合であり得る変数集団からの群構成員などの離散的な結果を予測することが可能となる。従属変数又は応答変数は二分変数であり得、例えば、2つの考えられるタイプの癌の1つであり得る。ロジスティック回帰モデルは、異なる発現レベル(対数領域における)の線形の組合せとしての、オッズ比、すなわち、第2群(1−P)に属する確率に対する、第1群(P)に属する確率の比率の、自然対数である。ロジスティック回帰の結果は、Pが0.5又は50%を超えるならば、症例又は試料が第一のタイプに分類されることを規定することにより、分類子として用いることができる。或いは、計算された確率Pは、1D又は2Dの閾値分類子などの他の状況においては、変数として用いることができる。
【0107】
1D/2D閾値分類子
本明細書において用いられる「1D/2D閾値分類子」は、症例、又は癌試料などの試料を、2つのタイプの癌などの2つの考えられるタイプの1つに分類するためのアルゴリズムを意味し得る。1D閾値分類子では、決定は1つの変数及び1つの事前に決定された閾値に基づくものである。試料は、変数が閾値を超える場合には1つのクラスに割り当てられ、変数が閾値よりも小さい場合にはもう1つのクラスに割り当てられる。2D閾値分類子は、2つの変数の値に基づいて2つのタイプの1つに分類するためのアルゴリズムである。閾値は第1の変数の関数(通常は、連続関数であるか、又はさらに単調関数である)として計算することができる。決定は次に、1D閾値分類子と同様に、第2の変数を計算された閾値と比較することによって得られる。
【0108】
核酸
本明細書において用いられる「核酸」又は「オリゴヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド」は、共に共有結合された少なくとも2つのヌクレオチドを意味し得る。一本鎖の表示はまた、相補鎖の配列を規定する。したがって、核酸はまた、表示された一本鎖の相補鎖も包含する。核酸の多くの変異体が、所与の核酸と同一の目的で用いられ得る。したがって、核酸はまた、実質的に同一である核酸及びその相補体も包含する。一本鎖は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で標的配列とハイブリダイズし得るプローブを提供する。したがって、核酸はまた、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするプローブも包含する。
【0109】
核酸は、一本鎖若しくは二本鎖であり得るか、又は二本鎖配列及び一本鎖配列の両方の一部を含み得る。核酸は、DNA、ゲノムDNA及びcDNAの両方、RNA、又はハイブリッドであり得、核酸は、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドの組合せ、並びにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、及びイソグアニンを含む塩基の組合せを含み得る。核酸は、化学合成法又は組換え法によって得ることができる。
【0110】
核酸は通常はホスホジエステル結合を含むが、少なくとも1つの異なる結合、例えばホスホロアミデート結合、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、又はO−メチルホスホロアミダイト結合、並びにペプチド核酸の骨格及び結合を有し得る核酸類似体が含まれ得る。他の類似体核酸には、参照することにより組み込まれる米国特許第5,235,033号及び米国特許第5,034,506号に記載されているものを含む、陽性の骨格、非イオン性の骨格、及び非リボース性の骨格を有するものが含まれる。1つ又は複数の自然に生じない又は修飾されたヌクレオチドを含む核酸もまた、核酸の1つの定義に含まれる。修飾されたヌクレオチド類似体は、例えば核酸分子の5’末端及び/又は3’末端に位置し得る。ヌクレオチド類似体の代表的な例は、糖を修飾された、又は骨格を修飾されたリボヌクレオチドから選択され得る。しかし、核酸塩基を修飾されたリボヌクレオチド、すなわち、自然に生じる核酸塩基の代わりに自然に生じない核酸塩基を含むリボヌクレオチドもまた適していることに注意されたく、この自然に生じない核酸塩基は、例えば、5−(2−アミノ)プロピルウリジン、5−ブロモウリジンなどの、5位で修飾されているウリジン又はシチジン、8−ブロモグアノシンなどの、8位で修飾されているアデノシン及びグアノシン、7−デアザアデノシンなどのデアザヌクレオチド、N6−メチルアデノシンなどの、O−アルキル化及びN−アルキル化ヌクレオチドである。2’−OH基は、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2、又はCNから選択される基によって置換され得、Rは、C1−C6アルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、ハロは、F、Cl、Br、又はIである。修飾されたヌクレオチドにはまた、参照することにより本明細書に組み込まれるKrutzfeldtら、Nature、438:685〜689(2005)、Soutschekら、Nature、432:173〜178(2004)、及び米国特許出願公開第20050107325号に記載されているヒドロキシプロリノール結合などを介してコレステロールと結合したヌクレオチドが含まれる。さらなる修飾されたヌクレオチド及び核酸は、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20050182005号に記載されている。リボース−リン酸骨格の修飾は様々な理由で行うことができ、それは例えば、生理学的環境におけるこのような分子の安定性及び半減期を増大させるため、細胞膜を介した拡散を増強させるため、又はバイオチップ上のプローブとしてである。骨格の修飾はまた、細胞の厳しい細胞内環境などにおける分解に対する耐性を増強し得る。骨格の修飾はまた、肝臓及び腎臓などにおける、肝細胞による核酸のクリアランスを低減させ得る。自然に生じる核酸及び類似体の混合物を作成することができる。或いは、異なる核酸類似体の混合物と、自然に生じる核酸及び類似体の混合物とを作成することができる。
【0111】
プローブ
本明細書において用いられる「プローブ」は、1つ又は複数のタイプの化学結合を介して相補的配列の標的核酸に結合し得るオリゴヌクレオチドを意味し得、この化学結合は通常は相補的な塩基の対合を介するものであり、これは通常は水素結合の形成を介するものである。プローブは、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに応じて、プローブ配列との完全な相補性を有していない標的配列を結合し得る。標的配列と本明細書において記載される一本鎖核酸との間のハイブリダイゼーションに干渉する、あらゆる数の塩基対ミスマッチが存在し得る。しかし、突然変異の数が多すぎて最もストリンジェンシーの低いハイブリダイゼーション条件下でさえもハイブリダイゼーションが生じ得ない場合には、配列は相補的な標的配列ではない。プローブは、一本鎖であり得るか、又は部分的に一本鎖であり部分的に二本鎖であり得る。プローブのらせん性は、標的配列の構造、組成、及び特性により決定される。プローブは、直接標識することができるか、又はストレプトアビジン複合体がその後に結合し得るビオチンなどで、間接的に標識することができる。
【0112】
プロモーター
本明細書において用いられる「プロモーター」は、細胞における核酸の発現をもたらし得るか、活性化し得るか、又は増強し得る、合成分子又は天然由来の分子を意味し得る。プロモーターは、さらにその発現を増強させ、且つ/又は空間的発現及び/若しくは一過性発現を改変するための、1つ又は複数の特異的な転写調節配列を含み得る。プロモーターはまた、転写開始部位から数千塩基対も離れた場所に位置し得る、末端のエンハンサーエレメント又はリプレッサーエレメントを含み得る。プロモーターは、ウイルス、細菌、真菌、植物、昆虫、及び動物を含む由来源に由来し得る。プロモーターは、発現が生じる細胞、組織、若しくは器官に関して、又は発現が生じる成長段階に関して、又は生理学的ストレス、病原体、金属イオン、若しくは誘発剤などの外部刺激に応答して、構成的又は差次的に遺伝子成分の発現を調節し得る。プロモーターの代表的な例には、バクテリオファージT7プロモーター、バクテリオファージT3プロモーター、SP6プロモーター、lacオペレータープロモーター、tacプロモーター、SV40後期プロモーター、SV40初期プロモーター、RSV−LTRプロモーター、CMV IEプロモーター、SV40初期プロモーター又はSV40後期プロモーター、及びCMV IEプロモーターが含まれる。
【0113】
参照発現プロファイル
本明細書において用いる場合、「参照発現プロファイル」という表現は、基準となる発現値を言い、測定された値をこの発現値と比較して、肺癌を有する対象の検出を決定する。参照発現プロファイルは、核酸の存在量に基づくものであり得るか、又はその測定値の組合せに基づくものであり得る。
【0114】
選択可能なマーカー
本明細書において用いられる「選択可能なマーカー」は、宿主細胞に表現型をもたらすあらゆる遺伝子を意味し得、この宿主細胞においてこの遺伝子が発現して、遺伝子構築物をトランスフェクトされたか又はこの構築物で形質転換された細胞の同定及び/又は選択が容易になる。選択可能なマーカーの代表的な例には、アンピシリン耐性遺伝子(Ampr)、テトラサイクリン耐性遺伝子(Tcr)、細菌カナマイシン耐性遺伝子(Kanr)、ゼオシン耐性遺伝子、抗生物質オーレオバシジンAに対する耐性をもたらすAURI−C遺伝子、ホスフィノトリシン耐性遺伝子、ネオマイシンホスホトランフェラーゼ遺伝子(nptII)、ハイグロマイシン耐性遺伝子、β−グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子、緑色蛍光タンパク質(GFP)コード遺伝子、及びルシフェラーゼ遺伝子が含まれる。
【0115】
感度
本明細書において用いられる「感度」は、二元分類試験が症状をどの程度良好に正確に同定するか、例えばその試験が癌を2つの考えられるタイプのうち正しいタイプに正確に分類する頻度はどの程度かについての統計的測定を意味し得る。クラスAについての感度は、いくつかの絶対的基準又は優れた基準によって決定された、クラス「A」にある症例のうち、試験によってクラス「A」に属すると決定された症例の割合である。
【0116】
特異性
本明細書において用いられる「特異性」は、二元分類試験が症状をどの程度良好に正確に同定するか、例えばその試験が癌を2つの考えられるタイプのうち正しいタイプに正確に分類する頻度はどの程度かについての統計的測定を意味し得る。クラスAについての特異性は、いくつかの絶対的基準又は優れた基準によって決定された、「Aではない」クラスにある症例のうち、試験によって「Aではない」クラスに属すると決定された症例の割合である。
【0117】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件
本明細書において用いられる「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、核酸の複合混合物などにおいて、第1の核酸配列(例えばプローブ)が第2の核酸配列(例えば標的)とハイブリダイズする条件を意味し得る。ストリンジェントな条件は、配列依存的であり、異なる状況において異なる。ストリンジェントな条件は、所定のイオン強度、pHでの特異的な配列についての熱融点(Tm)よりも約5〜10℃低くなるように選択することができる。Tmは、標的に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列とハイブリダイズする(Tmで標的配列は過剰に存在しており、プローブの50%は平衡状態で占領されているため)温度(所定のイオン強度、pH、及び核酸濃度で)であり得る。ストリンジェントな条件は、pH7.0〜8.3で塩濃度が約1.0M未満のナトリウムイオン、例えば約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン濃度(又は他の塩)であり、温度が、短いプローブ(例えば約10〜50ヌクレオチド)では少なくとも約30℃、長いプローブ(例えば約50個超のヌクレオチド)では少なくとも約60℃であるものであり得る。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化剤を添加することで得ることができる。選択的な又は特異的なハイブリダイゼーションでは、陽性シグナルは、少なくとも2〜10回のバックグラウンドのハイブリダイゼーションであり得る。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、50%ホルムアミド、5×SSC、及び1%SDS、42℃でのインキュベーション、又は、5×SSC、1%SDS、65℃でのインキュベーション、さらに65℃で0.2×SSC及び0.1%SDSでの洗浄を含む。
【0118】
実質的に相補的
本明細書において用いられる「実質的に相補的」とは、第1の配列が、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100個、若しくはそれ以上のヌクレオチドの領域にわたり、第2の配列の相補体に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であること、又は2つの配列がストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることを意味し得る。
【0119】
実質的に同一
本明細書において用いられる「実質的に同一」とは、第1及び第2の配列が、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100個、若しくはそれ以上のヌクレオチド若しくはアミノ酸の領域にわたり、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であること、又は第1の配列が第2の配列の相補体に対して実質的に相補的である場合には、核酸に関してそうであることを意味し得る。
【0120】
対象
本明細書において用いる場合、「対象」という用語は、ヒト及び他の哺乳動物を含む哺乳動物を言う。本発明の方法は、好ましくはヒトの対象に適用される。
【0121】
標的
本明細書において用いられる「標的」は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で1つ又は複数のプローブにより結合され得るポリヌクレオチドを意味し得る。
【0122】
標的核酸
本明細書において用いられる「標的核酸」は、別の核酸によって結合され得る核酸又はその変異体を意味する。標的核酸はDNA配列であり得る。標的核酸はRNAであり得る。標的核酸は、mRNA、tRNA、shRNA、siRNA若しくはPiwi相互作用RNA、又はpri−miRNA、pre−miRNA、miRNA、若しくは抗miRNAを含み得る。
【0123】
標的核酸は、標的miRNA結合部位又はその変異体を含み得る。1つ又は複数のプローブが標的核酸に結合し得る。標的結合部位は、5〜100又は10〜60ヌクレオチドを含み得る。標的結合部位は、全部で5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30〜40、40〜50、50〜60、61、62、又は63ヌクレオチドを含み得る。標的部位の配列は、内容が本明細書に組み込まれる米国特許出願第11/384,049号、米国特許出願第11/418,870号、又は米国特許出願第11/429,720号において開示されている標的miRNA結合部位の配列の少なくとも5ヌクレオチドを含み得る。
【0124】
閾値発現プロファイル
本明細書において用いる場合、「閾値発現プロファイル」という表現は、基準となる発現プロファイルを言い、測定された値をこの発現プロファイルと比較して、癌を分類する。
【0125】
組織試料
本明細書において用いる場合、組織試料は、関連する医療分野において当業者に周知の方法を用いて組織生検から得られる組織である。本明細書において用いられる「癌性であると疑われる」という表現は、癌組織の試料が癌性細胞を含むことが、医療分野の当業者によって考えられることを意味する。生検から試料を得るための方法には、質量の総分配、顕微解剖、レーザーに基づく顕微解剖、又は当技術分野において知られている他の細胞分離法が含まれる。
【0126】
変異体
核酸に関して本明細書において用いられる「変異体」は、(i)参照ヌクレオチド配列の一部、(ii)参照ヌクレオチド配列若しくはその一部の相補体、(iii)参照核酸と実質的に同一である核酸若しくはその相補体、又は(iv)ストリンジェントな条件下で参照核酸とハイブリダイズする核酸、その相補体、若しくはそれと実質的に同一である配列を意味し得る。
【0127】
ベクター
本明細書において用いられる「ベクター」は、複製起点を含む核酸配列を意味する。ベクターは、プラスミド、バクテリオファージ、細菌人工染色体、又は酵母人工染色体であり得る。ベクターは、DNAベクター又はRNAベクターであり得る。ベクターは、自己複製型染色体外ベクター、又は宿主ゲノムに組み込まれるベクターであり得る。
【0128】
野生型
本明細書において用いる場合、「野生型」配列という用語は、その配列の天然の又は正常な機能を果たす対立遺伝子形態の配列である、コード配列、非コード配列、又は接合配列を言う。野生型配列には、複数の対立遺伝子形態の同族配列が含まれ、例えば、野生型配列の複数の対立遺伝子は、コード配列がコードするタンパク質配列に対するサイレントな又は保存的な変化をコードし得る。
【実施例】
【0129】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態をさらに十分に例示するために示される。しかしそれらは、本発明の広義の範囲を限定するとして全く解釈されるべきではない。
【0130】
(例1)
中皮腫と他の腫瘍とを識別するためのマイクロアレイアッセイ
1a)試料
腫瘍試料は、複数の供給元から得た。各施設のIRB又はIRBと同意義の指針に従って全ての試料について施設内承認審査を取得した。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料については、初期診断、組織型、グレード及び腫瘍百分率を、試料の最初及び/又は最後の切片で実施したヘマトキシリン−エオシン(H&E)染色スライドにおいて病理医が決定した。誤分類の症例については診療情報を再調査した。
【0131】
RNAを以下の供給源:肺胸膜中皮腫(試料7個)、肺腺癌(試料15個)、乳腺癌(試料14個)、子宮頸部腺癌(試料3個)、大腸腺癌(試料20個)、食道腺癌(試料2個)、食道−胃腺癌(試料12個)、膵臓腺癌(試料4個)、前立腺腺癌(試料3個)、小腸腺癌(試料1個)、原発不明の腺癌(試料11個)、大腸腫瘍(試料20個)、腎臓腫瘍(試料19個)、肝臓腫瘍(試料6個)、膵臓腫瘍(試料8個)、胃腫瘍(試料6個)、肺カルチノイド腫瘍(試料7個)、肺神経内分泌腫瘍(試料1個)、肺神経内分泌大細胞癌(試料1個)、肺非小細胞癌(試料1個)、肺非小−大細胞癌(試料5個)、肺腫瘍(試料2個)、肺小細胞癌(試料8個)及び肺非小細胞扁平上皮癌(試料9個)、由来のパラフィン包埋(FFPE)組織から抽出した。
【0132】
1b)アレイプラットホーム
カスタムマイクロアレイを、miRNA 688個を表すDNAオリゴヌクレオチドプローブをプリントすることによって産生した[Sanger database、version9.1(miRBase:microRNA sequences、targets and gene nomenclature. Griffiths−Jones S、Grocock RJ、van Dongen S、Bateman A、Enright AJ.NAR、2006、34、Database Issue、D140−D144)及び追加的にRosetta GenomicsでmiRを検証及び予測した]。各プローブは、コートガラススライドにプローブを結合させるために使用するアミノ基に加えてmiRNAの相補配列の3’端に22ntまでのリンカーを保有する。各プローブ20μMを2×SSC+0.0035%SDSに溶解し、Schott Nexterion(登録商標)Slide Eコートマイクロアレイスライドに、MicroGridの製造者の手引書に従ってGenomic Solutions(登録商標)BioRobotics MicroGrid IIを使用して3回反復でスポットした。陰性対照プローブ64個を様々なmiRNAのセンス配列を使用して設計した。陽性対照プローブ2群をアレイとハイブリダイズするように設計した、(1)合成スパイク低分子RNAを標識効率を確認するために標識する前にRNAに添加した、(2)大量の低分子RNA(例えば核内低分子RNA(U43、U49、U24、Z30、U6、U48、U44)、5.8s及び5sリボソームRNA)用のプローブをRNAの品質を確認するためにアレイにスポットした。スライドを50mMエタノールアミン、1M Tris(pH9.0)及び0.1%SDSを含有する溶液で20分間、50℃でブロックし、次いで水で十分にリンスし、遠心脱水した。
【0133】
1c)Cy−dye標識
全RNA 15μgを、RNAリンカーp−rCrU−Cy−dyeを3’端に連結することによってCy3又はCy5で標識した(Thomsonら、2004、Nat Methods 1、47〜53)(Dharmacon)。標識化反応物は、全RNA、スパイク(20〜0.1fmole)、RNA−リンカー−dye 500ng、15%DMSO、1×リガーゼ緩衝液及びT4 RNAリガーゼ(NEB)20単位を含有し、4℃で1時間、続いて37℃で1時間進行させた。標識RNAを3×ハイブリダイゼーション緩衝液(Ambion)と混合し、95℃に3分間加熱し、次いでアレイ上部に添加した。スライドを12〜16時間ハイブリダイズさせ、続いて1×SSC及び0.2%SDSで2回洗浄し、0.1×SSCで最終洗浄した。
【0134】
アレイをAgilent Microarray Scanner Bundle G2565BA(100%能力時に解像度10μm)を使用して走査した。データをSpotReaderソフトウェアを使用して分析した。
【0135】
1d)RNA抽出
FFPE試料由来の全RNAを以下の手順に従って抽出した:キシレン(Biolab)1mlを組織1〜2mgに加え、57℃で5分間インキュベートし、2分間10,000gで遠心分離した。上清を除去し、エタノール(100%)(Biolab)1mlを加えた。10分間、10,000gでの遠心分離に続いて、上清を廃棄し、洗浄操作を繰り返した。10〜15分間の風乾に続いて、緩衝液B(10mM NaCl、500mM Tris pH7.6、20mM EDTA、1%SDS)500μl及びプロテイナーゼK(50mg/ml)(Sigma)5ulを加えた。45℃、16時間のインキュベーションに続いて、100℃、7分間でのプロテイナーゼKの不活性化を実施した。酸フェノールクロロホルム(1:1)(Sigma)での抽出及び最大速度での4℃、10分間の遠心分離に続いて、追加的に3容量の100%エタノール、0.1容量のNaOAc(BioLab)及びグリコーゲン(Ambion)8μlを含む新たなチューブに上相を移し、−20℃に一晩置いた。最大速度での4℃、40分間の遠心分離、エタノール(85%)1mlでの洗浄及び乾燥に続いて、RNAをDDW 45μlに再懸濁した。
【0136】
RNA濃度を検査し、DNase Turbo(Ambion)をそれに応じて加えた(RNA10μgあたりデオキシリボヌクレアーゼ1μl)。室温、30分間のインキュベーション及び酸フェノールクロロホルムでの抽出に続いて、RNAをDDW 45μlに再懸濁した。RNA濃度を再び検査し、DNase Turbo(Ambion)をそれに応じて加えた(RNA10μgあたりデオキシリボヌクレアーゼ1μl)。室温での30分間のインキュベーション及び酸フェノールクロロホルムでの抽出に続いてRNAをDDW 20μlに再懸濁した。
【0137】
1e)シグナル算出及び正規化
初期データセットは、全ての試料に対する複数のプローブについて測定したシグナルからなった。3回反復スポットを、信頼できるスポットの対数平均を取ることによって各プローブについて1つのシグナルを作るために結合させた。分析用に、既知の又は検証されたヒトマイクロRNAの発現レベルを測定するために設計されたプローブについてのみシグナルを使用した。全てのデータを対数変換(自然底)し、分析は対数領域で実施した。正規化のための基準データベクトルRは、全ての試料にわたる各プローブについての発現レベルのメジアンをとることによって算出した。各試料データベクトルSについて、試料データと基準データとの最も良いフィッテイングを提供するようにR≒F(S)などの2次多項式Fを見出だした。離れたデータポイント(「外れ値」)は、多項式Fのフィッテイングのためには使用しなかった。試料での各プローブについて(ベクトルSの要素Si)、正規化した値(対数領域において)Miを初期値Siからそれを多項関数Fで変換することよって算出する、これによりMi=F(Si)。
【0138】
1f)ロジスティック回帰
ロジスティック回帰モデルの目的は、いくつかのマイクロRNAの発現レベルなどのいくつかの特徴が、可能性のある2つの群の内の1つに属する確率を決めるために使用することである。ロジスティック回帰は、オッズ比の自然対数、すなわち第2群に属する可能性(1−P)に対する第1群に属する可能性(P)の比を様々な発現レベルの線形結合としてモデル化する(対数領域において)。対数回帰は、
【数1】
を推定し、式中β0はバイアスであり、Miは分類に使用したi番目のマイクロRNAの発現レベル(正規化、対数領域において)であり、βiはそれに対応する係数である。
【0139】
ロジスティックモデル(P)の確率出力は、ここで1D閾値分類子を使用してPを閾値と比較することによって二分決定に変換され、PTHと記される、すなわちP>PTHの場合、試料は「第1群」に属し、逆の場合も同じである。PTHは、誤分類の数が最少となるように選択される。
【0140】
(例1.1)
特異的マイクロRNAは、中皮腫と腺癌とを識別できる
肺胸膜中皮腫(試料7個)対腺癌(試料85個)のアレイ結果の分析を図1に示す。結果は、表1に示すとおり、いくつかのmiRの発現様式における有意差を示した。
表1:
【表1】
miR名は、miRBase登録名(release9.1)である。
MIDは、成熟マイクロRNAの配列番号である。
HIDは、マイクロRNAヘアピン前駆体(プレマイクロRNA)の配列番号である。
p値は、試料の2群間での対応のない両側t検定の結果である。
【0141】
これらのmiRは、中皮腫と腺癌腫瘍(原発又は転移のいずれでも)とを識別するために使用できる。分類は単純閾値(1又は2次元閾値)、ロジスティック回帰モデル又は任意の他の分類子のいずれでも行うことができる。
【0142】
マイクロアレイで検出された4種のmiR:hsa−miR−200a(配列番号5)、hsa−miR−200b(配列番号6)、hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−141(配列番号1)に基づくロジスティック回帰を使用する例示的分類子を図2に示す。肺胸膜中皮腫の検出の感度は100%であり、シグナルの特異性は98%である。分類子のp値は、2.74e−24である。
【0143】
(例1.2)
特異的マイクロRNAは中皮腫と、大腸、腎臓、肝臓、膵臓又は胃由来の腫瘍とを識別できる
中皮腫(試料7個)対大腸、腎臓、肝臓、膵臓又は胃由来の腫瘍(試料59個)のアレイ結果の分析を図3に示す。結果は、表2に示すとおり、いくつかのmiRの発現様式における有意差を示した。
表2:
【表2】
miR名は、miRBase登録名(release9.1)である。
MIDは、成熟マイクロRNAの配列番号である。
HIDは、マイクロRNAヘアピン前駆体(プレマイクロRNA)の配列番号である。
p値は、試料の2群間での対応のない両側t検定の結果である。
【0144】
これらのmiRは、中皮腫と大腸、腎臓、肝臓、膵臓及び胃由来の腫瘍(原発又は転移のいずれでも)とを識別するために使用できる。分類は単純閾値(1又は2次元閾値)、ロジスティック回帰モデル又は任意の他の分類子のいずれでも行うことができる。
【0145】
マイクロアレイで検出された2種のmiR:hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−194(配列番号4)に基づくロジスティック回帰を使用する例示的分類子を図4に示す。
【0146】
hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−194(配列番号4)による中皮腫検出の感度は100%であり、シグナルの特異性は97%である。分類子のp値は、6.4186e−008である。
【0147】
(例1.3)
特異的マイクロRNAは中皮腫と、様々な組織型由来の肺腫瘍とを識別できる
中皮腫(試料7個)対肺腫瘍(試料49個)のアレイ結果の分析を図5に示す。結果は、表3に示すとおり、いくつかのmiRの発現様式における有意差を示した。
【0148】
これらのmiRは、中皮腫と肺腫瘍(原発又は転移のいずれでも)とを識別するために使用できる。分類は単純閾値(1又は2次元閾値)、ロジスティック回帰モデル又は任意の他の分類子のいずれでも行うことができる。
【0149】
マイクロアレイで検出された2種のmiR:hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−141(配列番号1)に基づくロジスティック回帰を使用する例示的分類子を図6に示す。
【0150】
hsa−miR−200c及びhsa−miR−141による中皮腫検出の感度は100%であり、シグナルの特異性は98%である。分類子のp値は、2.5278e−007である。
【0151】
マイクロアレイで検出された2種のmiR:hsa−miR−193a(配列番号3)及びhsa−miR−200a(配列番号5)に基づくロジスティック回帰を使用する別の例示的分類子を図7に示す。
【0152】
hsa−miR−193a及びhsa−miR−200aによる中皮腫検出の感度は100%であり、シグナルの特異性は96%である。分類子のp値は、3.7521e−007である。
表3:
【表3】
miR名は、miRBase登録名(release9.1)である。
MIDは、成熟マイクロRNAの配列番号である。
HIDは、マイクロRNAヘアピン前駆体(プレマイクロRNA)の配列番号である。
p値は、試料間での対応のないt検定の結果である。
【0153】
(例2)
中皮腫と、様々な組織型由来の非中皮腫腫瘍とを識別するためのqRT−PCRアッセイ
2a)試料
腫瘍試料は、複数の供給元から得た。各施設のIRB又はIRBと同意義の指針に従って全ての試料について施設内承認審査を取得した。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料については、初期診断、組織型、グレード及び腫瘍百分率を試料の最初及び/又は最後の切片で実施したヘマトキシリン−エオシン(H&E)染色スライドにおいて病理医が決定した。誤分類の症例については診療情報を再調査した。
【0154】
RNAを以下の供給源:肺胸膜での中皮腫原発性腫瘍試料20個(肉腫様2個、類上皮12個及び既知の亜型以外6個)、非小細胞腺癌原発性試料20個、腎臓試料10個[転移9個(肺胸膜への転移1個及び肺への転移9個)並びに原発性腫瘍1個]、膵臓原発性5個、大腸から肺への転移5個、肝臓原発性試料5個、膀胱原発性試料5個、乳房から肺への転移5個、卵巣試料4個(肺胸膜への転移1個、及び原発性腫瘍3個)、由来のパラフィン包埋(FFPE)組織の試料79個から抽出した。
【0155】
2b)PCR手順
以下のとおり混合物を調製した:
【表4】
この混合物6μlを適切なRNA試料4μl(又はRNAを含まない対照の超純水)に加え、37℃で1時間インキュベートした。
ポリ(T)アダプター(GCGAGCACAGAATTAATACGACTCACTATCGGTTTTTTTTTTTTVN、配列番号42)混合物を以下のとおり調製した。
【表5】
この混合物3μlを適切に表示したPCRチューブに入れた。ポリアデニル化RNA及びRNAを含まない対照から5μlを、混合物3μlを含むPCRチューブに移した。
【0156】
チューブをPCR装置に入れ、アニーリング工程を以下のアニーリングプログラムに従って実施した:
ステップ1:85℃、2分間
ステップ2:70℃から25℃へ20秒間の1サイクルごとに1℃ずつ下げた。
【0157】
逆転写混合物を以下のとおり調製した:
【表6】
組換えRnasin 1.5μl及びsuperscript II RT 1μl(1試料あたり)を上記の混合物に加えた。混合物12.5μlを、アニールしたポリA RNA及びRNAを含まない対照を含む各PCRチューブに直ちに加えた。
【0158】
チューブを直ちにサーモサイクラーに置き、以下の逆転写プログラムを実行した:
ステップ1:37℃、5分間
ステップ2:45℃、5分間
ステップ3:ステップ1〜2を5回繰り返す
ステップ4:4℃でプログラムを終了
【0159】
プライマー−プローブ混合物を調製した。各チューブで10μM Fwdプライマーを同じRNAに特異的である5μMの対応するMGBプローブの同容量と混合した。
【0160】
Fwdプライマー及びMGBプローブの配列を表4に示す。
表4:プライマー及びプローブの配列
【表7】
*Rosetta Genomicsでクローン化された。
【0161】
cDNAを最終濃度0.5ng/μlに希釈した。PCR混合物は以下のとおり:
【表8】
119μl(RNAを含まない対照用及びcDNAを含まない対照用)又は289μlのPCR混合物を適切に表示したマイクロチューブに分注した。cDNA(0.5ng/μl)17μlを混合物を含むマイクロチューブに分注した。混合物から18μlを各ウェルにリピーターピペットを使用して分注することによってPCRプレートを調製した。プライマープローブ混合物2μlを各ウェルにマルチチャンネルピペッターを使用して加えた。プレートをPCR装置に入れ、以下のプログラムを実行した:
段階1、Reps=1
ステップ1:95.0で10分間保持(MM:SS)、ランプ速度=100
段階2、Reps=40
ステップ1:95.0で0:15保持(MM:SS)、ランプ速度=100
ステップ2:60.0で1:00保持(MM:SS)、ランプ速度=100
標準7500モード
試料容量(μL):20.0
データ収集:段階2、ステップ2
【0162】
2c)qRT−PCRによって検出された発現レベルの処理
所望の核酸の発現レベルを上に記載のとおり定量的RT−PCRによって検出した。PCR Ctシグナルは、増幅物が蛍光の閾値を超える最初のサイクルを表す。CTの低い値は、マイクロRNAの高い存在量又は高い発現レベルを表す。
Ctの陰性対照ウェルは劣決定であった。
結果は、以下の概要の内の1つによって処理した:
A.3回反復の加重されたCtを3回反復のメジアンとして算出した。32Ct以下のメジアンについて、1Ctまでの外れ値を許容する。32を超えて37Ctより低いメジアンについては、1.5Ctまでの外れ値を許容する。37Ct以上のメジアンについては、2Ctまでの外れ値を許容する。3回反復が上の定義による外れ値2個を有する場合、それは除外された。
B.3回反復の加重されたCtを以下のとおり算出した:全ての反復が1Ct以内の差異であった場合、最小と最大のCtの間の差異が1未満であったことを意味し、それらの平均を以下のとおり算出した:
Ctmax−Ctmin≦1→加重されたCt=(Ctmax+Ctmedian+Ctmin)/3
外れ値のCtのそれぞれが中央値から1Ct未満の(又は1Ctと等しい)差異を有する場合、それらの平均を算出した。
Ctmax−Ctmedian≦1及びCtmedian−Ctmin≦1→加重されたCt=(Ctmax+Ctmedian+Ctmin)/3
外れ値のCtの内の1個がメジアンCtから1Ctを超える差異を有する場合−それは加重されたCtには使用しない。
データの解釈は、以下の判定基準に従った:
U6は、20から32の間の加重されたCtを有するはずである。そうでなければ実験は失敗であった。例2全体にわたってPCRシグナル(Ct)はこの試料についての各マイクロRNAの加重されたCtからこの試料についてのU6の加重されたCtを減算することによって各試料について正規化した。したがって正規化Ctは、正規化Ctの低い値がマイクロRNAの高い存在量又は高い発現レベルを表すように、発現レベルから反転したままである。
【0163】
(例2.1)
特異的マイクロRNAは、肺胸膜中皮腫と肺腺癌とを識別できる
PCRで検出された2種のmiR:hsa−miR−141(配列番号1)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)に基づく線形結合を使用する例示的分類子を図8に示す。検出感度は、100%であり、シグナルの特異性は100%である。
【0164】
(例2.2)
特異的マイクロRNAは、肺胸膜中皮腫と肝腫瘍とを識別できる
PCRで検出された2種のmiR:hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−122a(配列番号23)に基づく線形結合を使用する例示的分類子を図9に示す。検出感度は、100%であり、シグナルの特異性は100%である。
【0165】
(例2.3)
特異的マイクロRNAは、肺胸膜中皮腫と、大腸又は膵臓のいずれか由来の腫瘍とを識別できる
PCRで検出された2種のmiR:hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)に基づく線形結合を使用する例示的分類子を図10に示す。検出感度は、100%であり、シグナルの特異性は100%である。
【0166】
(例2.4)
特異的マイクロRNAは、肺胸膜中皮腫と膀胱腫瘍とを識別できる
PCRで検出された2種のmiR:hsa−miR−141(配列番号1)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)に基づく線形結合を使用する例示的分類子を図11に示す。検出感度は、100%であり、シグナルの特異性は100%である。
【0167】
(例2.5)
特異的マイクロRNAは、肺胸膜中皮腫と卵巣及び乳房の腫瘍とを識別できる
PCRで検出された2種のmiR:hsa−miR−141(配列番号1)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)に基づく線形結合を使用する例示的分類子を図12に示す。検出感度は、100%であり、シグナルの特異性は100%である。
【0168】
(例2.6)
特異的マイクロRNAは、肺胸膜中皮腫と腎臓腫瘍とを識別できる
PCRで検出された2種のmiR:hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−122a(配列番号23)に基づく線形結合を使用する例示的分類子を図13に示す。検出感度は、90%であり、シグナルの特異性は4個の誤りを含んで80%である。
【0169】
(例2.7)
中皮腫と様々な組織型由来の非中皮腫腫瘍とを識別するためのqRT−PCRアッセイの確立
2.7.1)アッセイ#1
hsa−miR−192(配列番号2)、hsa−miR−200c(配列番号11)hsa−miR−193a−3p(配列番号10)及びU6(配列番号41)の発現レベルを上の例2bに記載のPCR手順により測定した。
算出した加重されたCtを使用して、アッセイについての最終スコアを3種のmiRのそれぞれについて算出した加重されたCtのそれぞれから、U6の加重されたCtを減算することによって決定した:
NormCt(miR−192)=(加重されたCt(miR−192)−加重されたCt(U6);
NormCt(miR−193a−3p)=加重されたCt(miR−193a−3p)−加重されたCt(U6);
NormCt(miR−200c)=加重されたCt(miR−200c)−加重されたCt(U6);
【0170】
qRT−PCRアッセイの結果の分析は、2ステップで実施する:
ステップ1:hsa−miR−192(配列番号2)の正規化Ct、(NormCt(hsa−miR−192))を表5に示すとおり閾値と比較した。
低スコアリング試料を非中皮腫と決定した;
残りの試料は、ステップ2へ継続した。
ステップ2:hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)の正規化Ctの線形結合を算出し、表5に示すとおり閾値と比較した。
【0171】
算出及びアッセイ結果を表5に示す。
表5:
M1=NormCt(miR−192);
M2=NormCt(miR−200c)−1.5*NormCt(miR−193a−3p)
LC=低信頼度
HC=高信頼度
【表9】
【0172】
hsa−miR−192(配列番号2)、hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)による中皮腫検出の感度は、95%(19/20)であり、特異性は93%(55/59)である。非中皮腫癌のそれぞれについての検出の精度を表6に示す。
表6:
【表10】
【0173】
2.7.1)アッセイ#2
上の例2bに記載のPCR手順により、hsa−miR−192(配列番号2)、hsa−miR−122(配列番号24)hsa−miR−200c(配列番号11)hsa−miR−193a−3p(配列番号10)及びU6(配列番号41)の発現レベルは計測された。
算出した加重されたCtを使用して、アッセイについての最終スコアを4種のmiRのそれぞれについて算出した加重されたCtのそれぞれから、U6の加重されたCtを減算することによって決定した:
NormCt(miR−192)=加重されたCt(miR−192)−加重されたCt(U6);
NormCt(miR−122)=加重されたCt(miR−122)−加重されたCt(U6);
NormCt(miR−193a−3p)=加重されたCt(miR−193a−3p)−加重されたCt(U6);
NormCt(miR−200c)=加重されたCt(miR−200c)−加重されたCt(U6);
【0174】
qRT−PCRアッセイの結果の分析は、2ステップで実施する:
ステップ1:hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−122(配列番号24)の正規化Ct、(NormCt(hsa−miR−192)、NormCt(hsa−miR−122))を表7に記載のとおり閾値と比較した。
低スコアリング試料を非中皮腫と決定した;
残りの試料は、ステップ2へ継続した。
ステップ2:hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)の正規化Ctの線形結合を算出し、表7に記載のとおり閾値と比較した。
【0175】
算出及びアッセイ結果を表7に示す。
表7:
M1=NormCt(miR−192);
M2=NormCt(miR−122);
M3=NormCt(miR−200c)−1.5*NormCt(miR−193a−3p)
LC=低信頼度
HC=高信頼度
【表11】
【0176】
図14は、試料79個についてhsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−122a(配列番号23)を使用するアッセイ#2の分類子の第1ステップを示す。2種のmiRNAの組合せで低くスコア化された試料を「非中皮腫」と同定した。残りの試料は次のステップへ継続した。分類子の第2ステップを図15に示す。
【0177】
hsa−miR−192(配列番号2)、hsa−miR−122(配列番号24)hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)による中皮腫検出の感度は、95%(19/20)であり、特異性は93%(55/59)である。非中皮腫癌のそれぞれについての検出の精度を上の表6に示す。
【0178】
2.7.2)アッセイ#3
上の例2bに記載のPCR手順によるhsa−miR−192(配列番号2)、hsa−miR−122(配列番号24)hsa−miR−141(配列番号1)hsa−miR−193a−3p(配列番号10)及びU6(配列番号41)の発現レベル。
【0179】
算出した加重されたCtを使用して、アッセイについての最終スコアを4種のmiRのそれぞれについて算出した加重されたCtのそれぞれから、U6の加重されたCtを減算することによって決定した:
NormCt(miR−192)=加重されたCt(miR−192)−加重されたCt(U6);
NormCt(miR−122)=加重されたCt(miR−122)−加重されたCt(U6);
NormCt(miR−141)=加重されたCt(miR−141)−加重されたCt(U6);
NormCt(miR−193a−3p)=加重されたCt(miR−193a−3p)−加重されたCt(U6);
qRT−PCRアッセイの結果の分析は、2ステップで実施する:
ステップI:hsa−mir−192及びhsa−miR−122の正規化平均Ctを加えた:
正規化された加重されたCt(miR−192)+正規化された加重されたCt(miR−122)
低スコアリング試料を非中皮腫と決定した;
高スコアリング試料は表8に従って分析した:
表8:
【表12】
ステップII:正規化された加重されたCt(miR−141)から正規化された加重されたCt(miR−193a−3p)を減算した:正規化された加重されたCt(miR−141)−正規化された加重されたCt(miR−193a−3p)。
低スコアリング試料を非中皮腫と決定した;
高スコアリング試料を表9に従って中皮腫と決定した。
表9:
【表13】
【0180】
このアッセイの分類子の第1及び第2ステップをそれぞれ図16及び17にさらに示す。
【0181】
hsa−miR−192(配列番号2)、hsa−miR−122(配列番号24)hsa−miR−141(配列番号1)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)による中皮腫検出の感度は、95%(19/20)であり、特異性は98%(58/59)である。非中皮腫癌のそれぞれについての検出の精度を表10に示す。
表10:
【表14】
【0182】
(例3)
マイクロRNAは、腺癌及び腎細胞癌(RCC)からの中皮腫(MPM)の同定のための分子マーカーとして役立つ。
肺胸膜由来のMPM試料7個、RCC試料16個及び、大腸(n=17)、肺(n=15)、卵巣(n=10)、食道(n=11)、子宮内膜(n=9)、胃(n=6)、膵臓(n=6)、乳房(n=4)及び前立腺(n=3)由来の腺癌81個を含む、104個の保存された、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)癌試料をマイクロRNAマイクロアレイの使用によって特徴付けた。
【0183】
表11は、中皮腫と腺癌又はRCCのいずれかとの間で差次的に発現されるマイクロRNAについて、悪性胸膜中皮腫(MPM)、腺癌及びRCCの試料での蛍光の正規化されたメジアン値を示す。ベンジャミニ−ホッホバーグ誤検出率0.2を差次的に発現されるマイクロRNAを同定するために使用し、それぞれ0.05及び0.04のp値カットオフを得た。2種の比較のそれぞれについて、p値(対応のない両側t検定)、発現のメジアンの倍数変化(上方調節又は下方調節のいずれでも、メジアン値として示す)、及び各マイクロRNAの分類可能性を示唆する受信者動作特性(ROC)曲線下の面積であるAUCについての値を示す。マイクロRNAを2種の比較でのAUCの合計の減少値によって選別する。
表11:悪性胸膜中皮腫(MPM)と腺癌(Adeno)又は腎細胞癌(RCC)との間で差次的に発現されるマイクロRNA
【表15−1】
【表15−2】
【0184】
中皮腫試料と腺癌試料との間、及び中皮腫試料とRCC試料との間のマイクロRNA発現の比較を図18A及び18Bにそれぞれ示す。
【0185】
hsa−miR−193a−3p(配列番号10)は、腺癌及びRCCの両方と比較して中皮腫で有意に過剰発現された唯一のマイクロRNAであった。hsa−miR−200c(配列番号11)が最も強いシグナルを有して、hsa−miR−200ファミリーは腺癌試料で強く過剰発現された。hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−194(配列番号4)発現は、RCCにおいて最も高く、hsa−miR−192(配列番号2)でのシグナルが幾分強かった。総合して、これらのマイクロRNAは、腫瘍の各研究群における特異的発現を有するパネルを含む(図18C)。
【0186】
これらのマイクロRNAの発現をqRT−PCRプラットホームを使用して、MPM試料22個(マイクロアレイセットからの反復試料7個及び新たな試料15個)、腎細胞癌4個(反復試料2個を含む)、並びに肺(n=25)、乳房(n=4)、膀胱(n=2)、卵巣(n=4)、大腸(n=2)及び膵臓(n=2)の腺癌39個(内5個は反復)を含むFFPE腫瘍試料でのhsa−miR−200c(配列番号11)、hsa−miR−193a−3p(配列番号10)及びhsa−miR−192(配列番号2)の発現レベルを測定して検証した。U6 snRNA(配列番号41)の発現レベルを各試料で測定し、正規化に使用した。PCR Ctシグナルを、この試料についての各マイクロRNAのCtの平均からこの試料についてのU6のCtの平均を減算し、全ての試料にわたるU6のCtの平均を戻し加えることによって各試料について正規化した。次いでこのシグナルを、任意に選択した値40からこの正規化された値を減算することによって反転させた。これにより正規化し反転させたCtの低い値は、マイクロRNAの低い存在量又は低い発現レベルを表す。qRT−PCRプラットホームを使用して追加的な別の試料を測定し、発現における差異がこれらの組織の確実に測定できる一般的特質であることを示唆して、これらのマイクロRNAの発現レベルは同じ様式を維持した(図18D)。
【0187】
腺癌、RCC又はHCC(肝細胞癌)からの中皮腫の鑑別診断のために定量的診断アッセイを、明確な分類規則及びこれらのマイクロRNAの発現レベルの閾値を定義することによって開発した。qRT−PCRプラットホームをhsa−miR−200c(配列番号11)、hsa−miR−193a−3p(配列番号10)、hsa−miR−192(配列番号2)及びhsa−miR−122(配列番号24)並びに正規化のためのU6(配列番号41)snRNAの発現レベルを各試料について[3回反復で]測定するために使用した。分類規則及び閾値を、MPM試料20個(前述のセットからの反復試料12個を含む)、RCC試料10個(反復試料4個を含む)、HCC試料5個並びに、肺(n=20)、膀胱(n=5)、大腸(n=5)、膵臓(n=5)、乳房(n=5)及び卵巣(n=4)の腺癌44個(内16個は反復)からなる試料79個のセットで試した。hsa−miR−192(配列番号2)の発現レベルは、HCC又は大腸及び膵臓組織由来の腺癌の試料から中皮腫試料を容易に識別できたが、RCC試料は発現レベルのより広い分布を有した(図19A)。hsa−miR−122(配列番号24)は、HCC試料において確実に非常に強く過剰発現された(図19A)。腺癌で過剰発現されるhsa−miR−200c(配列番号11)と、中皮腫で過剰発現されるhsa−miR−193a−3p(配列番号10)との組合せは、RCCがシグナルのより広い分布を示して、2つの群を正確に識別した(図19B)。
【0188】
これらの発現測定を使用して、所与の試料が中皮腫試料であるかどうかを決定する平易な分類規則を定義した。hsa−miR−192(配列番号24)の発現(正規化Ct)が6.5未満である場合(図19Aでの縦実線)、及びhsa−miR−200c(配列番号11)の発現足す1.5(正規化Ct単位)がhsa−miR−193a−3p(配列番号10)の正規化Ctの1.5倍未満である場合(図19Bでの斜実線)に試料は中皮腫であると同定され、そうでなければ他の型の腫瘍、RCC、HCC又は腺癌のいずれかであると同定される。図表において、発現値が図19Aの実線の左側にあり、且つ図19Bの斜線を超えている場合に試料は中皮腫であると同定される。これらの決定閾値の両側の1.5正規化Ctの限界(図19での実線に平行する点線)は、qRT−PCRアッセイの再現性を反映し、訓練セットでの正確な能力を提供する確実性の低い領域として選択され、訓練セットで示し得ない追加的生物学的変化を考慮する。異なる特異性を有する3種のマイクロRNAの発現を組み合わせるこの決定規則は、訓練セットにおいて94%の総合的な精度に達した。表12に示すとおり、91%の試料は高い信頼度で分類され、その内94%は正しく分類された。RCCは、発現レベルのより広い分布のため最も低い精度であったが、組合せ決定基準は試料10個の内7個の正確な同定を可能にし、その内5個は高い精度を有した。
表12:hsa−miR−192(配列番号24)、hsa−miR−200c(配列番号11)及びhsa−miR−193a−3p(配列番号10)の発現レベルに、定義した鑑別診断規則を使用する訓練試料及びテスト試料の分類。HC−高信頼度、LC−低信頼度。
【表16】
【0189】
中皮腫の鑑別診断におけるこれらのマイクロRNAの重要性及び有用性は、様々な試料セット及びプラットホームにおいて示された。選択した決定規則及び決定閾値の精度を検証するために、これらの閾値を新たな試料及び初期の発見ステップにおいて使用した試料を含む、訓練セットに含まれていない試料を分類するために使用した。訓練セットを使用して分類規則を定義した後、同じ手順を、中皮腫試料12個、RCC試料8個、HCC試料5個、並びに肺(n=15)、膀胱(n=9)、卵巣(n=6)、大腸(n=5)、乳房(n=4)及び膵臓(n=3)の腺癌42個を含むテストセットでのこれらのマイクロRNAの発現を測定するために使用した(図19C及び19D)。テストセットの試料67個の内、44個は独自の試料であり、試料23個(中皮腫9個、RCC3個及び腺癌11個)は初期の発見ステップからの反復であるが(図18)、決定規則又は閾値の試用では使用されなかった。あらかじめ定義した分類規則を使用して、各試料を4つのカテゴリー:「高信頼度の中皮腫」、「低信頼度の中皮腫」、「低信頼度の非中皮腫」又は「高信頼度の非中皮腫」の内の1つに帰属させた。表12に示すとおり、この分類規則は、テスト試料67個の内66個を正しく同定し(98.5%)、その内57個は高信頼度で分類された。新たなテスト試料44個の内、43個は正しく分類され、その内37個は高信頼度で分類され、中皮腫の同定について感度100%及び特異性98%を得た。
【0190】
結果は、3種のマイクロRNAの発現レベルを使用するマイクロRNAに基づくアッセイが、非常に高い感度及び特異性を有して悪性胸膜中皮腫(MPM)を正確に診断でき、且つそれを胸膜に関する他の上皮悪性腫瘍から識別できることを示す。このアッセイは、実施しやすく、再現性において高い信頼性があり、この癌を診断するために病理学者が使用する現在利用できる手段への少なくとも強力な補強である。分類のために少数のマイクロRNAが必要であり、これらのマイクロRNAの高い組織特異性及びパラフィンに包埋された保存用固定化組織からのそれらの決定の容易さは、それらを、この疾患についての信頼でき、且つ有力なバイオマーカーの非常に魅力的な候補にする。体液及び血清中でのそれらの保存性についての近年の実証は、関連する胸膜浸出液における中皮腫の早期且つ正確な診断及び中皮腫全般の早期検出のためのそれらの将来の使用も示すことができる。
【0191】
(例4)
扁平上皮癌と腺癌とを識別するためのマイクロアレイアッセイ
4a)試料
新鮮凍結試料及びFFPE試料を含む、NSCLC肺扁平上皮癌試料62個及びNSCLC肺腺癌試料60個をいくつかの供給元から得た。
【0192】
代表的なブロックからの組織を1.5mlマイクロ遠心チューブに切り取り(10マクロメートル切片5個)、切片での腫瘍の量を評価するためにヘマトキシリン−エオシン染色スライドの系列を各ブロックから得た。全ての試料は、無記名で、検証アッセイ及び分析を実施する調査者にわからないようにした。
FFPE組織をキシレンで脱パラフィン化し、エタノールで洗浄し、プロテイナーゼKで消化した。RNAを酸フェノール:クロロホルムで抽出し、続いてエタノール沈殿及びデオキシリボヌクレアーゼ消化した。凍結組織から全RNAをmiRvana microRNA isolation kit(Ambion)を使用して抽出した。
【0193】
4b)マイクロアレイ
カスタムマイクロRNAマイクロアレイを以下のとおり調製した:マイクロRNAを表すDNAオリゴヌクレオチドプローブ約650個をコートマイクロアレイスライド(Nexterion(登録商標)Slide E、Schott、Mainz、Germany)に3回反復でスポットした。全RNA3〜5μgをRNAリンカー、p−rCrU−Cy/dye(Dharmacon、Lafayette、CO;Cy3又はCy5)の3’端への連結によって標識した。スライドを標識RNAと12〜16時間、42℃でインキュベートし、次いで2回洗浄した。アレイを10μmの解像度で走査し、画像をSpotReaderソフトウェア(Niles Scientific、Portola Valley、CA)を使用して分析した。マイクロアレイスポットを組合せ、シグナルを正規化した。
【0194】
4c)マイクロアレイデータ分析及び統計
2つの群(扁平上皮癌試料又は腺癌試料)の少なくとも1つにおいて300を超える正規化した蛍光シグナルのメジアンをマイクロアレイにおける信頼できる発現とみなした。発現レベルにおける差異の有意性を対応のない両側t検定によって評価した。p値の閾値を0.05/141=0.00035に調整することによって多重仮説検定を制御するためにボンフェローニ法を使用した。
【0195】
4d)アッセイ
扁平上皮癌試料対腺癌試料のアレイ結果を図20に示す。
【0196】
扁平上皮癌試料におけるhsa−miR−205(配列番号49)の発現は、腺癌試料におけるその発現よりも有意に高い。対照的に、扁平上皮癌試料におけるhsa−miR−29b(配列番号44)、hsa−miR−30b(配列番号47)及びhsa−miR−375(配列番号8)の発現は、腺癌試料におけるそれらの発現よりも有意に低い。したがって、図21に示すとおりこれらのmiRは、扁平上皮癌試料と腺癌試料とを識別するための手段として役立つことができる。
【0197】
(例5)
扁平上皮及び非扁平上皮組織像を有する肺非小細胞癌(NSCLC)試料を識別するためのqRT−PCRアッセイ
5a)試料
新鮮凍結試料及びFFPE試料を含む試料47個(その内19個は肺扁平上皮癌であり、15個は腺癌であり、13個はラージNSCLCであった)をいくつかの供給元から得た。
【0198】
代表的なブロックからの組織を1.5mlマイクロ遠心チューブに切り取り(10マクロメートル切片5個)、切片での腫瘍の量を評価するためにヘマトキシリン−エオシン染色スライドの系列を各ブロックから得た。全ての試料は、無記名で、検証アッセイ及び分析を実施する調査者にわからないようにした。
【0199】
FFPE組織をキシレンで脱パラフィン化し、エタノールで洗浄し、プロテイナーゼKで消化した。RNAを酸フェノール:クロロホルムで抽出し、続いてエタノール沈殿及びデオキシリボヌクレアーゼ消化した。凍結組織から全RNAをmiRvana microRNA isolation kit(Ambion)を使用して抽出した。
【0200】
5b)PCRプライマー及びプローブ
PCRで使用するFwdプライマー及びMGBプローブの配列を以下に示す:
【表17】
miR−375(配列番号8)及びmiR−205(配列番号49)の発現レベルをhsa−miR−21(配列番号55)及びU6(配列番号41)で正規化した。
【0201】
5c)アッセイ
miR−375(配列番号8)の発現レベルは、扁平上皮試料においてよりも非扁平上皮試料において高く、一方miR−205(配列番号49)の発現レベルは、非扁平上皮試料においてよりも扁平上皮試料において高い。
【0202】
hsa−miR−375(配列番号8)の発現レベルからのmiR−205(配列番号49)の発現レベルの減算は、図21に示すとおり、扁平上皮及び非扁平上皮組織像を有するNSCLC試料の間の識別を提供する。
決定規則:
【表18】
感度100%;特異性100%;高信頼度で分類された試料の百分率は92.6である。
【0203】
具体的な実施形態の前述の記載は、過度の実験を行うことなく、且つ一般的概念から逸脱することなくそのような具体的な実施形態を、現在の知識を応用することによって容易に変更及び/又は種々の応用に適用できる本発明の性質全般を完全に明らかにし、したがってそのような適用及び変更は、開示される実施形態の等価物の意味及び範囲の中であると理解されると意図されるべきであり、意図される。発明は、その具体的な実施形態と併せて記載されているが、多数の別法、変更及び変化は当業者に明白である。したがって添付の特許請求の範囲の精神及び広い範囲内にある全てのそのような別法、変更及び変化を包含することは意図される。
【0204】
詳細な記載及び具体的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、本発明の精神及び範囲内での種々の変化及び変更がこの詳細な記載から当業者に明らかになることから、例示の目的でのみ示されることは理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中皮腫を診断する方法であって、
(a)対象から生物学的試料を得ること、
(b)前記試料から、配列番号2、10、11、24、41、1、3〜9、12〜23、25、26、及び58〜72、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される核酸配列の発現プロファイルを決定すること、並びに
(c)前記発現プロファイルを参照発現プロファイルと比較すること
を含み、
前記決定された発現プロファイルと前記参照発現プロファイルとの比較により中皮腫の診断が可能になる方法。
【請求項2】
中皮腫と他の癌とを区別する方法であって、
(a)対象から生物学的試料を得ること、
(b)前記試料において、配列番号2、10、11、24、41、1、3〜9、12〜23、25、26、及び58〜72、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される核酸配列の発現プロファイルを決定すること、並びに
(c)前記発現プロファイルを参照発現プロファイルと比較すること
を含み、
前記決定された発現プロファイルと参照発現プロファイルとの比較により、中皮腫及び前記他の癌のうちの一方であることが示される方法。
【請求項3】
前記中皮腫が胸膜中皮腫である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記中皮腫が腹膜の中皮腫である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記他の癌が腺癌である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記他の癌が、結腸、腎臓、肝臓、膵臓、及び胃からなる群から選択される器官に由来する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記腎臓に由来する癌が腎細胞癌である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記肝臓に由来する癌が肝細胞癌である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
核酸配列が、配列番号2、10、11、24、及び41、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
核酸配列が、配列番号2、10、11、及び41、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
核酸配列が、配列番号2、10、24、及び41、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
核酸配列が、配列番号1〜22、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号1、2、4〜9、11〜14、及び16〜22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、腺癌であることを示す、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
核酸配列が、配列番号1〜22、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号3、10、及び15、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に低いことが、腺癌であることを示す、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
前記腺癌が、肺、胃、腎臓、結腸、前立腺、頸部、食道、膵臓、小腸、及び胸部からなる群から選択される器官の腺癌である、請求項5に記載の方法。
【請求項15】
核酸配列が、配列番号1〜7、9〜20、及び22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号1、2、4〜7、11〜14、及び16〜20、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、結腸、腎臓、肝臓、膵臓、及び胃からなる群から選択される器官に由来する癌であることを示す、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
核酸配列が、配列番号1〜7、9〜20、及び22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号3、10、及び15、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に低いことが、結腸、腎臓、肝臓、膵臓、及び胃からなる群から選択される器官に由来する癌であることを示す、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
前記他の癌が肺癌であり、核酸配列が、配列番号1、3、5〜13、15、及び18〜22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号1、5〜9、11〜14、及び18〜22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、肺癌であることを示す、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記他の癌が肺癌であり、核酸配列が、配列番号1、3、5〜13、15、及び18〜22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号3、10、及び15、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に低いことが、肺癌であることを示す、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記肺癌が、肺扁平上皮細胞癌、肺未分化小細胞癌、肺未分化大細胞癌、肺腺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺カルチノイド、及び神経内分泌大細胞癌からなる群から選択される、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記他の癌が肝臓癌であり、核酸配列が、配列番号2、14、及び23〜25、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、前記核酸配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、肝臓癌であることを示す、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
前記生物学的試料が、体液、細胞系、及び組織試料からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記組織が、新鮮組織、冷凍組織、固定組織、ワックス包埋組織、又はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記生物学的試料が、原発不明癌(CUP)、原発性癌、又は転移性癌の対象から得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
分類子アルゴリズムをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
前記分類子が、決定木分類子、ロジスティック回帰分類子、最近傍分類子、ニューラルネットワーク分類子、混合ガウスモデル(GMM)、及びサポートベクターマシン(SVM)分類子からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
核酸配列の発現プロファイルが、核酸のハイブリダイゼーション及び核酸増幅からなる群から選択される方法によって決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項27】
核酸のハイブリダイゼーションが、固相核酸バイオチップアレイを用いて、又はin situでのハイブリダイゼーションにおいて実施される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
核酸増幅の方法がリアルタイムPCRである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
リアルタイムPCR法が、フォワードプライマー及びリバースプライマーを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
フォワードプライマーが、配列番号27、29、31、33、35、37、及び39、並びにそれと少なくとも約80%同一である配列からなる群から選択される配列を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
リアルタイムPCR法がプローブをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
プローブが、配列番号1、2、10、11、23、24、及び41から選択される配列に相補的な配列、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
プローブが、配列番号28、30、32、34、36、38、40、及び43、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
中皮腫と他の癌とを区別するためのキットであって、配列番号1、2、10、11、23、24、及び41から選択される配列に相補的な配列、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含むプローブを含むキット。
【請求項35】
前記プローブが、配列番号28、30、32、34、36、38、40、及び43、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
前記他の癌が腺癌である、請求項34に記載のキット。
【請求項37】
前記他の癌が、結腸、腎臓、肝臓、膵臓、胃、及び肺からなる群から選択される器官に由来する、請求項34に記載のキット。
【請求項38】
扁平非小細胞肺癌(NSCLC)と非扁平NSCLCとを区別する方法であって、
(a)対象から生物学的試料を得ること、
(b)前記試料において、配列番号8、21、25、44〜50、及び55、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される核酸配列の発現プロファイルを決定すること、並びに
(c)前記発現プロファイルを参照発現プロファイルと比較すること
を含み、
前記決定された発現プロファイルと参照発現プロファイルとの比較により、扁平NSCLC及び非扁平NSCLCのうちの一方であることを示す方法。
【請求項39】
配列番号8及び21、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、非扁平NSCLCであることを示す、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
配列番号49〜50、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に低いことが、非扁平NSCLCであることを示す、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記非扁平NSCLCが腺癌であり、配列番号8、21、25、44〜48、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、腺癌であることを示す、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記非扁平NSCLCが腺癌であり、配列番号49〜50、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、扁平NSCLCであることを示す、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記腺癌が、肺、胃、腎臓、結腸、前立腺、頸部、食道、膵臓、小腸、及び胸部からなる群から選択される器官の腺癌である、請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
前記生物学的試料が、体液、細胞系、及び組織試料からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記組織が、新鮮組織、冷凍組織、固定組織、ワックス包埋組織、又はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記生物学的試料が、原発不明癌(CUP)、原発性癌、又は転移性癌の対象から得られる、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
分類子アルゴリズムをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項48】
前記分類子が、決定木分類子、ロジスティック回帰分類子、最近傍分類子、ニューラルネットワーク分類子、混合ガウスモデル(GMM)、及びサポートベクターマシン(SVM)分類子からなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
核酸配列の発現プロファイルが、核酸のハイブリダイゼーション及び核酸増幅からなる群から選択される方法によって決定される、請求項38に記載の方法。
【請求項50】
核酸のハイブリダイゼーションが、固相核酸バイオチップアレイを用いて、又はin situでのハイブリダイゼーションにおいて実施される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
核酸増幅の方法がリアルタイムPCRである、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
リアルタイムPCR法が、フォワードプライマー及びリバースプライマーを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
フォワードプライマーが、配列番号39、51、53、及び56、並びにそれと少なくとも約80%同一の配列からなる群から選択される配列を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
リアルタイムPCR法がプローブをさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
プローブが、配列番号8、41、49、55から選択される配列に相補的な配列、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
プローブが、配列番号40、52、54、及び57、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
扁平NSCLCと非扁平NSCLCとを区別するためのキットであって、配列番号8、41、49、55から選択される配列に相補的な配列、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含むプローブを含むキット。
【請求項58】
扁平NSCLCと非扁平NSCLCとを区別するためのキットであって、配列番号40、52、54、及び57、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含むプローブを含むキット。
【請求項1】
中皮腫を診断する方法であって、
(a)対象から生物学的試料を得ること、
(b)前記試料から、配列番号2、10、11、24、41、1、3〜9、12〜23、25、26、及び58〜72、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される核酸配列の発現プロファイルを決定すること、並びに
(c)前記発現プロファイルを参照発現プロファイルと比較すること
を含み、
前記決定された発現プロファイルと前記参照発現プロファイルとの比較により中皮腫の診断が可能になる方法。
【請求項2】
中皮腫と他の癌とを区別する方法であって、
(a)対象から生物学的試料を得ること、
(b)前記試料において、配列番号2、10、11、24、41、1、3〜9、12〜23、25、26、及び58〜72、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される核酸配列の発現プロファイルを決定すること、並びに
(c)前記発現プロファイルを参照発現プロファイルと比較すること
を含み、
前記決定された発現プロファイルと参照発現プロファイルとの比較により、中皮腫及び前記他の癌のうちの一方であることが示される方法。
【請求項3】
前記中皮腫が胸膜中皮腫である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記中皮腫が腹膜の中皮腫である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記他の癌が腺癌である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記他の癌が、結腸、腎臓、肝臓、膵臓、及び胃からなる群から選択される器官に由来する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記腎臓に由来する癌が腎細胞癌である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記肝臓に由来する癌が肝細胞癌である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
核酸配列が、配列番号2、10、11、24、及び41、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
核酸配列が、配列番号2、10、11、及び41、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
核酸配列が、配列番号2、10、24、及び41、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
核酸配列が、配列番号1〜22、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号1、2、4〜9、11〜14、及び16〜22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、腺癌であることを示す、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
核酸配列が、配列番号1〜22、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号3、10、及び15、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に低いことが、腺癌であることを示す、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
前記腺癌が、肺、胃、腎臓、結腸、前立腺、頸部、食道、膵臓、小腸、及び胸部からなる群から選択される器官の腺癌である、請求項5に記載の方法。
【請求項15】
核酸配列が、配列番号1〜7、9〜20、及び22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号1、2、4〜7、11〜14、及び16〜20、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、結腸、腎臓、肝臓、膵臓、及び胃からなる群から選択される器官に由来する癌であることを示す、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
核酸配列が、配列番号1〜7、9〜20、及び22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号3、10、及び15、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に低いことが、結腸、腎臓、肝臓、膵臓、及び胃からなる群から選択される器官に由来する癌であることを示す、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
前記他の癌が肺癌であり、核酸配列が、配列番号1、3、5〜13、15、及び18〜22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号1、5〜9、11〜14、及び18〜22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、肺癌であることを示す、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記他の癌が肺癌であり、核酸配列が、配列番号1、3、5〜13、15、及び18〜22、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、配列番号3、10、及び15、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に低いことが、肺癌であることを示す、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記肺癌が、肺扁平上皮細胞癌、肺未分化小細胞癌、肺未分化大細胞癌、肺腺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺カルチノイド、及び神経内分泌大細胞癌からなる群から選択される、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記他の癌が肝臓癌であり、核酸配列が、配列番号2、14、及び23〜25、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択され、前記核酸配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、肝臓癌であることを示す、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
前記生物学的試料が、体液、細胞系、及び組織試料からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記組織が、新鮮組織、冷凍組織、固定組織、ワックス包埋組織、又はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記生物学的試料が、原発不明癌(CUP)、原発性癌、又は転移性癌の対象から得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
分類子アルゴリズムをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
前記分類子が、決定木分類子、ロジスティック回帰分類子、最近傍分類子、ニューラルネットワーク分類子、混合ガウスモデル(GMM)、及びサポートベクターマシン(SVM)分類子からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
核酸配列の発現プロファイルが、核酸のハイブリダイゼーション及び核酸増幅からなる群から選択される方法によって決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項27】
核酸のハイブリダイゼーションが、固相核酸バイオチップアレイを用いて、又はin situでのハイブリダイゼーションにおいて実施される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
核酸増幅の方法がリアルタイムPCRである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
リアルタイムPCR法が、フォワードプライマー及びリバースプライマーを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
フォワードプライマーが、配列番号27、29、31、33、35、37、及び39、並びにそれと少なくとも約80%同一である配列からなる群から選択される配列を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
リアルタイムPCR法がプローブをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
プローブが、配列番号1、2、10、11、23、24、及び41から選択される配列に相補的な配列、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
プローブが、配列番号28、30、32、34、36、38、40、及び43、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
中皮腫と他の癌とを区別するためのキットであって、配列番号1、2、10、11、23、24、及び41から選択される配列に相補的な配列、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含むプローブを含むキット。
【請求項35】
前記プローブが、配列番号28、30、32、34、36、38、40、及び43、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
前記他の癌が腺癌である、請求項34に記載のキット。
【請求項37】
前記他の癌が、結腸、腎臓、肝臓、膵臓、胃、及び肺からなる群から選択される器官に由来する、請求項34に記載のキット。
【請求項38】
扁平非小細胞肺癌(NSCLC)と非扁平NSCLCとを区別する方法であって、
(a)対象から生物学的試料を得ること、
(b)前記試料において、配列番号8、21、25、44〜50、及び55、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される核酸配列の発現プロファイルを決定すること、並びに
(c)前記発現プロファイルを参照発現プロファイルと比較すること
を含み、
前記決定された発現プロファイルと参照発現プロファイルとの比較により、扁平NSCLC及び非扁平NSCLCのうちの一方であることを示す方法。
【請求項39】
配列番号8及び21、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、非扁平NSCLCであることを示す、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
配列番号49〜50、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に低いことが、非扁平NSCLCであることを示す、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記非扁平NSCLCが腺癌であり、配列番号8、21、25、44〜48、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、腺癌であることを示す、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記非扁平NSCLCが腺癌であり、配列番号49〜50、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列のいずれかの発現レベルが前記参照発現プロファイルと比較して相対的に高いことが、扁平NSCLCであることを示す、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記腺癌が、肺、胃、腎臓、結腸、前立腺、頸部、食道、膵臓、小腸、及び胸部からなる群から選択される器官の腺癌である、請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
前記生物学的試料が、体液、細胞系、及び組織試料からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記組織が、新鮮組織、冷凍組織、固定組織、ワックス包埋組織、又はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記生物学的試料が、原発不明癌(CUP)、原発性癌、又は転移性癌の対象から得られる、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
分類子アルゴリズムをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項48】
前記分類子が、決定木分類子、ロジスティック回帰分類子、最近傍分類子、ニューラルネットワーク分類子、混合ガウスモデル(GMM)、及びサポートベクターマシン(SVM)分類子からなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
核酸配列の発現プロファイルが、核酸のハイブリダイゼーション及び核酸増幅からなる群から選択される方法によって決定される、請求項38に記載の方法。
【請求項50】
核酸のハイブリダイゼーションが、固相核酸バイオチップアレイを用いて、又はin situでのハイブリダイゼーションにおいて実施される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
核酸増幅の方法がリアルタイムPCRである、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
リアルタイムPCR法が、フォワードプライマー及びリバースプライマーを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
フォワードプライマーが、配列番号39、51、53、及び56、並びにそれと少なくとも約80%同一の配列からなる群から選択される配列を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
リアルタイムPCR法がプローブをさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
プローブが、配列番号8、41、49、55から選択される配列に相補的な配列、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
プローブが、配列番号40、52、54、及び57、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
扁平NSCLCと非扁平NSCLCとを区別するためのキットであって、配列番号8、41、49、55から選択される配列に相補的な配列、その断片、及びそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含むプローブを含むキット。
【請求項58】
扁平NSCLCと非扁平NSCLCとを区別するためのキットであって、配列番号40、52、54、及び57、その断片、並びにそれと少なくとも約80%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含むプローブを含むキット。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20】
【図21】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2011−501949(P2011−501949A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530632(P2010−530632)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001428
【国際公開番号】WO2009/057113
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(509243230)ロゼッタ ゲノミックス エルティーディー. (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001428
【国際公開番号】WO2009/057113
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(509243230)ロゼッタ ゲノミックス エルティーディー. (4)
【Fターム(参考)】
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