説明

特定の表面形状と物性を有する構造体及びその構造体形成用の(メタ)アクリル系重合性組成物

【課題】光の反射防止性能、光の透過改良性能等を有する構造体に要求される表面形状を見出し、特に表面耐傷性等の機械的強度を付与した構造体を提供することであり、また、かかる特定の表面形状を有する構造体を形成させることができる組成物を提供すること。
【解決手段】表面に、平均高さ100nm以上1000nm以下の凸部又は平均深さ100nm以上1000nm以下の凹部を有し、その凸部又は凹部が、少なくともある一の方向に対し平均周期100nm以上400nm以下で存在する構造体であって、
該構造体が、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって、(メタ)アクリル系重合性組成物が重合したものであって、
該(メタ)アクリル系重合性組成物が、4官能以上のウレタン(メタ)アクリレートを含有するものであることを特徴とする構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の表面形状と物性を有する構造体に関するものであり、詳細には、光の反射防止性能、光の透過改良性能、表面耐傷性能等を有する構造体に関するものであり、更に詳細には、ディスプレイ等に良好な視認性を付与する表面層用の構造体及びその構造体形成用の(メタ)アクリル系重合性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ等に使用する表面層は、(1)一般にドライ法と言われているもの、すなわち、誘電体多層膜を気相プロセスで作成し、光学干渉効果で低反射率を実現したもの、(2)一般にウエット法と言われているもの、すなわち、低屈折率材料を基板フィルム上にコーティングしたもの等が使用されてきた。また、これらとは原理的に全く異なる技術として、(3)表面に微細構造を付与することにより、低反射率を発現させることができることが知られている(特許文献1〜特許文献10)。
【0003】
一般にかかる表面層には、光の反射防止性能や光の透過性向上性能が必要であるのみならず、実用化の際には摩耗や傷等に強い一定の機械的強度が必要であった。
【0004】
しかしながら、上記(3)に記載した表面微細構造を利用した表面層については、良好な反射防止性能は得られるが、その一方で表面耐傷性等の機械的強度が不十分であったため、摩耗し易く、また傷等がつき易く、そのため実用化には至っていなかった。
【0005】
例えば、特許文献1ないし特許文献10には、かかる反射防止膜用の材料が列記されており、そこには、重合性樹脂として、(メタ)アクリレート化合物が用いられることが記載されている。しかしながら、そこに列記されている材料は、一般のポリマーフィルム形成用として全く一般的なもので、(3)に記載した特殊な表面微細構造を有する表面層を、その材料面から、特に表面耐傷性等の機械的強度について実用性のあるものにするという観点から検討したものではなかった。
【0006】
更には、上記(3)表面に微細構造を有する反射防止膜は、反射を好適に防止するよう表面の特殊な微細構造を有するため、その材料に特殊な物性が要求されるが、そのような要求物性についても殆ど知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭50−070040号公報
【特許文献2】特開平9−193332号公報
【特許文献3】特開2003−162205号公報
【特許文献4】特開2003−215314号公報
【特許文献5】特開2003−240903号公報
【特許文献6】特開2004−004515号公報
【特許文献7】特開2004−059820号公報
【特許文献8】特開2004−059822号公報
【特許文献9】特開2005−010231号公報
【特許文献10】特開2005−092099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
液晶表示ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)等のフラットパネルディスプレイ(以下、「FPD」と略記する)等は、その視認性確保のために、反射防止膜の装着は必須であり、かかる反射防止膜としては上記(1)又は(2)に示した無機又は有機多層膜や、上記(3)の表面微細構造による反射防止膜等が知られていた。
【0009】
しかしながら、表面微細構造による反射防止膜については、その好ましい構造や反射防止機能は知られているが、その構造を形成する材料の面については、FPDの最表面使用時の耐傷性等の機械的特性が不十分であり、実用化には至っていなかった。そこで、耐傷性等の機械的特性に優れた表面微細構造反射防止膜が提供されれば、FPD等の視認性の向上に寄与できる。
【0010】
すなわち、本発明の課題は、光の反射防止性能、光の透過改良性能等を有する構造体に要求される表面形状と物性を見出し、特に表面耐傷性等の機械的強度を付与した構造体を提供することであり、また、かかる特定の表面形状と物性を有する構造体を形成させることができる組成物を提供することにある。更に、光の反射防止性能や透過改良性能がより優れたアスペクト比の大きい構造体を良好に形成することができる組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の表面形状と物性を有する構造体を特定の組成物を重合させることによって形成すれば、上記課題を解決できることを見出し本発明に到達した。また、特定の組み合わせ組成を有する(メタ)アクリル系重合性組成物が、上記構造体形成用の材料として極めて好適であることを見出し本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明は、表面に、平均高さ100nm以上1000nm以下の凸部又は平均深さ100nm以上1000nm以下の凹部を有し、その凸部又は凹部が、少なくともある一の方向に対し平均周期100nm以上400nm以下で存在する構造体であって、該構造体が、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって、(メタ)アクリル系重合性組成物が重合したものであって、180℃以上における貯蔵弾性率が0.5GPa以上のものであることを特徴とする構造体を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、上記(メタ)アクリル系重合性組成物が、ウレタン(メタ)アクリレート及びエステル(メタ)アクリレートを含有するものである上記の構造体を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、上記(メタ)アクリル系重合性組成物が、更に、エポキシ(メタ)アクリレートを含有するものである上記の構造体を提供するものである。また、本発明は、更に、変性シリコーンオイルを含有する(メタ)アクリル系重合性組成物が重合したものである上記の構造体を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、表面に、平均高さ100nm以上1000nm以下の凹部又は平均深さ100nm以上1000nm以下の凸部を有し、その凹部又は凸部が、少なくともある一の方向に対し平均周期100nm以上400nm以下で存在する型に、(メタ)アクリル系重合性組成物を供給し、その上から基材を型の表面に対して斜めに着接させ、基材側からローラー圧着し、(メタ)アクリル系重合性組成物を硬化後、型から剥離することを特徴とする上記構造体の製造方法を提供するものである。
【0016】
また本発明は、上記の構造体形成用の(メタ)アクリル系重合性組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、光の反射防止性能、光の透過改良性能、表面耐傷性能等に優れた構造体を提供することができる。また、かかる性能に優れた特定の構造と特定の物性を有する構造体を形成することが可能な組成物を提供することができる。更に、アスペクト比の大きい構造体であっても、良好に形成することができる組成物を提供することができる。具体的には、例えばFPD等の表面層等の反射防止膜、透過性改良膜、表面保護膜等として優れた光学特性と機械的強度を有する構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の構造体の製造方法の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の構造体の製造方法を説明するための連続製造装置の一例を示す模式図である。
【図3】実施例1及び実施例2における、構造体(1)、(3)、(6)及び(14)の貯蔵弾性率の温度依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[構造体表面の形状]
本発明の構造体は、少なくともその一の表面に、平均高さ100nm以上1000nm以下の凸部又は平均深さ100nm以上1000nm以下の凹部を有していることが必須である。ここで凸部とは、基準となる面より出っ張った部分をいい、凹部とは、基準となる面より凹んだ部分をいう。本発明の構造体は、その表面に凸部を有していても、凹部を有していてもよい。また、凸部と凹部の両方を有していてもよく、更に、それらが連結して波打った構造を有していてもよい。
【0020】
凸部又は凹部は、構造体の両面に有していてもよいが、少なくとも一方の表面に有していることが必須である。中でも、空気と接している最表面に有していることが好ましい。空気は本発明の構造体とは屈折率が大きく異なり、互いに屈折率の異なる物質の界面が、本発明の特定の構造になっていることによって、反射防止性能や透過改良性能が良好に発揮されるからである。また、機械的外力を受け易い最表面に本発明の構造が存することによって、後述する本発明の構造体必須の物性(特定の貯蔵弾性率)の効果が発揮されて、その表面の耐傷性等が改良されるからである。
【0021】
凸部又は凹部は、構造体の表面全体に均一に存在していることが、上記効果を奏するために好ましい。凸部の場合には、基準となる面からのその平均高さが、100nm以上1000nm以下であることが必須であり、凹部の場合にも、基準となる面からのその平均深さが、100nm以上1000nm以下であることが必須である。高さ又は深さは一定でなくてもよく、その平均値が上記範囲に入っていればよいが、実質的に一定の高さ又は一定の深さを有していることが好ましい。
【0022】
凸部の場合でも、凹部の場合でも、その平均高さ又は平均深さは、150nm以上であることが好ましく、200nm以上であることが特に好ましい。また、600nm以下であることが好ましく、500nm以下であることが特に好ましい。平均高さ又は平均深さが、小さすぎると、良好な光学特性が発現されない場合があり、大きすぎると、製造が困難になる等の場合がある。凸部と凹部が連結して波打った構造を有している場合では、最高部(凸部の上)と最深部(凹部の下)の平均長さは、100nm以上1000nm以下であることが同様の理由から好ましい。
【0023】
本発明の構造体は、その表面に、上記凸部又は凹部が、少なくともある一の方向の平均周期が、100nm以上400nm以下となるように配置されていることが必須である。凸部又は凹部は、ランダムに配置されていてもよいし、規則性を持って配置されていてもよい。また、何れの場合でも、上記凸部又は凹部は、構造体の表面全体に実質的に均一に配置されていることが反射防止性や透過改良性の点で好ましい。また、少なくとも、ある一の方向について、平均周期が、100nm以上400nm以下となるように配置されていればよく、全ての方向に、その平均周期が100nm以上400nm以下となっている必要はない。
【0024】
凸部又は凹部が、規則性を持って配置されている場合、上記のように、少なくともある一の方向の平均周期が、100nm以上400nm以下となるように配置されていればよいが、最も周期が短い方向(以下「x軸方向」という)への周期が、100nm以上400nm以下となるように配置されていることが好ましい。すなわち、ある一の方向として、最も周期が短い方向をとったときに、周期が上記範囲内になっていることが好ましい。更にその際、x軸方向に垂直なy軸方向についても、その周期が100nm以上400nm以下となるように配置されていることが特に好ましい。
【0025】
上記平均周期(凸部又は凹部の配置場所に規則性がある場合は「周期」)は、120nm以上が好ましく、150nm以上が特に好ましい。また、250nm以下が好ましく、200nm以下が特に好ましい。平均周期が短すぎても長すぎても、反射防止効果が充分に得られない場合がある。
【0026】
本発明の構造体は、表面に上記構造を有することが必須であるが、更に、一般に「モスアイ構造(蛾の眼構造)」と呼ばれる構造を有していることが、良好な反射防止性能を有している点で好ましい。また、特許文献1ないし特許文献10の何れかの文献に記載の表面構造を有していることが、同じく良好な反射防止性能の点で好ましい。
【0027】
高さ又は深さを平均周期で割った値であるアスペクト比は特に限定はないが、1以上が光学特性の点で好ましく、1.5以上が特に好ましく、2以上が更に好ましい。また、5以下が構造体製造プロセス上好ましく、3以下が特に好ましい。本発明における(メタ)アクリル系重合性組成物を重合させることによって、初めてアスペクト比1.5以上の構造体が形成できるようになった。従って、本発明における(メタ)アクリル系重合性組成物の特徴を発揮させるためにも、アスペクト比は大きいほど好ましく、1.5以上が特に好ましく、2以上が更に好ましい。
【0028】
本発明の構造体は、表面に上記構造を付与することにより光の反射率を低減させたり、光の透過性を向上させたりする。この場合の「光」は、少なくとも可視光領域の波長の光を含む光である。
【0029】
[構造体の貯蔵弾性率]
更に本発明の構造体は、180℃以上における貯蔵弾性率が0.5GPa以上であることが必須である。一般に、(メタ)アクリル系重合性組成物が重合した物質を、室温から昇温していくと貯蔵弾性率は下がり、ある温度(約150℃〜約180℃)以上でほぼ一定になりゴム弾性を示すようになる。180℃以上における貯蔵弾性率は、かかるゴム領域での貯蔵弾性率である。なお当然に、高温にして(例えば200℃以上)、構造体が熱分解した場合にはその温度での測定値は「貯蔵弾性率」として採用されない。また、貯蔵弾性率は180℃以上ではほぼ一定値となる場合が多いが、「180℃以上における」とは「180℃以上の少なくとも一の温度における」を意味する。
【0030】
すなわち、本発明の構造体は、180℃以上で、構造体が実質的に熱分解を開始する温度未満の範囲の中の少なくとも一の温度における貯蔵弾性率が0.5GPa以上であることが必須である。以下、「180℃以上における貯蔵弾性率」を、単に「貯蔵弾性率」と略記する場合がある。
【0031】
貯蔵弾性率は、測定物の形状や大きさには依存しない物性であるが、本発明においては、構造体から約5mm×約20mm×約100μmに切り出したテストピースで測定されるか、又は、別途この大きさになるように重合させたテストピースで測定される。測定装置は、セイコーインスツルメント社製の動的粘弾性試験機DMS6100を用いて、上記形状のテストピースを、20mmの方向で挟み、−20℃〜200℃の範囲で走査し、180℃から分解温度手前まで(例えば200℃まで)の間の温度範囲の貯蔵弾性率を測定する。
【0032】
一般に、この領域での貯蔵弾性率については、測定周波数依存性は小さいが、もし周波数依存性がある場合には、10Hzで測定された貯蔵弾性率で特定される。
【0033】
本発明の構造体は、貯蔵弾性率が0.5GPa以上であることが必須であるが、好ましくは0.6GPa以上、特に好ましくは0.7GPa以上である。貯蔵弾性率が低すぎる場合は、使用温度(例えば室温)での機械的強度が劣り、構造体の表面が摩耗し易くなったり、表面に傷が付き易くなったりする場合がある。
【0034】
180℃以上における貯蔵弾性率が、構造体の一般的使用温度(例えば、室温である25℃)での機械的強度と相関がある作用・原理については明らかではないが、かかる領域での貯蔵弾性率が、機械的強度を支配する架橋密度と直接相関があるからであると考えられる。
【0035】
[構造体の構成、形成方法]
更に、本発明の構造体は、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって、(メタ)アクリル系重合性組成物が重合したものであることが必須である。すなわち、本発明の構造体は、(メタ)アクリル系重合性組成物の(メタ)アクリル基の炭素−炭素間二重結合が、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって反応してなるものであることが必須である。本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は「メタクリル」を意味し、以下同様である。また、「光照射、電子線照射及び/又は加熱によって」とは、光照射、電子線照射及び加熱からなる群のうち、何れか1つの処理によってでもよく、そこから選ばれた2つの処理の併用によってでもよく、3つの処理全ての併用によってでもよい。
【0036】
本発明の構造体は、(メタ)アクリル基の炭素−炭素二重結合が反応してなるものであることが必須であり、その反応率は特に限定はないが、85%以上であることが好ましく、90%以上であることが特に好ましい。ここで「反応率」とは、露光前後の(メタ)アクリル系重合性組成物を赤外線分光法(IR)、具体的にはフーリエ変換赤外分光光度計Spectrum One D(perkin Elmer社製)全反射法(ATR法)で測定されるエステル結合の炭素−酸素結合に帰属される1720cm-1の吸光度と、炭素−炭素結合に帰属される811cm-1の吸光度の比率から求めたものである。反応率が低すぎると、機械的強度の低下や耐薬品性の低下をまねく場合がある。
【0037】
貯蔵弾性率を0.5GPa以上にするために、更に要すれば充分な反応率や硬化性を得るためには、後述する本発明の構造体形成のための材料である(メタ)アクリル系重合性組成物の組成(例えば、(メタ)アクリレート化合物の種類、配合量;重合開始剤の種類、量等)、重合に用いる光や電子線の照射条件(強度、露光時間、波長、酸素の除去等)、重合に際しての加熱条件(温度、加熱時間、酸素の除去等)、構造体の形状(厚さ等)等を調整する。
【0038】
本発明の構造体は、低反射率や高透過性が発現される特殊な表面構造を有するため、その物性にも特殊な物性が要求される。本発明は、上記特殊な表面微細構造に機械的損傷ができにくく、表面耐傷性等の機械的強度に優れた構造体物性を見出したことを特徴としている。
【0039】
[構造体形成用材料]
上記したような特定の表面構造を有する本発明の構造体は、下記の材料から形成したときに上記したような特定の物性を好適に付与できる。以下に、本発明の構造体用の材料について詳述する。
【0040】
本発明の構造体は、(メタ)アクリル系重合性組成物が重合してなる重合体を含有していることが必須である。(メタ)アクリル系重合性組成物としては、上記構造が形成できて、上記物性が得られるものであれば特に限定はないが、ウレタン(メタ)アクリレート及びエステル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。「ウレタン(メタ)アクリレート」とは、分子中にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物をいう。また、「エステル(メタ)アクリレート」とは、分子中に、酸基(酸無水物や酸クロライドを含む)と水酸基との反応で得られたエステル結合を有し、ウレタン結合もシロキサン結合も有さないものをいう。
【0041】
更に、本発明における(メタ)アクリル系重合性組成物は、エポキシ(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ基に(メタ)アクリル酸が反応して得られる構造を有する(メタ)アクリレート化合物をいう。
【0042】
更に、本発明の構造体は、変性シリコーンオイルを含有する組成物が重合したものであることが好ましい。「変性シリコーンオイル」とは、分子中にシロキサン結合を有し、ケイ素原子(Si)にメチル基以外の有機基も結合している化合物をいう。「変性シリコーンオイル」には、シリコン(メタ)アクリレートが含まれる。従って、本発明における(メタ)アクリル系重合性組成物は、シリコン(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。「シリコン(メタ)アクリレート」とは、分子中にシロキサン結合を有する(メタ)アクリレート化合物をいう。
【0043】
[1] ウレタン(メタ)アクリレートについて
本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートは特に限定はなく、例えば、ウレタン結合の位置や個数、(メタ)アクリル基の位置や個数は特に限定はない。
【0044】
本発明の構造体形成に用いられるウレタン(メタ)アクリレートの好ましい化学構造としては、(A)分子中に(好ましくは複数個の)イソシアネート基を有する化合物に対して、分子中に水酸基と(好ましくは複数個の)(メタ)アクリル基を有する化合物を反応させて得られるような構造をもつもの、(B)複数個の水酸基を有する化合物にジイソシアネート化合物やトリイソシアネート化合物を反応させ、得られた化合物の未反応イソシアネート基に、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のように分子中に水酸基と(メタ)アクリル基を有する化合物を反応させて得られるような構造をもつものが挙げられる。
【0045】
上記(メタ)アクリレート化合物が、ウレタン(メタ)アクリレートを含有することによって、得られた構造体の硬化性、反応率が上がり、貯蔵弾性率が大きくなると共に柔軟性が優れたものになる。本発明で「硬化性」とは、(メタ)アクリル系重合性組成物の硬くなり易さをいい、二重結合の残存率から求めた「反応率」が大きく影響するが、更に、「反応率」には現れない微小な反応の進行も影響しているので、それらも含めた概念である。
【0046】
[1−1] 4官能以上のウレタン(メタ)アクリレートについて
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、4官能以上のウレタン(メタ)アクリレートを含有するものであることが好ましい。すなわち、分子中に(メタ)アクリル基を4個以上有する化合物を含有することが好ましい。この場合のウレタン結合の位置や個数、(メタ)アクリル基が分子末端にあるか否か等は特に限定はない。分子中に(メタ)アクリル基を6個以上有する化合物が特に好ましく、10個以上有する化合物が更に好ましい。また、分子中の(メタ)アクリル基の個数の上限は特に限定はないが、15個以下が特に好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート分子中の(メタ)アクリル基の数が少なすぎると、得られた構造体の硬化性、反応率が低下し、貯蔵弾性率が小さくなる場合がある。一方、ウレタン(メタ)アクリレート分子中の(メタ)アクリル基の数が多すぎると、重合による(メタ)アクリル基の炭素間二重結合消費率、すなわち反応率が十分に上がらない場合がある。
【0047】
4官能以上のウレタン(メタ)アクリレートの構造は特に限定はないが、多価イソシアネート化合物(a)のイソシアネート基に、分子中に1個の水酸基と2個以上の(メタ)アクリル基を有する化合物(b)の水酸基が反応してなるものであることが好ましい。
【0048】
この場合の多価イソシアネート化合物(a)としては特に限定はなく、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物が挙げられる。分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、分子中に3個のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等を変性してなるトリメチロールプロパン付加アダクト体、ビューレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。このうち、本発明には、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が特に好ましい。
【0049】
分子中に1個の水酸基と2個以上の(メタ)アクリル基を有する化合物(b)としては、特に限定はないが、分子中に3個以上(p個とする)の水酸基を有する化合物(b−1)の水酸基に、(メタ)アクリル酸が(p−1)個反応した化合物;グリシジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸が開環反応した化合物等が挙げられる。
【0050】
ここで、「分子中に1個の水酸基と2個以上の(メタ)アクリル基を有する化合物(b)」には、該化合物が2種以上の化合物を部分的に反応させて製造される場合に、分子中に2個以上の水酸基を有する化合物が混入する場合や、(メタ)アクリル基1個を有する化合物が混入する場合をも含むものとする。
【0051】
化合物(b)のうち、「分子中にp個(pは3以上の整数)の水酸基を有する化合物(b−1)に、(メタ)アクリル酸が(p−1)個反応した化合物」における、「分子中に3個以上の水酸基を有する化合物(b−1)」としては特に限定はないが、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、テトラメチロールエタン、ジグリセリン、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ジテトラメチロールエタン;これらのエチレンオキサイド変性化合物;これらのプロピレンオキサイド変性化合物;イソシアヌル酸のエチレンオキサイド変性化合物、プロピレンオキサイド変性化合物、ε−カプロラクトン変性化合物;オリゴエステル等が挙げられる。
【0052】
化合物(b−1)における水酸基の数は、得られるウレタン(メタ)アクリレート中の官能基の数を多くできる点で、4個以上が特に好ましく、6個以上が更に好ましい。具体的には例えば、ジグリセリン、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ジテトラメチロールエタン等が特に好ましい。
【0053】
ジグリセリンを例にとると、ジグリセリンの4個の水酸基のうちの3個の水酸基に(メタ)アクリル酸が反応することによって、分子中に1個の水酸基と2個以上の(この場合は3個の)(メタ)アクリル基を有する化合物(b)が合成される。更に、多価イソシアネート化合物(a)が、イソホロンジイソシアネートである場合を例にとると、イソホロンジイソシアネートの2個のイソシアネート基に、上記水酸基を1個と2個以上の(メタ)アクリル基を有する化合物(b)が2個反応し、「4官能以上のウレタン(メタ)アクリレート」が合成される。このとき、分子中に1個の水酸基と3個の(メタ)アクリル基を有する化合物(b)がイソホロンジイソシアネートに反応すれば、結果として、分子中に(メタ)アクリル基を6個有する「4官能以上のウレタン(メタ)アクリレート」が合成される。
【0054】
[1−2] 3官能以下のウレタン(メタ)アクリレートについて
ウレタン(メタ)アクリレートには、上記4官能以上のウレタン(メタ)アクリレートに加えて、3官能以下のウレタン(メタ)アクリレートが含有されていてもよい。かかる3官能以下のウレタン(メタ)アクリレートの化学構造には特に限定はなく、公知のものが使用できる。
【0055】
3官能以下のウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、1000以上30000以下であることが好ましく、2000以上10000以下であることが特に好ましい。分子量が小さすぎると、柔軟性が低下する場合があり、分子量が大きすぎると、貯蔵弾性率の低下をまねく場合がある。
【0056】
[1−2−1] 2官能ウレタン(メタ)アクリレートについて
「3官能以下のウレタン(メタ)アクリレート」は、分子の両末端にそれぞれ1個ずつの(メタ)アクリル基を有する2官能ウレタン(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。更に、「3官能以下のウレタン(メタ)アクリレート」の全てが、「分子の両末端にそれぞれ1個ずつの(メタ)アクリル基を有する2官能ウレタン(メタ)アクリレート」であることが特に好ましい。上記2官能ウレタン(メタ)アクリレートを含有させることによって、硬化性、反応率を向上させつつ、構造体の柔軟性を向上させることができる。
【0057】
かかる2官能ウレタン(メタ)アクリレートの化学構造には特に限定はなく、その重量平均分子量は、1000以上30000以下であることが好ましく、2000以上5000以下であることが特に好ましい。分子量が小さすぎると、柔軟性が低下する場合があり、分子量が大きすぎると、貯蔵弾性率の低下をまねく場合がある。
【0058】
かかる2官能ウレタン(メタ)アクリレートとしては特に限定はないが、以下のものが特に好ましい。すなわち、両末端が水酸基、アミノ基等のポリマー若しくはオリゴマー(c)の両末端に、ジイソシアネート化合物(d)を反応させ、得られた「両末端にイソシアネート基を有するポリマー若しくはオリゴマー」に、更に、分子中に水酸基と(メタ)アクリル基を有する化合物(e)を、その両末端に反応させたものが特に好ましい。
【0059】
両末端が水酸基のポリマー若しくはオリゴマー(c)としては特に限定はないが、例えば、エステルオリゴマー、エステルポリマー、ウレタンオリゴマー、ウレタンポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。このうち、特に好ましくは、エステルオリゴマーやエステルポリマーが挙げられる。かかるオリゴマーやポリマーの分子量は特に限定はないが、重量平均分子量として、1000〜5000の範囲が硬化性の点で好ましく、2000〜3000が特に好ましい。
【0060】
上記エステルのジオール成分としては特に限定はないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、2,2’−チオジエタノール等が挙げられる。特に好ましくは、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等である。
【0061】
上記エステルのジカルボン酸成分としては特に限定はないが、蓚酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸等のアルキレンジカルボン酸;テレフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。特に好ましくは、アジピン酸、テレフタル酸等である。
【0062】
かかるポリマー又はオリゴマーの両末端に反応させるジイソシアネート化合物(d)としては、特に限定はなく、上記の多価イソシアネート化合物(a)の項目で記載したうちのジイソシアネート化合物と同様のものが使用できる。特に好ましくは、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0063】
更に、上記で得られた両末端にイソシアネート基を有するポリマー若しくはオリゴマーの両末端に反応させる、「分子中に水酸基と(メタ)アクリル基を有する化合物(e)」としては特に限定はないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0064】
[1]ウレタン(メタ)アクリレート中の[1−1]4官能以上のウレタン(メタ)アクリレートと[1−2−2]2官能ウレタン(メタ)アクリレートの重量含有比率は、特に限定はないが、4官能以上のウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、2官能ウレタン(メタ)アクリレートが、0〜300重量部が好ましく、1〜200重量部が特に好ましく、2〜100重量部が更に好ましい。2官能ウレタン(メタ)アクリレートが多すぎると、貯蔵弾性率が低下して、0.5GPa以上の貯蔵弾性率を有する構造体が得られない場合があり、上記特殊な表面形状を有する本発明の構造体に、表面耐傷性等の機械的強度を充分に付与できない場合がある。
【0065】
2. エステル(メタ)アクリレートについて
本発明の構造体を形成させるための(メタ)アクリル系重合体は、ウレタン(メタ)アクリレートに加え、エステル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。このエステル(メタ)アクリレートを含有させることによって、構造体が軟らかくなり、本発明における特殊な構造を有する表面の機械的強度が良好になる。また、硬化性等を向上させるために使用した4官能以上のウレタン(メタ)アクリレートにより構造体の柔軟性が悪化するのを防ぐことが可能となる。このエステル(メタ)アクリレートを含有せず、2官能ウレタン(メタ)アクリレートの含有のみでは、構造体が軟らかくなりすぎ、機械的強度が劣る場合がある。
【0066】
エステル(メタ)アクリレートとしては特に限定はなく、2官能以上の(メタ)アクリレート化合物が好ましいものとして挙げられる。
【0067】
2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等の直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレート;
【0068】
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#300ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#600ジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#700ジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;
【0069】
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノベンゾエート等の3価以上のアルコールの部分(メタ)アクリル酸エステル;
【0070】
ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性水素化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性水素化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、EO変性テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール系ジ(メタ)アクリレート;
【0071】
ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールPO変性ジ(メタ)アクリレート;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのカプロラクトン付加物ジ(メタ)アクリレート;1,6−ヘキサンジオールビス(2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル)エーテル;トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0072】
3官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリセリンPO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ε−カプロラクトン変性トリ(メタ)アクリレート、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリプロピオネート等が挙げられる。
【0073】
4官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートモノプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、オリゴエステルテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0074】
これらは、1種又は2種以上混合して用いられるが、2官能エステル(メタ)アクリレートを少なくとも含有することが硬化性、反応率を上げるために好ましい。更に、2官能エステル(メタ)アクリレートと3官能以上のエステル(メタ)アクリレートとを併用することが、硬化性と貯蔵弾性率とのバランスをとるために特に好ましい。
【0075】
[2−1] 2官能エステル(メタ)アクリレートについて
上記エステル(メタ)アクリレートは、2官能エステル(メタ)アクリレートを含有することが、硬化性を上げるため、機械的強度向上等の点で好ましいが、2官能(メタ)アクリレートの中でも、アルキレングリコール鎖を有し、分子の両末端にそれぞれ1個ずつの(メタ)アクリル基を有する2官能エステル(メタ)アクリレートを含有することが、更に硬化性を上げるために好ましい。かかるものとして具体的には上記したようなアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。特に好ましくは、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールオリゴマーのジ(メタ)アクリレート化合物;ポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#600ジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールポリマーのジ(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0076】
[2−2] 3官能以上のエステル(メタ)アクリレートについて
上記エステル(メタ)アクリレートが、更に、3官能以上のエステル(メタ)アクリレートを含有するものであることが、貯蔵弾性率を上げるために特に好ましい。具体的には例えば、上記した3官能(メタ)アクリレート又は4官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。官能基の数は、4以上が特に好ましく、5以上が更に好ましい。官能基は多い方が、硬化性が良好となる。特に好ましくは、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0077】
エステル(メタ)アクリレート中の2官能エステル(メタ)アクリレートと3官能以上のエステル(メタ)アクリレートの質量含有比率は特に限定はないが、2官能エステル(メタ)アクリレート100重量部に対して、3官能以上のエステル(メタ)アクリレートが、0〜100重量部が好ましく、0〜80重量部が特に好ましく、1〜50重量部が更に好ましい。3官能以上のエステル(メタ)アクリレートが多すぎると、硬化膜等の形成された構造体が脆くなる場合がある。
【0078】
[3] エポキシ(メタ)アクリレートについて
本発明の構造体を形成させるための(メタ)アクリル系重合体は、ウレタン(メタ)アクリレート及びエステル(メタ)アクリレートに加え、エポキシ(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。このエポキシ(メタ)アクリレートを含有させることによって、構造体が更に強靭になり、本発明における特殊な構造を有する表面の耐傷性等の機械的強度が更に良好になる。
【0079】
上記「エポキシ(メタ)アクリレート」としては特に限定はないが、具体的には例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のアルキレングリコ−ルのジグリシジルエーテル類;グリセリンジグリシジルエーテル等のグリセリングリシジルエーテル類;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのPO変性ジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリジルエーテル等のビスフェノール系化合物のジグリシジルエーテル類等に、(メタ)アクリル酸を付加させた構造を有するもの等が挙げられる。また、縮重合されたエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加させた構造を有するものが挙げられる。更に、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の縮重合物に、例えばエピクロロヒドリン等を反応させて得られた構造を有するエポキシ樹脂に対して、(メタ)アクリル酸を付加させた構造を有するもの等が挙げられる。
【0080】
[4] 変性シリコーンオイルについて
本発明の構造体を形成させるための(メタ)アクリル系重合体は、ウレタン(メタ)アクリレート及びエステル(メタ)アクリレートに加え、更に、変性シリコーンオイルを含有することが好ましい。(メタ)アクリレート化合物が、変性シリコーンオイルを含有することによって、得られた構造体の貯蔵弾性率が大きくなると共に、上記特殊な表面形状に対し、耐傷性等の機械的強度が優れたものになる。なお、本発明の構造体形成においては、硬化させた構造体を型から剥離する工程を有するので、そのとき賦型性が重要になる。しかしながら、本発明においては、該変性シリコーンオイルの使用は、この賦型性の改良よりはむしろ表面耐傷性の改良に効果的である。
【0081】
本発明に用いられる変性シリコーンオイルの化学構造については、その分子中にシロキサン結合を有し、ケイ素原子(Si)にメチル基以外の有機基も結合している化合物であれば特に限定はないが、下記の式(S1)〜(S4)を有するものが、構造体表面に耐傷性を付与する点で好ましい。式(S1)は側鎖型、式(S2)は両末端型、式(S3)は片末端型、式(S4)は側鎖両末端型変性シリコーンオイルである。
【0082】
【化1】

[式(S1)〜(S4)中、−Rは、互いに異なっていてもよい、−Y−OAc若しくは−Y−CFを表し(式中、Yは炭素数1〜50のアルキレン基又はポリエーテル基を示し、Acは(メタ)アクリロイル基を示す)、mは1〜250の整数を表し、nは2〜25の整数を表す。]
【0083】
上記式中、Yは炭素数1〜50のアルキレン基若しくはポリエーテル基を示すが、アルキレン基の炭素数は1〜20が特に好ましく、1〜3が更に好ましい。ポリエーテル基としては、ポリエチレングリコール鎖又はポリプロピレングリコール鎖が好ましく、−(CO)−(aは1〜20の整数)、−(CO)−(bは1〜25の整数)又は−(CO)−(CO)−(aは1〜20の整数、bは1〜25の整数)で表されるものが特に好ましい。
【0084】
式(S1)ないし式(S4)の何れの型でも、mは1〜250の整数を表すが、m=5〜180が好ましく、m=10〜130が特に好ましい。また、式(S1)ないし式(S4)の何れの型でも、nは2〜25の整数を表すが、n=2〜20が好ましく、m=2〜15が特に好ましい。(特に)好ましいmとnの値は以下を考慮して決められる。
【0085】
変性シリコーンオイルにおける、末端又は側鎖に存在するR部分と主鎖であるジメチルシロキサン構造部分の質量比率は、側鎖型と側鎖末端型ではほぼn/(m+n)の値によって決まり、末端型ではmの値によって決まるが、かかるジメチルシロキサン構造部分の質量比率が大きくなると、耐汚染性は良くなる傾向があるが、ウレタン(メタ)アクリレートやエステル(メタ)アクリレートとの相溶性が悪くなる場合がある。一方、ジメチルシロキサン構造部分の質量比率が小さくなりすぎると、得られた構造体の耐傷性が悪くなったり、硬化工程において揮発しやすいため硬化塗膜中の含有量が低下して、含有の効果を十分に奏することができなくなったりする場合がある。
【0086】
中でも、式(S1)又は式(S4)で示されるものであって、−Rが−Y−CFでYが炭素数1〜3のアルキル基であるもの、又は、式(S1)〜式(S4)で示されるものであって、mの値が、10≦m≦200であるものは、上記耐傷性等の機械的強度に優れるのみならず、耐汚染性も優れている。汚染性の点から特に好ましくは、15≦m≦150、20≦m≦100である。
【0087】
変性シリコーンオイルの数平均分子量としては、400〜20000が好ましく、1000〜15000が特に好ましい。数平均分子量が大きすぎるときには、他成分との相溶性が悪化する場合があり、一方、数平均分子量が小さすぎるときには、表面耐傷性が劣る場合がある。
【0088】
[5] (メタ)アクリル系重合性組成物の組成
(メタ)アクリレート系重合性組成物中の、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート及び変性シリコーンオイルの含有比率は特に限定はないが、好ましい範囲を以下に示す。
【0089】
ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、エステル(メタ)アクリレート10重量部以上が好ましく、20重量部以上が特に好ましい。また、上限は、400重量部以下が好ましく、300重量部以下がより好ましく、200重量部以下が特に好ましく、100重量部以下が最も好ましい。エステル(メタ)アクリレートが多すぎると、貯蔵弾性率が低くなる場合があり、一方、少なすぎると、硬化膜等の形成された構造体が脆く、硬化収縮が大きくなる場合がある。
【0090】
また、ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、エポキシ(メタ)アクリレート0〜50重量部が好ましく、0〜20重量部が特に好ましく、1〜10重量部が更に好ましい。
【0091】
また、ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、変性シリコーンオイル0〜10重量部が好ましく、0.02〜5重量部が特に好ましく、0.05〜2重量部が更に好ましい。変性シリコーンオイルが多すぎると、構造体中で分離し不透明な構造体を形成する場合があり、一方、少なすぎると、表面の耐傷性が劣る場合がある。
【0092】
また、本発明の構造体は、全体で以下の組成の(メタ)アクリル系重合性組成物が重合したものであることが好ましい。以下「%」は質量%を示す。
ウレタン(メタ)アクリレート 20%〜80%
エステル(メタ)アクリレート 10%〜80%
エポキシ(メタ)アクリレート 0%〜30%
変性シリコーンオイル 0%〜 8%
【0093】
また、以下の組成の(メタ)アクリル系重合性組成物が重合したものであることが特に好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレート 30%〜60%
エステル(メタ)アクリレート 15%〜70%
エポキシ(メタ)アクリレート 0%〜12%
変性シリコーンオイル 0.006%〜3%
【0094】
本発明の(メタ)アクリル系重合性化合物には、上記したもの以外に、その他の(メタ)アクリレート、重合開始剤等を含有させることができる。
【0095】
本発明の構造体が、光照射によって形成される場合には、その材料となる(メタ)アクリル系重合性化合物中の光重合開始剤の有無は特に限定はないが、光重合開始剤が含有されることが好ましい。光重合開始剤としては特に限定はないが、ラジカル重合に対して従来用いられている公知のもの、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルアセタール類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシロキシムエステル類等のアリールケトン系光重合開始剤;スルフィド類、チオキサントン類などの含硫黄系光重合開始剤;アシルジアリールホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド類;アントラキノン類等が挙げられる。また、光増感剤を併用させることもできる。
【0096】
前記光重合開始剤の配合量は、(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して、通常0.2〜10重量部、好ましくは0.5〜7重量部の範囲で選ばれる。
【0097】
本発明の構造体が、熱重合によって形成される場合には、熱重合開始剤が含有されることが好ましい。熱重合開始剤としては、ラジカル重合に対して従来用いられている公知のものが使用可能であるが、例えば、過酸化物、ジアゾ化合物等が挙げられる。
【0098】
また、本発明の(メタ)アクリル系重合性組成物には、更に、バインダーポリマー、微粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、離型剤、潤滑剤、レベリング剤等を配合することもできる。これらは、従来公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
【0099】
本発明の構造体の製造方法は特に限定はないが、例えば下記の方法が好ましい。すなわち、上記(メタ)アクリル系重合性組成物を基材上に採取、バーコーター若しくはアプリケーター等の塗工機又はスペーサーを用いて、均一膜厚になるように塗布する。ここで、「基材」としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略記する)、トリアセチルセルロース等のフィルムが好適である。そして、上記表面構造をもった型を貼り合わせる。貼り合わせた後、該フィルム面から紫外線照射若しくは電子線照射及び/又は熱により硬化させる。あるいは以下の方法も好ましい。すなわち、上記表面構造をもった型の上に、直接(メタ)アクリル系重合性組成物を採取、塗工機やスペーサー等で均一膜厚の塗布膜を作成してもよい。その後、得られた硬化膜を該フィルム又は型から剥離させて本発明の構造体を作成する。
【0100】
また、特に好ましい構造体の製造方法は以下の通りである。すなわち、表面に、平均高さ100nm以上1000nm以下の凹部又は平均深さ100nm以上1000nm以下の凸部を有し、その凹部又は凸部が、少なくともある一の方向に対し平均周期100nm以上400nm以下で存在する型に、(メタ)アクリル系重合性組成物を供給し、その上から基材を型の表面に対して斜めに着接させ、基材側からローラー圧着し、(メタ)アクリル系重合性組成物を硬化後、型から剥離することを特徴とする構造体の製造方法である。
【0101】
この製造方法を、更に図1を用いて具体的に説明するが、本発明は図1の具体的態様に限定されるものではない。すなわち、型(2)に(メタ)アクリル系重合性組成物(1)を適量供給又は塗布し(図1(a))、ローラー部側を支点に基材(3)を斜めから貼り合せる(図1(b))。型(2)と(メタ)アクリル系重合性組成物(1)と基材(3)が一体となった貼合体を、ローラー(4)へと移動し(図1(c))、ローラー圧着させることにより、型(2)が有する特定の構造を(メタ)アクリル系重合性組成物(1)に転写、賦型させる(図1(d))。これを硬化させた後、型(2)から剥離することにより(図1(e))、本発明の目的とする構造体(5)を得る。
【0102】
図2は、連続的に構造体を製造する装置の一例の模式図であるが、本発明はこの模式図に限定されるものではない。すなわち、型(2)に(メタ)アクリル系重合性組成物(1)を付着させ、ローラー(4)により力を加え、基材(3)を型に対して斜めの方向から貼り合せて、型(2)が有する特定の構造を(メタ)アクリル系重合性組成物(1)に転写させる。これを、硬化装置(6)を用いて硬化させた後、型(2)から剥離することにより、本発明の目的とする構造体(5)を得る。支持ローラー(7)は、構造体(5)を上部に引き上げるためのものである。
【0103】
ローラー(4)を用いて、斜めから貼り合わせることによって、気泡が入らず欠陥のない構造体(5)が得られる。また、ローラーを用いれば線圧を加えることになるため圧力を大きくでき、そのため大面積の構造体の製造が可能になり、また、圧の調節も容易になる。また、基材と一体となった均一な膜厚と、所定の光学物性を有する構造体の製造が可能になり、更に、連続的に製造できるため生産性に優れたものになる。
【0104】
本発明の構造体は、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって重合したものであることが必須であるが、光照射の場合の光の波長については特に限定はない。可視光線及び/又は紫外線を含有する光であることが、要すれば光重合開始剤の存在下で良好に(メタ)アクリル基の炭素間二重結合を重合させる点で好ましい。特に好ましくは紫外線を含有する光である。光源は特に限定はなく、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、ハロゲンランプ、各種レーザー等公知のものが用いられ得る。電子線の照射の場合、電子線の強度や波長には特に限定はなく、公知の方法が用いられ得る。
【0105】
熱によって重合させる場合は、その温度は特に限定はないが、80℃以上が好ましく、100℃以上が特に好ましい。また、200℃以下が好ましく、180℃以下が特に好ましい。重合温度が低すぎる場合は重合が充分に進行しない場合があり、高すぎる場合は重合が不均一になったり、基材の劣化が起こったりする場合がある。加熱時間も特に限定はないが、5秒以上が好ましく、10秒以上が特に好ましい。また、10分以下が好ましく、2分以下が特に好ましく、30秒以下が更に好ましい。
【0106】
特定の表面構造を有する本発明の構造体が特定の貯蔵弾性率を有するとき、更には、特定の(メタ)アクリレート系重合性組成物が重合して特定の貯蔵弾性率を有するようになった構造体が、優れた機械的強度を与え、表面耐傷性等の機械的強度に優れるようになる作用・原理については、明らかではないが、高分子の力学物性を考慮すると、凹凸1個1個の微細な部分の力学物性が特定の範囲の値になることにより、構造体表面が外力に耐えられる性能を有するようになるからであると考えられる。
【実施例】
【0107】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらに限定されるものではない。
【0108】
実施例1
<エポキシ(メタ)アクリレートも変性シリコーンオイルも含有しない(メタ)アクリル系重合性組成物を硬化させて得た構造体>
[構造体の製造]
表1に示す(メタ)アクリレート化合物と光重合開始剤を表1に示した量で配合し、(メタ)アクリル系重合性組成物を得、その適量をPETフィルム上に採取、バーコーターNO28にて、均一な膜厚になるよう塗布した。その後、表面に、平均高さ150nmの凸部が平均周期205nmで配置された構造をもった型を貼り合わせた。型全体が、(メタ)アクリル系重合性組成物に貼り合わされたことを確認して、フュージョン製UV照射装置によって、3.6J/cmの紫外線照射によって硬化させ、構造体(1)〜(6)を製造した。なお、表1中の数字は重量部を示し、(メタ)アクリレート化合物の合計量は、100重量部になっている。
【0109】
【表1】

【0110】
表1中、化合物(1)は、下記の式(1)で示される化合物である。
【化2】

[式(1)中、Xは、ジペンタエリスリトール(6個の水酸基を有する)残基を示す。]
【0111】
表1中、化合物(2)は、
2HEA−−IPDI−−(アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールとの重量平均分子量3500の末端水酸基のポリエステル)−−IPDI−−2HEA
で示される化合物である。
【0112】
表1中、化合物(3)は、
2HEA−−IPDI−−(アジピン酸と1,4−ブタンジオールとの重量平均分子量25000の末端水酸基のポリエステル)−−IPDI−−2HEA
で示される化合物である。
【0113】
ここで、「2HEA」は、2−ヒドロキシエチルアクリレートを示し、「IPDI」は、イソホロンジイソシアネートを示し、「−−」は、イソシアネート基と水酸基の通常の下記の反応による結合を示す。
−NCO + HO− → −NHCOO−
【0114】
以下の測定方法で、構造体(1)〜(6)の物性を測定した。
<反応率>
赤外線分光法(IR)による露光前後の吸光度測定を行い、(メタ)アクリル二重結合吸光比から、二重結合消費率すなわち反応率を求めた。結果を併せて表1に示す。
【0115】
<貯蔵弾性率>
上記で得られた構造体(1)〜(6)を、それぞれ5mm×20mmに切り出して、5mm×20mm×100μmのテストピースを作成した。測定は、セイコーインスツルメント社製の動的粘弾性試験機DMS6100を用いて、上記テストピースを、20mmの方向で挟み、10Hzの周波数の力を加え、−20℃〜200℃の範囲で測定し、それぞれのテストピースで、ゴム領域を与える温度範囲を見出した。図3に、横軸に温度、縦軸に貯蔵弾性率をとった時の、構造体(1)(3)(6)のグラフを示す。約150℃以上に現れる平坦な部分がゴム領域である。全てのテストピースで、ほぼ、180〜200℃の範囲がゴム領域だったので、全て190℃における貯蔵弾性率を測定した。結果を併せて表1に示す。
【0116】
構造体(1)〜(6)について、以下の評価方法で評価を行った。
[反射率]
島津製作所製、自記分光光度計「UV−3150」を用い、裏面に黒色テープを貼り付け、裏面から5°入射絶対反射率を測定した。結果を表2に示す。
【0117】
[透過率]
スガ試験製、ヘイズメーター「HGM−2DP」を用いて、可視光線の平均透過率を測定した。結果を表2に示す。
【0118】
[表面耐傷性の評価]
上記構造体(1)〜(6)の表面上を、新東科学(株)社製の表面試験機ドライボギアTYPE−14DRを用い、25mm円柱の平滑な断面にスチールウール#0000を均一に貼り付け、荷重400gをかけながら、速度10cm/秒で10往復させたときの傷の付き具合を観察した。以下の基準で判定した。結果を表2に示す。
【0119】
(判定基準)
5:引掻き傷なし
4:数本の引掻き傷あり
3:25mm円柱の半分の引掻き傷あり
2:25mm円柱の2/3の引掻き傷あり
1:25mm円柱の全面の引掻き傷あり
【0120】
【表2】

【0121】
表2の結果から判るように、かかる構造を有する構造体は良好な反射防止性能と透過改良性能を有しており、更に、貯蔵弾性率が0.5GPa以上の構造体(1)及び構造体(2)は、表面耐傷性にも優れていた。一方、貯蔵弾性率が0.5GPa未満の構造体(3)ないし構造体(6)は、何れも表面耐傷性に劣っていた。
【0122】
実施例2
<更に、エポキシ(メタ)アクリレート及び/又は変性シリコーンオイルを含有する(メタ)アクリル系重合性組成物を硬化させて得た構造体>
[構造体の製造]
表3に示す(メタ)アクリレート化合物及び/又は変性シリコーンオイル、並びに、光重合開始剤である1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを表3に示した量で配合し、(メタ)アクリル系重合性組成物を得た。次いで、その適量を平均高さ400nmの凸部が平均周期200nm(アスペクト比は2.0)で配置された構造をもった型に採取し、ローラー部側を支点に、基材であるPETフィルムを斜めから貼り合せた。貼り合せられた貼合体をローラー(大成ラミネーター社製)で圧着し、型全体に均一な組成物が塗布されたことを確認して、フュージョン製UV照射装置によって、基材側から1.0J/cmの紫外線照射によって硬化させた。硬化後、型から剥離することにより構造体(11)〜(24)を製造した。
【0123】
表3中、化合物(1)、(2)は実施例1で前記したものと同じであり、使用した変性シリコーンオイルの化学構造やメーカー等は表4に示す。なお、表3中の数字は重量部を示し、(メタ)アクリル系重合性組成物の合計量は100重量部になっている。表3中の含有量における空欄は、「0」すなわち含有されていないことを示す。
【0124】
得られた構造体(11)〜(24)について、貯蔵弾性率、反射率及び透過率を実施例1で前記した測定方法と同様の方法で測定した。また、表面耐傷性については、荷重を上記した400gだけではなく、200gにした方法でも測定し、同様の判定基準で判定した。結果を表2にまとめて示す。表3で最上行の「(11)〜(24)」は構造体No.を、すなわち「構造体(11)〜構造体(24)」を示す。また、構造体(14)については、図3に貯蔵弾性率の温度依存性を併せて示す。
【0125】
[耐汚染性]
構造体表面に指紋を捺印し、水を染み込ませたティッシュペーパーで5回拭いた後の汚れ具合を目視で観察し、以下の判定基準で判定した。結果を表3に示す。
【0126】
(判定基準)
5:指紋汚れなし
4:指紋汚れほとんどなし
3:指紋汚れが斜めからならば目視で観察できる
2:指紋汚れが正面からも目視で観察できる
1:指紋汚れが正面から目視ではっきり観察できる
【0127】
【表3】

【0128】
【表4】

【0129】
表4中、「MAc」はメタクリロイル基を表し、「X−22−2404」は、以下の構造を有する変性シリコーンオイルである。
【化3】

【0130】
表3から判るように、構造体(11)〜(24)の中で、構造体(23)のみ貯蔵弾性率が0.20と小さく、表面耐傷性に劣っていたが、それ以外は貯蔵弾性率が0.5GPa以上であり、表面耐傷性が優れていた。更に、構造体(17)(18)(19)(21)(22)では、耐汚染性にも優れていた。なお、耐汚染性は、判定基準「4」〜「5」が特に好ましいが、耐汚染性が「1」のものであっても、用途さえ限定すれば問題なく好適に使用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の構造体は、光の反射防止性能、光の透過改良性能等に優れているので、良好な視認性を付与する。また、優れた機械的強度(表面耐傷性能や表面耐摩耗性)を有するので、液晶表示ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機EL(OEL)、CRT、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)等の表面に機械的外力が加わりやすい用途に特に広く好適に利用されるものである。また、より一般に、反射防止膜、透過性改良膜、表面保護膜等としても、広く好適に利用されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に、平均高さ100nm以上1000nm以下の凸部又は平均深さ100nm以上1000nm以下の凹部を有し、その凸部又は凹部が、少なくともある一の方向に対し平均周期100nm以上400nm以下で存在する構造体であって、
該構造体が、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって、(メタ)アクリル系重合性組成物が重合したものであって、
該(メタ)アクリル系重合性組成物が、4官能以上のウレタン(メタ)アクリレートを含有するものであることを特徴とする構造体。
【請求項2】
上記(メタ)アクリル系重合性組成物が、更に、エステル(メタ)アクリレートを含有するものである請求項1記載の構造体。
【請求項3】
上記4官能以上のウレタン(メタ)アクリレートが、多価イソシアネート化合物の実質的に全てのイソシアネート基に、分子中に1個の水酸基と2個以上の(メタ)アクリル基を有する化合物の該水酸基が反応してなるものである請求項1又は請求項2記載の構造体。
【請求項4】
上記(メタ)アクリル系重合性組成物が、更に、分子の両末端にそれぞれ1個ずつの(メタ)アクリル基を有する2官能ウレタン(メタ)アクリレートを含有するものである請求項1ないし請求項3の何れかの請求項記載の構造体。
【請求項5】
上記エステル(メタ)アクリレートが、アルキレングリコール鎖を有し、分子の両末端にそれぞれ1個ずつの(メタ)アクリル基を有する2官能エステル(メタ)アクリレートを含有するものである請求項2ないし請求項4の何れかの請求項記載の構造体。
【請求項6】
上記エステル(メタ)アクリレートが、直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレートを含有するものである請求項2ないし請求項5の何れかの請求項記載の構造体。
【請求項7】
上記エステル(メタ)アクリレートが、3官能以上のエステル(メタ)アクリレートを含有するものである請求項2ないし請求項6の何れかの請求項記載の構造体。
【請求項8】
上記(メタ)アクリル系重合性組成物が、更に、エポキシ(メタ)アクリレートを含有するものである請求項1ないし請求項7の何れかの請求項記載の構造体。
【請求項9】
上記(メタ)アクリル系重合性組成物が、更に、変性シリコーンオイルを含有するものである請求項1ないし請求項8の何れかの請求項記載の構造体。
【請求項10】
光の反射防止用及び/又は光の透過改良用である請求項1ないし請求項9の何れかの請求項記載の構造体。
【請求項11】
表面に、平均高さ100nm以上1000nm以下の凹部又は平均深さ100nm以上1000nm以下の凸部を有し、その凹部又は凸部が、少なくともある一の方向に対し平均周期100nm以上400nm以下で存在する型に、(メタ)アクリル系重合性組成物を供給し、その上から基材を型の表面に対して斜めに着接させ、基材側からローラー圧着し、(メタ)アクリル系重合性組成物を硬化後、型から剥離することを特徴とする請求項1ないし請求項10の何れかの請求項記載の構造体の製造方法。
【請求項12】
請求項1ないし請求項10の何れかの請求項記載の構造体形成用の(メタ)アクリル系重合性組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−52125(P2012−52125A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229579(P2011−229579)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【分割の表示】特願2007−538736(P2007−538736)の分割
【原出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】