説明

特定の遺伝子のメチル化の頻度を、婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法

【課題】本発明は、特定の遺伝子のメチル化頻度を、婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法、婦人科がんの判定方法、婦人科がんの判定キット等を提供することを目的とする。
【解決手段】DCC、GHSR、AJAP1、ZNF560、FERD3L、FLJ23514、BXDC1、HKR1、DRD4、PENK、FAM12B、HIST1H4F、NEF3、SKIP、CX36、EOMES、及び、SORCS3からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を、婦人科がんのバイオマーカーとして使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、婦人科がんにおける遺伝子のメチル化頻度のプロファイルとその用途に関する。より詳細には、特定の遺伝子のメチル化の頻度(以下、単に「メチル化頻度」とも表示する。)を、婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法、婦人科がんの判定方法、婦人科がんの判定キット等に関する。
【背景技術】
【0002】
婦人科がんとは、子宮頸部、子宮体部、卵巣、卵管、腟、外陰部に発生するがんであり、女性の悪性腫瘍の4分の1を超える割合を占める。主なものとして、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんが挙げられる(特許文献1及び非特許文献1参照)。
【0003】
近年、がんに関する基礎および臨床的研究が飛躍的に進み、がんは遺伝子の異常に起因する疾患であることが明らかとなった。その結果、がんの病態に関連する様々な遺伝子や蛋白を分子標的にした治療が試みられている。また、子宮がんの早期発見を目的としたがん検診が普及し、早期治療により子宮頸がんの死亡率は低下している。しかし、一方では、初婚年齢の上昇や妊娠回数の減少による女性ホルモン刺激の増大、食事の欧米化といった生活様式の変化、あるいは、性活動の若年化によるパピローマウイルス感染の増大に伴い、子宮体がん、卵巣がんや若年者子宮頸がんについては、その罹患率及び死亡率が上昇している(非特許文献2参照)。特に子宮体がんはその罹患率や死亡率のみならず、疾患の若年齢化も進行している(非特許文献3参照)。
【0004】
婦人科がんの診断は、一般的に各種画像検査(超音波検査、CT、MRI、PET等)を施行し、更に内診や子宮鏡などで進展を評価する。術前に細胞診及び組織診ができない卵巣がんを除く子宮頸がん及び子宮体がんでは、術前の生検で病理組織学的診断を付ける。病期は、病変の進展と病理組織学的診断により決定される。卵巣がんの病期は、開腹手術で摘出された卵巣の病理組織学的診断が得られるまで、決定できない。また、画像検査による病変の進展と病理学的診断が乖離していることがあり(非特許文献4参照)、卵巣腫瘍に際しては、常に悪性の可能性を念頭に置く必要がある。このように、婦人科がんの場合、画像診断では、がんの質的診断が不可能であり、良性疾患との鑑別が困難な場面も多々ある。また、確定診断として用いられる細胞診・組織診による病理学的診断については、基本的なヘマトキシリンエオジン(HE)染色に各種免疫染色を組み合わせて用いたとしても、進行度・進達度の判断に困難な場合がある上、予後の予測まではできないのが現状である。発症・予後の予測に関しては、いくつかの因子が報告されてはいるものの(特許文献2、3、4参照)、現在のところ感度と特異性の双方を十分に持つバイオマーカーは存在しない。
【0005】
一方、婦人科がんの治療方針は、主に病期と病理組織学的所見により決定される。良性腫瘍に対しては、根治可能な一期的摘出術か、小病変で臨床症状がなければ経過観察が行われる。一方、悪性腫瘍に対しては手術、抗がん剤による化学療法、放射線治療を単独もしくは併用して施行する。子宮頸がんと子宮体がんでは、手術で子宮を摘出せざるを得ないこともあるが、これは若年の未産婦においては妊孕力を喪失するため重大な問題となる(非特許文献5参照)。卵巣がんは自覚症状が乏しく、進行が早いため、発見される時にはすでに進行していることが多い。また、有効なスクリーニング法が確立しておらず(非特許文献6参照)、細胞の採取ができないためにがん検診もできないので、早期発見は極めて困難である。さらに、たとえ早期に発見された場合でも、隣接臓器である子宮を合併切除することが原則である。卵巣がんはあらゆる年齢で発症し、特に若年者の治療においては妊孕力を喪失するため、子宮頸がん・子宮体がんと同様に重大な問題となる(非特許文献7参照)。いずれのがんにおいても、進行がんでは術後に化学療法が施行される場合が多いが、骨髄抑制による免疫力の低下、消化器症状による脱水、電解質異常など副作用が強いことが問題となっている。さらに、治療効果と予後に個人差が認められ、これらはがん組織における遺伝子変異とその発現量の異常に起因していると考えられている(非特許文献8参照)。
【0006】
前述のとおり、生活様式の変化により、婦人科がんの増加が予測されるため、それらの発症予測や発症診断についてのバイオマーカーの開発が期待されている。子宮頸がんの治療後の経過観察で用いられているバイオマーカーとして、Ca19−9やCa125などが知られているものの、その陽性率はおよそ30%と低く、これまで、婦人科がんに関する有用なバイオマーカーの報告はなされていない(特許文献5及び6参照)。
【0007】
バイオマーカーの候補としては、タンパクあるいはメッセンジャーRNA(mRNA)があるが、現状では、各々3万近いこれらをスクリーニングすることは、コスト面ならびに労力面で現実的ではない。また、実際、これまでの手法において、がんの診断に感度ならびに特異性を有するものは、未だ見出だされていない。この原因を考えるに、1)現在の臨床検査手法の問題点、2)mRNAが病態を反映しない問題点、がある。前者の問題点に関し、現在、臨床検査の場で、腫瘍マーカーを測定する方法は、RIA放射性免疫測定法、CLIA化学発光免疫測定法、EIA酵素免疫測定法、ELISA酵素免疫測定法等、対象タンパクに対して特異的な抗体を用いている。このような状況において、近年、腫瘍タンパクに対する修飾、例えば、糖鎖修飾が知られてきたが、これらの修飾によって、前述の抗体が認識するはずのエピトープ部分の構造が種々変化し、その抗体が腫瘍タンパクを認識できない可能性が生じる。結果として、腫瘍タンパクを対象とした臨床検査の感度が低くなる。後者の問題点に関しては、ヒトにおいて、miRNA(マイクロRNA)がmRNAの切断を介さず、翻訳制御をすることでタンパク合成阻害を行っているので、タンパク量に変化を生じるがmRNAの量的変化が全く認められないことが起こり得る。結果として、mRNAの変化量は、病態を正確に表さず、偽陰性を生じることになる。以上から、タンパクならびにmRNAは、腫瘍の診断マーカーとしては、有用ではないと考える。
【0008】
ところで、近年、エピジェネティクス(クロマチンへの後天的な修飾により、遺伝子配列の変化を伴わずに遺伝子発現が制御されることに起因する遺伝学又は分子生物学の研究分野)への関心が高まり、がん等の疾患との関連についての研究が進められている。中でも、ゲノムDNA上の遺伝子のメチル化が注目されている。高等真核生物のゲノムDNA配列中に存在する5’−CG−3’DNA(以下、CpG)部分では、グアニン(G)の5’側に位置するシトシン(C)がメチル化修飾される現象が知られており、このCpGのメチル化修飾は、遺伝子発現に影響を及ぼすと考えられている。特にCpG部位に富む領域(CpGアイランド)が遺伝子のプロモーター領域内に存在する場合には、遺伝子発現に対して重要な影響を及ぼす。通常、ゲノム上の多くの遺伝子はこれらのメチル化修飾から保護されているが、何らかの原因により、遺伝子のプロモーター領域に存在するCpGアイランドがメチル化された場合、遺伝子の転写が抑制されることになる。このため、CpGアイランドのメチル化異常によって、例えば、ヒト生体内におけるがん抑制遺伝子の転写が不活性化された場合、細胞増殖の制御が効かなくなり、がんなどの細胞増殖性疾患が進行してしまうことになる。実際、いくつかのがんにおいて、特定の遺伝子におけるメチル化頻度が上昇していることが報告されており、最近では、特定の遺伝子のCpGアイランドのメチル化頻度を、特定のがんの診断に利用する試みがいくつか行われている。例えば、特許文献7には、BASP1等の遺伝子のCpGアイランドのメチル化の程度を検出することによって、肝臓がんを診断する方法が記載されている。また、子宮がん等の婦人科がんにおいては、hMLH−1、CDKN2A/p16の各遺伝子におけるメチル化頻度が上昇しているとの報告がなされている(非特許文献9参照)。しかし、がんにおける遺伝子のメチル化頻度の上昇の程度は遺伝子等によって様々であり、実用的な婦人科がんの診断に耐え得る程度のメチル化頻度の上昇が生じる遺伝子はこれまで知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2002−527723号公報
【特許文献2】特開2005−532314号公報
【特許文献3】米国特許第6855350号公報
【特許文献4】米国特許第7045292号公報
【特許文献5】特表2003−512010号公報
【特許文献6】特開2002−22746号公報
【特許文献7】特開2008−245635号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Whitcomb BP. Gynecologic Malignancies. Surg Clin North Am. 2008; 88: 301-317.
【非特許文献2】植田政嗣 子宮頸部癌の診断法−最近のトピックス−医学検査 2003;522:179-186.
【非特許文献3】植田政嗣 子宮体部癌の診断法−最近のトピックス−医学検査 2003; 52:691-700.
【非特許文献4】Ayhan A, Guven S, Guven ES, Kucukali T. Is there a correlation between tumor marker panel and tumor size and histopathology in well staged patients with borderline ovarian tumors? Acta Obstet Gynecol Scand. 2007; 86: 484-490.
【非特許文献5】Amant F, Van Calsteren K, Vergote I, Ottevanger N. Gynecologic oncology in pregnancy. Crit Rev Oncol Hematol. 2008. [Epub ahead of print]
【非特許文献6】Jacobs IJ, Menon U. Progress and challenges in screening forearly detection of ovarian cancer. Mol Cell Proteomics. 2004; 3: 355-366.
【非特許文献7】Chan JK, Tian C, Monk BJ, Herzog T, Kapp DS, Bell J, Young RC; Gynecologic Oncology Group. Prognostic factors for high-risk early-stage epithelial ovarian cancer: a Gynecologic Oncology Group study. Cancer. 2008; 112: 2202-2010.
【非特許文献8】Marsh S. Cancer pharmacogenetics. Methods Mol Biol. 2008; 448: 437-446.
【非特許文献9】Guida M, Sanguedolce F, Bufo P, Di Spiezio Sardo A, Bifulco G, Nappi C, Pannone G. Aberrant DNA hypermethylation of hMLH-1 and CDKN2A/p16 genes in benign, premalignant and malignant endometrial lesions. Eur J Gynaecol Oncol. 2009; 30:267-270.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、特定の遺伝子のメチル化頻度を、婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法、婦人科がんの判定方法、婦人科がんの判定キット等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述したように、婦人科がんにおいて、いくつかの遺伝子のメチル化頻度の上昇が見られるとの報告がなされているが、実用的な婦人科がんの診断に耐え得る程度のメチル化頻度の上昇が生じる遺伝子はこれまで知られていなかった。本発明者らは、子宮体がん組織のゲノムDNAと正常子宮内膜組織のゲノムDNAとを対比し、子宮体がん組織におけるゲノムDNA上の特定の遺伝子のメチル化頻度が著しく上昇していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、(1)DCC、GHSR、AJAP1、ZNF560、FERD3L、FLJ23514、BXDC1、HKR1、DRD4、PENK、FAM12B、HIST1H4F、NEF3、SKIP、CX36、EOMES、及び、SORCS3からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を、婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法に関する。
【0014】
また本発明は、(2)(A)婦人科検体組織又は被検体の血液からゲノムDNAを抽出する工程:(B)抽出したゲノムDNA中の、DCC、GHSR、AJAP1、ZNF560、FERD3L、FLJ23514、BXDC1、HKR1、DRD4、PENK、FAM12B、HIST1H4F、NEF3、SKIP、CX36、EOMES、及び、SORCS3からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を測定する工程:及び、(C)工程(B)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を、コントロールとしての、検体組織と同種の非がん組織又は被検体と同種の非がん被検体の血液から抽出したゲノムDNA中の同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較・評価する工程:を備えたことを特徴とする婦人科がんの判定方法や、(3)工程(B)を、抽出したゲノムDNAにおいてメチル化シトシンと非メチル化シトシンを判別するために、該抽出したゲノムDNAに化学的又は酵素的処理を行うための試薬を添加した後、該ゲノムDNA中の、DCC、GHSR、AJAP1、ZNF560、FERD3L、FLJ23514、BXDC1、HKR1、DRD4、PENK、FAM12B、HIST1H4F、NEF3、SKIP、CX36、EOMES、及び、SORCS3からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を測定する工程とすることを特徴とする上記(2)に記載の婦人科がんの判定方法や、(4)遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度の測定を、該CpG部位のポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを用いて行うことを特徴とする上記(2)又は(3)に記載の婦人科がんの判定方法や、(5)ポリヌクレオチドとして、蛍光標識されたポリヌクレオチドを用いることを特徴とする上記(4)に記載の婦人科がんの判定方法や、(6)さらに、(D)工程(B)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度が、コントロールにおける同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較して増加している場合に婦人科がんであると評価する工程を備えたことを特徴とする上記(2)〜(5)のいずれかに記載の婦人科がんの判定方法に関する。
【0015】
さらに本発明は、(7)DCC、GHSR、AJAP1、ZNF560、FERD3L、FLJ23514、BXDC1、HKR1、DRD4、PENK、FAM12B、HIST1H4F、NEF3、SKIP、CX36、EOMES、及び、SORCS3からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位において、該CpG部位のポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを備えたことを特徴とする婦人科がんの判定キットや、(8)CpG部位のポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドに加えて、該ポリヌクレオチドのCpG部位に相補的な部位におけるシトシンがウラシルとなったポリヌクレオチドをさらに備えたことを特徴とする上記(7)に記載の判定キットに関する。
【0016】
さらにまた本発明は、(9)(A)婦人科がんに罹患した非ヒト動物に被検物質を投与する工程:(B)前記非ヒト動物における婦人科がん組織又は血液から抽出したゲノムDNA中の、DCC、GHSR、AJAP1、ZNF560、FERD3L、FLJ23514、BXDC1、HKR1、DRD4、PENK、FAM12B、HIST1H4F、NEF3、SKIP、CX36、EOMES、及び、SORCS3からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を測定する工程:及び、(C)工程(B)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を、コントロール非ヒト動物における婦人科がん組織又は血液から抽出したゲノムDNA中の同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較・評価する工程:を含むことを特徴とする婦人科がん治療薬のスクリーニング方法や、(10)さらに、(D)工程(B)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度が、コントロール非ヒト動物における同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較して低下している場合に、該被検物質を婦人科がん治療薬であると評価する工程を含むことを特徴とする上記(9)に記載の婦人科がん治療薬のスクリーニング方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明における婦人科がんのバイオマーカーは、簡便に用いることができ、また、感度及び特異性にも優れている。したがって、本発明の婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法や、本発明の婦人科がんの判定方法によると、迅速かつ正確に婦人科がんを判定することができる。また、本発明の婦人科がんの判定キットによると、婦人科がんであるかどうかを迅速かつ正確に判定することができる。その結果、内視鏡検査及び各種画像検査(CT、MRI、PET、超音波検査等)を用いた従来の診断方法の欠点(前述の背景技術の記載を参照)を克服することが可能となった。さらに、本発明の婦人科がん治療薬のスクリーニング方法によると、婦人科がん治療薬を効率的にスクリーニングすることができる。
【0018】
特に、被検体の血液から抽出したゲノムDNAからであっても、メチル化頻度を測定可能な遺伝子の場合は、採取が極めて容易な血液サンプルを利用することができるため、婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法や、婦人科がんの判定方法等における迅速性や簡便性が特に優れている。なお、本件遺伝子のメチル化頻度、及び、それらの関連等についてさらに研究が進めば、婦人科がんの発症・進展・予後予測や治療が可能となることで、現在の婦人科がん臨床のさまざまな問題点を解決する突破口となることが期待できる。また、遺伝子のメチル化頻度の上昇は組織特異的であることが知られており、婦人科の原発不明がんの原発部位の特定にも有用となる可能性がある。さらに治療に際しては、薬剤や放射線治療への抵抗性が診断できれば、患者個人ごとに有効な治療法を選択する個別化治療にまで発展させ得る可能性を含んでいる。正確な診断や予後の予測は、余計な検査や患者の必要以上の通院を減らすことが期待でき、医療経済効果も大きいと予想される。
【0019】
なお、バイオマーカーにおける感度とは、検査を受ける被検体の中で、問題とする疾患に罹患している患者の総数に対する、検査陽性者数の割合を指す。例えば、100人の集団に婦人科がん検診を行う場合で、100人中10人が婦人科がんに罹患しているとする。この際、バイオマーカーAを利用して検査したところ、罹患しているその10人中9人が陽性と検出され、バイオマーカーBを利用して検査したところ、10人中5人しか検出されなかったとする。この場合、バイオマーカーAの感度は90%、バイオマーカーBの感度は50%となり、バイオマーカーAの方が、バイオマーカーBより感度が高く、婦人科がんの見逃しが少ない、有用なマーカーと判断することができる。また、バイオマーカーにおける特異度とは、検査を受ける被検体の中で、問題とする疾患に罹患していない者(非患者)の総数に対する、検査陰性者数の割合を指す。例えば、110人の集団に婦人科がん検診を行う場合で、110人中100人は婦人科がんに罹患していないとする。この際、バイオマーカーCを利用して検査したところ、罹患していないその100人中90人が陰性と判定され、バイオマーカーDを利用して検査したところ、100人中70人が陰性と判定されたとする。この場合、バイオマーカーCの特異度は90%、バイオマーカーDの特異度は70%となり、バイオマーカーCの方が、バイオマーカーDより特異度が高く、非患者を患者として疑い、余計な検査や精神的不安を患者に強いることの少ない、有用なバイオマーカーと判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】9149(正常子宮内膜 増殖期)、9174(正常子宮内膜 分泌期)、9003(子宮体がん Ib G2)、9015(子宮体がん Ic G1)、9030(子宮体がん IIIc G1)、9025(子宮体がん IIIc G2)から採取したサンプル組織について測定した各CpG部位におけるβ値(平均値)を示す図である。なお、図1〜3における各CpG部位には、左から9149(正常子宮内膜 増殖期)、9174(正常子宮内膜 分泌期)、9003(子宮体がん Ib G2)、9015(子宮体がん Ic G1)、9030(子宮体がん IIIc G1)、9025(子宮体がん IIIc G2)の結果を棒グラフにて示している。また、図1〜図3のCpG部位は、実施例2における(1)〜(8)のすべての値が3以上となった計18箇所のCpG部位の結果を示す。
【図2】9149(正常子宮内膜 増殖期)、9174(正常子宮内膜 分泌期)、9003(子宮体がん Ib G2)、9015(子宮体がん Ic G1)、9030(子宮体がん IIIc G1)、9025(子宮体がん IIIc G2)から採取したサンプル組織について測定した各CpG部位におけるβ値(平均値)を示す図である。
【図3】9149(正常子宮内膜 増殖期)、9174(正常子宮内膜 分泌期)、9003(子宮体がん Ib G2)、9015(子宮体がん Ic G1)、9030(子宮体がん IIIc G1)、9025(子宮体がん IIIc G2)から採取したサンプル組織について測定した各CpG部位におけるβ値(平均値)を示す図である。
【図4】9149(正常子宮内膜 増殖期)、9174(正常子宮内膜 分泌期)、9003(子宮体がん Ib G2)、9015(子宮体がん Ic G1)、9030(子宮体がん IIIc G1)、9025(子宮体がん IIIc G2)から採取したサンプル組織について測定した各CpG部位におけるβ値(平均値)を示す図である。なお、図4のCpG部位は、実施例2における(1)〜(8)のすべての値が4以上となった計7箇所のCpG部位の結果を示す。
【図5】9149(正常子宮内膜 増殖期)、9174(正常子宮内膜 分泌期)、9003(子宮体がん Ib G2)、9015(子宮体がん Ic G1)、9030(子宮体がん IIIc G1)、9025(子宮体がん IIIc G2)から採取したサンプル組織について測定した各CpG部位におけるβ値(平均値)を示す図である。なお、図5のCpG部位は、実施例2における(1)〜(8)のすべての値が5以上となった計2箇所のCpG部位の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法
本発明の婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法としては、DCC、GHSR、AJAP1、ZNF560、FERD3L、FLJ23514、BXDC1、HKR1、DRD4、PENK、FAM12B、HIST1H4F、NEF3、SKIP、CX36、EOMES、及び、SORCS3からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位(以下、「本件CpG部位」とも表示する。)におけるメチル化の頻度(以下、「本件CpG部位におけるメチル化頻度」とも表示する。)を、子宮体がん等の婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法である限り特に制限はされず、具体的には、後述の本発明の婦人科がんの判定方法や、本発明の婦人科がん治療薬のスクリーニング方法を例示することができる。本件CpG部位は、婦人科がん組織のゲノムDNAにおいてメチル化頻度が増加していたため、婦人科がんのバイオマーカーとして使用することができる。なお、本明細書における所定の遺伝子のCpG部位とは、ゲノムDNA上で該CpG部位に最も近い位置に存在する遺伝子が、その所定の遺伝子であることを意味するが、該遺伝子のプロモーター領域に位置するCpG部位を好ましく含んでいる。また、本件CpG部位が該遺伝子の近傍に複数存在し、CpGアイランドを形成している場合は、それら複数のCpG部位を婦人科がんのバイオマーカーとして使用することが好ましいが、近傍のCpG部位のメチル化頻度は、相関が見られるとされているため、特定の1カ所のCpG部位のメチル化頻度が増加していれば、該CpG部位が形成するCpGアイランドにおけるメチル化頻度も増加していると評価することができる。
【0022】
上記本件CpG部位の中でも、メチル化頻度の増加の程度がより高いことから、DCC、GHSR、AJAP1、ZNF560、FERD3L、FLJ23514を好適に例示することができ、中でも、DCC、GHSRをより好適に例示することができる。
【0023】
上記の本件CpG部位に関する遺伝子のGenBank Accession番号、NCBIデータベースに基づく該CpGアイランドのゲノム上の位置、及び、NCBIデータベースに基づく該CpG部位中のCのゲノム上の位置を以下の表1に示す。なお、CpGアイランドを形成していないCpG部位については、CpGアイランドのゲノム上の位置は記載していない。
【0024】
【表1】

【0025】
上記の婦人科がんとは、子宮頸部、子宮体部、卵巣、膣、外陰部に発生するがんを意味する。これらの婦人科がんの中でも、子宮頸部や子宮体部のがんを好適に例示することができ、中でも子宮体部のがんをより好適に例示することができる。
【0026】
本発明の婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法の対象となる生物(例えば、検体組織の由来となる生物や、被検体となる生物)の種類としては、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ等の哺乳動物を好適に例示することができ、中でもヒト、マウスをより好適に例示することができ、特にヒトを好適に例示することができる。
【0027】
上記の本件CpG部位におけるメチル化頻度が、婦人科がん組織又は婦人科がん被検体の血液においてコントロールと比較して増加するかどうかは、後述のパイロシークエンス法、メチル化特異的PCR(MSP:Methylation-specific PCR)法(Herman JG et al., Proc Natl Acad Sci U S A 93:9821-6, 1996参照)、HM−PCR(HeavyMethyl PCR)法(Cottrell SE et al., Nucleic Acids Res 32:e10, 2004参照)等の従来のDNAメチル化検出方法により確認することができる。
【0028】
なお、本発明の婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法は、本件CpG部位におけるメチル化頻度を測定することを特徴とする、本件CpG部位を子宮体がん等の婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法とも表現することができる。
【0029】
また、婦人科がんのバイオマーカーとして使用する本件CpG部位は、バイオマーカーとしてのより高い精度を得る観点から、2箇所以上であってもよいが、現在の保険診療制度下での遺伝子検査の診療報酬の算定方法を考慮すると、1箇所であることが好ましい。
【0030】
2.婦人科がんの判定方法
本発明の婦人科がんの判定方法としては、(A)婦人科検体組織又は被検体の血液からゲノムDNAを抽出する工程:(B)抽出したゲノムDNA中の、本件CpG部位におけるメチル化頻度を測定する工程:(C)工程(B)において測定した本件CpG部位におけるメチル化の頻度を、コントロールとしての、検体組織と同種の非がん組織又は被検体と同種の非がん被検体の血液から抽出したゲノムDNA中の同遺伝子のメチル化の頻度と比較・評価する工程:を備えている(含んでいる)限り特に制限されないが、さらに、(D)工程(B)において測定した遺伝子のメチル化の頻度が、コントロールにおける同遺伝子のメチル化の頻度と比較して増加している場合に婦人科がんであると評価する工程を備えた方法を好適に例示することができる。
【0031】
上記(A)工程におけるゲノムDNAを抽出する方法としては、婦人科検体組織中又は被検体の血液中から、ゲノムDNAを抽出する方法である限り特に制限されず、例えば、MagNA PureLC DNA Isolation Kit I(ロシュ・ダイアグノスティックス製)やQIAamp DNA Blood Midi Kit(QIAGEN製)などの市販品を添付のプロトコールにしたがって用いる方法の他、後述の実施例に記載されているような、フェノール・クロロホルム処理及びイソプロパノール沈殿等を利用した常法(Molecular Cloning第3版Volume1のプロトコール参照)を例示することができる。
【0032】
上記(B)工程中における、抽出したゲノムDNA中の本件CpG部位におけるメチル化頻度を測定する方法としては、抽出したゲノムDNA中の本件CpG部位におけるメチル化頻度を測定し得る限り特に制限されないが、該CpG部位のポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを用いて行う方法や、さらに、該ポリヌクレオチドのCpG部位に相補的な部位におけるシトシンがウラシルとなったポリヌクレオチドを用いて行う方法を好適に例示することができる。これらのポリヌクレオチドは、該CpG部位にハイブリダイズし得る限り、そのヌクレオチド数に制限はないが、例えば7個以上を例示することができ、特異性の観点からは、15個以上、より好ましくは25個以上を好適に例示することができる。これらのポリヌクレオチドとしては、より容易な検出が可能となることから、蛍光標識したポリヌクレオチドであることが好ましい。
【0033】
上記工程(B)としてより好ましくは、抽出したゲノムDNAにおいてメチル化シトシンと非メチル化シトシンを判別するために、該抽出したゲノムDNAに化学的又は酵素的処理を行うための試薬を添加した後、該ゲノムDNA中の本件CpG部位におけるメチル化頻度を測定する工程を例示することができる。上記の酵素的処理としては、制限酵素処理を挙げることができ、上記の化学的処理としては、亜硫酸水素塩(バイサルファイト)処理を例示することができる。
【0034】
制限酵素処理を利用した手法とは、DNAのメチル化部位の検出を、メチル化感受性制限酵素を用いて行う方法であり、最も古典的な方法である。この方法は、制限酵素の認識配列中のシトシンがメチル化されることで、DNAを切断できなくなる現象を利用している。必要な反応時間は、制限酵素の種類により異なるが、1〜数時間程度である。また、これまでは、制限酵素を用いていることから検出可能な配列が限られていたが、現在では、入手可能なメチル化感受性制限酵素は100種類以上あり、認識配列も多彩であるため、標的とするDNA領域のほとんどを切断することが可能である。メチル化部位の決定は、生じたDNA断片の鎖長をゲル電気泳動によって判別することによって行う。この手法には、インタクトなDNAを使用できるため、迅速な検出が可能ではあるが、検出できるのは制限酵素の認識配列であるために、認識部位に変異が生じている場合は偽陰性となるなど、精度の点で以下のバイサルファイト法に劣っている。
【0035】
また、バイサルファイト処理を利用したバイサルファイト法とは、バイサルファイト処理によって、シトシンをウラシルに変換するバイサルファイト反応を利用した方法であり、現在最も一般的に用いられている方法である。このバイサルファイト反応は5−メチルシトシンでは非常に緩徐にしか進まないため、適当な条件下で反応を行うと、メチル化されたシトシンはそのまま変換しないが、メチル化されていなかったシトシンはウラシルに変換されることとなる。メチル化の有無は、バイサルファイト反応後のDNA配列をテンプレートとしたPCRを行って、得られたPCR産物をシーケンシングして検出したり、あるいは、バイサルファイト反応後のDNAのうち、シトシンが変換されていないDNA配列に特異的にハイブリダイズし得るプローブや、ウラシルに変換されたDNA配列に特異的にハイブリダイズし得るプローブを利用したハイブリダイゼーションを行うことによって検出することができる。バイサルファイト反応の時間は一般的に16時間(一晩)程度であるが、問題点として、非特異的切断反応によりほとんどのサンプルの断片化が起こる点が挙げられる。このバイサルファイト法を利用したものとして、以下の(i)〜(iv)の4つの方法等を好適に例示することができる。
【0036】
(i)バイサルファイトシーケンシング法
サンプルであるゲノムDNAに対してバイサルファイト処理を行うことによって、ゲノムDNAにおける、メチル化修飾を受けたシトシンはそのまま変換せず、非メチル化シトシンのみをウラシルに変換させる。このゲノムDNAについてシーケンス反応を行うと、ウラシルはチミンとして表現されることとなる。バイサルファイト処理前後のゲノムDNAの配列データを比較し、バイサルファイト処理前後のいずれもシトシンである部位はメチル化シトシンであることが分かり、バイサルファイト処理前にシトシンでありバイサルファイト処理後にチミンとなった部位は非メチル化シトシンであることが分かる。
【0037】
(ii)メチル化特異的PCR(MSP、methylation-specific PCR)法
サンプルであるゲノムDNAに対してバイサルファイト処理を行うと、メチル化DNAと非メチル化DNAとはCpG部位が異なる塩基配列を持つこととなる。このことを利用して、各々において異なる塩基配列の部位に特異的なPCRプライマーを設計して、PCR産物の有無でメチル化状態を検出する方法である。このMSP法では、バイサルファイト処理をしたDNAをそのまま解析に使うことができるため、短時間で結果を確認することが可能である。
【0038】
(iii)COBRA(combined bisulfite restriction analysis)法
バイサルファイト処理による変化により、制限酵素認識塩基配列が生じることを利用し、酵素処理後のPCR産物を電気泳動することによりメチル化を検出する方法である。認識部位のメチル化状態の有無の比を、切断の有無の量比にて定量的に検出できる。
【0039】
(iv)HumanMethylation27 BeadChip(イルミナ株式会社製)を用いた方法
この方法は、バイサルファイトシーケンシング法の1種であるバイサルファイトピロシーケンシング法に類似した方法であり、後述の実施例で用いている方法でもある。サンプルから抽出したゲノムDNAについてバイサルファイト処理を行った後、制限酵素によってDNAを断片化し、該DNA断片上の各CpG部位におけるメチル化頻度(メチル化レベル)を、付属のBeadChipを用いて検出する。このBeadChipには、各CpG部位のシトシンがウラシルに変換したDNA配列に特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドプローブ(非メチル検出用プローブ)と、変換していないDNA配列に特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドプローブ(メチル検出用プローブ)が各種の遺伝子についてそれぞれ固定されている。それぞれのプローブにハイブリダイズしたDNA断片の量を蛍光で簡便に検出することによって、ゲノムDNA上の該CpG部位におけるメチル化頻度を測定することができる。CpG部位におけるメチル化頻度の好適な指標として、β値を挙げることができる。β値とは、測定によって得られた、各CpG部位に対応する非メチル検出用プローブの蛍光値(signal A)、及び、メチル検出用プローブの蛍光値(signal B)について、以下の計算式により算出される値である。
β=(該CpG部位におけるsignal Bの最大値)/(該CpG部位におけるsignal Aの最大値+該CpG部位におけるsignal Bの最大値+100);
この計算式によると、各CpG部位のメチル化頻度が、0(完全非メチル化)〜1(完全メチル化)の範囲で算出されることとなる。
【0040】
上記(C)工程は、「工程(B)において測定した本件CpG部位におけるメチル化の頻度を、コントロールとしての、検体組織と同種の非がん組織又は被検体と同種の非がん被検体の血液から抽出したゲノムDNA中の同遺伝子のメチル化の頻度と比較・評価する工程」である。ここで、上記工程(A)において婦人科検体組織を用いた場合は、上記工程(C)におけるコントロールとして、該検体組織と同種の非がん組織(好ましくは正常組織)を用い、上記工程(A)において被検体の血液を用いた場合は、上記工程(C)におけるコントロールとして、該被検体と同種の非がん被検体(好ましくは正常被検体又は異形成被検体)の血液を用いる。また、婦人科検体組織を用いた場合は、より正確な評価が可能となることから、該検体組織と同一個体における同種の非がん組織(好ましくは正常組織)をコントロールとして用いることがより好ましい。なお、コントロールとしての検体組織と同種の非がん組織又は被検体と同種の非がん被検体の血液は、検体組織又は被検体の血液を採取する際に必ずしも採取する必要はなく、非がん組織又は非がん被検体の血液から抽出したゲノムDNA中の、本件CpG部位におけるメチル化頻度についてあらかじめ検量線を作成し、それとの比較・評価を行なってもよい。また、コントロールには、被検体と同じ生物種のもの(被検体がヒトである場合にはヒトのもの)を用いることが好ましいことは言うまでもない。
【0041】
このように検体組織又は被検体の血液から抽出したゲノムDNA中の、本件CpG部位におけるメチル化頻度に基づいて、該検体組織又は該被検体が婦人科がんであるかどうかを判定することができる。より具体的には、工程(B)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度が、コントロールにおける同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較して増加している場合に、婦人科がんであると評価する(工程(D))こととなり、結果として、婦人科がんであると判定することができる。
【0042】
婦人科がんであると判定する場合のメチル化頻度(好ましくは前述のβ値)の増加の程度としては、例えば、コントロールに対する相対頻度(コントロールにおけるメチル化頻度を1としたときの相対頻度)として好ましくは3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上、さらにより好ましくは7以上、より好ましくは9以上、さらに好ましくは11以上となる場合を挙げることができ、また、別の指標としては、コントロールにおける前述のβ値と比較して好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.4以上、さらにより好ましくは0.5以上高いβ値となる場合を挙げることができる。
【0043】
なお、本発明の婦人科がんの判定方法に使用する本件CpG部位は、婦人科がんについてのより高い精度を得る観点から、2箇所以上であってもよいが、現在の保険診療制度下での遺伝子検査の診療報酬の算定方法を考慮すると、1箇所であることが好ましい。
【0044】
3.婦人科がんの判定キット
本発明における婦人科がんの判定キットとしては、本件CpG部位のうち、いずれかのCpG部位において、該CpG部位のポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチド(以下、「ポリヌクレオチドA」と表示する。)を備えている限り特に制限されないが、CpG部位のポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズし得る上記ポリヌクレオチドに加えて、該ポリヌクレオチドのCpG部位に相補的な部位におけるシトシンがウラシルとなったポリヌクレオチド(以下、「ポリヌクレオチドB」と表示する。)をさらに備えていることが、本件CpG部位におけるメチル化頻度をより正確に測定することが可能となる点で好ましい。これらのポリヌクレオチドの配列は、NCBIのデータベース等を参照して、本件CpG部位近辺のポリヌクレオチド配列を調べることによって、適宜決定することができる。かかるポリヌクレオチドの具体例として、HumanMethylation27 BeadChip(イルミナ株式会社製)のBeadChipに固定されたポリヌクレオチドを好適に挙げることができる。本発明における判定キットの使用方法としては、HumanMethylation27 BeadChip(イルミナ株式会社製)に添付のプロトコールに記載された方法を例示することができる。
【0045】
上記ポリヌクレオチドAやポリヌクレオチドBは、より容易な検出が可能となることから、蛍光標識したポリヌクレオチドであることが好ましい。上記ポリヌクレオチドAやポリヌクレオチドBは、該CpG部位にハイブリダイズし得る限り、そのヌクレオチド数に制限はないが、例えば7個以上を例示することができ、特異性の観点からは、15個以上、より好ましくは25個以上を好適に例示することができる。
【0046】
また、上記ポリヌクレオチドAは、本発明の判定キットに1つ備えられていてもよいし、2つ以上備えられていてもよい。また、上記ポリヌクレオチドBが備えられている場合は、該ポリヌクレオチドBは1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。さらに、上記ポリヌクレオチドAやポリヌクレオチドBがハイブリダイズし得る本件CpG部位は、ポリヌクレオチド1つにつき、それぞれ1箇所ずつでもよいし、それぞれ2箇所ずつ以上であってもよい。本発明の婦人科がんの判定キットに使用する本件CpG部位は、婦人科がんについてのより高い精度を得る観点から、2箇所以上であってもよいが、現在の保険診療制度下での遺伝子検査の診療報酬の算定方法を考慮すると、1箇所であることが好ましい。
【0047】
本発明の婦人科がんの判定方法や、本発明の婦人科がんの判定キットの判定対象(判定目的)としては、婦人科がんであるかどうかの発症判定の他、がんの進展(病期)や予後の予測などの、疾患者に対する判定も含まれる。この場合、判定目的に応じて、メチル化頻度を測定するCpG部位を適宜選択することができる。なお、がんの進展(病期)や予後の予測の判定は、治療中や手術後の罹患者の組織検体や、血液検体のメチル化頻度を測定することにより行うことができる。
【0048】
4.婦人科がん治療薬のスクリーニング方法
本発明の婦人科がん治療薬のスクリーニング方法としては、(a)婦人科がんに罹患した非ヒト動物に被検物質を投与する工程:(b)前記非ヒト動物における婦人科がん組織又は血液から抽出したゲノムDNA中の、本件CpG部位におけるメチル化頻度を測定する工程:(c)工程(b)において測定した遺伝子のメチル化の頻度を、コントロール非ヒト動物における婦人科がん組織又は血液から抽出したゲノムDNA中の同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較・評価する工程:を含んでいる限り特に制限されないが、さらに、(d)工程(b)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度が、コントロール非ヒト動物における同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較して低下している場合に、該被検物質を婦人科がん治療薬であると評価する工程:を含んでいることが好ましい。上記非ヒト動物の種類としては、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ等の非ヒト哺乳動物を好適に例示することができ、中でもマウス、ラットをより好適に例示することができる。また、婦人科がんに罹患した非ヒト動物としては、婦人科がんを自然に罹患した非ヒト動物であってもよいし、発がん物質で婦人科がんを誘導した非ヒト動物であってもよい。
【0049】
上記(b)工程における本件CpG部位におけるメチル化頻度を測定する方法としては、上記(B)工程中における、抽出したゲノムDNA中の本件CpG部位におけるメチル化頻度を測定する方法と同様の方法を用いることができる。上記(c)工程におけるコントロール非ヒト動物としては、上記工程(a)に用いた婦人科がんに罹患した非ヒト動物に、被検物質を投与しなかったものを好適に例示することができる。上記(d)工程にあるように、工程(b)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度が、コントロール非ヒト動物における同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較して低下している場合に、該被検物質を婦人科がん治療薬であると評価することなり、結果として、そのような被検物質を婦人科がん治療薬とすることができる。婦人科がん組織又は血液から抽出したゲノムDNA中の本件CpG部位におけるメチル化頻度の過度の増加を正常化方向にシフトさせるような被検物質は、婦人科がん治療薬として用いうる可能性が高いと考えられる。
【0050】
なお、(c)工程に代えて、(e)コントロールとしての、婦人科がん組織と同種の非がん組織(好ましくは正常組織)又は被検体と同種の非がん被検体(好ましくは正常被検体)の血液から抽出したゲノムDNA中の同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較・評価する工程:を採用することができる。(e)工程における比較・評価する方法としては、本件CpG部位におけるメチル化頻度が、コントロールと比較して有意差がない場合に、該被検物質が婦人科がん治療薬である可能性が高いと判定することができる。
【0051】
なお、本件CpG部位を2種類以上、婦人科がんのバイオマーカーとして併用すると、婦人科がんの判定や、婦人科がん治療薬である可能性をより正確に判定することが可能となる点で好ましい。
【0052】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0053】
[サンプル組織の採取及びDNAの抽出]
慶應義塾大学医学部の倫理委員会の承認のもと、慶應義塾大学病院の婦人科外来を受診した患者を選定し、サンプル提供の依頼対象者とした。その上で、その対象者からインフォームド・コンセントを得た後、6人の各対象者として9149(正常子宮内膜 増殖期)、9174(正常子宮内膜 分泌期)、9003(子宮体がん Ib G2)、9015(子宮体がん Ic G1)、9030(子宮体がん IIIc G1)、9025(子宮体がん IIIc G2)から、6種類のサンプル組織を採取した。
【0054】
採取したこれらの組織のそれぞれの一部から、常法(Molecular Cloning第3版Volume1のプロトコール参照)によりゲノムDNAの抽出を行った。具体的には以下のような方法で行った。採取した組織10〜20mg程度を1.5mLチューブに入れた。そのチューブに100μLの抽出バッファ(10mMのTris−HCl、100mMのEDTA、20mMのNaCl、1%(w/v)のSDS)を加え、ハサミで組織を刻んだ。次いで、150μg/mLのプロテイナーゼKを含む、400μLの前述の抽出バッファを添加して、55℃で1時間インキュベートした。そして、フェノール・クロロホルムを添加して混合し、15000rpmで10分間遠心した後、上清を分取して別のチューブに入れた。そこに、クロロホルムを添加して混合し、15000rpmで10分間遠心した後、上清を分取して別のチューブに入れた。次に、QIAGEN社製のRNaseAを1μL添加し、37℃で1時間インキュベートして、RNase処理を行った。次いで、フェノール・クロロホルムを添加して混合し、15000rpmで10分間遠心した後、上清を分取して別のチューブに入れた。そこに、クロロホルムを添加して混合し、15000rpmで10分間遠心した後、上清を分取して別のチューブに入れた。10分の1容量の3M酢酸ナトリウムを添加したイソプロパノールを添加して、15000rpmで5分間遠心してイソプロパノール沈殿を行った。沈殿(ゲノムDNA)を2回洗浄した後、溶解バッファを添加し、37℃で一晩放置して沈殿を溶解させて、ゲノムDNA溶液を得た。このゲノムDNA溶液を用いるまでは、4℃で保存を行った。
【実施例2】
【0055】
[抽出したゲノムDNA上の遺伝子のメチル化頻度の測定]
実施例1で抽出したゲノムDNAにおける遺伝子のメチル化頻度を網羅的に測定するべく、バイサルファイト・パイロシークエンス法の変法であるHumanMethylation27 BeadChip(イルミナ株式会社製)を用いた解析を行った。この解析により、14495種類のヒト遺伝子の27578箇所のCpG部位におけるメチル化頻度を測定することが可能である。この解析の方法は、HumanMethylation27 BeadChip(イルミナ株式会社製)に添付のプロトコールの方法にしたがったものであるが、以下に概要を説明する。
【0056】
抽出したゲノムDNAの濃度を前述のPicoGreen dsDNA Quantitation Kitにて測定し、また、ゲノムDNAの断片化の有無を電気泳動法によって確認することによって、ゲノムDNAの品質を確認した。次に、このゲノムDNAに対して、Zymo EZ DNA Methylation Kit(ZYMO RESEARCH社製)を使用して、バイサルファイト(亜硫酸水素塩)処理を行い、ゲノムDNA上でメチル化されていないシトシンをウラシルへ変換させた。バイサルファイト処理したゲノムDNAについて全ゲノム増幅によって1000倍以上に増幅した後、酵素処理によって300〜600bp程度に断片化した。得られたDNA断片を抽出し、変性させて1本鎖とした後、前述のHumanMethylation27 BeadChip上の各オリゴヌクレオチドとハイブリダイゼーション反応させた。このBeadChip上には、各CpG部位のシトシンがウラシルに変換したDNA配列に特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドプローブ(非メチル検出用プローブ)と、変換していないDNA配列に特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドプローブ(メチル検出用プローブ)が各種の遺伝子についてそれぞれ固定されている。ハイブリダイゼーション反応させたBeadChipに対して、ビオチンラベルしたddCTP及びddGTPと、DNPラベルしたddATP及びddUTPを用いた1塩基伸長反応を行った。次に、このBeadChipについて、Cy3ラベルしたストレプトアビジン及びCy5ラベルした抗DNP一次抗体で染色し、次いで、ビオチン化抗ストレプトアビジン二次抗体及びビオチン化抗DNP二次抗体で対比染色して、免疫組織化学的分析を行った。このBeadChip上の蛍光をBeadXpress(登録商標)Reader(イルミナ株式会社製)で読み取り、各CpG部位に対応する非メチル検出用プローブの蛍光値(signal A)、及び、メチル検出用プローブの蛍光値(signal B)を測定した。測定して得られた生データ(Raw Data)について、以下の計算式によって、該CpG部位のメチル化頻度(β)を算出した。
β=(該CpG部位におけるsignal Bの最大値)/(該CpG部位におけるsignal Aの最大値+該CpG部位におけるsignal Bの最大値+100);
この計算式によると、各CpG部位のメチル化頻度が、0(完全非メチル化)〜1(完全メチル化)(メチル化しているCpG部位の割合がほぼ0%〜100%に相当)の範囲で算出されることとなる。
【0057】
以上の解析の結果、ヒト遺伝子の27578箇所のCpG部位におけるメチル化頻度が明らかとなった。次に、これらのメチル化頻度を利用して、子宮体がん特異的なメチル化部位のスクリーニングを以下のような手法により行った。
【0058】
子宮体がんの4サンプル(9003、9015、9030、9025)中のメチル化頻度(β値)の最低値が、正常子宮内膜の2サンプル(9149、9174)中のメチル化頻度(β値)の最大値の3倍以上となるCpG部位を選択した。具体的には、まず、以下の(1)〜(8)の値のすべてが3以上という条件を満たすCpG部位を選択した。
(1)9003(子宮体がん Ib G2)のβ値/9149(正常子宮内膜 増殖期)のβ値
(2)9015(子宮体がん Ic G1)のβ値/9149(正常子宮内膜 増殖期)のβ値
(3)9030(子宮体がん IIIc G1)のβ値/9149(正常子宮内膜 増殖期)のβ値
(4)9025(子宮体がん IIIc G2)のβ値/9149(正常子宮内膜 増殖期)のβ値
(5)9003(子宮体がん Ib G2)のβ値/9174(正常子宮内膜 分泌期)のβ値
(6)9015(子宮体がん Ic G1)のβ値/9174(正常子宮内膜 分泌期)のβ値
(7)9030(子宮体がん IIIc G1)のβ値/9174(正常子宮内膜 分泌期)のβ値
(8)9025(子宮体がん IIIc G2)のβ値/9174(正常子宮内膜 分泌期)のβ値
【0059】
その結果、上記の(1)〜(8)のすべての値が3以上となったCpG部位が18箇所見いだされ、その中の7箇所はすべての値が4以上となり、その中の2箇所はすべての値が5以上となった。上記の(1)〜(8)のすべての値が3以上となったCpG部位について、各サンプルのβ値を図1〜3に示す。また、上記の(1)〜(8)のすべての値が4以上となったCpG部位について、各サンプルのβ値を図4に示す。さらに、上記の(1)〜(8)のすべての値が5以上となったCpG部位について、各サンプルのβ値を図5に示す。
【0060】
次に、上記の18箇所のCpG部位について、以下の相対値(早期がん/正常)を算出した。
相対値(早期がん/正常)=(9003のβ値と9015のβ値の平均値)/(9149のβ値と9174のβ値の平均値)
なお、この相対値(早期がん/正常)は、コントロールにおけるメチル化頻度を1としたときの、早期がんにおけるメチル化の相対頻度を実質的に意味することとなる。
【0061】
前述の18箇所のCpG部位を、上記の相対値(早期がん/正常)の高い順に並べ替えたものを以下の表2に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
なお、上記の表2中のcg04272086(DCC)、cg11812218(GHSR)、cg20959866(AJAP1)、cg04062391(ZNF560)、cg25691167(FERD3L)、cg05221167(ZNF560)、cg25500444(FLJ23514)は、上記の(1)〜(8)のすべての値が4以上となったCpGであり、cg04272086(DCC)、cg11812218(GHSR)は、上記(1)〜(8)のすべての値が5以上となったCpG部位である。
【0064】
このように、前述の18箇所のCpG部位は、婦人科正常組織と比較して、婦人科がん組織においてメチル化頻度が増加していた。したがって、これらのCpG部位のメチル化頻度は、婦人科がんのバイオマーカーとして好適に使用できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、婦人科がんのバイオマーカーの分野や、婦人科がんの判定の分野や、婦人科がん治療薬のスクリーニングの分野に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DCC、GHSR、AJAP1、ZNF560、FERD3L、FLJ23514、BXDC1、HKR1、DRD4、PENK、FAM12B、HIST1H4F、NEF3、SKIP、CX36、EOMES、及び、SORCS3からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を、婦人科がんのバイオマーカーとして使用する方法。
【請求項2】
以下の工程を備えたことを特徴とする婦人科がんの判定方法。
(A)婦人科検体組織又は被検体の血液からゲノムDNAを抽出する工程:
(B)抽出したゲノムDNA中の、DCC、GHSR、AJAP1、ZNF560、FERD3L、FLJ23514、BXDC1、HKR1、DRD4、PENK、FAM12B、HIST1H4F、NEF3、SKIP、CX36、EOMES、及び、SORCS3からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を測定する工程:
(C)工程(B)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を、コントロールとしての、検体組織と同種の非がん組織又は被検体と同種の非がん被検体の血液から抽出したゲノムDNA中の同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較・評価する工程:
【請求項3】
工程(B)を、抽出したゲノムDNAにおいてメチル化シトシンと非メチル化シトシンを判別するために、該抽出したゲノムDNAに化学的又は酵素的処理を行うための試薬を添加した後、該ゲノムDNA中の、DCC、GHSR、AJAP1、ZNF560、FERD3L、FLJ23514、BXDC1、HKR1、DRD4、PENK、FAM12B、HIST1H4F、NEF3、SKIP、CX36、EOMES、及び、SORCS3からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を測定する工程とすることを特徴とする請求項2に記載の婦人科がんの判定方法。
【請求項4】
遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度の測定を、該CpG部位のポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを用いて行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の婦人科がんの判定方法。
【請求項5】
ポリヌクレオチドとして、蛍光標識されたポリヌクレオチドを用いることを特徴とする請求項4に記載の婦人科がんの判定方法。
【請求項6】
さらに、(D)工程(B)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度が、コントロールにおける同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較して増加している場合に婦人科がんであると評価する工程を備えたことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の婦人科がんの判定方法。
【請求項7】
DCC、GHSR、AJAP1、ZNF560、FERD3L、FLJ23514、BXDC1、HKR1、DRD4、PENK、FAM12B、HIST1H4F、NEF3、SKIP、CX36、EOMES、及び、SORCS3からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位において、該CpG部位のポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを備えたことを特徴とする婦人科がんの判定キット。
【請求項8】
CpG部位のポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドに加えて、該ポリヌクレオチドのCpG部位に相補的な部位におけるシトシンがウラシルとなったポリヌクレオチドをさらに備えたことを特徴とする請求項7に記載の判定キット。
【請求項9】
以下の工程を含むことを特徴とする婦人科がん治療薬のスクリーニング方法。
(A)婦人科がんに罹患した非ヒト動物に被検物質を投与する工程:
(B)前記非ヒト動物における婦人科がん組織又は血液から抽出したゲノムDNA中の、DCC、GHSR、AJAP1、ZNF560、FERD3L、FLJ23514、BXDC1、HKR1、DRD4、PENK、FAM12B、HIST1H4F、NEF3、SKIP、CX36、EOMES、及び、SORCS3からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を測定する工程:
(C)工程(B)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を、コントロール非ヒト動物における婦人科がん組織又は血液から抽出したゲノムDNA中の同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較・評価する工程:
【請求項10】
さらに、(D)工程(B)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度が、コントロール非ヒト動物における同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較して低下している場合に、該被検物質を婦人科がん治療薬であると評価する工程を含むことを特徴とする請求項9に記載の婦人科がん治療薬のスクリーニング方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−160711(P2011−160711A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26216(P2010−26216)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】