説明

特定の遺伝子のメチル化の頻度を、頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用する方法

【課題】第1の本発明の課題は、特定の遺伝子のメチル化頻度を、頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用する方法、頭頸部腫瘍の判定方法、頭頸部腫瘍の判定キット等を提供することにある。また、第2の本発明の課題は、特定のマイクロRNAを頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用する方法、頭頸部腫瘍の判定方法、頭頸部腫瘍の判定キット等を提供することにある。
【解決手段】第1の本発明については、好ましくはINPP5E、H19、HOXD9、DES、ABHD9、ZNF577、CFL1、DBC1、GNB1、HOXD4、HOXD10、HOXD12、及び、SLC11A1からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を、頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭頸部腫瘍における遺伝子のメチル化頻度のプロファイルとその用途に関する。より詳細には、特定の遺伝子のメチル化の頻度(以下、単に「メチル化頻度」とも表示する。)を、頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用する方法、頭頸部腫瘍の判定方法、頭頸部腫瘍の判定キット等に関する。
【背景技術】
【0002】
国内三大疾患である脳血管疾患、悪性新生物(がん)及び心疾患において、人口10万人あたりの総死亡率(粗死亡率)を比較すると、脳血管疾患全体による死亡者数は半減し、一方、悪性新生物、心疾患による死亡者数は、人口構成の高齢化に伴い性差を問わず増加傾向にある。特に、平成17年の粗死亡率においては、悪性新生物:男319.1、女200.3、心疾患:男136.3、女138.0、脳血管疾患:男103.3、女107.1と、悪性新生物が最も頻度の高い直接死因となっている。この原因として、脳血管疾患に対しては、国をあげての血圧管理に関する啓発が進んだことにより、脳出血を原因とする死亡者数が著明に減少したこと、一方でがんを含む悪性新生物に対しては、初期病変を捉えることが可能な低侵襲かつ低コストの検査方法が未だないことによると考えられる。
【0003】
頭頸部腫瘍は、耳、鼻、咽頭、喉頭、頸部、顔面、あるいは口腔等にできる腫瘍であるが、特に悪性腫瘍は50歳以上の男性に多く、全悪性腫瘍の6%を占める。罹患率は年齢と共に高率となり、全世界では年間65万人が罹患し、その内35万人が原病死している(非特許文献1参照)。中でも、喉頭がんは、頭頸部領域において最も多い疾患であり、がん・統計白書による喉頭がんの年間死亡数の将来予測では、死亡者数が増加するとされている。
【0004】
頭頸部腫瘍の診断は、内視鏡検査及び各種画像検査(CT、MRI、PET、超音波検査等)を用いた病期診断と生検による組織診断によってなされ、これらをもとに治療が行われる(非特許文献2参照)。しかしながら、画像検査の多くを占めるCTやMRIは、腫瘍が少なくとも1cm以上など、ある程度のボリュームのある腫瘤を形成しない限り、その検出は不可能であった。これは、喉頭の場合であれば、喉頭に充満するほどの大きさに相当し、既に進行癌である。また、いずれの画像検査も、たとえ腫瘤を見つけることができたとしても、質的診断ができないという決定的な弱点があった。また、画像検査するための撮影機器も1台1億円程度とかなり高額であること、CTでは被爆の問題があること、MRIでは体内金属などの存在だけで施行対象から外さざるを得ないことなど、安全面での問題点も考慮する必要がある。また、組織検査は、確定診断に用いられるとはいえ、患者への身体的・精神的負担が大きく、それだけのリスクを負っても、前がん病変であるのかがんであるのか、という重要な境界が、病理医の主観に頼らざるを得ない場面も多々あり、新たな絶対的な診断方法あるいは病理医の主観をサポートする補助的な診断方法が新たに必要な状況にあった。
【0005】
一方、頭頸部腫瘍の治療は、主に病期と病理組織学的所見により決定されており、良性腫瘍には、根治可能な一期的摘出術が行われる一方、悪性腫瘍に対しては手術・放射線治療・化学療法が用いられ、進行がんの場合はそれらを組み合わせて行うことが必要とされる。頭頸部腫瘍に対する手術は頭頸部、顔面を整容的に著しく損なう上、発声・嚥下等の身体的機能にも高度の影響を及ぼし、身体的・心理的に侵襲が大きく、それ故、QOL(Quality of Life)の大幅な低下を来す。また、これらの治療を組み合わせたとしても、進行がんでは5年生存率は30%程度に留まっており(非特許文献2参照)、治療効果は現在でも決して高いとは言えない。
【0006】
さらに、治療効果と予後には個人差が認められ、これらは腫瘍組織における遺伝子変異とその発現量の異常に起因していると考えられるが(非特許文献3、4参照)、遺伝子レベルでの頭頸部腫瘍の診断は、現在まで行われていない。前述の通り、高齢化社会を迎えた日本において頭頸部腫瘍の増加が予測されるが、それらの発症予測に関しては、疫学的に喫煙・飲酒・胃酸逆流や音声酷使との関連が示唆されてはいるものの(非特許文献5)、有用なバイオマーカーは現在まで実用化されておらず(特許文献1、2及び非特許文献6参照)、臨床上、悪性新生物の診断の補助、治療モニター、あるいは予後・再発予測に用いられている程度である。しかし、現在のところ、疾患初期から高値を示すことがない、あるいは感度ならびに特異性が低いなど様々な問題点を抱えている。実際、頭頸部腫瘍に関しても、それらの発症予測や発症診断についてのバイオマーカーの開発が期待されているが、現在まで十分な感度と特異性の双方を有するバイオマーカーは知られていない。
【0007】
バイオマーカーの候補としては、タンパクあるいはメッセンジャーRNA(mRNA)があるが、現状では、各々3万近いこれらをスクリーニングすることは、コスト面ならびに労力面で現実的ではない。また、実際、これまでの手法において、がんの診断に感度ならびに特異性を有するものは、未だ見出されていない。この原因を考えるに、1)現在の臨床検査手法の問題点、2)mRNAが病態を反映しない問題点、がある。前者の問題点に関し、現在、臨床検査の場で、腫瘍マーカーを測定する方法は、RIA放射性免疫測定法、CLIA化学発光免疫測定法、EIA酵素免疫測定法、ELISA酵素免疫測定法等、対象タンパクに対して特異的な抗体を用いている。このような状況において、近年、腫瘍タンパクに対する修飾、例えば、糖鎖修飾が知られてきたが、これらの修飾によって、前述の抗体が認識するはずのエピトープ部分の構造が種々変化し、その抗体が腫瘍タンパクを認識できない可能性が生じる。結果として、腫瘍タンパクを対象とした臨床検査の感度が低くなる。後者の問題点に関しては、ヒトにおいて、miRNA(マイクロRNA)がmRNAの切断を介さず、翻訳制御をすることでタンパク合成阻害を行っているので、タンパク量に変化を生じるがmRNAの量的変化が全く認められないことが起こり得る。結果として、mRNAの変化量は、病態を正確に表さず、偽陰性を生じることになる。以上から、タンパクならびにmRNAは、腫瘍の診断マーカーとしては、有用ではないと考える。
【0008】
ところで、近年、エピジェネティクス(クロマチンへの後天的な修飾により、遺伝子配列の変化を伴わずに遺伝子発現が制御されることに起因する遺伝学又は分子生物学の研究分野)への関心が高まり、がん等の疾患との関連についての研究が進められている。中でも、ゲノムDNA上の遺伝子のメチル化が注目されている。高等真核生物のゲノムDNA配列中に存在する5’−CG−3’DNA(以下、CpG)部分では、グアニン(G)の5’側に位置するシトシン(C)がメチル化修飾される現象が知られており、このCpGのメチル化修飾は、遺伝子発現に影響を及ぼすと考えられている。特にCpG部位に富む領域(CpGアイランド)が遺伝子のプロモーター領域内に存在する場合には、遺伝子発現に対して重要な影響を及ぼす。通常、ゲノム上の多くの遺伝子はこれらのメチル化修飾から保護されているが、何らかの原因により、遺伝子のプロモーター領域に存在するCpGアイランドがメチル化された場合、遺伝子の転写が抑制されることになる。このため、CpGアイランドのメチル化異常によって、例えば、ヒト生体内におけるがん抑制遺伝子の転写が不活性化された場合、細胞増殖の制御が効かなくなり、がんなどの細胞増殖性疾患が進行してしまうことになる。実際、いくつかのがんにおいて、特定の遺伝子におけるメチル化頻度が上昇していることが報告されており、最近では、特定の遺伝子のCpGアイランドのメチル化頻度を、特定のがんの診断に利用する試みがいくつか行われている。例えば、特許文献3には、BASP1等の遺伝子のCpGアイランドのメチル化の程度を検出することによって、肝臓がんを診断する方法が記載されている。また、頭頸部腫瘍においては、p16、p15、MGMT、DAPKの各遺伝子におけるメチル化頻度が上昇しているとの報告がなされている(非特許文献7及び8)。しかし、がんにおける遺伝子のメチル化頻度の上昇の程度は遺伝子等によって様々であり、実用的な頭頸部腫瘍の診断に耐え得る程度のメチル化頻度の上昇が生じる遺伝子はこれまで知られていなかった。
【0009】
また、マイクロRNAは、細胞内に存在し、タンパクへの翻訳がなされない、長さ22塩基程度の1本鎖RNAである(非特許文献9参照)。1993年に線虫C.elegansにおいて、その後、2001年には脊椎動物でも発見され、種を越えて保存されている。現在、ヒトゲノム上には1000種類近くのマイクロRNAの存在が予測され、これまでに700種類以上のマイクロRNAがクローニングされている。また、マイクロRNAは、ゲノム上のタンパク翻訳領域の30%に対し遺伝子制御を行っていると推測されており(非特許文献10参照)、それ故、マイクロRNAの機能破綻は各種の疾患を引き起こす可能性がある。しかしながら、現在までに、その生物学的役割が明らかになったものはごく僅かに過ぎず、今後の解析が待たれている。頭頸部腫瘍に関するマイクロRNAの報告として、腫瘍細胞株を用いたものは散見されるが(非特許文献11、12参照)、患者臨床検体を用いての報告は現在まで行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−000052号公報
【特許文献2】特表2007−502990号公報
【特許文献3】特開2008−245635号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Argiris A, KaramouzisMV, Raben D, Ferris RL. Head and neck cancer. Lancet. 2008; 371(9625): 1695-1709.
【非特許文献2】Marur S, Forastiere AA. Head and neck cancer: changing epidemiology, diagnosis, and treatment. Mayo Clin Proc. 2008; 83(4): 489-501.
【非特許文献3】Marsh S. Cancer pharmacogenetics. Methods Mol Biol. 2008; 448: 437-46.
【非特許文献4】Lothaire P, de Azambuja E, DequanterD, Lalami Y, Sotiriou C, Andry G, Castro G Jr, Awada A. Molecular markers of head and neck squamous cell carcinoma: promising signs in need of prospective evaluation. Head Neck. 2006; 28(3): 256-69.
【非特許文献5】Hashibe M, Brennan P, Benhamou S, Castellsague X, Chen C, CuradoMP, Dal Maso L, Daudt AW, Fabianova E, Fernandez L, Wunsch-Filho V, FranceschiS, Hayes RB, Herrero R, KoifmanS, La Vecchia C, Lazarus P, Levi F, Mates D, Matos E, Menezes A, Muscat J, Eluf-NetoJ, Olshan AF, Rudnai P, Schwartz SM, Smith E, Sturgis EM, Szeszenia-DabrowskaN, Talamini R, Wei Q, Winn DM, ZaridzeD,ZatonskiW, Zhang ZF, BerthillerJ, BoffettaP. Alcohol drinking in never users of tobacco, cigarette smoking in never drinkers, and the risk of head and neck cancer: pooled analysis in the International Head and Neck Cancer Epidemiology Consortium. J Natl Cancer Inst. 2007 ; 99(10):777-89. Erratum in: J Natl Cancer Inst. 2008; 100(3): 225.
【非特許文献6】Hoogsteen IJ, Marres HA, BussinkJ, van der Kogel AJ, Kaanders JH. Tumor microenvironment in head and neck squamous cell carcinomas: predictive value and clinical relevance of hypoxic markers. Head Neck. 2007; 29(6): 591-604.
【非特許文献7】Wong TS, Man MW, Lam AK, Wei WI, Kwong YL, Yuen AP. The study of p16 and p15 gene methylation in head and neck squamouscell carcinoma and their quantitative evaluation in plasma by real-time PCR. European Journal of Cancer,2003; 39(13); 1881-1887
【非特許文献8】Montserrat Sanchez-Cespedes, Manel Esteller, Li Wu, Homaira Nawroz-Danish, George H. Yoo, Wayne M. Koch, Jin Jen, James G. Herman, and David Sidransky. Gene Promoter Hypermethylation in Tumors and Serum of Head and Neck Cancer Patients. CANCER RESEARCH 60, 892-895, February 15, 2000
【非特許文献9】Barbarotto E, SchmittgenTD, Calin GA. microRNAs and cancer:profile, profile, profile. IntJ Cancer. 2008; 122(5):969-977.
【非特許文献10】Zeng Y, Yi R, Cullen BR. miRNAs and small interfering RNAs can inhibit mRNA expression by similar mechanisms. Proc Nat Acad Sci2003; 100: 9779-9784.
【非特許文献11】Tran N, McLean T, Zhang X, Zhao CJ, Thomson JM, O'Brien C, Rose B. microRNA expression profiles in head and neck cancer cell lines. Biochem Biophys Res Commun. 2007; 358: 12-17.
【非特許文献12】Jiang J, Lee EJ, GusevY, Schmittgen TD. Real-time expression profiling of microRNA precursors in human cancer cell lines. Nucleic Acids Res. 2005; 28: 5394-5403.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
第1の本発明の課題は、特定の遺伝子のメチル化頻度を、頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用する方法、頭頸部腫瘍の判定方法、頭頸部腫瘍の判定キット等を提供することにある。また、第2の本発明の課題は、特定のマイクロRNAを頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用する方法、頭頸部腫瘍の判定方法、頭頸部腫瘍の判定キット等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述したように、頭頸部腫瘍において、いくつかの遺伝子のメチル化頻度の上昇が見られるとの報告がなされているが、実用的な頭頸部腫瘍の診断に耐え得る程度のメチル化頻度の上昇が生じる遺伝子はこれまで知られていなかった。本発明者らは、喉頭腫瘍組織のゲノムDNAと喉頭非がん組織のゲノムDNAとを対比し、喉頭腫瘍組織におけるゲノムDNA上の特定の遺伝子のメチル化頻度が著しく上昇していることを見出し、第1の本発明を完成するに至った。
【0014】
また、第2の発明に関しては、前述したように、頭頸部腫瘍に関するマイクロRNAの報告として、腫瘍細胞株を用いたものは散見されるが、患者臨床検体を用いての報告は現在まで行われていない。腫瘍細胞株は、臨床検体のように組織を構成せず、また、他の組織からの生体分子の影響を受けない等の理由のため、腫瘍細胞株における遺伝子等の発現プロファイルは、その細胞株に対応する腫瘍細胞の臨床検体における発現プロファイルとは異なることが知られている。したがって、細胞株の発現プロファイルから、臨床検体の発現プロファイルを予測することは基本的に不可能である。このような状況下で、本発明者らは、喉頭腫瘍組織のマイクロRNAと喉頭正常組織のマイクロRNAとを網羅的に対比し、特定のマイクロRNAが喉頭腫瘍組織において異常発現していることを見出し、さらには、喉頭がん患者の摘出手術前及び手術から30日経過後の血液サンプルにおけるマイクロRNAの濃度を対比し、特定のマイクロRNAが喉頭がんの摘出手術後において著しく低下していることも見出している(特願2009−099849号やPCT/JP2009/002629参照)。頭頸部腫瘍とマイクロRNAの発現との関連についてのこれらの知見と、今回得られた遺伝子のメチル化に関する知見に基づき、本発明者らは、頭頸部腫瘍の新たなバイオマーカーとなり得る10個のマイクロRNAを新たに見出し、第2の本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明は、(1)TLX3、H19、CDH5、VSX1、HOXD9、GPR25、DES、ABHD9、NME5、SORCS3、LTC4S、SEC31L2、FLT4、ZNF542、ETNK2、CKMT2、KIF5A、ZNF577、GRIN3A、UCHL1、HOXB6、SLC4A11、PHOX2A、SH3BGRL3、ZNF329、CALM1、INPP5E、VTI1B、CKS2、KIAA0256、ZPBP、HIVEP3、SEMA3B、TMEM24、DUSP1、ZCCHC17、CXCL10、NOX4、FILIP1、RAP1GA1、C14orf2、CCDC11、IL17RC、SHANK2、HOXA11、ATPIF1、PDZRN3、CFL1、DBC1、GNB1、HOXD4、HOXD10、HOXD12、及び、SLC11A1からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を、頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用する方法や、(2)遺伝子群が、INPP5E、H19、HOXD9、DES、ABHD9、ZNF577、CFL1、DBC1、GNB1、HOXD4、HOXD10、HOXD12、及び、SLC11A1からなる遺伝子群であることを特徴とする上記(1)に記載の方法や、(3)頭頸部腫瘍が喉頭がん又は扁平上皮がんであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の方法に関する。
【0016】
また本発明は、(4)(A)頭頸部の検体組織又は被検体の血液からゲノムDNAを抽出する工程:(B)抽出したゲノムDNA中の、TLX3、H19、CDH5、VSX1、HOXD9、GPR25、DES、ABHD9、NME5、SORCS3、LTC4S、SEC31L2、FLT4、ZNF542、ETNK2、CKMT2、KIF5A、ZNF577、GRIN3A、UCHL1、HOXB6、SLC4A11、PHOX2A、SH3BGRL3、ZNF329、CALM1、INPP5E、VTI1B、CKS2、KIAA0256、ZPBP、HIVEP3、SEMA3B、TMEM24、DUSP1、ZCCHC17、CXCL10、NOX4、FILIP1、RAP1GA1、C14orf2、CCDC11、IL17RC、SHANK2、HOXA11、ATPIF1、PDZRN3、CFL1、DBC1、GNB1、HOXD4、HOXD10、HOXD12、及び、SLC11A1からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を測定する工程:及び、(C)工程(B)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を、コントロールとしての、検体組織と同種の非がん組織又は被検体と同種の非がん被検体の血液から抽出したゲノムDNA中の同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較・評価する工程:を備えたことを特徴とする頭頸部腫瘍の判定方法や、(5)工程(B)として、抽出したゲノムDNAにおいてメチル化シトシンと非メチル化シトシンを判別するために、該抽出したゲノムDNAに化学的又は酵素的処理を行うための試薬を添加した後、該ゲノムDNA中の、TLX3、H19、CDH5、VSX1、HOXD9、GPR25、DES、ABHD9、NME5、SORCS3、LTC4S、SEC31L2、FLT4、ZNF542、ETNK2、CKMT2、KIF5A、ZNF577、GRIN3A、UCHL1、HOXB6、SLC4A11、PHOX2A、SH3BGRL3、ZNF329、CALM1、INPP5E、VTI1B、CKS2、KIAA0256、ZPBP、HIVEP3、SEMA3B、TMEM24、DUSP1、ZCCHC17、CXCL10、NOX4、FILIP1、RAP1GA1、C14orf2、CCDC11、IL17RC、SHANK2、HOXA11、ATPIF1、PDZRN3、CFL1、DBC1、GNB1、HOXD4、HOXD10、HOXD12、及び、SLC11A1からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を測定する工程を用いることを特徴とする上記(4)に記載の頭頸部腫瘍の判定方法や、(6)さらに、(D)工程(B)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度が、コントロールにおける同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較して増加している場合に頭頸部腫瘍であると評価する工程を備えたことを特徴とする上記(4)又は(5)に記載の頭頸部腫瘍の判定方法や、(7)頭頸部腫瘍が喉頭がん又は扁平上皮がんであることを特徴とする上記(4)〜(6)のいずれかに記載の頭頸部腫瘍の判定方法に関する。
【0017】
さらに本発明は、(8)TLX3、H19、CDH5、VSX1、HOXD9、GPR25、DES、ABHD9、NME5、SORCS3、LTC4S、SEC31L2、FLT4、ZNF542、ETNK2、CKMT2、KIF5A、ZNF577、GRIN3A、UCHL1、HOXB6、SLC4A11、PHOX2A、SH3BGRL3、ZNF329、CALM1、INPP5E、VTI1B、CKS2、KIAA0256、ZPBP、HIVEP3、SEMA3B、TMEM24、DUSP1、ZCCHC17、CXCL10、NOX4、FILIP1、RAP1GA1、C14orf2、CCDC11、IL17RC、SHANK2、HOXA11、ATPIF1、PDZRN3、CFL1、DBC1、GNB1、HOXD4、HOXD10、HOXD12、及び、SLC11A1からなる遺伝子群から選ばれるいずれかの遺伝子のCpG部位において、そのCpG部位のポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを備えたことを特徴とする頭頸部腫瘍の判定キットや、(9)遺伝子群から選ばれるその遺伝子のCpG部位において、そのCpG部位のシトシンがウラシルとなったポリヌクレオチドをさらに備えたことを特徴とする上記(8)に記載の判定キットや、(10)頭頸部腫瘍が喉頭がん又は扁平上皮がんであることを特徴とする上記(8)又は(9)に記載の判定キットに関する。
【0018】
さらにまた本発明は、(11)(A)頭頸部腫瘍に罹患した非ヒト動物に被検物質を投与する工程:(B)前記非ヒト動物における頭頸部腫瘍組織又は血液から抽出したゲノムDNA中の、TLX3、H19、CDH5、VSX1、HOXD9、GPR25、DES、ABHD9、NME5、SORCS3、LTC4S、SEC31L2、FLT4、ZNF542、ETNK2、CKMT2、KIF5A、ZNF577、GRIN3A、UCHL1、HOXB6、SLC4A11、PHOX2A、SH3BGRL3、ZNF329、CALM1、INPP5E、VTI1B、CKS2、KIAA0256、ZPBP、HIVEP3、SEMA3B、TMEM24、DUSP1、ZCCHC17、CXCL10、NOX4、FILIP1、RAP1GA1、C14orf2、CCDC11、IL17RC、SHANK2、HOXA11、ATPIF1、PDZRN3、CFL1、DBC1、GNB1、HOXD4、HOXD10、HOXD12、及び、SLC11A1からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を測定する工程:及び、(C)工程(B)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を、コントロール非ヒト動物における頭頸部腫瘍組織又は血液から抽出したゲノムDNA中の同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較・評価する工程:を含むことを特徴とする頭頸部腫瘍治療薬のスクリーニング方法や、(12)さらに、(D)工程(B)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度が、コントロール非ヒト動物における同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較して低下している場合に、その被検物質を頭頸部腫瘍治療薬であると評価する工程を含むことを特徴とする上記(11)に記載の頭頸部腫瘍治療薬のスクリーニング方法に関する。
【0019】
また本発明は、(13)miR−10b、miR−126、miR−147、miR−200a、miR−200b、miR−429、miR−612、miR−639、miR−643及びmiR−675からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAを頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用する方法や、(14)miR−10b、miR−126、miR−147、miR−200a、miR−200b、miR−429、miR−612、miR−639、miR−643及びmiR−675が、それぞれ配列番号1〜10に示されるヌクレオチド配列において1若しくは2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、頭頸部腫瘍組織又は頭頸部腫瘍被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAであることを特徴とする上記(13)に記載の方法や、(15)頭頸部腫瘍が喉頭がん又は扁平上皮がんであることを特徴とする上記(13)又は(14)に記載の方法に関する。
【発明の効果】
【0020】
第1及び第2の本発明における頭頸部腫瘍のバイオマーカーは、簡便に用いることができ、また、感度及び特異性にも優れている。したがって、第1及び第2の本発明の頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用する方法や、第1及び第2の本発明の頭頸部腫瘍の判定方法によると、迅速かつ正確に頭頸部腫瘍を判定することができる。また、第1及び第2の本発明の頭頸部腫瘍の判定キットによると、頭頸部腫瘍であるかどうかを迅速かつ正確に判定することができる。その結果、内視鏡検査及び各種画像検査(CT、MRI、PET、超音波検査等)を用いた従来の診断方法の欠点(前述の背景技術の記載を参照)を克服することが可能となった。さらに、第1及び第2の本発明の頭頸部腫瘍治療薬のスクリーニング方法によると、頭頸部腫瘍治療薬を効率的にスクリーニングすることができる。
【0021】
特に、被検体の血液から抽出したゲノムDNAからであっても、メチル化頻度を測定可能な遺伝子の場合や、被検体の血液中の濃度も変化するマイクロRNAの場合は、採取が極めて容易な血液サンプルを利用することができるため、頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用する方法や、頭頸部腫瘍の判定方法等における迅速性や簡便性が特に優れている。なお、本件遺伝子のメチル化頻度や本件マイクロRNA、及び、それらの関連等についてさらに研究が進めば、頭頸部腫瘍の発症・進展・予後予測や治療が可能となることで、現在の頭頸部腫瘍臨床のさまざまな問題点を解決する突破口となることが期待できる。また、遺伝子のメチル化頻度の上昇やマイクロRNAの発現は組織特異的であることが知られており、頭頸部原発不明がんの原発部位の特定にも有用となる可能性がある。さらに治療に際しては、薬剤や放射線治療への抵抗性が診断できれば、患者個人ごとに有効な治療法を選択する個別化治療にまで発展させ得る可能性を含んでいる。正確な診断や予後の予測は、余計な検査や患者の必要以上の通院を減らすことが期待でき、医療経済効果も大きいと予想される。
【0022】
なお、バイオマーカーにおける感度とは、検査を受ける被検体の中で、問題とする疾患に罹患している患者の総数に対する、検査陽性者数の割合を指す。例えば、100人の集団に喉頭がん検診を行う場合で、100人中10人が喉頭癌に罹患しているとする。この際、バイオマーカーAを利用して検査したところ、10人中9人が陽性と検出され、バイオマーカーBを利用して検査したところ、10人中5人しか検出されなかったとする。この場合、バイオマーカーAの感度は90%、バイオマーカーBの感度は50%となり、バイオマーカーAの方が、バイオマーカーBより感度が高く、喉頭がんの見逃しが少ない、有用なマーカーと判断することができる。また、バイオマーカーにおける特異性とは、検査を受ける被検体の中で、問題とする疾患に罹患していない者(非患者)の総数に対する、検査陰性者数の割合を指す。例えば、110人の集団に喉頭癌検診を行う場合で、110人中100人は喉頭がんに罹患していないとする。この際、バイオマーカーCを利用して検査したところ、100人中90人が陰性と判定され、バイオマーカーDを利用して検査したところ、100人中70人が陰性と判定されたとする。この場合、バイオマーカーCの特異度は90%、バイオマーカーDの特異度は70%となり、バイオマーカーCの方が、バイオマーカーDより特異性が高く、非患者を患者として疑い、余計な検査や精神的不安を患者に強いることの少ない、有用なバイオマーカーと判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】T532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織についてそれぞれ測定した、各CpG部位(TLX3からSORCS3までの10箇所)におけるβ値(平均値)を示す図である。なお、図1〜図10には、5検体間におけるβ値の最大値と最小値の差が0.5以上、β値が前がん病変(T532)<早期がん(T433)<進行がん(T415、T505、T517)、かつ前がん病変(T532)と早期がん(T433)のβ値の差が0.2以上ある遺伝子(101個)についてのみ示しており、そのβ値の差が大きいものから順に示している。また、図1〜30における各CpG部位には、左からT532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)の結果を棒グラフにて示している。
【図2】T532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織についてそれぞれ測定した、各CpG部位(ZPBPからGRIN3Aまでの10箇所)におけるβ値(平均値)を示す図である。
【図3】T532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織についてそれぞれ測定した、各CpG部位(UCHL1からNEUROG1までの10箇所)におけるβ値(平均値)を示す図である。
【図4】T532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織についてそれぞれ測定した、各CpG部位(HCA112からFOXG1Bまでの10箇所)におけるβ値(平均値)を示す図である。
【図5】T532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織についてそれぞれ測定した、各CpG部位(FLJ23514からC6orf206までの10箇所)におけるβ値(平均値)を示す図である。
【図6】T532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織についてそれぞれ測定した、各CpG部位(HOXD12からCCDC8までの10箇所)におけるβ値(平均値)を示す図である。
【図7】T532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織についてそれぞれ測定した、各CpG部位(OLFML2AからLOC387758までの10箇所)におけるβ値(平均値)を示す図である。
【図8】T532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織についてそれぞれ測定した、各CpG部位(ANGPTL2からTBC1D1までの10箇所)におけるβ値(平均値)を示す図である。
【図9】T532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織についてそれぞれ測定した、各CpG部位(KCNK12からHRH2までの10箇所)におけるβ値(平均値)を示す図である。
【図10】T532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織についてそれぞれ測定した、各CpG部位(HOXD9からTNFRSF11Bまでの11箇所)におけるβ値(平均値)を示す図である。
【図11】T532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織についてそれぞれ測定した、各CpG部位(SH3BGRL3からSEMA3Bまでの10箇所)におけるβ値(平均値)を示す図である。なお、図11〜20には、早期がん(T433)の前がん病変(T532)に対する割合が高値を示すものから順に100個の遺伝子について示している。
【図12】T532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織についてそれぞれ測定した、各CpG部位(TMEM24からIL17RCまでの10箇所)におけるβ値(平均値)を示す図である。
【図13】T532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織についてそれぞれ測定した、各CpG部位(SHANK2からVSX1までの10箇所)におけるβ値(平均値)を示す図である。
【図14】T532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織についてそれぞれ測定した、各CpG部位(LTC4SからMUM1までの10箇所)におけるβ値(平均値)を示す図である。
【図15】T532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織についてそれぞれ測定した、各CpG部位(DESからCCDC8までの10箇所)におけるβ値(平均値)を示す図である。
【図16】T532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織についてそれぞれ測定した、各CpG部位(PTPRMからDOK1までの10箇所)におけるβ値(平均値)を示す図である。
【図17】T532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織についてそれぞれ測定した、各CpG部位(PHOX2AからFLJ46156までの10箇所)におけるβ値(平均値)を示す図である。
【図18】T532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織についてそれぞれ測定した、各CpG部位(WNT3からSLC9A3までの10箇所)におけるβ値(平均値)を示す図である。
【図19】T532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織についてそれぞれ測定した、各CpG部位(FLJ20097からTNFRSF10Cまでの10箇所)におけるβ値(平均値)を示す図である。
【図20】T532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織についてそれぞれ測定した、各CpG部位(DRG1からFAM55Cまでの10箇所)におけるβ値(平均値)を示す図である。
【図21】図11における縦軸のβ値を、前がん病変(T532)のβ値を1とした場合の相対値で表した図である。
【図22】図12における縦軸のβ値を、前がん病変(T532)のβ値を1とした場合の相対値で表した図である。
【図23】図13における縦軸のβ値を、前がん病変(T532)のβ値を1とした場合の相対値で表した図である。
【図24】図14における縦軸のβ値を、前がん病変(T532)のβ値を1とした場合の相対値で表した図である。
【図25】図15における縦軸のβ値を、前がん病変(T532)のβ値を1とした場合の相対値で表した図である。
【図26】図16における縦軸のβ値を、前がん病変(T532)のβ値を1とした場合の相対値で表した図である。
【図27】図17における縦軸のβ値を、前がん病変(T532)のβ値を1とした場合の相対値で表した図である。
【図28】図18における縦軸のβ値を、前がん病変(T532)のβ値を1とした場合の相対値で表した図である。
【図29】図19における縦軸のβ値を、前がん病変(T532)のβ値を1とした場合の相対値で表した図である。
【図30】図20における縦軸のβ値を、前がん病変(T532)のβ値を1とした場合の相対値で表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.第1の本発明(特定のCpG部位におけるメチル化頻度に関する発明)
第1の本発明の頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用する方法としては、SH3BGRL3、ZNF329、CALM1、INPP5E、VTI1B、CKS2、KIAA0256、ZPBP、HIVEP3、SEMA3B、TMEM24、DUSP1、ZCCHC17、CXCL10、NOX4、FILIP1、RAP1GA1、C14orf2、CCDC11、IL17RC、SHANK2、HOXA11、ATPIF1、PDZRN3、TLX3、H19、CDH5、VSX1、HOXD9、GPR25、DES、ABHD9、NME5、SORCS3、LTC4S、SEC31L2、FLT4、ZNF542、ETNK2、CKMT2、KIF5A、ZNF577、GRIN3A、UCHL1、HOXB6、SLC4A11、PHOX2A、CFL1、DBC1、GNB1、HOXD4、HOXD10、HOXD12、及び、SLC11A1からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位(以下、「本件CpG部位」とも表示する。)におけるメチル化の頻度(以下、「本件CpG部位におけるメチル化頻度」とも表示する。)を、喉頭がん等の頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用する方法である限り特に制限はされず、具体的には、第1の本発明の頭頸部腫瘍の判定方法や、第1の本発明の頭頸部腫瘍治療薬のスクリーニング方法を例示することができる。本件CpG部位は、頭頸部腫瘍組織のゲノムDNAにおいてメチル化頻度が増加していたため、頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用することができる。なお、本明細書における所定の遺伝子のCpG部位とは、ゲノムDNA上でそのCpG部位に最も近い位置に存在する遺伝子が、その所定の遺伝子であることを意味するが、その遺伝子のプロモーター領域に位置するCpG部位を好ましく含んでいる。また、本件CpG部位がその遺伝子の近傍に複数存在し、CpGアイランドを形成している場合は、それら複数のCpG部位を頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用することが好ましいが、近傍のCpG部位のメチル化頻度は、相関が見られるとされているため、特定の1カ所のCpG部位のメチル化頻度が増加していれば、そのCpG部位が形成するCpGアイランドにおけるメチル化頻度も増加していると評価することができる。
【0025】
上記本件CpG部位の中でも、遺伝子のメチル化及びマイクロRNAの発現抑制の両面から頭頸部腫瘍との関連が示され、頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして特に有力であることから、INPP5E、H19、HOXD9、DES、ABHD9、ZNF577、CFL1、DBC1、GNB1、HOXD4、HOXD10、HOXD12、及び、SLC11A1を特に好適に例示することができる。上記の本件CpG部位に関する遺伝子のGenBank Accession番号、NCBIデータベースに基づくそのCpGアイランドのゲノム上の位置、及び、NCBIデータベースに基づく該CpG部位中のCのゲノム上の位置を以下の表1に示す。なお、CpGアイランドを形成していないCpG部位については、CpGアイランドのゲノム上の位置は記載していない。
【0026】
【表1】



【0027】
上記の頭頸部腫瘍における腫瘍の種類としては、頭頸部がん、頭頸部異形成、頭頸部ポリープ、扁平上皮がんを例示することができ、頭頸部がん、頭頸部異形成、扁平上皮がんを好適に例示することができ、頭頸部がん、扁平上皮がんをより好適に例示することができる。また、本明細書中の頭頸部腫瘍における頭頸部としては、口唇・口腔、鼻・副鼻腔、唾液腺、耳・側頭骨、頭蓋底等の頭部や、咽頭、喉頭、食道、甲状腺等の頸部を挙げることができるが、頸部を好適に例示することができ、中でも喉頭をより好適に例示することができる。頭頸部の腫瘍は、多くの場合、喉頭がん同様その組織型が扁平上皮細胞由来と考えられるため、本件CpG部位におけるメチル化頻度は、喉頭がん以外の頭頸部腫瘍についても、そのバイオマーカーとして使用することができる。
【0028】
第1の本発明の頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用する方法の対象となる生物(例えば、検体組織の由来となる生物や、被検体となる生物)の種類としては、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ等の哺乳動物を好適に例示することができ、中でもヒト、マウスをより好適に例示することができ、特にヒトを好適に例示することができる。
【0029】
上記の本件CpG部位におけるメチル化頻度が、頭頸部腫瘍組織又は頭頸部腫瘍被検体の血液においてコントロールと比較して増加するかどうかは、後述のパイロシークエンス法、メチル化特異的PCR(MSP:Methylation-specific PCR)法(Herman JG et al., Proc NatlAcad Sci U S A 93:9821-6, 1996参照)、HM−PCR(HeavyMethyl PCR)法(Cottrell SE et al., Nucleic Acids Res 32:e10, 2004参照)等の従来のDNAメチル化検出方法により確認することができる。
【0030】
第1の本発明の頭頸部腫瘍の判定方法としては、(A)頭頸部の検体組織又は被検体の血液からゲノムDNAを抽出する工程:(B)抽出したゲノムDNA中の、本件CpG部位におけるメチル化頻度を測定する工程:(C)工程(B)において測定した遺伝子のメチル化の頻度を、コントロールとしての、検体組織と同種の非がん組織又は被検体と同種の非がん被検体の血液から抽出したゲノムDNA中の同遺伝子のメチル化の頻度と比較・評価する工程:を備えている(含んでいる)限り特に制限されないが、さらに、(D)工程(B)において測定した遺伝子のメチル化の頻度が、コントロールにおける同遺伝子のメチル化の頻度と比較して増加している場合に頭頸部腫瘍であると評価する工程を備えた方法を好適に例示することができる。なお、上記工程(A)において頭頸部の検体組織を用いた場合は、上記工程(C)におけるコントロールとして、検体組織と同種の非がん組織(好ましくは正常組織又は異形成組織)を用い、上記工程(A)において被検体の血液を用いた場合は、上記工程(C)におけるコントロールとして、被検体と同種の非がん被検体(好ましくは正常被検体又は異形成被検体)の血液を用いる。
【0031】
上記(A)工程におけるゲノムDNAを抽出する方法としては、頭頸部の検体組織中又は被検体の血液中から、ゲノムDNAを抽出する方法である限り特に制限されず、例えば、MagNA PureLC DNA Isolation Kit I(ロシュ・ダイアグノスティックス製)やQIAamp DNA Blood Midi Kit(QIAGEN製)などの市販品を添付のプロトコールにしたがって用いる方法の他、後述の実施例に記載されているような、フェノール・クロロホルム処理及びイソプロパノール沈殿等を利用した常法(Molecular Cloning第3版Volume1のプロトコール参照)を例示することができる。
【0032】
上記(B)工程中における、抽出したゲノムDNA中の本件CpG部位におけるメチル化頻度を測定する方法としては、抽出したゲノムDNA中の本件CpG部位におけるメチル化頻度を測定し得る限り特に制限されないが、工程(B)として、抽出したゲノムDNAにおいてメチル化シトシンと非メチル化シトシンを判別するために、該抽出したゲノムDNAに化学的又は酵素的処理を行うための試薬を添加した後、該ゲノムDNA中の本件CpG部位におけるメチル化頻度を測定する工程を好適に例示することができる。上記の酵素的処理としては、制限酵素処理を挙げることができ、上記の化学的処理としては、亜硫酸水素塩(バイサルファイト)処理を例示することができる。
【0033】
制限酵素処理を利用した手法とは、DNAのメチル化部位の検出を、メチル化感受性制限酵素を用いて行う方法であり、最も古典的な方法である。この方法は、制限酵素の認識配列中のシトシンがメチル化されることで、DNAを切断できなくなる現象を利用している。必要な反応時間は、制限酵素の種類により異なるが、1〜数時間程度である。また、これまでは、制限酵素を用いていることから検出可能な配列が限られていたが、現在では、入手可能なメチル化感受性制限酵素は100種類以上あり、認識配列も多彩であるため、標的とするDNA領域のほとんどを切断することが可能である。メチル化部位の決定は、生じたDNA断片の鎖長をゲル電気泳動によって判別することによって行う。この手法には、インタクトなDNAを使用できるため、迅速な検出が可能ではあるが、検出できるのは制限酵素の認識配列であるために、認識部位に変異が生じている場合は偽陰性となるなど、精度の点で以下のバイサルファイト法に劣っている。
【0034】
また、バイサルファイト処理を利用したバイサルファイト法とは、バイサルファイト処理によって、シトシンをウラシルに変換するバイサルファイト反応を利用した方法であり、現在最も一般的に用いられている方法である。このバイサルファイト反応は5−メチルシトシンでは非常に緩徐にしか進まないため、適当な条件下で反応を行うと、メチル化されたシトシンはそのまま変換しないが、メチル化されていなかったシトシンはウラシルに変換されることとなる。メチル化の有無は、バイサルファイト反応後のDNA配列をテンプレートとしたPCRを行って、得られたPCR産物をシーケンシングして検出したり、あるいは、バイサルファイト反応後のDNAのうち、シトシンが変換されていないDNA配列に特異的にハイブリダイズし得るプローブや、ウラシルに変換されたDNA配列に特異的にハイブリダイズし得るプローブを利用したハイブリダイゼーションを行うことによって検出することができる。バイサルファイト反応の時間は一般的に16時間(一晩)程度であるが、問題点として、非特異的切断反応によりほとんどのサンプルの断片化が起こる点が挙げられる。このバイサルファイト法を利用したものとして、以下の(i)〜(iv)の4つの方法等を好適に例示することができる。
【0035】
(i)バイサルファイトシーケンシング法
サンプルであるゲノムDNAに対してバイサルファイト処理を行うことによって、ゲノムDNAにおける、メチル化修飾を受けたシトシンはそのまま変換せず、非メチル化シトシンのみをウラシルに変換させる。このゲノムDNAについてシーケンス反応を行うと、ウラシルはチミンとして表現されることとなる。バイサルファイト処理前後のゲノムDNAの配列データを比較し、バイサルファイト処理前後のいずれもシトシンである部位はメチル化シトシンであることが分かり、バイサルファイト処理前にシトシンでありバイサルファイト処理後にチミンとなった部位は非メチル化シトシンであることが分かる。
【0036】
(ii)メチル化特異的PCR(MSP、methylation-specific PCR)法
サンプルであるゲノムDNAに対してバイサルファイト処理を行うと、メチル化DNAと非メチル化DNAとはCpG部位が異なる塩基配列を持つこととなる。このことを利用して、各々において異なる塩基配列の部位に特異的なPCRプライマーを設計して、PCR産物の有無でメチル化状態を検出する方法である。このMSP法では、バイサルファイト処理をしたDNAをそのまま解析に使うことができるため、短時間で結果を確認することが可能である。
【0037】
(iii)COBRA(combined bisulfite restriction analysis)法
バイサルファイト処理による変化により、制限酵素認識塩基配列が生じることを利用し、酵素処理後のPCR産物を電気泳動することによりメチル化を検出する方法である。認識部位のメチル化状態の有無の比を、切断の有無の量比にて定量的に検出できる。
【0038】
(iv)HumanMethylation27 BeadChip(イルミナ株式会社製)を用いた方法
この方法は、バイサルファイトシーケンシング法の1種であるバイサルファイトピロシーケンシング法に類似した方法であり、後述の実施例で用いている方法でもある。サンプルから抽出したゲノムDNAについてバイサルファイト処理を行った後、制限酵素によってDNAを断片化し、該DNA断片上の各CpG部位におけるメチル化頻度(メチル化レベル)を、付属のBeadChipを用いて検出する。このBeadChipには、各CpG部位のシトシンがウラシルに変換したDNA配列に特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドプローブ(非メチル検出用プローブ)と、変換していないDNA配列に特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドプローブ(メチル検出用プローブ)が各種の遺伝子についてそれぞれ固定されている。それぞれのプローブにハイブリダイズしたDNA断片の量を蛍光で簡便に検出することによって、ゲノムDNA上のそのCpG部位におけるメチル化頻度を測定することができる。CpG部位におけるメチル化頻度の好適な指標として、β値を挙げることができる。β値とは、測定によって得られた、各CpG部位に対応する非メチル検出用プローブの蛍光値(signal A)、及び、メチル検出用プローブの蛍光値(signal B)について、以下の計算式により算出される値である。
β=(そのCpG部位におけるsignal Bの最大値)/(そのCpG部位におけるsignal Aの最大値+そのCpG部位におけるsignal Bの最大値+100);
この計算式によると、各CpG部位のメチル化頻度が、0(完全非メチル化)〜1(完全メチル化)の範囲で算出されることとなる。
【0039】
本発明における判定キットとしては、本件CpG部位のうち、いずれかのCpG部位において、そのCpG部位のポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを備えている限り特に制限されないが、遺伝子群から選ばれるその遺伝子のCpG部位において、そのCpG部位のシトシンがウラシルとなったポリヌクレオチドをさらに備えていることが、かかるCpG部位におけるメチル化頻度をより正確に測定することが可能となる点で好ましい。これらのポリヌクレオチドの配列は、NCBIのデータベース等を参照して、本件CpG部位近辺のポリヌクレオチド配列を調べることによって、適宜決定することができる。かかるポリヌクレオチドの具体例として、HumanMethylation27 BeadChip(イルミナ株式会社製)のBeadChipに固定されたポリヌクレオチドを好適に挙げることができる。本発明における判定キットの使用方法としては、HumanMethylation27 BeadChip(イルミナ株式会社製)に添付のプロトコールに記載された方法を例示することができる。
【0040】
上記(C)工程の「工程(B)において測定した遺伝子のメチル化の頻度を、コントロールとしての、検体組織と同種の非がん組織又は被検体と同種の非がん被検体の血液から抽出したゲノムDNA中の同遺伝子のメチル化の頻度と比較・評価する工程」におけるコントロールとしては、より正確な評価が可能となることから、検体組織と同一個体における同種の非がん組織(好ましくは正常組織又は異形成組織)であることが好ましい。なお、コントロールとしての検体組織と同種の非がん組織又は被検体と同種の非がん被検体の血液は、検体組織又は被検体の血液を採取する際にかならずしも採取する必要はなく、非がん組織又は非がん被検体の血液から抽出したゲノムDNA中の、本件CpG部位におけるメチル化頻度についてあらかじめ検量線を作成し、それとの比較・評価を行なってもよい。また、コントロールには、被検体と同じ生物種のもの(被検体がヒトである場合にはヒトのもの)を用いることが好ましいことは言うまでもない。
【0041】
このように検体組織又は被検体の血液から抽出したゲノムDNA中の、本件CpG部位におけるメチル化頻度に基づいて、その検体組織又はその被検体が頭頸部腫瘍であるかどうかを判定することができる。より具体的には、工程(B)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度が、コントロールにおける同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較して増加している場合に、頭頸部腫瘍であると評価する(工程(D))こととなり、結果として、頭頸部腫瘍であると判定することができる。
【0042】
本件CpG部位の中でも、SH3BGRL3、ZNF329、CALM1、INPP5E、VTI1B、CKS2、KIAA0256、ZPBP、HIVEP3、SEMA3B、TMEM24、DUSP1、ZCCHC17、CXCL10、NOX4、FILIP1、RAP1GA1、C14orf2、CCDC11、IL17RC、SHANK2、HOXA11、ATPIF1、PDZRN3等の遺伝子のCpG部位は、非がん組織においてほとんどメチル化されていないため、頭頸部腫瘍であるかどうかをより正確に判定することが可能である点で好ましい。
【0043】
頭頸部腫瘍であると判定する場合のメチル化頻度(好ましくは前述のβ値)の増加の程度としては、例えば、コントロールに対する相対頻度(コントロールにおけるメチル化頻度を1としたときの相対頻度)として好ましくは10以上、より好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上、さらにより好ましくは50以上となる場合を挙げることができ、また、別の指標としては、コントロールにおける前述のβ値と比較して好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.4以上、さらにより好ましくは0.5以上高いβ値となる場合を挙げることができる。
【0044】
第1の本発明の頭頸部腫瘍治療薬のスクリーニング方法としては、(a)頭頸部腫瘍に罹患した非ヒト動物に被検物質を投与する工程:(b)前記非ヒト動物における頭頸部腫瘍組織又は血液から抽出したゲノムDNA中の、本件CpG部位におけるメチル化頻度を測定する工程:(c)工程(b)において測定した遺伝子のメチル化の頻度を、コントロール非ヒト動物における頭頸部腫瘍組織又は血液から抽出したゲノムDNA中の同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較・評価する工程:を含んでいる限り特に制限されないが、さらに、(d)工程(b)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度が、コントロール非ヒト動物における同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較して低下している場合に、その被検物質を頭頸部腫瘍治療薬であると評価する工程:を含んでいることが好ましい。上記非ヒト動物の種類としては、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ等の非ヒト哺乳動物を好適に例示することができ、中でもマウス、ラットをより好適に例示することができる。また、頭頸部腫瘍に罹患した非ヒト動物としては、頭頸部腫瘍を自然に罹患した非ヒト動物であってもよいし、発がん物質で頭頸部腫瘍を誘導した非ヒト動物であってもよい。
【0045】
上記(b)工程における本件CpG部位におけるメチル化頻度を測定する方法としては、上記(B)工程中における、抽出したゲノムDNA中の本件CpG部位におけるメチル化頻度を測定する方法と同様の方法を用いることができる。上記(c)工程におけるコントロール非ヒト動物としては、上記工程(a)に用いた頭頸部腫瘍に罹患した非ヒト動物に、被検物質を投与しなかったものを好適に例示することができる。上記(d)工程にあるように、工程(b)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度が、コントロール非ヒト動物における同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較して低下している場合に、その被検物質を頭頸部腫瘍治療薬であると評価することなり、結果として、そのような被検物質を頭頸部腫瘍治療薬とすることができる。頭頸部腫瘍組織又は血液から抽出したゲノムDNA中の本件CpG部位におけるメチル化頻度の過度の増加を正常化方向にシフトさせるような被検物質は、頭頸部腫瘍治療薬として用いうる可能性が高いと考えられる。
【0046】
なお、(c)工程に代えて、(e)コントロールとしての、頭頸部腫瘍組織と同種の非がん組織(好ましくは正常組織)又は被検体と同種の非がん被検体(好ましくは正常被検体)の血液におけるマイクロRNAの発現量と比較・評価する工程:を採用することができる。(e)工程における比較・評価する方法としては、本件CpG部位におけるメチル化頻度が、コントロールと比較して有意差がない場合に、その被検物質が頭頸部腫瘍治療薬である可能性が高いと判定することができる。
【0047】
本件CpG部位の中でも、SH3BGRL3、ZNF329、CALM1、INPP5E、VTI1B、CKS2、KIAA0256、ZPBP、HIVEP3、SEMA3B、TMEM24、DUSP1、ZCCHC17、CXCL10、NOX4、FILIP1、RAP1GA1、C14orf2、CCDC11、IL17RC、SHANK2、HOXA11、ATPIF1、PDZRN3等の遺伝子のCpG部位は、非がん組織においてほとんどメチル化されていないため、被検物質が頭頸部腫瘍治療薬である可能性をより正確に判定することが可能である点で好ましい。
【0048】
なお、本件CpG部位を2種類以上、頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして併用すると、頭頸部腫瘍の判定や、頭頸部腫瘍治療薬である可能性をより正確に判定することが可能となる点で好ましい。
【0049】
2.第2の本発明(マイクロRNAに関する発明)
第2の本発明の頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用する方法としては、miR−10b(マイクロRNA−10b)、miR−126(マイクロRNA−126)、miR−147(マイクロRNA−147)、miR−200a(マイクロRNA−200a)、miR−200b(マイクロRNA−200b)、miR−429(マイクロRNA−429)、miR−612(マイクロRNA−612)、miR−639(マイクロRNA−639)、miR−643(マイクロRNA−643)及びmiR−675(マイクロRNA−675)からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNA(以下、「本件マイクロRNA」ともいう。)を、喉頭がん等の頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用する方法である限り特に制限はされず、具体的には、本発明の頭頸部腫瘍の判定方法や、本発明の頭頸部腫瘍の判定に使用する方法や、本発明の頭頸部腫瘍治療薬のスクリーニング方法を例示することができる。
【0050】
上記の頭頸部腫瘍における腫瘍の種類としては、頭頸部がん、頭頸部異形成、頭頸部ポリープ、扁平上皮がんを例示することができ、頭頸部がん、頭頸部異形成、扁平上皮がんを好適に例示することができ、頭頸部がん、扁平上皮がんをより好適に例示することができる。また、本明細書中の頭頸部腫瘍における頭頸部としては、口唇・口腔、鼻・副鼻腔、唾液腺、耳・側頭骨、頭蓋底等の頭部や、咽頭、喉頭、食道、甲状腺等の頸部を挙げることができるが、頸部を好適に例示することができ、中でも喉頭をより好適に例示することができる。頭頸部の腫瘍は、多くの場合、喉頭がん同様その組織型が扁平上皮細胞由来と考えられるため、本件マイクロRNAは、喉頭がん以外の頭頸部腫瘍についても、そのバイオマーカーとして使用することができる。
【0051】
本件マイクロRNAの由来となる生物としては、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ等の哺乳動物を好適に例示することができ、中でもヒト、マウスをより好適に例示することができ、特にヒトを好適に例示することができる。ヒト由来の本件マイクロRNAであるmiR−10b、miR−126、miR−147、miR−200a、miR−200b、miR−429、miR−612、miR−639、miR−643及びmiR−675の各ヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号1〜10に示される。マイクロRNAの配列は特に哺乳動物間では保存性が高く、上記の本件マイクロRNAはヒト以外の哺乳動物においてもヒトと同様の発現プロファイルを示すと考えられる。
【0052】
また、本件マイクロRNAには、配列番号1〜10に示されるヌクレオチド配列において1若しくは2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、頭頸部腫瘍組織又は頭頸部腫瘍被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAが便宜上含まれる。上記の「1若しくは2個以上」としては、1〜5個が好ましく、1〜3個がより好ましく、1〜2個が特に好ましく、1個がさらに好ましい。なお、上記の欠失等されたヌクレオチド配列からなるRNAが、頭頸部腫瘍組織又は頭頸部腫瘍被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するかどうかは、例えば後述のマイクロアレイ法や定量PCR法により容易に確認することができる。なお、ヒト以外の上記の各生物からの本件マイクロRNAの配列は、GenBank等のデータベースに登録されている情報に基づいて確認又は特定することができる。また、上記の頭頸部腫瘍被検体とは、頭頸部腫瘍に罹患した被検体を意味する。本明細書における「被検体」としては、対象となるヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ等の哺乳動物を好適に例示することができ、中でもヒト、マウスをより好適に例示することができ、特にヒトを好適に例示することができる。
【0053】
第2の本発明の頭頸部腫瘍の判定方法としては、(A)頭頸部の検体組織中又は被検体の血液中のRNAを抽出する工程:(B)抽出したRNA中の、本件マイクロRNA量を測定する工程:(C)コントロールとしての、検体組織と同種の正常組織又は正常被検体の血液におけるマイクロRNAの発現量と比較・評価する工程:を備えている(含んでいる)限り特に制限されないが、抽出したRNA中の、miR−10b、miR−126、miR−147、miR−200a、miR−200b、miR−429、miR−612、miR−639、miR−643及びmiR−675からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量が、コントロールと比較して低下している場合に喉頭がん等の頭頸部腫瘍であると評価する方法を好適に例示することができる。なお、上記工程(A)において頭頸部の検体組織を用いた場合は、上記工程(C)におけるコントロールとして、検体組織と同種の非がん組織(好ましくは正常組織)を用い、上記工程(A)において被検体の血液を用いた場合は、上記工程(C)におけるコントロールとして、被検体と同種の非がん被検体(好ましくは正常被検体)の血液を用いる。また、本明細書におけるマイクロRNAの発現量としては、サンプル間のばらつきを補正するために適切な内部標準遺伝子で補正した相対発現量を用いることがより正確な判定を行なう観点から好ましい。内部標準遺伝子としては特に制限されないが、RNU48、RNU6b、snRNA(核内低分子RNA)、及び、snoRNA(核小体低分子RNA)からなる群から選ばれる1種又は2種以上の遺伝子を例示することができる。
【0054】
上記(A)工程におけるRNAを抽出する方法としては、頭頸部の検体組織中又は被検体の血液中から、マイクロRNAを含むRNAを抽出する方法である限り特に制限されず、例えば、mirVana miRNA Isolation Kit(Applied Biosystems社製)を添付のプロトコールにしたがって用いることによって、マイクロRNAを含むトータルRNAを抽出する方法を好適に例示することができる。上記の頭頸部の検体組織としては、頭頸部腫瘍の判定の対象となる生物由来の頭頸部の組織である限り特に制限されず、上記生物としては、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ等の哺乳動物を好適に例示することができ、中でもヒト、マウスをより好適に例示することができ、特にヒトを好適に例示することができる。
【0055】
上記(B)工程における本件マイクロRNAの発現量を測定する方法としては、マイクロRNAを含むRNA中の本件マイクロRNA量を同定し得る方法である限り特に制限されず、例えば本発明の喉頭がん等の頭頸部腫瘍の判定キット、すなわち、本件マイクロRNAの発現量を測定することができる、本件マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を備えたマイクロアレイを含んでいる頭頸部腫瘍の判定キットや、本件マイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットを備えた頭頸部腫瘍の判定キットや、本件マイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットと、本件マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を含む蛍光プローブとを備えた頭頸部腫瘍の判定キットを用いる方法や;本発明の喉頭がん等の頭頸部腫瘍の判定に使用する方法、すなわち、本件マイクロRNAの発現量を測定することができる、本件マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を備えたマイクロアレイを頭頸部腫瘍の判定に使用するマイクロアレイ法や、本件マイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットを頭頸部腫瘍の判定に使用する定量PCR法や、本件マイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットと、本件マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を含む蛍光プローブとを、頭頸部腫瘍の判定に使用する定量PCR法(蛍光プローブ法);を好適に例示することができる。
【0056】
上記のマイクロアレイ法としては、本件マイクロRNAの発現量を測定することが可能である限り特に制限されないが、組織から抽出したRNAをラベル(好ましくは蛍光ラベル)で標識し、そのRNAを、同定対象とするマイクロRNAに相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド(好ましくはDNA)又はその一部からなるプローブが固定されたマイクロアレイに接触させてハイブリダイゼーションを行った後、マイクロアレイを洗浄して、マイクロアレイ上に残ったマイクロRNAの発現量を測定する方法を例示することができる。
【0057】
上記の核酸配列のヌクレオチドの種類としては、本発明における所定のマイクロRNAに特異的にハイブリダイズし得る限り特に制限されないが、安定性が高いことからDNAであることが好ましい。また、上記のポリヌクレオチドの一部の長さとしては、本発明における所定のマイクロRNAに特異的にハイブリダイズし得る限り特に制限されないが、ハイブリダイゼーションの安定性を確保する観点から、10〜100merであることが好ましく、10〜40merであることがより好ましい。なお、上記のポリヌクレオチド又はその一部は、当該技術分野において周知の方法を用いて化学合成等することにより得ることができる。
【0058】
上記のポリヌクレオチド又はその一部を固定するアレイとしては特に制限されないが、ガラス基板やシリコン基板等を好適に例示することができ、ガラス基板をより好適に例示することができる。上記のポリヌクレオチド又はその一部をアレイに固定する方法としては特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
【0059】
また、第2の本発明のマイクロアレイを含んでいる頭頸部腫瘍の判定キットには、前述のマイクロアレイの他に、例えばRNAのラベル化反応に用いる試薬、ハイブリダイゼーション反応に用いる試薬、洗浄に用いる試薬、組織からのRNA抽出に用いる試薬等の、マイクロアレイ法に用いる試薬などの任意の要素をさらに含んでいてもよい。
【0060】
そして、マイクロアレイ法としては、Agilent Human miRNAV2 (Agilent Technologies社製)をAgilent Technologies社のmiRNA Microarray protocol Version 1.5に記載の方法に従って用い、DNA Microarray Scanner (Agilent Technologies社製)でマイクロRNAの発現量を測定する方法をより具体的に例示することができる。上記のポリヌクレオチド又はその一部からなるプローブが固定されたマイクロアレイは、測定対象とする本件マイクロRNAの配列情報に基づいてポリヌクレオチドを合成し、それを市販のアレイに固定するなどして作製することができる。
【0061】
上記の定量PCR法としては、本件マイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットを用いる方法であり、かつ、本件マイクロRNAの発現量を測定することが可能である限り特に制限されず、アガロース電気泳動法、SYBRグリーン法、蛍光プローブ法等の通常の定量PCR法を用いることができるが、定量の精度や信頼性の点で、蛍光プローブ法が最も好ましい。
【0062】
定量PCR法におけるプライマーセットとは、本件マイクロRNAの配列を増幅し得るプライマー(ポリヌクレオチド)の組合せを意味する。上記プライマーとしては、本件マイクロRNAの配列を増幅し得る限り特に制限されないが、本発明における所定のマイクロRNAの配列の5’側の一部の配列からなるプライマー(フォワードプライマー)と、そのマイクロRNAの配列の3’側の一部の配列に相補的な配列からなるプライマー(リバースプライマー)とからなるプライマーセットを例示することができる。ここで、5’側とは、成熟型マイクロRNAの配列において比較した場合に、リバースプライマーに対応する配列よりも、5’側であることを意味し、3’側とは、成熟型マイクロRNAの配列において比較した場合に、フォワードプライマーに対応する配列よりも、3’側であることを意味する。
【0063】
マイクロRNAの5’側の配列として、好ましくは、そのマイクロRNAの配列の中央の核酸よりも5’側の配列を例示することができ、マイクロRNAの3’側の配列として、好ましくは、そのマイクロRNAの配列の中央の核酸よりも3’側の配列を例示することができる。また、それぞれのプライマーの長さとしては、マイクロRNAを増幅し得る限り特に制限されないが、7〜10merのポリヌクレオチドであることが好ましい。なお、上記プライマーであるポリヌクレオチドのヌクレオチドの種類としては、安定性が高いことからDNAであることが好ましい。
【0064】
上記の蛍光プローブとしては、本件マイクロRNAの配列に相補的な核酸配列からなるポリヌクレオチド又はその一部を含んでいる限り特に制限されず、TaqMan(登録商標)プローブ法(FRET原理を利用したものも含む)や、サイクリングプローブ法に用いうる蛍光プローブを好適に例示することができ、特にTaqMan(登録商標)プローブ法(FRET原理を利用したものも含む)に用いうる蛍光プローブをより好適に例示することができる。TaqMan(登録商標)プローブ法(FRET原理を利用したものを除く)や、サイクリングプローブ法に用いうる蛍光プローブとしては、5’側に蛍光色素を標識し、3’側に消光物質を標識した蛍光プローブを例示することができ、FRET原理を利用した蛍光プローブとしては、5’側と3’側に、それぞれドナー色素とアクセプター色素を標識した蛍光プローブを例示することができる。上記の蛍光色素、消光物質、ドナー色素、アクセプター色素等は、市販のものを適宜使用することができる。
【0065】
上記の蛍光プローブにおける核酸配列のヌクレオチドの種類としては、本件マイクロRNAに特異的にハイブリダイズし得る限り、特に制限されないが、安定性が高いことからDNAであることが好ましい。また、上記のポリヌクレオチドの一部の長さとしては、本発明における所定のマイクロRNAに特異的にハイブリダイズし得る限り、特に制限されないが、ハイブリダイゼーションの安定性を確保する観点から、10mer以上であることが好ましく、15mer以上であることがより好ましく、対象とするマイクロRNAの全長のヌクレオチド数から1〜3mer少ないヌクレオチド数であることがさらに好ましい。
【0066】
上記プライマーセットや、上記の蛍光プローブは、その配列情報に基づき当該技術分野において周知の方法を用いて化学合成等することにより得ることができる。上記のプライマーセットや蛍光プローブを用いた定量PCRの具体的な方法としては、TaqMan(登録商標)マイクロRNA Assays(Applied Biosystems社製)を、添付のプロトコールにしたがって使用する方法を好適に例示することができる。また、プライマーセットと蛍光プローブとを備えた本発明の頭頸部腫瘍の判定キットには、前述のプライマーセットの他に、例えばポリメラーゼ等の定量PCR反応に用いる試薬などの任意の要素をさらに含んでいてもよい。
【0067】
上記(C)工程のコントロールとしての、検体組織と同種の非がん組織(例えば検体組織が喉頭組織である場合は、非がんである喉頭組織)におけるマイクロRNAの発現量と比較・評価する方法におけるコントロールとしては、より正確な評価が可能となることから、検体組織と同一個体の組織(非がん組織)であることが好ましい。なお、コントロールとしての検体組織と同種の非がん組織又は被検体と同種の非がん被検体の血液は、検体組織又は被検体の血液を採取する際にかならずしも採取する必要はなく、非がん組織中又は非がん被検体の血液中の本件マイクロRNAの発現量についてあらかじめ検量線を作成し、それとの比較・評価を行なってもよい。
【0068】
このように検体組織中又は被検体の血液中のRNAに含まれるマイクロRNAの発現量に基づいて、その検体組織又はその被検体が頭頸部腫瘍であるかどうかを判定することができる。前記のように、本件マイクロRNAの発現量が、コントロールと比較して低下している場合に頭頸部腫瘍であると判定することができる。
【0069】
2種類以上の本件マイクロRNAの発現量を測定してコントロールと比較・評価することにより、喉頭がん等の頭頸部腫瘍であるかどうかをより正確に判定することが可能となる点で好ましい。また、本件マイクロRNAの中でも、被検体が頭頸部腫瘍に罹患している場合に、被検体の血液中の濃度も変化するマイクロRNAは、採取が極めて容易な血液サンプルを利用することができるため、頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用する方法や、頭頸部腫瘍の判定方法等における迅速性や簡便性が特に優れている点で、極めて好ましい。
【0070】
頭頸部腫瘍であると判定する場合の本件マイクロRNAの発現量の低下の程度としては、例えば、コントロールに対する割合として好ましくは25%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは75%以上の低下であることを挙げることができる。
【0071】
また、第2の本発明の頭頸部腫瘍の判定方法は、上記(A)〜(C)工程に加えて、さらに(D)抽出したRNA中のlet−7 family、miR−17−92 cluster、miR−15、及びmiR−16からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAの発現量を測定し、コントロールとしての、検体組織と同種の非がん組織(好ましくは正常組織)又は被検体と同種の非がん被検体(好ましくは正常被検体)の血液における前記マイクロRNAの発現量と比較・評価する工程:を含むことができる。
【0072】
この(D)工程における各マイクロRNA(let−7 family、miR−17−92 cluster、miR−15、及びmiR−16)は、頭頸部腫瘍以外の腫瘍において異常発現が認められるため、(B)工程の同定・評価の結果、検体組織又は被検体が頭頸部腫瘍であると判定された場合に、さらに(D)工程におけるマイクロRNAの異常発現が認められるときは、頭頸部腫瘍以外の腫瘍巣が存在すると判定することができる。なお、マイクロRNAlet−7 familyは肺腫瘍組織で、miR−15及びmiR−16は慢性リンパ性白血病あるいは膵臓腫瘍組織で発現が減少することが知られており、miR−17−92 clusterはB細胞リンパ腫あるいは肺腫瘍組織で発現が増加することが知られている。
【0073】
第2の本発明の頭頸部腫瘍治療薬のスクリーニング方法としては、(a)頭頸部腫瘍に罹患した非ヒト動物に被検物質を投与する工程:(b)前記非ヒト動物における頭頸部腫瘍組織中又は血液中の、本件マイクロRNAの発現量を測定する工程:(c)工程(b)において測定した本件マイクロRNAの発現量を、コントロール非ヒト動物における本件マイクロRNAの発現量と比較・評価する工程:を含んでいる限り特に制限されないが、(d)工程(b)において測定した本件マイクロRNAの発現量が、コントロール非ヒト動物における本件マイクロRNAの発現量と比較して上昇している場合に、その被検物質を頭頸部腫瘍治療薬であると評価する工程をさらに含んでいることが好ましい。マイクロRNAは、mRNAに結合するなどして、その遺伝子の発現を抑制するなどの性質が報告されているため、頭頸部腫瘍組織又は血液中における上記マイクロRNAの異常発現を正常化方向にシフトさせるような被検物質は、頭頸部腫瘍治療薬として用いうる可能性が高いと考えられる。 なお、(c)工程に代えて、(e)コントロールとしての、腫瘍組織と同種の非がん組織(好ましくは正常組織)又は被検体と同種の非がん被検体(好ましくは正常被検体)の血液におけるマイクロRNAの発現量と比較・評価する工程:を採用することができる。(e)工程における比較・評価する方法としては、本件マイクロRNAの発現量が、コントロールと比較して有意差がない場合に、その被検物質が頭頸部腫瘍治療薬である可能性が高いと判定することができる。
【0074】
また、上述のマイクロRNAを2種類以上、頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして併用すると、頭頸部腫瘍治療薬である可能性をより正確に判定することが可能となる点で好ましい。また、本件マイクロRNAの中でも、被検体が頭頸部腫瘍に罹患している場合に、被検体の血液中の濃度も変化するマイクロRNAは、採取が極めて容易な血液サンプルを利用することができるため、頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用する方法や、頭頸部腫瘍の判定方法等における迅速性や簡便性が特に優れている点で、極めて好ましい。
【0075】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0076】
[サンプル組織の採取及びDNAの抽出]
慶應義塾大学医学部ならびに佐野厚生総合病院の倫理委員会の承認のもと、慶應義塾大学病院又は佐野厚生総合病院の耳鼻咽喉科外来を受診した患者を選定し、サンプル提供の依頼対象者とした。その上で、その対象者からインフォームド・コンセントを得た後、5人の各対象者としてT532(前がん病変)、T433(早期がん)、T415(進行がん)、T505(進行がん)、T517(進行がん)から、5種類のサンプル組織を採取した。これらの各対象者の疾患背景、及び、採取したサンプル組織の状態を表2に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
採取したこれらの組織のそれぞれの一部から、常法(Molecular Cloning第3版Volume1のプロトコール参照)によりゲノムDNAの抽出を行った。具体的には以下のような方法で行った。採取した組織10〜20mg程度を1.5mLチューブに入れた。そのチューブに100μLの抽出バッファ(10mMのTris−HCl、100mMのEDTA、20mMのNaCl、1%(w/v)のSDS)を加え、ハサミで組織を刻んだ。次いで、150μg/mLのプロテイナーゼKを含む、400μLの前述の抽出バッファを添加して、55℃で1時間インキュベートした。そして、フェノール・クロロホルムを添加して混合し、15000rpmで10分間遠心した後、上清を分取して別のチューブに入れた。そこに、クロロホルムを添加して混合し、15000rpmで10分間遠心した後、上清を分取して別のチューブに入れた。次に、QIAGEN社製のRNaseAを1μL添加し、37℃で1時間インキュベートして、RNase処理を行った。次いで、フェノール・クロロホルムを添加して混合し、15000rpmで10分間遠心した後、上清を分取して別のチューブに入れた。そこに、クロロホルムを添加して混合し、15000rpmで10分間遠心した後、上清を分取して別のチューブに入れた。10分の1容量の3M酢酸ナトリウムを添加したイソプロパノールを添加して、15000rpmで5分間遠心してイソプロパノール沈殿を行った。沈殿(ゲノムDNA)を2回洗浄した後、溶解バッファを添加し、37℃で一晩放置して沈殿を溶解させて、ゲノムDNA溶液を得た。このゲノムDNA溶液を用いるまでは、4℃で保存を行った。
【実施例2】
【0079】
[抽出したゲノムDNA上の遺伝子のメチル化頻度の測定]
実施例1で抽出したゲノムDNAにおける遺伝子のメチル化頻度を網羅的に測定するべく、バイサルファイト・パイロシークエンス法の変法であるHumanMethylation27 BeadChip(イルミナ株式会社製)を用いた解析を行った。この解析により、14495種類のヒト遺伝子の27578箇所のCpG部位におけるメチル化頻度を測定することが可能である。この解析の方法は、HumanMethylation27 BeadChip(イルミナ株式会社製)に添付のプロトコールの方法にしたがったものであるが、以下に概要を説明する。
【0080】
抽出したゲノムDNAの濃度を前述のPicoGreen dsDNA Quantitation Kitにて測定し、また、ゲノムDNAの断片化の有無を電気泳動法によって確認することによって、ゲノムDNAの品質を確認した。次に、このゲノムDNAに対して、Zymo EZ DNA Methylation Kit(ZYMO RESEARCH社製)を使用して、バイサルファイト(亜硫酸水素塩)処理を行い、ゲノムDNA上でメチル化されていないシトシンをウラシルへ変換させた。バイサルファイト処理したゲノムDNAについて全ゲノム増幅によって1000倍以上に増幅した後、酵素処理によって300〜600bp程度に断片化した。得られたDNA断片を抽出し、変性させて1本鎖とした後、前述のHumanMethylation27 BeadChip上の各オリゴヌクレオチドとハイブリダイゼーション反応させた。このBeadChip上には、各CpG部位のシトシンがウラシルに変換したDNA配列に特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドプローブ(非メチル検出用プローブ)と、変換していないDNA配列に特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドプローブ(メチル検出用プローブ)が各種の遺伝子についてそれぞれ固定されている。ハイブリダイゼーション反応させたBeadChipに対して、ビオチンラベルしたddCTP及びddGTPと、DNPラベルしたddATP及びddUTPを用いた1塩基伸長反応を行った。次に、このBeadChipについて、Cy3ラベルしたストレプトアビジン及びCy5ラベルした抗DNP一次抗体で染色し、次いで、ビオチン化抗ストレプトアビジン二次抗体及びビオチン化抗DNP二次抗体で対比染色して、免疫組織化学的分析を行った。このBeadChip上の蛍光をBeadXpress(登録商標)Reader(イルミナ株式会社製)で読み取り、各CpG部位に対応する非メチル検出用プローブの蛍光値(signal A)、及び、メチル検出用プローブの蛍光値(signal B)を測定した。測定して得られた生データ(Raw Data)について、以下の計算式によって、そのCpG部位のメチル化頻度(β)を算出した。
β=(そのCpG部位におけるsignal Bの最大値)/(そのCpG部位におけるsignal Aの最大値+そのCpG部位におけるsignal Bの最大値+100);
この計算式によると、各CpG部位のメチル化頻度が、0(完全非メチル化)〜1(完全メチル化)(メチル化しているCpG部位の割合がほぼ0%〜100%に相当)の範囲で算出されることとなる。
【0081】
以上の解析の結果、ヒト遺伝子の27578箇所のCpG部位におけるメチル化頻度が明らかとなった。次に、これらのメチル化頻度を利用して、喉頭がん特異的なメチル化部位を以下の(A)及び(B)の2つの手法によりスクリーニングを行った。
【0082】
手法(A)(前がん病変(T532)と早期がん(T433)のβ値の差によるスクリーニング)
(1)まず、β値の関係が、前がん病変<早期がん<進行がんとなる遺伝子を、全遺伝子から選択した。具体的には以下のような処理を行った。5検体間におけるメチル化頻度の差が大きいものに絞り込むため、Cluster 3.0解析ソフトを用いて、MaxVal-MinValを0.5に設定することで、階層的クラスター解析法によるクラスタリングを行い、メチル化遺伝子のheat mapを作成した。これにより、5検体間におけるβ値の最大値と最小値の差が0.5以上の遺伝子が明らかとなった。
(2)次に、β値の関係が、早期がん(T433)−前がん病変(T532)>0、かつ、早期がん(T433)<進行がん(T415、T505、T517)となる遺伝子を選択した。具体的には以下のような処理を行った。上記(1)で明らかとなったJava(登録商標)TreeViewソフトウェアでのheat map表示から、β値が前がん病変(T532)で低値、がんで高値を示し、かつ早期がん(T433)と比較して進行がん(T415、T505、T517)で高値を示す遺伝子を読み出し、結果的に約300の遺伝子を選択した。
(3)さらに、β値の関係が、早期がん(T433)−前がん病変(T532)>0.2となる遺伝子を選択した。具体的には以下のような処理を行った。上記(2)で選択した300の遺伝子に関して、早期がん(T433)のβ値が前がん病変(T532)より高値を示し、かつ、早期がん(T433)が進行がん(T415、T505、T517)の3検体より低値を示す遺伝子のみに限定し、約200の遺伝子を選択した。最終的に、その中で前がん病変(T532)と早期がん(T433)のβ値の差が0.2以上に該当する遺伝子101個を求めた(図1〜10)。
【0083】
手法(B)(前がん病変(T532)と早期がん(T433)のβ値の相対値によるスクリーニング)
(1)まず、β値の関係が、早期がん(T433)−前がん病変(T532)>0、かつ、早期がん(T433)<進行がん(T415、T505、T517)となる遺伝子を、全遺伝子から選択した。具体的には以下のような処理を行った。27578箇所のCpG部位において、早期がん(T433)のβ値が前がん病変(T532)より大きく、かつ、いずれの進行がん(T415、T505、T517)に対しても低値を示す遺伝子を選択した。
(2)次に、早期がん(T433)のβ値÷前がん病変(T532)のβ値が高値となる遺伝子を選択した。具体的には以下のような処理を行った。上記(1)で選択した遺伝子に関して、早期がん(T433)の前がん病変(T532)に対する割合が高値を示すものから順に100個の遺伝子を最終的に選択した(図11〜20、図21〜30)。図11〜20はメチル化指標であるβ値を縦軸とし、図21〜30は前がん病変(T532)のβ値を1とした場合の相対値を縦軸としている。
【0084】
本件CpG部位のうち、図1〜10の結果から、TLX3、H19、CDH5、VSX1、HOXD9、GPR25、DES、ABHD9、NME5、SORCS3、LTC4S、SEC31L2、FLT4、ZNF542、ETNK2、CKMT2、KIF5A、ZNF577、GRIN3A、UCHL1、HOXB6、SLC4A11、PHOX2AのCpG部位等が本発明の頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして好ましいことが判明し、図11〜20や図21〜30の結果から、SH3BGRL3、ZNF329、CALM1、INPP5E、VTI1B、CKS2、KIAA0256、ZPBP、HIVEP3、SEMA3B、TMEM24、DUSP1、ZCCHC17、CXCL10、NOX4、FILIP1、RAP1GA1、C14orf2、CCDC11、IL17RC、SHANK2、HOXA11、ATPIF1、PDZRN3等が本発明の頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして好ましいことが判明した。
【実施例3】
【0085】
[メチル化遺伝子とマイクロRNAとの関連解析]
前述したように、本発明者らは、頭頸部腫瘍とマイクロRNAの発現との関連についてもこれまでに網羅的な解析を進めてきた(特願2009−099849号やPCT/JP2009/002629参照)。この知見と今回得られた遺伝子のメチル化に関する知見に基づき、本発明者らは、「がん特異的に発現抑制を認めるマイクロRNAの中には、ゲノム上のメチル化修飾によるプロモーター制御を原因とするものがあるだろう」との仮説を立て、以下の手法(C)によりスクリーニングを行った。
【0086】
手法(C)(喉頭がんで発現が抑制されるマイクロRNAと、喉頭がんでメチル化される遺伝子との関連性によるスクリーニング)
(1)まず、メチル化遺伝子の近傍にあるマイクロRNAを選択した。具体的には、前述の手法(A)で選択した遺伝子101個(図1〜10)と、前述の手法(B)で選択した遺伝子100個の合計201個のメチル化遺伝子(図11〜20、21〜30)について、NCBIのデータベースを利用して、その遺伝子から1Mbp以内にマイクロRNAが存在し得る遺伝子として、68個の遺伝子を選択した。
(2)次に、マイクロRNAの発現解析の結果、発現抑制が認められたものを選択することとした。具体的には以下のように行った。特願2009−099849号やPCT/JP2009/002629に記載したように、本発明者らは、Agilent Human miRNA V2 (Agilent Technologies社製)を用いて、ヒトのmiRNA723種につき網羅的解析を行った。解析した検体は、6人のサンプル提供者より採取した8種類の組織サンプル(13 laryngeal cancer、14 laryngeal cancer、15 laryngeal cancer、16 dysplasia-high、17 dysplasia-middle、18 normal、19 normal、20 polyp)であった。これらの解析結果から、発現強度を示すTotalGeneSignalのみを取り出し、上記の組織サンプルを悪性度の低い順に、18 normal、19 normal、20 polyp、17 dysplasia-middle、16 dysplasia-high、13 laryngeal cancer、14 laryngeal cancer、15 laryngeal cancerと並べ替えた。そして、悪性度が増すにつれ発現量が減少していくような関係(18 normal > 13 laryngeal cancerかつ19 normal > 14 larygeal cancer)を満たすマイクロRNA207個を選択した。
(3)次に、上記(1)において、メチル化遺伝子近傍に位置するとして選択されたマイクロRNAと、上記(2)において悪性度が増すにつれて発現量が減少していくような関係が見られるとして選択されたマイクロRNAとを照らし合わせ、両方に重複するマイクロRNAを調べたところ、11個のマイクロRNAが見出された。このうち、mir-375は、前述の特願2009−099849号やPCT/JP2009/002629に既に記載されているため、頭頸部腫瘍の新たなバイオマーカーとなり得るマイクロRNAとして、miR−10b、miR−126、miR−147、miR−200a、miR−200b、miR−429、miR−612、miR−639、miR−643及びmiR−675の10個のマイクロRNAが見出された。
【0087】
また、見出された11個のマイクロRNAの近傍に位置するメチル化遺伝子を、前述の201個のメチル化遺伝子の中からNCBIのデータベースを利用して探索したところ、INPP5E(miR−126の近傍)、H19(miR−675の近傍)、HOXD9(miR−10bの近傍)、DES(mir−375の近傍)、ABHD9(miR−639の近傍)、ZNF577(miR−643の近傍)、CFL1(miR−612の近傍)、DBC1(miR−147の近傍)、GNB1(miR−200a、miR−200b及びmiR−429の近傍)、HOXD4(miR−10bの近傍)、HOXD10(miR−10bの近傍)、HOXD12(miR−10bの近傍)、及び、SLC11A1(mir−375の近傍)の13個のメチル化遺伝子が見出された。これらについては、遺伝子のメチル化及びマイクロRNAの発現抑制の両面から頭頸部腫瘍との関連が示されたこととなり、頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして特に有用であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TLX3、H19、CDH5、VSX1、HOXD9、GPR25、DES、ABHD9、NME5、SORCS3、LTC4S、SEC31L2、FLT4、ZNF542、ETNK2、CKMT2、KIF5A、ZNF577、GRIN3A、UCHL1、HOXB6、SLC4A11、PHOX2A、SH3BGRL3、ZNF329、CALM1、INPP5E、VTI1B、CKS2、KIAA0256、ZPBP、HIVEP3、SEMA3B、TMEM24、DUSP1、ZCCHC17、CXCL10、NOX4、FILIP1、RAP1GA1、C14orf2、CCDC11、IL17RC、SHANK2、HOXA11、ATPIF1、PDZRN3、CFL1、DBC1、GNB1、HOXD4、HOXD10、HOXD12、及び、SLC11A1からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を、頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用する方法。
【請求項2】
遺伝子群が、INPP5E、H19、HOXD9、DES、ABHD9、ZNF577、CFL1、DBC1、GNB1、HOXD4、HOXD10、HOXD12、及び、SLC11A1からなる遺伝子群であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
頭頸部腫瘍が喉頭がん又は扁平上皮がんであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
以下の工程を備えたことを特徴とする頭頸部腫瘍の判定方法。
(A)頭頸部の検体組織又は被検体の血液からゲノムDNAを抽出する工程:
(B)抽出したゲノムDNA中の、TLX3、H19、CDH5、VSX1、HOXD9、GPR25、DES、ABHD9、NME5、SORCS3、LTC4S、SEC31L2、FLT4、ZNF542、ETNK2、CKMT2、KIF5A、ZNF577、GRIN3A、UCHL1、HOXB6、SLC4A11、PHOX2A、SH3BGRL3、ZNF329、CALM1、INPP5E、VTI1B、CKS2、KIAA0256、ZPBP、HIVEP3、SEMA3B、TMEM24、DUSP1、ZCCHC17、CXCL10、NOX4、FILIP1、RAP1GA1、C14orf2、CCDC11、IL17RC、SHANK2、HOXA11、ATPIF1、PDZRN3、CFL1、DBC1、GNB1、HOXD4、HOXD10、HOXD12、及び、SLC11A1からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を測定する工程:
(C)工程(B)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を、コントロールとしての、検体組織と同種の非がん組織又は被検体と同種の非がん被検体の血液から抽出したゲノムDNA中の同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較・評価する工程:
【請求項5】
工程(B)として、抽出したゲノムDNAにおいてメチル化シトシンと非メチル化シトシンを判別するために、該抽出したゲノムDNAに化学的又は酵素的処理を行うための試薬を添加した後、該ゲノムDNA中の、TLX3、H19、CDH5、VSX1、HOXD9、GPR25、DES、ABHD9、NME5、SORCS3、LTC4S、SEC31L2、FLT4、ZNF542、ETNK2、CKMT2、KIF5A、ZNF577、GRIN3A、UCHL1、HOXB6、SLC4A11、PHOX2A、SH3BGRL3、ZNF329、CALM1、INPP5E、VTI1B、CKS2、KIAA0256、ZPBP、HIVEP3、SEMA3B、TMEM24、DUSP1、ZCCHC17、CXCL10、NOX4、FILIP1、RAP1GA1、C14orf2、CCDC11、IL17RC、SHANK2、HOXA11、ATPIF1、PDZRN3、CFL1、DBC1、GNB1、HOXD4、HOXD10、HOXD12、及び、SLC11A1からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を測定する工程を用いることを特徴とする請求項4に記載の頭頸部腫瘍の判定方法。
【請求項6】
さらに、(D)工程(B)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度が、コントロールにおける同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較して増加している場合に頭頸部腫瘍であると評価する工程を備えたことを特徴とする請求項4又は5に記載の頭頸部腫瘍の判定方法。
【請求項7】
頭頸部腫瘍が喉頭がん又は扁平上皮がんであることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の頭頸部腫瘍の判定方法。
【請求項8】
TLX3、H19、CDH5、VSX1、HOXD9、GPR25、DES、ABHD9、NME5、SORCS3、LTC4S、SEC31L2、FLT4、ZNF542、ETNK2、CKMT2、KIF5A、ZNF577、GRIN3A、UCHL1、HOXB6、SLC4A11、PHOX2A、SH3BGRL3、ZNF329、CALM1、INPP5E、VTI1B、CKS2、KIAA0256、ZPBP、HIVEP3、SEMA3B、TMEM24、DUSP1、ZCCHC17、CXCL10、NOX4、FILIP1、RAP1GA1、C14orf2、CCDC11、IL17RC、SHANK2、HOXA11、ATPIF1、PDZRN3、CFL1、DBC1、GNB1、HOXD4、HOXD10、HOXD12、及び、SLC11A1からなる遺伝子群から選ばれるいずれかの遺伝子のCpG部位において、そのCpG部位のポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを備えたことを特徴とする頭頸部腫瘍の判定キット。
【請求項9】
遺伝子群から選ばれるその遺伝子のCpG部位において、そのCpG部位のシトシンがウラシルとなったポリヌクレオチドをさらに備えたことを特徴とする請求項8に記載の判定キット。
【請求項10】
頭頸部腫瘍が喉頭がん又は扁平上皮がんであることを特徴とする請求項8又は9に記載の判定キット。
【請求項11】
以下の工程を含むことを特徴とする頭頸部腫瘍治療薬のスクリーニング方法。
(A)頭頸部腫瘍に罹患した非ヒト動物に被検物質を投与する工程:
(B)前記非ヒト動物における頭頸部腫瘍組織又は血液から抽出したゲノムDNA中の、TLX3、H19、CDH5、VSX1、HOXD9、GPR25、DES、ABHD9、NME5、SORCS3、LTC4S、SEC31L2、FLT4、ZNF542、ETNK2、CKMT2、KIF5A、ZNF577、GRIN3A、UCHL1、HOXB6、SLC4A11、PHOX2A、SH3BGRL3、ZNF329、CALM1、INPP5E、VTI1B、CKS2、KIAA0256、ZPBP、HIVEP3、SEMA3B、TMEM24、DUSP1、ZCCHC17、CXCL10、NOX4、FILIP1、RAP1GA1、C14orf2、CCDC11、IL17RC、SHANK2、HOXA11、ATPIF1、PDZRN3、CFL1、DBC1、GNB1、HOXD4、HOXD10、HOXD12、及び、SLC11A1からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を測定する工程:
(C)工程(B)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を、コントロール非ヒト動物における頭頸部腫瘍組織又は血液から抽出したゲノムDNA中の同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較・評価する工程:
【請求項12】
さらに、(D)工程(B)において測定した遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度が、コントロール非ヒト動物における同遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度と比較して低下している場合に、その被検物質を頭頸部腫瘍治療薬であると評価する工程を含むことを特徴とする請求項11に記載の頭頸部腫瘍治療薬のスクリーニング方法。
【請求項13】
miR−10b、miR−126、miR−147、miR−200a、miR−200b、miR−429、miR−612、miR−639、miR−643、miR−675からなるマイクロRNA群から選ばれる1又は2種以上のマイクロRNAを頭頸部腫瘍のバイオマーカーとして使用する方法。
【請求項14】
miR−10b、miR−126、miR−147、miR−200a、miR−200b、miR−429、miR−612、miR−639、miR−643、miR−675が、それぞれ配列番号1〜10に示されるヌクレオチド配列において1若しくは2個以上のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたRNAからなり、かつ、頭頸部腫瘍組織又は頭頸部腫瘍被検体の血液においてコントロールと比較して発現が増加又は低下するRNAであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
頭頸部腫瘍が喉頭がん又は扁平上皮がんであることを特徴とする請求項13又は14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2011−97833(P2011−97833A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252798(P2009−252798)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第61回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会発行、「第61回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会プログラム・予稿集」、2009年10月15日発行
【出願人】(509305664)
【出願人】(509305675)
【Fターム(参考)】