説明

状態判定方法と状態予測方法及び装置

対象物の状態監視のために測定された波形データや特徴パラメータが正規分布に従わなくても、対象物の状態診断と状態予測は統計検定などの手法により高精度に行わ、また、測定された対象物の信号が脈動信号である場合、信号の局所に存在する特異成分はリアルタイムに検出され、対象物の状態は効率的に判定される必要がある。本発明は、測定した波形データ、あるいは、波形データから算出された特徴パラメータを既知確率分布(例えば、正規分布)に従うように変換した後、統計検定などの手法により対象物の状態判定と状態予測を行う方法と装置、また、測定した対象物の信号が脈動信号である場合は、雑音を除去された信号の包絡線波形データなどを求めることにより信号中の特異成分を検出して対象物の状態判定を行う方法と装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
一.技術分野
本発明は設備診断、医療診断などにおいて、対象物の状態変化の有無を判定するための状態判定装置及びオンライン状態監視・診断システムに関するものである。
二.背景技術
(1)従来、状態監視の対象物から測定した波形データの確率密度関数は、正常状態時に「正規分布」に従うと仮定して状態判定を行う([1]特許公開2000−171291、[2]豊田利夫、二保知也:「正常時の振動波形のみを用いた回転機械の異常診断」、日本設備管理学会誌、Vol.11,No.1,1999年、p.4−11.[3]劉 信芳、豊田利夫、陳 鵬、馮 芳、二保知也:「Information Divergenceによる回転機械の異常診断」、精密工学会誌、Vol.66、No.1、2000年、p.157−162.)
(2)対象物の状態変化の有無を判定するために用いる特徴パラメータを正規分布の確率変数と仮定して統計検定を行う([4]河部佳樹、豊田利夫、江口透、福田和久:「無次元兆候パラメータを用いた回転機械の劣化傾向管理(III)」、平成7年度日本設備管理学会秋季研究発表大会論文集、Vol.2、1995年、p.32.)
状態監視の対象物から測定した信号が脈動信号の場合は、特徴パラメータや確率密度分布関数などにより状態判定が困難である。従来、脈動信号の中に含まれる特異成分(あるいは、異常成分)を検出する方法として、
(3)時間−周波数解析手法(ウェーブレット解析、ウィグナ分布解析、短時間FFTなど)を用いた局所異常の検出法がある([5]章 忠、中堀智之、川畑洋昭:「高速ウェーブレット変換およびその脳波解析への応用」、日本機械学会論文集(C編)、Vol.65,No.632,1999年、p.1915−1921.)
(4)脈動信号のピーク値などに合わせた所定の間隔でサンプリングした値は所定の値以下、または、前回サンプリングした値との差が所定の値以上の場合に異常と判定する。([6]特開平6−317215)
(5)脈動信号のピーク値などに合わせた所定の間隔でサンプリング毎の代表値のばらつき(標準偏差)が所定のしきい値以上の場合に異常と判定する。([7]特開平7−293311)
三.発明が解決しようとする課題
しかしながら、前記従来の諸手法には次のような問題があった。
第1と第2の方法では、波形データと特徴パラメータの値が正規分布に従うと仮定しているが、実際に正常状態でも必ずしも正規分布に従うとは限らないから、波形データと特徴パラメータの値が正規分布に従うと仮定して対象物の状態変化を統計検定により判定すると、誤判定をもたらす。
第3の方法では、処理に必要な時間が長いため、アルタイムの特異点の検出が困難である。
第4と第5の方法では、波形データを所定の間隔でサンプリングする場合、回転数の変化や負荷の変化などによるピーク位置が変化した時、サンプリング値は正常でも大きく変化するから、誤判定をもたらす。また、サンプリング毎の代表値のばらつき(標準偏差)を計算すると、リアルタイムの特異検出が困難である。
四.課題を解決するための手段
上記に述べたような問題点を解決するために、本発明においては、測定した波形データを既知確率分布(例えば、正規分布)の波形データに変換した後、あるいは、波形データから算出された特徴パラメータを既知確率分布(例えば、正規分布)の特徴パラメータに変換した後、統計検定や可能性理論や情報理論などにより対象物の状態判定を行う。
また、測定した対象物の信号が脈動信号である場合は、特徴パラメータやスペクトルなどによる特異成分の抽出及び状態判定が困難であるので、雑音を除去した信号の包絡線波形データを求め、正規化された包絡線波形データおよび周期パルスにより信号中の特異成分を検出して状態判定を行う。または、上記に雑音を除去した脈動信号のピーク波形データを求め、ピーク波形データの正規化処理を行い、正規化されたピーク波形データおよび周期パルス波形データにより脈動信号中の特異成分を検出して状態判定を行う。
五.発明の効果
対象物の状態監視のために測定された波形データや特徴パラメータは必ずしも正規分布に従うと限らないため、これらの波形データあるいは特徴パラメータを正規分布に従うと仮定して対象物の状態変化の有無を統計検定により判定し、或いは、状態予測を行うと、大きな誤差をもたらす。本発明においては、測定した波形データを既知確率分布(例えば、正規分布)の波形データに変換した後、あるいは、波形データから算出された特徴パラメータを既知確率分布(例えば、正規分布)の特徴パラメータに変換した後、統計検定や可能性理論や情報理論などにより対象物の状態判定を行う。従って、本発明の手法は状態判定、或いは、状態予測の精度が従来正規分布に従うと仮定した場合より高い。
脈動信号の場合、測定した脈動信号の波形データには一部のピークが欠落し、または波形データの局所に微小な特異成分が存在する時、従来の判定法(特徴パラメータやスペクトルや確率密度関数など)による検出が困難である。本発明においては、雑音を除去した脈動信号の包絡線波形データを求め、正規化された包絡線波形データおよび周期パルスにより信号中の特異成分を検出して状態判定を行う。または、上記に雑音を除去した脈動信号のピーク波形データを求め、ピーク波形データの正規化処理を行い、正規化されたピーク波形データおよび周期パルス波形データにより脈動信号中の特異成分を検出して状態判定を行う。本発明の方法では、主な信号処理はハードウェアでも実現でき、数値処理装置(計算機)にかかる負担が小さいから、リアルタイムに異常の検出が実現できる。また、正常状態の波形データを基準としないため、脈動周期が変化しても検出と判定の結果に与える影響が少ない。
六.発明を実施するための最良の形態
1.特徴パラメータについて
状態判定のために用いる特徴パラメータは時間領域と周波数領域の特徴パラメータがある。周波数領域の特徴パラメータは(参考文献1)で定義されているものがある。([8]陳 鵬,豊田利夫:遺伝的プログラミングによる周波数領域の特徴パラメータの自己再組織化,日本機械論文集(C編),Vol.65 No.633,pp.1946−1953,1998.)ここで時間領域の特徴パラメータについて詳述する。
対象物の状態変化の有無を判定するために用いる時間領域の特徴パラメータは次の通りである。
1)無次元特徴パラメータ
測定した時系列波形データから、フィルタを用いて、低、中、高周波数領域の波形データを抽出する。抽出した波形データx(t)を次式で正規化する。

ここで、x’はA/D変換後のx(t)の離散値であり、μとSはそれぞれx’の平均値と標準偏差である。
従来用いられる無次元特徴パラメータは式(2)〜式(13)に示す([9]Peng CHEN,Toshio TOYOTA,Yueton LIN,Feiyue WANG:FAILURE DIAGNOSIS OF MACHINERY BY SELF−REORGANIZATION OF SYMPTOM PARAMETERS IN TIME DOMAIN USING GENETIC ALGORITHMS,International Journal of Intelligent Control and System,Vol.3,No.4,pp.571−585,1999.)

ここで、

は絶対平均値で,Nはデータの総数である。

は標準偏差である。


ここで、μは波形の極大値(ピーク値)の平均値である。

ここで、|μmax|は波形の10個の最大値の平均値である。

ここで、σは極大値の標準偏差値である。

ここで、μとσはそれぞれ極小値(谷値)の平均値と標準偏差値である。

式(2)〜式(13)は従来の特徴パラメータであるが、数値計算で容易に高速計算するために、「区間特徴パラメータ」は式(14)〜式(21)のように新たに提案する。

但し、x≧kσ、kは任意に設定できるが、例えば、k=0.5、1、2。μk1はxの平均値である。tは任意に設定できるが、例えば、t=0.5、1、2、3、4。

但し、x≦−hσ、hは任意に設定できるが、例えば、k=0.5、1、2。μh1はxの平均値である。tは任意に設定できるが、例えば、t=0.5、1、2、3、4。

但し、hは時系列波形が単位時間あたり0レベルをクロースする頻度、hは単位時間あたり時系列波形のピークの数である。

但し、hnσは波形が単位時間あたりnσレベルをクロースする頻度である。nは任意に設定できるが、例えば、n=0.5、1、2。

但し、h−nσは波形が単位時間あたり−nσレベルをクロースする頻度。である。nは任意に設定できるが、例えば、n=0.5、1、2。
2)有次元特徴パラメータ
有次元特徴パラメータを計算するとき、測定した波形データに対して、式(1)のような正規化をしない。


ここで、|xは波形データの絶対値のピーク値(極大値)、Nはピーク値の総数である。

なお、上記の特徴パラメータ以外にも多くの特徴パラメータが定義できるが、本方法を応用するとき、まず上記の特徴パラメータで試し、もし状態識別の効果が良くなければ、更に他の特徴パラメータを追加定義すればよい。
2.波形データと特徴パラメータを指定の確率分布への変換
測定した波形データをxで、波形データから算出した特徴パラメータをpで表す。xあるいはpを用いて、統計理論により状態判定や状態予測を行う場合、xあるいはpがどのような確率分布に従うか事前に知る必要がある。しかし、xあるいはpがどのような確率分布従うかは事前に知らない場合が多い。そこで、指定の既知確率分布関数をΣとすると、次式を用いてxあるいはpをΣに従う確率変数xあるいはpに変換することができる。

ここで、Fxi(x)とFpi(p)はそれぞれxとpとの累積確率分布(或いは、累積度数分布)であり、Σ−1はΣの逆関数である。例えば、Σは正規分布、ワイブル分布、指数分布、ガンマ分布などである。xあるいはpをxあるいはpに変換した後、統計検定などを用いて状態判定や状態予測を行う。
なお、元の波形データxは図1のように4種類に分けられる。つまり、平均値より大きいデータxi+、平均値より小さいデータxi−、式(1)による正規化後の絶対値データ|x|及び全体波形データxiAであり、それぞれの累積確率分布(或いは、累積度数分布)はFxi+(xi+)、Fxi−(xi−)、F|xi|(|x|)及びFxiA(xiA)で表すが、以下、特に指定しなければ、統一にFxi(x)で表す。また、特徴パラメータpは正規化後のxi+とxi−、|x|及びxiAのいずれかで計算される。
ここで、例として、Σを正規分布に指定した場合、xあるいはpを正規分布に従うように変換する方法について詳述する。
正規分布の確率密度関数f(t)は次式で表す。

ここで、μは確率変数tの平均値で、σは標準偏差である。
(1)基準状態を参照する場合
測定対象の基準状態、例えば、1回目測定した時の状態、を決めて、この時の波形データxi0あるいは特徴パラメータpi0の確率密度関数と累積確率分布関数をそれぞれfx0(xi0)とFx0(xi0)あるいはfp0(pi0)とFp0(pi0)とする。平均値μが0で標準偏差σが1である標準正規分布の確率密度関数をφ(x)、標準正規分布の確率分布関数をΦ(x)とする。なお、離散データであるxi0あるいはpi0の確率密度関数の替わりに「頻度分布関数」や「ヒスとグラム」を用いてもよいが、以下には「確率密度関数」を用いて説明する。
1)正規分布に従う平均値に変換する方法
状態kでのxikとpikを次式でそれぞれ正規分布に従う平均値μxikoとμpik0に変換される。なお、状態kは任意の状態であり、基準状態も含む。

ここで、Φ−1はΦの逆関数で、σxi0とσpi0はそれぞれ正規分布に変換されたxikとpikとの標準偏差であり、次式で求められる。

平均値μxik0とμpik0を用いて状態判定や状態予測を行う。
2)直接変換法
状態kでのxikとpikを次式で正規分布の確率変数に変換する。

ここで、SxkとSpkはそれぞれxikとpikの標準偏差で、μxkとμpkはそれぞれxikとpikの平均値である。x’ik0あるいはp’ik0を用いて状態判定や状態予測を行う。
(2)基準状態を参照しない場合
まず、状態kでの波形データxikと特徴パラメータpikとの確率密度関数(あるいは、頻度分布)をそれぞれfxk(xik)とfpk(pik)とし、確率分布関数(あるいは、累積度数分布)をFxk(xik)とFpk(pik)とする。
1)直接変数変換法
波形データxikと特徴パラメータpikを次式で正規分布の確率変数に変換する。

ここで、SxkとSpkはそれぞれxikとpikとの標準偏差で、μxkとμpkはxikとpikとの平均値である。x’ikあるいはp’ikを用いて状態判定や状態予測を行う。
2)正規分布に従う平均値に変換する方法
正規分布に従う平均値は次式で求められる。

ここで、σxikとσpikは次式で求められる。

μxikとμpikは正規分布に従うので、μxikあるいはμpikを用いて状態判定や状態予測を行う。
3)間接変換法
M個の特徴パラメータpikの最小値と最大値をそれぞれ(pikminと(pikmaxとする。(pikminから(pikmaxまでN個の等間隔区間に分割する。各区間の代表値(例えば、中央値)をpikjとする。ここで、j=1〜N。pikjをpikの替わりに式(36)または式(38)に代入すると、N個のp’’ikまたはμ’pikが得られる。p’’ikまたはμ’pikを用いて状態判定や状態予測を行う。
同様に、M個の波形データxikの最小値と最大値をそれぞれ(xikminと(xikmaxとする。(xikminから(xikmaxまでN個の等間隔区間に分割する。各区間の代表値(例えば、中央値)をxikjとする。ここで、j=1〜K。xikjをxikの替わりに式(35)または式(34)に代入すると、K個のx’’ikまたはμ’xikが得られる。x’’ikまたはμ’xikを用いて状態判定や状態予測を行う。
4)特徴パラメータpikの区間平均値を求める方法
N個特徴パラメータpikを求めた後、M組に分割して第j組の平均値は次のように求める。

ここで、Nは第j組にあるpikの数である。μ(j)は近似的に正規分布に従うので、μ(j)を用いて状態判定や状態予測を行う。
波形データxikを式(29)、式(33)、式(35)、式(37)で正規確率分布の波形データに変換したμxik0、x’ik0、x’ik、μxik、x’’ik、μ’xikは「正規分布の波形データ」と呼ぶ。また、特徴パラメータpを式(30)、式(34)、式(36)、式(38)で正規確率変数に変換したμpik0、p’ik0、p’ik、μpik、p’’ik、μ’pik、μ(j)は「正規分布の特徴パラメータ」と呼ぶ。
3.正規分布の特徴パラメータによる状態判別方法
ここで、正規分布の特徴パラメータを用いて、対象物の状態を判別する方法を述べる。
(1)統計理論による判別
1)正規分布の特徴パラメータの平均値の検定
状態kと状態yで求めた正規分布の特徴パラメータをそれぞれpikとpiyとする。ここで、i=1〜M、Mは使用する正規分布の特徴パラメータの総数を表す。pikとpiyとの平均値をそれぞれμikとμiy、pikとpiyとの標準偏差をそれぞれSikとSiyとする。一般にJ個のpの平均値μと標準偏差Sは次の式で計算する。

μikとμiyが等しいか否かの検定は次のように行う(参考文献3参照)
(参考文献3)K.A.Brownlee.Statistical Theory and Methodology in Science and Engineering,Second Edition,The University Chicago,1965

が成立すれば、有意水準αで「μikとμiyとが等しくない」と判定する。ここで、tα/2(J−1)は自由度J−1のt分布の確率密度関数が下側確率α/2に対するパーセント点である。
2)正規分布の特徴パラメータの分散の検定
ikとSiyが同じか否かの検定は次のように行う(参考文献4参照)。
(参考文献4)K.A.Brownlee.Statistical Theory and Methodology in Science and Engineering,Second Edition,The University Chicago,1965

が成立すれば、有意水準αで「SikとSiyとが等しくない」と判定する。ここで、Fα/2(J−1,J−1)は自由度J−1のF分布の確率密度関数が下側確率α/2に対するパーセント点である。
有意水準αを変えたとき、式(44)または式(45)を満足するか否かを確認することにより、状態yが状態kに対する状態変化の程度を決める。状態変化の程度を有意水準αにより決定する例は表1に示す。なお、設備診断の場合、状態kを正常状態とすれば、状態yは正常状態か、注意状態か、危険状態かの判別については、表1のように「正常」(α)、「注意」(α)、及び「危険」(α)のように設定し検定することができる。つまり、式(44)または式(45)はαの時に成立しなければ「正常」と判定する。また、式(44)または式(45)はαの時に成立すれば「注意」と、αの時に成立すれば「危険」と判定する。なお、表1中のαの数値範囲は例であり、設備の重要度などによって決められる。
数個の特徴パラメータを用いて状態判定を行う場合、判定の結果は最も状態変化が大きいと示した特徴パラメータの判定結果に従われる。例えば、3つの特徴パラメータp、p、pを用いて判定するとき、pの判定結果が「注意」、pの判定結果が「正常」、pの判定結果が「危険」である場合、最終の判定結果は「危険」とする。

3)信頼区間による判定
基準時点で測定した波形データから求めた正規分布の特徴パラメータの平均値をμi0とし、他の時点で測定した波形データから求めた正規分布の特徴パラメータの平均値をμikとすると、μi0の信頼区間は次式で与えられる。

ここで、tα/2(J−1)は自由度J−1のt分布の確率密度関数が下側確率α/2に対するパーセント点である。Si0は波形データから求めたpi0の標準偏差である。μikは式(46)に示す区間内にあれば、1−αの確率でμi0との差がないという。μi0の99%信頼区間は、J>10のとき、近似的に次のようになる。

従って、μikは式(47)の範囲を超えれば、99%の確率でμi0と違うと判定する。更に、測定した波形データで求めたμikの信頼区間は、次式で求められる。

ここで、Sikは波形データから求めたpikの標準偏差である。
表1のαを式(46)に代入すれば、次のような信頼区間が得られる。


μikがこれらの区間内にあるか否かによって状態の判定を行う。
数個の特徴パラメータを用いて状態判定を行う場合、最終の判定結果は式(49),(50),(51)に記述される内容と同じである。
(2)可能性理論による判別
1)可能性分布関数の作成
状態kにおける波形データで正規分布の特徴パラメータpの値を算出した後、pの確率密度関数f(p)から可能性分布関数P(p)を式(52)で求める。可能性理論によれば、pがどのような確率分布に従っても、その可能性分布関数が求められる。pが正規分布に従う場合、N段の可能性分布関数p(p)は次のように求める(参考文献5参照)。

ここで、

但し、上式中、pix=min{p}+x×(max{p}−min{p})/N、x=1〜N,Sはpの標準偏差,μはのp平均値である。
(参考文献5)L.Davis:HANDBOOK OF GENETIC ALGORITHMS,Van Nostrand Reinhold,A Division of Wadsworth,Inc(1990)
2)可能性の求め方
図2のように、状態kと状態yで求めた正規分布の特徴パラメータpの可能性分布関数をP(p)とP(p)とし、状態yで求めた正規分布の特徴パラメータの値をp’とすると、「状態yが状態kと同じである」という可能性wは次のように求められる。
a)p’の平均値p’meanとP(p)とのマッチングによるwの決定、
b)P(p)とP(p)とのマッチングによるwの決定。
なお、P(p)とP(p)とのマッチングによるwを求める式は次に示す。

3)状態変化の判別
状態kで求めた正規分布の特徴パラメータpの可能性分布関数pk(p)が得られた後、左右両側の「状態変化が小さい」の可能性分布関数(pc1(p)とpc2(p))、および「状態変化が大きい」の可能性分布関数(pd1(p)とpd2(p))は図2に示すように決定する。境界値の

におけるi,jはユーザ入力により決定するが、標準値としてi=3、j=6とする。
設備診断の場合、正常状態の可能性分布関数をpk(p)、注意状態の可能性分布関数をpc1(p)とpc2(p)、危険状態の可能性分布関数をpd1(p)とpd2(p)とする。実際の識別時に得られた「正常」と「注意」と「危険」との可能性は図2のように表示する。また、「危険」と判定した場合、警報を出すことも可能である。
(3)情報理論による状態判別法
対象物の基準状態における正規分布の特徴パラメータの確率密度関数をfp0(p)し、基準状態以外における正規分布の特徴パラメータの確率密度関数をfpk(p)とする。なお、基準状態以外の時点での状態を「テスト状態」と呼ぶ。テスト状態が基準状態と同じ状態であるか否かは次の「Kullback−Leibler Information(カルバック情報量、KI)」と「Information Divergence(情報ダイバージェンス、ID)」で判定できる。


KIとIDによる状態判別法は[10]に詳細に記述しているので、ここで省略する。([10]劉 信芳、豊田利夫、陳 鵬、馮 芳、二保知也:「Information Divergenceによる回転機械の異常診断」、精密工学会誌、Vol.66、No.1、2000年、p.157−162.)
(4)複数の特徴パラメータを統合することによる状態判別法
数個の特徴パラメータを統合して、状態変化の有無や状態予測を行うこともできる。特徴パラメータの統合法は、主成分分析法やKL展開法などがあるが、特徴パラメータの統合法により求めた新たな特徴パラメータは「統合特徴パラメータ」とよぶ。ここで、主成分分析法の例を示す。([11]大津,栗田,関田著:パターン認識,朝倉書店、1996.)
例えば、設備診断の場合、設備の正常状態下で求めた無次元特徴パラメータ(p,p,・・・,p)に対して、m個の主成分は次のように表されます。

各主成分z〜zは「統合特徴パラメータ」とも呼ぶ。
相関行列は次のように求められます。

ここで、正常状態で収録したn組のデータを{p1k,p2k,・・・,pmk}、k=1,2,・・・,nとすると、

相関行列Rの固有ベクトル、λ=(λ,λ,・・・,λ)、λ,≧λ≧・・・≧λとすると、

固有値λに対応する式(59)の係数が求まり、第i番目の主成分は次のように求められます。

主成分を用いて次式のように状態判定を行う。

ここで、Kは使用する主成分の数、αは有意水準、χ(K,α)は自由度Kのカイ2乗分布の確率密度関数が上側確率αに対するパーセント点である。αの決定法は表1同じである。なお、K=3に対してα=0.05のとき、χ(3,0.05)=7.815である。
なお、式(64)に示す判定方法以外に、特徴パラメータの統合法により求めた統合特徴パラメータ、例えば、式(63)に示す主成分、を正規分布の確率変数に変換した後、統計検定や可能性理論により状態判定を行うこともできる。
ここで、実例を示す。図3はある回転機械の正常状態時(図3(a))と回転軸ミスアライメント状態時(図3(b))に測定した振動の加速度波形データである。図4(a)及び図5(a)は式(2)〜式(13)及び式(18)〜式(21)に示す14個の無次元特徴パラメータを60回求め、正規分布変換を行う前に、K=3のときに求めた式(64)右側の値(60個)を示す。図4(b)及び図5(b)は式(31)に基づいて正規分布変換を行った後、K=3のときに求めた式(64)右側の値(9個)を示す。これらの図により、正規分布変換後の結果は正規分布変換前の結果より良好であることがわかる。なお、「良好である」とは、式(64)左側の値は正常状態の時に小さく、異常状態の時に大きいということである。
4.正規分布の波形データによる状態判別方法
(1)特徴パラメータによる状態判別法
対象物から計測された波形データx(例えば、図6(a)、(c))を式(33)により正規分布の波形データx’ik0(例えば、図6(b)、(d))に変換した後、正規分布の波形データx’ik0を用いて前述の正規分布の特徴パラメータによる状態判別方法で状態判定を行うことができる。なお、この方法は正規分布の波形データμxik0とx’ik0に適用できる。
(2)情報理論による状態判別法
基準状態の正規分布の波形データの確率密度関数をfx0(x)とし、基準状態以外の時点での正規分布の波形データの確率密度関数をfxk(x)とする。なお、基準状態以外の時点での状態を「テスト状態」と呼ぶ。テスト状態が基準状態と同じ状態であるか否かは次の「Kullback−Leibler Information(カルバック情報量、KI)」と「Information Divergence(情報ダイバージェンス、ID)」で判定できる。

KIとIDによる状態判別法はに詳細に記述しているので、ここで省略する。([12]劉 信芳、豊田利夫、陳 鵬、馮 芳、二保知也:「Information Divergenceによる回転機械の異常診断」、精密工学会誌、Vol.66、No.1、2000年、p.157−162.)
ここで、実例を示す。図6(a)はある回転機械の正常状態時に測定した振動加速度の波形データである。図6(c)は同じ回転機械のアンバランス時に測定した波形データである。
平均値以上の波形データxi+、平均値以下の波形データxi−、及び絶対値データ|x|を正規分布の波形データに変換した後、それぞれx’i+、x’i−、及び|x|’で表す。x’i+、x’i−、及び|x|’の平均値と標準偏差は次の通りである。
x’i+:正常時の平均値=0.69、アンバランス時の平均値=1.96
正常時の標準偏差=1.03、アンバランス時の標準偏差=2.37
x’i−:正常時の平均値=−0.37、アンバランス時の平均値=−0.66
正常時の標準偏差=0.47、アンバランス時の標準偏差=0.69
|x|’:正常時の平均値=1.45、アンバランス時の平均値=3.29
正常時の標準偏差=1.52、アンバランス時の標準偏差=3.53
(参考文献8)によると、過検出率α=0.15、見逃率β=0.15とすると、KI>1.21或いはID>2.43ならば、85%nの確率で「テスト状態は基準状態と違う」と判定できる。上記のx’i+、x’i−、及び|x|’のKIとIDは次の通りである。
x’i+:KI=0.519, ID=2.24
x’i−:KI=0.53, ID=0.40
|x|’:KI=0.57, ID=2.67
|x|’のID>2.43から、85%nの確率で「図6(a)の状態は図6(c)の状態と違う」と判定できる。
また、式(44)と式(45)に示す平均値と分散の検定により状態判定を行ってもよい。
更に、上記のx’i+、x’i−、及び|x|’を用いて、式(2)〜式(25)で特徴パラメータを求めて、統計検定や可能性理論及び特徴パラメータの統合法により状態判定を行うこともできる。
5.状態予測
正規分布の特徴パラメータpが求められた後、従来の状態予測手法を用いて、測定対象の状態を予測することが行える([13]石川真澄、武藤博道:予測手法、計測と制御、1982.3.[14]Ogawa,M.:Time series analysis and stochastic prediction,Bull.Math.Stat.,8,8−72,1958.[15]B.ピカニオル著、小村賢二、柴山宮恵子訳:予測のための統計学、晃洋書房、1987.)
図7は状態予測の方法を示す。各測定時点(x〜x)で測定した特徴パラメータ値、或いは、主成分値を正規確率分布に従うように変換した後、回帰解析により予測曲線とその信頼区間を求め、「寿命限界」との交点で「最短寿命」、「平均寿命」及び「最長寿命」を求める。
図8はある回転機械が正常状態からアンバランス状態へ変化していく間に8回測定した波形例である。測定1は正常状態であり、測定8は最も程度の重いアンバランス状態である。図9は式(2)〜式(13)で求めた、各測定における特徴パラメータの平均値を示す。この例でわかるように、特徴パラメータは異常状態の程度が重くなっていくにつれて値が単調増加の特徴パラメータ(例えば、p,p)があれば、値が単調減少の特徴パラメータ(例えば、p,p,p,p10)もある。また、異常状態の程度が重くなっても値がほぼ不変な特徴パラメータ(例えば、p,p)もある。従って、値が単調増加(或いは、単調減少)の特徴パラメータを選んで、寿命予測を行うべきである。また、主成分により寿命予測を行う時、値が単調増加の特徴パラメータのみ(或いは、単調減少の特徴パラメータのみ)を選んで、主成分を求めて寿命予測を行うべきである。
上記に述べた波形データと特徴パラメータを正規分布の確率変数に変換する手法、状態判定手法及び状態予測手法を実現するための計測と処理の流れは図16(a)に示す。また、図16(a)を実現するための波形データ計測及び状態判定装置の回路は図17に示す。
6.脈動信号から特異成分の検出法及び状態判定法
ここで、ガスエンジン失火診断の例を用いて説明する。
図10(a)、図11(a)、図12(a)、図13(a)はガスエンジン失火(図中のピーク値の異常個所)が発生したときのシリンダ圧力波形データである。なお、図12(a)、図13(a)は多数の異常ピークが連続して発生する例を示す。このような脈動信号に発生する局所異常(特異成分)に対して、オンライン特異点の検出及び状態判定の流れは図15に示す。以下、その手順を説明する。
1).診断ための準備(図15(a))
(1)診断対象の脈動信号と回転パルス信号を同時に計測する。なお、回転パルス信号は周期パルス信号とも言い、脈動信号の各ピーク値のタイミングを決めるときに用いられる。
(2)雑音を除去するために,ローパスフィルタリングを行う。ローパスフィルタのカットオフ周波数fLは次のように決定する。

ここで、nは軸の回転数(rpm)、zは1回転毎のピーク数(ピーク/1回転)、f0は余裕周波数(>n/60、フィルタリング後のノイズ除去効果を観察することにより決定する)である。
(3)ローパスフィルタリング後の包絡線波形データ、または、ピーク波形データ、または、移動平均波形データを求める。
(4)上記の包絡線波形データ、または、ピーク波形データ、または、移動平均波形データの正規化を次式のように行う。

ここで、x(t)は正規化後の波形データ、x’(t)は元の波形データ、μ’(t)はx’(t)の平均値、sはx’(t)の標準偏差である。なお、μ’(t)とsを求めるとき、正常状態の波形データが望ましいが、正常状態の波形データでなくてもよい。また、μ’(t)とsを求めるとき、運転条件(回転数や負荷)をできるだけ判定のときと同じように設定する。但し、運転条件が多少変化しても判定結果に大きく影響しない。
(5)回転パルス信号のピークと脈動信号のピークとの相対位置関係を調べて置き、異常を識別するための閾値を決定する。閾値の決定は次のように考える。

のとき、異常が発生したと判定する。ここで、k(=2〜4)は診断対象物によって決定する。
|x(t)|がkσより大きい間、回転パルス信号に対応する脈動信号のピークの所に異常があると判定する。
2).オンライン診断(図15(b))
(1)判定対象物の脈動信号と回転パルス信号を同時に計測する。
(2)ローパスフィルタリングを行う。ローパスフィルタのカットオフ周波数fLは式(66)のように決定する。
(3)ローパスフィルタリング後の包絡線波形データ、または、ピーク波形データを求める。
(4)上記の包絡線波形データ、または、ピーク波形データの正規化は式(68)により求める。
(5)正規化された包絡線波形データ、または、ピーク波形データの絶対値は閾値(kσ)より大きいか否かを監視する。大きくなければ、異常がないと判定する。大きければ、異常が発生したと判定し、|x(t)|がkσより大きい間、前もって測って置いた回転パルス信号と脈動信号のピークとの関係により、異常の箇所を判定する。
上記の手順に基づく信号処理の例を図10、図11、図12、図13に示す。
図10(a)(b)、図11(a)(b)、図12(a)(b)、図13(a)(b)ガスエンジン失火(図中の異常箇所)が発生したときのシリンダ圧力の時系列波形データとスペクトルである。
図10(c)(d)、図11(c)(d)、図12(c)(d)、図13(c)(d)はローパスフィルタにより雑音を除去した時系列波形データとスペクトルである。
図10(e)、図11(e)、図12(e)、図13(e)は回転パルス波形データである。
図10(f)、図12(f)は包絡線波形データである。
図11(f)、図13(f)はピーク波形データである。
図10,11,12,13の(f)で分かるように、異常(ピークの欠落、または、小さくなる)が発生した場合、その絶対値|x(t)|が2σより大きくなることが判明できる。
また、絶対値|x(t)|が2σより大きくなる箇所と回転パルス波形データとの対応関係により異常箇所を判明できる。
上記に包絡線波形データとピーク波形データの例を示したが、図14に示すように、移動平均波形データ(u)を求めたら、x(t)の替わりにu(t)を用いて上記の手順と同様に脈動信号の特異点検出ができる。なお、カットオフ周波数(f)は式(67)により求めたら、移動平均の点数(M)が求められる。
上記に述べた脈動信号の特異成分の検出と判定方法を実現するための計測と処理の流れは図16(b)に示す。また図16(b)を実現するための脈動信号計測及び状態判定装置の回路は図18に示す。
7.状態判定装置、または、オンライン状態判定システムの処理流れ
状態判定装置装置、または、オンライン状態判定システムの処理流れは図16に示す。図16(a)に示すように、測定波形データからノイズを除去し、特徴パラメータを求め、その特徴パラメータを正規分布の確率変数に変換した後、統計検定や可能性理論や特徴パラメータの統合により状態変化の有無判定を行う。これらの処理は計算機または専用装置で実現できる。また、図16(b)に示すように、脈動信号からの特異成分検出及び状態判定は、ローパスフィルタ、包絡線(または、ピーク値)はハードウェアで実現できる。数値演算装置(または、計算機)は正規化したx(t)、|x(t)>kσ|の判定、特異箇所の検出と判定および判定結果の表示を行えばよいから、リアルタイムに行える。
【図面の簡単な説明】
図1は、測定した波形データを4種類、つまり、平均値より大きいデータxi+、平均値より小さいデータxi−、式(1)による正規化後の絶対値データ|x|及び全体波形データxiAに分ける例を示すグラフである。
図2は可能性分布関数の例を示すグラフである。
図3は正常状態と回転軸ミスアライメント状態の振動波形データの例を示すグラフである。
図4は正常状態の振動波形データに対する主成分分析結果を示すグラフである。
図5は回転軸ミスアライメント状態の振動波形データに対する主成分分析結果を示すグラフである。
図6は正常状態とアンバランス状態の振動波形データの例を示すグラフである。
図7は状態予測方法を示すグラフである。
図8は正常状態からアンバランス状態へ変化していく時の振動波形データの例を示すグラフである。
図9は各測定の波形の特徴パラメータ値を示すグラフである。
図10は包絡線波形データによる1個のピークが欠落した場合の信号処理例を示すグラフである。
図11はピーク波形データによる1個のピークが欠落した場合の信号処理例を示すグラフである。
図12は包絡線波形データによる多数のピーク異常の場合の信号処理例を示すグラフである。
図13はピーク波形データによる多数のピーク異常の場合の信号処理例を示すグラフである。
図14は移動平均波形データの求め方を示すグラフである。
図15は脈動信号の特異成分検出及び異常診断処理の流れを示すフローチャートである。
図16は状態判定装置、または、オンライン状態判定システムの処理流れを示すフローチャートである。
図17は信号計測及び状態判定装置の回路の一例を示す回路図であり、図中の符号は次の通りである。
1 センサ、2 アンプ、3 フィルタ、4 信号処理・計算装置、5 表示出力装置、6 データ用RAM、7 AD変換器、8 DCポート、9 SCI(シリアル・コミュニケーション・インタフェース)、10 CPU、11 フラッシュROM、12 外部コンピュータ.
図18は脈動信号計測及び状態判定装置の回路の一例を示す回路図であり、図中の符号は次の通りである。
1 センサ、2 アンプ、3 フィルタ、4 包絡線処理部、5 周期パルスセンサ、6 表示出力装置、7 AD変換器、8 DCポート、9 SCI(シリアル・コミュニケーション・インタフェース)、10 CPU、11 フラッシュROM、12 外部コンピュータ、13 データ用RAM、14 信号処理・計算装置.
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
状態監視の対象物の波形データを複数の周波数帯域において測定するステップと、前記測定された波形データから雑音を除去するステップと、前記雑音を除去された波形データを用いて時間領域及び周波数領域の特徴パラメータを原始特徴パラメータとして定義し計算するステップと、前記計算された原始特徴パラメータを、予め指定した確率分布に従う、既知分布の特徴パラメータに変換するステップと、前記既知分布の特徴パラメータを用いて、対象物の状態判定及び状態予測を行うステップと、を有し、対象物の状態判定と状態予測を行う方法であって、前記時間領域及び周波数領域の特徴パラメータを原始特徴パラメータとして定義し計算するステップにおいて、前記原始特徴パラメータは無次元特徴パラメータであれば、前記雑音を除去された波形データを正規化した後、算出されることと、前記原始特徴パラメータを既知分布の特徴パラメータに変換するステップにおいて、対象物の基準状態を参照する場合と、対象物の基準状態を参照しない場合と、に分けて変換することと、を特徴とする方法であり、この方法を実行するために、対象物の波形データを取得するためのセンサ、アンプ、フィルタ、信号処理・計算装置、及び表示出力装置を備えた、対象物の状態判定と状態予測を行う装置。
【請求項2】
前記原始特徴パラメータは、前記正規化された波形データを平均値より大きい波形データ、平均値より小さい波形データ、絶対値波形データ及び全体波形データに分けて正規分布に変換した後、これらの波形データにより算出される方法。
【請求項3】
前記原始特徴パラメータのうち、区間特徴パラメータの定義と計算を行う方法。
【請求項4】
前記原始特徴パラメータを既知分布の特徴パラメータに変換するステップにおいて、前記原始特徴パラメータの確率分布と平均値と分散を求めるステップと、前記原始特徴パラメータの確率分布と平均値と分散を用いて既知分布の特徴パラメータの値を求めるステップと、を有する。
【請求項5】
前記既知分布の特徴パラメータを用いて、統計理論と可能性理論と特徴パラメータの統合法と情報理論とにより対象物の状態判定及び状態予測を行う方法。
【請求項6】
前記既知分布の特徴パラメータを用いて特徴パラメータの統合法により求めた統合特徴パラメータを、予め指定した確率分布に従う、既知分布の統合特徴パラメータに変換し、既知分布の統合特徴パラメータを用いて統計理論と可能性理論により対象物の状態判定及び状態予測を行う方法。
【請求項7】
前記の諸方法において、状態変化につれて値が単調増加する特徴パラメータあるいは統合特徴パラメータのみ、あるいは、値が単調減少する特徴パラメータあるいは統合特徴パラメータのみ、を選出して、状態判定と状態予測を行う方法。
【請求項8】
前記予め指定した確率分布が正規分布である場合の状態判定と状態予測を行う方法。
【請求項9】
対象物の状態監視のために、波形データを複数の周波数帯域において測定するステップと、前記測定された波形データから雑音を除去するステップと、前記雑音を除去された波形データを、予め指定した確率分布に従う、既知分布の波形データに変換するステップと、前記既知分布の波形データを用いて対象物の状態判定及び状態予測を行うステップと、を有し、対象物の状態判定と状態予測を行う方法であって、前記雑音を除去された波形データを既知分布の波形データに変換するステップにおいて、波形データを正規化し、対象物の基準状態を参照する場合と、対象物の基準状態を参照しない場合と、に分けて変換することを特徴とする方法であり、この方法を実行するために、対象物の波形データを取得するためのセンサ、アンプ、フィルタ、信号処理・計算装置、及び表示出力装置を備えた、対象物の状態判定と状態予測を行うコンピュータ装置。
【請求項10】
前記雑音を除去された波形データを平均値より大きい波形データ、平均値より小さい波形データ、絶対値波形データ及び全体波形データに分けて、予め指定した確率分布に従う、既知分布の波形データ変換する方法。
【請求項11】
前記既知分布の波形データを用いて特徴パラメータと情報理論により対象物の状態判定及び状態予測を行う方法。
【請求項12】
前記予め指定した確率分布が正規分布である場合、波形データを正規分布の波形データに変換する方法。
【請求項13】
センサーで測定した対象物の信号が脈動信号である場合は、前記測定された脈動信号から雑音を除去するステップと、前記雑音を除去された脈動信号の特徴波形データを求めるステップと、前記特徴波形データの正規化を行うステップと、前記正規化された特徴波形データにより特異成分を検出し、特異成分の発生位置を特定するステップと、を有し、対象物の状態判定を行う方法であって、前記特徴波形データは、前記雑音を除去された脈動信号の包絡線波形データである場合と、前記雑音を除去された脈動信号のピーク波形データである場合と、前記雑音を除去された脈動信号の移動平均波形データと、に分けて求められることを特徴とする方法であり、この方法を実行するために、対象物の脈動信号を取得するためのセンサ、周期パルス信号を取得するための周期パルスセンサ、アンプ、フィルタ、包絡線処理部、信号処理・計算装置、及び表示出力装置を備えた、対象物の脈動信号の特異成分の検出と状態判定を行う装置。
【請求項14】
前記測定された脈動信号からローパスフィルタを用いて雑音を除去する方法。
【請求項15】
前記正規化された特徴波形データと、同時に測定した周期パルス波形データにより特異成分を検出し、特異成分の発生位置を特定する方法。

【国際公開番号】WO2004/068078
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【発行日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504665(P2005−504665)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000163
【国際出願日】平成16年1月13日(2004.1.13)
【出願人】(599064878)
【Fターム(参考)】