説明

独立な固体流通制御による化学ループ燃焼方法およびプラント

本発明は、Lバルブなどの少なくとも1つの非機械式バルブにより、流動床の反応領域間の活性物質の固体粒子の流通を独立に制御することを伴う、少なくとも1つの炭化水素化負荷の化学ループ燃焼のための改善された設備および改善された方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は化学ループ燃焼の分野に関する。以降の本文において、化学ループ燃焼(CLC)プロセスと呼ばれるものは活性物質(active mass)のループ酸化−還元またはレドックスプロセスである。一般に、酸化および還元という用語はそれぞれ活性物質の酸化または還元状態に関して使用されることに注目することができる。酸化反応器はレドックス物質(redox mass)(《活性物質》または《酸素キャリア》)が酸化される反応器であり、還元反応器はレドックス物質が還元される反応器である。レドックス物質の還元の間に、燃料は完全に酸化されてCOおよびHOを生成するか、または部分的に酸化されて合成ガスCOおよびHを生成することができる。
【0002】
活性物質の酸化は、空気中で、またはプロセス条件下で酸素をもたらすことができるガス、例えば水蒸気の存在下で行うことができる。この場合、活性物質の酸化により、水素に富むガス流出物(gaseous effluent)を生成することができる。
【0003】
好ましくは、活性物質は金属酸化物である。
【0004】
より詳細には、本発明は、Lバルブ型(L-valve type)の1つまたは複数の非機械式(non-mechanical)バルブを用いて反応区域間の固体粒子の流通(circulation)を独立に制御することによる炭化水素供給物の化学ループ燃焼のための改善したプラントおよび方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】Knowlton, T. M.、「Standpipes and Nonmechanical Valves」、Handbook of Fluidization and Fluid-Particle Systems、Wen-Ching Yang編集、571〜597頁、Marcel Dekker, Inc. New York、2003年においてKnowltonによって説明されたような《Lバルブ》と呼ばれる非機械式バルブの断面図である。
【図2】下向きガス流(A)および上向きガス流(B)による固体流およびガス流の図による表示を含む同じLバルブの断面図である。
【図3】下向きガス流(A)および上向きガス流(B)による固体流およびガス流の図による表示を含む同じLバルブの断面図である。
【図4】Lバルブを使用する循環床プロセス(circulating bed process)を図によって示す(先行技術)。
【図5】循環床ボイラ燃焼プロセスを図によって示す(先行技術)。
【図6】FCC型(流動接触分解)接触分解プロセスを図によって示し、スライドバルブまたはプラグバルブが様々なエンクロージャ(enclosures)間の流通を制御するために使用される(先行技術)。
【図7】CLC(化学ループ燃焼)型燃焼プロセスを図によって示す(先行技術)。
【図8】本発明による固体流通制御を用いる化学ループ燃焼プロセスを図によって示し、デバイスは反応区域間の粒子輸送のための上昇ラインを含む(輸送リフト、変形1)。
【図9】反応区域間の粒子輸送のための上昇ラインなしの本発明による固体流通制御を用いる化学ループ燃焼プロセスを図によって示す(変形2)。
【図10】Lバルブに注入されたガスの調整(regulation)を用いる本発明による化学ループ燃焼プロセスを図によって示す(変形3)。
【図11】例で説明されるモデルを図によって示す。
【図12】流通固体流量の関数として上昇リフト型輸送ラインの圧力降下を示すグラフである。
【図13】各Lバルブのエアレーション流量(aeration flow rate)とプラント中で流通する固体の流量との間の関係を示すグラフである。
【0006】
発明の背景
非機械式バルブは、エルボ(elbow)から上流でのガス注入によりライン中の粒子を流通させることができる。この型の装置はよく知られており、文献(Knowlton, T. M.、「Standpipes and Nonmechanical Valves」、Handbook of Fluidization and Fluid-Particle Systems、Wen-Ching Yang編集、571〜597頁、Marcel Dekker, Inc. New York、2003年)に説明されている。
【0007】
したがって、Lバルブが図1に記載されている。Lバルブは90°エルボを基部に備えた鉛直ラインからなる。鉛直ラインが粒子で充満される場合、方向の変化部の近くのこのエルボから上流でガスを注入すると、ライン中の粒子の流通が促進される。システムの端部(system terminals)に課される圧力条件に応じて、注入されたガスの一部はラインを下に流れ、エルボを通って粒子の輸送を促進する(図2および3、構成AおよびB)。注入されたガスの一部は、粒子流と逆方向に上に流れることもできる(図3、構成B)。注入されたガスの上方に流れる割合はバルブ端部における圧力条件により調整される。
【0008】
ガス注入点から上流での鉛直ライン中の流れが流動化されない(すなわち、ガス流と粒子流との間の速度差が、適用された条件下の粒子の流動化の最小速度未満のままである)場合、Lバルブは固体流通を制御することができる。これらのバルブはゲルダート分類のB群粒子に特に好適であり、B群粒子は高い粒子流量を可能にするための十分に高い最小流動化速度を有する。
【0009】
Knowlton(Knowlton, T. M.、「Standpipes and Nonmechanical Valves」、Handbook of Fluidization and Fluid-Particle Systems、Wen-Ching Yang編集、571〜597頁、Marcel Dekker, Inc. New York、2003年)はLバルブ(図4)を使用する循環床システムを説明している。ガスが底部から注入される(《ガスイン(Gas In)》)循環流動床(CFB)は、粒子を輸送することができるようにし、ガスおよび粒子をサイクロンCに搬送する。粒子を含まないガスはラインを通ってサイクロンを出ていき(《ガスアウト(Gas Out)》)、分離された粒子はLバルブを通って循環床に再び供給される。そのようなシステムでは、ループ内の内部固体流通を循環床のガス流から分離することができ、循環床中の粒子の輸送に利用可能な圧力はLバルブに注入されたエアレーションガスの量に応じて変化する(それにより、Lバルブの鉛直部分の圧力回復(pressure recovery)を変化させることができる)。
【0010】
しかし、従来の工業用流動床燃焼プロセスでは、使用されている技術はループ中の固体の内部流通を独立して制御することができない。循環床ボイラが図5に示される(Nowak等、IFSA 2008、Industrial Fluidization South Africa、25〜33頁、T. HadleyおよびP.Smitによる編集、Johannesburg: South Africa Institute of Mining and Metallurgy、2008年)。燃焼空気は循環床の基部で導入され、石炭および砂粒子をサイクロンに搬送する。次に、粒子は戻り脚部(return leg)を通って循環流動床に再循環される。戻り脚部は固体再循環を促進するように寸法取りされるが、固体流通制御を可能にしない。それはLバルブを備えていない。時には、戻り脚部中のガス上昇流を妨げるために、サイホンがこの戻り脚部に配置される。しかし、そのようなシステムでは、ループ内の固体の流通は循環床に供給された燃焼空気の量に完全に依存する。
【0011】
固体の流通を制御するための他の手段がある。状況が許せば、機械バルブを固体に対して使用することができる。それにより、流動床接触分解プロセス(FCC)では、800℃〜850℃より低い温度でスライドバルブまたはプラグバルブを動作させる方法を使用して様々なエンクロージャ間の流通を制御する(図6、Gauthier、IFSA 2008、Industrial Fluidization South Africa、35〜87頁、T. HadleyおよびP.Smitによる編集、Johannesburg: South Africa Institute of Mining and Metallurgy、2008年)。
【0012】
図6には、FCCのプロセスが実行できるようにする以下の要素が示されている:
R1:再生器No.1
R2:再生器No.2
PV1:機械式プラグバルブ(プラグバルブNo.1)
RSV1:機械式スライドバルブNo.1(スライドバルブNo.1)
RSV2:機械式スライドバルブNo.2(スライドバルブNo.2)
L:上昇輸送ライン(リフト)
Fl:供給物注入
Q=クエンチ
RR:上昇管(riser)反応器
RS:ストリッパ反応器。
【0013】
これらのバルブは流動化流に影響を及ぼし、流れの断面を変更することによって流れを制御する特徴的な特質を有し、これらのバルブの圧力降下は一般に一定であり、バルブから上流での粒子の流動化の状態にのみ依存する。これらのバルブは、ゲルダート分類のA群粒子への操作に特に都合が良い。残念ながら、B群粒子へのこれらのバルブの操作はより微妙である。実際には、流れを乱す大きい気泡を形成することなしにB群粒子の流動化を維持することはできない。さらに、流れに露出されるこれらのバルブの可動部は非常に高い温度(>900℃)にさらすことができない。
【0014】
化学ループ燃焼は、気体、液体、または固体炭化水素供給物の部分燃焼または完全燃焼を、例えば、高温で金属酸化物などの活性物質と接触させることによって行うことができるようにする技法である。次に、金属酸化物は、それが含む酸素の一部を手放し、それは炭化水素燃焼に参加する。したがって、従来法のように、炭化水素を空気と接触させることはもはや必要でない。したがって、燃焼フューム(fumes)は、主に、空気中の窒素によって希釈されていない酸化炭素、水、およびおそらく水素を含む。したがって、窒素がほとんどなく、CO捕捉および貯蔵を考慮に入れることができる高いCO含有量(>90体積%)を有するフュームを生成することが可能である。次に、燃焼に参加した金属酸化物は別の反応エンクロージャに輸送され、そこで空気と接触して酸化される。燃焼区域からの粒子が燃料なしの状態にある場合、この反応区域からのガスはCOがほとんどなく(そのとき、痕跡(trace)としてのみ、例えば1〜2体積%より低い濃度で存在する)、本質的に、金属粒子の酸化の結果として酸素欠乏(depleted)の空気からなる。
【0015】
化学ループ燃焼プロセスの実施では、燃料に接触する大量の活性物質、例えば金属酸化物が必要とされる。金属酸化物は、一般に、鉱石粒子、または工業処理に由来する粒子(鉄鋼業または鉱業の残渣、化学工業または精製からの使用済み触媒)に含まれる。酸化できる金属(例えば、ニッケル酸化物)が堆積された、例えば、アルミナまたはシリカ−アルミナ担体などの合成材料を使用することも可能である。金属酸化物ごとに、理論上利用可能な酸素の量はかなり変化し、30%に近い高い値に達することがある。しかし、材料により、実際に利用可能な最大酸素容量は、一般に、存在している酸素の20%を超えない。したがって、酸素をもたらすためのこれらの材料の容量は全体的に粒子の数重量パーセントを超えず、酸化物ごとにかなり変化し、一般に0.1から10重量%、多くの場合0.3から1重量%にわたる。したがって、流動床の実施は燃焼を行うのに特に有利である。事実、微細化酸化物粒子は、これらの粒子が流体の性質を与えられる(流動化)場合、還元および酸化反応エンクロージャ中で、およびこれらのエンクロージャ間でより容易に流通する。
【0016】
化学ループ燃焼により、例えば、蒸気または電気の形態でエネルギーを生成できるようになる。供給物の燃焼熱は従来の燃焼で生じるものと同様である。後者は化学ループの還元熱と酸化熱との和に対応する。還元熱と酸化熱との間の分布は、化学ループ燃焼を達成するために使用された活性物質(特に金属酸化物)に非常に依存する。ある場合には、発熱状態が活性物質の酸化と還元との間に分布する。他の場合には、酸化は高い発熱性であり、還元は吸熱性である。あらゆる場合、酸化熱と還元熱との和は燃料の燃焼熱に等しい。熱は、燃焼および/または酸化エンクロージャの内側に、その壁に、もしくはその付加物として、またはフュームラインに、または金属酸化物移送ラインに配置された交換器によって抽出される。
【0017】
化学ループ燃焼の原理は現在よく知られている(Mohammad M. Hossain、Hugo I. de Lasa、Chemical-looping combustion (CLC) for inherent CO2 separations-a review、Chemical Engineering Science 63 (2008) 4433 〜4451頁; Lyngfelt A.、Johansson M.、およびT. Mattisson、「Chemical Looping Combustion, status of development」、CFB IX、J.Werther、W.Nowak, K.-E. WirthおよびE.-U. Hartge (編集)、Tutech Innovation, Hamburg (2008年、図7))。図7は、金属酸化物が酸化される「空気」反応器(1)、粒子をガスから分離できるようにするサイクロン(2)、「燃料」反応器または燃焼反応器(3)、すなわち、金属酸化物還元の拠点を図によって示す。しかし、連続的設備における化学ループの実現は多くの研究および開発の対象のままである。
【0018】
従来の循環床燃焼プラントでは、循環ループ中の固体の内部流通は循環床に供給された空気の流れに依存する。
【0019】
一方、化学ループ燃焼プロセスでは、燃焼制御は、燃料と接触する導入された固体粒子の量に依存する。燃焼エンクロージャ中で流通する活性物質粒子の流通は、燃焼で利用可能な酸素の量と、燃焼プロセスの終わりでの活性物質の最終酸化状態とを調整する(conditions)。燃焼が完了した後、活性物質(ほとんどの場合、金属酸化物)は別のエンクロージャ内で空気と接触して再び酸化されなければならない。その2つのエンクロージャ間の流通は、
− 還元反応器と酸化反応器との間の酸素交換、
− 燃焼反応器と酸化反応器との間の熱交換、
− 最小にされなければならない2つのエンクロージャ間のガス移送
を調整する。
【0020】
したがって、空気反応器および燃焼反応器中の固体の流通を、これらのエンクロージャの各々の中の粒子の輸送を調整する流通ガス流量(酸化反応器中の空気、燃料反応器中の蒸気、炭化水素、または燃焼フューム)と無関係に制御できることが重要である。
【0021】
これまでに提供された様々な方法は酸化物流通の独立制御を可能にしていない。したがって、Johannsonn等(2006年)は金属酸化物の酸化が循環床で行われる化学ループ燃焼プロセスを提供している。酸化物は、燃焼が行われる燃料反応器からの放出物を通り抜けるサイクロン中で分離される。次に、金属酸化物は酸化反応器に再循環される。そのようなシステムでは、酸化反応器中の空気流量と無関係に金属酸化物の流通を制御することができない。燃焼反応器中で流通する金属酸化物の流量は、空気反応器中の空気流量を変更することによってのみ変更することができる。
【0022】
別のデバイスが特許FR-2,850,156に記載されている。この場合、燃焼および酸化の2つの反応器は循環床である。ここで再び、2つの反応器間の流通は、各エンクロージャに供給されるガスの流れに依存する。両方の場合、サイホンが、金属酸化物の輸送を可能にする移送ラインに配置されている。これらのサイホンにより、酸化反応器から来るガスが移送ラインを通って燃焼反応器の方に、または逆に、流通しないようにすることによって、2つのエンクロージャ間のガス相のシーリングを行うことができる。これらのサイホンは、金属酸化物の流通を制御および変更することができない。
【0023】
さらに、化学ループ燃焼方法は、好ましくは、高温で(800℃と1200℃との間、典型的には900℃と1000℃との間で)実施される。したがって、FCCなどの他のプロセスで慣例的に使用されている機械バルブを使用して金属酸化物の流通を制御することができない。
【0024】
したがって、本発明の目的は、燃焼(還元)および酸化エンクロージャ中で流通するガス流と無関係に化学ループ中の固体の流通を制御することができるようにする新規のプラントおよび新規の方法を提供することである。
【0025】
本発明の目的
本発明の1つの目的は、気体、液体、または固体の炭化水素の完全または部分燃焼を達成できるようにする化学ループ燃焼方法である。
【0026】
本発明の別の目的は、気体、液体、または固体の炭化水素の完全または部分燃焼を達成できるようにする化学ループ燃焼プラントである。
【0027】
本発明による方法は、少なくとも2つの流動化反応区域を含むプラントで実施され、一方の流動化反応区域は粒子を酸化させるために活性物質の(例えば、金属酸化物タイプの)固体粒子を空気に接触させ、他の流動化反応区域は燃焼反応を行うために炭化水素を活性物質に接触させ、燃焼酸素は活性物質粒子の還元によって供給される。
【0028】
本発明による方法およびプラントでは、様々な反応区域間の固体(酸素キャリアとして働く活性物質粒子)の流通は、各々実質的に鉛直なラインと、次に実質的に水平なラインとからなるLバルブ型の非機械式バルブによって制御され、制御ガスはエルボより上流で注入される。
【0029】
本発明は、さらに、熱生成のため、合成ガス生成のため、または水素生成のための固体の流通の制御による前記化学ループ燃焼方法の使用に関する。
【0030】
本発明の説明
本発明の概要
本発明は、少なくとも1つの別個の(distinct)流動床還元反応区域(i)および少なくとも1つの別個の流動床酸化反応区域(i+1)中の少なくとも1つの炭化水素供給物のための化学ループ燃焼方法に関し、反応区域の各々または一部の間の活性物質の固体粒子の流通は、それぞれ実質的に鉛直なライン部分、実質的に水平なライン部分、および前記2つの部分を接続するエルボからなる1つまたは複数の非機械式バルブを用いて、
− 前記バルブの実質的に鉛直なライン部分の上部端部を通って反応区域(i)または(i+1)から来る固体粒子を導入し、
− 前記バルブのエルボより上流で所与のエアレーション(aeration)流量で制御ガス(control gas)を注入し、
− エアレーション流量に応じて、(1つまたは複数の)非機械式バルブ(non-mechanical valve(s))の端部(terminals)の圧力差条件(differential pressure conditions)を制御して、前記バルブの実質的に水平なライン部分の固体粒子の流量を調整し、
− ループの後続の反応区域(i+1)または(i)に(1つまたは複数の)非機械式バルブを出ていく固体粒子を供給する
ことによって2つの連続する反応区域間で固体粒子を搬送することによって制御される。
【0031】
各反応区域は、互いに関連して配置された(arranged in relation to one another)1つまたは複数の流動化反応器の組からなることができる。
【0032】
いくつかの非機械式バルブを、2つの連続する反応区域間に並列に配置することができる。
【0033】
本発明による方法の一実施形態は、
− (少なくとも)2つの連続する反応区域(i)と(i+1)との間に、(1つまたは複数の)非機械式バルブから下流に、上昇輸送ライン(リフト)にキャリアガスを追加的に供給するステップであり、前記ラインは(1つまたは複数の)非機械式バルブから出ていく固体粒子が供給される、ステップと、
− 区域(i)と(i+1)との間に配置された(1つまたは複数の)非機械式バルブへの流動化粒子の通過(passage)と、次に、上昇輸送ラインに注入された少なくとも1つのキャリアガスによる固体粒子の輸送とにより区域(i)から区域(i+1)に固体粒子の輸送を行い、上昇ラインの出口に配置されたガス−固体分離手段によりキャリアガスから固体粒子を分離して、区域(i+1)に固体粒子を供給するステップと、
− 区域(i+1)と(i)との間に配置された(1つまたは複数の)非機械式バルブへの流動化粒子の通過と、次に、上昇輸送ラインに注入された少なくとも1つのキャリアガスによる固体粒子の輸送とにより区域(i+1)の出口から区域(i)に固体粒子の輸送を行い、上昇ラインの出口に配置されたガス−固体分離手段によりキャリアガスから粒子を分離して、区域(i)に固体粒子を供給するステップと
を含む。
【0034】
本発明による方法の別の実施形態では、反応区域(i+1)は前の反応区域(i)より少なくとも部分的に上に配置され、
− 固体粒子は、区域(i+1)と(i)との間に配置された(1つまたは複数の)非機械式バルブにより重力流によって区域(i+1)から区域(i)に輸送され、
− 区域(i)から区域(i+1)への固体粒子の輸送は、区域(i)と(i+1)との間に配置された(1つまたは複数の)非機械式バルブへの流動化粒子の通過と、次に、上昇輸送ラインに注入された少なくとも1つのキャリアガスによる固体粒子の輸送とにより行われ、固体粒子は、区域(i+1)に固体粒子を供給するように上昇ラインの出口に配置されたガス−固体分離手段によりキャリアガスから分離される。
【0035】
本発明の別の目的は、活性物質の固体粒子の存在下での少なくとも1つの炭化水素供給物のための化学ループ燃焼プラントであり、それは、少なくとも1つの流動床還元反応区域(i)と、少なくとも1つの流動床酸化反応区域(i+1)と、前記還元反応区域(i)および前記酸化反応区域(i+1)からの前記粒子の流通のための少なくとも1つの上昇手段(6)であり、前記粒子がキャリアガス(19)によってその上昇流通手段に搬送される、少なくとも1つの上昇手段と、上昇流通手段の出口に配置され、ライン(8)によって前記酸化反応区域(i+1)に接続された少なくとも1つのガス−固体分離手段(7)と、酸化反応区域(i+1)と還元反応区域(i)との間の前記粒子の流通を制御するための少なくとも第1のバルブと、還元反応区域(i)と上昇流通手段(6)との間の前記粒子の流通を制御するための少なくとも第2のバルブとを含み、これらのバルブは所与のエアレーション流量で制御ガスを注入するための少なくとも1つの手段(11、4)を含む。
【0036】
本発明の変形では、プラントは、
− 前記酸化反応区域(i+1)および前記還元反応区域(i)の前記粒子のための少なくとも第2の上昇流通手段(12)であり、前記第1の制御バルブと前記還元反応区域(i)との間に配置され、前記粒子が第2のキャリアガス(20)によって上昇流通手段に搬送される、少なくとも第2の上昇流通手段(12)と
− 前記第2の上昇流通手段(12)の出口に配置され、前記還元反応区域(i)に接続された少なくとも第2のガス−固体分離手段(13)と
をさらに含むことができる。
【0037】
反応区域で行われる、流動化反応器のレベル測定および/または輸送ラインの圧力降下測定による非機械式バルブの制御ガスのエアレーション流量のサーボ制御によって固体の流通を制御することが可能である。
【0038】
したがって、制御ガス(4)のエアレーション流量は、還元反応区域(i)の少なくとも1つの流動床のレベル測定手段(25)によりサーボ制御(23)される調整バルブ(21)によって制御することができ、制御ガス(11)のエアレーション流量は、第1の反応区域に粒子を搬送する上昇輸送ライン(12)の圧力降下測定手段(26)によりサーボ制御(24)される調整バルブ(22)によって制御することができる。
【0039】
有利には、(1つまたは複数の)非機械式バルブの水平部分の長さLhは、水平ライン部分の直径Dhの1倍と20倍との間で、好ましくは、Dhの3倍と7倍との間で選択される。
【0040】
有利には、鉛直ライン部分の直径Dvは(1つまたは複数の)非機械式バルブの水平ライン部分の直径Dh以上に選択される。
【0041】
好ましくは、(1つまたは複数の)非機械式バルブの鉛直ライン部分の直径Dvおよび水平ライン部分の直径Dhは実質的に同一に選択される。
【0042】
有利には、エルボから上流の制御ガス注入ポイントは、鉛直ライン部分の直径Dvの1倍から5倍の程度の距離x(非機械式バルブの鉛直部分の注入ポイントと最低ポイントの間の高さの差)に配置される。
【0043】
好ましくは、固体活性物質粒子はゲルダート分類のB群に属する。
【0044】
より好ましくは、固体活性物質粒子は金属酸化物である。
【0045】
本発明は、さらに、水素生成、合成ガス生成、または熱生成のための本発明による方法の使用に関する。
【0046】
詳細な説明
化学ループ燃焼は、いくつかの反応区域間で、金属酸化物などの酸素キャリアとして働く活性物質を含む固体粒子を流通させることによって、熱、合成ガス、水素を生成することができるようにし、金属酸化物は、酸化媒体(例えば、空気)との接触、次に還元媒体(例えば、気体、液体、または固体の炭化水素)との接触に連続的にさらされる。
【0047】
流通および接触を容易にするために、本発明は、反応区域が流動床反応器からなる方法に関する。
【0048】
熱発生の状況の中で、活性物質粒子(例えば、金属酸化物粒子)は、有利には、金属酸化物が酸化される流動床中で空気に接触し、次に、ラインを通って、金属酸化物が炭化水素、例えば、メタン、天然ガス、石油蒸留残査を含む重油、石油コークス、または石炭に接触する流動床に搬送される。次に、酸化物は炭化水素に接触して還元され、炭化水素は粒子によって供給された酸素に接触して燃焼する。燃焼区域のフュームは、窒素がない状態での部分または完全燃焼に由来する生成物(CO、H、CO、HO、SO…)を本質的に含み、床(bed)は例えば燃焼フューム、水蒸気によって流動化され得る。したがって、次に、フュームは、必要があれば、生成されたCOまたは合成ガスを濃縮させるために容易に処理する(水凝縮、フューム脱硫)ことができ、それにより、COの捕捉または合成ガスの使用が容易におよび興味深くなる。燃焼熱を反応区域内の熱交換によって回収し、蒸気生成または任意の他の用途に利用することができる。
【0049】
水素生成の状況の中で、還元された金属酸化物を含む粒子が例えば炭化水素または水蒸気にさらされるプロセス内の他の反応区域を一体化することも可能である。
【0050】
還元および酸化反応が金属酸化物との接触によって行われる条件は厳しい。反応は、一般に、800℃と1200℃との間で、典型的には、900℃と1000℃との間で行われる。エネルギー生成を対象とした方法は、有利には、大気圧にできるだけ近い圧力で作動する。合成ガスまたは水素生成を対象とした方法は、好ましくは、より高圧(典型的には、20bar(2MPa)と50bar(5MPa)との間の範囲、例えば、フィッシャー−トロプシュプロセスにおいて供給物として合成ガスを使用する場合には30bar(3MPa)である)で作動し、それにより、生成されたガスの圧縮に関連するエネルギー消費を最小にするために反応生成物を使用する方法を下流で実施することが可能になる。
【0051】
酸化および還元反応を行うのに必要とされる反応時間は、扱われる供給物の性質および使用される金属酸化物に依存し、数秒から約10分に及ぶ。液体および固体供給物の燃焼反応は、一般に、例えば、数分の程度のより長い反応時間を必要とする。
【0052】
固体活性物質粒子の性質
本発明によるプラントおよび方法は任意のタイプの活性物質で使用することができる。好ましくは、活性物質粒子は金属酸化物粒子である。
【0053】
化学ループ燃焼方法の実施では、燃料に接触する大量の活性物質が必要とされる。
【0054】
好ましくは、これらの固体は、30ミクロンと500ミクロンとの間のザウタ径(Sauter diameter)、および1400kg/mと8000kg/mとの間、好ましくは、1400kg/mと5000kg/mとの間の範囲の粒子密度の粉末の形態で調整される。
【0055】
粒子の流動性はその粒度に応じて変化する(ゲルダート、1973年)。したがって、より細かいゲルダート分類のA群粒子はより低い流動化速度によって特徴づけられ、低速の流動化特性により、流動化高密度輸送(fluidized dense transport)と見なすことができる。より粗いゲルダート分類のB群粒子はより高い流動化速度によって特徴づけられ、流動化特性により、2つの反応エンクロージャ間のライン中の非流動化高密度輸送(non-fluidized dense transport)と見なすことができる。
【0056】
活性物質が金属酸化物からなる場合、後者は、一般に、鉱石粒子(単独または混合で使用されるFe、Ti、Ni、Cu、Mg、Mn、Co、V酸化物)に、または工業処理から得られる粒子(鉄鋼業または鉱業の残渣、化学工業または精製からの使用済み触媒)に含まれる。酸化できる金属(例えば、ニッケル酸化物)が堆積された、例えば、アルミナまたはシリカ−アルミナ担体などの合成材料を使用することも可能である。
【0057】
金属酸化物ごとに、理論上利用可能な酸素の量はかなり変化し、30%に近い高い値に達することがある。しかし、材料により、実際に利用可能な最大酸素容量は、一般に、存在している酸素の20%を超えない。したがって、酸素をもたらすためのこれらの材料の容量は全体的に粒子の数重量パーセントを超えず、酸化物ごとにかなり変化し、一般に0.1から15重量%、多くの場合0.3から1重量%の範囲である。したがって、流動床の実施は燃焼を行うのに特に有利である。事実、微細化酸化物粒子は、粒子が流体の性質を与えられる(流動化)場合、還元および酸化反応エンクロージャ中で、およびこれらのエンクロージャ間でより容易に流通する。
【0058】
反応区域間の固体の流通
化学ループプロセスの円滑な動作を保証するには、例えば金属酸化物粒子などの活性物質(または酸素キャリア)として働く固体粒子の流通を制御することが重要である。実際には、エンクロージャ間の粒子の輸送は、酸素の輸送と、プロセスの円滑な動作にとって重要である反応物と、様々な区域間の熱交換、したがって、各区域が他の区域の温度に応じて動作する温度レベルとを調整する。粒子の輸送は、さらに、様々な区域の間のガス交換媒介物(gas exchange vector)として検討されなければならず、移送区域で流れる粒子はある反応区域から次の反応区域にガスを運んでいき得る。
【0059】
考慮している温度レベルでは、流れがバルブと接触する前に冷却される、すなわち、エネルギー的にペナルティが課され技術的に複雑なオプションである場合を除いて、機械式バルブは2つの反応区域の間の固体流通を制御するために使用することができない。したがって、本発明の目的は、実質的に鉛直なラインと実質的に水平なラインとからなるL型非機械式バルブを使用し、制御ガスを2つのラインから構成されたエルボから上流で注入する方法を実施することにある。
【0060】
第1の反応区域からの粒子は実質的に鉛直なラインの上部端部を通ってLバルブに流れ込み、当業者に知られている抜き出し手段(withdrawal means)(円錐、傾斜ライン、抜き出し穴、…)によりバルブに供給される。
【0061】
次に、粒子は顆粒流(granular flow)で鉛直部分を通って流れ、粒子とガスとの間の実際の速度差は最小流動化速度未満である。
【0062】
Lバルブに注入された制御ガスは、鉛直ラインを下に流れる粒子に対して向流方向の上方に、または粒子とともに下方に流れ、バルブの水平部分の粒子の流れを促進することができる。
【0063】
上昇ガスと下降ガスとの間の分布はLバルブの端部(複数)の圧力差条件に依存する。例えば、バルブから上流の圧力がバルブから下流の圧力に対して増加している場合、通常、上昇ガスの割合が減少することを観測することができる。水平部分の固体の流量は、水平部分の粒子とともに流通する下降ガスの量に依存する。
【0064】
Lバルブ寸法決め
DvはLバルブの鉛直部分のラインの直径であり、Dhは水平部分中ラインの直径であり、Lhは水平ラインの長さであり、Lvは鉛直ラインの長さであり、xは鉛直部分の制御ガス注入ポイントの高さとLバルブの最低部分との間の距離である。
【0065】
高さLvは、2つの反応エンクロージャの相対位置と、プロセスの圧力バランスを完全にするために補償されるべき圧力増加または降下とに依存する。したがって、この高さは、当業者が個別にプラントを寸法決めすることに由来する。
【0066】
有利には、水平ライン長さは安定した粒子流を提供するために制限されなければならない。この長さLhは、好ましくは、1Dhと20Dhとの間、好ましくは、3Dhと7Dhとの間の範囲にある。直径DvおよびDhが実質的に同一である場合、Lバルブの働きは有利である。どんな場合も、水平部分の直径Dhは、好ましくは、Dv以上である。
【0067】
最後に、エルボから上流の制御ガス注入ポイントはエルボの近くに、好ましくは、1Dvから5Dvの程度の距離Xに位置され、典型的な値はX=2Dv〜3Dvに近い。
【0068】
2つの反応区域間で、1つまたは複数のLバルブを並列に配置することが可能である。
【0069】
本発明によるプラントおよび方法の動作
図8は本発明の第1の実施形態を記載する。実施される方法は化学ループ原理を使用する燃焼方法である。
【0070】
第1の還元反応区域(1)は、燃焼を達成するために気体、液体、または固体の炭化水素(15)と活性物質粒子(ここでは金属酸化物)との間の接触を可能にする。反応区域は、流動床の区間の上のガス分配ボックスと、現在の場合にはCO濃縮フュームからなるガス流出物(16)を脱塵するための手段とからなる簡単な流動床反応器、または流動床(複数)の組合せ、または内部もしくは外部粒子再循環による循環流動床とすることができる。
【0071】
この反応区域では、炭化水素と金属酸化物との間の接触区域の少なくとも一部は高密度流動化相(dense fluidized phase)からなる。金属酸化物粒子は第1の反応区域(1)から抜き出され、抜き出された粒子は、Lバルブを形成する水平ライン(5)に終端する鉛直ライン(3)に供給される。制御ガス(例えば、窒素、水蒸気、またはフューム)はライン(4)を通ってこのLバルブに注入される。Lバルブ(3〜5)内の固体流通はライン(4)を通して注入されるガスの量に依存する。粒子はLバルブを出ていき、キャリアガス(19)が供給される上昇輸送ライン(リフト)(6)に供給される。リフト(6)の出口において、サイクロンなどの分離手段(7)が粒子からキャリアガスを分離できるようにする。次に、前記粒子はライン(8)を通って第2の反応区域(2)に搬送され、ライン(17)を通って第2の反応区域に供給された空気との接触による酸化物粒子の酸化の反応が行われる。反応区域は、流動床の区間の上のガス分配ボックスと、現在の場合には希薄空気(depleted air)からなるガス流出物(18)を脱塵するための手段とからなる簡単な流動床反応器、または流動床(複数)の組合せ、または内部もしくは外部粒子再循環による循環流動床とすることができる。この反応区域では、炭化水素と金属酸化物との間の接触区域の少なくとも一部は高密度流動化相からなる。金属酸化物粒子は第2の反応区域(2)から抜き出され、抜き出された粒子は、Lバルブを形成する水平ライン(10)に終端する鉛直ライン(9)に供給される。制御ガス(例えば、窒素、水蒸気、または空気)はこのLバルブ(11)に注入される。Lバルブ(9〜10)中の固体流通はライン(11)を通して注入されるガスの量に依存する。粒子はLバルブ(9〜10)を出ていき、キャリアガス(20)が供給される上昇輸送ライン(リフト)(12)に供給される。リフトの出口において、サイクロンなどの分離手段(13)が燃焼反応が行われる第1の反応区域(1)にライン(14)を通って搬送される粒子からキャリアガスを分離できるようにする。
【0072】
図8は2つの反応区域による方法およびプラントを記載しているが、図8のように順次配置された一連の3つ以上の反応区域を考えることが可能である。
【0073】
本発明による方法の実施において、反応区域間の粒子の移送は、Lバルブに注入される制御ガスの量にのみ依存する。したがって、Lバルブに注入される制御ガスの流れを変更することによって金属酸化物の流通を変化させ、すべての他の流体(15、17、19、20)は一定に維持することが可能である。
【0074】
Lバルブでは、鉛直部分(3、9)の粒子の流れは高密度非流動化顆粒流(dense non-fluidized granular flow)であり、粒子はこれらの下部ラインで最小流動化速度で流通するガスに関連する相対速度で流れる。この方法の実施は、好ましくは、ゲルダート分類のB群に属する粒子で行われる。Lバルブ(4、11)に注入されるガスは、一般に、輸送に必要とされるガス(19、20)のわずかな割合(<1%)を示し、これらの材料の最小流動化速度は粒子移送速度に対して非常に低い。
【0075】
したがって、上昇輸送ライン(リフト)(6、12)で使用されるキャリアガスは、蒸気、再循環フューム、空気、または不活性ガスからなることができ、それらの選択に応じて、ある反応区域から次の反応区域に搬送されるガスの混合を妨げる緩衝区域(buffer zone)を作ることを可能にすることができる。
【0076】
図8に記載された構成では、Lバルブは、粒子の輸送を可能にする上昇輸送ライン(リフト)に供給する。リフトは、その出口にキャリアガスの離脱を可能にする分離手段を備える。したがって、2つの反応エンクロージャ(1)と(2)との間に粒子の輸送のためのガスを導入することが可能であり、このガスは、輸送リフトの出口に配置された分離手段によりエンクロージャ(1)にもエンクロージャ(2)にも入らない。この構成は、反応エンクロージャ間にガスシーリングが必要である場合、特に有利である。実際には、Lバルブの流通の制御で使用されるガスとリフト中のキャリアガスとは、気相の炭化水素が見いだされる反応区域(1)と、気相の酸素が見いだされる反応区域(2)との間にシーリングを与える不活性ガス(水蒸気、窒素、二酸化炭素、…)からなることができる。反応区域(1)または(2)からLバルブに搬送されるガスの量はゼロであるか、または非常に低い。それらは、エンクロージャのそれぞれの圧力上昇と流通粒子の流量とに依存する。これらの少量はリフトキャリアガス(例えば、不活性ガス)によって希釈され、輸送リフトの出口に配置されたセパレータ(7、13)のガス出口を通ってユニットから放出される。したがって、反応区域間にLバルブおよびリフトのレイアウトを含む構成により、流通を制御し、反応区域間にガスシーリングを与えることができることが分かる。
【0077】
図9は、酸化反応区域(2)が還元燃焼区域(1)より少なくとも部分的に上に配置されている点で図8に示された構成と単に異なる別の可能なレイアウトを示す。したがって、輸送リフトを使用することなく区域(2)から区域(1)に酸化物粒子を輸送することが可能である。次に、単純なLバルブ(9、10、11)により、粒子を区域(2)から区域(1)に移送することができる。区域(1)から区域(2)への移送は、Lバルブ(3、4、5)、上昇輸送ライン(6)、および金属酸化物とキャリアガスとを対象とした分離手段(7)を使用することによって達成される。
【0078】
Lバルブに注入されるガスの調整により様々なエンクロージャ間のプロセスにおける固体の流通を制御することが可能である。図10は図8に記載された方法を取り上げる。バルブがLバルブへのガスの注入を調整する場合、高密度相流動床(dense phase fluidized bed)のレベル測定、または輸送リフトの圧力降下などの流通流の間接測定によって、Lバルブに注入されるガスの量をサーボ制御することが可能である。したがって、図10において、ガス注入(4)は反応エンクロージャ(1)の流動床のレベル測定手段(25)によりサーボ制御(23)される調整バルブ(21)によって制御され、ガス注入(11)はリフト(12)の圧力降下(26)の測定によりサーボ制御(24)される調整バルブ(22)によって制御される。他のサーボ制御方策が可能である。
【0079】
例:
本発明の主な特徴に従って寸法取りされ、周囲無反応条件(ambient reactionless conditions)下で使用される循環ループの例が、本発明の動作を示すために以下で与えられる。
【0080】
モデル(図11)は、主として、循環ループとも呼ばれる2つのループによって互いに接続された10cmの直径の2つの同一の流動床R1およびR2からなる。各ループは、等しい直径(16mm)の鉛直部と水平部からなるL形状脚部(L-shaped leg)とも呼ばれるLバルブが補充された20mmの直径および2.5mの長さのリフト(上昇輸送ライン)から構成され、エアレーションガスはLバルブの底部に対して30mmの高さで注入される。粒子はLバルブの鉛直部分(Vv1またはVv2)の頂部で流動床(R1またはR2)から抜き出される。それらは鉛直部分を通り、次に、Lバルブの水平部分(Vh1またはVh2)を通って流れる。次に、それらはリフト(L1またはL2)に搬送され、その端部で、サイクロン(C1またはC2)がリフトのキャリアガスを粒子から分離する。粒子は、戻り脚部およびサイホン(S1またはS2)を通って流動床(R2またはR1)に再注入される。
【0081】
この試験の間に使用された粒子は、平均直径205ミクロンおよび2500kg/mに等しい粒子密度の砂粒子である。流動床R1およびR2において、粒子は0.08m/sの空塔速度(superficial velocity)で流動化される。このガス速度は0.03m/sの程度の最小流動化速度(Umf)よりも高い。固体粒子は第1の反応器R1から鉛直脚部Vv1に下方に流れ、次に、水平脚部Vh1の流通は、Lバルブの流れの方向の変化部分の上流で導入された制御ガスの注入(エアレーション流)によって行われる。固体の流量はエアレーション流量を調整することによって制御される。リフトでは、一定のキャリアガス流量が維持される。このキャリアガスはリフトの底部で導入され、Lバルブに導入されたエアレーションガスと異なる。
【0082】
十分な粒子輸送を行うために、リフトL1またはL2のガス速度UL1またはUL2は一定でかつ6m/sに等しく維持される。リフトから下流で、浮遊物(suspension)が、粒子とガスとの間の分離を可能にするサイクロンC1またはC2を補充する水平輸送ラインT1またはT2内で流通する。ガスはサイクロンの上部出口を通って出ていき、固体はサイホンS1またはS2に送られ、その後、二番目の反応器(R2またはR1)に送り返される。
【0083】
Lバルブに注入される制御ガス(エアレーションガス)の量は、Lバルブ(直径=16mm)の鉛直部分の流れの断面の関数である。したがって、この区間のエアレーションの空の床(empty bed)の空塔速度を計算することが可能である。次に、Lバルブ1のエアレーションは空の床の空塔速度Uv1によって表され、Lバルブ2のエアレーションは空の床の空塔速度Uv2によって表される。
【0084】
それぞれ速度Uv1およびUv2に対応するLバルブに送られたガスの量により、リフトL1を介して反応器R2に送られる(図12)、およびリフトL2を介して反応器R1に送られる固体の流れを制御することが可能になる。
【0085】
ループにおいて、非定常動作によって固体の流れを評価することが可能であり、非定常動作の間のエンクロージャ内の時間の関数としてのレベル変化により瞬間固体流量を測定することができる。次に、これらの固体流量は輸送リフトの圧力降下と関連づけられる。実際には、固定のガス体積流量では、固体流量が増加すると、リフトの圧力降下は増加することがよく知られている。この例では、この圧力降下の増加は図12に示されるように固体流量の関数として実質的に線形であり、2つのリフトは同様の圧力降下を有する(それらの形状および課せられる輸送速度は同一である)。
【0086】
これらの予備キャリブレーションが達成された後、プラントの連続動作は、2つのLバルブの各々のものに同一の制御ガスエアレーション流量を課することによって確立される。注入された制御ガスの流量が、0.15m/sに等しい各Lバルブのガス速度(Uv1およびUv2)に対応する場合、安定動作が観測され、各エンクロージャのレベルは経時的に一定のままである。そのような条件下で各リフトで測定された圧力降下は約5mbar(500Pa)であり、約60kg/時間の各リフトの固体流量に対応する(図12)。
【0087】
次に、各Lバルブのエアレーション流量は0.175m/sの空塔速度(Uv1およびUv2)に達するように増加される。次に、固体流通はほぼ80kg/h(リフトで記録された6mbに等しい圧力降下)に達する。次に、Lバルブのエアレーション流量を0.13m/sに減少させることによって、固体流通は約48kg/h(リフトに記録された4mbに等しい圧力降下)に減少する。
【0088】
この例の示すところによると、プラント中の固体流通はLバルブの制御ガスによって課されるエアレーションにのみ依存する。図13は、各Lバルブのエアレーション流量とプラント中で流通する固体の流量との関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの別個の流動床還元反応区域(i)および少なくとも1つの別個の流動床酸化反応区域(i+1)中の少なくとも1つの炭化水素供給物のための化学ループ燃焼方法であって、
前記反応区域の各々または一部の間の活性物質の固体粒子の流通が、それぞれ実質的に鉛直なライン部分、実質的に水平なライン部分、および前記2つの部分を接続するエルボからなる1つまたは複数の非機械式バルブを用いて、
− 前記バルブの前記実質的に鉛直なライン部分の上部端部を通って反応区域(i)または(i+1)から来る固体粒子を導入し、
− 前記バルブの前記エルボから上流で所与のエアレーション流量で制御ガスを注入し、
− 前記エアレーション流量に応じて、前記バルブの前記実質的に水平なライン部分の前記固体粒子の流量を調整するように、前記(1つまたは複数の)非機械式バルブの端部の圧力差条件を制御し、
− ループの後続する反応区域(i+1)または(i)に前記(1つまたは複数の)非機械式バルブを出ていく前記固体粒子を供給する
ことにより2つの連続する反応区域間で前記固体粒子を輸送する
ことによって制御される、化学ループ燃焼方法。
【請求項2】
各反応区域が、互いに関連して配置された1つまたは複数の流動化反応器の組からなる、請求項1に記載の化学ループ燃焼方法。
【請求項3】
いくつかの非機械式バルブが2つの連続する反応区域間に並列に配置される、請求項1または2に記載の化学ループ燃焼方法。
【請求項4】
− (少なくとも)2つの連続する反応区域(i)と(i+1)との間に、前記(1つまたは複数の)非機械式バルブから下流で、上昇輸送ラインにキャリアガスを追加的に供給するステップであり、前記ラインは前記(1つまたは複数の)非機械式バルブから出ていく前記固体粒子が供給される、ステップと
− 区域(i)と(i+1)との間に配置された前記(1つまたは複数の)非機械式バルブへの流動化粒子の通過と、次に、前記上昇輸送ラインに注入された少なくとも1つのキャリアガスによる前記固体粒子の輸送とにより区域(i)から区域(i+1)に前記固体粒子の輸送を行い、前記上昇ラインの出口に配置されたガス−固体分離手段により前記キャリアガスから前記固体粒子を分離して、区域(i+1)に前記固体粒子を供給するステップと、
− 区域(i+1)と(i)との間に配置された前記(1つまたは複数の)非機械式バルブへの流動化粒子の通過と、次に、上昇輸送ラインに注入された少なくとも1つのキャリアガスによる前記固体粒子の輸送とにより区域(i+1)の出口から区域(i)に前記固体粒子の輸送を行い、前記上昇ラインの出口に配置されたガス−固体分離手段により前記キャリアガスから前記粒子を分離して、区域(i)に前記固体粒子を供給するステップと
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の化学ループ燃焼方法。
【請求項5】
反応区域(i+1)が、少なくとも部分的に、前の反応区域(i)より上に配置され、
− 前記固体粒子が、区域(i+1)と(i)との間に配置された前記(1つまたは複数の)非機械式バルブにより重力流によって区域(i+1)から区域(i)に輸送され、
− 区域(i)から区域(i+1)への前記固体粒子の輸送が、区域(i)と(i+1)との間に配置された前記(1つまたは複数の)非機械式バルブへの流動化粒子の通過と、次に、上昇輸送ラインに注入された少なくとも1つのキャリアガスによる前記固体粒子の輸送とにより行われ、前記固体粒子が、区域(i+1)に前記固体粒子を供給するように前記上昇ラインの出口に配置されたガス−固体分離手段により前記キャリアガスから分離される、請求項1から3のいずれか一項に記載の化学ループ燃焼方法。
【請求項6】
前記固体の流通が、前記反応区域で行われる、流動化反応器のレベル測定および/または前記輸送ラインの圧力降下測定による前記非機械式バルブの制御ガスのエアレーション流量のサーボ制御によって制御される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化学ループ燃焼方法。
【請求項7】
前記制御ガス(4)のエアレーション流量が、還元反応区域(i)の少なくとも1つの流動床のレベル測定手段(25)によりサーボ制御(23)される調整バルブ(21)によって制御され、前記制御ガス(11)のエアレーション流量が、他の反応区域に前記粒子を搬送する前記上昇輸送ライン(12)の圧力降下測定手段(26)によりサーボ制御(24)される調整バルブ(22)によって制御される、請求項6に記載の化学ループ燃焼方法。
【請求項8】
前記(1つまたは複数の)非機械式バルブの水平部分の長さLhが、前記水平ライン部分の直径Dhの1倍と20倍との間で、好ましくは、Dhの3倍と7倍との間で選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記鉛直ライン部分の直径Dvが前記(1つまたは複数の)非機械式バルブの前記水平ライン部分の前記直径Dh以上に選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記(1つまたは複数の)非機械式バルブの前記鉛直ライン部分の前記直径Dvおよび前記水平ライン部分の前記直径Dhが実質的に同一に選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記エルボから上流の制御ガス注入ポイントが、前記鉛直ライン部分の直径Dvの1倍から5倍の程度の距離x(前記非機械式バルブの鉛直部分における前記注入ポイントの高さと最低ポイントとの間の差)に位置する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
固体活性物質粒子がゲルダート分類のB群に属する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化学ループ燃焼方法。
【請求項13】
前記固体活性物質粒子が金属酸化物である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化学ループ燃焼方法。
【請求項14】
水素生成のための請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項15】
合成ガス生成のための請求項1から13のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項16】
熱生成のための請求項1から13のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項17】
活性物質の固体粒子の存在下での少なくとも1つの炭化水素供給物のための化学ループ燃焼プラントであって、
少なくとも1つの流動床還元反応区域(i)と、少なくとも1つの流動床酸化反応区域(i+1)と、前記還元反応区域(i)および前記酸化反応区域(i+1)からの前記粒子の流通のための少なくとも1つの上昇手段(6)であり、前記粒子がキャリアガス(19)によって前記上昇流通手段に搬送される、少なくとも1つの上昇手段と、前記上昇流通手段の出口に配置され、ライン(8)によって前記酸化反応区域(i+1)に接続された少なくとも1つのガス−固体分離手段(7)と、酸化反応区域(i+1)と還元反応区域(i)との間の前記粒子の流通を制御するための少なくとも第1のバルブと、還元反応区域(i)と上昇流通手段(6)との間の前記粒子の流通を制御するための少なくとも第2のバルブとを含み、前記バルブが所与のエアレーション流量で制御ガスを注入するための少なくとも1つの手段(11、4)を含む、化学ループ燃焼プラント。
【請求項18】
− 前記酸化反応区域(i+1)および前記還元反応区域(i)の前記粒子のための少なくとも第2の上昇流通手段(12)であり、前記第1の制御バルブと前記還元反応区域(i)との間に配置され、前記粒子が第2のキャリアガス(20)によって前記上昇流通手段に搬送される、少なくとも第2の上昇流通手段(12)と、
− 前記第2の上昇流通手段(12)の出口に配置され、前記還元反応区域(i)に接続された少なくとも第2のガス−固体分離手段(13)と
をさらに含む、請求項17に記載のプラント。
【請求項19】
前記制御バルブが、実質的に水平なライン部分(10、5)にエルボによって接続された実質的に鉛直なライン部分(9、3)からなる、請求項17または18に記載のプラント。
【請求項20】
前記第1のバルブが、上昇流通手段(12)の圧力降下測定手段(26)によってサーボ制御される、前記エアレーション流量を調整するための手段(21)を含む、請求項18または19に記載のプラント。
【請求項21】
前記第2のバルブが、還元反応エンクロージャ(i)の前記流動床のレベル測定手段(25)によってサーボ制御される、エアレーション流量を調整するための手段(21)を含む、請求項17から20のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項22】
前記(1つまたは複数の)制御バルブの前記水平ライン部分の長さLhがその直径の1倍と20倍との間の範囲にある、請求項19から21のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項23】
前記鉛直ライン部分の直径Dvが前記(1つまたは複数の)制御バルブの前記水平ライン部分の直径Dh以上であることを特徴とする請求項19から22のいずれか一項に記載のプラント。

【図1】
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【図2−3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−533049(P2012−533049A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520060(P2012−520060)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/FR2010/000476
【国際公開番号】WO2011/007055
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【出願人】(510122762)トタル ソシエテ アノニム (4)
【氏名又は名称原語表記】TOTAL SA
【Fターム(参考)】