説明

独立型の可膨張ハーネスを備えた呼吸マスク

航空機の乗組員または乗客のための呼吸マスク(1)は、ユーザの顔にフィットする剛体部分(3)を含んでおり、前記剛体部分は、呼吸に適した気体をユーザに運ぶための要素を含む。呼吸マスクは、前記剛体部分に連結された末端部分(5)を有するとともに手動操作可能な弁を通じて加圧気体源(7)に連結された可膨張要素(6)を含む拡張式ハーネス(4)をさらに含む。手動操作可能な弁は、作動されたときにはハーネスを拡張させるために可膨張要素に加圧気体を送出し、解放されたときには、ハーネスが縮み剛体部分がユーザの顔に係合するように、前記可膨張要素内の圧力を下げる。加圧気体源は、剛体部分に堅く固定された、加圧気体を収める独立型容器(6)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の乗組員および乗客のための呼吸マスクの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
減圧事故または航空機内での煙の発生の場合に乗客および乗組員の安全を保証するために、航空規則は、機内高度に応じた酸素流量を各乗客および乗組員に供給できる安全酸素供給回路をすべての定期旅客機上に搭載することを義務付けている。
【0003】
呼吸酸素を提供するためにマスクアンドハーネスシステムが使用される。このマスクシステムは、フェースシールと、空気圧作動式ハーネスと、酸素の流れを制御する、航空機操縦室および他の航空機コンパートメント内の通信を容易にするためのマイクロホンを備えたレギュレータと、を有する。このシステムは、必要とされている、片手での5秒の着用が可能なように設計される。それは、酸素源に連結され、所望により航空機通信にも接続される。
【0004】
一般的な方法は、マスクのユーザがハーネスを自分の頭部に着けることができるようにハーネスを展開するために、圧力レギュレータ(通常はハーネス本体に対して閉じている)の入口のところで利用可能な圧力を使用することから成る。
この方法は、以下の場合には不可能である:
圧力レギュレータがハーネスの近くにないとき(例えば、軍事用途での制御盤レギュレータ)、
例えばオンボードの酸素レギュレータの使用により、圧力供給が十分ではないとき。
【0005】
それらの場合、マスクを着用する作業を行うためには、通常、機械的ハーネスが使用される。しかし、通常の機械的ハーネスは、重く、かさばり、高価である。
第2の解決策は、乗組員に自身のマスク(例えば、ヘルメットに固定できる)を永久的に装着することを要求することから成る。この第2の選択肢は、非常に不快で、非常に確率の低い危険のための機器の永久的な使用をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ハーネスを膨らませるためにハーネスを高圧気体に連結する必要がなく、空気圧式ハーネスの快適性を有する呼吸装置を達成することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つ若しくは複数の関心事により良好に対処するために、本発明の第1の態様では、航空機の乗組員または乗客のための呼吸マスクは、ユーザの顔にフィットする剛体部分を含んでおり、この剛体部分は、呼吸に適した気体をユーザに運ぶための要素(複数)を有している。呼吸マスクは拡張式ハーネスをさらに含んでおり、このハーネスは、剛体部分に連結された末端部分(複数)を有するとともに、手動操作可能な弁を介して加圧気体源に連結された可膨張要素を含んでいる。この手動操作可能な弁は、作動されたときにはハーネスを拡張させるために可膨張要素に加圧気体を送出し、解放されたときには、ハーネスが縮み剛体部分がユーザの顔に係合するように前記可膨張要素内の圧力を下げる。前記加圧気体源は、剛体部分に堅く固定された加圧気体を収める独立型容器である。
【0008】
特定の実施形態では、
独立型容器は使用前には封止されており、呼吸マスクがさらに、可膨張要素を膨らませるためにユーザが弁を初めて作動させるときにその容器に穴をあけるように適合された手動操作可能なストライカを含む。
独立型容器は、使用後に交換されるべき使い捨てボトルである。
視認可能なサインが設けられており、この視認可能なサインは、独立型容器が封止されているときと独立型容器に穴があいているときとで異なる外観を有する。
視認可能なサインは、ストライカが独立型容器に穴をあけるときにそのストライカによって破られるシールである。
前記ストライカはレバーによって操作可能であり、このレバーは、容器に穴をあけるために前記レバーがストライカを動かすのと同時に、前記弁を、加圧気体を送出するための位置へと動かすように適合されている。
減圧器が、独立型容器と可膨張部分との間に挿入されている。
安全弁が、減圧器と可膨張部分との間に配置されており、前記安全弁は、可膨張部分内の圧力を90ニュートン毎平方センチメートル未満に制限するように適合される。
【0009】
したがって、この呼吸マスクは、ハーネスを膨らませるのに十分な圧力を有する外部気体源に連結する必要がない、可膨張ハーネスの快適性の利点を有する。
【0010】
有利には、封止された容器は漏れが起こりえないので、ほぼ無制限の時間にわたって加圧気体を維持する。
【0011】
使い捨て容器の場合、呼吸マスクは、ボトルの交換しか必要ないため、使用後に容易に保たれるという利点を有する。また、外部のサインによって、操作が正しく実施されたこと、および呼吸マスクが使用できる状態にあることをユーザに保証することが有利である。
【0012】
シールは、新しいボトルが呼吸マスクに取り付けられることを保証するための低コストかつ効率的な手段であり、有利である。
【0013】
レバーによる弁の操作は、呼吸マスクの可動部の数を削減しており、ゆえにその信頼性を高めており、有利である。また、それは、ボトルのシールが破れているときには弁がハーネスを膨らませるための正しい位置にあることを保証する。
【0014】
減圧器は、ハーネスを損傷しないレベルまで気体圧力を下げ、有利である。同時に、減圧器は、ボトルが何度も使用されて使用のたびにボトル内の圧力が低下する場合でも、圧力を一定圧力に調整する。
【0015】
減圧器のデフォルト(default)の場合、安全弁は、有利にはハーネスを保護する。
【0016】
本発明の前述および他の諸態様は、付属図に関連して以下で説明する実施形態を参照すれば明らかとなり、解明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態による呼吸マスクの斜視図である。
【図2】本発明を具現化する機械的装置の機能図である。
【図3】本発明によるレバーの他の実施形態の図である。
【図4】本発明の一実施形態による加圧ガスのボトルを保護するためのシールの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照すると、呼吸マスク1は、剛体部分3に固定されたガラス2を含んでいる。剛体部分は、ユーザの顔にフィットするように適合された形状を有するとともに、呼吸に適した気体をユーザに運ぶための要素(図示せず)を含んでいる。呼吸マスクはまた、剛体部分に連結された末端部分5を有する拡張式ハーネス4を含んでいる。このハーネスは、加圧気体源7に連結された可膨張要素6を含んでいる。加圧気体源7は、剛体部分に堅く固定された独立型容器であり、加圧気体を収めている。
【0019】
可動要素8は人間工学的表面9を有しており、この人間工学的表面9により、ユーザが、つまみ動作で該可動要素を内側に押せるようになっている。
【0020】
図2は、機械装置の機能的構造であり、この機械装置は加圧気体源7を可膨張要素6に連結している。
【0021】
気体源7は、炭酸ガス(CO)を高圧で収めるシリンダであり、剛体部分3に固定されている。通常、気体源7は金属製ボトルであり、1650ニュートン毎平方センチメートルを超える圧力下で10グラムのCOを収めている。
【0022】
この金属製ボトルは、バーストディスク10によって気密式に閉じている。ストライカ11はレバー12によって制御される。レバー12は軸13周りで回転し、その反対側の端部は人間工学的表面9のうちの1つに連結されている。レバー12はまた手動操作可能な弁14を制御し、この弁14は、調整された加圧気体を可膨張要素6に送出する。ダクト15は、気体源7の出力を減圧器16に連結している。第2のダクト17は、減圧器16の出力を弁14に連結している。ダクト16上には安全弁18が連結されている。
【0023】
ユーザがハーネス4を膨らませる必要がある場合、ユーザは、人間工学的表面9を用いてレバー12を押す。レバー12は、カートリッジのバーストディスクが破れるまで、ストライカ11をバーストディスク10に押し付ける。気体源7からの加圧気体は、ダクト15、17を通ってハーネスに流れる。減圧器15は、初めの1650ニュートン毎平方センチメートルから、約75ニュートン毎平方センチメートル(ハーネスを損傷させることなく該ハーネスを膨らませるように適合された圧力である)まで、気体の圧力を低減するように調整する。安全弁18は、もしダクト17内の圧力が90ニュートン毎平方センチメートルを上回る場合、気体を外部に放出するように調整されている。
【0024】
レバー12を押すことによって、弁14は、加圧気体がダクト17から可膨張要素6へ流れるハーネスを膨張させることができる位置に動かされる。レバー12が解放されると、弁14は開位置に動き、この位置では、可膨張要素が外部に連結されて該可膨張要素内の圧力が下がる。ハーネスは、剛体部分をユーザの顔に係合させるために縮まる(retracted)。
【0025】
本発明について諸図面および以上の記述で詳細に示し説明したが、このような図および記述は、制限的なものではなく説明的または例示的なものと見なされるべきであり、本発明は、ここに開示の実施形態だけに限定されない。
【0026】
例えば、レバー12は、図3の2つのレバー20、22のシステムに置き換えることができ、このレバー20、24は部品24を介して連結され、第1のレバー20については第1の軸26周り、第2のレバー22については第2の軸28周りで回転する。この実施形態は、レバー効果を高め、ユーザが気体源7に穴をあけるためにレバーに加える必要がある強さを下げるという利点を有する。
【0027】
安全機能として、図4では、シール30がストライカ11に固定されており、そのシールは、気体源7に穴をあけるためのストライカの運動によって破られる。シールは、呼吸マスク上に配置された、ユーザによって視認可能なサインを作り出す。この視認可能なサインは、独立型容器が封止されているときと独立型容器に穴があいているときとで異なる外観を有しており、したがって、ユーザは、呼吸マスクが使用できる状態にあるかどうかを予め知る。
【0028】
ジョイント32(通常はOリング)が、バーストディスク10を取り囲んでおり、これにより、ストライカ11によってバーストディスク10が破られるときの加圧気体の漏れを回避する。
【0029】
バーストディスクに作られた開口部をストライカが塞ぎダクト15に気体が流れるのを妨げることを回避するために、スティッカ(sticker)11が、クロススレデッドジョイント(cross−threaded joint)を有していることが有利である。
【0030】
当業者は、諸図面、開示、および特許請求の範囲を調べれば、ここに請求される発明の実践に際して、ここに開示の諸実施形態の他の変形形態を理解し達成することができる。特許請求の範囲では、「含む(comprising)」という語は、他の要素を除外しておらず、不定冠詞「a」または「an」は、複数形を除外していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の乗組員または乗客のための呼吸マスク(1)であって、
ユーザの顔にフィットする剛体部分(3)を備え、該剛体部分は、呼吸に適した気体を前記ユーザに運ぶための要素を有し、
さらに、
前記剛体部分に連結された末端部分(5)を有するとともに、手動操作可能な弁(14)を介して加圧気体源(7)に連結された可膨張要素(6)を含む拡張式ハーネス(4)であって、
前記弁(14)は、
作動されたときには、前記ハーネスを拡張させるために前記可膨張要素に前記加圧気体を送出し、解放されたときには、前記ハーネスが縮み前記剛体部分が前記ユーザの顔に係合するように前記可膨張要素内の圧力を下げるものであり、
前記加圧気体源は、前記剛体部分に堅く固定された前記加圧気体を収める独立型容器(6)である、拡張式ハーネス(4)を備える、呼吸マスク。
【請求項2】
前記独立型容器(6)は使用前には封止されており、
前記呼吸マスクが、さらに、
前記可膨張要素を膨らませるために前記ユーザが前記弁を初めて作動させるときに前記容器に穴をあけるように適合された手動操作可能なストライカ(11)を有している、請求項1に記載の呼吸マスク。
【請求項3】
前記独立型容器は、使用後に交換されるべき使い捨てボトルである、請求項2に記載の呼吸マスク。
【請求項4】
視認可能なサイン(30)が設けられており、
該視認可能なサインは、前記独立型容器が封止されているときと前記独立型容器に穴があいているときとで異なる外観を有する、請求項2または3に記載の呼吸マスク。
【請求項5】
前記視認可能なサインは、前記ストライカが前記独立型容器に穴をあけるときに前記ストライカによって破られるシールである、請求項4に記載の呼吸マスク。
【請求項6】
前記ストライカはレバー(12)によって操作可能であり、
該レバーは、
前記容器に穴をあけるために前記レバーが前記ストライカを動かすのと同時に、前記弁を、前記加圧気体を送出するための位置へと動かすように適合されている、請求項2〜5のいずれか一項に記載の呼吸マスク。
【請求項7】
減圧器(14)が、前記独立型容器と前記可膨張部分との間に挿入されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の呼吸マスク。
【請求項8】
安全弁(18)が、前記減圧器と前記可膨張部分との間に配置されており、
該安全弁は、前記可膨張部分内の圧力を90ニュートン毎平方センチメートル未満に制限するように適合されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の呼吸マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−504767(P2010−504767A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523249(P2009−523249)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057997
【国際公開番号】WO2008/017630
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(508313840)
【Fターム(参考)】