説明

狭い分子量分布をもったポリプロピレン配合物

(a)メタロセン触媒を用いてつくられた結晶性のアイソタクティック・ポリプロピレン成分A;および
(b)成分Aに比べて結晶度が低く、他のメタロセン触媒を用いてつくられたシンジオタクティック・ポリプロピレンを含んで成るポリプロピレンの配合物であって、該配合物は単峰的な分子量分布をもち、多分散性は最大4であることを特徴とするポリプロピレン配合物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は狭い分子量分布および改善された熱接合特性をもつポリオレフィンを用いて繊維を製造する方法、並びに該ポリオレフィンの製造法に関する。特に本発明はポリプロピレン繊維およびポリプロピレン繊維から製造された繊維布に関する。
【0002】
ポリプロピレンは繊維の製造、特に不織布の製造に対して良く知られている。
【0003】
特許文献1およびそれに対応する特許文献2には、シンジオタクティック・ポリプロピレン(SPP)とアイソタクティック・ポリプロピレン(iPP)との配合物からなるポリプロピレン繊維が記載されている。該明細書には、ポリプロピレンの全重量に関し0.3〜3重量%のSPPを配合してiPPーSPPの配合物をつくることにより、繊維は自然な嵩性と滑らかさをもち、該繊維からつくられた不織布は改善された柔らかさをもつことが記載されている。さらに該明細書には、このような配合物は繊維の熱接合温度を低下させることが記載されている。熱接合はポリプロピレン繊維から不織布をつくるのに使用される。該明細書には、該アイソタクティック・ポリプロピレンはZiegler−Natta触媒によってプロピレンを重合させてつくられる単独重合体を含んで成っていることが記載されている。アイソタクティック・ポリプロピレンは重量平均分子量Mwが100,000〜4,000,000であり、数平均分子量Mnは40,000〜100,000であり、融点は約159〜165℃である。しかし、この明細書に従って製造されたポリプロピレン繊維は、アイソタクティック・ポリプロピレンがZiegler−Natta触媒を用いてつくられた場合、機械的性質、特に引っ張り強さ(tenacity)があまり高くはないという欠点をもっている。
【0004】
特許文献3には、広い接合範囲(bonding window)をもつ不織布の製造法が記載されている。この場合、不織布は0.5〜25重量%のシンジオタクティック・ポリプロピレンを含む熱可塑性重合体の配合物の繊維からつくられる。シンジオタクティック・ポリプロピレンはアイソタクティック・ポリプロピレンを含む多様な異なった重合体と配合することができる。この明細書には、シンジオタクティック・ポリプロピレンとアイソタクティック・ポリプロピレンからつくられた種々の混合物の多数の例が含まれている。このアイソタクティック・ポリプロピレンはZiegler−Natta触媒を用いてつくられた市販のアイソタクティック・ポリプロピレンを含んで成っている。該明細書には、シンジオタクティック・ポリプロピレンを使用すると熱接合を起こし得る温度範囲が広がり、許容できる接合温度が低下することが記載されている。
【0005】
特許文献4には、シンジオタクティック・ポリプロピレンを含む配合物から二成分(bi−component)繊維または二構成(bi−constituent)繊維のいずれかの繊維を製造する方法が記載されている。二成分繊維は少なくとも2種の重合体を別々の押出し機から押出し、一緒に紡糸して一つの繊維にして製造された繊維である。二構成繊維は同じ押出し機から配合物として押出された少なくとも2種の重合体からつくられる。二成分繊維および二構成繊維は両方とも、不織布におけるZiegler−Nattaポリプロピレンの熱接合性を改善するために用いられることが記載されている。特に、Ziegler−Nattaアイソタクティック・ポリプロピレンに比べて低い融点をもった重合体、例えばポリエチレン、ランダム共重合体、三元共重合体は二成分繊維の外側の部分として使用されるか、或いはZiegler−Nattaポリプロピレン中に配合して二構成繊維をつくるのに使用される。
【0006】
特許文献5には、改善されたプロピレン重合体の糸、およびそれから製造された製品が
記載されている。この場合、収縮性を増加させ得る糸をつくるために、シンジオタクティック・ポリプロピレンをそれが5〜50重量部の割合になるようにアイソタクティック・ポリプロピレンと配合する。この糸は反ぱつ性および収縮性が増加し、パイル繊維布および絨毯に特に有用であることが記載されている。またこのポリプロピレン配合物はシンジオタクティック・ポリプロピレンが存在する結果として熱軟化温度の低下を示し、また示差走査熱量測定法によって測定された熱応答曲線が広がっていることが記載されている。
【0007】
特許文献5には、アイソタクティック・ポリプロピレンから製造された同等な縫合糸に比べ大きな可撓性を示すシンジオタクティック・ポリプロピレンから製造された縫合糸が記載されている。このシンジオタクティック・ポリプロピレンは特にアイソタクティック・ポリプロピレンと配合することができる。
【0008】
特許文献6には、シンジオタクティック・ポリプロピレンの成形方法が記載されている。この場合シンジオタクティック・ポリプロピレンは実質的にアイソタクティック構造をもった少量のポリプロピレンと配合することができる。また該特許にはこのポリプロピレンから繊維をつくることができることが記載されている。またこのアイソタクティック・ポリプロピレンは、三塩化チタンと有機アルミニウム化合物、またはマグネシウムのハロゲン化物および有機アルミニウム化合物に担持された三塩化チタンまたは四塩化チタンを含んで成る触媒、即ち1種のZiegler−Natta触媒を用いることによって製造されることが記載されている。
【0009】
特許文献7には、シンジオタクティックおよびアイソタクティック・ポリプロピレンの配合物からつくられたポリプロピレン繊維が記載されている。この配合物は少なくとも50重量部のシンジオタクティック・ポリプロピレンおよび最高50重量部のアイソタクティック・ポリプロピレンを含んでいる。この繊維は押出し特性が改善され、繊維の伸張条件が広がっていることが記載されている。
【0010】
例えば特許文献8に記載されているように、メタロセン触媒を使用してシンジオタクティック・ポリプロピレンを製造することも公知である。
【0011】
最近、アイソタクティック・ポリプロピレンを製造するためにメタロセン触媒もまた使用されるようになった。メタロセン触媒を用いて製造されたアイソタクティック・ポリプロピレンを以降miPPと呼ぶことにする。miPPからつくられた繊維は典型的なZiegler−Nattaポリプロピレンをベースにした繊維に比べ、遥かに高い機械的性質、主として引っ張り強さを示す。以降Ziegler−Natta触媒をベースにしたポリプロピレン繊維をZNPP繊維と呼ぶことにする。しかし、この引っ張り強さの増加は、miPP繊維から熱接合法によりつくられた不織布に対しては部分的にしか伝達されない。実際、miPPを用いてつくられた繊維は熱接合範囲が非常に狭い。この範囲は、繊維を熱接合した後に不織布が最良の機械的特性を示す熱接合温度範囲を規定している。その結果、不織布の機械的性質に寄与するのは少数のmiPP繊維だけである。また、隣接したmiPP繊維間の熱接合の品質も悪い。従って公知のmiPP繊維は、融点が低いにも拘わらず、ZNPP繊維に比べ熱接合を行うことが困難であることが見出だされている。
【0012】
特許文献9には、ポリプロピレン配合物の組成物が記載されている。この配合物は25〜75重量%のメタロセンによるアイソタクティック・ポリプロピレンおよび75〜25重量%のZiegler−Natta触媒によるポリプロピレン共重合体を含んで成っていることができる。該明細書は基本的にはこのようなポリプロピレンの配合物からフィルムを製造することを目的としている。
【0013】
特許文献10には、1種の半結晶性プロピレン単独重合体と、第2の半結晶性プロピレン単独重合体かまたは非結晶性のプロピレン単独重合体のいずれかとの配合物を含む低温における衝撃強度をもったプロピレン重合体が記載されている。
【0014】
特許文献11には、フィルムをつくるためのプロピレン共重合体組成物が記載されている。この組成物は二つの成分の配合物を含んでなり、第1の成分はプロピレンの単独重合体かまたはプロピレンとエチレンまたは炭素数4〜20の他のα−オレフィンとの共重合体のいずれかであり、第2の成分はプロピレンとエチレンおよび/または炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体を含んでなる。
【0015】
当業界においてはZiegler−Natta触媒を用いてつくられたポリプロピレンの中にランダム・ポリプロピレンを含んで成る第2の成分を典型的には配合物の約20〜50重量%の量で配合することは公知である。このような配合物は、この配合物から製造した繊維から熱接合により不織布をつくる場合、良好な熱接合性を与えることが見出だされている。良好な熱接合性は、Ziegler−Nattaポリプロピレンとランダム・ポリプロピレンとの融点が重なっているために生じる。また、良好な配合物を与え、従って繊維の熱接合能力を増強させる傾向があるZiegler−Nattaポリプロピレンと比較的広い分子量分布をもったランダム・ポリプロピレンの両方の配合物が存在する結果として熱接合性が得られる。
【0016】
少なくとも80重量%のメタロセン触媒によりつくられた第1のアイソタクティック・ポリプロピレン、および5〜20重量%のZiegler−Natta触媒によりつくられた第2のアイソタクティック・ポリプロピレンを含むポリプロピレン繊維も知られている。さらに、Ziegler−Natta触媒によりつくられた第1のアイソタクティック・ポリプロピレンを50重量%より多く含み、メタロセン触媒によりつくられた第2のアイソタクティック・ポリプロピレンを5重量%以上で50重量%未満の量で含み、さらにシンジオタクティック・ポリプロピレン(SPP)を最高15重量%含むポリプロピレン繊維も知られている。
【0017】
これらの公知方法に従ってつくられたmiPPは改善された引っ張り強さをもち、繊維の紡糸に対して安定である。しかし、狭い分子量分布を得ることが困難であり、またこれに加えて熱接合特性が望ましいほど良好ではないという問題をなお抱えている。特に、Ziegler−Natta触媒を用いてつくられたmiPPは、必要とされる狭い分子量分布を得るためには制御されたレオロジー工程を行わなければならない。この工程には押出しの際に過酸化物を用い長い重合鎖を切断することが含まれる。この方法は製造コストを増加させる。
【特許文献1】ヨーロッパ特許−A−0789096号明細書
【特許文献2】国際公開−A−97/29225号パンフレット
【特許文献3】国際公開−A−96/23095号パンフレット
【特許文献4】ヨーロッパ特許−A−0634505号明細書
【特許文献5】米国特許−A−5269807号明細書
【特許文献6】ヨーロッパ特許−A−0451743号明細書
【特許文献7】ヨーロッパ特許−A−0414047号明細書
【特許文献8】米国特許−A−4794096号明細書
【特許文献9】国際公開WO−A−97/10300号パンフレット
【特許文献10】米国特許−A−5483002号明細書
【特許文献11】ヨーロッパ特許−A−0538749号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、公知製品および公知方法に関連するこれらおよび他の問題、特に上述の問題を克服することである。即ち本発明の目的は、狭い分子量分布および改善された熱接合特性をもつポリオレフィンを製造するための触媒を提供することである。さらに本発明の目的は、改善されたポリオレフィン繊維、およびこのような繊維からつくられる改善された製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
従って本発明によれば、
(a)メタロセン触媒を用いてつくられた結晶性のアイソタクティック・ポリプロピレン成分A;および
(b)他のメタロセン触媒を用いてつくられた成分Aに比べて結晶度が低いシンジオタクティック・ポリプロピレン成分Bから成るポリプロピレン配合物であって、該配合物は単峰的な分子量分布をもち、多分散性は最大4であることを特徴とするポリプロピレン配合物を製造するための使用が提供される。
【0020】
メタロセン触媒を使用することの利点は、これらの触媒が狭い分子量分布をもつ重合体を生成する点である。これに加えて、結晶度が低い成分Bを含ませることにより混合物に「粘着性(stickiness)」が加えられ、これによって融点が低下することにより成分の混合および最終重合体における熱接合性が改善される。
【0021】
従って本発明の文脈においては、成分AおよびBを製造するための触媒は、それぞれ実質的に単独重合体のアイソタクティック・ポリオレフィン、および実質的に単独重合体のシンジオタクティック・ポリオレフィンを生成し得る触媒である。別法としてこれらの触媒は、少なくとも一つのアイソタクティック・ポリオレフィン・ブロックまたは少なくとも一つのシンジオタクティック・ポリオレフィン・ブロックをを含んで成るブロック共重合体を生成し得るものであることができる。ブロック共重合体は共重合体、三元重合体、または4種以上の異なった重合体ブロックを含んで成る共重合体であることができる。ブロック共重合体中においてさらにブロックが存在することには特に制限がなく、これらのブロック配合物はオレフィン単量体から生じたブロック、或いは他の単量体から生じたブロックであることができる。
【0022】
上記のように、このオレフィン重合体は狭い分子量分布をもっている。典型的には成分AとBとの一緒にした分子量分布は単峰性の分子量分布の特徴として単一のピークをもっている。このピークはこのような分布の特徴ではあるが、この重合体は二つの成分を含んで成っているから実は二峰性である。このような二峰性によって上述の好適な単一のピークが生じることができ、または或る場合には肩をもった一つのピークまたは二つのピークが生じることもある。分布の形には分布が狭い限りにおいて特に制限はない。好ましくは成分AおよびBの一緒にした分子量分布は4またはそれ以下,さらに好ましくは1.8〜4の分散指数(dispersion index)Dをもっている。さらに好ましくは成分AおよびBを一緒にした分子量分布の分散指数Dは2〜3、最も好ましくは約2である。分散指数DはMw/Mnの比である.ここでMwは重合体の重量平均分子量、Mnは数平均分子量である。
【0023】
このポリプロピレン配合物は融点が130〜155℃の範囲にあることが好ましい。結晶度の低い成分は典型的には最高130℃の融点をもち、結晶度の高い成分は一般に80〜160℃の融点をもっている。
【0024】
成分Aがアイソタクティック・ポリプロピレン(iPP)を含んで成り、成分Bがシンジオタクティック・ポリプロピレン(SPP)を含んで成っていることが特に好ましい。
各成分が存在する限り、混合物中の各成分の割合には特に制限はない。好ましくは最終重合体は1〜99重量%の成分Aおよび1〜99重量%の成分Bを含んで成っている。さらに好ましくは最終重合体は最高80重量%の成分Aおよび最高20重量%の成分Bを含んで成っている。最も好ましくは最終重合体は約15重量%のシンジオタクティック・ポリプロピレン(SPP)を含んで成っている。
【0025】
この重合体を製造するのに用いられる触媒は、該重合体が正しい特性をもって製造される限り、特に制限はない。本発明に使用するのに好適な触媒を次に説明する。
【0026】
製造されるポリプロピレンのタイプは触媒の対称性を選ぶことによってコントロールすることができる。本発明に使用するのに特に適したメタロセン触媒は1個のシクロペンタジエニル基と1個のフルオレニル基を含んで成るもの(CpFlu触媒)、および2個のインデニル基を含んで成るもの(ビスインデニル触媒)である。これらの触媒の対称性は特に有利にコントロールすることができる。例えばビスインデニル触媒は、C対称性(単一の180°回転軸(図式1参照))をもっている場合、アイソタクティック・ポリオレフィンを製造するのに特に適している。他方CpFlu触媒は、C対称性(分子を通るただ一つの360°回転軸(図式2参照))をもつ場合、アイソタクティック・ポリオレフィンを製造するのに特に適している。これに対しこれらの触媒はC対称性(分子を通る単一の反射面(図式3参照)をもっている場合、シンジオタクティック・ポリオレフィンの製造に特に適している。
【0027】
【化1】

【0028】
【化2】

【0029】
【化3】

これらの模式図は単に明確に示すために金属中心を取り去って示されていることに注目すべきである。Cp、インデニルおよびFlu環は、対称性に影響がない限り、飽和していても、不飽和であっても、さらに置換基をもっていても良い。
【0030】
アイソタクティック・ポリプロピレンを製造するのに使用できるメタロセン触媒成分は下記の式、
R”(CpR)(Cp’R’)MQ
但し式中、Cpは置換基をもったシクロペンタジエニル環;Cp’は置換基をもったまたはもたないフルオレニル環;R”はこの成分に立体的な剛性を与える構造的な架橋であ
り;Rは該架橋から遠位のシクロペンタジエニル環上の置換基であり、この遠位にある置換基は式ZRの嵩張った基を含んで成り、ここでZは周期律表の第14族の原子であり、各Rは同一または相異なり水素または炭素数1〜20のヒドロカルビル基から選ばれ、Rは該架橋に対し近位にあって遠位にある置換基に対しビシナルな関係にないシクロペンタジエニル環上の置換基でありHまたは式YR#から成る群から選ばれ、ここでYは第IVA族の原子であり、各R#は同一または相異なり水素または炭素数1〜7のヒドロカルビル基から選ばれ、Rはシクロペンタジエニル環上のさらに他の置換基であってRと同じであるか異なることもできHまたは式YR#から成る群から選ばれ、ここでYは第14族の原子であり、各R#は同一または異なり、水素または炭素数1〜7のヒドロカルビル基から選ばれ、各R’は同一または相異なり炭素数1〜20のヒドロカルビル基であり、nは0〜8の整数であり;Mは周期律表の第4族の金属原子またはバナジウムであり;各Qは炭素数1〜20の炭化水素またはハロゲンである、
或いは式
(IndHR”MQ
但し式中、IndHは同一または相異なり、置換基をもちまたはもたないテトラヒドロインデニル基であり、R”はこの成分に立体的な剛性を付与する構造的な架橋であり;Mは周期律表の第4族の金属原子またはバナジウムであり;各Qは炭素数1〜20の炭化水素またはハロゲンである、
によって表すことができる。
【0031】
シンジオタクティック・ポリプロピレンを製造するのに使用できるメタロセン触媒成分は式
R”(CpR)(Cp’R’)MQ
但し式中、Cpは置換基をもったまたはもたないシクロペンタジエニル環;Cp’は置換基をもったまたはもたないフルオレニル環;R”はこの成分に立体的な剛性を付与する構造的な架橋であり;各Rは同一または相異なり炭素数1〜20のヒドロカルビル基であり、各R’は同一または相異なり炭素数1〜20のヒドロカルビル基であり、xおよびyは独立にそれぞれ0〜4および0〜8の整数であり;Mは周期律表の第4族の金属原子またはバナジウムであり;各Qは炭素数1〜20の炭化水素またはハロゲンであり;ここで置換基は触媒成分に左右対称性を付与するように選ばれる、
によって表すことができる。
【0032】
上記式において、MがTi、Zr、またはHfであることが特に好適である。またQはClまたはメチル基であることが好適である。典型的にはR”は置換基をもっているかまたはもっていず、炭素数1〜20のアルキレン基、ジアルキルゲルマニウム基、ジアルキル珪素基、ジアルキルシロキサン基、アルキルフォスフィン基、またはアミン基を含んで成っている。一般に、R”はイソプロピリデン(MeC)、PhC、エチレニル、またはMeSi基を含んで成っている。
【0033】
また本発明によれば上記に定義したポリプロピレン配合物からつくられたポリオレフィン繊維、およびこのようなポリオレフィン繊維からつくられた繊維布が提供される。上記のような繊維布を含む製品には、典型的にはフィルター、個人用のタオル、おむつ、女性用の衛生製品、失禁対策製品、巻き包帯、絆創膏、外科手術用ガウン、保護用のカバー、土木用繊維、および野外用の繊維布が含まれる。
【0034】
本発明以前において第2の重合体を繊維に使用することは知られてはいたが、繊維を製造するためにメタロセン触媒だけを使用してつくられた2種のポリプロピレンを用いることは未だ提案されていない。繊維の優れた機械的性質を不織布に伝達するためには繊維の効率的な熱接合性が必要である。本発明に従って製造された繊維の紡糸性は公知の繊維に比べて著しく変性されてはいない。
【0035】
本発明に従って製造された繊維は二成分繊維または二構成繊維のいずれかである。二成分繊維に対しては、成分AおよびBを二つの異なった押出し機に供給する。その後二つの押出物は共に紡糸され、単一の繊維がつくられる。二構成繊維に対しては、この二つの重合体のペレット、薄片、または綿毛を乾式配合した後通常の押出し機に供給するか、或は前以て一緒に押出した配合物のペレットまたは薄片を用いこの配合物を第2の押出し機から再び押出すことにより成分AおよびBの配合物が得られる。
【0036】
成分AおよびBの配合物を使用して本発明の繊維をつくる場合、処理温度を最適化し、しかも純粋なmiPPと同じ処理量を保持するように紡糸工程の温度分布を適合させることができる。スパンレイド(spunlaid)繊維を製造するためには、典型的な押出し温度は200〜260℃、最も典型的には230〜250℃の範囲内にあるであろう。ステープル繊維を製造するためには、典型的な押出し温度は230〜330℃、最も典型的には270〜310℃であろう。
【0037】
本発明により製造される繊維は、繊維の機械的加工性または紡糸性を改善するための他の添加物を含む配合物からつくることができる。本発明に従って製造される繊維は、フィルター;個人的な介護製品、例えばタオル、おむつ、女性用の衛生製品、および失禁対策製品;医療用製品、例えば巻き包帯、外科手術用ガウン、絆創膏および外科用の掛布;保護用のカバー;野外用の繊維布および土木用の繊維布をつくるのに使用することができる。本発明のポリプロピレン配合繊維を用いてつくられた不織布は、このような製品の一部であるか、または該製品の全体をなしていることができる。不織布の製造と同様に、またこの繊維は編物繊維布またはマットをつくるのに用いることができる。本発明による繊維からつくられた不織繊維布はいくつかの方法、例えば空気を通す吹き込み、熔融吹き込み、スパン・ボンデイング、またはボンディッド・カーディッド(bonded carded)法によってつくることができる。また本発明の繊維は不織布のスパンレース(spunlace)製品としてつくることができる。これは繊維を絡み合わせて一緒にし空気または水のような流体の高圧をかけることにより、熱接合法を用いずに繊維にすることができる。
【0038】
最後に、本発明によればまたポリプロピレン配合物を製造する方法が提供される。この方法は
(a)結晶性であり、メタロセン触媒を用いてつくられアイソタクティック・ポリプロピレン成分A、および
(b)成分Aよりは結晶度が低く、メタロセン触媒を用いてつくられるシンジオタクティック・ポリプロピレン成分Bを含んで成るポリプロピレン配合物を製造する方法であって、該配合物は単峰性の分子量分布をもち、多分散性が最大4であることを特徴とする。この方法は、ポリプロピレン配合物をつくるために二つの単一部位触媒成分からつくられたメタロセン触媒を用い単量体を重合させて同じ反応区域で成分AおよびBを一緒に生成させる方法である。従って本発明によれば、多重部位触媒、例えば二重部位触媒の存在下においてオレフィン単量体を重合させて重合体配合物(化学的配合物)をつくるアイソタクティック・ポリプロピレンとシンジオタクティック・ポリプロピレンとの配合物のようなポリプロピレン配合物を製造する方法が提供される。本発明において多重部位触媒は、各触媒成分が個々の担体粒子の上に存在する触媒として定義される。これらの触媒はすべての触媒成分の溶液をつくり、次いで成分を担体上に沈澱させることによってつくることができる。
【0039】
その場においてポリオレフィンの混合物、例えばアイソタクティック・ポリオレフィンおよびシンジオタクティック・ポリオレフィンの混合物をつくるために(化学的配合工程)触媒混合物を使用すると、物理的配合工程によりつくられた公知の配合物に比べ遥かに
均一な重合体配合物(化学的配合物)が得られる。化学的配合物の改善された均一性は物理的性質および機械的性質の改良に寄与する。従って化学的配合法が特に好適である。
【0040】
このように、本発明によりつくられたポリプロピレン配合物は射出吹き込み成形法および射出成形法において改善された加工性および固化特性をもち、また同時に高い透明性および可撓性を示す。
【0041】
本発明の配合物からつくられた繊維は、改善された柔らかさおよび改善された熱接合特性をもっている。
【0042】
本発明の配合物からつくられたフィルムは、モジュラスが減少しており、かたさが小さく、改善された熱収縮性、引き裂き抵抗、および衝撃抵抗をもっている。
【0043】
本発明のこれらの態様に使用される触媒は特に限定されたものではない。即ち、触媒混合物は二つまたはそれ以上の単一部位触媒(例えば成分Aに対する触媒および成分Bに対する異なった触媒のように)が同じ担体の上に一緒に存在している「多重部位」触媒であることができる。
【0044】
本発明に使用される触媒系は、上記の触媒成分の他に、メタロセン触媒を賦活し得る1種またはそれ以上の賦活剤を含んで成っている。典型的には賦活剤はアルミニウムまたは硼素を含んで成っている。
【0045】
適当なアルミニウム含有賦活剤はアルモキサン、アルキルアルミニウム化合物、および/またはルイス酸を含んで成っている。
【0046】
本発明に使用できるアルモキサンは公知であり、好ましくはオリゴマー状の直鎖アルモキサンに対しては式(A)
【0047】
【化4】

で、オリゴマー状の環式アルモキサンに対しては式(B)
【0048】
【化5】

で表されるオリゴマー状の直鎖および/または環式のアルモキサンを含んで成っている。ここでnは1〜40、好ましくは10〜20であり:mは3〜40、好ましくは3〜20であり;RはC〜C−アルキル基、好ましくはメチルである。一般に、例えばアルミニウムトリメチルと水からアルモキサンをつくる場合、直鎖および環式の化合物の混合物が得られる。
【0049】
適当な硼素含有賦活剤は硼酸トリフェニルカルベニウム、例えばヨーロッパ特許A−0427696号明細書に記載されているようなテトラキス−ペンタフルオロフェニル−ボラ−ト−トリフェニルカルベニウム
【0050】
【化6】

または、またはヨーロッパ特許−A−0277004号明細書(6頁、30行〜7頁、7行)記載のような下記一般式
【0051】
【化7】

のものを含んで成っていることができる。他の好適な賦活剤にはヒドロキシイソブチルアルミニウムおよび金属アルミノキシネートが含まれる。これらはメタロセンに対する一般式の中の少くとも一つのQがアルキル基を含んで成っている場合、特に好適である。
【0052】
この触媒系は均一な溶液重合法または不均一なスラリ重合法に使用することができる。溶液重合法においては、典型的な溶媒は炭素数4〜7の炭化水素、例えばヘプタン、トルエンまたはシクロヘキサンを含んでいる。スラリ重合法においては、不活性担体、特にタルクのような多孔性の固体担体、無機酸化物およびポリオレフィンのような樹脂性の担体材料の上に触媒系を固定する必要がある。好ましくは担体材料は微粉末の形の無機酸化物である。
【0053】
本発明に従って使用することが望ましい適当な無機酸化物材料には、第2、4、13、14族の金属酸化物、例えばシリカ、アルミナ、およびそれらの混合物が含まれる。単独またはシリカまたはアルミナと組み合わせて使用できる他の無機酸化物はマグネシア、チタニア、ジルコニア等である。しかし他の適当な担体材料、例えば微粉末の官能化されたポリオレフィン、例えば微粉末のポリエチレンを使用することもできる。
【0054】
好ましくは、担体は表面積が200〜700m/g、細孔容積が0.5〜3ml/gのシリカ担体である。
【0055】
固体の担体触媒の製造に有効に使用される賦活剤およびメタロセンの量は広い範囲に亙って変えることができる。好ましくは賦活剤対遷移金属のモル比は1:1〜100:1、好ましくは5:1〜50:1の範囲である。
【0056】
触媒および賦活剤を担体材料に加える順序は変えることができる。本発明の好適具体化例に従えば、適当な不活性炭化水素溶媒に溶解した賦活剤を同一または他の適当な液体の炭化水素の中でスラリ化した担体材料に加え、その後触媒成分をスラリに加える。
【0057】
好適な溶媒には鉱油、および反応温度において液体であり個々の成分と反応しない種々の炭化水素が含まれる。有用な溶媒の例示的な例にはアルカン、例えばペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、およびノナン;シクロアルカン、例えばシクロペンタンおよびシクロヘキサン、および芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、およびジエチルベンゼンが含まれる。
【0058】
好ましくは担体材料をトルエンの中でスラリ化し、担体材料に添加する前に触媒成分および賦活剤をトルエンに溶解する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)メタロセン触媒を用いてつくられた結晶性のアイソタクティック・ポリプロピレン成分A;および
(b)成分Aに比べて結晶度が低く、他のメタロセン触媒を用いてつくられたシンジオタクティック・ポリプロピレンBを含んで成るポリプロピレン配合物であって、該配合物は分子量分布が単一のピークをもち、その多分散性は最大4であることを特徴とするポリプロピレン配合物を製造するための使用。
【請求項2】
ポリプロピレン配合物は多分散性が2〜3であることを特徴とする請求項1記載の使用。
【請求項3】
ポリプロピレン配合物は融点が130〜155℃であることを特徴とする請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
ポリプロピレン配合物は最高15重量%のシンジオタクティック・ポリプロピレンを含んで成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載された使用。
【請求項5】
ポリプロピレン配合物は二つの単一部位触媒成分を含んで成る触媒系から単一の反応区域の中でつくられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載された使用。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに定義されたポリプロピレン配合物からつくられたポリプロピレン繊維。
【請求項7】
請求項6に定義されたポリプロピレン繊維からつくられた繊維布。
【請求項8】
フィルター、個人用のタオル、おむつ、女性用の衛生製品、失禁対策製品、巻き包帯、絆創膏、外科手術用のガウン、外科用の掛布、保護用のカバー、土木用繊維、および屋外用の繊維布から選ばれた請求項7に定義された繊維布を含んで成る製品。
【請求項9】
(a)メタロセン触媒を用いてつくられた結晶性のアイソタクティック・ポリプロピレン成分A;および
(b)成分Aに比べて結晶度が低く、他のメタロセン触媒を用いてつくられたシンジオタクティック・ポリプロピレンBを含んで成るポリプロピレン配合物を製造する方法において、
該方法は二つの単一部位触媒成分を含んで成るメタロセン触媒を用い同じ反応区域において単量体を重合させて成分AおよびBをつくる工程を含んで成ることを特徴とする方法。
【請求項10】
ポリプロピレン繊維の熱接合特性を改善するための請求項1〜5のいずれか一つに定義されたポリプロピレン配合物の使用。

【公表番号】特表2007−527438(P2007−527438A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516191(P2006−516191)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051260
【国際公開番号】WO2005/005535
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】