説明

玉ねぎジュースの新規製造法

【課題】 飲みやすく、また玉ねぎの持つ潜在的健康パワーが損なわれていない玉ねぎのジュース提供を第一目的とし、玉ねぎとの相性のよい食材も検討した。
次に、現存する玉ねぎジュースは玉ねぎ自身の持つ植物繊維の利用がないのがほとんどでもったいない。本発明では使用する食材の全て丸ごと用い、廃棄物のない且つ植物繊維の豊富なジュース化を課題とした。
【解決手段】 柑橘類果実の種子を除く、丸ごとペーストを加え、更にミキサーにて微細断後さらにホモジナイザーで処理することにより、爽やかで喉越しのよい植物繊維の豊富な玉ねぎジュースが得られた。
一方、血圧効果作用を示唆するアンジオテンシン阻害活性の測定により、柑橘類果皮のペーストは玉ねぎと相性のよい、むしろ相乗効果のある組み合わせであることが確認された。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
食品製造業に属する健康清涼飲料水の技術分野に関するもの。
【背景技術】
【0002】
玉葱の刺激臭、辛味等を除き、玉葱の持つ甘さを引き出す方法は数多く知られている。しかしながら、臭い及び苦味成分の苦味を減少させる方法は数少ない。
玉葱の臭い、辛み、等を除いたいわゆる玉ねぎエキスを用いた清涼飲料水として開発された商品は、製法特許により「玉葱家族」「飲む玉葱」等市場に出回って好評を得ている。
また、玉葱の褐色外皮の苦味を減少させる製法特許等があり、外皮粉末製品「エミール」「ハピチャン」等市場に出回っている。
一方、現存の商品は玉ねぎという立派な植物繊維を持ちながら、その繊維を有効に利用していないのが現状である。また、柑橘類の果実ジュースの添加等は既存の本ジュース等で見られるものの、柑橘類果皮のペーストを添加した商品はない。もちろん、本果皮の植物繊維および柑橘類果肉の砂のう及びじょうのう膜のペースト等の植物繊維も本ジュースに加えた商品はない。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
1)玉葱の褐色外皮中に多く含有するケルセチンの苦味の軽減化
近年玉葱外皮ケルセチン成分の効能が重要視され、品種改良等が行われた結果、外皮ケルセチンを多く含有する新品種玉葱が生産されるようになった。 このような状況下、外皮ケルセチンの別途抽出および苦味成分の苦味軽減化は清涼飲料水をつくる必須条件となってきた。改良品種玉葱のようにより多く含有する外皮ケルセチンを効率良く抽出し、その苦味を軽減する方法は従来のブランチング加工条件では難しい。そこで、より多く含有するケルセチンを効率良く抽出し、その苦味成分を軽減する方法は予め、玉葱のブランチング加工前に外皮を剥ぎ取り別途処理することによりケルセチンを抽出し、その苦味を軽減する方法が望まれる。
2)玉葱に柑橘果皮および果実を加えることにより、飲食後に味わえる柑橘類特有の爽快感が保持されていること。
3)玉葱の健康パワーの潜在能力が保持されていること。
4)使用植物の全ての植物繊維の混在下でのジュース化
を課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1)玉葱の褐色外皮の苦味成分の抽出液に柑橘類果皮の灰汁抜きをしたものを加え、ミキサー中ペースト化することにより、玉葱ケルセチンの苦味を軽減させる。
2)玉ねぎペーストに1)で得たペーストを加え、柑橘類果肉ペーストを加えることにより、臭いの軽減や味に爽やかさを加える。
3)血圧降下作用を示唆するアンジオテンシン阻害活性の測定により、玉ねぎ本来のパワーを確認すると共に、柑橘類果皮および果肉の相性を確認する。
4)喉越しのよい食感の飲料水を製造する為、玉ねぎ及び柑橘類果実を各種ミンサー、ミキサー等による微細断後、ホモジナイザーにて処理する。
【実施例】
【0005】
以下、本発明の実施例を記述する。
【実施例1】
玉ねぎジュースの製造法
1)玉葱約1kg(4〜5個)の褐色外皮を剥ぎ取り、約10gの外皮を得る。水洗後約1000mlの水を加え、約10分間煮沸する。
一方、予め、甘夏みかんの果皮の線きりを食用に灰汁抜きしたもの約5g〜10gを、玉ねぎ外皮の水煮沸液に加え、さらに水500ml加えた後ホモジナイザーにて処理する。(ペーストA)
2)先1)で得た玉ねぎの白実約1kgを80℃〜90℃中の蒸し釜中30分間熱処理した後、水約1000ml加えミキサー中ペースト状にする。(ペーストB)
3)甘夏みかんの種子を除いた果肉(じょうのう膜付砂のう)の約1kgを、ミンサーまたはミキサーを用いペースト状にする。(ペーストC)
4)先のペーストA,BおよびCを混合し、ホモジナイザーで十分処理する。
後、甘味料で好みの味付けをする。玉ねぎジュースの原液約4.5kgを得る。
5)玉ねぎジュース原液約4.5kgを水にて全量約8Lに希釈し、容量200mlのペットボトル、40本に注入し商品とする。
【実施例2】
【0006】
玉ねぎペーストと柑橘類果皮ペーストのACE阻害活性および相互作用の検討(被験物質の調製)
1)玉ねぎペーストの作成−−−(被験物質 Aと略記)
褐色外皮付き玉ねぎを、80℃〜90℃中の蒸し釜中30分間熱処理した後、その約50gに水を加えて100gとし、ミキサー中次いでホモジナイザーにてペースト状にする。
2)甘夏みかんの果肉ペーストの作成−−−(被験物質 Bと略記)
甘夏みかんの種子を除いた果肉(じょうのう膜付砂のう)の約50gに水を加えて100gとし、ミキサー中次いでホモジナイザーにてペースト状にする。その後、80℃〜90℃で30分間熱処理する。
3)甘夏みかん果皮ペーストの作成−−−(被験物質 Cと略記)
予め、甘夏みかんの果皮の線きりを食用に灰汁抜きしたもの約10gに水を加えて100gとし、ミキサー中次いでホモジナイザーにてペースト状にする。
4)玉ねぎペースト(A)と甘夏みかんの果肉ペースト(B)の混合液の調製−−−(被験物質 Dと略記)
被験物質AおよびBをそれぞれ同量ずつ混合し、よく振り混ぜ懸濁させる。
5)玉ねぎペースト(A)と甘夏みかんの果肉ペースト(B)の混合液に甘夏みかん果皮ペースト(C)の混合液の調製−−−(被験物質 Eと略記)
被験物質A、BおよびCをそれぞれ同量ずつ混合し、よく振り混ぜ懸濁させる。
尚、被験液(A,B,C,D,E)は1)〜5)それぞれの調製液を高速遠心機を用いて遠心分離を行い清澄な上清を得る。この上清を本阻害活性測定の検液とする。
【0007】
(アンジオテンシン変換酵素阻害活性の測定)
本測定は日本ハム株式会社中央研究所に依頼(試験番号NH0809−02 2008年10月)した。
(結果)
測定結果を[表−1]に示す。
【表−1】

【0008】
(考察)
1)単体において、玉ねぎペーストの水抽出液および甘夏みかんの果肉ペーストは本阻害活性が観察された。一方、甘夏みかんの果皮ペーストの本阻害活性は高濃度200μL/mLにおいても見られなかった。
2)混合体において、Dの玉ねぎペースト(A)と甘夏みかんの果肉ペースト(B)の混合液は両者本阻害活性の相加作用が観察された。
3)混合体において、Eの玉ねぎペースト(A)と甘夏みかんの果肉ペースト(B)
4)の混合液に更に甘夏みかん果皮ペースト(C)の混合液は本阻害活性の相乗効果(100μL/mLで約150%、20μL/mLで約200%の効果)が観察された。すなわち、玉ねぎペーストと甘夏みかん果肉ペーストの混合では見られなかった本阻害活性が、甘夏みかんの果皮ペースト添加による相乗作用が認められた。
【発明の効果】
【0009】
1)玉ねぎの健康に関する期待は大きく、近年における生活習慣病等の概念等により、玉ねぎの必要性がより甚大になってきているのが現状である。
「ヒトの健康は食にある」とまで言われ、玉ねぎの食材は現在の食生活では必需品化されているのが実状である。
かかる状況下、今回の血圧降下作用を示唆するアンジオテンシン阻害活性の測定において、玉ねぎと甘夏みかん果皮との相乗効果の発見は極めて重要であり、今後の食生活に重要な役割を果たすであろうことが予測される。
2)本特許の特徴の一つは玉葱の外皮中に多く含有するケルセチンの苦味を軽減させることにあり、その利用法として玉葱の飲料水化がある。一方、玉葱外皮のもつ健康パワーを期待する苦味のない粉末製品化も期待される。
3)本製法の特徴の一つであるホモジナイザーを用いた植物繊維の粉砕は玉葱の臭み、辛みは無くフルーツ感覚で喉越しのよい飲料水となった。
4)玉葱の持つ健康パワーの一例として、血圧降下作用を示唆するアンジオテンシン変換酵素活性阻害作用の測定を実施し、柑橘類果実との相性のよいこと(相乗効果)を実証した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
玉ねぎペーストおよび柑橘果肉の砂のう及びじょうのう膜のペーストに柑橘果皮ペーストを添加することからなる玉ねぎジュースの新規製造法。
【請求項2】
玉ねぎ及び柑橘類の果実のペースト混合液をホモジナイザーを用いて粉砕することを特徴とする植物繊維入りジュースの新規製造法

【公開番号】特開2010−17173(P2010−17173A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310249(P2008−310249)
【出願日】平成20年11月9日(2008.11.9)
【出願変更の表示】意願2008−5492(D2008−5492)の変更
【原出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(503162841)
【Fターム(参考)】