説明

玉揚装置及びそれを備える糸巻取機

【課題】玉揚時にパッケージが受ける衝撃を軽減するとともに、様々な形状のパッケージに対応可能な玉揚装置を提供する。
【解決手段】玉揚装置60は、支持部材と、ボビン案内用シリンダ62と、を備える。支持部材は、ボビン48に紡績糸が巻かれたパッケージ45を支持する。ボビン案内用シリンダ62は、パッケージ45が支持部材により支持された状態で、満巻のパッケージ45を、支持部材がパッケージ45を受け取るときの当該パッケージ45の位置(第1位置)から、パッケージ受け部84(第2位置)へ搬送するために、支持部材を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、パッケージを排出するための玉揚装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紡績機等の糸巻取機において、満巻になったパッケージ等を排出するための玉揚装置を備えた構成が知られている。特許文献1及び特許文献2は、この種の糸巻取機(紡績機、繊維機械)を開示する。
【0003】
特許文献1が開示する紡績機においては、紡績ユニットと玉揚台車との間にパッケージ載置エリアが設けられている。紡績ユニットで満巻となったパッケージは、玉揚台車のガイドアーム部材により、ボビンを保持するクレードルから取り外される。そして、ガイドアーム部材はステーでパッケージを一度受け取り、その後に当該パッケージをパッケージ載置エリアに向けて落下させている。
【0004】
特許文献2が開示する繊維機械は、玉揚台車よりも装置正面側に載置エリアが設けられている。また、玉揚台車には、パッケージを転がして移動させるための傾斜床が形成されている。この構成により、満巻となってクレードルから取り外されたパッケージは、傾斜床を転がって移動して、載置エリアまで案内される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−100066号公報
【特許文献2】特開2005−220484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1の構成において、パッケージは、パッケージ載置部に落下した際に衝撃を受けて、品質が低下してしまうことがある。
【0007】
また、特許文献1及び特許文献2では、チーズ形状のパッケージの案内方法のみを開示するにとどまり、例えばコーン形状のパッケージの案内方法や、巻き取るパッケージを変更するときの方法等については開示されていない。
【0008】
特に、特許文献2の構成を用いてコーン形状のパッケージを巻き取ると、傾斜床を転がるときにパッケージが小径側に曲がってしまい、繊維機械を構成している部品等と衝突することがある。この場合、パッケージが衝撃を受けて品質が低下してしまうだけでなく、部品に引っ掛かってパッケージがパッケージ載置部まで適切に移動できないこともある。
【0009】
また、特許文献2の構成は、玉揚台車を貫通するように傾斜床が設けられているため、玉揚台車の部品等の配置箇所が制限されてしまい、玉揚台車が大型化したり、レイアウト上の干渉を避けるために機構が複雑化したりしてしまう。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、玉揚時にパッケージが受ける衝撃を軽減するとともに、様々な形状のパッケージに対応可能な玉揚装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0012】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の玉揚装置が提供される。即ち、この玉揚装置は、支持部材と、駆動部と、を備える。前記支持部材は、ボビンに糸が巻かれたパッケージを支持する。前記駆動部は、前記パッケージが前記支持部材により支持された状態で、当該パッケージを第1位置から第2位置へ搬送するために、前記支持部材を駆動する。
【0013】
これにより、支持部材がパッケージの重さを支持しながら搬送しているため、パッケージが自由落下して第2位置にある部材等と衝突することを防止できるので、当該パッケージが受ける衝撃を緩和できる。従って、玉揚装置による玉揚作業時において、パッケージの損傷と品質の低下を防止できる。
【0014】
前記の玉揚装置において、前記支持部材は、前記パッケージの形状に応じて交換可能であることが好ましい。
【0015】
これにより、例えばチーズ巻きやコーン巻きといった様々な形状のパッケージに応じて適切な支持部材を用いることで、支持部材がパッケージの表面に均等に接触できるので、当該パッケージに大きな負荷が局所的に作用することを防止できる。また、パッケージの形状が変化する毎に、支持部材だけでなくパッケージを案内する部材についても交換が必要な構成に比べて、交換すべき部品の数を少なくでき、交換作業を容易に行うことができる。
【0016】
前記の玉揚装置は、前記パッケージの支持を開始する前に、前記パッケージと接触して、前記パッケージの慣性回転を停止させる回転停止部を備えることが好ましい。
【0017】
即ち、回転している状態のままパッケージを移動させると、パッケージが想定外の方向に転がってしまい、当該パッケージが支持部材から落下することがある。この場合、落下の衝撃によってパッケージが損傷したり、パッケージを第2位置に適切に案内できなくなったりする。この点、上記の構成では、パッケージの回転を停止させてから当該パッケージを移動させることができるので、支持部材からのパッケージの落下を防止できる。
【0018】
前記の玉揚装置は、前記パッケージを搬送するときに当該パッケージの軸方向の位置を規制する規制部材を備えることが好ましい。
【0019】
これにより、パッケージが支持部材から落下することを防止できるので、落下時の衝撃によりパッケージが損傷すること及びパッケージを第2位置に案内できなくなることを防止することができる。また、パッケージの移動経路を規制する規制部材を第1位置から第2位置にわたって形成する場合に比べて、玉揚装置全体の構成を簡素化できる。
【0020】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、この糸巻取機は、前記の玉揚装置と、巻取装置と、パッケージ受け部と、を備える。前記巻取装置は、前記ボビンに糸を巻き取って前記パッケージを形成する。前記パッケージ受け部は、前記巻取装置よりも低い位置に配置され、当該巻取装置で巻き取られた前記パッケージが置かれる。また、前記支持部材は、前記パッケージ受け部に前記パッケージが接触する瞬間において、当該パッケージの重さの少なくとも一部を支持する。
【0021】
これにより、玉揚装置がパッケージをパッケージ受け部に下ろす際に、当該パッケージがパッケージ受け部から受ける衝撃を緩和できる。従って、前記の糸巻取機は、玉揚作業時におけるパッケージの損傷と品質の低下を防止できる。
【0022】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記パッケージ受け部は、載置部と、傾斜部と、を備える。前記載置部には、前記パッケージが載せられる。前記傾斜部は、受け取った前記パッケージを前記載置部に向けて転がすことが可能である。前記玉揚装置は、前記傾斜部に前記パッケージを接触させた後、当該傾斜部上で前記パッケージを転がしながら当該パッケージを前記載置部まで案内する。
【0023】
これにより、パッケージが傾斜部上を移動している間は、パッケージの重さの一部を傾斜部が支持するため、支持部材に加わる荷重を低減させることができる。また、パッケージを引き摺らずに転がして移動させることができるので、パッケージの外周面の1箇所に負荷が集中することを防止できる。
【0024】
前記の糸巻取機において、前記玉揚装置は、前記傾斜部上を転がることが可能なローラ部材を備えることが好ましい。
【0025】
これにより、支持部材を傾斜部に沿って円滑に移動させ、パッケージを載置部まで適切に移動させることができる。また、支持部材を傾斜部に沿って引き摺ると支持部材及び傾斜部が摩耗してしまうが、ローラ部材によってこの摩耗を防止して、玉揚装置の耐久性を向上させることができる。
【0026】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この糸巻取機においては、前記巻取装置は、前記ボビンを保持するボビン保持部を備える。また、前記玉揚装置は、前記ボビン保持部から前記パッケージを取り外す操作部を備える。前記操作部は、前記支持部材が前記パッケージと接触しているときに、前記ボビン保持部から前記パッケージを取り外す。
【0027】
これにより、支持部材によってパッケージが支持された状態でパッケージの取外し作業が行われるので、取り外されたパッケージが巻取装置の位置から落下して衝撃を受けることを防止できる。従って、前記の糸巻取機は、パッケージの玉揚作業時におけるパッケージの損傷と品質の低下を防止できる。
【0028】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、糸を巻き付けるための前記ボビンを前記巻取装置に供給するボビン供給部を備える。玉揚装置は、前記支持部材が前記巻取装置から離れる動作と、前記ボビン供給部が前記巻取装置に前記ボビンを供給する動作と、を同時に行うことができる。
【0029】
これにより、玉揚装置がパッケージをパッケージ受け部まで案内している間に、ボビン供給部が巻取装置に新しいボビンを供給することができる。従って、前記の糸巻取機による糸の巻取効率を向上させることができる。
【0030】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記巻取装置は、一定方向に並べて配置される。前記玉揚装置は、前記巻取装置が並べられる方向に沿って走行可能である。
【0031】
これにより、巻取装置毎に玉揚装置を設置する構成に比べて、玉揚装置の設置台数を減らしてコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る精紡機の全体的な構成を示す正面図。
【図2】精紡機の縦断面図。
【図3】案内部の構成を示す斜視図。
【図4】パッケージの形状に応じた支持部材の形状を示す概略図。
【図5】パッケージの慣性による回転を案内部が停止させているときの様子を示す縦断面図。
【図6】玉揚作業を説明する縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、本発明の一実施形態に係る精紡機(糸巻取機)について、図面を参照して説明する。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、紡績時での糸の走行方向における上流及び下流を意味するものとする。図1は精紡機1の全体的な構成を示した正面図、図2は精紡機1の縦断面図である。
【0034】
図1に示す糸巻取機としての精紡機1は、並べて配置された多数の紡績ユニット2を備えている。この精紡機1は、糸継台車3と、玉揚台車4と、ブロアボックス93と、原動機ボックス5と、を備えている。
【0035】
図1に示すように、各紡績ユニット2は、上流から下流へ向かって順に、ドラフト装置7と、紡績装置9と、糸貯留装置12と、巻取装置13と、を主要な構成として備えている。ドラフト装置7は精紡機1が備えるフレーム6の上端近傍に設けられている。このドラフト装置7から送られてくる繊維束8は、紡績装置9で紡績される。紡績装置9から送出された紡績糸10は、後述のヤーンクリアラ49を通過した後、糸貯留装置12を更に通過する。そして、巻取装置13によって紡績糸10がボビン48に巻き取られることにより、パッケージ45が形成される。
【0036】
ドラフト装置7は、スライバ15を延伸して繊維束8にするためのものである。このドラフト装置7は図2に示すように、バックローラ16、サードローラ17、エプロンベルト18が装着されたミドルローラ19、及びフロントローラ20の4つのローラを備えている。
【0037】
紡績装置9の詳細な構成は図示しないが、本実施形態では、旋回気流を利用して繊維束8に撚りを与え、紡績糸10を生成する空気式のものを採用している。
【0038】
紡績装置9の下流には、糸貯留装置12が設けられている。この糸貯留装置12は、紡績糸10に所定の張力を与えて紡績装置9から引き出す機能と、糸継台車3による糸継時などに紡績装置9から送出される紡績糸10を滞留させて糸の弛みを防止する機能と、巻取装置13側の糸張力の変動が紡績装置9側に伝わらないように糸張力を調節する機能と、を有している。図2に示すように、糸貯留装置12は、糸貯留ローラ21と、糸係合部材22と、上流側ガイド23と、電動モータ25と、を備えている。
【0039】
糸係合部材22は、紡績糸10に係合する(引っ掛ける)ことが可能に構成されており、紡績糸10に係合した状態で糸貯留ローラ21と一体的に回転することで、当該糸貯留ローラ21の外周面に紡績糸10を案内できるように構成されている。
【0040】
糸貯留ローラ21は、その外周面に紡績糸10を巻き付けて貯留できるように構成されている。糸貯留ローラ21は、電動モータ25によって一定の回転速度で回転駆動される。
【0041】
なお、糸係合部材22は糸貯留ローラ21に対して相対回転可能に支持されているとともに、例えば磁気的手段等からなるトルク発生手段により、糸係合部材22が糸貯留ローラ21に対し相対回転するのに抗するトルク(抵抗トルク)が発生するように構成されている。この構成で、糸係合部材22が紡績糸10と係合している場合、紡績糸10に掛かる張力がこの抵抗トルクに打ち勝つほどに強ければ、糸係合部材22は糸貯留ローラ21と独立に回転して、紡績糸10を前記糸貯留ローラ21から解舒する。反対に、紡績糸10に掛かる張力が抵抗トルクよりも弱ければ、糸係合部材22は糸貯留ローラ21と一体的に回転し、紡績糸10を前記糸貯留ローラ21に巻き付ける。
【0042】
このように、糸貯留装置12は、紡績糸10の張力が下がる(紡績糸10が弛みそうになる)と当該紡績糸10を巻き付け、紡績糸10の張力が上がると当該紡績糸10を解舒するように動作することで、紡績糸10の弛みを解消して適切な張力を付与することができる。また、上記のように糸貯留装置12と巻取装置13と間の紡績糸10に掛かる張力の変動を吸収するように糸係合部材22が働くことで、当該張力の変動が、紡績装置9から糸貯留装置12までの間の紡績糸10に影響を及ぼすことを防止できる。これにより、糸貯留装置12は、紡績装置9から紡績糸10をより安定した速度で糸貯留装置12によって引き出すことができる。
【0043】
上流側ガイド23は、糸貯留ローラ21のやや上流側に配置されている。この上流側ガイド23は、糸貯留ローラ21の外周面に対して紡績糸10を適切に案内する案内部材として構成されている。更に、上流側ガイド23は、紡績装置9から伝播してくる紡績糸10の撚りが当該上流側ガイド23よりも下流側に伝わることを防止する撚り止めの役割を兼ねている。
【0044】
精紡機1のフレーム6の前面側であって前記紡績装置9と前記糸貯留装置12との間の位置には、ヤーンクリアラ49が設けられている。紡績装置9で紡出された紡績糸10は、糸貯留装置12で巻き取られる前に前記ヤーンクリアラ49を通過するようになっている。ヤーンクリアラ49は走行する紡績糸10の太さを監視し、紡績糸10の糸欠点を検出した場合に、図示しないユニットコントローラに対して、糸欠点検出信号を送信するように構成されている。なお、ヤーンクリアラ49は、紡績糸10の太さ異常に加えて、紡績糸10に含まれる異物の有無を検出するように構成されていても良い。
【0045】
ユニットコントローラは、ヤーンクリアラ49から糸欠点検出信号を受信すると、直ちに巻取装置13を駆動させたままドラフト装置7を停止させることにより紡績糸10を切断し、更にドラフト装置7や紡績装置9等を停止させる。また、ユニットコントローラは糸継台車3に制御信号を送り、当該紡績ユニット2の前まで走行させる。その後、ユニットコントローラは、紡績装置9等を再び駆動し、前記糸継台車3に糸継ぎを行わせて巻取りを再開させるようになっている。糸貯留装置12は、紡績装置9が紡績を再開してから巻取りが再開されるまでの間、紡績装置9から連続的に送出される紡績糸10を糸貯留ローラ21に滞留させて紡績糸10の弛みを取るように構成されている。
【0046】
糸継台車3は、図1及び図2に示すように、スプライサ(糸継装置)43と、サクションパイプ44と、サクションマウス46と、走行輪42と、を備えている。糸継台車3は、ある紡績ユニット2で糸切れや糸切断が発生すると、走行輪42を駆動して前記フレーム6に固定された走行レーン41上を走行する。そして、糸継台車3は、糸切れや糸切断が発生した紡績ユニット2の前で停止して糸継ぎを行うように構成されている。
【0047】
前記サクションパイプ44は、軸を中心に上下方向に回動可能であり、紡績装置9から送出される糸端(上糸)を吸い込みつつ捕捉して、スプライサ43へ案内できるように構成されている。サクションマウス46は、軸を中心に上下方向に回動可能であり、前記巻取装置13に支持されたパッケージ45から糸端(下糸)を吸引しつつ捕捉して、スプライサ43へ案内できるように構成されている。スプライサ43の詳細な構成については省略するが、旋回空気流によって糸端同士を撚り合わせることにより、上糸と下糸とを糸継ぎするように構成されている。
【0048】
巻取装置13は、クレードル70を備えている。このクレードル70は、支軸73と、この支軸73を中心として回動可能なクレードルアーム71と、ボビン48の両端部を保持可能なボビンホルダ(ボビン保持部)72と、を備える。
【0049】
前記巻取装置13は、巻取ドラム74と、紡績糸10に係合可能なトラバースガイド76と、を備えている。巻取ドラム74は、前記ボビン48やそれに紡績糸10を巻き付けて形成されるパッケージ45の外周面に接触して駆動できるように構成されている。巻取装置13は、巻取ドラム74を図略の電動モータによって駆動することで、巻取ドラム74に接触するパッケージ45を回転させ、図略の駆動手段によってトラバースガイド76を往復動させながら、紡績糸10を綾振りしつつ巻き取るようになっている。
【0050】
なお、クレードルアーム71には図略のバネが取り付けられており、このバネは、起立方向の付勢力を常時クレードルアーム71に加えている。従って、ボビン48に紡績糸10が巻かれてパッケージ45が巻き太るに従って、クレードルアーム71は、装置正面側に倒れ、パッケージ45の軸の位置が前方へ移動する。なお、クレードルアーム71には図示しない駆動部(例えば、シリンダ)が連結されており、ユニットコントローラの指令によって、クレードルアーム71を巻取ドラム74から離れる方向及び巻取ドラム74に近づく方向に積極的に回動させるように制御することもできるようになっている。この構成により、パッケージ45が満巻となったときは、クレードルアーム71を巻取ドラム74から離れる方向に回動させて、当該パッケージ45に駆動力を伝達させないようにすることができる。なお、パッケージ45が巻取ドラム74から離間した後も、パッケージ45は慣性による回転(以下、慣性回転と称する)を続けている。
【0051】
玉揚台車4は、図1及び図2に示すように、玉揚装置60を備える。この玉揚装置60は、クレードル70にボビン48を供給して紡績糸10の巻取りの準備を行うボビンセット作業と、満巻になったパッケージ45をクレードルから取り外す玉揚作業と、を行うことが可能に構成されている。玉揚台車4は、その下部に走行輪92を備えており、ある紡績ユニット2に対してボビンセット作業又は玉揚作業を行う旨の指示を受けると、前記フレーム6に形成された走行路91上を当該紡績ユニット2まで走行する。そして、玉揚台車4は、指示を受けた紡績ユニット2の前で停止し、ボビンセット作業又は玉揚作業(又はその両方の作業)を行う。
【0052】
玉揚装置60は、上記ボビンセット作業を行うための構成として、ボビン供給部50と、サクションパイプ88と、クレードル操作アーム(操作部)89と、を備えている。
【0053】
サクションパイプ88は、回動可能かつ伸縮可能に構成されており、紡績装置9から排出される紡績糸10を吸引することで捕捉して、この補捉した紡績糸10を巻取装置13まで案内するためのものである。
【0054】
ボビン供給部50は、揺動軸111を中心として回動可能に構成されるとともに、ボビン把持部52によってボビン48を把持可能に構成されている。この構成により、玉揚装置60は、ボビン48を把持させた状態でボビン供給部50を回動させて、クレードル70が備える1対のボビンホルダ72の間の位置に当該ボビン48を供給することができる。ボビン供給部50は、バンチ巻きを行うためのバンチ巻きローラ53を備えている。ここでバンチ巻きとは、紡績糸10をボビン48に固定するために、ボビン48の周囲に紡績糸10を棒巻きすることをいう。なお、このボビン供給部50の詳細な構成は後述する。
【0055】
クレードル操作アーム89は、一方のボビンホルダ72を他方のボビンホルダ72から離間させるように、クレードルアーム71を操作することができる(離間作業)。なお、上述のようにクレードルアーム71は、ボビン48に紡績糸10が巻かれてパッケージ45が巻き太るに従ってその姿勢が変化する。この点、クレードル操作アーム89は、図略のカム機構等によってその位置を変更することが可能になっているので、満巻のパッケージを取り外す玉揚作業時(図5)においても、ボビンセット作業時(図6)においても、上記の離間作業を行うことができる。
【0056】
玉揚装置60は、図2に示すように案内部61を備えている。この案内部61は、クレードル70から受け取った満巻のパッケージ45を、精紡機1が備えるパッケージ受け部84に案内するためのものである。
【0057】
パッケージ受け部84は、パッケージ45を転がして移動させるための傾斜部81と、転がされたパッケージ45が一時的に載せられる載置部82と、で構成されている。載置部82は傾斜部81の端部に接続するように配置されており、傾斜部81及び載置部82は、何れもパッケージ45の周面に接触できるように構成されている。また、傾斜部81及び載置部82は、ボビンホルダ72より低い位置(もっと言えば、ボビンホルダ72に支持されたパッケージ45より低い位置)に配置されている。
【0058】
本実施形態において、載置部82はコンベアとしての機能を有しており、紡績ユニット2が並べられる方向に沿ってパッケージ45が搬送されて、次工程へ自動的に送られるようになっている。ただし、載置部82がコンベア機能を有しないように構成して、載置部82上のパッケージ45が作業員によって手作業で回収されるようにしても良い。
【0059】
以下、案内部61の構成について、図2から図4までを参照して説明する。図3は、案内部61の構成を示す斜視図である。図4は、パッケージ45の形状に応じた支持部材の形状を示す概略図である。
【0060】
案内部61は、図3に示すように、回動アーム63と、図2に示すボビン案内用シリンダ(駆動部)62と、取付板68と、支持部材(回転停止部)65と、規制部材66と、ローラ部材67と、を主要な構成として備えている。
【0061】
回動アーム63の一方の端部には、回転軸101が取り付けられている。また、案内部61は図略のモータを備え、当該モータの駆動力によって、回転軸101を中心として回動アーム63を回動させることができる。回動アーム63を上方に回動させることにより、案内部61を玉揚台車4側から巻取装置13側へ進出させ、その先端側をパッケージ45に近づけることができる。一方、回動アーム63を下方に回動させることにより、案内部61を玉揚台車4側に退避させて収納することができる。
【0062】
回動アーム63の先端側には、回転軸103が回転可能に取り付けられている。回転軸103の両端には、互いにほぼ平行に配置された1対の取付板68が固定されている。また、図2に示すボビン案内用シリンダ62は、一方の端部が作用軸104を介して取付板68に取り付けられており、他方の端部は回動アーム63の根元側に取り付けられている。また、このボビン案内用シリンダ62は、空気圧によって伸縮可能に構成されている。
【0063】
この構成により、ボビン案内用シリンダ62の空気圧を調整して伸縮させることにより作用軸104に力が加わり、回転軸103を中心として取付板68が回動する。具体的には、ボビン案内用シリンダ62を伸ばしたときに取付板68が上方に回動し、ボビン案内用シリンダ62を縮めたときに取付板68が下方に回動する。
【0064】
また、取付板68には、支持部材65、規制部材66、及びローラ部材67が取り付けられている。
【0065】
支持部材65は、平板状に形成された部材であり、2枚並べて配置されている。それぞれの支持部材65は、1対の取付板68に跨るようにして配置されている。2枚の支持部材65で形成された接触面(支持面)は、図3に示すように、その中央部分が浅く凹んだようなV字状に形成されている。
【0066】
この構成で、ボビン案内用シリンダ62を伸ばして取付板68とともに支持部材65を上方に回動させることにより、支持部材65は、ボビンホルダ72に保持された状態のパッケージ45と接触することができる。これにより、当該パッケージ45の前記慣性回転を停止させることができる。また、支持部材65は、クレードル70から受け取ったパッケージ45の重さを支持しながら、パッケージ45を傾斜部81まで案内することができる。更に、支持部材65は、傾斜部81にパッケージ45が接触した後も当該パッケージ45に接触し、パッケージ45を傾斜部81に沿って載置部82まで案内することができる。
【0067】
この支持部材65は、図4(a)に示すように、パッケージ45の外周面に接触可能な接触部65aと、取付板68に取り付けられる取付部65b、65cから構成されている。なお、図4(a)は、2枚の支持部材65のうち、巻取装置13側に配置された支持部材65を当該巻取装置13側から見た図である。
【0068】
ここで、パッケージ45の回転の停止及びパッケージ45の案内を適切に行うためには、パッケージ45の表面に均等に支持部材65を接触させる必要がある。即ち、支持部材65がパッケージ45に作用させる力に偏りがあると、パッケージ45の一部に大きな負荷が掛かってしまい、当該パッケージ45が損傷してしまうことがある。従って、コーン形状のパッケージ45を巻き取るときは、図4(a)に示すように、コーン形状に合うように取付部65b、65cの長さが調整された傾斜状の支持部材65が用いられる。また、チーズ形状のパッケージ45を巻き取るときは、図4(b)に示すように、取付部65bと取付部65cとの長さが等しい構成の水平状の支持部材65が用いられる。
【0069】
図4(a)及び図4(b)に示す支持部材65は、固定部材(例えば、ボルト)を外すことで取付板68から簡単に取り外すことができる。従って、精紡機1で形成するパッケージ45の形状を変更する場合であっても、支持部材65を交換するだけで、玉揚装置60は変更された形状のパッケージ45の玉揚作業にも対応することができる。
【0070】
規制部材66は、平板状に形成されるとともに、ほぼ垂直に起立した状態で取付板68に取り付けられている。規制部材66は、2枚がほぼ平行に並んで配置されており、クレードル70から受け取ったパッケージ45の軸方向の位置を両側から規制することができる。これにより、受け取ったパッケージ45が接触部65a上から落下することを防止している。
【0071】
ローラ部材67は、取付板68に対して回転可能に支持されている。このローラ部材67は、案内部61が傾斜部81に沿ってパッケージ45を案内するときに、当該傾斜部81上で回転するように構成されている。この構成により、パッケージ45の案内をスムーズに行うことができ、また、案内部61及び傾斜部81等の摩耗を防止できる。なお、本実施形態の案内部61は、ローラ部材67を3組(合計6個)備えた構成となっている。
【0072】
次に、図5及び図6を参照して、玉揚装置60が玉揚作業及びボビンセット作業を行うときの流れについて説明する。図5は、パッケージ45の慣性回転を案内部61が停止させているときの様子を示す縦断面図である。図6は、玉揚作業を説明する縦断面図である。なお、本実施形態において、玉揚作業及びボビンセット作業は同時並行に行われる。
【0073】
ある紡績ユニット2のパッケージ45が満巻となったことが図略のセンサによって検知されると、ユニットコントローラは紡績装置9を停止させるとともに、玉揚台車4を当該紡績ユニット2まで呼び寄せる。それとほぼ同時に、ユニットコントローラは、巻取装置13においてクレードルアーム71を図2の左側(装置正面側)へ回動することにより巻取ドラム74から満巻のパッケージ45を離し、当該パッケージ45に駆動力を伝達させないようにする。なお、巻取ドラム74から離間した後も、パッケージ45は慣性回転を行っている。
【0074】
玉揚装置60は、ユニットコントローラの呼び寄せに応じて紡績ユニット2まで到達すると、回動アーム63を上方に回動させることにより、案内部61の先端部をパッケージ45に近づける。そして、玉揚装置60は、この状態でボビン案内用シリンダ62に圧縮空気を供給して伸ばすことにより、支持部材65を上方に回動させてパッケージ45の周面に接触させる。これにより、玉揚装置60は、パッケージ45の表面を支持部材65で摩擦制動し、パッケージ45の慣性回転を停止させることができる(図5を参照)。なお、玉揚装置60は、パッケージ45の回転が完全に停止した後も、支持部材65をパッケージ45に接触させたままにするように構成されている。なお、以下の説明において、支持部材65がクレードル70からパッケージ45を受け取るときの、当該パッケージ45の位置を「第1位置」と称する。
【0075】
玉揚装置60は、パッケージ45の慣性回転が完全に停止するまでに、クレードル操作アーム89を図5に示す位置に移動させておく。パッケージ45が完全に停止すると、玉揚装置60は一方のボビンホルダ72を他方のボビンホルダ72から離間させるようにクレードルアーム71をクレードル操作アーム89により操作して、満巻のパッケージ45をクレードル70から取り外す。
【0076】
このとき、上記のように支持部材65はパッケージ45に接触した状態を継続しているので、パッケージ45が支持部材65の上に落下したり傾斜部81の上に直接落下したりして衝撃を受けることはない。また、上述のようにパッケージ45の形状に対応して適切な形状の支持部材65を選択して用いることにより、玉揚装置60は、パッケージ45に対して支持部材65を広い面積で接触させ、パッケージ45がバタつかないように安定して支持(案内)することができる。
【0077】
玉揚装置60は、ボビン案内用シリンダ62に供給する圧力を弱めていくことで、取り外された満巻のパッケージ45の重さを支持しながら、支持部材65を下方に回動させることができる。支持部材65の下方への回動とともに、必要に応じて回動アーム63を下方に回動させていくと、やがてパッケージ45が傾斜部81(パッケージ受け部84、第2位置)に接触する(図6を参照)。このように、玉揚装置60は、パッケージ45が支持部材65により支持された状態で、当該パッケージ45を第1位置から第2位置へ搬送している。
【0078】
上記のようにパッケージ45が傾斜部81に初めて接触する瞬間においては、当該パッケージ45の重量の一部は支持部材65によって支持され、残りは傾斜部81(パッケージ受け部84)によって受け止められる。このように、パッケージ45が傾斜部81に着地する瞬間まで支持部材65が当該パッケージ45の重量を確実に支持するので、玉揚装置60は、パッケージ45の品質低下が起こりにくい構成となっている。
【0079】
玉揚装置60は、支持部材65をパッケージ45に接触させた状態を保持しながら、図6の状態から回動アーム63を更に下方に回動することで、案内部61をクレードル70から離れる向きに斜め下方に移動させる。これにより、玉揚装置60は、パッケージ45を傾斜部81に沿って転がすようにして載置部82まで案内することができる(図6の鎖線参照)。
【0080】
本実施形態では、パッケージ45が傾斜部81に接触した後も、当該パッケージ45が載置部82に到達するまで、案内部61(支持部材65)によってパッケージ45の重量の一部が支持されている。従って、例えば精紡機1のコンパクト化の観点から傾斜部81の角度を急にせざるを得ない場合でも、玉揚装置60は、パッケージ45の転がる勢いが強くなり過ぎないように制御しながら載置部82までパッケージ45を移動させることができる。なお、傾斜部81に沿ってパッケージ45を案内するとき、ローラ部材67は傾斜部81と接触しており、このローラ部材67が傾斜部81上を転がるように回転することで、案内部61をスムーズに移動させることができる。
【0081】
なお、コーン形状(円錐状)のパッケージ45を仮に傾斜部81上で自由に転がした場合、上述したようにパッケージ45の進路は直線にならず、小径側に曲がるカーブを描くことになる。しかしながら本実施形態では、パッケージ45の軸方向両端面を規制部材66によって規制しながら当該パッケージ45を傾斜部81に沿って案内しているので、コーン形状のパッケージ45でも真っ直ぐに載置部82に向けて転がすことができる。
【0082】
なお、玉揚装置60は、この玉揚作業中にボビンセット作業も行っている。即ち、パッケージ45がボビンホルダ72から取り外されると、クレードルアーム71を巻取ドラム74側に近づくように回動させた状態とした上で、クレードル操作アーム89を、クレードル70を操作できる位置に移動させておく(図6の鎖線参照)。そして、クレードル操作アーム89は、ボビン48の供給が行われるまでに、一方のボビンホルダ72を他方のボビンホルダ72から離間させるようにクレードルアーム71を操作しておく。
【0083】
玉揚装置60は、クレードル操作アーム89の操作の完了後に、又は当該操作と並行して、玉揚台車4の上部にストックされているボビン48をボビン供給部50(ボビン把持部52)で把持した後、ボビン供給部50を回動させてボビン48をクレードル70のボビンホルダ72に供給する(図6を参照)。なお、このボビン供給部50の動作の間、案内部61は、パッケージ45を載置部82に向けて搬送している。従って、案内部61がボビンホルダ72から離れる動作と、ボビン供給部50がボビンホルダ72に向かって近づく動作と、が同時並行で行われているということができる。このような動作の連携により、巻取装置13において、パッケージ45の排出及び新しいボビン48の装着を短時間で行うことができる。
【0084】
そして、玉揚装置60は、クレードル操作アーム89でクレードルアーム71を操作し、ボビン48をボビンホルダ72に保持させる。ボビンホルダ72へのボビン48の装着が完了すると、玉揚装置60はボビン把持部52によるボビン48の把持を解除するとともに、バンチ巻きローラ53をボビン48に接触させて、バンチ巻きを行う。そして、バンチ巻きが完了すると、ボビン供給部50が玉揚装置60側へ退避する。その前後において、紡績ユニット2のユニットコントローラは、ボビン48が巻取ドラム74に接触するように、クレードル70を支軸73を中心に回動させる。これにより紡績糸10に巻取張力が付与され、糸貯留ローラ21から徐々に紡績糸10が解舒されて、巻取りが開始される。
【0085】
以上に説明したように、本実施形態の玉揚装置60は、支持部材65と、ボビン案内用シリンダ62と、を備える。支持部材65は、ボビン48に紡績糸10が巻かれたパッケージ45を支持する。ボビン案内用シリンダ62は、パッケージ45が支持部材65により支持された状態で、満巻のパッケージ45を、支持部材65がパッケージ45を受け取るときの当該パッケージ45の位置(第1位置)から、パッケージ受け部84(第2位置)へ搬送するために、支持部材65を駆動する。
【0086】
これにより、支持部材65がパッケージ45の重さを支持しながら搬送しているため、玉揚装置60がパッケージ45をパッケージ受け部84に下ろす際に、当該パッケージ45が重力の影響によってパッケージ受け部84から受ける衝撃を緩和できる。従って、玉揚装置60による玉揚作業時において、パッケージ45の損傷と品質の低下を防止できる。
【0087】
また、本実施形態の玉揚装置60において、支持部材65は、パッケージ45の形状に応じて交換可能である。
【0088】
これにより、例えばチーズ巻きやコーン巻きといった様々な形状のパッケージ45に応じて適切な支持部材65を用いることで、支持部材65がパッケージ45の表面に均等に接触できるので、当該パッケージ45に大きな負荷が局所的に作用することを防止できる。また、パッケージの形状が変化する毎に案内部61全体を交換する構成に比べて、交換すべき部品を少なくでき、交換作業を容易に行うことができる。また、パッケージ45の形状に応じた適切な支持部材65を用いることで、パッケージ45がクレードル70に支持されていた姿勢を維持して、案内部61がパッケージ45を巻取装置13から受け取ることができる。これにより、玉揚装置60は、限られたスペース内で玉揚作業を行うことができる。従って、限られた設置面積に多数の紡績ユニット2が配置された精紡機1では、本実施形態の玉揚装置60の構成が望ましい。
【0089】
また、本実施形態の玉揚装置60は、紡績糸10の巻取りが終了した後にパッケージ45の慣性回転を停止する回転停止部としての支持部材65を備える。
【0090】
即ち、回転している状態のままパッケージ45を移動させると、パッケージ45が想定外の方向に転がってしまい、当該パッケージ45をパッケージ受け部84に適切に案内できないことがある。この点、玉揚装置60は、パッケージ45の回転を停止させてから当該パッケージ45を移動させることができるので、パッケージ45を確実にパッケージ受け部84(第2位置)へ案内することができる。また、案内部61が支持部材65を有しているため、パッケージ45の回転の停止と、パッケージ45の案内と、を一連の動作で行うことができる。特に本実施形態では、ボビン案内用シリンダ62によって支持部材65を駆動しているので、空気圧の調整により、支持部材65をパッケージ45に押し付ける力を容易に調整することができる。従って、支持部材65との摩擦でパッケージ45が損傷せず、かつパッケージ45の回転を素早く停止させ得る強さの力で、支持部材65をパッケージ45に接触させることができる。
【0091】
また、本実施形態の玉揚装置60は、パッケージ45を案内するときに当該パッケージ45の軸方向の位置を規制する規制部材66を備える。
【0092】
これにより、パッケージ45が支持部材65から落下することを防止できるので、落下時の衝撃によるパッケージ45の損傷を防止することができる。また、パッケージ45が傾斜部81上を転がるときも規制部材66によって当該パッケージ45を真っ直ぐ案内することができる。この効果は、単純に転がす場合に経路がカーブを描いてしまうコーン形状のパッケージにおいて特に有効である。更に、パッケージ45の移動経路を規制する規制部材をパッケージ受け部84側に(紡績ユニット2ごとに)設ける場合に比べて、精紡機1の構成を簡素化できる。
【0093】
また、本実施形態の精紡機1は、玉揚装置60と、巻取装置13と、パッケージ受け部84と、を備える。巻取装置13は、ボビン48に紡績糸10を巻き取ってパッケージ45を形成する。パッケージ受け部84は、巻取装置13よりも低い位置に配置され、巻取装置13で巻き取られたパッケージ45が置かれる。また、支持部材65は、パッケージ受け部84にパッケージ45が接触する瞬間において、当該パッケージ45の重さの少なくとも一部を支持する。
【0094】
これにより、玉揚装置60がパッケージ45をパッケージ受け部84に下ろす際に、当該パッケージ45がパッケージ受け部84から受ける衝撃を緩和できる。従って、精紡機1は、玉揚作業時におけるパッケージ45の損傷と品質の低下を防止できる。
【0095】
また、本実施形態の精紡機1において、パッケージ受け部84は、載置部82と、傾斜部81と、を備える。載置部82には、パッケージ45が載せられる。傾斜部81は、受け取ったパッケージ45を載置部82に向けて転がすことが可能である。玉揚装置60の案内部61は、傾斜部81にパッケージ45を接触させた後、当該傾斜部81上でパッケージ45を転がしながら当該パッケージ45を載置部82まで案内する。
【0096】
これにより、パッケージ45が傾斜部81上を移動している間は、パッケージ45の重さの一部を傾斜部81が支持するため、支持部材65に加わる荷重を低減させることができる。また、パッケージ45を引き摺らずに転がして移動させることができるので、パッケージ45の外周面の1箇所に負荷が集中することを防止できる。
【0097】
また、本実施形態の精紡機1において、玉揚装置60の案内部61は、傾斜部81上を転がることが可能なローラ部材67を備える。
【0098】
これにより、支持部材65を傾斜部81に沿って円滑に移動させ、パッケージ45を載置部82まで適切に移動させることができる。また、支持部材65を傾斜部81に沿って引き摺ると支持部材65及び傾斜部81が摩耗してしまうが、ローラ部材67によってこの摩耗を防止して玉揚装置60の耐久性を向上させることができる。
【0099】
また、本実施形態の精紡機1において、巻取装置13は、ボビン48を保持するボビンホルダ72を備える。また、玉揚装置60は、ボビンホルダ72からパッケージ45を取り外すクレードル操作アーム89を備える。クレードル操作アーム89は、支持部材65がパッケージ45と接触しているときに、ボビンホルダ72からパッケージ45を取り外す。
【0100】
これにより、支持部材65によってパッケージ45が支持された状態でパッケージ45の取外し作業が行われるので、取り外されたパッケージ45が巻取装置13の位置から落下して衝撃を受けることを防止できる。従って、精紡機1は、パッケージ45の玉揚作業時におけるパッケージ45の損傷と品質の低下を防止できる。
【0101】
また、本実施形態の精紡機1は、紡績糸10を巻き付けるためのボビン48を巻取装置13に供給するボビン供給部50を備える。玉揚装置60は、案内部61(特に支持部材65)が巻取装置13から離れる動作と、ボビン供給部50が巻取装置13にボビン48を供給する動作と、を同時に行うことができる。
【0102】
これにより、案内部61がパッケージ45をパッケージ受け部84(載置部82)まで案内している間に、ボビン供給部50がボビンホルダ72に新しいボビン48を供給することができる。従って、精紡機1による紡績糸10の巻取効率を向上させることができる。
【0103】
また、本実施形態の精紡機1において、巻取装置13は、一定方向に並べて配置される。玉揚装置60は、巻取装置13が並べられる方向に沿って走行可能である。
【0104】
これにより、巻取装置13毎に玉揚装置60を設置する構成に比べて、玉揚装置60の設置台数を減らしてコストを削減することができる。
【0105】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0106】
また、精紡機1の構成は事情に応じて適宜変更することができる。例えば、上記実施形態の精紡機1が備える糸貯留装置12に代えて、あるいは糸貯留装置12に加えて、1対のローラからなる糸送り装置を紡績装置9の下流側に配置する構成に変更することができる。
【0107】
本発明の適用範囲は精紡機に限られず、パッケージ45が置かれるパッケージ受け部84がボビンホルダ72の下方に位置する構成であれば、精紡機以外の糸巻取機にも適用することができる。
【0108】
上記実施形態では、ヤーンクリアラ49により糸欠点が検出されたとき等において、巻取装置13を駆動させたままドラフト装置7を停止させることにより紡績糸10を切断しているが、この構成に代えて、ヤーンクリアラ49の近傍にカッタを備え、このカッタによって紡績糸10を切断する構成にすることができる。
【0109】
上記実施形態では、パッケージ受け部84は傾斜部81と載置部82とで構成されるが、これに代えて、傾斜部を有しない構成のパッケージ受け部を用いることができる。
【0110】
駆動部としてのボビン案内用シリンダ62は、空気圧シリンダに代えて油圧シリンダ等の油圧シリンダを用いることができる。また、駆動部として、ソレノイドを用いる構成や、カム及び電動モータ等を用いた場合でも、上記の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0111】
ローラ部材67の取付位置及び個数は、上記で示した例に限られず、例えば取付板68の先端部のみに取り付けられる構成にしても良い。
【0112】
上記実施形態では、案内部61がボビンホルダ72から離れる動作と、ボビン供給部50がボビンホルダ72に向かって近づく動作と、が同時並行で行われているが、玉揚作業を完成させてからボビンセット作業を行うようにしても良い。ただし、精紡機1の稼動効率の観点からは、玉揚作業とボビンセット作業とを同時並行で行うことが望ましい。また、玉揚作業後に新たなパッケージを形成しない場合は、玉揚装置60は、玉揚作業のみを行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0113】
1 精紡機(糸巻取機)
2 紡績ユニット
4 玉揚台車
13 巻取装置
50 ボビン供給部
60 玉揚装置
61 案内部
62 ボビン案内用シリンダ(駆動部)
65 規制部材
66 支持部材(回転停止部)
67 ローラ部材
70 クレードル
72 ボビンホルダ(ボビン保持部)
74 巻取ドラム
81 傾斜部
82 載置部
84 パッケージ受け部
89 クレードル操作アーム(操作部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビンに糸が巻かれたパッケージを支持する支持部材と、
前記パッケージが前記支持部材により支持された状態で、当該パッケージを第1位置から第2位置へ搬送するために、前記支持部材を駆動する駆動部と、
を備えることを特徴とする玉揚装置。
【請求項2】
請求項1に記載の玉揚装置であって、
前記支持部材は、前記パッケージの形状に応じて交換可能であることを特徴とする玉揚装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の玉揚装置であって、
前記パッケージの支持を開始する前に、前記パッケージと接触して、前記パッケージの慣性回転を停止させる回転停止部を備えることを特徴とする玉揚装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の玉揚装置であって、
前記パッケージを搬送するときに当該パッケージの軸方向の位置を規制する規制部材を備えることを特徴とする玉揚装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の玉揚装置と、
前記ボビンに糸を巻き取って前記パッケージを形成する巻取装置と、
前記巻取装置よりも低い位置に配置され、当該巻取装置で巻き取られた前記パッケージが置かれるパッケージ受け部と、
を備えた糸巻取機であって、
前記支持部材は、前記パッケージ受け部に前記パッケージが接触する瞬間において、当該パッケージの重さの少なくとも一部を支持することを特徴とする糸巻取機。
【請求項6】
請求項5に記載の糸巻取機であって、
前記パッケージ受け部は、
前記パッケージが載せられる載置部と、
受け取った前記パッケージを前記載置部に向けて転がすことが可能な傾斜部と、
を備え、
前記玉揚装置は、前記傾斜部に前記パッケージを接触させた後、当該傾斜部上で前記パッケージを転がしながら当該パッケージを前記載置部まで案内することを特徴とする糸巻取機。
【請求項7】
請求項6に記載の糸巻取機であって、
前記玉揚装置は、前記傾斜部上を転がることが可能なローラ部材を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項8】
請求項5から7までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記巻取装置は、前記ボビンを保持するボビン保持部を備え、
前記玉揚装置は、前記ボビン保持部から前記パッケージを取り外す操作部を備え、
前記操作部は、前記支持部材が前記パッケージと接触しているときに、前記ボビン保持部から前記パッケージを取り外すことを特徴とする糸巻取機。
【請求項9】
請求項5から8までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
糸を巻き付けるための前記ボビンを前記巻取装置に供給するボビン供給部を備え、
前記支持部材が前記巻取装置から離れる動作と、前記ボビン供給部が前記巻取装置に前記ボビンを供給する動作と、を同時に行うことが可能であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項10】
請求項5から9までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記巻取装置は、一定方向に並べて配置され、
前記玉揚装置は、前記巻取装置が並べられる方向に沿って走行可能であることを特徴とする糸巻取機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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