説明

珪素化合物の精製

本発明は、珪素化合物、殊にオルガノシラン及び/又は無機シラン並びに少なくとも1種の異種金属及び/又は異種金属含有化合物を含有している組成物を処理する方法に関し、この際、前記組成物を少なくとも1種の吸着剤及び/又は第1フィルターと接触させ、引き続き、その中の異種金属及び/又は異種金属含有化合物の含分が低減されている組成物を取得する。更に本発明は、前記化合物の減少のために、有機樹脂、活性炭、珪酸塩及び/又はゼオライト及び/又は小さい細孔寸法を有するフィルター少なくとも1つを使用することにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、珪素化合物、殊にオルガノシラン及び/又は無機シラン並びに少なくとも1種の異種金属及び/又は異種金属含有化合物を含有している組成物の処理法に関し、この際、前記組成物を、少なくとも1種の吸着剤及び/又は第1フィルターと接触させ、引き続き、異種金属及び/又は異種金属含有化合物の含分が低下されている組成物を取得する。更に本発明は、有機樹脂、活性炭、珪酸塩及び/又はゼオライト及び/又は小さい細孔寸法を有するフィルター少なくとも1つをも前記化合物の減少のために使用することに関する。
【0002】
特に有機シラン、例えばアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、アルケニルアルコキシシラン、アルキニルアルコキシシラン、アリールアルコキシシラン又は有機官能性シラン及び珪酸エステルをナノテクノロジー又はマイクロ電子工学の分野で使用する場合に、その中の通常の不純物が検出限界の範囲の痕跡量まで減少されている最高純度のシランの需要が存在する。それというのも、ここでは僅かな量の不純物ですら、シランの使用下に製造された製品の品質に著しい影響を有するからである。マイクロ電子工学で、例えば半導体工業での絶縁性、常磁性の又はエピタキシャルな層の沈殿の際に珪素化合物(有機又は無機の)を使用する場合に、その敏感な用途では、痕跡量のみの異種金属での汚染ですら、重大な問題が発生する。珪素化合物中に異種金属が含有されていると、これは、不所望なドーピング効果をもたらし、ミグレーションプロセスによって電気部品の寿命を減少させる。
【0003】
有機又は無機シランの大工業的製造時には、プロセス条件によって不所望な異種金属での汚染が起こる。これらの異種金属は、化合物として又は金属のままでも存在することがありうる。
【0004】
EP 0684245 A2からは、ハロゲンシラン中の炭化水素の含分を、これを吸着剤に吸着させることによって減少させることが公知であり、EP 0957105 A2は、組成物を活性炭で処理することによる、アルコキシシラン又はアルコキシシランべースの組成物中の残留ハロゲン含分の減少及び色数の改良を開示している。
【0005】
本発明は、珪素化合物中の異種金属含分及び異種金属含有化合物の含分を減少するための方法を、簡単かつ経済的な方法で可能とすることを課題としている。更に、最高純度の珪素化合物、殊に異種金属並びに異種金属含有化合物の最小含分を有するオルガノシラン及び/又は無機シランを提供する課題が存在した。
【0006】
これらの課題は、特許請求の範囲中の記載に相応して解決された。好ましい実施形が、従属請求項中及び明細書中に詳述されている。
【0007】
少なくとも1種の異種金属及び/又は異種金属含有化合物を含有している、珪素化合物、殊に少なくとも1種のオルガノシラン及び/又は無機シランを包含する組成物を、1種の吸着剤及び/又は少なくとも1つのフィルター、好ましくは2つの異なるフィルターで処理することにより、これらと接触させ、かつ引き続き組成物を取得することによって、殊に処理の前のこの組成物が実質的に無水である場合に、異種金属及び/又は異種金属含有化合物の含分が著しく低下されることが判明した。
【0008】
従って、本発明の目的は、珪素化合物、殊に少なくとも1種のオルガノシラン及び/又は少なくとも1種の無機シラン又はこれらのシランの一方又は双方のシランの混合物並びに少なくとも1種の異種金属及び/又は異種金属含有化合物を含有している組成物を処理する方法であり、この際、殊に無機シランに関して、実質的に無水である組成物を、第1工程で、少なくとも1種の吸着剤及び/又は少なくとも1つのフィルターと接触させ、かつ場合によりもう一つの工程で、少なくとも1つのフィルターと接触させ、好ましくは濾過し、かつ、その中の異種金属及び/又は異種金属含有化合物の含分が減少されている組成物を取得する。吸着剤と接触する工程及び場合による例えば第1濾過、沈殿、遠心分離を用いる吸着剤の分離除去の工程、又はこの吸着剤がこの組成物で流過される工程に、付加的な濾過工程を組み合わせることが特別好ましい。
【0009】
この組成物を処理するこの方法は、1実施変法によれば、吸着剤が同時にフィルターとして作用することを予め考慮することができる。例えばそのために、吸着剤は、この組成物によって流過される筒(Patrone)又は類似物中に充填されていることができる。この場合に、この吸着剤のパッキングから粒子間(interpartikulaer)に生じる平均の細孔寸法(Porengroesse)は、100μmを下回る、好ましくは50μmを下回り5μmまでであることができる。
【0010】
組成物を濾過する方法でこの組成物を処理するこの方法を選択的に行うことも可能であり:殊にこのフィルターは、100μmを下回る、好ましくは50μmを下回り5μmまでの細孔寸法を有し、このフィルターは5〜30μm、特に好ましくは5〜10μmの平均細孔寸法を有することが特別好ましく、場合によってはもう一つの工程で、このように処理された組成物を少なくとも1回濾過することができ、その際には、少なくとも1つのフィルターは、5μmを下回る細孔寸法、殊に1μm以下の細孔寸法、特別好ましくは0.1μm以下又は0.05μm以下の細孔寸法を有し、かつ、その中の異種金属及び/又は異種金属含有化合物の含分が減少されている組成物を取得することができる。この細孔寸法は、吸着剤の粒子間パッキング(interpartikulaer Packung)から生じることもできる。
【0011】
本発明による方法では、組成物の処理を次のように行う:
前記組成物を、
− 第1工程で、少なくとも1種の吸着剤と接触させ、この吸着剤を場合により分離除去する;
例えば、組成物を吸着剤の間を流過させ、吸着剤と一緒に撹拌し、振動させる及び/又は放置するか、又は当業者に従来から公知の他の方法で吸着剤と接触させ、その分離除去を、例えばフィルターを通す第1濾過によって行い、殊にこのフィルターは、100μmを下回る、好ましくは50μmを下回り5μmを上回る細孔寸法を有し、特別好ましくこのフィルターは、5〜30μm、特別好ましくは5〜10μmの平均細孔寸法を有し、選択的に又は付加的に、この組成物を遠心分離するか又は沈殿させることができる;及び
− もう一つの工程で、このように処理された組成物を濾過する、この際、少なくとも1つのフィルターは、5μmを下回る細孔寸法、殊に1μm以下の細孔寸法、特別好ましくは0.1μm以下又は0.05μm以下の細孔寸法を有する、及び
− その中の異種金属及び異種金属含有化合物の含分が減少されている組成物を取得する。
【0012】
1つ又は複数の濾過工程は、好適な温度で、常圧下、過圧下又は真空下でも行うことができる。
【0013】
この場合に、異種金属含分及び/又は異種金属含有化合物の含分−通常これは、蒸留では劣悪に分離できるか又は充分に分離除去できない異種金属及び/又は異種金属含有化合物の残留含分である−が、殊に相互に無関係に、それぞれ100μg/kgを下回る、殊に50μg/kgを下回り0μg/kgまで、有利には30μg/kgを下回り0μg/kgまで、好ましくは15μg/kgを下回り0μg/kgまで、特別好ましくは10μg/kgを下回り0μg/kgまで、全く特別好ましくは1μg/kgを下回り0μg/kgまでの範囲の含分まで減少されうることが特別有利である。
【0014】
殊に一般式Iのオルガノシランが、オルガノシランとみなされる。処理すべき組成物中には、一般式I:
Si(OR(4−a−b−c) (I)
[式中、0≦a≦3、0≦b≦3、0≦c≦3及びa+b+c≦3であり、Rは水素、C原子数1〜18を有する線状、分枝状及び/又は環状の、並びに場合により置換されたアルキル基及び/又はC原子数1〜18を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基、アリールアルキル基、アミノアルキル基、ハロゲンアルキル基、ポリエーテル基、ポリエーテルアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、エポキシアルキル基、ウレイドアルキル基、メルカプトアルキル基、シアノアルキル基、イソシアナトアルキル基、メタクリルオキシアルキル基及び/又はアクリルオキシアルキル基及び/又はC原子数6〜12を有するアリール基であり、式中、Rは水素、C原子数1〜18を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルキル基及び/又はC原子数6〜12を有するアリール基であり、Rは水素、C原子数1〜18を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルキル基及び/又はC原子数6〜12を有するアリール基であり、及び/又はRはC原子数1〜8を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルキル基及び/又はアルコキシアルキル基である]に相当する少なくとも1種のオルガノシラン及び/又はこれらのオルガノシランの混合物が存在する。
【0015】
本発明によるオルガノシランは、殊にテトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン及び/又はジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルアルコキシシラン、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン及び/又はトリメチルエトキシシランである。
【0016】
好ましい実施形によれば、Rは、好ましくは式−(CH−NH、−(CH−NHR’、−(CH−NH(CH−NH又は−(CH−NH(CH−NH(CH−NHのアミノプロピル官能基(式中、R’はC原子数1〜18を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルキル基及び/又はC原子数6〜12を有するアリール基である)から選択されるアミノアルキル基であり、ポリエーテル基又はポリエーテルアルキル基は、好ましくは1〜30、殊に1〜14に等しい鎖長nを有する、式:R’−(O−CH−CH−)O−(CH−、R’−(O−CH−CH−CH−)O−(CH−、R’−(O−CH−CH−CH−CH−)O−(CH−、R’−(O−CH−CH−)O−、R’−(O−CH−CH−CH−)O−、R’−(O−CH−CH−CH−CH−)O−、R’O[−CH−CH(CH)−O]−(CH−又はR’O[−CH−CH(CH)−O]−の1つに相当し、ここで、R’は好ましくはH又はC原子数1〜6を有する線状、分枝状又は環状のアルキル基、殊にメチル、エチル、i−プロピル又はn−プロピルを表し、メタアクリルオキシアルキル基又はアクリルオキシアルキル基は好ましくは3−メタアクリルオキシプロピル基及び/又は3−アクリルオキシプロピル基に相当し、アルコキシ基は、好ましくは群メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基及び/又はイソ−プロポキシ基から選択され、アルケニル基は、好ましくはビニル基、イソプレニル又はアリル基であり、エポキシ基は、好ましくは3−グリシジルオキシプロピル基又は2−(3,4−エポキシ−シクロヘキシル)−エチル基に相当し、ハロゲンアルキル基は、好ましくは基R8*−Y−(CH−を有するフルオルアルキル基に相当し、ここで、R8*は、C原子数1〜9を有するモノ−、オリゴ−又はペルフルオル化されたアルキル基又はモノ−、オリゴ−又はペルフルオル化されたアリール基であり、ここで、更にYはCH基、O基、アリール基又はS基に相当し、m=0又は1であり、s=0又は2である。1実施形によれば、RはFC(CF(CH−基(ここで、rは0〜9の整数であり、sは0又は2に等しく、好ましくはrは5に等しく、sは2に等しい)の1つに相当し、特別好ましい基は、CF(CF(CH−又はCF(CF(CH−又はCF(C)−又はC−基である。
【0017】
好ましい実施形において、R及び/又はRは、水素又はC原子数1〜8を有する線状又は分枝状のアルキル基、殊にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソ−プロピル基又はn−オクチル基又はC原子数6を有するアリール基に相当し、Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソ−プロピル基であり、この際、全体としてテトラアルコキシ−、トリアルコキシ−及び/又はジアルコキシ置換されたシランが好ましい。
【0018】
本発明によれば、更にこの組成物は実質的に無水である。無水とは、カールフィッシャーによる水含分が<10ppm、殊に<5ppmである場合の本発明による組成物がこれに該当する。
【0019】
もう一つの好ましい実施形によれば、処理すべき組成物には、一般式I:
Si(OR(4−a−b−c) (I)
[式中、0≦a≦3、0≦b≦3、0≦c≦3及びa+b+c≦3であり、Rは水素、C原子数1〜18を有する線状、分枝状及び/又は環状の、場合により置換されたアルキル基及び/又はC原子数1〜18を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基、アリールアルキル基、アミノアルキル基、ハロゲンアルキル基、ポリエーテル基、ポリエーテルアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、エポキシアルキル基、ウレイドアルキル基、メルカプトアルキル基、シアノアルキル基、イソシアナトアルキル基、メタアクリルオキシアルキル基及び/又はアクリルオキシアルキル基及び/又はC原子数6〜12を有するアリール基であり、式中、Rは、水素、C原子数1〜18を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルキル基及び/又はC原子数6〜12を有するアリール基であり、Rは水素、C原子数1〜18を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルキル基及び/又はC原子数6〜12を有するアリール基であり、及び/又はRはC原子数1〜8を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルキル基及び/又はアルコキシアルキル基である]のオルガノシラン1種以上の少なくとも部分的加水分解及び縮合から得られる、オリゴマー又はポリマーのオルガノシロキサンに相当するオルガノシラン及び/又はこれらのオルガノシランの混合物が包含される。各々のシロキサン単位当たり少なくとも2個のSi−原子を有する全てのシロキサンは、オリゴマーのオルガノシロキサンとみなされる。
【0020】
この場合に、R、R、R及びRに関する次の置換基見本が特別好ましい。好ましい実施形によれば、Rは、式−(CH−NH、−(CH−NHR’、−(CH−NH(CH−NH又は−(CH−NH(CH−NH(CH−NHのアミノプロピル官能基(ここで、R’はC原子数1〜18を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルキル基及び/又はC原子数6〜12を有するアリール基である)から選択されるアミノアルキル基であり、ポリエーテル−又はポリエーテルアルキル基は、好ましくは1〜30、殊に1〜14に等しい鎖長nを有する、式R’−(O−CH−CH−)O−(CH−、R’−(O−CH−CH−CH−)O−(CH−、R’−(O−CH−CH−CH−CH−)O−(CH−、R’−(O−CH−CH−)O−、R’−(O−CH−CH−CH−)O−、R’−(O−CH−CH−CH−CH−)O−、R’O[−CH−CH(CH)−O]−(CH−又はR’O[−CH−CH(CH)−O]−の1つに相当し、ここで、R’は好ましくはH又はC原子数1〜6を有する線状、分枝状又は環状のアルキル基、殊にメチル、エチル、i−プロピル又はn−プロピルであり、メタアクリルオキシアルキル−又はアクリルオキシアルキル基は、好ましくは3−メタアクリルオキシプロピル基及び/又は3−アクリルオキシプロピル基に相当し、アルコキシ基は、好ましくは群メトキシ−、エトキシ−、n−プロポキシ及び/又はイソ−プロポキシから選択され、アルケニル基は、好ましくはビニル基、イソプレニル基又はアリル基であり、エポキシ基は、好ましくは3−グリシジルオキシプロピル基又は2−(3,4−エポキシ−シクロヘキシル)−エチル基に相当し、ハロゲンアルキル基は好ましくは基R8*−Y−(CH−を有するフルオロアルキル基に相当し、ここで、R8*は、C原子数1〜9を有するモノ−、オリゴ−又はペルフルオル化されたアルキル基又はモノ−、オリゴ−又はペルフルオル化されたアリール基であり、ここで更にYは、CH−、O−、アリール−又はS基に相当し、m=0又は1であり、s=0又は2である。1実施形によれば、RはFC(CF(CH−基(ここで、rは0〜9の整数であり、sは0又は2に等しく、好ましくはrは5に等しく、sは2に等しい)に相当し、特別好ましい基は、CF(CF(CH−又はCF(CF(CH−又はCF(C)−又はC−基である。
【0021】
オリゴマー又はポリマーのオルガノシロキサンには、殊に、鎖状、環状の、架橋された及び/又は空間架橋された構造成分が包含され、この際、この鎖状及び環状の構造成分は、理想化された形で、一般式II及びIII:
【化1】

に相当し、かつこの際、架橋された及び/又は空間架橋された構造成分−理想化された形で表示されなかった−中では、置換基Rは、式II及び/又はIIIにより理想化されて表示された構造成分の置換基Rと同様に、相互に無関係に、有機基R、R及び/又はRから及び/又はヒドロキシ基から成っている。通常、オリゴマー度は2〜30の範囲であり、この際、このオリゴマー度又は重合度はより高いこともありうる。このオルガノシランのオリゴマー度又は重合度は、1分子当たりのSi−単位の数に相当する。
【0022】
各々のオリゴマー又はポリマーのオルガノシランの組成は、一般式(I)のモノマーのシラン−単位の各々の酸素原子が2個の珪素原子の間の橋形成体として機能することができる事実を考慮すれば明らかである。従って、一般式(I)の各々のシランの使用可能な酸素原子の数によってオルガノシラン中の各々の個々のシロキサン単位の官能性も決まり;従って一般式(I)のモノマーのオルガノシランは、1−、2−、3−又は4官能性で存在することができる。
【0023】
鎖状、環状の、架橋された及び/又は空間架橋された構造成分を有するオリゴマー及び/又はポリマーのオルガノシランを構成するために存在する構成単位には、相応して、記号Mを有する1官能性の(R)−Si−O−、記号Dを有する2官能性の−O−Si(R)−O−、記号Tが付された3官能性の(−O)SiR及び記号Qを有する4官能性のSi(−O−)が包含される。これらの構成単位の命名は、その官能性に応じて、記号M、D、T及びQを用いて行なわれる。
【0024】
殊にハロゲンシラン、ハイドロジェンハロゲンシラン、少なくとも1個の有機基で置換されたハロゲンシラン及び/又は少なくとも1個の有機基で置換されたハイドロジェンハロゲンシランは、無機シランとしても、これらのシランの混合物としても理解される。1実施形によれば、純粋なハイドロジェンシランも包含されうる。ハロゲン含有無機シラン中で、各々のハロゲンは他のハロゲン原子とは無関係に、弗素、塩素、臭素又は沃素の群から選択することができるので、例えば混合ハロゲンシラン、例えばSiBrClF又はSiBrClFを含有することもできる。
【0025】
無機シランには、好ましくは塩素置換された、特にモノマーのシラン、例えばテトラクロロシラン、トリクロロシラン、ジクロロシラン、モノクロロシラン、メチルトリクロロシラン、トリクロロメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ジハイドロジェンジクロロシランが数えられる。しかしながら、モノマーのシラン、例えばテトラメチルシラン、トリメチルシラン、ジメチルシラン、メチルシラン、モノシラン又はオルガノハイドロジェンシラン又はジシラン、トリシラン、テトラシラン及び/又はペンタシラン並びにより高級のシラン同族体からも、本発明の方法によって、その異種金属含分を減少させることができる。しかしながら、これらの好ましい、特にモノマーの化合物と並んで、他のジマーの化合物、例えばヘキサクロロジシラン、オリゴマー化合物、例えばオクタクロロトリシラン、デカクロロテトラシラン及びより高級な同族のハロゲンポリシラン並びに混合水素化されたハロゲン化ポリシラン、例えばペンタクロロハイドロジェンジシラン又はテトラクロロジハイドロジェンジシラン並びにこれらとモノマーの線状、分枝状及び/又は環状のオリゴマー及び/又はポリマーの無機シランとの混合物からも、相応してその異種金属含分を減少させることができる。環状のオリゴマー化合物には、タイプSi2n(ここで、n>3)の化合物、例えばSiCl10が数えられ、ポリマーの無機化合物には、例えばハロゲンポリシラン、即ちポリ珪素ハロゲニドSi2n+2(ここで、n≧5)及び/又はポリ珪素ハイドロジェンハロゲニドSi[(2n+2)−a](ここで、n≧2及び0≦a≦(2n+2)、Xはそれぞれハロゲン、例えばF、Cl、Br、J、殊にClである)が数えられる。
【0026】
本発明の課題は、同様に、無機シラン及び少なくとも1種の異種金属及び/又は異種金属含有化合物を含有している組成物を、前記方法によって処理する方法に関し、この際、少なくとも1種の無機シランは、一般式IV:
Si((2n+2)−d−e) (IV)
[式中、1≦n≦5、0≦d≦12、0≦e≦12であり、シラン中の各々のXは相互に無関係に、弗素、塩素、臭素又は沃素の群から選択されるハロゲンであり、このシラン中の各々の基Rは相互に無関係に、C原子数1〜16を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルキル基又はアリール基である]に相当する。この際、C原子数1〜8を有する線状、分枝状又は環状のアルキル基を有するアルキル置換されたアリールも、アリール基として理解される。一般式IV(式中、n=1、X=塩素、0≦d≦3、0≦e≦3及びd+e≦3であり、RはC原子数1〜16を有する、線状、分枝状及び/又は環状のアルキル基又はアリール基である)のシラン少なくとも1種が特別好ましい。
【0027】
好ましい無機シランには、n=1及びx=Clを有する塩素置換されたモノマーのシラン、例えばテトラクロロシラン、トリクロロシラン、トリクロロメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジクロロシラン、モノクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン又はd=4及びe=0を有するモノシランがこれに数えられる。
【0028】
金属が珪素に一致しない各々の化合物が、異種金属及び/又は異種金属含有化合物とみなされる。吸着剤及び/又はフィルターを用いる、少なくとも1種の異種金属及び/又は少なくとも1種の異種金属含有化合物の吸着及び/又は濾過は、殊に選択的に、珪素化合物、例えば少なくとも1種のオルガノシラン及び/又は無機シランを含有している組成物から行なわれ、この際に、この吸着及び/又は濾過は、溶液中でも気相中でも行うことができる。
【0029】
半金属又は半金属含有化合物、例えばホウ素、三塩化ホウ素及びホウ酸エステル、例えばB(OMe)又はB(OEt)も、燐、三塩化燐又は五塩化燐、燐酸エステル、例えば燐酸トリエチル、砒素及アンチモン並びに相応する化合物も、異種金属又は異種金属含有化合物として理解される。
【0030】
特別な形の金属元素と並んで、減少すべき異種金属及び異種金属含有化合物は、金属ハロゲン化物、金属ハイドロジェンハロゲニド、金属アルコキシド、金属エステル及び/又は金属水素化物並びにこれらの化合物の混合物である。有機基、例えばアルキル−又はアリール基で官能化された金属ハロゲン化物、金属ハイドロジェンハロゲニド又は水素化金属も、非常に良好な結果でオルガノシランから除去することができる。同様に、例えば連続的に進行するプロセスで同伴される個々の金属がこの組成物を汚染していることもありうる。ホウ素、アルミニウム、カリウム、リチウム、銅、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、クロム、チタン、亜鉛、バナジウム、マンガン、コバルト及び/又はニッケルの含分を好ましく減少させることができ、殊にこれらの金属をベースとしている化合物を分離することができる。アルミニウム、ホウ素及び鉄;又はホウ素、鉄、カルシウム、銅、カリウム及びナトリウムの含分が特別好ましくは減少される。
【0031】
本発明による方法は、特別にその沸点が珪素化合物、殊にオルガノシラン及び/又は無機シランの沸点範囲内にあるか又はこれと共に共沸混合物と混ざり合う、異種金属含有化合物の分離除去又は減少のために特別好適である。これらの異種金属含有化合物は、蒸留により部分的に困難に分離除去できるのみであるか又は全く分離除去できない。常圧(約1013.25hPa又は1013.25ミリバール)における珪素化合物又はオルガノシラン及び/又は無機シランの沸点の±20℃の範囲内にある沸点が、オルガノシラン及び/又は無機シランの沸点の範囲内にある沸点とみなされる。
【0032】
一般に、異種金属及び/又は異種金属含有化合物を、40.0〜99.8質量%も減少させることができる。殊に、異種金属含分は、50〜90質量%、有利に65.0〜100質量%、好ましくは85〜95質量%、特別好ましくは95〜99.8質量%も減少される。このことは、異種金属及び/又は異種金属含有化合物が、当初含分から殆ど完全に、この組成物から除去されうることを意味している。鉄含有組成物に関して、この方法は、85〜95質量%、特別好ましくは90〜99.8質量%の残留含分の減少を可能とし、吸着剤と二回濾過との組み合わせにより、90〜99.95質量%も減少させることが可能である。一般に、例えば無機シランの組成物のアルミニウム含分を、40〜99質量%、好ましくは85〜99質量%、ホウ素含分を95〜99.8質量%も減少させることができる。
【0033】
1組成物中の異種金属含分及び/又は異種金属含有化合物の含分を、好ましくは金属化合物に関して殊に相互に無関係に、それぞれ、100μg/kgを下回る範囲の含分まで減少させることができる。この組成物は、本発明の意味で最高純度に該当する。殊にこの含分を、30μg/kgを下回るまで、好ましくは15μg/kgを下回るまで、特別好ましくは10μg/kgを下回るまで、全く特別好ましくは1μg/kgを下回るまで減少させることができる。
【0034】
この方法の実施のために更に、親水性及び/又は疎水性であってよい、無機及び有機の吸着剤(Adsorbentien又はAdsorberと同義語)を使用することも適切でありうる。いずれの異種金属又は異種金属含有化合物を分離除去すべきかに依存して、親水性及び疎水性の吸着剤からの混合物又は双方の機能を有する吸着剤を使用することも適切でありうる。吸着剤を、活性炭又は珪酸塩の群から、殊に珪ソウ土(Kieselgur)又はシリカ(kiesel-erde)から選択することができるが、ゼオライト、有機樹脂又は珪酸塩、例えば熱分解法珪酸及び沈降珪酸(シリカゲル)も好適である。好ましい吸着剤は、活性炭、殊にNorit Aktivkohle SA+(Norit Deutschland GmbH,Kieselgur Seitz Super (Pall Corporation)、珪ソウ土(直径0.2 〜 0.5mm、Sued-Chemie)である。
【0035】
この方法の実施のために、例えばプレートフィルター(Plattenfilter)又はフィルタープレート(Filterplatten)として、フィルターカートリッジ(Filterkartusche)として、フィルターキャンドル(Filterkerze)として、深床フィルター(Tiefenfilter)として、フィルターバッグ(Filterbeutel)として、駆動フィルター(Getriebefilter)として、フィルター筒(Filterpatrone)として、濾膜として、充填床(Schuttung)として、又は吸引濾過器(Filternutze)と解釈されているフィルター媒体又はフィルターを使用することが適切である。カートリッジが好ましい。この場合に、このフィルターは、特に(二、三の例のみを挙げると)は、織物、繊維配向されたフリース、紡績毛、不織布フリース又はフェルトをベースとしていることができる。従って、例えば前記の材料からの巻きフィルターキャンドルも有利に使用することができる。更に使用分野に依存して、有利に使用可能なフィルター媒体を得るための種々の材料、例えばセルロース、セルロース繊維、プラスチック、例えばナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフルオルエチレン、PFA、PVDF、これから製造された人造繊維、セラミック繊維/焼結体、ガラス繊維をも、更に金属、不錆鋼、例えば316 Lをも、殊に巻線、糸又はウールの形で使用することができる。この場合に当業者にとっては、種々異なる細孔寸法の全ての前記フィルターが相応して構成されていてよいことは明らかである。
【0036】
一般に、珪素化合物、例えばオルガノシラン及び/又は無機シランを包含している組成物の本発明による処理は、念入りに乾燥させ、場合より吸着された揮発性の不純物を除去し、かつ吸着剤の最大負荷容量(Beladung)を可能とするために、差し当たり吸着剤を加熱する方法で実施される。引き続き、この乾燥された吸着剤を、保護ガス雰囲気下に組成物と接触させ、場合によっては撹拌する。この処理を室温で、かつ及び常圧下に数時間にわたって行うことが好適である。この組成物を、この吸着剤と1分〜10時間、殊に2分〜5時間接触させることが有利である。精製された組成物の取得又は分離は、通常は濾過、遠心分離又は沈殿によって行なわれる。好ましい1実施形は、担体上に施与された吸着剤を、押出されたか又は固く焼結された吸着剤成形体と一緒に使用することである。それというのも、それによりこの吸着剤物質の分離は非常に簡単にされるからである。担持された吸着剤は、当業者に慣用の成形体、例えばペレット、ブリケット、リング又は他の形で使用することができる。好ましい1実施形によれば、管形反応器(Rohr-reaktor)は、吸着剤、好ましくは担持された吸着剤で敷設され、前記組成物によって流過されうる。この実施形は、いずれの場合にも、後続の付加的な濾過を必要とせずに、吸着剤との連続的接触を可能とする。この実施変形法で、担持された吸着剤は、同時にフィルターの機能をも満足することができる。しかしながら全体としては、なお、微細な粒子フィルター(feinen Partikelfilter)を後接続することも好ましい。
【0037】
粉末状吸着剤又は吸着剤顆粒の使用の場合には、この吸着剤を、殊に濾過によって再び分離することが好ましい。使用フィルターは、吸着剤を分離除去するために、この吸着剤の粒子寸法に適合されていることが有利である。このために大抵は、吸着剤により限定される大きい負荷容量(Beladung)で充分流過可能であり、屡々交換可能である、好適な目の粗いフィルタープレートが使用される。例えば、これを通して、この方法から吸着剤を連続的に又は半連続的に除去することができるバンドフィルター(Bandfilter)を使用することもできる。
【0038】
双方の変法は、共通して、通常は吸着可能ではない最微細な金属粒子を完全には分離除去することができない。従って本発明によれば、殊に、場合により突破性の小さい〜最小の吸着剤粒子を場合により付着性の異種金属及び/又は異種金属含有化合物並びに個々の金属又は金属含有化合物と一緒に抑留する、5μmより小さい細孔寸法を有するもう一つの非常に微細な粒子フィルターが後接続される。この手段によって、殊に吸着剤と後続の濾過との組み合わせ使用によって、各々の異種金属が<1ppbを下回っている所望の純度を達成することができる。できるだけ微細な粒子フィルターを、例えば粉末状の吸着剤媒体/吸着剤の分離除去のために、直接使用することが可能であるが、このことは、通常は明らかに高いこのフィルター価格に基づき、不経済である。
【0039】
従って本発明によれば、固定の吸着剤が、例えばカートリッジ(Kartusche)中で使用されるか又は粗い目の濾過を用いて組成物から分離される吸着剤が使用され、この際には、5μmより小さい細孔寸法を有するフィルター少なくとも1つを用いる後続の濾過がこれに引き続く。
【0040】
この方法実施は、必要に応じて、不連続的に、半連続的に又は連続的に行うことができる。
【0041】
本発明の課題は、前記定義のような珪素化合物、殊にオルガノシラン及び/又は無機シランを含有している組成物から、1種の異種金属及び/又は少なくとも1種の異種金属含有化合物の含分を減少させるために、有機樹脂、活性炭、珪酸塩及び/又はゼオライトを、特別好ましくは1以上のフィルターと組み合わせて使用することでもあり、この際、少なくとも1つのフィルターは5μmを下回る細孔寸法、殊に1μmを下回る細孔寸法、特別好ましくは0.1μm以下の又は0.05μm以下の細孔寸法をも有する。相応して、担持され、焼結され又は押出された有機樹脂、活性炭、珪酸塩及び/又はゼオライトが好ましく使用される。好ましい実施形において、吸着剤は、精製すべき組成物によって流過されうる第1フィルターの方式で固定して存在していることができる。
【0042】
本発明の課題は、前記定義によるような珪素化合物、殊にオルガノシラン及び/又は無機シランを含有している組成物から、1種の異種金属及び/又は少なくとも1種の異種金属含有化合物又は吸着剤又は個々の不純物の含分を減少させるために、5μmを下回る細孔寸法、殊に1μmを下回る細孔寸法、特別好ましくは0.1μm以下又は0.05μm以下の細孔寸法を有するフィルターを使用することでもある。
【0043】
本発明のもう一つの課題は、前記定義によるような珪素化合物少なくとも1種、殊に少なくとも1種の式Iのオルガノシラン及び/又はこれらから部分的加水分解及び/又は縮合により誘導されるオリゴマー又はポリマーのオルガノシロキサン及び/又は殊に式IVの無機シランを含有している組成物でもあり、この際、アルミニウムの含分は<5μg/kg、殊に<1μg/kgであり、ホウ素の含分は5μg/kgを下回り、殊に2.5μg/kg以下、鉄の含分は5μg/kgを下回り、殊に1μg/kgを下回り、かつ、カルシウム、銅、カリウム及びナトリウムの含分はそれぞれ1μg/kgを下回っている。更に本発明による組成物は、殊にこの組成物中に無機シランが含有されている場合には、実質的に無水である。
【0044】
珪素化合物、例えばオルガノシラン及び/又は無機シランをベースとしている本発明による組成物は、40〜99.8質量%だけ減少された異種金属含分及び/又は異種金属含有化合物の含分を有する。μg/kgで表わしてこの含分を、100μg/kgを下回るまで、殊に30μg/kgを下回るまで、好ましくは15μg/kgを下回るまで、特別好ましくは10μg/kgを下回るまで、全く特別好ましくは1μg/kgを下回るまで減少させることができる。この場合に、以下のように上記の置換基見本が特別好ましい。
【0045】
オリゴマー及び/又はポリマーのオルガノシラン、オルガノシラン又は無機シランの組成及び構造に関して、前記の態様が参照される。
【0046】
次の実施例につき、本発明を詳述する。
【0047】
実施例
ホウ素含分の測定:
試料調製及び試料の測定を分析専門家に慣用の方法で行い、ここでは、試料を脱鉱質水を用いて加水分解し、この加水分解生成物を弗化水素酸(超純粋)を用いて完全弗素化(ab-fluoriert)した。残分を脱鉱質水中に入れ、ICP−MS(ELAN 6000 Perkin Elmer)を用いて元素含分を測定した。
【0048】
例1
吸着剤の前処理:
精製すべきシランの加水分解を阻止するために、吸着剤をその使用の前に、念入りに前乾燥させた。この乾燥を、110℃で3時間行った。この吸着剤を、使用するまでデシケータ中に、乾燥剤上で保存した。
【0049】
シランの処理のための一般的方法:
精製すべきシランを、窒素雰囲気下に、攪拌機及び窒素接続管を備えたフラスコ中に装入し、規定量の相当する吸着剤を添加した。引き続きこの混合物を、室温で2時間撹拌し、次いでこの吸着剤を、圧力フィルター(Seitz Supradur 100 Tiefenfilter、平均細孔寸法5〜10μm)を通して分離した。
【0050】
得られた濾過物を、引き続き、粒子フィルター(Pall Mini Kleen−Change(R)Filter,材料;PTFE、細孔寸法:0.05μm、フィルター面積:320cm)を通して濾過した。
【0051】
例 1.1
次の例を、前記の一般的方法に従い、ここに指示されている量を用いて実施した。
【0052】
高い異種金属含分を有するテトラエトキシシラン250gを、活性炭0.75gで処理した。この処理の前及び後の、並びに粒子濾過の後の異種金属含分を、ICP−MSを用いて測定した。第1.1表参照。
【0053】
第1.1表
処理の前及び後の異種金属含分
【表1】

【0054】
例 1.2
次の例を、前記の一般的方法に従い、ここに指示されている量を用いて実施した。
【0055】
高い異種金属含分を有するテトラエトキシシラン250gを、珪ソウ土0.75gで処理した。この処理の前及び後の異種金属含分を、ICP−MSを用いて測定した。第1.2表参照。
【0056】
第1.2表
処理の前及び後の異種金属含分
【表2】

【0057】
例 1.3
次の例を、例1.2における前記の一般的方法に従い、ここに指示されている量を用いて実施した。
【0058】
高い鉄含分を有するメチルトリエトキシシラン250gを、活性炭0.75gで処理した。この処理の前及び後の鉄含分を、ICP−MSを用いて測定した。第1.3表参照。
【0059】
第1.3表
処理の前及び後の鉄含分
【表3】

【0060】
例2
テトラエトキシシランを、連続的に焼結活性炭成分(Pall Schumasorb AC 20、面積:0.11m、φ細孔径:25μm)上から供給した。吸着剤キャンドルを経て導びかれたシランの試料を、膜フィルター(Anatop(TM)25 Plus、Disposable Syringe Filter PLUS Integral Prefilter、細孔寸法0.1μm)を通して濾過した。
個々の処理工程の前及び後の異種金属含分を、ICP−MSを用いて測定した。第2表参照。
【0061】
第2表
処理の前及び後の異種金属含分
【表4】

【0062】
例3
アンバーライト XAD 4(Amberlite XAD 4)119.97gを、冷却器(水、ドライアイス)、滴加ロート、攪拌機、温度計及び窒素接続管を備えた4首ガラスフラスコから成っている500ml−撹拌装置中に装入し、真空(<1ミリバール)下に、約170℃で5時間乾燥させ、乾燥窒素をゆっくり吹き込み、かつ冷却させた。その後、滴加ロートから、トリクロロシラン250mlの添加を行った。吸着工程を、室温で、かつ常圧下に5時間にわたって実施した。吸着剤の分離除去のために、トリクロロシランを、ガラスフリット(Por.4、平均細孔径9〜15μm)を経て、放出装置を用いて真空500ml−ガラスフラスコ中に引き入れ、かつ窒素吹き込みの後に、窒素でフラッシングされたショットボトル(Schottflasche)中に流出させた。この吸着剤で処理されたトリクロロシランの試料を、膜フィルター(Arbortech L#942、PTFE膜、細孔寸法0.2μm)で濾過した。
個々の処理工程の前及び後の異種金属含分を、ICP−MSを用いて測定した。第3表参照。
【0063】
第3表
処理の前及び後の異種金属含分
【表5】

【0064】
例4
モンモリロナイトK 10(Montmorillonite K 10)40.01gを、冷却器(水、ドライアイス)、滴加ロート、攪拌機、温度計及び窒素接続管を備えた4首ガラスフラスコから成っている500ml−撹拌装置中に装入し、真空(<1ミリバール)下に、約170℃で5時間乾燥させ、乾燥窒素をゆっくり吹き込み、かつ冷却させた。その後、滴加ロートから、トリクロロシラン250mlの添加を行った。吸着工程を、室温で及び常圧下に5時間にわたって実施した。吸着剤の分離除去のために、トリクロロシランを、ガラスフリット(Por.4、平均細孔径9〜15μm)を経て、放出装置を用いて真空500ml−ガラスフラスコ中に引き入れ、窒素吹き込みの後に、窒素でフラシングされたショットボトル(Schottflasche)中に流出させた。この吸着剤で処理されたトリクロロシランの試料を、膜フィルター(Arbortech L#942、PTFE膜、細孔寸法0.2μm)で濾過した。
個々の処理工程の前及び後の異種金属含分を、ICP−MSを用いて測定した。第4表参照。
【0065】
第4表
処理の前及び後の異種金属含分
【表6】

【0066】
例5
ウェサリス F 20(Wessalith F 20)20.17gを、冷却器(水、ドライアイス)、滴加ロート、攪拌機、温度計及び窒素接続管を備えた4首ガラスフラスコから成っている500ml−撹拌装置中に装入し、真空(<1ミリバール)下に、約170℃で5時間乾燥させ、乾燥窒素をゆっくり吹き込み、かつ冷却させた。その後、滴加ロートから、トリクロロシラン250mlの添加を行った。吸着工程を、室温で及び常圧下に、5時間にわたって実施した。吸着剤の分離除去のために、トリクロロシランを、ガラスフリット(Por.4、平均細孔径9〜15μm)を経て、放出装置を用いて、真空500ml−ガラスフラスコ中に引き入れ、窒素吹き込みの後に、窒素でフラッシングされたショットボトル(Schottflasche)中に流出させた。この吸着剤で処理されたトリクロロシランの試料を、膜フィルター(Arbortech L#942、PTFE膜、細孔寸法0.2μm)で濾過した。
個々の処理工程の前及び後の異種金属含分を、ICP−MSを用いて測定した。第5表参照。
【0067】
第5表
処理の前及び後の異種金属含分
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の珪素化合物並びに少なくとも1種の異種金属及び/又は異種金属含有化合物を含有している組成物を処理する方法において、
前記組成物を、
− 第1工程で、少なくとも1種の吸着剤及び/又は少なくとも1つの第1フィルターと接触させ、かつ場合により、
− もう一つの工程で、少なくとも1つのフィルターと接触させ、かつ
− その中の異種金属及び/又は異種金属含有化合物の含分が低減されている組成物を取得する
ことを特徴とする、少なくとも1種の珪素化合物並びに少なくとも1種の異種金属及び/又は異種金属含有化合物を含有している組成物を処理する方法。
【請求項2】
珪素化合物は、少なくとも1種のオルガノシラン及び/又は少なくとも1種の無機シラン又は一方又は双方のシランの混合物を含有していることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
組成物を、
− 第1工程で、少なくとも1種の吸着剤と接触させ、この吸着剤を場合により分離除去し、かつ
− もう一つの工程で濾過し、この際、少なくとも1つのフィルターは、5μmを下回る細孔寸法、殊に1μm以下の細孔寸法、特別好ましくは0.1μm以下の細孔寸法を有し、かつ
− その中の異種金属及び異種金属含有化合物の含分が低減されている組成物を取得する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
異種金属及び/又は異種金属含有化合物の含分を、それぞれ、50μg/kgを下回り0μg/kgまで、殊に10μg/kgを下回り0μg/kgまで、特別好ましくは5μg/kgを下回り0μm/kgまで減少させることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
異種金属及び/又は異種金属含有化合物の含分を、少なくとも65.0質量%〜100質量%だけ低減させることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
異種金属含分及び/又は異種金属含有化合物には、ホウ素、アルミニウム、銅、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム及び/又は鉄、殊にアルミニウム、ホウ素及び鉄;又はホウ素、鉄、カルシウム、銅、カリウム及びナトリウムが包含されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種のオルガノシランは、一般式I:
Si(OR(4−a−b−c) (I)
[式中、0≦a≦3、0≦b≦3、0≦c≦3及びa+b+c≦3であり、Rは水素、C原子数1〜18を有する線状、分枝状及び/又は環状の、置換又は非置換のアルキル基及び/又はC原子数1〜18を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基、アリールアルキル基、アミノアルキル基、ハロゲンアルキル基、ポリエーテル基、ポリエーテルアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、エポキシアルキル基、ウレイドアルキル基、メルカプトアルキル基、シアノアルキル基、イソシアナトアルキル基、メタクリルオキシアルキル基及び/又はアクリルオキシアルキル基及び/又はC原子数6〜12を有するアリール基であり、式中、Rは、水素、C原子数1〜18を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルキル基及び/又はC原子数6〜12を有するアリール基であり、Rは水素、C原子数1〜18を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルキル基及び/又はC原子数6〜12を有するアリール基であり、及び/又はRはC原子数1〜8を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルキル基及び/又はアルコキシアルキル基である]及び/又はこれらのオルガノシランの混合物に相当し、殊にこのオルガノシランは、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン及び/又はトリアルキルアルコキシシランであり、特別好ましいこのオルガノシランは、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン及び/又はジエチルジエトキシシランであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
オルガノシランは、一般式I:
Si(OR(4−a−b−c) (I)
[式中、0≦a≦3、0≦b≦3、0≦c≦3及びa+b+c≦3であり、Rは水素、C原子数1〜18を有する線状、分枝状及び/又は環状の、置換又は非置換のアルキル基及び/又はC原子数1〜18を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基、アリールアルキル基、アミノアルキル基、ハロゲンアルキル基、ポリエーテル基、ポリエーテルアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、エポキシアルキル基、ウレイドアルキル基、メルカプトアルキル基、シアノアルキル基、イソシアナトアルキル基、メタクリルオキシアルキル基及び/又はアクリルオキシアルキル基及び/又はC原子数6〜12を有するアリール基であり、式中、Rは、水素、C原子数1〜18を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルキル基及び/又はC原子数6〜12を有するアリール基であり、Rは水素、C原子数1〜18を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルキル基及び/又はC原子数6〜12を有するアリール基であり、及び/又はRはC原子数1〜8を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルキル基及び/又はアルコキシアルキル基である]のオルガノシラン及び/又はこれらのオルガノシランの混合物の少なくとも部分的な加水分解及び縮合により得られる、少なくとも1種のオリゴマー又はポリマーのオルガノシロキサンに相当していることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種の無機シランは、ハロゲンシラン、ハイドロジェンハロゲンシラン、オルガノハイドロジェンシラン、ハイドロジェンシランから、少なくとも1個の有機基で置換されたハロゲンシラン及び/又は少なくとも1個の有機基で置換されたハイドロジェンハロゲンシラン及び/又はこれらのシランの混合物から選択され、殊に前記シラン中のハロゲンは塩素に相当していることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1種の無機シランは、一般式IV:
Si((2n+2)−d−e) (IV)
[式中、1≦n≦5、0≦d≦12、0≦e≦12であり、シラン中の各々のXは相互に無関係に、ハロゲンであり、シラン中の各々の基Rは相互に無関係に、C原子数1〜16を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルキル基、アリール基又はアルキルアリール基に相当している]に相当していることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
無機シランは、一般式(IV)に相当し、その式中、n=1であり、X=塩素であり、0≦d≦3、0≦e≦3及びd+e≦3であり、RはC原子数1〜16を有する線状、分枝状及び/又は環状のアルキル基、アリール基又はアルキルアリール基であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
シランは、モノシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン及び/又はトリメチルクロロシランであることを特徴とする、請求項10または11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
異種金属含有化合物を、金属ハロゲン化物、金属水素化物、金属ハイドロジェンハロゲニド、金属酸化物、金属エステル、有機基で置換された金属ハロゲン化物及び/又は有機基で置換された金属水素化物から選択することを特徴とする、請求項9から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法で、珪素化合物、殊にオルガノシラン及び/又は無機シランを含有している組成物から、異種金属及び/又は少なくとも1種の異種金属含有化合物又は吸着剤又は特定の不純物の含分を減少させるために、有機樹脂、活性炭、珪酸塩及び/又はゼオライトを、殊に1つ以上のフィルターと組み合わせて用いる使用であって、少なくとも1つのフィルターは、5μmを下回る細孔寸法、殊に1μmを下回る細孔寸法、特別好ましくは0.1μm以下の細孔寸法を有している前記使用。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法で、珪素化合物、殊にオルガノシラン及び/又は無機シランを含有している組成物から、異種金属及び/又は少なくとも1種の異種金属含有化合物又は特定の不純物の含分を減少させるための、5μmを下回る細孔寸法、殊に1μmを下回る細孔寸法、特別好ましくは0.1μm以下の細孔寸法を有しているフィルターの使用。
【請求項16】
殊に請求項6から8まで又は9から13までのいずれか1項に記載の、珪素化合物少なくとも1種を含有している組成物であって、アルミニウムの含分は1μg/kgを下回り、ホウ素の含分は5μg/kgを下回り、殊に2.5μg/kg以下であり、鉄の含分は5μg/kgを下回り、殊に1μg/kgを下回り、かつ、カルシウム、銅、カリウム及びナトリウム含分は、それぞれ、1μg/kgを下回っている前記組成物。

【公表番号】特表2012−511529(P2012−511529A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539975(P2011−539975)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063316
【国際公開番号】WO2010/066487
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】