説明

現像剤供給装置

【課題】 所定極性に帯電した粉末状の現像剤を供給対象に対して供給するように構成された現像剤供給装置において、供給対象に対する現像剤の供給状態を適切にする。
【解決手段】 現像剤供給装置は、メイン搬送基板と、サブ搬送基板と、を備えている。メイン搬送基板は、現像剤の搬送方向における下流側の端部にて現像剤担持部材と対向するように設けられている。サブ搬送基板は、現像剤を現像剤貯留部からメイン搬送基板に向けて搬送するように構成され、メイン搬送基板と対向するように設けられている。サブ搬送基板は、メイン搬送基板と対向する部分にて、メイン搬送基板による現像剤の搬送方向と逆方向に現像剤を搬送するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定極性に帯電した粉末状の現像剤を供給対象に対して供給するように構成された、現像剤供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、特開昭60−115962号公報、特開平3−12678号公報、特開平11−84862号公報、特開2001−209246号公報、特開2002−287495号公報、等に開示されているものが知られている。かかる装置は、現像剤搬送方向に沿って配列された複数の搬送電極を備えていて、これら複数の搬送電極に対する駆動電圧の印加により発生する電界によって前記現像剤を搬送するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の装置において、帯電状態が不良な(無帯電や低帯電や所望極性と逆極性の帯電を含む)前記現像剤が供給対象に供給されると、形成画像の乱れ等の不具合が生じる。よって、この種の装置における前記現像剤の供給状態を適切にすることによって、良好な画像形成が行われるようになる。本発明は、かかる課題に対処するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
<構成>
本発明の現像剤供給装置は、所定極性に帯電した粉末状の現像剤を供給対象に対して供給するように構成されている。この現像剤供給装置は、ケーシングと、現像剤担持部材と、メイン搬送基板と、サブ搬送基板と、を備えている。
【0005】
前記ケーシングは、箱状の部材であって、底部の現像剤貯留部にて前記現像剤を貯留するように構成されている。このケーシングには、前記供給対象に向けて開口する開口部が設けられている。
【0006】
前記現像剤担持部材は、円柱面状の周面を有するローラ状の部材であって、主走査方向に沿った軸を中心として回転駆動されるようになっている。この現像剤担持部材は、前記開口部にて前記供給対象と対向するように、前記ケーシングの内側に収容されている。
【0007】
前記メイン搬送基板は、電圧印加に伴って発生する電界により前記現像剤を前記現像剤担持部材に向けて搬送するように構成されている。このメイン搬送基板は、前記現像剤の搬送方向における下流側の端部にて前記現像剤担持部材と対向するように設けられている。
【0008】
前記サブ搬送基板は、電圧印加に伴って発生する電界により前記現像剤を前記現像剤貯留部から前記メイン搬送基板に向けて搬送するように構成されている。このサブ搬送基板は、前記メイン搬送基板と対向するように設けられている。
【0009】
本発明の特徴は、前記サブ搬送基板が、前記メイン搬送基板と対向する部分にて、前記メイン搬送基板による前記現像剤の搬送方向と逆方向に前記現像剤を搬送するように設けられたことにある。
【0010】
具体的には、例えば、前記サブ搬送基板の、前記現像剤の搬送方向における下流側の部分が、前記メイン搬送基板と対向するように、前記サブ搬送基板が設けられ得る。
【0011】
また、前記メイン搬送基板が前記現像剤を水平方向に沿って搬送するように設けられている場合、前記サブ搬送基板は、前記メイン搬送基板と対向する前記部分よりも前記搬送方向における上流側の部分にて、前記現像剤を前記現像剤貯留部から上方に搬送するように設けられ得る。
【0012】
<作用>
かかる構成においては、前記サブ搬送基板により、前記現像剤が、前記現像剤貯留部から前記メイン搬送基板に向けて搬送される。そして、当該サブ搬送基板における、前記メイン搬送基板と対向する部分にて、前記現像剤が前記サブ搬送基板から前記メイン搬送基板に受け渡される。
【0013】
ここで、前記サブ搬送基板と前記メイン搬送基板とが対向する位置にて、前記メイン搬送基板による前記現像剤の搬送方向と、前記サブ搬送基板による前記現像剤の搬送方向とが、逆となる。このため、帯電状態が不良な前記現像剤は前記メイン搬送基板に受け渡されず、帯電状態が良好な前記現像剤が前記サブ搬送基板から前記メイン搬送基板に受け渡される。そして、帯電状態が良好な前記現像剤を受け取った前記メイン搬送基板は、当該現像剤を、前記現像剤担持部材に向けて搬送する。
【0014】
これにより、帯電状態が不良な前記現像剤が前記現像剤担持部材に担持されることで前記供給対象に供給されることが、効果的に抑制される。すなわち、前記サブ搬送基板における、前記メイン搬送基板と対向する部分にて、前記現像剤における、帯電状態が良好なものと不良なものとが、良好に選別される。
【発明の効果】
【0015】
上述の構成を備えた、本発明の現像剤供給装置によれば、前記現像剤が前記供給対象に対してより適切に供給されるようになり、以て良好な画像形成が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態としてのトナー供給装置を拡大した側断面図である。
【図2】図1に示されている搬送基板を拡大した側断面図である。
【図3】図2に示されている各電源回路の出力波形の一例を示すグラフである。
【図4】図1に示されているトナー供給装置の一変形例の概略構成を示す側断面図である。
【図5】図1に示されているトナー供給装置の他の変形例の概略構成を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態(本願の出願時点において取り敢えず出願人が最良と考えている実施形態)について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
なお、以下の実施形態に関する記載は、法令で要求されている明細書の記載要件(記述要件・実施可能要件)を満たすために、本発明の具体化の単なる一例を、可能な範囲で具体的に記述しているものにすぎない。よって、後述するように、本発明が、以下に説明する実施形態の具体的構成に何ら限定されるものではないことは、全く当然である。本実施形態に対して施され得る各種の変更(modification)は、当該実施形態の説明中に挿入されると、一貫した実施形態の説明の理解が妨げられるので、末尾にまとめて記載されている。
【0019】
<トナー供給装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態としてのトナー供給装置1を拡大した側断面図である。図1を参照すると、トナー供給装置1は、正極性に帯電した粉末状の現像剤(乾式現像剤)である乾式トナーを、供給対象としての感光体ドラム2に対して供給するように構成されている。なお、本実施形態においては、トナーは、正帯電性、非磁性1成分の、黒色のものが用いられている。
【0020】
感光体ドラム2の周面には、静電潜像担持面2aが形成されている。静電潜像担持面2aは、主走査方向(図中z軸方向)と平行な円筒面として形成されている。この静電潜像担持面2aは、電位分布による静電潜像が形成されるとともに、当該静電潜像に対応した位置にてトナーを担持するように構成されている。
【0021】
感光体ドラム2は、前記主走査方向と平行な中心軸を中心として、図中矢印で示されている方向(図1における時計回り)に回転駆動され得るように構成されている。すなわち、静電潜像担持面2aが、前記主走査方向と直交する副走査方向に沿って移動し得るように、感光体ドラム2が構成されている。
【0022】
トナー供給装置1は、感光体ドラム2と対向するように、感光体ドラム2の側方に配置されている。トナー供給装置1は、現像位置DPにて、トナーを帯電した状態で静電潜像担持面2aに供給し得るように構成されている。ここで、現像位置DPとは、トナー供給装置1が静電潜像担持面2aと対向する位置である。
【0023】
トナー供給装置1のケーシング11は、側断面視にて略長方形あるいは略長円状に形成された箱状部材であって、その側断面視における長手方向が、水平方向すなわち奥行き方向(図中x軸方向)と平行となるように配置されている。ケーシング11の底板11a及び天板11bは、薄板状の部材であって、上下方向(図中y軸方向)に沿って互いに対向するように設けられている。
【0024】
底板11aの奥行き方向における端部であって、感光体ドラム2と近接する側は、側断面視にて、斜め上方に向かって屈曲する円弧状に形成されている。天板11bの奥行き方向における端部であって、感光体ドラム2と近接する側は、側断面視にて、斜め下方に向かって屈曲する円弧状に形成されている。
【0025】
ケーシング11は、その底部のトナー貯留部11cにてトナーを貯留するように構成されている。また、ケーシング11の側断面視における長手方向の一方の端部であって、感光体ドラム2と対向する側には、開口部11dが設けられている。
【0026】
ケーシング11の内側には、本発明の現像剤担持部材としての現像ローラ12が収容されている。この現像ローラ12は、円柱面状の周面であるトナー担持面12aを有するローラ状の部材であって、開口部11dにて感光体ドラム2と対向するように設けられている。すなわち、現像ローラ12におけるトナー担持面12aが現像位置DPにて感光体ドラム2における静電潜像担持面2aと近接し所定間隔(500μm程度)のギャップを介して対向するように、ケーシング11及び現像ローラ12が配置されている。
【0027】
現像ローラ12は、ケーシング11によって、回動可能に支持されている。すなわち、現像ローラ12は、前記主走査方向と平行なローラ回転中心軸12bを中心として回転駆動されるようになっている。
【0028】
<<搬送基板>>
ケーシング11の内部には、トナー搬送経路TTPに沿って、搬送基板13が設けられている。搬送基板13は、ケーシング11の内壁面に固定されている。本実施形態においては、搬送基板13は、メイン搬送基板13aと、回収用搬送基板13bと、サブ搬送基板13cと、を備えている。なお、搬送基板13(メイン搬送基板13a、回収用搬送基板13b、及びサブ搬送基板13c)の内部構成の詳細については後述する。
【0029】
メイン搬送基板13aは、ケーシング11における天板11bの内壁面に支持されている。メイン搬送基板13aは、サブ搬送基板13cから受け取ったトナーを、現像ローラ12に向けて搬送するように構成されている。
【0030】
具体的には、メイン搬送基板13aは、そのトナー搬送方向TTDにおける最下流端が開口部11dの開口端に達するように設けられている。また、メイン搬送基板13aは、そのトナー搬送方向TTDにおける上流側の端部がサブ搬送基板13cと対向するように設けられている。すなわち、メイン搬送基板13aのトナー搬送方向TTDにおけるサイズは、ケーシング11の上下方向におけるサイズよりもかなり大きく(具体的には倍以上)に設定されている。
【0031】
本実施形態においては、メイン搬送基板13aは、そのトナー搬送方向TTDにおける下流側の端部にて、現像ローラ12と所定のギャップを隔てて対向するように設けられている。すなわち、メイン搬送基板13aのトナー搬送方向TTDにおける下流側の端部は、ケーシング11の天板11bの奥行き方向における感光体ドラム2と近接する側の端部であって側断面視にて円弧状の部分に倣った、側断面視にて円弧状に形成されている。
【0032】
また、メイン搬送基板13aの上述の端部以外の部分は、水平面と平行な平板状に形成されている。すなわち、メイン搬送基板13aの上述の端部以外の部分は、トナーを水平方向に搬送するように構成されている。
【0033】
回収用搬送基板13bは、ケーシング11における底板11aの内壁面に支持されている。回収用搬送基板13bは、現像位置DPにて消費されなかったトナーを、現像ローラ12から回収して、トナー貯留部11cに還流させるように構成されている。
【0034】
具体的には、回収用搬送基板13bは、そのトナー搬送方向TTDにおける最上流端が開口部11dの開口端に達するように設けられている。また、回収用搬送基板13bは、そのトナー搬送方向TTDにおける下流側の端部が現像ローラ12とサブ搬送基板13cとの間の位置に達するように設けられている。
【0035】
本実施形態においては、回収用搬送基板13bは、そのトナー搬送方向TTDにおける上流側の端部にて、現像ローラ12と所定のギャップを隔てて対向するように設けられている。すなわち、回収用搬送基板13bのトナー搬送方向TTDにおける上流側の端部は、ケーシング11の底板11aの奥行き方向における感光体ドラム2と近接する側の端部であって側断面視にて円弧状の部分に倣った、側断面視にて円弧状に形成されている。
【0036】
サブ搬送基板13cは、略逆J字状に屈曲された状態で、ケーシング11の内側に収容されている。具体的には、サブ搬送基板13cのトナー搬送方向TTDにおける上流部13c1は、トナーを垂直上方に搬送するように立設されている。この上流部13c1における下端部は、トナー貯留部11c内に配置されている。ここで、本実施形態においては、サブ搬送基板13cの上流部13c1は、メイン搬送基板13aのトナー搬送方向TTDにおけるサイズよりも充分小さく(具体的には半分以下に)設定されている。
【0037】
サブ搬送基板13cのトナー搬送方向TTDにおける下流部13c2は、メイン搬送基板13aと対向するように設けられている。この下流部13c2は、メイン搬送基板13aと反対方向にトナーを搬送するようになっている。
【0038】
上流部13c1と下流部13c2との接続部13c3は、曲面状に形成されている。すなわち、上流部13c1と下流部13c2とは、曲面状の接続部13c3によって滑らかに接続されている。そして、接続部13c3及び下流部13c2は、上流部13c1における上端から、メイン搬送基板13aにおけるトナー搬送方向TTDと逆向きに屈曲するように設けられている。
【0039】
サブ搬送基板13cのトナー搬送方向TTDにおける最下流端部13c4は、下流部13c2から(斜め)下方に屈曲されている。すなわち、最下流端部13c4は、下流部13c2にてメイン搬送基板13a側に移行しなかったトナーを、トナー貯留部11cにおける最深部(開口部11dとは反対側の端部)に還流させるように設けられている。
【0040】
サブ搬送基板13cは、ケーシング11の内部に収容されたサブ搬送基板支持体14によって支持されている。すなわち、サブ搬送基板支持体14は、略逆J字状に屈曲した薄板状の部材であって、トナー貯留部11cから垂直上方に延びるように立設された平板状の垂直部(サブ搬送基板13cの上流部13c1に対応する部分)と、ケーシング11の天板11bと平行で上述の平板状の部分よりも奥側(開口部11dとは反対側)に設けられた平板状の水平部(サブ搬送基板13cの下流部13c2に対応する部分)と、垂直部と水平部とを接続する曲面部(サブ搬送基板13cの接続部13c3に対応する部分)と、水平部の奥側の端部から斜め下方に屈曲された最下流側曲面部(サブ搬送基板13cの最下流端部13c4に対応する部分)と、から構成されている。
【0041】
現像ローラ12におけるローラ回転中心軸12bは、現像バイアス電源回路15と電気的に接続されている。搬送基板13におけるメイン搬送基板13aは、メイン搬送電源回路16と電気的に接続されている。回収用搬送基板13bは、回収電源回路17と電気的に接続されている。サブ搬送基板13cは、サブ搬送電源回路18と電気的に接続されている。
【0042】
現像バイアス電源回路15、メイン搬送電源回路16、回収電源回路17、及びサブ搬送電源回路18は、トナー貯留部11c内のトナーをサブ搬送基板13cによってメイン搬送基板13aのトナー搬送方向TTDにおける上流側の端部に搬送し、サブ搬送基板13cの下流部13c2からメイン搬送基板13aのトナー搬送方向TTDにおける上流側の端部に受け渡されたトナーを現像ローラ12まで搬送してトナー担持面12aに一旦担持させることで現像位置DPまで供給し、現像位置DPにて消費されなかったトナーを回収用搬送基板13bによって現像ローラ12から回収してトナー貯留部11cに還流させるために必要な電圧(直流と交流とが重畳された電圧)を出力するようになっている。
【0043】
トナー貯留部11cにおける、サブ搬送基板13c及びサブ搬送基板支持体14よりも奥側と開口部11d側とを接続するように、トナー輸送オーガ19が設けられている。トナー輸送オーガ19は、トナー貯留部11cにおける最深部(開口部11dとは反対側の端部)に滞留したトナーを、サブ搬送電源回路18によって上方に搬送され得る位置に戻すように構成されている。
【0044】
<<<搬送基板の内部構成>>>
図2は、図1に示されている搬送基板13を拡大した側断面図である。
【0045】
図2を参照すると、搬送基板13は、薄板状の部材であって、フレキシブルプリント配線基板と同様の構成を有している。具体的には、搬送基板13は、搬送電極131と、搬送電極支持フィルム132と、搬送電極コーティング層133と、搬送電極オーバーコーティング層134と、から構成されている。
【0046】
搬送電極131(なお、メイン搬送基板13aにおける搬送電極131をメイン搬送電極131a、回収用搬送基板13bにおける搬送電極131を回収用搬送電極131b、サブ搬送基板13cにおける搬送電極131をサブ搬送電極131cと称する。)は、前記主走査方向と平行な(すなわち前記副走査方向と直交する)長手方向を有する線状の配線パターンであって、厚さが数十μm程度の銅箔によって形成されている。複数の搬送電極131は、トナー搬送経路TTPに沿って配列されていて、互いに平行に配置されている。
【0047】
トナー搬送経路TTPに沿って多数配列された各搬送電極131は、3本置きに同一の電源回路に接続されている。すなわち、電源回路VAに接続された搬送電極131,電源回路VBに接続された搬送電極131,電源回路VCに接続された搬送電極131,電源回路VDに接続された搬送電極131,電源回路VAに接続された搬送電極131,電源回路VBに接続された搬送電極131,電源回路VCに接続された搬送電極131・・・が、トナー搬送経路TTPに沿って順に配列されている(なお、これらの電源回路VAないしVDは、図1におけるメイン搬送電源回路16、回収電源回路17、及びサブ搬送電源回路18の構成要素である。)。
【0048】
ここで、図3は、図2に示されている各電源回路VAないしVDの出力波形の一例を示すグラフである。本実施形態においては、図3に示されているように、各電源回路VAないしVDは、ほぼ同一波形の交流電圧である駆動電圧を出力し得るように構成されている。また、各電源回路VAないしVDが発生する電圧の波形における位相が、90°ずつ異なるように、各電源回路VAないしVDが構成されている。すなわち、電源回路VAから電源回路VDに向かう順に、電圧の位相が90°ずつ遅れるようになっている。
【0049】
このように、搬送基板13は、各搬送電極131に対して上述のような駆動電圧が印加されて、トナー搬送経路TTPに沿った進行波状の電界が発生することで、正帯電したトナーをトナー搬送方向TTDに搬送し得るように構成されている。
【0050】
複数の搬送電極131は、搬送電極支持フィルム132の表面上に形成されている。搬送電極支持フィルム132は、可撓性のフィルムであって、ポリイミド樹脂等の絶縁性の合成樹脂から構成されている。
【0051】
搬送電極コーティング層133は、絶縁性の合成樹脂から構成されている。この搬送電極コーティング層133は、搬送電極支持フィルム132における搬送電極131が設けられている表面、及び搬送電極131を覆うように設けられている。
【0052】
搬送電極コーティング層133の上には、搬送電極オーバーコーティング層134(なお、メイン搬送基板13aにおける搬送電極オーバーコーティング層134をメイン搬送電極オーバーコーティング層134a、回収用搬送基板13bにおける搬送電極オーバーコーティング層134を回収用搬送電極オーバーコーティング層134b、サブ搬送基板13cにおける搬送電極オーバーコーティング層134をサブ搬送電極オーバーコーティング層134cと称する。)が設けられている。すなわち、上述の搬送電極コーティング層133は、搬送電極オーバーコーティング層134と搬送電極131との間に形成されている。搬送電極オーバーコーティング層134の表面は、トナーがスムーズに搬送され得るように、凹凸の極めて少ない平滑な面として形成されている。
【0053】
本実施形態においては、メイン搬送電極オーバーコーティング層134a及び回収用搬送電極オーバーコーティング層134bは、同一の材料(ポリエステル)によって形成されている。そして、この材料としては、トナーの帯電量を適正値にする摩擦帯電材料であって、摩擦帯電列における位置が、サブ搬送電極オーバーコーティング層134cよりも、プラス側すなわちトナーの帯電極性と同極性側となるものが用いられている。
【0054】
<動作説明>
次に、上述のように構成されたトナー供給装置1による動作の概要を、図面を適宜参照しつつ説明する。
【0055】
図1を参照すると、ケーシング11内のトナー貯留部11cに貯留されているトナーのうち、サブ搬送基板13cにおける上流部13c1の下端部と接触しているものが、サブ搬送基板13cに対する電圧印加に伴って発生する進行波状の電界により、垂直上方に搬送される。このサブ搬送基板13cにおける上流部13c1にて垂直上方に搬送されている間に、帯電状態が不良な(無帯電や低帯電の)トナーは、上流部13c1の表面近傍のトナー搬送経路TTP(図2参照)から逸脱して、下方に落下する。
【0056】
サブ搬送基板13cにおける上流部13c1にて垂直上方に搬送されたトナーは、下流部13c2とメイン搬送基板13aのトナー搬送方向TTDにおける上流側の端部とが対向する位置に達する。かかる位置においては、下流部13c2とメイン搬送基板13aとで、トナーが搬送される方向が逆となっている。よって、かかる位置にて、帯電状態が良好なトナーのみが選択的に、メイン搬送基板13aによって、現像ローラ12に向けて水平方向に搬送される。
【0057】
すなわち、本実施形態においては、サブ搬送基板13cにおける上流部13c1による垂直上方への搬送、及び、メイン搬送基板13aのトナー搬送方向TTDにおける上流側の端部での下流部13c2と反対方向への搬送により、トナーにおける、帯電状態が良好なものと不良なものとが、良好に選別される。
【0058】
なお、本実施形態においては、メイン搬送基板13aにおけるメイン搬送電極オーバーコーティング層134aは、サブ搬送基板13cにおけるサブ搬送電極オーバーコーティング層134cとは異なり、搬送中の正帯電のトナーをさらに正帯電にする機能が低い。よって、メイン搬送基板13aによる現像ローラ12に向けての比較的長距離の搬送中における、トナーの帯電状態の変化が、可及的に抑制され得る。
【0059】
メイン搬送基板13aのトナー搬送方向TTDにおける下流側の端部と現像ローラ12とが対向する位置にて、トナーは、トナー担持面12a上に担持される。そして、現像ローラ12の図中矢印で示されている方向への回転により、正帯電のトナーが、現像位置DPに供給される。この現像位置DPの近傍にて、静電潜像担持面2aに形成された静電潜像が、トナーによって現像される。すなわち、静電潜像担持面2a上であって、静電潜像における正電荷が消失した部分に、トナーが付着する。これにより、トナーによる画像(以下、「トナー像」と称する。)が、静電潜像担持面2a上に担持される。
【0060】
現像位置DPを通過した(現像位置DPにて消費されなかった)トナー担持面12a上のトナーは、回収用搬送基板13b側に移行する。すなわち、かかるトナーは、回収用搬送基板13bによってトナー担持面12aから回収される。
【0061】
ここで、現像ローラ12に対して、交流成分を有する回収バイアスが印加されると、かかる回収バイアスの交流成分の作用で、現像ローラ12におけるトナー担持面12aの近傍のトナーが振動する。この振動により、トナー担持面12aから浮き上がっているトナーが、トナー担持面12aに担持されている(付着している)トナーと衝突する。かかる衝突により、トナー担持面12aに担持されているトナーは、トナー担持面12aから浮き上がりやすくなる。
【0062】
このような回収バイアスにより、トナー担持面12aにおける、現像位置DPを通過した部分から、消費されなかったトナーが、良好に剥離され、回収用搬送基板13b側に移行する。これにより、形成画像におけるゴーストの発生が、可及的に抑制される。
【0063】
さらに、この回収バイアスは、現像位置DPにおける所謂ジャンピング現像のためのバイアスを兼ねたものである。したがって、回収バイアスが、簡略な装置構成によって良好に印加され得る。
【0064】
トナー担持面12aから回収用搬送基板13b側に移行したトナーは、回収用搬送基板13bに対する印加電圧によって発生する電界により、トナー貯留部11cに還流される。
【0065】
<実施形態の構成による効果>
上述したように、本実施形態の構成においては、サブ搬送基板13cにおける上流部13c1にてトナーが垂直上方に搬送されるとともに、メイン搬送基板13aのトナー搬送方向TTDにおける上流側の端部にてトナーが下流部13c2と反対方向に搬送される。
【0066】
これにより、トナーにおける、帯電状態が良好なものと不良なものとが、良好に選別される。そして、帯電状態が良好なトナーが、選択的にサブ搬送基板13cからメイン搬送基板13aに受け渡され、現像ローラ12に向かって搬送される。さらに、かかるトナーは、トナー担持面12aに担持されることで、現像位置DPに供給される。
【0067】
すなわち、本実施形態の構成によれば、帯電状態が良好なトナーが、選択的に現像位置DPに供給される。したがって、本実施形態の構成によれば、トナーが感光体ドラム2に対してより適切に供給され、以て良好な画像形成(静電潜像担持面2a上に形成された静電潜像の良好な現像)が行われる。
【0068】
また、本実施形態においては、メイン搬送基板13aのトナー搬送方向TTDにおけるサイズは、サブ搬送基板13cの上流部13c1よりも充分大きく(具体的には倍以上に)設定されている。これにより、メイン搬送基板13aによる水平方向へのトナーの搬送距離は、サブ搬送基板13cの上流部13c1による垂直上方へのトナーの搬送距離よりも充分長くなる。
【0069】
したがって、本実施形態によれば、上述のようなトナーの良好な選別効果を奏しつつ、トナー供給装置1を薄型化する(すなわち上下方向についてトナー供給装置1をダウンサイジングする)ことが可能になる。
【0070】
<変形例の例示列挙>
なお、上述の実施形態は、上述した通り、出願人が取り敢えず本願の出願時点において最良であると考えた本発明の代表的な実施形態を、単に例示したものにすぎない。よって、本発明はもとより上述の実施形態に何ら限定されるものではない。したがって、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、上述の実施形態に対して種々の変形が施され得ることは、当然である。
【0071】
以下、代表的な変形例について、幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態にて説明されているものと同様の構成及び機能を有する部材に対しては、上述の実施形態と同様の符号が用いられ得るものとする。そして、かかる部材の説明については、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施形態における説明が援用され得るものとする。
【0072】
もっとも、言うまでもなく、変形例とて、以下に列挙されたものに限定されるものではない。また、複数の変形例が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0073】
本発明(特に、本発明の課題を解決するための手段を構成する各構成要素における、作用的・機能的に表現されているもの)は、上述の実施形態及び下記変形例の記載に基づいて限定解釈されてはならない。このような限定解釈は、(先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、発明の保護及び利用を目的とする特許法の目的に反し、許されない。
【0074】
(1)本発明のトナー供給装置1の適用対象は、モノクロレーザープリンタ、カラーレーザープリンタ、モノクロ複写機、及びカラー複写機等の、いわゆる電子写真方式の画像形成装置に対して、好適に適用され得る。このとき、感光体の形状は、上述の実施形態のようなドラム状でなくてもよい。例えば、平板状や無端ベルト状等であってもよい。
【0075】
あるいは、本発明のトナー供給装置1は、上述の電子写真方式以外の方式(例えば、感光体を用いないトナージェット方式、イオンフロー方式、マルチスタイラス電極方式、等)の画像形成装置に対しても、好適に適用され得る。
【0076】
(2)感光体ドラム2と現像ローラ12とは、接触していてもよい。
【0077】
(3)メイン搬送基板13aや回収用搬送基板13bの平板状の部分は、水平面に対して多少傾いていてもよい。同様に、サブ搬送基板13cのトナー搬送方向TTDにおける上流部13c1も、実質的に上下方向に沿って立設していればよく、多少傾いていてもよい。また、サブ搬送基板13cは、略逆U字状に形成されていてもよい。すなわち、サブ搬送基板13cにおける最下流端部13c4は、トナー貯留部11cに達するように設けられていてもよい。
【0078】
(4)搬送基板13の内部構成は、上述の実施形態のものに限定されない。例えば、搬送電極オーバーコーティング層134は省略され得る(この場合、上述の実施形態における搬送電極オーバーコーティング層134の材料選択と同様に、搬送電極コーティング層133の材料選択が行われる。)。あるいは、搬送電極131が搬送電極支持フィルム132内に埋め込まれることで、搬送電極コーティング層133及び搬送電極オーバーコーティング層134の双方が省略され得る。
【0079】
(5)図3を参照すると、各電源回路VA〜VDが発生する電圧の波形は、矩形波状以外にも、正弦波状や三角波状等の任意のものが用いられ得る。
【0080】
また、上述の実施形態においては、4つの電源回路VA〜VDが設けられるとともに、各電源回路VA〜VDが発生する電圧の位相が90°ずつ異なっていた。もっとも、本発明はこれに限定されず、例えば、3つの電源回路が備えられるとともに、各電源回路が発生する電圧の位相が120°ずつ異なるようになっていてもよい。
【0081】
(6)図4は、図1に示されているトナー供給装置1の一変形例の概略構成を示す側断面図である。図4に示されているように、メイン搬送基板13a及び回収用搬送基板13bは、側断面視にて円弧状の部分を有さない平板状に形成されていてもよい。
【0082】
また、図4に示されているように、現像ローラ12は、その周面であるトナー担持面12aの略半分がケーシング11の外部に露出するように、ケーシング11に収容されていてもよい。
【0083】
(7)図5は、図1に示されているトナー供給装置1の他の変形例の概略構成を示す側断面図である。図5に示されているように、メイン搬送基板13aは、ケーシング11の底板11aや天板11bに支持されるのではなく、サブ搬送基板13cと同様に、略逆J字状あるいは略逆U字状に屈曲された状態でケーシング11の内側に収容されていてもよい。
【0084】
この場合、メイン搬送基板13aのトナー搬送方向TTDにおける上流側の端部、及び、サブ搬送基板13cのトナー搬送方向TTDにおける下流側の端部は、トナー搬送方向TTDが上下方向となるように、互いに平行に立設されている。そして、メイン搬送基板13aのトナー搬送方向TTDにおける上流側の端部と、サブ搬送基板13cのトナー搬送方向TTDにおける下流側の端部とは、所定のギャップを隔てて近接対向するように設けられている。
【0085】
また、この場合、ケーシング11における底板11aには、回収用搬送基板13b1が設けられていてもよい。さらに、ケーシング11における天板11bにも、回収用搬送基板13b2が設けられていてもよい。
【0086】
かかる変形例の構成によっても、上述の実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0087】
なお、図5において、回収用搬送基板13b1及び/又は回収用搬送基板13b2は、省略され得る。
【0088】
(8)その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の技術的範囲に含まれることは当然である。
【0089】
また、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構造をも含む。さらに、本明細書にて引用した各公報の内容(明細書及び図面を含む)は、本明細書の一部を構成するものとして援用され得る。
【符号の説明】
【0090】
1 … トナー供給装置(現像剤供給装置)
2 … 感光体ドラム(供給対象)
2a … 静電潜像担持面
11 … ケーシング
11a … 底板
11b … 天板
11c … トナー貯留部(現像剤貯留部)
11d … 開口部
12 … 現像ローラ(現像剤担持部材)
12a … トナー担持面
12b … ローラ回転中心軸
13 … 搬送基板
13a … メイン搬送基板
13b … 回収用搬送基板
13c … サブ搬送基板
13c1 … 上流部
13c2 … 下流部
13c3 … 接続部
13c4 … 最下流端部
131 … 搬送電極
131a … メイン搬送電極
131b … 回収用搬送電極
131c … サブ搬送電極
132 … 搬送電極支持フィルム
133 … 搬送電極コーティング層
134 … 搬送電極オーバーコーティング層
134a … メイン搬送電極オーバーコーティング層
134b … 回収用搬送電極オーバーコーティング層
134c … サブ搬送電極オーバーコーティング層
14 … サブ搬送基板支持体
15 … 現像バイアス電源回路
16 … メイン搬送電源回路
17 … 回収電源回路
18 … サブ搬送電源回路
19 … トナー輸送オーガ
DP … 現像位置
TTD … トナー搬送方向
TTP … トナー搬送経路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】
【特許文献1】特開昭60−115962号公報
【特許文献2】特開平3−12678号公報
【特許文献3】特開平11−84862号公報
【特許文献4】特開2001−209246号公報
【特許文献5】特開2002−287495号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定極性に帯電した粉末状の現像剤を供給対象に対して供給するように構成された、現像剤供給装置において、
前記供給対象に向けて開口する開口部を有し、底部の現像剤貯留部にて前記現像剤を貯留するように構成された、箱状のケーシングと、
円柱面状の周面を有し主走査方向に沿った軸を中心として回転駆動されるローラ状の部材であって、前記開口部に面するように前記ケーシングの内側に収容されつつ前記供給対象と対向するように設けられた、現像剤担持部材と、
電圧印加に伴って発生する電界により前記現像剤を前記現像剤担持部材に向けて搬送するように構成され、前記現像剤の搬送方向における下流側の端部にて前記現像剤担持部材と対向するように設けられた、メイン搬送基板と、
電圧印加に伴って発生する電界により前記現像剤を前記現像剤貯留部から前記メイン搬送基板に向けて搬送するように構成され、前記メイン搬送基板と対向するように設けられた、サブ搬送基板と、
を備え、
前記サブ搬送基板は、前記メイン搬送基板と対向する部分にて、前記メイン搬送基板による前記現像剤の搬送方向と逆方向に前記現像剤を搬送するように設けられたことを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の、現像剤供給装置であって、
前記サブ搬送基板は、
当該サブ搬送基板の、前記現像剤の搬送方向における下流側の部分にて、前記メイン搬送基板と対向するように設けられたことを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の、現像剤供給装置であって、
前記メイン搬送基板は、前記現像剤を水平方向に沿って搬送するように設けられ、
前記サブ搬送基板は、前記メイン搬送基板と対向する前記部分よりも前記搬送方向における上流側の部分にて、前記現像剤を前記現像剤貯留部から上方に搬送するように設けられたことを特徴とする、現像剤供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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