説明

現像剤供給装置

【課題】 供給対象と対向する領域にて搬送基板の表面がチャージアップすることで、当該搬送基板から供給対象への現像剤の供給が良好に行われない状態が発生することを、良好に抑制すること。
【解決手段】 本発明の現像剤電界搬送装置は、現像剤搬送経路に沿って配列された複数の搬送電極と、搬送電極を支持する絶縁性の電極支持体と、現像剤搬送経路に面した表面である現像剤搬送面上を現像剤が搬送されるように搬送電極よりも現像剤搬送経路側に配置されたカバー層と、現像剤搬送面と供給対象との間に配置された中間電極と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電した粉末状の現像剤を進行波状の電界により搬送するように構成された、現像剤電界搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
進行波状の電界を用いて現像剤(トナー)を搬送する装置が、従来から多数知られている(例えば、特開2002−287495号公報、特開2004−279903号公報、等参照)。この種の装置(以下、「現像剤電界搬送装置」と称する。)は、前記現像剤の搬送方向に沿って配列された多数本の線状電極を有する、搬送基板を備えている。
【0003】
上述の構成においては、多数本の前記線状電極に対して多相交流電圧が印加されることで、進行波状の電界が形成される。帯電した前記現像剤は、この電界の作用によって、前記線状電極の配列方向に沿って搬送され、その後、静電潜像担持体あるいは現像剤担持体(現像ローラ)等の供給対象と対向する位置にて当該供給対象に供給される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の装置において、前記供給対象と対向する領域にて前記搬送基板の表面がチャージアップすることで、当該搬送基板から前記供給対象への前記現像剤の供給が良好に行われない状態が生じ得る。本発明は、かかる課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の現像剤電界搬送装置は、所定極性に帯電した粉末状の現像剤を、進行波状の電界により所定の現像剤搬送経路に沿って搬送しつつ、前記所定極性に帯電した前記現像剤を静電的に引き付けるような表面電位を有する供給対象に対して供給するように構成されている。この現像剤電界搬送装置は、前記供給対象と対向配置されている。
【0006】
前記供給対象としては、例えば、静電潜像を表面に担持する静電潜像担持体(感光体)が用いられ得る。あるいは、前記供給対象としては、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を前記現像剤によって現像するために当該静電潜像担持体と対向配置されていて、表面に前記現像剤を担持するように構成された、現像剤担持体(現像ローラあるいは現像スリーブ)が用いられ得る。
【0007】
前記現像剤電界搬送装置は、電極支持体と、カバー層と、複数の搬送電極と、を備えている。前記電極支持体と、前記カバー層と、複数の前記搬送電極と、によって、搬送基板が構成されている。
【0008】
複数の前記搬送電極は、多相交流電圧を含む駆動電圧の印加に伴って発生する前記電界により前記現像剤を前記現像剤搬送経路に沿って搬送するように、当該現像剤搬送経路に沿って配列されている。前記電極支持体は、絶縁性の材質からなり、前記搬送電極を支持するように、前記現像剤搬送経路に対して前記搬送電極と同じ側に設けられている。
【0009】
前記カバー層は、絶縁性の材質(例えば、前記現像剤との摩擦によって前記所定極性とは反対の極性に帯電する材質)からなる層であって、前記搬送電極及び前記電極支持体を覆うように形成されている。すなわち、前記カバー層は、現像剤搬送面(当該カバー層における前記現像剤搬送経路に面した表面)上を前記現像剤が搬送されるように、前記搬送電極よりも前記現像剤搬送経路側に配置されている。
【0010】
本発明の特徴は、前記現像剤電界搬送装置が、前記現像剤搬送面(前記搬送基板)と前記供給対象との間に配置された中間電極を、さらに備えたことにある。この中間電極は、前記駆動電圧の前記所定極性側のピーク電位と前記供給対象の前記表面電位との間の電位に設定されるようになっている。また、この中間電極には、前記現像剤搬送面から前記供給対象に向かう前記現像剤の通過を許容する開口部が形成されている。
【0011】
前記中間電極は、前記現像剤搬送経路と交差する方向に張設されているとともに、前記現像剤搬送経路に沿って配列された、複数のワイヤであってもよい。この場合、前記開口部は、隣り合う前記ワイヤ間の空間によって形成されている。
【0012】
前記中間電極は、前記現像剤搬送面と前記供給対象との中間位置よりも前記現像剤搬送面側に配置され得る。
【0013】
前記中間電極は、
複数の前記搬送電極に対する前記多相交流電圧の印加状態を前記現像剤搬送経路に沿った方向について見た場合の、当該方向における空間的な電位周期をTとすると、
前記現像剤搬送面に最近接する端部である搬送面側端部と、前記現像剤搬送面と、の間隔が、T/2以上となるように配置され得る。
【発明の効果】
【0014】
前記現像剤搬送面(前記搬送基板)のチャージアップの要因の一つとして、前記現像剤の有する電荷に起因して発生するイオンの付着が考えられる。すなわち、前記供給対象と前記現像剤搬送面とが対向する領域においては、前記所定極性に帯電した前記現像剤を前記供給対象側に移行させるための電界により、所定の電位勾配が形成されている。かかる電位勾配と、前記現像剤搬送面上に前記現像剤が存在することによって当該現像剤搬送面の近傍に生じる局所的な電位勾配と、が重畳されることで、当該現像剤搬送面近傍に急峻な電位勾配が生じる。
【0015】
かかる現像剤搬送面近傍の電位勾配が放電限界を超えると、空気が電離してイオンが発生する。このように発生したイオンの一部が前記現像剤搬送面に付着し、他の一部(特に前記所定極性のイオン)が前記供給対象側に移行することで、前記現像剤搬送面における電荷の不均衡が生じ、これにより(特に前記所定極性と逆極性の)チャージアップが生じる。
【0016】
この点、上述の構成を備えた本発明の現像剤電界搬送装置においては、前記現像剤搬送面と前記供給対象との間に前記中間電極が設けられることで、前記現像剤搬送面と前記供給対象との間の領域における前記現像剤搬送面寄りの部分(すなわち前記現像剤搬送面と前記中間電極との間の領域)での電位勾配が小さくなる。これにより、上述のような、前記現像剤搬送面近傍での空気の電離の発生や、前記現像剤搬送面における表面電荷の不均衡の発生が、可及的に抑制される。
【0017】
このように、本発明においては、前記現像剤搬送面(前記搬送基板)のチャージアップが、可及的に抑制される。したがって、本発明によれば、前記供給対象への前記現像剤の供給(前記静電潜像担持体上に形成された前記静電潜像の現像、あるいは、当該静電潜像を現像するための前記現像剤担持体上への前記現像剤の担持)が、よりいっそう良好に行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態が適用された画像形成装置としてのレーザープリンタの概略構成を示す側面図である。
【図2】図1に示されているトナー供給装置を拡大した側断面図である。
【図3】図2に示されている搬送基板を拡大した側断面図である。
【図4】図3に示されている各電源回路の出力波形の一例を示すグラフである。
【図5】本発明の原理的説明を行うための図である。
【図6】図2に示されているトナー担持位置の近傍における電界シミュレーション結果を示す図である。
【図7】図2に示されているトナー担持位置の近傍における電界シミュレーション結果を示す図である。
【図8】図2に示されているトナー担持位置の近傍における電界シミュレーション結果を示す図である。
【図9】図2に示されているトナー担持位置の近傍における電界シミュレーション結果を示す図である。
【図10】図2に示されているトナー担持位置の近傍における電界シミュレーション結果を示す図である。
【図11】図2に示されているトナー担持位置の近傍における電界シミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<構成>
図1は、本発明の一実施形態が適用された画像形成装置としてのレーザープリンタ1の概略構成を示す側面図である。図1を参照すると、レーザープリンタ1は、用紙搬送機構2と、感光体ドラム3と、帯電器4と、スキャナーユニット5と、トナー供給装置6と、を備えている。レーザープリンタ1内に設けられた図示しない給紙トレイには、シート状の用紙Pが、積み重ねられた状態で収容されている。用紙搬送機構2は、上述の給紙トレイに収容された用紙Pを、所定の用紙搬送経路PPに沿って一枚ずつ搬送するように構成されている。
【0020】
感光体ドラム3の周面には、静電潜像担持面LSが形成されている。静電潜像担持面LSは、主走査方向(図中z軸方向:用紙幅方向あるいは単に幅方向とも称され得る)と平行な円柱面であって、電位分布による静電潜像が形成されるとともに当該静電潜像に対応した位置にてトナーT(図2参照)を担持するようになっている。感光体ドラム3は、主走査方向と平行なドラム回転中心軸Cを中心として、所定方向(図中反時計回り)に回転駆動されることで、主走査方向と直交する副走査方向に沿って静電潜像担持面LSが移動するように構成されている。
【0021】
帯電器4は、静電潜像担持面LSを一様に正帯電させるように、静電潜像担持面LSと対向するように配置されている。スキャナーユニット5は、画像データに基づいて変調されたレーザービームLBをスキャン位置SPにて静電潜像担持面LS上に結像させつつ主走査方向に沿って走査することで、静電潜像担持面LS上に静電潜像を形成するように構成されている。
【0022】
トナー供給装置6は、スキャン位置SPよりも感光体ドラム3の回転による静電潜像担持面LSの移動方向における下流側の現像位置DPにて、静電潜像担持面LSと対向するように、感光体ドラム3の下方に配置されている。トナー供給装置6は、正極性に帯電したトナーT(図2参照)を、現像位置DPにて静電潜像担持面LSに供給するように構成されている。次に、レーザープリンタ1の各部の具体的な構成について、より詳細に説明する。
【0023】
用紙搬送機構2は、一対のレジストローラ21と、転写ローラ22と、を備えている。レジストローラ21は、用紙Pを所定のタイミングにて感光体ドラム3と転写ローラ22との間の転写位置TP(現像位置DPよりも感光体ドラム3の回転による静電潜像担持面LSの移動方向における下流側)に向けて送り出すように構成されている。転写ローラ22は、静電潜像担持面LSと、転写位置TPにて、用紙搬送経路PP(用紙P)を挟んで対向するように配置されていて、感光体ドラム3の回転方向と反対方向(図中時計回り)に回転駆動されるようになっている。また、転写ローラ22は、図示しない転写バイアス電源回路に接続されていて、静電潜像担持面LS上に付着したトナーT(図2参照)を用紙Pに転写させるための所定の転写バイアス電圧が印加されるようになっている。
【0024】
<<トナー供給装置>>
図2は、図1に示されているトナー供給装置6を拡大した側断面図である。以下図2を参照すると、トナー供給装置6の本体フレームをなすケーシング60は、側断面視にて略U字状に形成され上下方向(図中y軸方向)に長手方向を有する箱状部材であるメインケーシング60aを備えている。すなわち、メインケーシング60aの頂部であって、感光体ドラム3と対向する位置には、感光体ドラム3に向けて上方に開口するように、開口部60a1が設けられている。メインケーシング60aの底部の略半円筒状の部分の内側の空間である、トナー貯留部60a2内には、粉末状のトナーT(乾式現像剤)が収容されている。本実施形態においては、トナーTとしては、正帯電性・非磁性一成分・黒色のものが用いられている。
【0025】
メインケーシング60aの底部と並行するように、主走査方向と平行な中心軸線を有する略円筒形状のサブケーシング60bが設けられている。サブケーシング60bの内側の空間である補助トナー貯留部60b1内にも、粉末状のトナーTが収容されている。メインケーシング60aの底部のトナー貯留部60a2と、サブケーシング60bの内側の空間である補助トナー貯留部60b1とは、主走査方向における両端部にて、連通孔60cを介して互いに連結(連通)されている。
【0026】
メインケーシング60aの底部には、第一オーガ61aが収容されている。第一オーガ61aは、主走査方向に沿った回転中心軸を構成するシャフト61a1と、その周囲に設けられた螺旋状の羽根61a2と、を備えている。この第一オーガ61aは、シャフト61a1が回転駆動されることで、トナー貯留部60a2内のトナーTを攪拌しつつ主走査方向と平行な第一の方向(例えば図中z軸正方向)に移動させるように構成されている。
【0027】
サブケーシング60bには、第二オーガ61bが収容されている。第二オーガ61bは、第一オーガ61aと同様に、シャフト61b1と羽根61b2とを備えている。この第二オーガ61bは、シャフト61b1が回転駆動されることで、補助トナー貯留部60b1内のトナーTを攪拌しつつ第一オーガ61aによる移動方向とは反対の方向に移動させるように構成されている。すなわち、第一オーガ61a及び第二オーガ61bは、トナー貯留部60a2及び補助トナー貯留部60b1内のトナーTを攪拌しつつ循環させるように構成されている。
【0028】
本発明の「供給対象」に相当する現像ローラ62は、円柱面状の周面であるトナー担持面62aを有するローラ状の部材であって、感光体ドラム3と対向するように設けられている。なお、本実施形態においては、現像ローラ62は、その中心軸(以下、「現像ローラ回転中心軸C1」と称する。)がメインケーシング60aの内側に位置することで、トナー担持面62aのほぼ上半分がメインケーシング60aの外側の露出するように、ケーシング60に収容されている。
【0029】
現像ローラ62は、メインケーシング60aにおける、開口部60a1が形成された上端部にて、回動可能に支持されている。すなわち、現像ローラ62は、主走査方向と平行な現像ローラ回転中心軸C1を中心として回転することで、トナー担持面62aを主走査方向と直交する方向に移動させつつ、当該トナー担持面62a上に担持されたトナーTを現像位置DPに供給するように構成されている。
【0030】
メインケーシング60aの内部には、側断面視にて上下方向に長手方向を有する略長円状に形成されたトナー搬送経路TTPに沿って、搬送基板63が設けられている(なお、トナー搬送方向TTDは、トナー搬送経路TTPの接線方向である。)。搬送基板63は、メインケーシング60aの内壁面に固定されている。
【0031】
本発明の「現像剤電界搬送装置」を構成する搬送基板63は、そのトナー搬送経路TTPに沿った表面であるトナー搬送面TTS上にてトナーTを進行波電界により搬送するように構成されている。本実施形態においては、搬送基板63は、底部搬送基板63aと、垂直搬送基板63bと、回収基板63cと、を備えている。
【0032】
底部搬送基板63aは、トナー貯留部60a2の底面を構成するように、メインケーシング60aの内側の空間における底部にて、メインケーシング60aの内壁面に固定されている。底部搬送基板63aは、側断面視にて半円筒形状に屈曲され上方に開口する凹状の曲板状部材であって、トナー貯留部60a2内のトナーTを垂直搬送基板63bの下端部に向けて円滑に搬送するように、平板状の垂直搬送基板63bの下端部と滑らかに接続されている。
【0033】
垂直搬送基板63bは、メインケーシング60aの内壁面に固定されていて、底部搬送基板63aと接続された下端部からトナーTを垂直上方に搬送するように立設されている。垂直搬送基板63bの上端部は、現像ローラ62の中心とほぼ同じ高さに設けられている。この上端部は、現像ローラ62における円柱面状のトナー担持面62aと対向するように設けられている。垂直搬送基板63bの上端部とトナー担持面62aとが最も近接しつつ対向するトナー担持位置TCPにて、両者の間には、所定間隔のギャップが設けられている。
【0034】
本実施形態においては、底部搬送基板63a及び垂直搬送基板63bは、側断面視にて反転J字状に継ぎ目なく一体に形成されている。そして、垂直搬送基板63bは、底部搬送基板63aから受け渡されたトナーTを、現像位置DPよりもトナー担持面62aの移動方向における上流側のトナー担持位置TCPに向けて、垂直上方に搬送するように構成されている。
【0035】
また、本実施形態においては、搬送基板63の、底部搬送基板63a及び垂直搬送基板63bによる一体的な側断面視にて反転J字状の部分の、トナー搬送方向における上流側の部分(すなわち垂直搬送基板63bの下端部と底部搬送基板63aとを合わせた部分:「上流側の端部」とも言い得る)は、第一オーガ61aと非接触に設けられているとともに、トナー貯留部60a2に面することで当該トナー貯留部60a2に貯留されたトナーT内に浸漬されるように設けられている。
【0036】
回収基板63cは、垂直搬送基板63bの上端部と現像ローラ62を挟んだ反対側にて現像ローラ62と所定間隔のギャップを隔てて対向するように設けられていて、現像位置DPにて消費されなかったトナーTを現像ローラ62から回収するとともに下方のトナー貯留部60a2に向けて搬送するように構成されている。
【0037】
トナー搬送面TTSとトナー担持面62aとの間であって、トナー担持位置TCPの近傍位置には、本発明の「現像剤電界搬送装置」を構成する「中間電極」としてのグリッド電極64が配置されている。本実施形態においては、グリッド電極64は、細い(具体的にはφ200μm程度の)タングステンワイヤであって、主走査方向と平行に張設されている。グリッド電極64は、トナー搬送面TTSとトナー担持面62aとの中間位置よりも若干トナー搬送面TTS寄りの位置に設けられている(詳細は後述する)。
【0038】
本実施形態においては、複数のグリッド電極64が、互いに平行に、トナー搬送方向TTDに配列されている。隣り合うグリッド電極64の間には、正極性に帯電したトナーT(一次粒子径:5〜10μm程度)が良好に通過できるような幅のギャップ(開口部:具体的には電極ピッチの2倍(すなわち400μm)程度)が形成されている。
【0039】
搬送基板63における底部搬送基板63a及び垂直搬送基板63bは、供給搬送電源回路66aと電気的に接続されている。供給搬送電源回路66aは、トナー貯留部60a2内のトナーTをトナー担持位置TCPに向けて電界搬送するために必要な多相交流電圧である供給搬送バイアス(図3におけるVA〜VD及び図4参照:具体例としては+500Vの直流電圧成分と振幅300V・周波数300Hzの4相交流電圧成分とを重畳した電圧[+200V〜+800V])を出力するようになっている。
【0040】
現像ローラ62は、現像バイアス電源回路66bと電気的に接続されている。現像バイアス電源回路66bは、正帯電のトナーTをトナー担持位置TCPにて垂直搬送基板63bの上端部からトナー担持面62a側に移動させてトナー担持面62a上に担持させるとともに、トナー担持面62a上に担持されたトナーTを用いて現像位置DPにて静電潜像を現像するために、必要な電圧である、現像バイアス(具体例としては+200Vの直流電圧成分と振幅1300V・周波数2kHzの交流電圧成分とを重畳した電圧[−1100V〜+1500V])を現像ローラ62に印加するようになっている。
【0041】
回収基板63cは、回収搬送電源回路66cと電気的に接続されている。回収搬送電源回路66cは、現像位置DPにて消費されなかったトナー担持面62a上のトナーTを現像ローラ62から回収して下方のトナー貯留部60a2に向けて電界搬送するために必要な多相交流電圧である回収搬送バイアス(図3におけるVA〜VD及び図4参照。但し、供給搬送電源回路66aによる上述の供給搬送バイアスとは直流電圧成分が異なる。具体例としては−500Vの直流電圧成分と振幅300V・周波数300Hzの4相交流電圧成分とを重畳した電圧[−200V〜−800V])を出力するようになっている。
【0042】
すなわち、供給搬送電源回路66a、回収搬送電源回路66c、及び現像バイアス電源回路66bは、トナーTをトナー搬送経路TTPに沿ってトナー搬送方向TTDに循環させる(トナー貯留部60a2内のトナーTを現像ローラ62に一旦担持させつつ現像位置DPまで供給するとともに、現像位置DPにて消費されなかったトナーTを現像ローラ62から回収して下方のトナー貯留部60a2に還流させる)ために必要な電圧を出力するようになっている。
【0043】
グリッド電極64は、グリッド電源回路66dと電気的に接続されている。グリッド電源回路66dは、グリッド電極64を、供給搬送バイアスのプラス側(トナーTの帯電極性と同極性側)のピーク電位と、現像ローラ62の表面電位(トナー担持面62aの電位)の平均値との間の電位に設定するために必要な電圧であるグリッドバイアス(上述の具体例では+500Vの直流電圧)を出力するようになっている。
【0044】
図3は、図2に示されている搬送基板63を拡大した側断面図である。図3を参照すると、搬送基板63は、薄板状の部材であって、フレキシブルプリント配線基板と同様の構成を有している。具体的には、搬送基板63は、搬送電極631と、搬送電極支持フィルム632と、中間層633と、カバー層634と、から構成されている。搬送電極631は、主走査方向と平行な長手方向を有する線状の配線パターンであって、例えば、銅箔によって形成されている。
【0045】
複数の搬送電極631は、トナー搬送経路TTPに沿って配列されていて、互いに平行に配置されている(例えば、トナー搬送経路TTPと平行な方向における幅が100μm、同方向における隣り合う搬送電極631同士の間隔(トナー搬送方向TTDにおけるギャップ)が100μm。)。トナー搬送経路TTPに沿って多数配列された各搬送電極631は、3本置きに同一の電源回路(VA〜VD)に接続されている。本実施形態においては、図4に示されているように、各電源回路VA〜VDは、ほぼ同一波形で互いに位相が90°ずつ異なる交流電圧である駆動電圧を出力するように構成されている。
【0046】
複数の搬送電極631は、搬送電極支持フィルム632の表面上に形成されている。本発明の「電極支持体」に相当する搬送電極支持フィルム632は、可撓性のフィルムであって、本実施形態においては、絶縁性の合成樹脂(例えばポリイミド樹脂)から構成されている。この搬送電極支持フィルム632は、トナー搬送経路TTPに対して搬送電極631と同じ側にて当該搬送電極631を支持するように設けられている。
【0047】
カバー層634は、トナー搬送経路TTPに対して搬送電極631と同じ側であって、搬送電極631よりもトナー搬送経路TTP側に配置されている。このカバー層634は、絶縁性の合成樹脂(例えばポリエステル樹脂)からなり、搬送電極631及び搬送電極支持フィルム632を覆うように、搬送基板63における最表層として設けられている。トナー搬送面TTSは、カバー層634のトナー搬送経路TTPに面した表面であって、トナーTがスムーズに搬送され得るように、凹凸の極めて少ない平滑な面として形成されている。
【0048】
中間層633は、搬送電極支持フィルム632における搬送電極631が設けられている表面及び搬送電極631と、カバー層634と、の接着層として、両者の間に設けられている。本実施形態においては、中間層633は、絶縁性の合成樹脂(例えばポリイミド樹脂)から構成されている。
【0049】
<動作概要>
次に、上述のように構成されたレーザープリンタ1による動作の概要について、図面を適宜参照しつつ説明する。
【0050】
上述の構成においては、第一オーガ61aと第二オーガ61bとの協働によって、トナー貯留部60a2内のトナーTが攪拌されつつ主走査方向と平行な第一の方向に移動するとともに、補助トナー貯留部60b1内のトナーTが攪拌されつつ第二の方向(上述の第一の方向と反対の方向)に移動することで、トナー貯留部60a2及び補助トナー貯留部60b1内のトナーTが、撹拌されつつ循環する。これにより、トナー貯留部60a2内に貯留されている、搬送基板63によって電界搬送される直前のトナーTが撹拌されるとともに、トナー貯留部60a2内のトナーTの貯留レベルが安定化される。
【0051】
また、第一オーガ61aと第二オーガ61bとによってトナー貯留部60a2と補助トナー貯留部60b1との間でトナーTが循環されるため、起動部(搬送基板63すなわち底部搬送基板63a及び垂直搬送基板63bによるトナーTの電界搬送が開始される部分)の付近で搬送基板63によって搬送されずに残留したトナーTを良好に帯電させることができる。すなわち、第一オーガ61aと第二オーガ61bとにより、トナーTが攪拌される時間を確保することができ、以て、トナーTが帯電される機会を増やすことができる。
【0052】
上述のようにして撹拌及び循環によって良好に流動化されつつ貯留レベルが安定化されている、トナー貯留部60a2内のトナーTは、供給搬送バイアスの作用で、トナー搬送面TTS上を、トナー担持位置TCPに向けてトナー搬送方向TTDに電界搬送される。かかる電界搬送は、上述の起動部(具体的には、トナー貯留部60a2内のトナーTの貯留レベルと、垂直搬送基板63bの下端部又は底部搬送基板63aと、が接触する位置の近傍部分。)にて、実質的に開始される。
【0053】
起動部にて搬送開始されたトナーTは、トナー担持位置TCPに向けて電界搬送される。その途中で、かかるトナーTは、カバー層634の表面(トナー搬送面TTS)との接触あるいは摩擦により、さらに帯電することがある。垂直搬送基板63bによってトナー担持位置TCPまで搬送されたトナーTは、このトナー担持位置TCP及びその近傍にて、供給搬送バイアス及び現像バイアスの作用により、トナー担持面62a上に担持される。
【0054】
トナーTは、現像ローラ62の回転駆動により、トナー担持面62aが現像位置DPまで移動することで、現像位置DPに供給される。この現像位置DPの近傍にて、静電潜像担持面LSに形成された静電潜像が、現像バイアスの作用により、トナーTによって現像される。すなわち、静電潜像担持面LS上であって、静電潜像における正電荷が消失した部分に、トナーTがトナー担持面62aから移行し付着する。これにより、トナーTによる画像(以下、「トナー像」と称する。)が、静電潜像担持面LS上に担持される。
【0055】
現像位置DPを通過した(現像位置DPにて消費されなかった)トナー担持面62a上のトナーTは、上述の現像バイアス及び回収搬送バイアスの作用で、回収基板63c側に移行する。すなわち、かかるトナーは、回収基板63cによってトナー担持面62aから回収される。回収基板63c側に良好に移行したトナーTは、上述の回収搬送バイアスの作用で、垂直下方に搬送され、トナー貯留部60a2に良好に還流する。
【0056】
<実施形態の構成による動作及び作用・効果>
次に、上述のような本実施形態の構成により奏される作用・効果を、図面を適宜参照しつつ説明する。
【0057】
図5は、本発明の原理的説明を行うための図である。図5における(i)は、グリッド電極64が設けられていない場合の、トナー担持位置TCPにおける、トナー搬送面TTSからトナー担持面62aに向かう方向の電位変化の様子を示すグラフである。図中、横軸は、トナー搬送面TTSを基準とした、トナー担持面62aに向かう方向の位置(すなわちトナー搬送面TTSからの距離)を示すものとする。また、図示及び説明の簡略化のため、図中、トナー搬送面TTSの電位(横軸0における電位)として、供給搬送バイアスの平均電位が用いられているものとする。
【0058】
図5における(i)を参照すると、トナー搬送面TTS上における正帯電のトナーTの存在を無視した場合には、トナー搬送面TTS(x軸の値が0)からトナー担持面62a(x軸の値がR)までの電位勾配は、ほぼ直線状になっている(実際には、カバー層634等の絶縁層の存在により、図5における(ii)の破線における左側の部分のように、トナー搬送面TTS近傍にて若干急峻な曲線状の部分が生じる。)。
【0059】
これに対し、トナー搬送面TTS上に正帯電のトナーTの存在を考慮すると、当該トナーTの有する正電荷により、図5における(i)にて実線で示されているように、トナー搬送面TTSの近傍にて局所的に電位勾配が非常に急峻となる。かかる電位勾配が放電限界を超えると、空気が電離して、正イオンと負イオンとが発生する。発生した負イオンは、高電位側であるトナー搬送面TTS側にすべて移行する。一方、正イオンは、一部は低電位側であるトナー担持面62a側に移行するとともに、一部は供給搬送バイアスの負側のピーク電位に対応する搬送電極631に向かってトナー搬送面TTS側に移行する。
【0060】
ここで、現像ローラ62は導電性あるいは半導電性であるため、現像ローラ62に移行及び付着した正イオンによる電荷はトナー担持面62aから現像ローラ62の金属製の中心シャフト側に逃がされる一方、トナー搬送面TTSを構成する搬送基板63の最表層の材質は絶縁性であるため、トナー搬送面TTS側に移行した負イオンの一部は当該トナー搬送面TTS上に残留する(残部はトナー搬送面TTS側に移行した正イオンによって除電される)。
【0061】
この結果、トナー搬送面TTSにおいては、相対的に正イオンが欠乏するような電荷の不均衡が生じる。かかる電荷の不均衡により、トナー搬送面TTSは、負極性にチャージアップする。特に、搬送基板63の最表層を構成する材質(本実施形態においてはカバー層634)が摩擦帯電系列において負極性側の材質であったり、トナーT(母材あるいは外添剤)との摩擦によって負極性に帯電するような材質であったりした場合に、負極性のチャージアップが顕著になる。かかるチャージアップが発生すると、正極性のトナーTがチャージアップ部分に静電的に吸着することで、トナーTのトナー搬送方向TTDへの搬送や、トナー担持面62a上への担持が、阻害されてしまう。
【0062】
この点、本発明においては、図5における(ii)の実線で示されているように、グリッド電極64を設けることで、トナー搬送面TTSとグリッド電極64との間に、電位勾配が(ほとんど)ない領域が形成される(なお、破線は、グリッド電極64がない場合の電位勾配を示している。)。これにより、現像ローラ62側に移行する正イオンの量を抑制することができ、以てトナー搬送面TTSの負極性のチャージアップが可及的に抑制される。さらに、グリッド電極64よりもトナー担持面62a側の空間における電位勾配が大きくなるため、慣性でグリッド電極64を通過したトナーTが良好にトナー担持面62a上に担持されるようになる。
【0063】
なお、グリッド電極64の設定電位(グリッドバイアス)は、供給搬送バイアスのプラス側(トナーTの帯電極性と同極性側)のピーク電位(上述の具体例では+800V)と、現像ローラ62の表面電位の平均値(上述の具体例では+200V)との間の電位(上述の具体例では例えば+500〜+600V)、典型的には、供給搬送バイアスの平均電位(直流電圧成分)とほぼ同電位に設定されることが好適である。
【0064】
図6は、図2に示されているトナー担持位置TCPの近傍における電界シミュレーション結果(等電位線及び単位正電荷が受ける力を示す矢印)を示す図である。なお、シミュレーション条件は、以下の通りである(シミュレーション及び説明の便宜上、バイアス電圧等の各種値が、上述の装置構成の説明における具体例の値とは異なっている場合がある。)。
搬送電極支持フィルム:厚さ25μm、比誘電率(εr)5
搬送電極:幅100μm、間隔100μm(ピッチ200μm)、厚さ18μm
中間層:電極上の厚さ25μm/電極間の厚さ43μm、εr2.3
カバー層:厚さ12.5μm、εr4
カバー層上方の空気層:厚さ3mm、εr1.0
現像ローラ表面電位:0V
供給搬送バイアス:+300V/+900Vの矩形波(4相)
グリッド電極:φ200μm、間隔(開口部OPの幅)400μm、+600V
グリッド位置(カバー層上面からのワイヤ中心の位置):1mm
【0065】
図7は、図6に示されているline1〜4の位置における電位勾配を示すグラフである(図7において、上側のピーク値が+800V程度となっており、上記シミュレーション条件における供給搬送バイアス上限値である+900Vよりも低くなっているのは、搬送電極よりも基板表面側の中間層及びカバー層の影響によるものであると考えられる。図8、図9、及び図11も同様である。)。
【0066】
ここで、line1に対応する位置の搬送電極631及びその図7における右隣の搬送電極631の電位は+900V、line2に対応する位置の搬送電極631及びその図7における左隣の搬送電極631の電位は+300Vであるものとする。すなわち、line1は、電位が+900Vである搬送電極631に対応する位置であり、line4は、電位が+900Vである隣り合う搬送電極631の中間の位置である。また、line2は、電位が+300Vである搬送電極631に対応する位置であり、line3は、電位が+300Vである搬送電極631と電位が+900Vである搬送電極631との中間の位置である。そして、図7における(i)はline1及びline4における電位勾配を示し、(ii)はline2及びline3における電位勾配を示している。
【0067】
上述のシミュレーション条件を参照すると、図7は、グリッド電極64におけるトナー搬送面TTSに最近接する端部である搬送面側端部641(図6参照)と、トナー搬送面TTSと、の間隔が、900μmとなっている場合の、電位勾配を示している。
【0068】
図7に示されているように、line1におけるトナー搬送面TTS近傍の電位勾配は大きいものの、line2〜4におけるトナー搬送面TTS近傍の電位勾配は、上述の局所的な電位勾配による電離が抑制される程度に小さくなっている。また、トナー搬送面TTSとグリッド電極64との間の範囲(横軸における0〜1の範囲)において、発生した正イオンがグリッド電極64間の開口部OPを通過してトナー担持面62a側に移行することを抑制するような電位勾配が生じている(但し、正帯電のトナーTは、line1及びline4におけるトナー搬送面TTS近傍の右下がりの電位勾配によりトナー搬送面TTSから飛翔し、慣性によりグリッド電極64間の開口部OPを通過し得る。)。
【0069】
図8は、グリッド位置を0.25mmとした場合の電位勾配を示すグラフである。図9は、(i)グリッド位置0.25mmと、(ii)グリッド位置1mmと、を対比して示すグラフである。図10は、等電位線及び単位正電荷が受ける力を示す矢印を示す図を、(i)グリッド位置0.25mmと、(ii)グリッド位置1mmと、を対比して示す図である。なお、グリッド位置を0.25mmとした場合、搬送面側端部641(図10参照)と、トナー搬送面TTSと、の間隔は、150μmとなる。図11は、グリッド位置を1.5mm、1mm、及び0.25mmと変更した場合と、グリッド電極64が無い場合と、を対比して示すグラフである。
【0070】
図7〜図11を参照すると、トナー搬送面TTSとグリッド電極64(搬送面側端部641)との間隔を或る程度確保することで、トナー搬送面TTSとグリッド電極64との間に、電位勾配の緩やか(ほぼ水平)な領域を形成することができ、これにより、チャージアップの抑制と、トナーTのトナー担持面62a側への良好な飛翔が達成される。これに対し、グリッド位置をトナー搬送面TTS側に近づけすぎると、正イオンのトナー担持面62a側への飛翔を抑制する効果が減殺されるとともに、トナーTをトナー搬送方向TTDに搬送するための進行波電界の形成やトナーTのトナー搬送方向TTDの搬送そのものが阻害されるおそれがある。
【0071】
最適なグリッド位置は、多相交流電圧の相数、搬送電極631の幅及びピッチ、並びにグリッド電極64の外径によって異なると考えられる。この点、複数の搬送電極631に対する多相交流電圧の印加状態をトナー搬送経路TTPに沿った方向について見た場合の、当該方向における空間的な電位周期をT(上述の具体例では800μm)とすると、グリッド位置が1mm(搬送面側端部641とトナー搬送面TTSとの間隔がTとほぼ同等で若干大きい900μm)の場合、良好な電位勾配が形成されているのに対し、グリッド位置が0.25mm(上述の間隔がT/2よりも小さな150μm)の場合、グリッド電極64がトナー搬送面TTS側に近づきすぎであるように考えられる。空間的に進行波電界が強く及ぶ範囲がほぼT/2の範囲であることを考慮すると(図6及び図10参照)、搬送面側端部641とトナー搬送面TTSとの間隔が、T/2以上(上述の具体例ではグリッド位置が0.5以上)となるように、グリッド電極64が配置されることが好適であると考えられる。
【0072】
<変形例の例示列挙>
なお、上述の実施形態は、上述した通り、出願人が取り敢えず本願の出願時点において最良であると考えた本発明の代表的な実施形態を、単に例示したものにすぎない。よって、本発明はもとより上述の実施形態に何ら限定されるものではない。したがって、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、上述の実施形態に対して種々の変形が施され得ることは、当然である。
【0073】
以下、代表的な変形例について、幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態にて説明されているものと同様の構成及び機能を有する部材に対しては、上述の実施形態と同様の符号が用いられ得るものとする。そして、かかる部材の説明については、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施形態における説明が援用され得るものとする。
【0074】
もっとも、言うまでもなく、変形例とて、以下に列挙されたものに限定されるものではない。また、複数の変形例が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0075】
本発明(特に、本発明の課題を解決するための手段を構成する各構成要素における、作用的・機能的に表現されているもの)は、上述の実施形態及び下記変形例の記載に基づいて限定解釈されてはならない。このような限定解釈は、(先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、発明の保護及び利用を目的とする特許法の目的に反し、許されない。
【0076】
本発明の適用対象は、単色のレーザープリンタに限定されない。例えば、本発明は、カラーのレーザープリンタや、単色及びカラーの複写機等の、いわゆる電子写真方式の画像形成装置に対して、好適に適用され得る。このとき、感光体の形状は、上述の実施形態のようなドラム状でなくてもよい。例えば、平板状や無端ベルト状等であってもよい。また、トナーTの帯電極性も、正極性に限定されない。
【0077】
露光光源としては、レーザースキャナ以外のもの(LED、EL(エレクトロルミネッセンス)素子、蛍光体、等)が好適に用いられ得る。この場合、「主走査方向」は、LED等の露光光源素子(発光素子)の配列方向となる。あるいは、本発明は、上述の電子写真方式以外の方式(例えば、感光体を用いないトナージェット方式、イオンフロー方式、マルチスタイラス電極方式、等)の画像形成装置に対しても、好適に適用され得る。
【0078】
搬送基板63の構成及び配置も、上述の実施形態にて具体的に開示されたものに限定されない。例えば、垂直搬送基板63bは、実質的に上下方向に沿って立設していればよく、多少傾いていてもよい。同様に、回収基板63cも、多少傾いていてもよい。あるいは、回収基板63cは、省略され得る。
【0079】
搬送基板63は、トナー搬送面TTSのうちの、起動部からトナー担持位置TCPに向かってトナーTを搬送する部分の主要部が下方を向くことで、未帯電あるいは低帯電のトナーTが重力の作用で下方に落下することでトナー搬送経路TTPから脱落するように設けられていてもよい(いわゆる背面搬送)。
【0080】
カバー層634は、省略され得る。あるいは、カバー層634は、中間層633が搬送電極631同士の隙間にのみ設けられることで、搬送電極631を直接覆うように設けられ得る。
【0081】
グリッド電極64を構成するワイヤの太さ、材質、及び配置態様も、上述の具体例に何ら限定されない。例えば、グリッド電極64を構成するワイヤは、主走査方向に対して若干傾斜して(但しトナー搬送面TTSと平行となるように)設けられていてもよい。また、グリッド電極64としては、ワイヤ状の部材に代えて、メッシュ状の部材や、多数の貫通孔が形成された薄板状部材も用いられ得る。具体的には、例えば、金属製のプレートに打ち抜き加工を施すことで、多数の貫通孔が形成された薄板状のグリッド電極64が形成され得る。この場合、多数の貫通孔を、それぞれ主走査方向に沿ったスリット状として、トナー搬送方向TTDについて「千鳥状」に配列することで、トナー搬送方向TTDにつて隣り合う長尺状(ワイヤ状)の部材間を梁状の部材で結合したような形状のグリッド電極64が得られる。これにより、長尺状(ワイヤ状)の部材の長手方向における中央部の撓みの発生が、可及的に抑制される。
【0082】
その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の技術的範囲に含まれることは当然である。また、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構造をも含む。さらに、本明細書にて引用した各公報や未公開出願の内容(明細書及び図面を含む)は、本明細書の一部を構成するものとして援用され得る。
【符号の説明】
【0083】
1 レーザープリンタ 6 トナー供給装置
62 現像ローラ 62a トナー担持面
63 搬送基板 63b 垂直搬送基板
631 搬送電極 632 搬送電極支持フィルム
633 中間層 634 カバー層
64 グリッド電極 641 搬送面側端部
66a 供給搬送電源回路 66b 現像バイアス電源回路
66c 回収搬送電源回路 66d グリッド電源回路
OP 開口部 T トナー
TCP トナー担持位置 TTD トナー搬送方向
TTP トナー搬送経路 TTS トナー搬送面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特開2002−287495号公報
【特許文献2】特開2004−279903号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定極性に帯電した粉末状の現像剤を、進行波状の電界により所定の現像剤搬送経路に沿って搬送しつつ、前記所定極性に帯電した前記現像剤を静電的に引き付けるような表面電位を有する供給対象に対して供給するように、当該供給対象と対向配置された、現像剤電界搬送装置において、
多相交流電圧を含む駆動電圧の印加に伴って発生する前記電界により前記現像剤を前記現像剤搬送経路に沿って搬送するように、当該現像剤搬送経路に沿って配列された、複数の搬送電極と、
前記搬送電極を支持するように、前記現像剤搬送経路に対して前記搬送電極と同じ側に設けられた、絶縁性の電極支持体と、
前記現像剤搬送経路に面した表面である現像剤搬送面上を前記現像剤が搬送されるように前記搬送電極よりも前記現像剤搬送経路側に配置された絶縁性の層であって、前記搬送電極及び前記電極支持体を覆うように形成された、カバー層と、
前記現像剤搬送面と前記供給対象との間に配置されていて、前記現像剤搬送面から前記供給対象に向かう前記現像剤の通過を許容する開口部を有し、前記駆動電圧の前記所定極性側のピーク電位と前記供給対象の前記表面電位との間の電位に設定された、中間電極と、
を備えたことを特徴とする、現像剤電界搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の、現像剤電界搬送装置であって、
前記カバー層は、前記現像剤との摩擦によって前記所定極性とは反対の極性に帯電する材質からなることを特徴とする、現像剤電界搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の、現像剤電界搬送装置であって、
前記中間電極は、前記現像剤搬送面と前記供給対象との中間位置よりも前記現像剤搬送面側に配置されていることを特徴とする、現像剤電界搬送装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の、現像剤電界搬送装置であって、
前記中間電極は、
複数の前記搬送電極に対する前記多相交流電圧の印加状態を前記現像剤搬送経路に沿った方向について見た場合の、当該方向における空間的な電位周期をTとすると、
前記現像剤搬送面に最近接する端部である搬送面側端部と、前記現像剤搬送面と、の間隔が、T/2以上となるように配置されたことを特徴とする、現像剤電界搬送装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載の、現像剤電界搬送装置であって、
前記中間電極は、前記現像剤搬送経路と交差する方向に長尺状に架設されているとともに、前記現像剤搬送経路に沿って配列された、複数の長尺部材からなり、
前記開口部は、隣り合う前記長尺部材間の空間によって形成されていることを特徴とする、現像剤電界搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−194306(P2012−194306A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57532(P2011−57532)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】