説明

現像剤容器

【課題】 2軸延伸ブロー容器において、優れた搬送性を有する現像剤容器を提供すること。
【解決手段】 フランジは、現像剤収容体に係合し、少なくとも一部が開口部の外周面を覆う中間円筒部と、中間円筒部端面の現像剤容器の略回転中心に形成され、中間円筒部内径よりも小内径であり、一端部に排出口と他端部に嵌め込み部内へ突出する突出部を備える排出円筒部とを有し、搬送部材は、前記現像剤容器の回転によって現像剤収容体内の現像剤を持ち上げる仕切り壁部と、持ち上げられた現像剤を排出円筒部へ搬送する搬送リブ部とを有しており、仕切り壁部と搬送リブ部は、現像剤を排出円筒部へ受け渡すように、収容部内より突出部端面近傍へ延在する事を特徴とする現像剤容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真技術を利用した画像形成装置の現像装置に用いられる現像剤等の微粉体を収容し、補給するための現像剤容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の複写機やプリンタ等の画像形成装置では微粉末の現像剤が画像形成に使用されている。
【0003】
近年、複写機やプリンタ等の画像形成装置(以下、本体)において、消耗品である現像剤の補給・交換は、現像剤が充填された容器(以下、現像剤容器)を本体内に据え置き、本体が現像剤を必要とするタイミングに応じて、現像剤容器を回転させる事により、現像剤を本体へ補給する方法が採用されている。
【0004】
上述した回転によって現像剤を本体へ補給する現像剤容器において、環境への意識の高まりを受けて、一部を2軸延伸ブロー成形によって形成した現像剤容器(以下、2軸延伸ブロー容器)が近年増加傾向にある。2軸延伸ブロー容器は、従来のように射出成形によって形成された現像剤容器(以下、射出容器)と比較して、使用する樹脂材料が少ない点で環境負荷を低減できるメリットがある。
【0005】
特許文献1は、現像剤補給容器である円筒状のトナーボトルを2軸延伸ブロー成形法によって製造する方法が開示されてある。
【0006】
ここで、2軸延伸ブロー成形について端的に説明すると、2軸延伸ブロー容器は、まず射出成形によってプリフォームを形成する。続いて、プリフォームを延伸ロッドによって軸線方向へ引き延ばしながら、プリフォームの開口側よりエアを注入し、径方向へも延伸させ、所望の容器形状を形成する。上記手法で形成された2軸延伸ブロー容器は、射出成形によって形成された部分(射出部)と延伸ロッドとエアによって引き伸ばされた部分(ブロー部)に大別される。
【0007】
上述した手法によって形成された2軸延伸ブロー容器は、ブロー部の径が射出部の径よりも大きくなる。また、ブロー部には現像剤容器の回転によって現像剤を搬送する螺旋状リブが形成される事が多い。したがって、2軸延伸ブロー容器の現像剤の排出動作は以下に説明するように行われる。
【0008】
まず、容器の回転により、ブロー部内の現像剤が螺旋状リブにより射出部近傍まで搬送され滞留する。続いて、前記滞留した現像剤をブロー部より射出部へ現像剤を持ち上げ排出口まで搬送する。つまり、ブロー部より射出部へ現像剤を持ち上げ、排出口まで搬送するための搬送手段が必要となる。それを達成する手段として、例えば、現像剤容器の回転に伴ってブロー部の現像剤を持ち上げ、射出部へ搬送する搬送部材が提案されている。
【0009】
ここに記載の現像剤容器によれば、搬送部材に設けられた板状の仕切り壁と仕切り壁に設けられた搬送リブが、ブロー部から開口部を通過し排出口近傍まで延在しており、ブロー部に滞留した現像剤を確実に射出部まで持ち上げ排出口へ搬送する事ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−42626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記した現像剤容器に用いる搬送部材は以下に記す課題を抱えている。例えば、図16を用いてその課題を説明する。図16は、一部にブロー容器を用いた現像剤容器201の先端部の断面図である。図16に示すように、現像剤容器201は、2軸延伸ブロー成形法によって形成された現像剤収容体202と、射出成形法によって形成されたフランジ203と、搬送部材204によって構成される。尚、現像剤収容体202は、射出成形部であるエアを吹き込むための開口部208と、ブロー成形部である収容部209を備えている。ここで、収容部209の内径R1は、開口部208の内径R2よりも大きく、収容部209と開口部208は滑らかなスロープ(以下、肩部)によって繋がっている。尚、肩部の傾斜は当然ながら開口部208の内径R2と収容部209の内径R1によって決定される。また、フランジ203は一部が開口部208の外周面を覆う中間円筒部210と、中間円筒部210の端面の略中央に設けられた排出円筒部205を備えている。尚、排出円筒部205の内径R3は、開口部208の内径R2よりも小さい。また、搬送部材204は現像剤容器201が図中の矢印d方向へ回転することによって、現像剤を持ち上げる仕切り壁207と、持ち上げられた現像剤を排出円筒部205へ搬送する搬送リブ206を備えている。尚、仕切り壁207および搬送リブ206は、収容部209より開口部208を経て、排出円筒部205の端部まで延在している。ここで、現像剤容器201の現像剤の搬送性には、搬送リブ206と肩部が為すスペースEと、搬送リブ206の回転軸に対する傾斜角度βが大きく影響する。例えば、上記構成の場合、一般的に現像剤の搬送量を増加させるためにはスペースEを広く取るが、その際、搬送リブ206の傾斜角度βは鈍化し、現像剤が搬送リブ206を滑る事によって得る搬送力Fが小さくなる。ここで、現像剤は搬送力Fにより、排出円筒部205を通過し排出口211より本体へ供給される。つまり、搬送力Fの低下は排出円筒部205内の現像剤の滞留を引き起こす懸念がある。逆に、現像剤に十分な搬送力Fを与えるために搬送リブ206の傾斜角度βを鋭化すると、スペースEは非常に狭くなり物流や長期の保管により現像剤が閉塞するなどの懸念がある。また、スペースEが狭くなる事により、現像剤の搬送量が低下する等の懸念がある。つまり、従来構成の現像剤容器201においては、本体が求める現像剤の排出量に見合った搬送性を持たせるために、所望の形状を形成することが困難となる場合が多かった。特に現像剤収容体202内の現像剤が少なくなってきた際には、現像剤の搬送性は搬送部材204の形状の影響を大きく受けるため、本体側へ所望の現像剤量を排出することができなくなる等の課題があった。
【0012】
上記課題を解決し、本体の所望の現像剤排出量を満足するために、例えば本体モータの能力を強化し、現像剤容器201の回転速度を増加させ、単位時間あたりの現像剤排出量を増加させていた。また、例えば、本体へ所望の現像剤が排出されるまで画像形成を停止させ、搬送性の低下にともなう現像剤の排出量不足を補っていた。また別の方法としては、本体へ所望の排出量の現像剤が排出されなかった場合、該容器を新品の容器と交換していた。
【0013】
上記した現像剤の排出量不足を補う手法は、使用済みの容器内に残留する現像剤が多い事によるランニングコスト低下の増加や、交換頻度が多くなることによるユーザービリティの低下を招いていた。また、本体の大型化やコスト増加、生産性の低下といった課題を生じており、本体のコンパクト化や環境負荷低減の妨げとなっていた。したがって、上述したように現像剤収容体やフランジの形状の制約を受けても優れた搬送性を有する搬送機構を備えた現像剤容器の確立が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本出願に係る第1の発明は、
画像形成装置に着脱自在な、回転する事により現像剤を排出する現像剤容器であって、前記現像剤容器は、現像剤を収容する現像剤収容体と、前記現像剤収容体の回転によって現像剤を搬送する搬送部材とからなり、前記現像剤収容体は、現像剤を収容する略円筒状の収容部と、前記収容部端面の現像剤容器の略回転中心に設けられ、前記収容部内径よりも小内径の中間円筒部と、前記中間円筒部端面の該回転中心に設けられ、前記中間円筒部内径よりも小内径の排出円筒部を有し、前記搬送部材は、前記現像剤容器の回転によって前記収容部および前記中間円筒部内の現像剤を持ち上げる仕切り壁と、持ち上げられた現像剤を前記排出円筒部へ搬送する搬送リブを有しており、
前記排出円筒部は、一端部に排出口と他端部に前記中間円筒部内へ突出する突出部を有し、前記仕切り壁と前記搬送リブは、現像剤を前記排出円筒部へ受け渡すように、前記収容部内より前記突出部端面近傍へ延在する事を特徴とする。
【0015】
本出願に係る第2の発明は、
画像形成装置に着脱自在な、回転することによって現像剤を排出する現像剤容器であって、
前記現像剤容器は、2軸延伸ブロー成形法によって形成される現像剤を収容する現像剤収容体と、
射出成形法によって形成されるフランジと、前記現像剤収容体に相対回転不可に組み込まれる搬送部材とからなり、前記現像剤収容体は、ブローするためのエアを吹き込む開口が形成された開口部と、前記エアおよび延伸ロッドによって延伸される前記開口部内径よりも大内径の収容部とを有し、
前記フランジは、前記現像剤収容体に係合し、少なくとも一部が前記開口部の外周面を覆う中間円筒部と、前記中間円筒部端面の前記現像剤容器の略回転中心に形成され、前記中間円筒部内径よりも小内径であり、一端部に排出口と他端部に前記嵌め込み部内へ突出する突出部を備える排出円筒部とを有し、前記搬送部材は、前記現像剤容器の回転によって前記現像剤収容体内の現像剤を持ち上げる仕切り壁と、持ち上げられた現像剤を前記排出円筒部へ搬送する搬送リブとを有しており、前記仕切り壁と前記搬送リブは、現像剤を前記排出円筒部へ受け渡すように、前記収容部内より前記突出部端面近傍へ延在する事を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上、説明したように、本発明によれば搬送性に優れた現像剤容器を提供する事ができる。
【0017】
またそれにより、画像形成装置本体の、コンパクト化や環境負荷低減に貢献する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る画像形成装置本体。
【図2】本発明に係る現像剤容器。
【図3】本発明に係る現像剤収容体。
【図4】本発明に係るフランジ。
【図5】本発明に係る搬送部材。
【図6】本発明に係るキャップ。
【図7】本発明に係る現像剤容器の先端部。
【図8】本発明に係る現像剤容器。
【図9】本発明に係る現像剤容器の排出動作1。
【図10】本発明に係る現像剤容器の排出動作2。
【図11】本発明に係る現像剤容器の排出動作3。
【図12】比較例1に係る現像剤容器。
【図13】比較例2に係る現像剤容器。
【図14】比較例3に係る現像剤容器。
【図15】比較例4に係る現像剤容器。
【図16】従来技術に係る現像剤容器。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本実施例における画像形成装置本体(以下、本体)および、現像剤容器について、図面に則して説明する。
【実施例1】
【0020】
(画像形成装置)
本発明に用いた画像形成装置本体を図1に示す。図1に示すように本発明に係る本体101は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローからなる4色のフルカラー機であり、各色毎に対応する容器ハウジング102A〜102D、感光体103A〜103D、現像器104A〜104D、レーザー光路105A〜105Dを備えている。また、紙媒体106、中間転写体107および定着器108を備えている。
【0021】
以下に、本体の動作プロセスを簡略化して記す。
【0022】
PCなどから所望の文書やデザイン等の画像信号が発信される。次に、その信号に応じて、帯電された感光体103A〜103Dがレーザーにより照射され、帯電部と非帯電部に区別される(以下、静電潜像)。続いて感光体103A〜103Dに生じた静電潜像に応じて、現像器104A〜104D内の現像剤が感光体103A〜103Dへ現像される。このとき、現像により使用した現像剤の不足を補うため容器ハウジング102A〜102Dに設けられた不図示の現像剤ホッパーより現像剤が現像器104A〜104Dへ供給される。
【0023】
感光体103A〜103Dに現像された現像剤は一旦中間転写体107に転写される。さらに、中間転写体107に転写された現像剤は紙媒体106に再度、転写される。その後、紙媒体106は定着器108に搬送され、定着器108が発生する熱によって紙媒体106上の現像剤が融解し紙媒体106に定着し、所望の成果物として本体101外へ排紙される。
【0024】
(現像剤容器-概略)
図2を用いて、本発明に用いた現像剤容器1の概略を説明する。尚、図2に示した現像剤容器1は説明の便宜上、内部の様子がわかるように現像剤収容体2、フランジ3の一部を削除した図となっている。
【0025】
図2に示すように、現像剤容器1は現像剤収容体2、フランジ3、搬送部材4、キャップ5、シール部材6からなり、前記容器ハウジング102A〜102Dに着脱自在である。
【0026】
以下に各部品の詳細について説明する。
【0027】
(現像剤収容体)
図3に現像剤収容体2の斜視図を示す。現像剤収容体2は2軸延伸ブロー成形法によって形成され、図3に示すように、一端に射出成形によって成形されエアを吹き込む開口部7と、前記エアと延伸ロッドによって延伸ブローされた前記開口部7よりも大径の収容部8によって構成される。尚、前記収容部8には、搬送突起部9が設けられている。また、開口部7の他端には現像剤容器1をユーザーが持つための把持部10が設けられている。さらに、開口部7と収容部8は滑らかな傾斜部11(以下、肩部と記す)によってつながっている。また、搬送突起部9は、現像剤収容体2が図3に示す矢印S方向に回転する事により、収容部3内の現像剤を矢印X方向へ搬送する。尚、搬送された現像剤は肩部11近傍の滞留部18に滞留する。
【0028】
(フランジ)
図4にフランジ3を示す。図4(a)は斜視図、図4(b)は断面図である。
【0029】
図4(a)に示すように、フランジ3は主として排出円筒部15と、前記排出円筒部15よりも大径の嵌め込み部13とで構成される。嵌め込み部13の最も径の大きい部分の外周には非互換突起14が設けられている。図4(b)に示すように、排出円筒部15は外部の一端に排出口12を備え、他端には嵌めこみ部13の端面の略中心を貫通して嵌め込み部13内へ突出した突出部17を備えている。また、排出円筒部15は現像剤収容体2の開口部7よりも小径である。さらに、嵌め込み部13の内部の端面側にはシール部材6が挿入される挿入部16を備えている。さらに、排出円筒部15の内周面には後述するキャップ5の伝達部25より本体の駆動力を受ける駆動受けリブ26が設けられている。
【0030】
(搬送部材)
次に図5と図7を用いて搬送部材4について説明する。図5(a)は斜視図、図5(b)は正面図である。
【0031】
搬送部材4は現像剤収容体2に対して、相対回転不可となるように組込まれている。したがって、後述するが、現像剤収容体2が図2に示した矢印S方向へ回転することによって、搬送部材4も同様に回転する。その際、図5(b)に示すように、図7に示した滞留部18に滞留した現像剤を持ち上げるための仕切り壁19と、持ち上げた現像剤を、排出円筒部15の突出部17へ搬送する搬送リブ20を搬送部材4は備えている。また、仕切り壁19の一部にはスリット21が形成されており、搬送リブ20が図5(b)に示す矢印c方向へ弾性変形可能となっている。さらに、仕切り壁19と搬送リブ20は、図7に示すように、現像剤収容体2の滞留部18からフランジ3の突出部17近傍まで延在している。尚、図5(b)に示すように、本発明の搬送リブ20の軸線Pに対する傾斜角度αは40度とした。
【0032】
尚、本発明の搬送部材4の搬送リブ20の角度αを40度としたが、該角度は本体が所望とする現像剤量によって適宜設定される。また、搬送部材4の材料としては、ポリプロピレンやポリアセタールといった弾性変形可能な樹脂を採用することが望ましい。
【0033】
(キャップ)
図6にキャップ5を示す。図6に示すようにキャップ5はフランジ3の排出円筒部15の内周面に当接し、現像剤の漏れを防ぐシール部22と、不図示の本体駆動部と係合する係止爪23、前記係合関係を解除する解除爪24、本体駆動部の駆動力をフランジ3の駆動受けリブ26へ伝達する伝達部25からなる。
【0034】
(現像剤容器-組立方法)
続いて、上述した各部品から成る現像剤容器1について、図2と図7を用いてさらに詳しく説明する。図7は、図2に示した現像剤容器1の先端部を拡大した正面図であり、現像剤収容体2およびフランジ3を説明の便宜上、部分的に形状を削除している。
【0035】
図2に示すように現像剤容器1は、現像剤収容体2の内部に搬送部材4を備えている。また、現像剤収容体2とフランジ3は、フランジ3の嵌め込み部13の一部が現像剤収容体2の開口部7および滞留部18近傍の外周を覆うように、シール部材6を介して接合されている。ここで、先ほど説明したが、図7に示すように搬送部材4の搬送リブ20はフランジ3の排出円筒部15の突出部17近傍まで延在している。
【0036】
また、シール材6の圧縮量は、シール性を考慮し、約35〜50%とし、現像剤収容体2とフランジ3の接合部を密閉する構成とした。
【0037】
(開閉動作)
続いて、本体内での現像剤容器1の動作について図8を用いて説明する。図8は本実施例で用いた現像剤容器1の本体内でキャップ5が排出口12を開封した状態の斜視図である。
【0038】
先ほど述べたように、フランジ3の排出円筒部15にはキャップ5がはめ込まれており、排出円筒部15の内周面にキャップ5のシール部22が当接することにより、排出口12を密閉している。現像剤容器1が本体へ装着された際、不図示の本体駆動部とキャップ5の係合爪23が係合し、キャップ5を図8に示す矢印X方向へ引き抜くことにより、排出口12は開封される。尚、現像剤容器1内の現像剤が少なくなり、現像剤容器1を交換する際には、前記した本体駆動部によってキャップ5が図8に示す矢印Y方向へ押される事により、排出口12が再封止される。また、現像剤容器1は上記したキャップ5の開封、再封止動作の際は本体内でのX方向、Y方向の位置を、本体に備えられた不図示の位置決め手段によって固定されている。尚、本実施例では現像剤容器1を固定した状態で、キャップ5を開封・封止すると記したが、逆にキャップ5を固定し現像剤容器1を図8に示した矢印X、矢印Y方向へ変位させてもよい。この場合、排出口12を開封するためには、キャップ5を固定し、現像剤容器1を本体に備えた不図示の容器移動機構によって図8に示す矢印Y方向へ変位させ、同様に、排出口12を封止するためには、キャップ5を固定し現像剤容器1を前記容器移動機構によって矢印X方向へ変位させる。
【0039】
(現像剤排出動作)
続いて、本体内での現像剤容器1の現像剤排出動作について図8から図11を用いて詳細に記す。図9から図11は現像剤容器1の本体内での排出動作を示す図であり、図9(a)、図10(a)、図11(a)は現像剤容器1の先端部を示す図である。また、図9(b)、図10(b)、図11(b)は図9(a)、図10(a)、図11(a)に示したg-g断面から見た図である。
【0040】
図9(a)に示す矢印S方向に現像剤容器1が回転すると、現像剤収容体2の滞留部18に搬送された現像剤が、図9(b)に示すように搬送部材4の仕切り壁19によって持ち上げられる。さらに現像剤容器1が図10(a)に示すように矢印S方向へ回転すると、図10(b)に示すように、現像剤は仕切り壁19によってさらに持ち上げられる。また、さらに現像剤容器1が図11(a)に示すように矢印S方向へ回転すると、図11(b)に示すように、仕切り壁19に持ち上げられた現像剤は搬送リブ20へ受け渡され、搬送リブ20に沿って図11(a)に示す矢印f方向へ、排出円筒部15端部まで搬送される。そのため、搬送リブ20によって搬送された現像剤は確実に排出円筒部15内へ搬送され、その後、搬送リブ20を滑ることによって得た搬送力にて、排出円筒部15を通過し、排出口12より装置本体へ供給される。つまり、搬送リブ20の角度が十分でなければ、排出円筒部15内を通過する事が困難となる。本実施例では搬送部材4の角度を40度とし、滞留部18の現像剤を持ち上げる仕切り壁19が十分大きく設けられており、装置本体が必要とする現像剤を過不足なく排出する事ができる。
【0041】
(検証)
続いて、本実施例にて説明した現像剤容器1を用いて実際に搬送性評価を実施した。搬送性評価を実施する前の現像剤容器1の条件は、現像剤容器1内に約800gの現像剤を充填し、現像剤容器1の長手方向を水平にして強制的に振動を加える事により内部の現像剤の粉面を安定させ、現像剤の搬送に対して不利の状況とした。また、該評価を終えるタイミングは、本体が所望する単位時間あたりの現像剤排出量を満足できなくなる状態とした。尚、本評価では前記振動の時間は本評価では15分、本体が所望する単位時間あたりの現像剤排出量を0.4g/sである。また、現像剤容器1の回転速度は40rpmとした。
【0042】
上記した条件にて、本実施例の現像剤容器1の搬送性を評価したところ、初期から滞りなく排出し、末期まで本体が所望する排出量を十分満足する搬送性能を得る事が確認された。また、評価終了後の現像剤容器1内に残留した現像剤は初期充填量の約1.7%であった。尚、残留した現像剤は、その大半が現像剤収容体2の内面への付着であり、滞留部18にはほとんど残っていなかった。
【0043】
(比較例1)
比較例1として以下に説明する現像剤容器1を用いて評価を実施した。図12(a)に評価に用いた現像剤容器1の先端部の断面図を示す。尚、図12(b)は比較例1との比較のために示した実施例の現像剤容器1の先端部の簡易的な断面図である。
【0044】
図12(a)に示すように、比較例1で用いた現像剤容器は、実施例と同様に突出部17を設ける構成とした。ただし、実施例の現像剤容器1よりも搬送性の更なる向上を狙って、突出部17の長さLだけ、排出円筒部15の突出部17内に搬送リブ20を侵入させている。また、図12(b)に示す本実施例で採用した構成と比較して明らかなように、収容部8と搬送リブ20が為すスペースMや排出円筒部15と搬送リブ20が為すスペースNが狭くなっている。尚、搬送部材4や現像剤収容体2の形状は、実施例の構成と同様である。また、搬送性評価条件は、実施例で説明したそれと同様である。
【0045】
比較例1の現像剤容器1を用いた場合、初期から現像剤がほとんど排出されなかった。そこで、現像剤容器1の内部を確認したところ、前記スペースMや前記スペースNで、現像剤のブロッキングによる閉塞が確認された。これは、前記スペースMや前記スペースNが狭くなったために、現像剤の撹拌スペースが減少したためだと考えられる。
【0046】
次に、前記現像剤容器1を振って内部の現像剤を解し、再度搬送性評価を実施した。すると、現像剤は滞りなく排出されたが、実施例と比較して現像剤の排出量が減少している事が確認された。尚、評価終了後の現像剤容器1内に残留した現像剤は初期充填量の約5.0%であった。
【0047】
これは、前記スペースMが狭くなった事により、搬送部材4で搬送される現像剤が減少したためだと考えられる。
【0048】
(比較例2)
比較例2として以下に説明する現像剤容器1を用いて評価を実施した。図13に評価に用いた現像剤容器1の先端部の断面図を示す。
【0049】
図13に示すように、比較例2としては本実施例の特徴である、排出円筒部15をフランジの内面まで突出させないようにした。尚、搬送部材4や現像剤収容体2の形状は、実施例で説明した構成と同様である。搬送性評価条件は、実施例で説明したそれと同様である。
【0050】
比較例2の現像剤容器1を用いた場合、初期から中期にかけては実施例1の現像剤容器1と搬送性能の差は確認されなかった。しかしながら現像剤容器1内の現像剤量が減少してきた末期において、急激に搬送性の低下が確認され、評価終了後の現像剤容器1内に残留した現像剤は初期充填量の約10.0%であった。該現像剤容器1内を観察したところ、図13に示す滞留部18付近に現像剤が残留している様子が確認された。これは、排出円筒部15が内部に突出していないため、搬送部材4の搬送リブ20と排出円筒部15の端部の大きなクリアランスができるため、搬送リブ20によって搬送力を得た現像剤が排出円筒部15へ効率よく受け渡されないと考えられる。そのため、排出末期の急激な搬送性の低下につながったと考えられる。
【0051】
(比較例3)
比較例3として以下に説明する現像剤容器1を用いて評価を実施した。図14に評価に用いた現像剤容器1の先端部の断面図を示す。
【0052】
図14に示すように、比較例3で用いた現像剤容器1は比較例2と同様に排出円筒部15には突出部17が設けられていない。そこで、比較例2で生じた排出円筒部15と搬送リブ20のクリアランスを無くすために、搬送リブ20自体の傾斜角度を鈍化させ、排出円筒部15の端部に搬送リブ20を延在させている。具体的には、図5(b)に示す実施例で用いた搬送部材において、軸Pと搬送リブ20との角度αが40度であったのに対して、比較例2の該角度は35度となった。尚、その他の現像剤容器1の構成については実施例、比較例1、比較例2と同様である。また、搬送性評価条件は、実施例で説明したそれと同様である。
【0053】
比較例3の現像剤容器1を用いた場合、実施例および比較例2と比較して初期の搬送性に有意差は確認されなかったが、排出中期から末期にかけて搬送性が低下する傾向にあった。また、先ほどと同様に評価終了後に現像剤容器1に残留した現像剤量を測定したところ、初期重量の約6.6%であった。これは、搬送リブ20の角度を鈍化させた事によって、現像剤が得る搬送力が低下し、現像剤が排出円筒部15内をスムーズに搬送されなくなったためと考えられる。
【0054】
(比較例4)
続いて、比較例4として以下に説明する現像剤容器1を用いて評価を実施した。図15に評価に用いた現像剤容器1の先端部の断面図を示す。
【0055】
図15に示すように、比較例4で用いた現像剤容器1は比較例2、比較例3と同様に排出円筒部15には突出部17が設けられていない。また、比較例2で搬送性低下の要因であった、排出円筒部15と搬送リブ20のクリアランスをなくし、かつ比較例3で搬送性低下の要因であった搬送リブ20の角度の鈍化を解消し、実施例と同様に40度とした。したがって、搬送部材4の仕切り壁19と滞留部18とが為すスペースWは実施例よりも狭くなっている。尚、その他の現像剤容器1の構成については実施例、比較例2、比較例3と同様である。また、搬送性評価条件は、実施例で説明したそれと同様である。
【0056】
比較例4の現像剤容器1を用いた場合、排出初期において、現像剤が排出されなかった。そこで、現像剤容器1の内部を確認したところ、図15に示すように搬送部材4と滞留部18とが為すスペースW付近にて、現像剤のブロッキングによる閉塞が確認された。これは、該スペースWが実施例に示した現像剤容器1よりも狭くなったことにより、現像剤の撹拌スペースが減少したためだと考えられる。続いて、先ほど現像剤が閉塞した現像剤容器1を振って内部の現像剤を解した後、再度評価したが、実施例と比較して現像剤の排出量が少ない事が確認された。これについても、該スペースWが狭くなった事により、搬送部材4の現像剤の搬送量が減ったためだと考えられる。尚、評価終了後の現像剤容器1内に残留した現像剤は初期充填量の約7.0%であった。
【0057】
以上、説明してきた実施例、比較例1、比較例2、比較例3、比較例4の搬送性評価結果の一覧を表1に示す。表1より、実施例の現像剤容器は比較例1、比較例2、比較例3、比較例4のいずれの現像剤容器1と比較しても、初期から末期にかけて搬送性能が優位である事が確認できた。また、評価後の残留した現像剤量はもっとも少ないことが確認された。すなわち、本実施例の現像剤容器1は排出円筒部15の端部にフランジ3内に突出させる突出部17を設け、搬送部材4を収容部8から突出部17の端面近傍まで延在させる事により、比較例1、比較例2、比較例3、比較例4の構成よりも搬送性に優れた現像剤容器1を提供することが可能であることが確認された。
【0058】
【表1】

【符号の説明】
【0059】
1 現像剤容器
2 現像剤収容体
3 フランジ
4 搬送部材
5 キャップ
6 シール部材
7 開口部
8 収容部
9 搬送突起部
10 把持部
11 肩部
12 排出口
13 嵌め込み部
14 非互換突起
15 排出円筒部
16 シール挿入部
17 突出部
18 滞留部
19 仕切り壁
20 搬送リブ
21 スリット
22 シール部
23 係合爪
24 解除爪
25 伝達部
26 駆動受けリブ
101 画像形成装置
102 容器ハウジング
103 感光体
104 現像器
105 レーザー光
106 紙
107 中間転写体
108 定着器
109 駆動モータ
201 現像剤容器
202 現像剤収容体
203 フランジ
204 搬送部材
205 排出円筒部
206 搬送リブ
207 仕切り壁
208 開口部
209 収容部
210 中間円筒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に着脱自在な、回転する事により現像剤を排出する現像剤容器であって、
前記現像剤容器は、現像剤を収容する現像剤収容体と、前記現像剤収容体の回転によって現像剤を搬送する搬送部材とからなり、
前記現像剤収容体は、現像剤を収容する円筒状の収容部と、前記収容部端面の現像剤容器の回転中心に設けられ、前記収容部内径よりも小内径の中間円筒部と、前記中間円筒部端面の該回転中心に設けられ、前記中間円筒部内径よりも小内径の排出円筒部を有し、
前記搬送部材は、前記現像剤容器の回転によって前記収容部および前記中間円筒部内の現像剤を持ち上げる仕切り壁部と、持ち上げられた現像剤を前記排出円筒部へ搬送する搬送リブ部を有しており、
前記排出円筒部は、一端部に排出口と他端部に前記中間円筒部内へ突出する突出部を有し、前記仕切り壁部と前記搬送リブ部は、現像剤を前記排出円筒部へ受け渡すように、前記収容部内より前記突出部端面近傍へ延在する事を特徴とする現像剤容器。
【請求項2】
画像形成装置に着脱自在な、回転することによって現像剤を排出する現像剤容器であって、
前記現像剤容器は、
2軸延伸ブロー成形法によって形成される現像剤を収容する現像剤収容体と、
射出成形法によって形成されるフランジと、
前記現像剤収容体に相対回転不可に組み込まれる搬送部材とからなり、
前記現像剤収容体は、
ブローするためのエアを吹き込む開口が形成された開口部と、
前記エアおよび延伸ロッドによって延伸される前記開口部内径よりも大内径の収容部とを有し、
前記フランジは、前記現像剤収容体に係合し、
少なくとも一部が前記開口部の外周面を覆う中間円筒部と、
前記中間円筒部端面の前記現像剤容器の回転中心に形成され、前記中間円筒部内径よりも小内径であり、一端部に排出口と他端部に前記嵌め込み部内へ突出する突出部を備える排出円筒部とを有し、
前記搬送部材は、
前記現像剤容器の回転によって前記現像剤収容体内の現像剤を持ち上げる仕切り壁部と、
持ち上げられた現像剤を前記排出円筒部へ搬送する搬送リブ部とを有しており、
前記仕切り壁部と前記搬送リブ部は、現像剤を前記排出円筒部へ受け渡すように、前記収容部内より前記突出部端面近傍へ延在する事を特徴とする現像剤容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−241468(P2010−241468A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92953(P2009−92953)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】