説明

現像剤担持体、現像装置、及び画像形成装置

【課題】高信頼かつ高寿命な現像剤担持体を提供する。
【解決手段】この現像剤担持体50は、非接触現像方式に用いる現像剤担持体であって、円柱または円筒状の形状を有するローラ1と、このローラ1表面を覆うように形成した第1の電極2と、この第1の電極2の上層に形成した第2の電極3と、を備え、第2の電極3は、絶縁膜5で被覆したワイヤ(線状導体)4により構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤担持体に関し、電界により現像剤あるいはトナーをホッピングさせるための電極を有する現像剤担持体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式によって画像形成を行なう現像方式においては、感光体などの潜像が形成された部材に現像剤あるいはトナー(以下、単に現像剤と呼ぶ)を供給して現像する際に、現像剤あるいはトナーの担持体(以下、単に現像剤担持体と呼ぶ)上の現像剤と潜像が形成された部材とを直接接触させることなく行う方式が、いわゆる非接触現像方式として知られている。
例えば特許文献1には、担持体を駆動させて現像剤を潜像担持体に搬送する現像装置において、現像剤担持体によって搬送される現像剤を予備荷電する予備荷電手段を設けると共に、この現像剤担持体上に電界カーテンを作用させる電界カーテン発生手段を設けたことを特徴とする現像装置について開示されている。
また特許文献2には、互いに絶縁された状態で所定方向に並ぶ複数の電極を有する電極パターンを備えた表面移動可能な現像剤担持体を具備し、複数の電極における所定の電極を起点にした奇数番目の電極の集合体である奇数番目電極群と、偶数番目の電極の集合体である偶数番目電極群との間に電位差を生起せしめることで、現像剤担持体の表面上の現像剤を電極間で移動させながら、現像剤担持体の表面移動によって潜像担持体との対向位置まで搬送して潜像担持体上の潜像に付着させる現像装置において、奇数番目の電極と偶数番目の電極とにそれぞれ互いに位相ズレしたパルス電圧を印加することで、現像剤担持体の表面上の現像剤を電極間で移動させるようにした現像装置について開示されている。
更には、互いに異なる電圧が印加される複数種類の電極部材を備え、複数種類の電極部材を外周面法線方向で互いに異なる位置に配置し、各電極部材間に絶縁層を介在させた、外周面に担持された現像剤を現像領域へ搬送するための現像剤担持体も提案されている。
【0003】
これら提案されている装置を実現するためには、現像剤担持体として、表面に微細ピッチで電極パターンが形成されたローラ状部品が必要となる。このローラ状部品の特に電極パターンの形成が重要であり、実現可能性のある技術としてスクリーン印刷に代表される有版印刷法がある。これは、電極パターンが形成された版を用いて印刷用インクの代わりに導電性ペーストを基板に印刷した後、加熱焼成を行うことにより電極パターンとするものである。有版印刷法は版を必要とするため、少量多品種の生産には向かないが、大量生産では低コスト化が見込める方法である。
また、他の技術としてはインクジェット法がある。これは、インクジェットヘッドを用いて導電性インクを基板にオンデマンドに吐出、パターン形成した後、加熱焼成を行うことにより電極パターンとするものであり、マスクレスのため少量多品種の生産には向いている。
また他の技術としていわゆるフォトリソグラフィーを用いたパターン形成法がある。これは、基材表面に形成した感光性材料に選択的に露光を行うことでパターン形成し、このパターン開口に従って基材表面に予め形成されている金属膜の除去を行うことで、または、このパターン開口に従って金属膜を堆積することにより電極パターンを形成する方法である。微細で高精度なパターン形成が可能な方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1及び特許文献2に開示されている現像装置を構成する現像剤担持体は、いずれも同一表面上に2相の電極を有している。そのために、隣接するいずれの電極間で短絡が生じても、すべての電極間で電位差が生じなくなり、現像剤をホッピングさせることができなくなるという問題がある。また、電極は、いずれも現像剤担持体の長手方向に長く伸びたパターンであり、両端からそれぞれ異なる相の電源に接続されているために、いずれの電極が断線しても、その近傍においては電圧がかからず現像剤をホッピングさせることができなくなるという問題がある。
また、2相の電極が絶縁層により分離された異なる面に形成された構成では、同一平面内の断線や短絡に対して強い構造となっている。しかしながら、電極パターンをフォトレジスト法、印刷工法、インクジェット工法などにより作成する必要がありコストが高くなるという問題がある。
【0005】
また、ローラ状部材表面に微細ピッチで電極を形成する技術について、有版印刷により導電性ペーストを印刷した後に加熱焼成を行う方法においては、ローラ状部材表面への印刷であり、ローラ個体間の周長(直径や形状)の僅かな差が版により吸収することができないために、特にローラ周方向のつなぎ部においてパターン精度が悪くなるという問題がある。
また、インクジェット法においては、その原理上インクドットを連結してパターン形成を行うために、微細パターンに対しては線幅の均一性を確保することが難しく、場合によっては不連続となり断線が生じるという問題がある。
また、有版印刷法、インクジェット法に用いる導電性ペーストや導電性インクには、金属粒子表面が絶縁性物質で表面処理を施された材料を用いている。従って、十分な電気伝導性を得るためには、金属粒子表面の絶縁性物質を除去する必要があり、そのためには最低でも200℃以上での加熱焼成処理が必要である。しかしながら、絶縁層にこの温度に対する耐性がある高分子材料用いると非常に高価なものになってしまうという問題がある。
【0006】
また、フォトリソグラフィーを用いたパターン形成法においては、感光性材料に露光を行う際にマスクを用いると有版印刷と同様に周方向つなぎ部においてパターン精度が悪くなるという問題がある。パターンとなる金属膜は、その下地が絶縁層であることから一般的には蒸着やスパッタリングなどの真空成膜を用いるが、処理に要する時間が長いという問題がある。また、ローラのような非平面上に均一に成膜することが難しく装置も大掛かりなものが必要となるという問題がある。
また、電極パターンの高さ、もしくは厚さが異なると、ローラの第1電極から保護層表面までの厚さが変化し、現像中に、トナーやブレードなどとの物理的接触により、表層がはげたり、繰り返しの圧力変動によって、電極パターンに機械的負荷が加わり、特性が劣化したり、トナーが表面の高さ分布に従って、ローラに対流したりして均一な特性を得ることが難しくなるという問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、非接触現像方式に用いる電極パターンを有する現像剤担持体において、2相の電極を異なる面上に形成しても少ない電力で現像剤をホッピングさせることができ、高信頼かつ高寿命な現像剤あるいはトナー担持体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、非接触現像方式に用いる現像剤担持体であって、ローラと、該ローラ表面に形成した第1の電極と、該第1の電極の上層に形成した第2の電極と、を備え、前記第2の電極は、絶縁膜で被覆した線状導体から構成されていることを特徴とする。
請求項2は、非接触現像方式に用いる現像剤の担持体であって、ローラと、該ローラ表面に形成した第1の電極と、該第1の電極表面に形成した絶縁層と、該絶縁層を介して前記第1の電極の上層に形成した第2の電極と、を備え、前記第2の電極は、線状導体により構成されていることを特徴とする。
請求項3は、前記第2の電極は、少なくとも1以上の前記線状導体を前記ローラの一方の端部から他方の端部に向かって螺旋状又は直線状に配設した構成を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項4は、前記第1の電極表面に前記絶縁層により前記第2の電極を配設する溝を形成したことを特徴とする。
請求項5は、前記溝に配設した前記第2の電極の最表層に保護層を形成したことを特徴とする。
請求項6は、前記絶縁層に前記線状導体の厚み以上の高さを有する複数本の絶縁壁を所定の間隔を隔てて並行に突設し、該各絶縁壁間の空間内に前記線状導体を収納するように構成したことを特徴とする。
請求項7は、前記各絶縁壁の最表層間に跨って前記空間を塞ぐための保護層を形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項8は、非接触現像方式に用いる現像剤担持体であって、ローラと、該ローラ表面に所定の間隔を隔てて突設された複数本の第1の絶縁壁と、該各第1の絶縁壁間に形成される第1の空間領域に収納される線状導体からなる第1の電極と、前記各第1の絶縁壁の最表層間に跨って前記第1の空間領域を塞ぐために配置された第2の絶縁層と、該第2の絶縁層表面に所定の間隔を隔てて突設された複数本の第2の絶縁壁と、該各第2の絶縁壁間に形成される第2の空間領域に収納される線状導体からなる第2の電極と、該第2の絶縁壁の最表層間に跨って前記第2の空間領域を塞ぐために配置された第3の絶縁層と、を備えたことを特徴とする。
請求項9は、前記第1の電極と前記第2の電極は、周方向位置が一致していることを特徴とする。
【0010】
請求項10は、前記第1の空間領域及び前記第2の空間領域を周方向位置をずらして交互に配置し、前記第1の電極及び前記第2の電極を前記第1及び第2の空間領域にそれぞれ収納したことを特徴とする。
請求項11は、前記第1の電極及び前記第2の電極を絶縁膜で被覆した線状導体により構成し、前記第1の電極及び前記第2の電極を周方向位置をずらして交互に積層して配設したことを特徴とする。
請求項12は、前記絶縁部材は、レジスト、光硬化樹脂、熱硬化樹脂、又は熱可塑性樹脂のいずれかで構成されることを特徴とする。
請求項13は、現像装置が、請求項1乃至12の何れか一項に記載の現像剤担持体を備えたことを特徴とする。
請求項14は、画像形成装置が、請求項13に記載の現像装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電極をワイヤにすることで、フォトレジスト工法やインクジェット工法、プリント工法などに比べてローコストかつ耐久性の高い、現像剤あるいはトナーの担持体を提供することができる。
また、電極をワイヤにすることで、フォトレジスト工法やインクジェット工法、プリント工法に比べてローコストかつ耐久性の高く、また絶縁膜で絶縁性を確保できるので、絶縁材料を形成する行程を削減した生産性の高い現像剤あるいはトナーの担持体を提供することができる。
また、第1の電極を金属製ローラ、またはローラ面への金属膜の塗布、金属膜の蒸着、金属膜の印刷をすることなく形成できるので低コストである。また、第1の電極と第2の電極の部材を共通化できるので生産コストを低減することができる。更にはローラ部材を安価な樹脂材料で構成することもできる。
また、絶縁材料が無いため誘電率が下がり、また第1と第2の電極を近接させることで全体の静電容量を下げることができるので、比較的安価な電源ユニットで担持体を駆動させることができる。
また、レジスト、光硬化樹脂、熱硬化樹脂、又は熱可塑性樹脂の材料を用いることにより、比較的簡便に溝パターンなど任意の形状を絶縁材料に加工することができる。
また、溝パターンを用いることで、ワイヤをローラに巻き付ける際に高速かつ安定して規則正しい間隔で螺旋状に巻き付けることができる。また、ワイヤの径とほぼ同じ厚さの絶縁材料を用いれば、最表層をオーバーコートしたときの表面を滑らかにすることができ、現像剤やトナーを安定して供給し、長寿命の担持体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るトナー担持体の構成を示す図である。
【図2】図1のトナー担持体のA部拡大図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るトナー担持体の構成を示す図である。
【図4】図3のトナー担持体のB部拡大図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るトナー担持体の構成を示す図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係るトナー担持体の構成を示す図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係るトナー担持体の構成を示す図である。
【図8】本発明の第6の実施形態に係るトナー担持体の構成を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るデジタル複写機の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の第1の実施形態に係るトナー担持体の構成を示す図である。図1(a)は側面図、図1(b)は正面図である。このトナー担持体50は、非接触現像方式に用いる現像剤担持体であって、導電性を有する円管状のローラ1と、ローラ1の表面を電極とした第1の電極2と、この第1の電極2の上層に形成した第2の電極3と、を備え、第2の電極3は、絶縁膜5で被覆したワイヤ(線状導体)4から構成されている。
【0014】
図2は図1のトナー担持体のA部拡大図である。ローラ1の表面に、ワイヤ4の表面を絶縁膜5により被覆した第2の電極(線状電極)3を配列する。この第2の電極3は、第1の電極2の表面に、第1の電極2の一部が露出するように螺旋状に巻き回して形成される。
即ち、実施形態1では、第2の電極3として絶縁被覆されたワイヤ4を用いることにより、第1の電極2と第2の電極3間に別の絶縁材料を形成する必要がなくなり、部品コスト並びに製造コストを低減することができる。
このトナーの担持体50は、円柱または円筒状のローラ1の表面にローラ1の軸方向に直径5μmから150μmの絶縁被覆されたワイヤ4を、20μmから500μmの間隔で1本あるいは複数本を規則的に螺旋状に巻き付けたものである。
このローラ1はアルミやステンレスなどの金属で構成したり、樹脂など絶縁体をベース材にして表面に金属をコートして構成することができる。また絶縁被覆されたワイヤ4は、銅または銅合金を用いることが多いが、十分な導電性を確保できればアルミやニッケル、ステンレスなど、またはそれらの合金でも構わない。また、絶縁被覆5はローラ1とワイヤ4間の絶縁性が確保できれば材質は問わない。これらの構成によると、ワイヤ4で電極を構成することで、電極自体の機械的強度が向上するため部品寿命を長期化することができる。
【0015】
また、本実施形態では、ローラ1を金属等の導体で構成しているため、ローラ1の表面に特に電極を積層する必要はなく、ローラ1の表面を第1の電極2とすることができる。そして、絶縁被覆されたワイヤ4は第2の電極3となる。このように構成した第1の電極2と第2の電極3間に電位差を生じさせると、両極間に電界が発生する。現像剤またはトナーはこの電界によって帯電し、また電界強度に従って移動したり、反発して飛ばされたりする。このようなトナーの挙動を利用して現像する。
また、電位差を効率的に発生させるためには直流よりも交流の方が望ましい。ここで、第2の電極3に矩形波もしくは正弦波の交流電圧を印加し、第1の電極2をアースに接続し、もしくは直流電圧を印加すると、2つの電極間に電位差を生じさせることができる。第1の電極2と第2の電極3の構成を逆にしても構わない。また、第1の電極2をアースし、第2の電極3をグランドレベルを中心に交流を印加すると効率的である。また第1の電極2に矩形波もしくは正弦波を印加して、第2の電極3には逆位相の矩形波もしくは正弦波の交流電圧を印加する方法でも良い。
【0016】
図3は本発明の第2の実施形態に係るトナー担持体の構成を示す図である。図3(a−1)は側面図、図3(a−2)は正面図、図3(b−1)はワイヤの巻き方を変えた第3の実施形態の側面図、図3(b−2)は正面図である。図3(a−1)、(a−2)に図示するトナー担持体51は、非接触現像方式に用いる現像剤の担持体であって、導電性を有する円管状のローラ11と、ローラ11の表面を電極とした第1の電極14と、この第1の電極14表面に形成した絶縁層13と、この絶縁層13を介して第1の電極14の上層に形成した第2の電極12と、を備え、第2の電極12は、図4に示すワイヤ15により構成されている。そして、第2の電極12は、1本又は複数本のワイヤ15によりローラ11の軸方向に螺旋状に巻き回して構成されている。
図3(b−1)、(b−2)に図示するトナー担持体52は、非接触現像方式に用いる現像剤の担持体であって、導電性を有する円管状のローラ11と、ローラ11の表面を電極とした第1の電極14と、この第1の電極14表面に形成した絶縁層13と、この絶縁層13を介して第1の電極14の上層に形成した第2の電極12と、を備え、第2の電極12は、図4に示すワイヤ15により構成されている。そして、第2の電極12は、1本又は複数本のワイヤ15によりローラ11の軸方向に直線状に構成されている。
【0017】
図4は図3(a−1)のトナー担持体のB部拡大図である。ローラ11の表面に、ワイヤ15により構成された第2の電極12を配列する。この第2の電極12は、絶縁層13の表面に、所定の間隔を空けて第2の電極12を螺旋状に巻き回して構成される。
即ち、円柱または円筒状のローラ11に第1の電極14を形成する。この第1の電極14はローラ11が金属製の場合にはローラ11の金属部表面、ローラ11が樹脂製の場合には、ローラ11の表面に導電膜や金属膜をコートまたは塗布したものでもよい。その第1の電極14の上に電極を覆うように厚さ0.2μmから100μmの絶縁層13でコートする。この絶縁層13の上に、第2の電極12を形成し、この第2の電極12はワイヤ15で構成され、所定の間隔で配列されている。そして絶縁層13をはさんで第1の電極14と第2の電極12が配置される。
【0018】
また、第2の電極12は、ローラ11の軸方向に直径5μmから150μmのワイヤ15を、20μmから500μmの間隔で軸端部から1本あるいは複数を規則的に螺旋状に巻き付けるか、あるいは直線状に配置したものである。一方のローラ軸端から1本のワイヤで螺旋状に他方のローラ軸端まで形成してもよいが、この場合には巻き数が増加するため、ワイヤによる電気配線にコイル成分としての性質の影響が生じ、リアクタンスやインピーダンス、抵抗といった電気特性で不利になる。そのため、複数ワイヤで一方の軸端から同時に螺旋状に、あるいは直線状に配置することで、電気特性を有利な状態にすることができる。このワイヤ15は、銅または銅合金を用いることが多いが、十分な導電性を確保できればアルミやニッケル、ステンレスなど、またはそれらの合金でも構わない。
この2つの電極に電位差を生じさせると電界が発生する。電界は第1の電極14と第2の電極12間で発生するため、絶縁層13の厚さが厚くなりすぎると、電界が弱くなるため、十分な電界を確保するためには電極間の電位差を大きくする必要がある。そのためローラ11に高電圧を印加することになり、ローラ11の耐久性が低下する。また、絶縁材料はレジストや光硬化樹脂、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂などで構成されている。これらの構成によると、ワイヤ15で電極を構成することで、電極自体の機械的強度が向上するため部品寿命を長期化することができる。
【0019】
また、第1の電極14と第2の電極12間に電位差を生じさせると、電界が発生する。トナーはこの電界によって帯電し、また電界強度に従って移動したり、反発して飛ばされたりする。このようなトナーの挙動を利用して非接触に現像するわけである。
また、電位差を効率的に加えるためには直流よりも交流の方が望ましい。ここで、第2の電極12に矩形波もしくは正弦波の交流電圧を印加し、第1の電極14をアースに接続し、もしくは直流電圧を印加すると、2つの電極間に電位差を生じさせることができる。第1の電極14と第2の電極12の構成を逆にしても構わない。また、第1の電極14をアースし、第2の電極12をグランドレベルを中心に交流を印加すると効率的である。また第1の電極14に矩形波もしくは正弦波を印加して、第2の電極12には逆位相の矩形波もしくはサイン波の交流電圧を印加する方法でも良い。
【0020】
図5は本発明の第3の実施形態に係るトナー担持体の構成を示す図である。図5(a)に示すトナー担持体53は、第1の電極11表面に絶縁層13を所定の間隔を隔てて並行に形成し、各絶縁層間の空間19内に第2の電極12を配設した。また、図5(b)に示すように、溝19に配設した第2の電極12の最表層に保護層20を形成した。即ち、ローラ11の表面に絶縁層13を塗布し、その絶縁層13に溝パターン19を設け、その溝パターン19に絶縁被覆されたワイヤ15を配置した例である。絶縁層13への溝パターン19は従来からの各種加工法によって形成する。例えば、絶縁層13にレジストを用いた場合には、露光により溝パターンを形成し、光硬化樹脂の場合には、透明型で紫外線硬化させて溝19を形成し、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いた場合には、成形により溝19を転写すればよい。このように絶縁層13に溝パターン19を形成することで、ワイヤ15を規則正しく螺旋状に高速に巻き付けるガイドの役割を果たすことができる。
【0021】
図6は本発明の第4の実施形態に係るトナー担持体の構成を示す図である。このトナー担持体54は、図6(a)に示すように、絶縁層13にワイヤ15の厚み以上の高さを有する複数本の突条としての絶縁壁16を所定の間隔を隔てて並行に突設し、各絶縁壁16間の空間a内にワイヤ15を収納するように構成した。図6(a)はローラ11の表面にワイヤ15の径とほぼ同じ厚さの絶縁壁16を塗布した例である。ローラ11にワイヤ12を螺旋状に巻き付ける際のガイドの目的であれば、図5のように絶縁層13の厚さを薄くしたほうがコスト低減になるため好ましい。しかし、ワイヤ15の外側の最表層に、電極の保護や塵埃の付着防止といった目的でオーバーコートをする場合には、ワイヤ15の厚さと絶縁層の厚さの差異が大きいと、オーバーコート後の表面がうねり成分を持ってしまい、トナーの供給むらや、繰り返しの摺動力が発生するため電極寿命が短くなったり、表層が削られやすくなるという欠点がある。
そこで、絶縁層の厚さをワイヤ15の径とほぼ同じにすれば、絶縁層(絶縁壁16)とワイヤ15の高さがほぼ等しくなるため、最表層に保護層17をオーバーコートすると(図6(b)参照)、レベリング効果を十分に発揮でき、うねり成分のないほぼ均一な面を形成することができる。
【0022】
図7は本発明の第5の実施形態に係るトナー担持体の構成を示す図である。このトナー担持体55は、非接触現像方式に用いる現像剤担持体であって、ローラ24と、ローラ24表面に所定の間隔を隔てて突設された複数本の突条から成る第1の絶縁壁23と、この各第1の絶縁壁23間に形成される第1の空間領域Aに収納されるワイヤ21からなる第1の電極21Aと、各第1の絶縁壁23の最表層間に跨って第1の空間領域Aを塞ぐために配置された第2の絶縁層26と、第2の絶縁層26表面に所定の間隔を隔てて突設された複数本の突条から成る第2の絶縁壁27と、この各第2の絶縁壁27間に形成される第2の空間領域Bに収納されるワイヤ22からなる第2の電極22Aと、第2の絶縁壁27の最表層間に跨って第2の空間領域Bを塞ぐために配置された第3の絶縁層25と、を備えて構成されている。また、第1の電極21Aと第2の電極22Aは、周方向位置が一致している。図7のように、この第1の電極21Aをワイヤ21で構成しても電極としての機能を果たす。この場合には、第1の電極21Aと第2の電極22Aの部材をワイヤで統一できるため、生産コストを低減できるメリットがある。また静電容量を下げることができる。
【0023】
図8は本発明の第6の実施形態に係るトナー担持体の構成を示す図である。図8(a)に示すトナー担持体56は、第1の空間領域A及び第2の空間領域Bを周方向位置をずらして交互に配置し、第1の電極21A及び第2の電極222Aを第1の空間領域A及び第2の空間領域Bにそれぞれ収納した。また、図8(b)のように、第1の電極21A及び第2の電極22Aを絶縁膜26で被覆したワイヤ21、22により構成し、第1の電極21A及び第2の電極22Aを周方向位置をずらして交互に積層して配設しても構わない。この構成によれば、ワイヤ間に絶縁壁がないので誘電率を下げることができ、また第1の電極21Aと第2の電極22Aの間隔を近接させることができるので静電容量を下げることができ、電界を効率よく取り出すことができる。そのため、トナー担持体としてローラの配線パターンに電圧を印加する場合、パワーが小さな電源でも駆動することができる。
【0024】
図9は、本発明の一実施形態に係るデジタル複写機の概略構成図である。ADF201にある原稿トレイ202に原稿の画像面を上にして置かれた原稿束は、操作部上のプリントキーが押下されると、一番上の原稿からコンタクトガラス206上の所定の位置に給送される。給送された原稿は、読み取りユニット250によってコンタクトガラス206上の原稿の画像データを読み取り後、給送ベルト204および反転駆動コロによって排出口A(原稿反転排出時の排出口)に排出される。さらに、原稿トレイ202に次の原稿が有ることを検知した場合、前原稿と同様にコンタクトガラス206上に給送される。
第1トレイ208、第2トレイ209、第3トレイ210に積載された転写紙は、各々第1給紙ユニット211、第2給紙ユニット212、第3給紙ユニット213によって給紙され、縦搬送ユニット214によって感光体215に当接する位置まで搬送される。読み取りユニット250にて読み込まれた画像データは、書き込みユニット257からのレーザによって感光体215に書き込まれ、現像ユニット227を通過することによってトナー像が形成される。そして、転写紙は感光体215の回転と等速で搬送ベルト216によって搬送されながら、感光体215上のトナー像が転写される。その後、定着ユニット217にて画像を定着させ、排紙ユニット218に搬送される。排紙ユニット218に搬送された転写紙は、ステープルモードを行わない場合は、排紙トレイ219に排紙される。尚、現像ユニット227に本発明の現像剤担持体を使用することにより、2相の電極を異なる面上に形成しても少ない電力で現像剤をホッピングさせることができ、高信頼かつ高寿命な現像剤担持体を有する現像装置を備えた画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 ローラ、2 第1の電極、3 第2の電極、4 ワイヤ、5 絶縁膜、11 ローラ、12 第2の電極、13 絶縁層、14 第1の電極、15 ワイヤ、16 絶縁壁、17 保護層、18 絶縁膜、19 溝、20 保護層、21 第1の電極、22 第2の電極、23 絶縁壁、24 ローラ、25 保護層、26 絶縁部材、51、52、53、54、55、56 現像剤担持体、a 領域、A 第1の空間領域、B 第2の空間領域
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開平3−21967号公報
【特許文献2】特開2007−133376公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触現像方式に用いる現像剤担持体であって、
ローラと、該ローラ表面に形成した第1の電極と、該第1の電極の上層に形成した第2の電極と、を備え、
前記第2の電極は、絶縁膜で被覆した線状導体から構成されていることを特徴とする現像剤担持体。
【請求項2】
非接触現像方式に用いる現像剤の担持体であって、
ローラと、該ローラ表面に形成した第1の電極と、該第1の電極表面に形成した絶縁層と、該絶縁層を介して前記第1の電極の上層に形成した第2の電極と、を備え、
前記第2の電極は、線状導体により構成されていることを特徴とする現像剤担持体。
【請求項3】
前記第2の電極は、少なくとも1以上の前記線状導体を前記ローラの一方の端部から他方の端部に向かって螺旋状又は直線状に配設した構成を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像剤担持体。
【請求項4】
前記第1の電極表面に前記絶縁層を所定の間隔を隔てて並行に形成し、該絶縁層間の空間内に前記第2の電極を配設したことを特徴とする請求項1に記載の現像剤担持体。
【請求項5】
前記溝に配設した前記第2の電極の最表層に保護層を形成したことを特徴とする請求項4に記載の現像剤担持体。
【請求項6】
前記絶縁層に前記線状導体の厚み以上の高さを有する複数本の絶縁壁を所定の間隔を隔てて並行に突設し、該各絶縁壁間の空間内に前記線状導体を収納するように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の現像剤担持体。
【請求項7】
前記各絶縁壁の最表層間に跨って前記空間を塞ぐための保護層を形成したことを特徴とする請求項6に記載の現像剤担持体。
【請求項8】
非接触現像方式に用いる現像剤担持体であって、
ローラと、該ローラ表面に所定の間隔を隔てて突設された複数本の第1の絶縁壁と、該各第1の絶縁壁間に形成される第1の空間領域に収納される線状導体からなる第1の電極と、前記各第1の絶縁壁の最表層間に跨って前記第1の空間領域を塞ぐために配置された第2の絶縁層と、該第2の絶縁層表面に所定の間隔を隔てて突設された複数本の第2の絶縁壁と、該各第2の絶縁壁間に形成される第2の空間領域に収納される線状導体からなる第2の電極と、該第2の絶縁壁の最表層間に跨って前記第2の空間領域を塞ぐために配置された第3の絶縁層と、を備えたことを特徴とする現像剤担持体。
【請求項9】
前記第1の電極と前記第2の電極は、周方向位置が一致していることを特徴とする請求項8に記載の現像剤担持体。
【請求項10】
前記第1の空間領域及び前記第2の空間領域を周方向位置をずらして交互に配置し、前記第1の電極及び前記第2の電極を前記第1及び第2の空間領域にそれぞれ収納したことを特徴とする請求項8に記載の現像剤担持体。
【請求項11】
前記第1の電極及び前記第2の電極を絶縁膜で被覆した線状導体により構成し、前記第1の電極及び前記第2の電極を周方向位置をずらして交互に積層して配設したことを特徴とする請求項8に記載の現像剤担持体。
【請求項12】
前記絶縁部材は、レジスト、光硬化樹脂、熱硬化樹脂、又は熱可塑性樹脂のいずれかで構成されることを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項に記載の現像剤担持体。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項に記載の現像剤担持体を備えたことを特徴とする現像装置。
【請求項14】
請求項13に記載の現像装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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