説明

現像装置の磁気シール構造

【課題】現像容器に取付けられた回転部材の現像容器との間隙部分に形成される磁気ブラシの摺擦面で発生するトナーの析出と蓄積を低減させ、トナーに対するシール性能を向上させることを目的とする。
【解決手段】本発明の現像装置4は、磁性粒子であるキャリアと非磁性粒子であるトナーを有する現像剤を収容する現像容器40と、現像容器40に回転可能に取り付けられ、現像剤を撹拌搬送する回転部材41及び42と、該回転部材の軸端部に設けられ、現像容器40内から外部への現像剤の漏出を防止するシール部と、を有する現像装置のシール構造であって、シール部は、回転部材41及び42の軸に取付けられ、回転部材41及び42と共に回転する磁石部材48と、磁石部材48の外周面との間で間隙を隔てて対設され、現像容器40に設けられたシール用端版47と、を有し、磁石部材48とシール用端板47との間で磁界を形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気シール、特に現像装置内部の現像剤を撹拌搬送させる回転部材の軸受付近における現像装置の磁気シール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、感光体ドラムの表面を帯電させて読み込んだ原稿画像に露光して静電潜像を形成させ、現像装置により現像剤を付着させて現像画像を形成している。感光体ドラム上の現像画像は転写装置により記録用紙に転写された後に定着装置によって現像画像が用紙に定着される。
【0003】
上記画像形成装置において現像装置は、現像剤を収容する現像容器と、現像容器内で回転自在に支持され、現像容器内の現像剤を感光体に付着させる現像ローラと、現像容器内に収容された現像剤を撹拌搬送する回転部材とを備えている。当該現像装置に使用される現像剤にはトナーのみからなる1成分磁性現像剤や非磁性粒子であるトナーと磁性粒子であるキャリアからなる2成分現像剤がある。現像ローラや回転部材は現像容器の両側壁に軸受を介して回転自在に支持されている。
【0004】
当該現像装置では、現像容器内に収容された回転部材により現像動作を繰り返すと回転軸と軸受の摺擦面に現像剤が徐々に侵入し、現像剤が溶融固着して回転軸の駆動トルクが増加してしまったり、あるいは回転軸と軸受の摺擦面が摩耗したり、溶融した現像剤が凝集塊を作る、という問題がある。
【0005】
そこで回転軸の端部には磁気シールが設けることが提案されている。この磁気シールは回転部材の軸方向端部の外周面と隙間をおいて対向するように磁気シール部材を設けるという構成を取っている。このような磁気シール部材は回転部材との対向面が着磁されて磁力線が形成され、いわゆる磁気ブラシが生じ、これが回転部材と磁気シール部材の間の隙間を埋めることで、現像剤が磁気シールから外側に漏出することを防止している。
【0006】
しかし、2成分現像剤を用いる場合、近年の画像形成の高速化に伴う回転周速の高速化や現像剤の粒子が小径化することにより、従来の磁気シールでは、キャリアの封止は可能であるが、非磁性粒子であるトナーが回転軸と磁石との間にある現像剤の摺擦面で析出し、析出したトナーが蓄積して磁気シール部を通過し、漏出する可能性を排除できなかった。
【0007】
これに対し、特許文献1には現像容器側に磁石部材が設けられ、当該磁石部材に近接して回転部材と間隙を有するように磁性板とを配設するように構成したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−162146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の構成では、磁石部材の磁界内に強磁性の磁性板を配置することで、磁性板と回転軸の間に磁界が集中し、現像剤による密な磁気ブラシが集中して形成されることで、現像剤が現像容器の端板と回転部材との隙間を通過して軸受に侵入することを防止できるとされている。
【0010】
しかし、特許文献1の構成は、基本的に上述の磁気シールを用いる構成と同様の構成であり、非磁性粒子であるトナーが漏出する可能性を排除できなかった。
【0011】
そこで本発明は、磁性シールを用いる場合にも磁石近傍の現像剤の摺擦面で発生するトナーの析出と蓄積を低減させ、トナーに対するシール性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る現像装置は、磁性粒子であるキャリアと非磁性粒子であるトナーを有する現像剤を収容する現像容器と、当該現像容器に回転可能に取り付けられ、前記現像剤を撹拌搬送する回転部材と、該回転部材の軸端部に設けられ、前記現像容器内から外部への前記現像剤の漏出を防止するシール部と、を有する現像装置のシール構造であって、前記シール部は、前記回転部材の軸に取付けられ、当該回転部材と共に回転する磁石部材と、当該磁石部材の外周面との間で間隙を隔てて対設され、前記現像容器に設けられたシール用端版と、を有し、前記磁石部材と前記シール用端板との間で磁界を形成させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、磁石部材は回転部材と共に回転することで磁石部材と現像容器のシール用端板との間隙は従来の間隙と比べると回転軸中心から径方向外側に設けられる。この場合、磁気ブラシとしては軸中心から径方向に広がるほどに遠心力が増大する。そして、回転部材の回転数が従来の構成と同等またはそれ以上であれば、間隙が外側に移動することで磁気ブラシの摺擦速度が速くなり、摺擦面における非磁性トナーの蓄積を低減できると共に摺擦面に蓄積したトナーを掻き取る効果が大きくなる。結果として磁性板のような部品を設けなくてもシール性能を向上させることができる。
【0014】
請求項2では、シール用端板の磁石部材と対向する部位を強磁性材料とした場合、磁石部材とシール用端板との間に形成される磁気ブラシをより強力にすることができるため、現像剤の漏出を防止し、シール性をより向上させることができる。
【0015】
請求項3では、現像容器の端板にシール用の磁性材料を用いることができない場合、端板の内側にシール用端板を取付けてシール用端板の先端部が磁石部材の現像容器内側の端面と対向する位置まで突出するように形成すれば、上記と同様に磁石部材とシール用端板との間隙に磁気ブラシを形成することができるため、現像剤の漏出を防止してシール性を確保することができる。
【0016】
請求項4では、現像容器の端板の内側にシール用端板を取付けた場合、当該シール用端板の先端部は、磁石部材の外周面より内側に突出するように形成すれば、間隙はクランクのような複雑な形状となって現像剤がさらに通過しにくくなるため、シール性をより向上させることができる。
【0017】
請求項5では、磁石部材の着磁方向を軸線方向の1端面側をS極、反対面側をN極とすれば、軸線に直交する面の半分をS極、反対面側をN極に着磁させた場合に比べて回転方向における磁力線の密集が弱くなる場所がなくなるため、磁気ブラシが弱くなってしまう箇所ができるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】現像装置を備えた画像形成装置の主要部の構成図である。
【図2】回転部材の軸直角断面図である。
【図3】本発明に係る現像装置が有する現像容器下部の平面図である。
【図4】実施の形態1の軸受取付位置付近の断面図である。
【図5】実施の形態2の軸受取付位置付近の断面図である。
【図6】従来の現像装置の軸受取付位置付近の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
実施の形態1
画像形成装置について概説すると、図1に示すように中央に感光体ドラム1が配設されており、感光体ドラム1の周囲には帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、分離装置6及びクリーニング装置7が配置されている。また感光体ドラム1の記録用紙搬送方向下流側には定着装置8が配設されている。
【0020】
感光体ドラム1は画像形成時に帯電装置2で帯電され、露光装置3からの光により露光されて感光体ドラム表面に静電潜像が形成される。静電潜像は現像装置4で現像剤が付着させられることで現像画像となる。現像画像は転写装置5によって図示していない給紙カセットから搬送される記録用紙に転写される。次に記録用紙は分離装置6により感光体ドラム1から分離され、定着装置8により加熱・加圧されて記録用紙上の現像画像が定着される。定着工程を終えた記録用紙は不図示の搬送ローラにより画像形成装置の外部の排紙トレイまで搬送される。感光体ドラム1に残留した残留現像剤はクリーニング装置7によりクリーニングされ、不図示の廃トナーボックスに廃棄される。
【0021】
図2は本実施の形態1に係る現像装置4内部に設けられたスクリュー41、42の軸直角断面図、図3は現像容器40の略中央付近での断面に現像装置4の内部の部材を配置した状態での平面図である。現像装置4は現像剤を収容する現像容器40を有する。現像容器40内部には現像剤を撹拌搬送するスクリュー41、42が設けられ、スクリューの両端部は軸受43に回転可能に支持されている。現像容器40の開口部には、感光体ドラム1に対向して現像ローラ44が設けられている。現像ローラ44は、回転可能なスリーブ44aと、スリーブ内に内蔵され、複数の磁極を有する磁石部材44bとから構成されている。現像ローラ44の上方には感光体ドラム1に搬送される現像剤の量を規制する層厚規制ブレード45が現像ローラ44から一定距離離れて配設されている。現像装置4のその他の構成については従来のものと同様であるため、説明を省略する。
【0022】
図4は図3のスクリュー41または42が支持される軸受43付近の拡大図である。図4においてスクリュー軸46は、スクリュー41または42のスクリュー軸部分である。また、スクリュー軸46の現像容器40の端板47と対向する部分には、円筒形状の磁石部材48がスクリュー軸46に取付けられている。磁石部材48は端板47と径方向に対向し、その間には約1mm(図4におけるg)程度の間隙が形成されている。また磁石部材48は、実施の形態1において回転軸と直交する面の一方がN極、他方がS極に着磁している。
【0023】
なお、軸受43の取付位置は形成される磁気ブラシとの間隔として実施の形態1では10mm(図4におけるg)程度の距離を取っている。端板47とスクリュー軸46と共に取り付けられた磁石部材48の間隙部分には磁気ブラシが形成され、現像容器40内で撹拌する現像剤が上記間隙から漏出するのを防止する。
【0024】
このように本発明における間隙は従来と比べて径方向外側に形成される。当該間隙部分に磁気ブラシが形成されれば間隙は従来より径方向外側に形成されているため、磁気ブラシの摺擦速度は従来より速くなり、磁気ブラシの摺擦面に蓄積したトナーを掻き取る力を大きくすることができる。
【0025】
以上のように本実施の形態1によれば、磁気ブラシを形成させる磁石部材をスクリュー軸に取付けることにより、従来の現像装置と比較すると現像容器の端板と磁石部材との間隙は回転軸中心から離れた位置になる。よって、スクリュー軸回転数が従来のものと同等又はそれ以上であれば、間隙が外側に離れるほど遠心力により磁気ブラシの摺擦速度は大きくなり、磁気ブラシの摺擦面におけるトナーを掻き取る効果は大きくなる。その結果、摺擦面に蓄積するトナーを低減させ、シール性能を向上させることができる。
【0026】
また、磁石部材と対向する部位の端板の材料が強磁性材料である場合には、間隙部分に形成される磁気ブラシをより強固に形成できるため、シール性をより向上させることができる。
【0027】
また、スクリュー軸に一体となって設けられる磁石部材は、回転軸方向に直交する一方の面がN極、他方の面がS極に着磁するものを使用するのが望ましい。磁石の着磁方向には例えば磁石の回転軸方向に直交する面の半分がS極、他方がN極のものや、中空の磁石において内側がS極、外側がN極に着磁しているものがある。回転軸方向に直交する面の半分がN極、もう半分がS極に着磁している場合では、S極とN極の境界では磁力線の密集が弱くなってしまう分、磁気ブラシのキャリアチェーンが形成されにくくなり、シール性が確保できなくなるため、本実施の形態1のように着磁させることで磁気ブラシが弱くなってしまう箇所ができるのを防止することができる。
実施の形態2
図5は、本発明の実施の形態2に係る現像容器40のスクリュー軸46の軸受付近の断面図である。なお、実施の形態1の軸受付近について示す図4と共通する構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0028】
実施の形態1において、端板47のスクリュー軸貫通部分の材料を強磁性材料とすればよりよいとしたが、当該部分の材料を強磁性材料とできない場合には、図5のように現像容器40のスクリュー軸貫通付近の内壁に強磁性材料からなるシール用端板49を接着等させてもよい。これにより、スクリュー軸46に設けた磁石部材48との間で磁気ブラシを形成してシール性を確保することができる。
【0029】
この時、現像容器40に接着させるシール用端板49は、シール用端板49の先端部の内径部分(図5のd)が現像容器40のスクリュー軸貫通部分の端面の内径部分(図5のd)より内側に突出している必要がある。シール用端板49の内径dが現像容器40のスクリュー軸貫通部分の内径dより内側に突出していなければ、シール用端板49と磁石部材48との間に現像容器40の形状が障害のように存在することとなり、磁気ブラシの形成が妨げられるからである。
【0030】
また、シール用端板49の内径dをスクリュー軸46に設けた磁石部材48の外周面の直径(図5のd)より小さくすれば、シール用端板49と磁石部材48による間隙がクランク状に形成され、間隙が直線状である場合に比べて漏出する現像剤が当該間隙を通過しにくくなる。よって、その分だけ磁気シールによるシール性をさらに向上させることができる。
実施例1
次に本発明に係る現像部についての磁気ブラシのシール性に関する実験を行ったので、以下に結果を示す。図6は、従来の磁気シールの構成を示す図である。
【0031】
本実験は、端板47又は端板47から突出するスクリュー軸46のいずれかに磁石部材48を固定した以下のパターンについて、磁束密度を変化させて上述の間隙から現像剤が漏れ始める磁束密度の量を確認する、というものである。本実験では、φ6(図4におけるd)のスクリュー軸、厚さ4mm(図4におけるt)かつ径方向の幅3mm(図4におけるw)の両面2極着磁のリング状磁石部材を使用した。
【0032】
また、キャリアは平均粒径33μm、飽和磁化64emu/g、トナー平均粒径6.5μm、トナー濃度7.5wt%のものを使用した。
【0033】
実験したパターンは、以下に記載する本発明における実施例として実施例1、2及び本発明の比較例1、2についてである。
【0034】
実施例1は図4のスクリュー軸46に磁石部材48が取付けられ、端板47との間隙(g):1mm、及び端板47が強磁性材料からなる。
【0035】
実施例2は図4の端板47が非磁性材料からなり、その他は実施例1と同様である。
【0036】
これに対し比較例1は図6に示すスクリュー軸46が強磁性材料からなり、端板47に磁石部材48が取付けられ、スクリュー軸46との間隙(g):1mm、端板が任意の材料からなる。
【0037】
また比較例2は図6に示すようにスクリュー軸46の材料が非磁性材料であること以外は比較例1と同一である。
【0038】
本実験では、スクリュー軸回転速度を500rpmに設定し、30時間連続駆動して現像剤が磁石面から5mm以上軸受側に出ていなければ十分なシール性能があるとして、30時間経過するまでに磁石部材から軸受に接触する位置までトナーが出たものは×、トナーとキャリアの何れも出なかったものを○とした。構成中に強磁性材料を用いたものの結果を表1、強磁性材料を用いない結果を表2に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
このように、端板47を強磁性材料とした実施例1であれば従来と同様にキャリアを封止できるのに加え、封止性能が向上することが確認できた。また、端板47に強磁性材料を用いない実施例2であっても磁束密度を高くすれば現像剤(トナー)に対するシール性を十分に得られることについても確認できた。また、実施例1に比べてシール性能が下がる実施例2であっても、比較例1、2と比べればシール性能が向上していることが確認できた。なお、比較例2については比較例1のシール性が確認できた110mTであってもシール性が○にはならなかった。この結果からシール性能の指標は、現像容器の端板またはスクリュー軸に強磁性材料を用いるか否か、及び間隙が回転軸中心から径方向にどの程度離間しているかに関係することが確認できる。
【符号の説明】
【0042】
40 …現像容器、
41 …スクリュー、
42 …スクリュー、
43 …軸受、
46 …スクリュー軸、
47 …端板、
48 …磁石部材、
49 …シール用端板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粒子であるキャリアと非磁性粒子であるトナーを有する現像剤を収容する現像容器と、
当該現像容器に回転可能に取り付けられ、前記現像剤を撹拌搬送する回転部材と、
該回転部材の軸端部に設けられ、前記現像容器内から外部への前記現像剤の漏出を防止するシール部と、
を有する現像装置のシール構造であって、
前記シール部は、前記回転部材の軸に取付けられ、当該回転部材と共に回転する磁石部材と、当該磁石部材の外周面との間で間隙を隔てて対設され、前記現像容器に設けられたシール用端版と、を有し、
前記磁石部材と前記シール用端板との間で磁界を形成させることを特徴とする現像装置の磁気シール構造。
【請求項2】
前記シール用端板は、前記磁石部材に対向する部位を強磁性材料で構成されている請求項1記載の磁気シール構造。
【請求項3】
前記シール用端板は、前記現像容器内に基端が取付けられ、先端部が前記磁石部材の前記現像容器内側の端面と対向する位置まで突出するように形成されている請求項1記載の磁気シール構造。
【請求項4】
前記シール用端板の先端部は、前記磁石部材の外周面より内側に突出するように形成されている請求項3記載の磁気シール構造。
【請求項5】
前記磁石部材は、前記軸に取付けられた状態での、軸線方向一端面側がS極、反対面側がN極に形成されている請求項1記載の磁気シール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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