現場作業支援システム、装置、方法及びプログラム
【課題】運用コストをあまりかけることなく、緊急性が求められる現場で作業者に必要な情報を示すことができる現場作業支援システムを提供することを目的とする。
【解決手段】作業現場においてガスの濃度を検出するガス濃度検出手段1と、ガス濃度検出手段1が複数の位置で検出したガスの濃度に基づいて、ガスの発生方向を特定する発生方向特定手段2と、発生方向特定手段2が特定したガスの発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する表示制御手段3とを含む。
【解決手段】作業現場においてガスの濃度を検出するガス濃度検出手段1と、ガス濃度検出手段1が複数の位置で検出したガスの濃度に基づいて、ガスの発生方向を特定する発生方向特定手段2と、発生方向特定手段2が特定したガスの発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する表示制御手段3とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現場作業を支援する現場作業支援システム、現場作業支援装置、現場作業支援方法及び現場作業支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラント設備保守業務において、携帯用のガス探知機や作業現場に固定のセンサを配置して、ガス漏れを検出することがある。また、検出した場合の告知方法としては、例えば、ガス濃度の数値を液晶モニタに表示したり、警告ランプの点滅、ブザー音やバイブレーションを用いる方法がある。
【0003】
ガスの発生源の方向を判定する技術としては、例えば、特許文献1には、多数のガスセンサを並べた可搬型のセンサアレイを用いて同時多点計測を行うことよってガス濃度分布を計測し、発生源方向を探索する方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、自律移動型の風向センサとガスセンサの組み合わせた探知システムでガスの流れる方向を測定し本体を移動していくことで発生源の方向を判定する方法が記載されている。また、特許文献3には、ガスセンサを搭載した自律型移動体が水平方向にセンサを360度回転させてセンサ出力が最大値を示す回転角度の方向を発生源の方向と判定する方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献4には、無線LAN経由で得た情報に基づいて、作業者が設定された立入禁止区域に進入するとGPS情報から監視サーバでモニタし、安全上の問題が発生したと判定して警告メッセージを表示する技術が記載されている。また、特許文献5には、センサを装着した一人または複数の人が動き回ることによって汚染物質レベルのマップを自動作成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3101712号公報
【特許文献2】特許第3439795号公報
【特許文献3】特許第3620886号公報
【特許文献4】特開2002−287846号公報
【特許文献5】特開2003−516831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、作業エリアの各所にセンサを設置するとなると、コストが大きくなるという課題がある。また、数値データ表示では、各作業者が数値の意味する影響を知らないと作業の継続判定が難しい。また、警告ランプやブザー警告音、バイブレーションによる告知だけでは周囲環境条件によっては気づきにくい場合もある。
【0008】
特許文献1に記載されたセンサアレイ方式による測定方法では、濃度変化を可視化する手段も必要となり、システムの構築が複雑になるという課題がある。また、特許文献2に記載された方法では、ロボットのような移動体で検知した結果を作業者に伝え作業行動を指示する手段がないという課題がある。また、特許文献3に記載された方法では、ガスの流れる方向を移動しながら測定や360度回転させて測定するには時間が要することになるので緊急性が求められる現場で適用することが難しい。
【0009】
また、特許文献4に記載された方法では、作業者が立入禁止区域に進入すると安全上の問題が発生したと判定し、警告メッセージを表示するが、このような警告メッセージだけでは、作業者は元に戻る以外どちらに移動すると危険かは判別することができない。
【0010】
また、特許文献5に記載された方法は、汚染物質レベルのマップを自動生成するためのものであるため、非常に手間がかかる。そのため、作業エリアの状況を迅速に知ることができず、緊急性が求められる現場に適用することができない。
【0011】
そこで、本発明は、運用コストをあまりかけることなく、緊急性が求められる現場で作業者に必要な情報を示すことができる現場作業支援システム、現場作業支援装置、現場作業支援方法及び現場作業支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による現場作業支援システムは、作業現場におけるガスの濃度を検出するガス濃度検出手段と、ガス濃度検出手段が複数の位置で検出したガスの濃度に基づいて、ガスの発生方向を特定する発生方向特定手段と、発生方向特定手段が特定したガスの発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する表示制御手段とを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明による現場作業支援装置は、作業現場の複数の位置で検出したガスの濃度に基づいて、ガスの発生方向を特定する発生方向特定手段と、発生方向特定手段が特定した発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する表示制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明による現場作業支援方法は、作業現場の複数の位置でガスの濃度を検出し、検出したガスの濃度に基づいて、ガスの発生方向を特定し、特定した発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御することを特徴とする。
【0015】
本発明による現場作業支援プログラムは、コンピュータに、作業現場の複数の位置で検出したガスの濃度に基づいて、ガスの発生方向を特定する発生方向特定処理と、特定した発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する表示制御処理とを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、運用コストをあまりかけることなく、緊急性が求められる現場で作業者に必要な情報を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による現場作業支援システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】作業者が移動する平面位置を示す情報の一例を示す説明図である。
【図3】現場作業支援システムが実行する処理例を示すフローチャートである。
【図4】濃度変動パターンと発生源方向との対応付けの一例を示す説明図である。
【図5】ガス濃度変動量による発生源方向の判定例を示す説明図である。
【図6】ガス濃度変動量による発生源方向の判定例を示す説明図である。
【図7】作業イメージとヘッドマウントディスプレイ装置での表示例とを示す説明図である。
【図8】現場作業支援システムの最小の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ガス爆発やガス中毒による事故を防止するために、ガス会社や工場、または工事現場やプラント設備における工事・保守業務などにおいて、携帯用のガス探知機や作業現場に固定のセンサを配置して、ガス漏れを検出することができ、ガス濃度の数値を液晶モニタに表示、警告ランプを点滅させることや、ブザー音やバイブレーションで告知する方法がある。特に無色無臭のガスや夜間や暗所においては、人間では感知できない危険な状況をガスセンサによって感知・モニタすることが今後ガス事故を防止する上では不可欠である。
【0019】
しかしながら、作業エリアの各所にセンサを設置することは設置費用やモニタするための運用コストが大きくなる問題があり、また液晶モニタで数値データを表示しても数値の意味する人間への作用や毒性などの影響を知らないとどのように行動すればよいのか作業の継続判定が難しい。緊急事態を知らせる警告ランプ、ブザー警告音、バイブレーションだけでは騒音の中や機器を認識できないような動作環境条件によっては、気づきにくい場合もある。これらを改善するために、本実施形態では、運用コストをあまりかけることなく、作業にあまり慣れていない人でも作業指示を適時、適所において作業中のハンズフリーの状態であっても適用可能にする。具体的には、ガスセンサとウエアラブルコンピュータを装着し一定範囲を移動することによってガス濃度の変化を検知し、地磁気センサから得た方位情報に応じて作業者のヘッドマウントディスプレイ装置に有毒ガス特に一酸化炭素の発生源の方向や注意・警告をわかりやすく表示する。
【0020】
騒音が多い場所や暗い現場においても、無色無臭・無味の一酸化炭素ガスの発生状況が可視化され、ガスの発生状況や作業指示をヘッドマウントディスプレイ装置に表示させて気づかせるので、作業者にガス濃度の数値、方位・時間情報の数値データだけではなく知りたい情報を迅速に伝えることができる。
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明による現場作業支援システムの構成の一例を示すブロック図である。
【0022】
本実施形態での現場作業支援システムは、ある地点でのガス濃度を検出し、検出したガス濃度と作業者が所定の方向に所定の距離だけ移動した地点で測定したガス濃度との変動量を求め、変動量に基づいてガスの発生源方向を特定する。そして、現場作業支援システムは、特定した発生源方向と、地磁気センサで検出した作業者の向きとをヘッドマウントディスプレイ装置に重ねあわせて表示するように制御する。
【0023】
本実施形態で用いるヘッドマウントディスプレイ装置は、頭部に装着可能であれば、例えばメガネ型であっても、ヘルメット型であってもよい。また、例えば、ヘッドマウントディスプレイ装置は、網膜上に映像を投影する方式であっても、ハーフミラーを用いた光学方式のものであってもよい。また、例えば、外部を直接見るのではなく、カメラで撮影した外部画像を投影するタイプのものでもよい。本実施形態では、一般的な用法に従い、メガネ型やヘルメット型、網膜照射型や光学方式型等を全て包括してヘッドマウントディスプレイ装置という。
【0024】
図1に示すように、現場作業支援システムは、ガス濃度検出部10、データ出力部11、情報入力部12、変動量計測部13、発生源方向判定部14、地磁気検出部15、作業者方向出力部16、画像処理部17および画像表示部18を含む。本実施形態では、情報入力部12、変動量計測部13、発生源方向判定部14、地磁気検出部15、作業者方向出力部16および画像処理部17は、ウエアラブルコンピュータ(図示せず)に含まれる。
【0025】
ガス濃度検出部10は、ガスの濃度を測定する機能を備えている。ガス濃度検出部10は、具体的には、ガスの濃度を測定可能なセンサによって実現される。
【0026】
データ出力部11は、測定したガスの濃度を示すガス濃度データをウエアラブルコンピュータに送信する送信機能を備えている。データ出力部11は、例えば作業者の操作に従って、または所定期間ごとに自動的にガス濃度データを送信する。例えば、ガス濃度検出部10が検出したガス濃度データをログデータとして一時的に記憶しておき、所定のタイミングで記憶したガス濃度データのログデータを送信する。
【0027】
本実施形態では、ガス濃度検出部10とデータ出力部11とは、ガスセンサとして同一機器内に収容されているものとする。また、この機器は、衣服や装備に簡単に装着できるような構造であり、作業者が移動する際には体の一部に固定されているものとする。具体的に、本実施形態では、作業者が装着するヘルメットにこの機器を固定するものとする。
【0028】
情報入力部12は、データ出力部11が送信したガス濃度データのログデータをウエアラブルコンピュータで受信する機能を備えている。データ出力部11と情報入力部12とは、無線回線または有線回線を介して通信可能である。情報入力部12は、受信したログデータを変動量計測部13と画像処理部17とに出力する。
【0029】
変動量計測部13は、3つの地点を移動した作業者が装着しているガスセンサ(ガス濃度検出部10)によって測定された各地点のガス濃度データを比較し、ガス濃度の変化量を計測する機能を備えている。変動量計測部13は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUによって実現される。なお、本実施形態では、3地点のガス濃度データを比較する処理例について説明するが、これに限らず、例えば、4地点以上のガス濃度データを比較するようにしてもよい。
【0030】
発生源方向判定部14は、変動量計測部13が各地点のガス濃度データを比較して求めた変動量と、予め記憶している濃度変動パターンとに基づいて、ガス濃度の増加または減少傾向を求め、現在地からガス濃度が高い地点に向かう方向を発生源方向として判定する機能を有している。発生源方向判定部14は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUによって実現される。
【0031】
地磁気検出部15は、ウエアラブルコンピュータに搭載され、方位を測定する機能を備えている。地磁気検出部15は、具体的には、地磁気センサによって実現される。
【0032】
作業者方向出力部16は、地磁気検出部15が測定した結果から作業者が向いている方向を作業者方向として特定し、画像処理部17に出力する機能を備えている。
【0033】
画像処理部17は、発生源方向判定部14が判定した発生源方向を示す情報を、作業者方向出力部16が特定した作業者方向を示す画像に重畳する機能を備えている。また、画像処理部17は、情報入力部12が受信したガス濃度データを数値化し、その数値を画像に重畳する機能を有している。また、画像処理部17は、重畳した画像を画像表示部18に出力して表示させる機能を備えている。画像処理部17は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUによって実現される。
【0034】
画像表示部18は、画像処理部17によって処理された画像を表示する機能を備えている。画像表示部18は、例えば、作業者が移動しながら作業者の向きと発生源方向とを確認できるように、頭部付近に装着して固定したヘッドマウントディスプレイ装置によって実現される。
【0035】
画像表示部18は、例えば、ガス濃度測定開始時からの経過時間を示す時間情報やガス濃度の測定値を表示することができる。また、例えば、画像表示部18は、発生源方向とガス濃度データとに基づいて、作業者に対する警告や注意に関する情報を業務指示として表示することができる。
【0036】
次に、現場作業支援システムの動作について説明する。ここでは、図1、図2、図3、図4、図5、図6および図7を参照して、ガスセンサと地磁気センサとを所持した作業者が所定範囲の移動をすると、3ヶ所のガス濃度を検知し、位置情報とガス濃度の変動とを解析した上で、発生源の方向を判定し、ヘッドマウントディスプレイ装置に発生源の方向や作業指示を表示させる動作について説明する。
【0037】
なお、本実施形態では、位置情報とは、ウエアラブルコンピュータが管理する二次元の座標上における点を特定可能な情報である。具体的には、計測を開始する現実の地点Xを座標上の原点とし、作業者の移動方向(地磁気センサで特定して例えば北方向)に向かって、地点Xから所定の距離(10m以内)または特定の時間(例えば10秒以内)移動した地点Yを表す座標上の点を地点Yの位置情報とする。ここでは、例えば、予め移動する距離と方向と(すなわち、地点Y)を定めておき、作業者が定められた方向に定められた距離を移動する。また、例えば、予め作業者の移動速度を求めておき、移動速度および経過時間から求めることができる移動距離と、地磁気センサが検出した作業者方向とに基づいて、地点Yの位置情報を求める。また、例えば、時間をあらわす座標を用いて、作業者の移動方向と経過時間とから各地点の位置情報を求めるようにしてもよい。
【0038】
また、作業者が地点Yで90度回転した方向に向かって、地点X−地点Yと同じ距離または同じ時間移動した地点を測定終了する地点Zとすると、地点Zを表す座標上の点が地点Zの位置情報となる。なお、本実施形態では、2度目のガス濃度測定を行う地点が地点Yであり、3度目のガス濃度測定を行う地点が地点Zである。このように、ウエアラブルコンピュータは、動作開始後、各地点の位置情報を求めて記憶しているものとする。
【0039】
まず図1、図2、図3および図4を参照して、検出したガス濃度の変動量からガスの発生源方向を判定し、作業者方向に応じて発生源方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示させる動作について説明する。
【0040】
図2は、作業者が移動する平面位置情報の一例を示す説明図である。まず作業者は、図2に示される地点Xにおいてヘッドマウントディスプレイ装置に表示される方位情報(例えば、作業者方向)を見ながら、ガス濃度の測定値a(ppm)を確認する。
【0041】
次に、作業者は、方位情報から北の方向(N方向)に向かって10秒間直進した地点Yに移動する。ここで、ガスセンサのガス濃度検出部10は、作業者の操作に従って、または自動的にガス濃度b(ppm)を測定する。
【0042】
次に、作業者は、右回り90度回転した東の方向(E方向)に向きを変えた後、10秒間直進した地点Zに移動する。そして、ガスセンサのガス濃度検出部10は、作業者の操作に従って、または自動的にガス濃度c(ppm)を測定する。
【0043】
現場作業支援システムでは、地磁気センサによって測定した作業者方向を含む方位情報を常にヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御している。そのため、作業者は、自分がどの方角に向かって移動しているかを認識できるようになっている。また、現場作業支援システムでは、ガス濃度を所定期間ごとに測定し、測定結果をその都度ヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する。ここではガスセンサによって5秒ごとにガス濃度を測定し、測定結果をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御するものとする。
【0044】
図3は、現場作業支援システムが実行する処理例を示すフローチャートである。作業者はウエアラブルコンピュータを操作することによってヘッドマウントディスプレイ装置に表示される作業開始ボタンを選択する。すると、作業者が装着しているヘルメットに搭載されたガスセンサのガス濃度検出部10は、地点Xにおけるガス濃度aを測定する(ステップS1)。
【0045】
次いで、データ出力部11は、ガス濃度検出部10が地点Xで検出したガス濃度aを含むログデータをウエアラブルコンピュータの情報入力部12に送信する。
【0046】
また、ウエアラブルコンピュータに搭載された地磁気センサの地磁気検出部15は、地点Xの位置情報(すなわち、二次元の座標上の原点)を検出し、作業者方向出力部16から得られる方位情報と情報入力部12からのガス濃度情報が画像処理部17で読み出されることによって、画像表示部18であるヘッドマウントディスプレイ装置に表示される。
【0047】
具体的には、作業者方向出力部16は、地磁気検出部15が測定した方位に基づいて、作業者方向を特定し、特定した作業者方向を含む方位情報を画像処理部17に出力する。また、情報入力部12は、受信したガス濃度aを含むガス濃度情報を画像処理部17に出力する。すると、画像処理部17は、方位情報を示す画像にガス濃度情報を重畳し、画像表示部18に表示させるように制御する。
【0048】
作業者は、地点Xにおける方位情報を見ながら北(N)方向が画面上部になるように姿勢を回転しながら合わせ、ガス濃度の測定値aを確認する。そして、作業者がウエアラブルコンピュータの測定開始ボタンを押してN方向へ移動すると、現場作業支援システムは、画面上の時間表示でカウントを開始する。そして、ガスセンサのガス濃度検出部10は、所定時間後(本実施形態では10秒後)に作業者が移動した地点Yでガス濃度bを測定する(ステップS2)。このようにガス濃度検出部10は、所定期間ごとまたは作業者の操作に従ってガス濃度を測定する。また、ウエアラブルコンピュータは、例えば、ガス濃度bの測定時に、二次元の座標における地点Yの位置情報を特定する。
【0049】
次いで、変動量計測部13は、地点Yのガス濃度bと地点Xでのガス濃度aとを比較し、ガス濃度変化を示す変動量を計測する(ステップS3)。また、変動量計測部13は、変動量の計測結果を発生源方向判定部14に出力する。そして、発生源方向判定部14は、変動量の計測結果を蓄積データとして保存する。
【0050】
次いで、地点Yにおいて作業者が方位情報を見ながら東(E)方向が画面上部になるように姿勢を右方向に90度回転しながら合わせ、E方向に移動すると、ガス濃度検出部10は、地点Zにおけるガス濃度cを測定する(ステップS4)。また、ウエアラブルコンピュータは、例えば、ガス濃度cの測定時に、二次元の座標における地点Zの位置情報を特定する。
【0051】
次いで、変動量計測部13は、地点Zのガス濃度cと地点Yでのガス濃度bとを比較し、ガス濃度変化を示す変動量を計測する(ステップS5)。また、変動量計測部13は、変動量の計測結果を発生源方向判定部14に出力する。そして、発生源方向判定部14は、変動量の計測結果を蓄積データとして保存する。
【0052】
地点Zのガス濃度cと地点Yでのガス濃度bとが同じである場合、発生源方向判定部14は、地点Zのガス濃度cと地点Xでのガス濃度aとを比較し、8通りの濃度変動パターンのいずれに該当するか判定する。そして、発生源方向判定部14は、該当する濃度変動パターンに対応付けられた方向を発生源方向として決定する(ステップS6)。図4は、濃度変動パターンと発生源方向との対応付けの一例を示す説明図である。なお、図4に示す濃度変動パターンと発生源方向との対応付け例は、作業者が図2に示すように移動することを前提としている。
【0053】
発生源方向判定部14が発生源方向を判定すると、画像処理部17は、作業者方向出力部16が出力した地点Zにおける作業者方向を含む方位情報を示す画像上に発生源方向を示す情報を重畳する。そして、画像処理部17は、地点Zにおける作業者方向であるEast(E)方向に対する発生源方向が示された画像を画像表示部18(ヘッドマウントディスプレイ装置)に表示するように制御する(ステップS7)。
【0054】
本実施形態では、作業者が地点Zから移動したり、体の向きを変えたりしても、地磁気センサが測定する方位の変化に応じて、ヘッドマウントディスプレイ装置で発生源方向を表示する。すなわち、本実施形態では、作業者方向を基準として発生源方向を表示するため、作業者方向が変化すると表示する発生源方向も変化する。したがって、作業者は、ガスの発生源に注意しながら作業を継続できる。また、測定したガス濃度が人間の健康に影響を及ぼす数値に近づいている場合や上回っている場合には、画像処理部17は、注意を喚起するメッセージを読み出し、画像表示部18に表示させるように制御する(ステップS8)。
【0055】
本実施形態では、地点Xにおいて最初にNorth(N)方向に移動し、次にY地点においてEast(E)方向に向きを変えて移動しているが、これに限らず、地点Xにおいて最初にWest(W)方向に移動し、次に右に90度回転してN方向に向きを変えて移動してもよい。この場合には、発生源方向判定部14は、例えば、ガス濃度の測定時に特定した地点X、地点Yおよび地点Zの位置情報に基づいて、各地点の位置関係を特定する。また、この場合には、発生源方向判定部14は、図4に相当する濃度変動パターンと発生源方向との対応付けから、発生源方向を(1)North、(2)Southなどと判定する。
【0056】
例えば、ウエアラブルコンピュータは、予め定められた移動パターンごとに濃度変動パターンと発生源方向とを対応付けて記憶しておく。そして、ガス濃度の測定を開始すると、ウエアラブルコンピュータは、地磁気センサが出力する方位情報の変化に基づいて移動パターンを特定し、特定した移動パターンに対応付けられた濃度変動パターンと発生源方向とに基づいて、発生源方向を判定する。なお、地点Xから地点Yまでの移動時間または移動距離と、地点Yから地点Zまでの移動時間または移動距離とが、ほぼ同一であることが条件である。また、作業者はいずれの移動時間もほぼ同じ速度で移動するものとする。
【0057】
また、本実施形態では、濃度変化の測定誤差を少なくするために、移動時間が10秒以内であり、移動距離も10m程度とする。また、作業者は、地点Yでは立ち止まらず向きを変えるだけで移動を継続する。また、ガスセンサからガス濃度データのログデータを受信する際には、自動でウエアブルコンピュータに入力しているが、手動で入力するようにしてもよい。
【0058】
上記の動作を繰り返すことによって、発生源方向を特定する精度の向上や誤差を少なくすることができる。また、定点での変動量をモニタすることによって危険な状態まで到達時間を推定することができる。また、距離センサを併用すれば、発生源までの距離を推定し、推定した距離を含む作業指示情報を表示することができる。
【0059】
次に、図5、図6および図7を参照して、ガス濃度変動による発生源方向判定例とヘッドマウントディスプレイ装置が表示する画面例とを示す。図5および図6は、ガス濃度変動量による発生源方向の判定例を示す説明図である。図7は、作業イメージとヘッドマウントディスプレイ装置での表示例とを示す説明図である。
【0060】
図5の例では、地点X、地点Y、地点Zのガス濃度、ここでは一酸化炭素(CO)濃度が各々a:50,b:80,c:140(ppm)と測定されたものする。一酸化炭素は空気とほぼ同じ重さで発生源に近いほどCO濃度は高くなり、濃度分布値がほぼ発生源からの距離に応じて反比例して低くなるものとする。
【0061】
この例では、a<b<cの濃度変動パターン(3)に該当するため、図4の方向判定結果より発生源方向をNE方向と判定することができる。現場作業支援システムは、地点Yにおける濃度変化30ppmと地点Zにおける濃度変化60ppmとから、発生源方向をややEast(E)よりと特定して、表示装置に表示する。ここで、地点Yにおける濃度変化がほとんどない状態である場合には、即ちa=bとなり、発生源方向をEと判定することができる。
【0062】
一方、図6の例では、地点X、地点Y、地点Zのガス濃度を各々a:50,b:110,c:140(ppm)と測定している。そのため、現場作業支援システムは、a<b<cの濃度変動パターン(3)に該当するため、図4の方向判定結果よりNE方向と判定するが、地点Yにおける濃度変化60ppmと地点Zにおける濃度変化30ppmとから、発生源方向をややNorth(N)よりと特定して、表示装置に表示する。
【0063】
ここで、地点Zにおける濃度変化がほとんどない状態であると、即ちb=cとなり、現場作業支援システムは、発生源方向をNと判定する。ガス濃度の変動量に応じてガスの発生源方向は必ずしも8方向に限定されないが、ここでは迅速な判断が求められるため画像には8方向のいずれかを表示する。
【0064】
以上のように、本実施形態では、ガスセンサと地磁気センサとを所持した作業者が所定範囲の移動をすると、3ヶ所のガス濃度の変化を検知し、位置情報とガス濃度データの変動とを解析した上で、発生源の方向を判定し、作業者のヘッドマウントディスプレイに発生源の方向や作業指示を表示する。そのため、運用コストをあまりかけることなく、緊急性が求められる現場で作業者に必要な情報を示すことができる。
【0065】
上記のように、現場の作業者は地磁気センサを搭載したウエアラブルコンピュータを携帯しており、コンピュータの情報出力・表示するヘッドマウントディスプレイ装置とヘルメットに小型の携帯用ガスセンサを装着するだけである。また、ガスセンサは無線または有線通信によってウエアラブルコンピュータと通信可能であり、ヘルメット付近におけるガス濃度がガスセンサで検知されるとウエアラブルコンピュータにデータログが記録される。
【0066】
これらの装置を身につけた作業員が特別な計測手段を意識することなく作業中に短時間で一定範囲を移動することにより、3ヶ所の地点でガス濃度が測定され、ウエアラブルコンピュータの位置情報とモニタ地点におけるガス濃度の変化とによる解析結果から発生源の方向を即座に判定して、数値データだけではなく作業員へ注意内容、移動するべき方向などをヘッドマウントディスプレイ装置にわかりやすく表示する。そのため、作業者が作業に集中して周囲の状況を十分認識できない場合であっても、作業行動を迅速に指示することによって事故を防止し安全な作業環境を維持することができる。
【0067】
また、特許文献4に記載された方法では、作業者が立入禁止区域に進入すると安全上の問題が発生したと判定し、警告メッセージをヘッドマウントディスプレイ装置に表示するものであるため、作業者は元に戻る以外に、どの方向に移動すると危険かを判別することができない。しかし、本実施形態では、地磁気センサによって方位情報が常にヘッドマウントディスプレイ装置に表示し、作業者がどの方角に向かって移動しているかを認識できるため、状況を判断でき、次の行動に関する情報提供を支援するには効果的である。
【0068】
また、特許文献5に記載された方法では、センサを装着して使用者の位置が知られていて一人または複数の人が動き回ることによって汚染物質レベルのマップを自動作成するため、非常に手間がかかる。しかし、本実施形態では、ガス分布マップを作成するのではなく、ガスの発生方向を迅速に示すものであるため、緊急性が求められる現場では効果的である。また、この方法を繰り返すことによって精度の向上や誤差を少なくすることもできる。
【0069】
以上に説明したように、本発明によれば次のような効果を得ることができる。通常、一酸化炭素(CO)などガス発生エリアにおいては、ガスセンサを設置したり作業員がガスセンサを携帯してCO濃度や積算値を測定・表示して、警報ランプ、ブザー、バイブレーションを用いて告知できるが、この方法では作業員がセンサ計を見なくても常にヘッドマウントディスプレイ装置で現場における作業環境を知ることができるので安全性の向上を図ることができる。
【0070】
また、作業の継続を迅速に判断するにあたり、所定範囲内の3ヶ所でのCO濃度を測定することによって、発生源の方向を簡単に判定することができる。
【0071】
また、作業者への警告表示や作業指示をわかりやすくヘッドマウントディスプレイ装置に表示させることによって作業確認、事故防止の実行ができる。
【0072】
また、暗い場所や騒音が大きい場所でも、無色無臭で危険なCOの発生状況を可視化できる。さらに、定点で変動をモニタすれば危険に到る作業時刻を推定して表示させる使い方にも応用できる。
【0073】
次に、本発明による現場作業支援システムの最小構成について説明する。図8は、現場作業支援システムの最小の構成例を示すブロック図である。図8に示すように、現場作業支援システムは、最小の構成要素として、ガス濃度検出手段1、発生方向特定手段2および表示制御手段3を含む。
【0074】
図8に示す最小構成の現場作業支援システムでは、発生方向特定手段2は、ガス濃度検出手段1が複数の位置で検出したガスの濃度に基づいて、ガスの発生方向を特定する。そして、表示制御手段3は、発生方向特定手段2が特定したガスの発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する。
【0075】
従って、最小構成の現場作業支援システムによれば、運用コストをあまりかけることなく、緊急性が求められる現場で作業者に必要な情報を示すことができる。
【0076】
なお、本実施形態では、以下の(1)〜(5)に示すような現場作業支援システムの特徴的構成が示されている。
【0077】
(1)現場作業支援システムは、作業現場においてガスの濃度を検出するガス濃度検出手段(例えば、ガス濃度検出部10によって実現される)と、ガス濃度検出手段が複数の位置(例えば、地点X、地点Yおよび地点Z)で検出したガスの濃度に基づいて、ガスの発生方向を特定する発生方向特定手段(例えば、変動量計測部13と発生方向判定部14とによって実現される)と、発生方向特定手段が特定したガスの発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置(例えば、画像表示部18によって実現される)に表示するように制御する表示制御手段(例えば、画像処理部17によって実現される)とを含むことを特徴とする。
【0078】
(2)現場作業支援システムにおいて、発生方向特定手段は、ガス濃度検出手段が複数の位置でガスの濃度を検出すると、位置を示す位置情報(例えば、二次元座標上で示される地点X、地点Yおよび地点Zの位置情報)と、各位置で検出したガスの濃度を比較した比較結果(例えば、変動量計側部13が計測したガス濃度の変動量)とに基づいて、ガスの発生方向を特定するように構成されていてもよい。
【0079】
(3)現場作業支援システムにおいて、作業者が向いている方向を検出可能な作業者方向検出手段(例えば、地磁気検出部15と作業者方位情報出力部16とによって実現される)を含み、表示制御手段は、作業者方向検出手段が検出した方向に応じて、発生方向特定手段が特定したガスの発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御するように構成されていてもよい。
【0080】
(4)現場作業支援システムにおいて、作業者方向検出手段が検出した作業者が向いている方向の変化に基づいて、ガス濃度検出手段がガスの濃度を検出した位置を特定する位置特定手段を含み、発生方向特定手段は、位置特定手段が特定した位置を示す位置情報と、各位置で検出したガスの濃度を比較した比較結果とに基づいて、ガスの発生方向を特定するように構成されていてもよい。
【0081】
(5)現場作業支援システムにおいて、表示制御手段は、ガス濃度検出手段が検出したガスの濃度が所定値以上である場合に、ヘッドマウントディスプレイ装置に警告を表示させるように制御するように構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、プラント設備を保守する業務を支援する用途に適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 ガス濃度検出手段
2 発生方向特定手段
3 表示制御手段
10 ガス濃度検出部
11 データ出力部
12 情報入力部
13 変動量計測部
14 発生源方向判定部
15 地磁気検出部
16 作業者方向出力部
17 画像処理部
18 画像表示制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、現場作業を支援する現場作業支援システム、現場作業支援装置、現場作業支援方法及び現場作業支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラント設備保守業務において、携帯用のガス探知機や作業現場に固定のセンサを配置して、ガス漏れを検出することがある。また、検出した場合の告知方法としては、例えば、ガス濃度の数値を液晶モニタに表示したり、警告ランプの点滅、ブザー音やバイブレーションを用いる方法がある。
【0003】
ガスの発生源の方向を判定する技術としては、例えば、特許文献1には、多数のガスセンサを並べた可搬型のセンサアレイを用いて同時多点計測を行うことよってガス濃度分布を計測し、発生源方向を探索する方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、自律移動型の風向センサとガスセンサの組み合わせた探知システムでガスの流れる方向を測定し本体を移動していくことで発生源の方向を判定する方法が記載されている。また、特許文献3には、ガスセンサを搭載した自律型移動体が水平方向にセンサを360度回転させてセンサ出力が最大値を示す回転角度の方向を発生源の方向と判定する方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献4には、無線LAN経由で得た情報に基づいて、作業者が設定された立入禁止区域に進入するとGPS情報から監視サーバでモニタし、安全上の問題が発生したと判定して警告メッセージを表示する技術が記載されている。また、特許文献5には、センサを装着した一人または複数の人が動き回ることによって汚染物質レベルのマップを自動作成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3101712号公報
【特許文献2】特許第3439795号公報
【特許文献3】特許第3620886号公報
【特許文献4】特開2002−287846号公報
【特許文献5】特開2003−516831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、作業エリアの各所にセンサを設置するとなると、コストが大きくなるという課題がある。また、数値データ表示では、各作業者が数値の意味する影響を知らないと作業の継続判定が難しい。また、警告ランプやブザー警告音、バイブレーションによる告知だけでは周囲環境条件によっては気づきにくい場合もある。
【0008】
特許文献1に記載されたセンサアレイ方式による測定方法では、濃度変化を可視化する手段も必要となり、システムの構築が複雑になるという課題がある。また、特許文献2に記載された方法では、ロボットのような移動体で検知した結果を作業者に伝え作業行動を指示する手段がないという課題がある。また、特許文献3に記載された方法では、ガスの流れる方向を移動しながら測定や360度回転させて測定するには時間が要することになるので緊急性が求められる現場で適用することが難しい。
【0009】
また、特許文献4に記載された方法では、作業者が立入禁止区域に進入すると安全上の問題が発生したと判定し、警告メッセージを表示するが、このような警告メッセージだけでは、作業者は元に戻る以外どちらに移動すると危険かは判別することができない。
【0010】
また、特許文献5に記載された方法は、汚染物質レベルのマップを自動生成するためのものであるため、非常に手間がかかる。そのため、作業エリアの状況を迅速に知ることができず、緊急性が求められる現場に適用することができない。
【0011】
そこで、本発明は、運用コストをあまりかけることなく、緊急性が求められる現場で作業者に必要な情報を示すことができる現場作業支援システム、現場作業支援装置、現場作業支援方法及び現場作業支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による現場作業支援システムは、作業現場におけるガスの濃度を検出するガス濃度検出手段と、ガス濃度検出手段が複数の位置で検出したガスの濃度に基づいて、ガスの発生方向を特定する発生方向特定手段と、発生方向特定手段が特定したガスの発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する表示制御手段とを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明による現場作業支援装置は、作業現場の複数の位置で検出したガスの濃度に基づいて、ガスの発生方向を特定する発生方向特定手段と、発生方向特定手段が特定した発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する表示制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明による現場作業支援方法は、作業現場の複数の位置でガスの濃度を検出し、検出したガスの濃度に基づいて、ガスの発生方向を特定し、特定した発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御することを特徴とする。
【0015】
本発明による現場作業支援プログラムは、コンピュータに、作業現場の複数の位置で検出したガスの濃度に基づいて、ガスの発生方向を特定する発生方向特定処理と、特定した発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する表示制御処理とを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、運用コストをあまりかけることなく、緊急性が求められる現場で作業者に必要な情報を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による現場作業支援システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】作業者が移動する平面位置を示す情報の一例を示す説明図である。
【図3】現場作業支援システムが実行する処理例を示すフローチャートである。
【図4】濃度変動パターンと発生源方向との対応付けの一例を示す説明図である。
【図5】ガス濃度変動量による発生源方向の判定例を示す説明図である。
【図6】ガス濃度変動量による発生源方向の判定例を示す説明図である。
【図7】作業イメージとヘッドマウントディスプレイ装置での表示例とを示す説明図である。
【図8】現場作業支援システムの最小の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ガス爆発やガス中毒による事故を防止するために、ガス会社や工場、または工事現場やプラント設備における工事・保守業務などにおいて、携帯用のガス探知機や作業現場に固定のセンサを配置して、ガス漏れを検出することができ、ガス濃度の数値を液晶モニタに表示、警告ランプを点滅させることや、ブザー音やバイブレーションで告知する方法がある。特に無色無臭のガスや夜間や暗所においては、人間では感知できない危険な状況をガスセンサによって感知・モニタすることが今後ガス事故を防止する上では不可欠である。
【0019】
しかしながら、作業エリアの各所にセンサを設置することは設置費用やモニタするための運用コストが大きくなる問題があり、また液晶モニタで数値データを表示しても数値の意味する人間への作用や毒性などの影響を知らないとどのように行動すればよいのか作業の継続判定が難しい。緊急事態を知らせる警告ランプ、ブザー警告音、バイブレーションだけでは騒音の中や機器を認識できないような動作環境条件によっては、気づきにくい場合もある。これらを改善するために、本実施形態では、運用コストをあまりかけることなく、作業にあまり慣れていない人でも作業指示を適時、適所において作業中のハンズフリーの状態であっても適用可能にする。具体的には、ガスセンサとウエアラブルコンピュータを装着し一定範囲を移動することによってガス濃度の変化を検知し、地磁気センサから得た方位情報に応じて作業者のヘッドマウントディスプレイ装置に有毒ガス特に一酸化炭素の発生源の方向や注意・警告をわかりやすく表示する。
【0020】
騒音が多い場所や暗い現場においても、無色無臭・無味の一酸化炭素ガスの発生状況が可視化され、ガスの発生状況や作業指示をヘッドマウントディスプレイ装置に表示させて気づかせるので、作業者にガス濃度の数値、方位・時間情報の数値データだけではなく知りたい情報を迅速に伝えることができる。
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明による現場作業支援システムの構成の一例を示すブロック図である。
【0022】
本実施形態での現場作業支援システムは、ある地点でのガス濃度を検出し、検出したガス濃度と作業者が所定の方向に所定の距離だけ移動した地点で測定したガス濃度との変動量を求め、変動量に基づいてガスの発生源方向を特定する。そして、現場作業支援システムは、特定した発生源方向と、地磁気センサで検出した作業者の向きとをヘッドマウントディスプレイ装置に重ねあわせて表示するように制御する。
【0023】
本実施形態で用いるヘッドマウントディスプレイ装置は、頭部に装着可能であれば、例えばメガネ型であっても、ヘルメット型であってもよい。また、例えば、ヘッドマウントディスプレイ装置は、網膜上に映像を投影する方式であっても、ハーフミラーを用いた光学方式のものであってもよい。また、例えば、外部を直接見るのではなく、カメラで撮影した外部画像を投影するタイプのものでもよい。本実施形態では、一般的な用法に従い、メガネ型やヘルメット型、網膜照射型や光学方式型等を全て包括してヘッドマウントディスプレイ装置という。
【0024】
図1に示すように、現場作業支援システムは、ガス濃度検出部10、データ出力部11、情報入力部12、変動量計測部13、発生源方向判定部14、地磁気検出部15、作業者方向出力部16、画像処理部17および画像表示部18を含む。本実施形態では、情報入力部12、変動量計測部13、発生源方向判定部14、地磁気検出部15、作業者方向出力部16および画像処理部17は、ウエアラブルコンピュータ(図示せず)に含まれる。
【0025】
ガス濃度検出部10は、ガスの濃度を測定する機能を備えている。ガス濃度検出部10は、具体的には、ガスの濃度を測定可能なセンサによって実現される。
【0026】
データ出力部11は、測定したガスの濃度を示すガス濃度データをウエアラブルコンピュータに送信する送信機能を備えている。データ出力部11は、例えば作業者の操作に従って、または所定期間ごとに自動的にガス濃度データを送信する。例えば、ガス濃度検出部10が検出したガス濃度データをログデータとして一時的に記憶しておき、所定のタイミングで記憶したガス濃度データのログデータを送信する。
【0027】
本実施形態では、ガス濃度検出部10とデータ出力部11とは、ガスセンサとして同一機器内に収容されているものとする。また、この機器は、衣服や装備に簡単に装着できるような構造であり、作業者が移動する際には体の一部に固定されているものとする。具体的に、本実施形態では、作業者が装着するヘルメットにこの機器を固定するものとする。
【0028】
情報入力部12は、データ出力部11が送信したガス濃度データのログデータをウエアラブルコンピュータで受信する機能を備えている。データ出力部11と情報入力部12とは、無線回線または有線回線を介して通信可能である。情報入力部12は、受信したログデータを変動量計測部13と画像処理部17とに出力する。
【0029】
変動量計測部13は、3つの地点を移動した作業者が装着しているガスセンサ(ガス濃度検出部10)によって測定された各地点のガス濃度データを比較し、ガス濃度の変化量を計測する機能を備えている。変動量計測部13は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUによって実現される。なお、本実施形態では、3地点のガス濃度データを比較する処理例について説明するが、これに限らず、例えば、4地点以上のガス濃度データを比較するようにしてもよい。
【0030】
発生源方向判定部14は、変動量計測部13が各地点のガス濃度データを比較して求めた変動量と、予め記憶している濃度変動パターンとに基づいて、ガス濃度の増加または減少傾向を求め、現在地からガス濃度が高い地点に向かう方向を発生源方向として判定する機能を有している。発生源方向判定部14は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUによって実現される。
【0031】
地磁気検出部15は、ウエアラブルコンピュータに搭載され、方位を測定する機能を備えている。地磁気検出部15は、具体的には、地磁気センサによって実現される。
【0032】
作業者方向出力部16は、地磁気検出部15が測定した結果から作業者が向いている方向を作業者方向として特定し、画像処理部17に出力する機能を備えている。
【0033】
画像処理部17は、発生源方向判定部14が判定した発生源方向を示す情報を、作業者方向出力部16が特定した作業者方向を示す画像に重畳する機能を備えている。また、画像処理部17は、情報入力部12が受信したガス濃度データを数値化し、その数値を画像に重畳する機能を有している。また、画像処理部17は、重畳した画像を画像表示部18に出力して表示させる機能を備えている。画像処理部17は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUによって実現される。
【0034】
画像表示部18は、画像処理部17によって処理された画像を表示する機能を備えている。画像表示部18は、例えば、作業者が移動しながら作業者の向きと発生源方向とを確認できるように、頭部付近に装着して固定したヘッドマウントディスプレイ装置によって実現される。
【0035】
画像表示部18は、例えば、ガス濃度測定開始時からの経過時間を示す時間情報やガス濃度の測定値を表示することができる。また、例えば、画像表示部18は、発生源方向とガス濃度データとに基づいて、作業者に対する警告や注意に関する情報を業務指示として表示することができる。
【0036】
次に、現場作業支援システムの動作について説明する。ここでは、図1、図2、図3、図4、図5、図6および図7を参照して、ガスセンサと地磁気センサとを所持した作業者が所定範囲の移動をすると、3ヶ所のガス濃度を検知し、位置情報とガス濃度の変動とを解析した上で、発生源の方向を判定し、ヘッドマウントディスプレイ装置に発生源の方向や作業指示を表示させる動作について説明する。
【0037】
なお、本実施形態では、位置情報とは、ウエアラブルコンピュータが管理する二次元の座標上における点を特定可能な情報である。具体的には、計測を開始する現実の地点Xを座標上の原点とし、作業者の移動方向(地磁気センサで特定して例えば北方向)に向かって、地点Xから所定の距離(10m以内)または特定の時間(例えば10秒以内)移動した地点Yを表す座標上の点を地点Yの位置情報とする。ここでは、例えば、予め移動する距離と方向と(すなわち、地点Y)を定めておき、作業者が定められた方向に定められた距離を移動する。また、例えば、予め作業者の移動速度を求めておき、移動速度および経過時間から求めることができる移動距離と、地磁気センサが検出した作業者方向とに基づいて、地点Yの位置情報を求める。また、例えば、時間をあらわす座標を用いて、作業者の移動方向と経過時間とから各地点の位置情報を求めるようにしてもよい。
【0038】
また、作業者が地点Yで90度回転した方向に向かって、地点X−地点Yと同じ距離または同じ時間移動した地点を測定終了する地点Zとすると、地点Zを表す座標上の点が地点Zの位置情報となる。なお、本実施形態では、2度目のガス濃度測定を行う地点が地点Yであり、3度目のガス濃度測定を行う地点が地点Zである。このように、ウエアラブルコンピュータは、動作開始後、各地点の位置情報を求めて記憶しているものとする。
【0039】
まず図1、図2、図3および図4を参照して、検出したガス濃度の変動量からガスの発生源方向を判定し、作業者方向に応じて発生源方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示させる動作について説明する。
【0040】
図2は、作業者が移動する平面位置情報の一例を示す説明図である。まず作業者は、図2に示される地点Xにおいてヘッドマウントディスプレイ装置に表示される方位情報(例えば、作業者方向)を見ながら、ガス濃度の測定値a(ppm)を確認する。
【0041】
次に、作業者は、方位情報から北の方向(N方向)に向かって10秒間直進した地点Yに移動する。ここで、ガスセンサのガス濃度検出部10は、作業者の操作に従って、または自動的にガス濃度b(ppm)を測定する。
【0042】
次に、作業者は、右回り90度回転した東の方向(E方向)に向きを変えた後、10秒間直進した地点Zに移動する。そして、ガスセンサのガス濃度検出部10は、作業者の操作に従って、または自動的にガス濃度c(ppm)を測定する。
【0043】
現場作業支援システムでは、地磁気センサによって測定した作業者方向を含む方位情報を常にヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御している。そのため、作業者は、自分がどの方角に向かって移動しているかを認識できるようになっている。また、現場作業支援システムでは、ガス濃度を所定期間ごとに測定し、測定結果をその都度ヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する。ここではガスセンサによって5秒ごとにガス濃度を測定し、測定結果をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御するものとする。
【0044】
図3は、現場作業支援システムが実行する処理例を示すフローチャートである。作業者はウエアラブルコンピュータを操作することによってヘッドマウントディスプレイ装置に表示される作業開始ボタンを選択する。すると、作業者が装着しているヘルメットに搭載されたガスセンサのガス濃度検出部10は、地点Xにおけるガス濃度aを測定する(ステップS1)。
【0045】
次いで、データ出力部11は、ガス濃度検出部10が地点Xで検出したガス濃度aを含むログデータをウエアラブルコンピュータの情報入力部12に送信する。
【0046】
また、ウエアラブルコンピュータに搭載された地磁気センサの地磁気検出部15は、地点Xの位置情報(すなわち、二次元の座標上の原点)を検出し、作業者方向出力部16から得られる方位情報と情報入力部12からのガス濃度情報が画像処理部17で読み出されることによって、画像表示部18であるヘッドマウントディスプレイ装置に表示される。
【0047】
具体的には、作業者方向出力部16は、地磁気検出部15が測定した方位に基づいて、作業者方向を特定し、特定した作業者方向を含む方位情報を画像処理部17に出力する。また、情報入力部12は、受信したガス濃度aを含むガス濃度情報を画像処理部17に出力する。すると、画像処理部17は、方位情報を示す画像にガス濃度情報を重畳し、画像表示部18に表示させるように制御する。
【0048】
作業者は、地点Xにおける方位情報を見ながら北(N)方向が画面上部になるように姿勢を回転しながら合わせ、ガス濃度の測定値aを確認する。そして、作業者がウエアラブルコンピュータの測定開始ボタンを押してN方向へ移動すると、現場作業支援システムは、画面上の時間表示でカウントを開始する。そして、ガスセンサのガス濃度検出部10は、所定時間後(本実施形態では10秒後)に作業者が移動した地点Yでガス濃度bを測定する(ステップS2)。このようにガス濃度検出部10は、所定期間ごとまたは作業者の操作に従ってガス濃度を測定する。また、ウエアラブルコンピュータは、例えば、ガス濃度bの測定時に、二次元の座標における地点Yの位置情報を特定する。
【0049】
次いで、変動量計測部13は、地点Yのガス濃度bと地点Xでのガス濃度aとを比較し、ガス濃度変化を示す変動量を計測する(ステップS3)。また、変動量計測部13は、変動量の計測結果を発生源方向判定部14に出力する。そして、発生源方向判定部14は、変動量の計測結果を蓄積データとして保存する。
【0050】
次いで、地点Yにおいて作業者が方位情報を見ながら東(E)方向が画面上部になるように姿勢を右方向に90度回転しながら合わせ、E方向に移動すると、ガス濃度検出部10は、地点Zにおけるガス濃度cを測定する(ステップS4)。また、ウエアラブルコンピュータは、例えば、ガス濃度cの測定時に、二次元の座標における地点Zの位置情報を特定する。
【0051】
次いで、変動量計測部13は、地点Zのガス濃度cと地点Yでのガス濃度bとを比較し、ガス濃度変化を示す変動量を計測する(ステップS5)。また、変動量計測部13は、変動量の計測結果を発生源方向判定部14に出力する。そして、発生源方向判定部14は、変動量の計測結果を蓄積データとして保存する。
【0052】
地点Zのガス濃度cと地点Yでのガス濃度bとが同じである場合、発生源方向判定部14は、地点Zのガス濃度cと地点Xでのガス濃度aとを比較し、8通りの濃度変動パターンのいずれに該当するか判定する。そして、発生源方向判定部14は、該当する濃度変動パターンに対応付けられた方向を発生源方向として決定する(ステップS6)。図4は、濃度変動パターンと発生源方向との対応付けの一例を示す説明図である。なお、図4に示す濃度変動パターンと発生源方向との対応付け例は、作業者が図2に示すように移動することを前提としている。
【0053】
発生源方向判定部14が発生源方向を判定すると、画像処理部17は、作業者方向出力部16が出力した地点Zにおける作業者方向を含む方位情報を示す画像上に発生源方向を示す情報を重畳する。そして、画像処理部17は、地点Zにおける作業者方向であるEast(E)方向に対する発生源方向が示された画像を画像表示部18(ヘッドマウントディスプレイ装置)に表示するように制御する(ステップS7)。
【0054】
本実施形態では、作業者が地点Zから移動したり、体の向きを変えたりしても、地磁気センサが測定する方位の変化に応じて、ヘッドマウントディスプレイ装置で発生源方向を表示する。すなわち、本実施形態では、作業者方向を基準として発生源方向を表示するため、作業者方向が変化すると表示する発生源方向も変化する。したがって、作業者は、ガスの発生源に注意しながら作業を継続できる。また、測定したガス濃度が人間の健康に影響を及ぼす数値に近づいている場合や上回っている場合には、画像処理部17は、注意を喚起するメッセージを読み出し、画像表示部18に表示させるように制御する(ステップS8)。
【0055】
本実施形態では、地点Xにおいて最初にNorth(N)方向に移動し、次にY地点においてEast(E)方向に向きを変えて移動しているが、これに限らず、地点Xにおいて最初にWest(W)方向に移動し、次に右に90度回転してN方向に向きを変えて移動してもよい。この場合には、発生源方向判定部14は、例えば、ガス濃度の測定時に特定した地点X、地点Yおよび地点Zの位置情報に基づいて、各地点の位置関係を特定する。また、この場合には、発生源方向判定部14は、図4に相当する濃度変動パターンと発生源方向との対応付けから、発生源方向を(1)North、(2)Southなどと判定する。
【0056】
例えば、ウエアラブルコンピュータは、予め定められた移動パターンごとに濃度変動パターンと発生源方向とを対応付けて記憶しておく。そして、ガス濃度の測定を開始すると、ウエアラブルコンピュータは、地磁気センサが出力する方位情報の変化に基づいて移動パターンを特定し、特定した移動パターンに対応付けられた濃度変動パターンと発生源方向とに基づいて、発生源方向を判定する。なお、地点Xから地点Yまでの移動時間または移動距離と、地点Yから地点Zまでの移動時間または移動距離とが、ほぼ同一であることが条件である。また、作業者はいずれの移動時間もほぼ同じ速度で移動するものとする。
【0057】
また、本実施形態では、濃度変化の測定誤差を少なくするために、移動時間が10秒以内であり、移動距離も10m程度とする。また、作業者は、地点Yでは立ち止まらず向きを変えるだけで移動を継続する。また、ガスセンサからガス濃度データのログデータを受信する際には、自動でウエアブルコンピュータに入力しているが、手動で入力するようにしてもよい。
【0058】
上記の動作を繰り返すことによって、発生源方向を特定する精度の向上や誤差を少なくすることができる。また、定点での変動量をモニタすることによって危険な状態まで到達時間を推定することができる。また、距離センサを併用すれば、発生源までの距離を推定し、推定した距離を含む作業指示情報を表示することができる。
【0059】
次に、図5、図6および図7を参照して、ガス濃度変動による発生源方向判定例とヘッドマウントディスプレイ装置が表示する画面例とを示す。図5および図6は、ガス濃度変動量による発生源方向の判定例を示す説明図である。図7は、作業イメージとヘッドマウントディスプレイ装置での表示例とを示す説明図である。
【0060】
図5の例では、地点X、地点Y、地点Zのガス濃度、ここでは一酸化炭素(CO)濃度が各々a:50,b:80,c:140(ppm)と測定されたものする。一酸化炭素は空気とほぼ同じ重さで発生源に近いほどCO濃度は高くなり、濃度分布値がほぼ発生源からの距離に応じて反比例して低くなるものとする。
【0061】
この例では、a<b<cの濃度変動パターン(3)に該当するため、図4の方向判定結果より発生源方向をNE方向と判定することができる。現場作業支援システムは、地点Yにおける濃度変化30ppmと地点Zにおける濃度変化60ppmとから、発生源方向をややEast(E)よりと特定して、表示装置に表示する。ここで、地点Yにおける濃度変化がほとんどない状態である場合には、即ちa=bとなり、発生源方向をEと判定することができる。
【0062】
一方、図6の例では、地点X、地点Y、地点Zのガス濃度を各々a:50,b:110,c:140(ppm)と測定している。そのため、現場作業支援システムは、a<b<cの濃度変動パターン(3)に該当するため、図4の方向判定結果よりNE方向と判定するが、地点Yにおける濃度変化60ppmと地点Zにおける濃度変化30ppmとから、発生源方向をややNorth(N)よりと特定して、表示装置に表示する。
【0063】
ここで、地点Zにおける濃度変化がほとんどない状態であると、即ちb=cとなり、現場作業支援システムは、発生源方向をNと判定する。ガス濃度の変動量に応じてガスの発生源方向は必ずしも8方向に限定されないが、ここでは迅速な判断が求められるため画像には8方向のいずれかを表示する。
【0064】
以上のように、本実施形態では、ガスセンサと地磁気センサとを所持した作業者が所定範囲の移動をすると、3ヶ所のガス濃度の変化を検知し、位置情報とガス濃度データの変動とを解析した上で、発生源の方向を判定し、作業者のヘッドマウントディスプレイに発生源の方向や作業指示を表示する。そのため、運用コストをあまりかけることなく、緊急性が求められる現場で作業者に必要な情報を示すことができる。
【0065】
上記のように、現場の作業者は地磁気センサを搭載したウエアラブルコンピュータを携帯しており、コンピュータの情報出力・表示するヘッドマウントディスプレイ装置とヘルメットに小型の携帯用ガスセンサを装着するだけである。また、ガスセンサは無線または有線通信によってウエアラブルコンピュータと通信可能であり、ヘルメット付近におけるガス濃度がガスセンサで検知されるとウエアラブルコンピュータにデータログが記録される。
【0066】
これらの装置を身につけた作業員が特別な計測手段を意識することなく作業中に短時間で一定範囲を移動することにより、3ヶ所の地点でガス濃度が測定され、ウエアラブルコンピュータの位置情報とモニタ地点におけるガス濃度の変化とによる解析結果から発生源の方向を即座に判定して、数値データだけではなく作業員へ注意内容、移動するべき方向などをヘッドマウントディスプレイ装置にわかりやすく表示する。そのため、作業者が作業に集中して周囲の状況を十分認識できない場合であっても、作業行動を迅速に指示することによって事故を防止し安全な作業環境を維持することができる。
【0067】
また、特許文献4に記載された方法では、作業者が立入禁止区域に進入すると安全上の問題が発生したと判定し、警告メッセージをヘッドマウントディスプレイ装置に表示するものであるため、作業者は元に戻る以外に、どの方向に移動すると危険かを判別することができない。しかし、本実施形態では、地磁気センサによって方位情報が常にヘッドマウントディスプレイ装置に表示し、作業者がどの方角に向かって移動しているかを認識できるため、状況を判断でき、次の行動に関する情報提供を支援するには効果的である。
【0068】
また、特許文献5に記載された方法では、センサを装着して使用者の位置が知られていて一人または複数の人が動き回ることによって汚染物質レベルのマップを自動作成するため、非常に手間がかかる。しかし、本実施形態では、ガス分布マップを作成するのではなく、ガスの発生方向を迅速に示すものであるため、緊急性が求められる現場では効果的である。また、この方法を繰り返すことによって精度の向上や誤差を少なくすることもできる。
【0069】
以上に説明したように、本発明によれば次のような効果を得ることができる。通常、一酸化炭素(CO)などガス発生エリアにおいては、ガスセンサを設置したり作業員がガスセンサを携帯してCO濃度や積算値を測定・表示して、警報ランプ、ブザー、バイブレーションを用いて告知できるが、この方法では作業員がセンサ計を見なくても常にヘッドマウントディスプレイ装置で現場における作業環境を知ることができるので安全性の向上を図ることができる。
【0070】
また、作業の継続を迅速に判断するにあたり、所定範囲内の3ヶ所でのCO濃度を測定することによって、発生源の方向を簡単に判定することができる。
【0071】
また、作業者への警告表示や作業指示をわかりやすくヘッドマウントディスプレイ装置に表示させることによって作業確認、事故防止の実行ができる。
【0072】
また、暗い場所や騒音が大きい場所でも、無色無臭で危険なCOの発生状況を可視化できる。さらに、定点で変動をモニタすれば危険に到る作業時刻を推定して表示させる使い方にも応用できる。
【0073】
次に、本発明による現場作業支援システムの最小構成について説明する。図8は、現場作業支援システムの最小の構成例を示すブロック図である。図8に示すように、現場作業支援システムは、最小の構成要素として、ガス濃度検出手段1、発生方向特定手段2および表示制御手段3を含む。
【0074】
図8に示す最小構成の現場作業支援システムでは、発生方向特定手段2は、ガス濃度検出手段1が複数の位置で検出したガスの濃度に基づいて、ガスの発生方向を特定する。そして、表示制御手段3は、発生方向特定手段2が特定したガスの発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する。
【0075】
従って、最小構成の現場作業支援システムによれば、運用コストをあまりかけることなく、緊急性が求められる現場で作業者に必要な情報を示すことができる。
【0076】
なお、本実施形態では、以下の(1)〜(5)に示すような現場作業支援システムの特徴的構成が示されている。
【0077】
(1)現場作業支援システムは、作業現場においてガスの濃度を検出するガス濃度検出手段(例えば、ガス濃度検出部10によって実現される)と、ガス濃度検出手段が複数の位置(例えば、地点X、地点Yおよび地点Z)で検出したガスの濃度に基づいて、ガスの発生方向を特定する発生方向特定手段(例えば、変動量計測部13と発生方向判定部14とによって実現される)と、発生方向特定手段が特定したガスの発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置(例えば、画像表示部18によって実現される)に表示するように制御する表示制御手段(例えば、画像処理部17によって実現される)とを含むことを特徴とする。
【0078】
(2)現場作業支援システムにおいて、発生方向特定手段は、ガス濃度検出手段が複数の位置でガスの濃度を検出すると、位置を示す位置情報(例えば、二次元座標上で示される地点X、地点Yおよび地点Zの位置情報)と、各位置で検出したガスの濃度を比較した比較結果(例えば、変動量計側部13が計測したガス濃度の変動量)とに基づいて、ガスの発生方向を特定するように構成されていてもよい。
【0079】
(3)現場作業支援システムにおいて、作業者が向いている方向を検出可能な作業者方向検出手段(例えば、地磁気検出部15と作業者方位情報出力部16とによって実現される)を含み、表示制御手段は、作業者方向検出手段が検出した方向に応じて、発生方向特定手段が特定したガスの発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御するように構成されていてもよい。
【0080】
(4)現場作業支援システムにおいて、作業者方向検出手段が検出した作業者が向いている方向の変化に基づいて、ガス濃度検出手段がガスの濃度を検出した位置を特定する位置特定手段を含み、発生方向特定手段は、位置特定手段が特定した位置を示す位置情報と、各位置で検出したガスの濃度を比較した比較結果とに基づいて、ガスの発生方向を特定するように構成されていてもよい。
【0081】
(5)現場作業支援システムにおいて、表示制御手段は、ガス濃度検出手段が検出したガスの濃度が所定値以上である場合に、ヘッドマウントディスプレイ装置に警告を表示させるように制御するように構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、プラント設備を保守する業務を支援する用途に適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 ガス濃度検出手段
2 発生方向特定手段
3 表示制御手段
10 ガス濃度検出部
11 データ出力部
12 情報入力部
13 変動量計測部
14 発生源方向判定部
15 地磁気検出部
16 作業者方向出力部
17 画像処理部
18 画像表示制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場におけるガスの濃度を検出するガス濃度検出手段と、
前記ガス濃度検出手段が複数の位置で検出した前記ガスの濃度に基づいて、前記ガスの発生方向を特定する発生方向特定手段と、
前記発生方向特定手段が特定した前記ガスの発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する表示制御手段とを
含むことを特徴とする現場作業支援システム。
【請求項2】
発生方向特定手段は、ガス濃度検出手段が複数の位置でガスの濃度を検出すると、前記位置を示す位置情報と、各位置で検出した前記ガスの濃度を比較した比較結果とに基づいて、前記ガスの発生方向を特定する
請求項1記載の現場作業支援システム。
【請求項3】
作業者が向いている方向を検出可能な作業者方向検出手段を含み、
表示制御手段は、前記作業者方向検出手段が検出した方向に応じて、発生方向特定手段が特定したガスの発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する
請求項1又は請求項2記載の現場作業支援システム。
【請求項4】
作業者方向検出手段が検出した作業者が向いている方向の変化に基づいて、ガス濃度検出手段がガスの濃度を検出した位置を特定する位置特定手段を含み、
発生方向特定手段は、前記位置特定手段が特定した位置を示す位置情報と、各位置で検出した前記ガスの濃度を比較した比較結果とに基づいて、ガスの発生方向を特定する
請求項3記載の現場作業支援システム。
【請求項5】
表示制御手段は、ガス濃度検出手段が検出したガスの濃度が所定値以上である場合に、ヘッドマウントディスプレイ装置に警告を表示させるように制御する
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の現場作業支援システム。
【請求項6】
作業現場の複数の位置で検出したガスの濃度に基づいて、前記ガスの発生方向を特定する発生方向特定手段と、
前記発生方向特定手段が特定した前記発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する表示制御手段とを
備えたことを特徴とする現場作業支援装置。
【請求項7】
作業現場の複数の位置でガスの濃度を検出し、
検出した前記ガスの濃度に基づいて、前記ガスの発生方向を特定し、
特定した前記発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する
ことを特徴とする現場作業支援方法。
【請求項8】
コンピュータに、
作業現場の複数の位置で検出したガスの濃度に基づいて、前記ガスの発生方向を特定する発生方向特定処理と、
特定した前記発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する表示制御処理とを
実行させるための現場作業支援プログラム。
【請求項1】
作業現場におけるガスの濃度を検出するガス濃度検出手段と、
前記ガス濃度検出手段が複数の位置で検出した前記ガスの濃度に基づいて、前記ガスの発生方向を特定する発生方向特定手段と、
前記発生方向特定手段が特定した前記ガスの発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する表示制御手段とを
含むことを特徴とする現場作業支援システム。
【請求項2】
発生方向特定手段は、ガス濃度検出手段が複数の位置でガスの濃度を検出すると、前記位置を示す位置情報と、各位置で検出した前記ガスの濃度を比較した比較結果とに基づいて、前記ガスの発生方向を特定する
請求項1記載の現場作業支援システム。
【請求項3】
作業者が向いている方向を検出可能な作業者方向検出手段を含み、
表示制御手段は、前記作業者方向検出手段が検出した方向に応じて、発生方向特定手段が特定したガスの発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する
請求項1又は請求項2記載の現場作業支援システム。
【請求項4】
作業者方向検出手段が検出した作業者が向いている方向の変化に基づいて、ガス濃度検出手段がガスの濃度を検出した位置を特定する位置特定手段を含み、
発生方向特定手段は、前記位置特定手段が特定した位置を示す位置情報と、各位置で検出した前記ガスの濃度を比較した比較結果とに基づいて、ガスの発生方向を特定する
請求項3記載の現場作業支援システム。
【請求項5】
表示制御手段は、ガス濃度検出手段が検出したガスの濃度が所定値以上である場合に、ヘッドマウントディスプレイ装置に警告を表示させるように制御する
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の現場作業支援システム。
【請求項6】
作業現場の複数の位置で検出したガスの濃度に基づいて、前記ガスの発生方向を特定する発生方向特定手段と、
前記発生方向特定手段が特定した前記発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する表示制御手段とを
備えたことを特徴とする現場作業支援装置。
【請求項7】
作業現場の複数の位置でガスの濃度を検出し、
検出した前記ガスの濃度に基づいて、前記ガスの発生方向を特定し、
特定した前記発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する
ことを特徴とする現場作業支援方法。
【請求項8】
コンピュータに、
作業現場の複数の位置で検出したガスの濃度に基づいて、前記ガスの発生方向を特定する発生方向特定処理と、
特定した前記発生方向をヘッドマウントディスプレイ装置に表示するように制御する表示制御処理とを
実行させるための現場作業支援プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−168683(P2012−168683A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28266(P2011−28266)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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