説明

球体洗浄装置

【課題】玉の洗浄の仕上がり度合いを均一にすることが可能となる球体洗浄装置を提供する。
【解決手段】玉を保持するポケット7が複数形成され当該ポケット7に保持された玉を搬送する搬送装置1と、この搬送装置1によって搬送されている玉に接触するブラシ21,22を有しているブラシ装置4とを備えている。搬送装置1は、ポケット7が玉の搬送方向及びその直交方向に複数形成され、かつ、一対のプーリー11,12間に掛け渡され無限軌道を構成している無端ベルト13と、この無端ベルト13をプーリー11,12間で回転させる駆動部14とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球体の表面を洗浄する球体洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、玉軸受に用いられている玉(球体)の表面に異物が多く残留していると、玉軸受の回転の際に発生する音のレベルが高くなってしまう。そこで、作製された玉の表面を洗浄し、付着している異物を除去する必要がある。
例えば特許文献1に記載されている球体洗浄装置は、玉を保持するポケット(穴)が複数形成された回転円板、この回転円板の下に対向して設けられポケットに入っている玉が載った状態となる固定円板、及び、ブラシ装置を備えている。回転円板が回転することによりポケット内で搬送される玉の表面を、ブラシ装置によって洗浄することができる。
【0003】
図11は、このような球体洗浄装置の説明図である。この球体洗浄装置において、供給部83から回転円板85に供給された玉は、当該回転円板85に形成されているポケット87に入ることができ、固定円板86に対して回転円板85が中心線C回りに回転すると、前記玉は、ポケット87内で回転(自転)しながら受け取り部84まで搬送される。
ブラシ装置は、三つの回転ブラシ88a,88b,88cを有している。図外のノズルから回転円板85に洗浄液が供給され、回転円板85によって搬送される玉は各回転ブラシの下を通過し、玉の表面の洗浄(異物の除去)が行われる。
受け取り部84に到達した玉は、ポケット87から取り出され、洗浄された玉は、次の工程へと進む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−277226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の球体洗浄装置では、回転円板85が回転することでポケット87に入った玉を搬送している間に、回転ブラシ88a,88b,88cによって、当該玉の表面を洗浄することができ、この回転円板85には径方向及び周方向に複数のポケット87が形成されているので、複数の玉を洗浄することができる。
【0006】
しかし、図11(a)に示しているように、径方向内側に形成されているポケットに入っている玉81と、径方向外側に形成されているポケットに入っている玉82とでは、供給部83から受け取り部84までの移動距離が大きく異なる。すなわち、径方向外側の玉82は、径方向内側の玉81よりも、固定円板86上を転がる距離が長くなる。
このため、径方向外側の玉81の方がより多く洗浄され、外側の玉81と内側の玉82とで洗浄の仕上がり具合が異なってしまう。
このように従来の球体洗浄装置では、玉が入るポケットの位置によって、洗浄の仕上がり度合いに差が生じてしまい、製品にばらつきが発生してしまうという問題点を有する。
【0007】
そこで、本発明は、球体(玉)の洗浄の仕上がり度合いを均一にすることが可能となる球体洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の球体洗浄装置は、球体を保持するポケットが複数形成され当該ポケットに保持された前記球体を搬送する搬送装置と、前記搬送装置のうち球体の搬送方向の上流側部に前記球体を供給する供給部と、前記搬送装置によって搬送された球体を受け取る受け取り部と、前記搬送装置によって搬送されている前記球体に接触するブラシ、及び、前記ブラシを回転させるブラシ回転部を有しているブラシ装置とを備え、前記搬送装置は、前記ポケットが前記球体の搬送方向及びその直交方向に複数形成され、かつ、一対の回転車間に掛け渡され無限軌道を構成している無端コンベアと、前記無端コンベアを前記回転車間で回転させる駆動部とを有していることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、無限軌道を構成している無端コンベアには、球体の搬送方向及びその直交方向に複数のポケットが形成されており、また、無端コンベアは一対の回転車間に掛け渡されているので、当該無端コンベアが駆動部によって回転車間で回転すると、前記ポケットに保持された球体は、回転車間で搬送方向が直線方向となって移動する。このため、球体の搬送方向及びその直交方向に形成されている複数のポケットに保持されている玉それぞれは、どれも搬送方向に同じ移動距離を有することができ、当該搬送の際にブラシによって洗浄される玉の洗浄の仕上がり度合いを均一にすることが可能となる。なお、以下に説明する実施形態では、無端コンベアは無端ベルトであり、この場合、回転車はプーリーである。
【0010】
また、前記球体洗浄装置では、前記球体の搬送方向が低い位置から高い位置へと向かうように前記無端コンベアは傾斜して配置されているのが好ましい。
搬送方向の下流側に進むにしたがって球体の洗浄は進むが、仮に球体の搬送方向が高い位置から低い位置へと向かうように無端コンベアが傾斜して配置されていると、搬送方向の上流側(高い位置)で球体から剥がれた異物が、搬送方向の下流側(下位置)へ落下してしまい、洗浄された球体に異物が再付着するという不具合がある。
しかし、前記のとおり、球体の搬送方向が低い位置から高い位置へと向かうように無端コンベアが傾斜して配置されているので、前記のような不具合の発生を防ぐことができる。なお、搬送方向の下流側(高い位置)で球体から異物が剥がれ落ち、搬送方向の上流側(低い位置)で当該異物が別の球体に付着しても、当該別の球体はこれから洗浄されるため、問題はない。
【0011】
また、前記搬送装置は、前記ポケットに入って搬送される前記球体を上面に載せる支持板を有し、前記ブラシ回転部によって回転する前記ブラシの前記球体に対する移動方向は、当該球体の搬送方向に交差する方向であるのが好ましい。
この場合、ポケットに入って搬送される球体は、支持板の上面に載った状態であることから、球体は支持板の上面を搬送方向に転がりながら搬送されることになる。そして、このように転がりながら搬送される玉それぞれに対して接触するブラシの移動方向が、搬送方向に交差する方向であるので、球体は当該ブラシに接触すると他の方向にも回転する。この結果、転がりながら搬送される球体の全面を、ブラシによって洗浄することが可能となり、玉の洗浄の仕上がり度合いをより一層均一にすることが可能となる。
【0012】
また、前記球体洗浄装置において、前記球体を保持した前記ポケットが、搬送方向の下流側にある前記回転車の外周側を通過することにより上下反転するまでの間で、当該ポケットから自由落下する球体を受ける位置に、前記受け取り部は設けられているのが好ましい。
この場合、球体を保持したポケットが、搬送方向の下流側にある回転車の外周側を通過することにより上下反転するまでの間で、球体がポケットから自由落下することができ、このようにして自由落下した球体は、受け取り部によって、次々と自動的に受け取られる。つまり、ポケットからの球体の取り出しが簡単となる。
【0013】
そして、このように受け取り部が設けられている場合において、前記無端コンベアは、複数枚の板部材が搬送方向に連結された構成を有し、前記板部材それぞれには、搬送方向に直交する方向に一列に並びかつ搬送方向の前方に向かって当該板部材の縁部で開口している切り欠きが、前記ポケットとして形成されているのが好ましい。
前記のとおり、球体を保持したポケットが、搬送方向の下流側にある回転車の外周側を通過することにより上下反転するまでの間で、球体がポケットから自由落下するが、ポケットは、搬送方向の前方に向かって板部材の縁部で開口している切り欠きであるため、ポケットが回転車の外周側を通過している間に、球体は切り欠きの開口部から自由落下しやすくなる。このため、ポケットに球体が残ってしまうのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の球体洗浄装置によれば、ポケットに保持された球体は、回転車間で搬送方向が直線方向となって移動するため、球体の搬送方向及びその直交方向に形成されている複数のポケットに保持されている玉それぞれは、どれも搬送方向に同じ移動距離を有する。このため、搬送の際にブラシによって洗浄される玉の洗浄の仕上がり度合いを均一にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の球体洗浄装置の実施の一形態を示す概略側面図である。
【図2】供給部及びその周囲の説明図である。
【図3】受け取り部及びその周囲の説明図である。
【図4】無端コンベアの説明図である。
【図5】搬送装置の玉の搬送路及びブラシを平面的に見た説明図である。
【図6】搬送装置の玉の搬送路及び他の形態のブラシを平面的に見た説明図である。
【図7】ブラシ及びその周囲を幅方向に見た図である。
【図8】ブラシ及びその周囲を搬送方向に見た図である。
【図9】無端コンベア(他の形態)の説明図である。
【図10】受け取り部及びその周囲の説明図である。
【図11】従来の球体洗浄装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の球体洗浄装置の実施の一形態を示す概略側面図である。この球体洗浄装置によって洗浄が行われる対象(球体)は、例えば玉軸受に組み込まれる玉であり、この玉は、高い寸法精度を確保する必要があるために、仕上げ加工が施されたものである。この球体洗浄装置は、玉軸受に組み込まれる玉の表面を洗浄し、表面に付着している異物を除去することができる。なお、球体(玉)の材質は、鋼、セラミック、樹脂等がある。
【0017】
本発明の球体洗浄装置は、前記玉を転がしながら搬送する搬送装置1と、この搬送装置1のうち玉の搬送方向(矢印A方向)で上流側部1aに玉を供給する供給部2と、搬送装置1が搬送した玉を下流側部1bで受け取る受け取り部3と、搬送装置1が搬送している玉に接触するブラシ21,22を有しているブラシ装置4とを備えている。また、この球体洗浄装置は、ブラシ21,22によって玉が洗浄される領域に洗浄液(洗浄油)を供給するノズル5a,5bを備えている。
【0018】
搬送装置1は、後にも説明するが、一対のプーリー(回転車)11,12と、これらプーリー11,12間に掛け渡され無限軌道を構成している無端ベルト(無端コンベア)13と、この無端ベルト13をプーリー11,12間で回転させる駆動部14とを有している。無端ベルト13には、前記玉が入って当該玉を保持するポケット7が複数形成されており、このポケット7に保持された玉が、無端ベルト13によって搬送される。無端ベルト13による玉の搬送方向を、矢印A方向として示している。
【0019】
図2は前記供給部2及びその周囲の説明図である。本実施形態の供給部2は、搬送装置1の上流側部1aに向かって延びている斜面31を有したシューターからなり、この斜面31上を玉8が上流側部1aに向かって転がることができる。上流側部1aに到達した玉8は、斜面31から無端ベルト13のポケット7へと自動的に入ることができる。
【0020】
図3は前記受け取り部3及びその周囲の説明図である。受け取り部3は、搬送装置1の下流側部1bに設けられており、球体13から自由落下する玉8を受け、当該玉8を次の工程(検査工程)へと搬出するための搬出部32(図1参照)へと導く通路33を有している。玉8はこの通路33を転がり、搬出部32に到達する。
通路33は、玉8を保持したポケット7が、搬送方向の下流側にあるプーリー12の外周側を通過することにより上下反転するまでの間で、当該ポケット7から自由落下する玉8を受ける位置に設けられている。
【0021】
図1において、前記ノズル5a,5bは同じ構成であり、玉の搬送方向上流側に設けられている第一のノズル5aと、下流側に設けられている第二のノズル5bとを有している。ノズル5a,5bそれぞれは、無端ベルト13の玉が存在している領域のうち、当該玉の搬送方向に直交する方向(以下、幅方向ともいう)のほぼ全域に、洗浄液を供給することができる。
【0022】
搬送装置1について説明する。
プーリー11,12は、左右水平方向に向く中心線を有した配置にあり、プーリー11,12の中心線方向が前記幅方向と平行となる。
無端ベルト13は、図4に示しているように、複数枚の矩形の板部材15が搬送方向(矢印A方向)に連結された構成であり、隣り合う板部材15,15同士が、ピン16aと連結片16bとによって連結され、無限軌道を構成している。
なお、本実施形態では、本発明が備えている無端コンベアを無端ベルト13として説明しているが、無端コンベアはチェーンコンベアであってもよい。この場合、回転車としてプーリー11,12の代わりにスプロケットを用いる。そして、図示しないが、チェーンコンベアは、左右に環状の無端チェーンを有し、このチェーンに、矩形の前記板部材15が連結片によって搬送方向に複数枚連続的に取り付けられ、板部材15が連続して設けられることにより無端帯状を形成し、無限軌道を構成している。
【0023】
各板部材15には、複数のポケット7が形成されており、ポケット7は、玉の搬送方向及びその直交方向に並んで複数形成されている。なお、図4の実施形態では、ポケット7は、板部材15を厚さ方向に貫通している穴からなり、各板部材15に、搬送方向に3つ、幅方向に6つのポケット7が形成されている。一つのポケット7に一つの玉8が専有する大きさに、各ポケット7は設定されている。
【0024】
また、図2及び図3に示しているように、搬送装置1は、ポケット7に入って搬送される玉8を上面17に載せた状態とする支持板18を有している。支持板18はプーリー11,12間に固定状態で設置されており、本実施形態では支持板18は、無端ベルト13の往路側部(玉8を保持する側の部分)の下方に設けられており、無端ベルト13に対向した板部材からなる。
無端ベルト13が回転することによりポケット7に入って搬送される玉8は、支持板18の上面17に載った状態にあることから、各玉8は支持板18の上面17を搬送方向に転がりながら搬送されることになる。
供給部2から玉8がポケット7に入る位置(図2参照)から、ポケット7より玉8が離脱する位置(図3参照)までが、搬送装置1における玉8の搬送路となる。
【0025】
プーリー11,12のうちの一方が駆動プーリーであり、前記ベルト駆動部14は、この駆動プーリーを回転駆動する。駆動プーリーが回転することで、無端ベルト13は回転することができる。ベルト駆動部14は、図示しないが、モータ、減速器等を備えた構成であり、モータの回転力を駆動プーリーに伝えることができる。
【0026】
図1において、ブラシ装置4は、搬送装置1によって搬送されている玉に接触するブラシ21,22、及び、これらブラシ21,22を回転駆動するブラシ回転部23,24を有している。
図5は、搬送装置1の玉の搬送路(往路)B及びブラシ21,22を平面的に見た説明図である。図5に示している実施形態では、ブラシ21,22は、プーリー11,12間における無端ベルト13に直交する回転中心c1,c2回りに回転する構成であり、円形の基板25から無端ベルト13側に向かってブラシの毛が延びている。
【0027】
ブラシ21,22の直径は、無端ベルト13のうちのポケット7が形成されている領域の幅方向寸法よりも、大きく設定されており、全てのポケット7で保持される玉8にブラシ21,22は接触することができる。つまり、全ての玉8がブラシ21,22の下を通過する。ブラシ回転部23,24それぞれは、モータ、減速器等を備えた構成であり、モータの回転力をブラシ21,22に伝えることができる。
【0028】
ブラシ装置4は様々な構成とすることができるが、図6のように構成するのが好ましい。図6のブラシ装置4は、搬送装置1によって搬送されている玉に接触するブラシ26,27、及び、これらブラシ26,27を回転させるブラシ回転部28,29を有している。
ブラシ26,27は同じ構成であり、ブラシ26を代表して説明する。図7は、ブラシ26及びその周囲を幅方向(図6の矢印E方向)に見た図であり、図8は、ブラシ26及びその周囲を搬送方向(図6の矢印F方向)に見た図である。
【0029】
ブラシ26は、一対のプーリー34,35と、これらプーリー34,35間に掛け渡され無限軌道を構成している無端ベルト30とを有し、この無端ベルト30の全周にブラシの毛26aが設けられている。
ブラシ回転部28は、プーリー34,35のいずれか一方を回転駆動するものである。ブラシ回転部28は、モータ、減速器等を備えた構成であり、モータの回転力をブラシ26(無端ベルト30)に伝えることができる。
そして、このブラシ回転部28によって回転するブラシ26の、玉8に対する移動方向は、当該玉8の搬送方向に交差する方向である。本実施形態では、プーリー34,35の中心線方向が搬送方向に平行であり、ブラシ26の毛26aの移動方向(図8における矢印G方向)は、玉8の搬送方向に直交する方向(幅方向)となる。また、毛26aの移動方向は、当該直交方向(幅方向)に向かって直線的である。
【0030】
前記搬送装置1によれば、ポケット7に入って搬送される玉8は、図2及び図3に示しているように、支持板18の上面17に載った状態であることから、当該玉8は支持板18の上面17の上を搬送方向の一方向に転がりながら搬送されることになる。
そして、このように一方向に転がりながら搬送される玉8それぞれに対して、図6に示したブラシ装置4によれば、ブラシ26の毛26aの移動方向が前記搬送方向に直交する方向であるため、一方向に転がりながら搬送される玉8は、回転するブラシ26に接触すると他の方向にも回転(自転)し、この結果、玉8の全面をブラシ26によって洗浄することが可能となる。
【0031】
すなわち、仮に毛の移動方向が、玉の搬送方向と同方向又は反対方向であれば、毛の移動方向と、玉の転がり方向(自転方向)とが同方向又は反対方向となり、球形状である玉の同じ領域のみが集中して毛と接触する。しかし、図6、図7及び図8のブラシ装置4の構成によれば、搬送装置1による玉8の転がり方向(自転方向:矢印r)と直交する方向に毛26aが送られるため、当該毛26aに接触した玉8の転がり方向(自転方向)は、単純な矢印r方向とは異なり、ランダムな方向となり、玉8の全面をブラシ26によって洗浄することが可能となる。
【0032】
また、この場合においても、ブラシ26の幅寸法は、無端ベルト13内で玉8が存在している領域の幅寸法よりも大きく、全てのポケット7で保持される玉8にブラシ26は接触することができる。つまり、全ての玉8がブラシ26を通過する。
【0033】
以上の前記実施形態による球体洗浄装置によれば、無限軌道を構成している無端ベルト13には、玉8の搬送方向及びその直交方向に並んで複数のポケット7が形成されており、また、この無端ベルト13は平行に配置された一対のプーリー11,12間に掛け渡されている。このため、無端ベルト13がプーリー11,12間で回転すると、ポケット7に保持された玉8は、プーリー11,12間で搬送方向が直線方向となって移動する。このため、ポケット7の幅方向の位置に関係なく、複数のポケット7に保持されている玉8それぞれは、どれも搬送方向に同じ移動距離を有することができる。この結果、搬送の際にブラシによって洗浄される玉の洗浄の仕上がり度合いを均一にすることが可能となる。
【0034】
また、搬送方向で上流側にあるブラシ(21,26)による玉の洗浄領域を、粗洗浄領域とし、搬送方向で下流側にあるブラシ(22,27)による玉の洗浄領域を、仕上げ洗浄領域とすることができる。粗洗浄領域では、玉に付着している比較的大きな異物を除去し、仕上げ洗浄領域では、残っている小さな異物を除去する。このために、粗洗浄領域と仕上げ洗浄領域とでブラシの移動速度(回転速度)を異ならせてもよい。例えば仕上げ洗浄領域では、粗洗浄領域よりも、ブラシの移動速度を遅くしてもよい。
【0035】
このように搬送装置1及びブラシ装置4を構成することにより、搬送方向の下流側に進むにしたがって玉8の洗浄は進む。
そして、図1の実施形態では、玉の搬送方向が低い位置から高い位置へと向かうように、無端ベルト13は上り勾配で傾斜して配置されている。これは、本実施形態と反対に、(図示しないが)仮に玉の搬送方向が高い位置から低い位置へと向かうように無端ベルトが下り勾配で傾斜して配置されている場合、搬送方向の上流側(高い位置)にある粗洗浄領域で玉から剥がれた異物及び洗浄液に含まれる異物が、搬送方向の下流側(下位置)にある仕上げ洗浄領域へ落下してしまい(流れてしまい)、仕上げ洗浄領域にある玉に、粗洗浄領域で落とされた異物が再付着するという不具合がある。
【0036】
しかし、本実施形態では、玉8の搬送方向が低い位置から高い位置へと向かうように無端ベルト13が傾斜して配置されているので、前記のような不具合の発生を防ぐことができる。なお、搬送方向の下流側(高い位置)にある仕上げ洗浄領域で、小さな異物が玉から剥がれ落ち、当該小さな異物が、搬送方向の上流側(低い位置)にある粗洗浄領域にある玉に付着しても、当該玉はこれから洗浄されるため、問題はない。
【0037】
また、球体洗浄装置は、図示しないが、洗浄液を溜めるタンクと、このタンクから前記ノズル5a,5b(図1参照)に洗浄液を送るポンプと、洗浄液を繰り返し使用するために洗浄液を通過させるフィルタとを有している。一方のノズル5aは、前記粗洗浄領域に洗浄液を供給し、他方のノズル5bは、前記仕上げ洗浄領域に洗浄液を供給する。そこで、仕上げ洗浄領域のためのノズル5bに洗浄液を送る流路に設けられたフィルタは、粗洗浄領域のためのフィルタよりも、メッシュが細かいものとするのが好ましい。これにより、前記タンクを、仕上げ洗浄領域及び粗洗浄領域のために、共通のものとしても、仕上げ洗浄領域に与える洗浄液には異物がより少ないものとすることが可能となる。
【0038】
また、無端ベルト13の傾斜角度は変更可能である。このために、無端ベルト13及びプーリー21,22を含む搬送本体部10(図1参照)は、幅方向の水平線回りに回動自在として、支持台6上に設けられており、さらに、この支持台6から立設された支柱9a,9bによって支持されている。このため、この支柱9a,9bの高さを変更することで、無端ベルト13の傾斜角度を変更することができる。例えば、下側のプーリー11側を中心として搬送本体部10を回動させ、無端ベルト13の傾斜角度を変更することで、上側にあるプーリー12の高さを変更することができる。
【0039】
このようにプーリー12の高さを変更することで、次の工程(検査工程)へと玉を搬出するための搬出部32の高さ変更に対応することができる。つまり、例えば、搬出部32の高さが低くなっても、プーリー12の高さを下げることができ、また、これに応じて受け取り部3の高さも下げることができる。
また、上側のプーリー12側を中心として無端ベルト13の傾斜角度を変更することにより、下側のプーリー11の高さを変更することができ、この場合、供給部2の高さ位置の調整を行うことが可能である。
【0040】
なお、前記ブラシ装置4が有しているブラシも無端ベルト13と一体的に移動することができ、無端ベルト13の傾斜角度の変更に合わせて、ブラシの傾斜角度も変更される。
また、受け取り部3及び供給部2の高さを調整するために、無端ベルト13の長さ、つまり、プーリー11,12間の距離を変更してもよい。
【0041】
さらに、本実施形態では、図3に示しているように、玉8を保持したポケット7がプーリー12の外周側を通過することにより上下反転するまでの間で、玉8がポケット7から自由落下する位置に、受け取り部3の通路33が設けられているため、自由落下した玉8を、受け取り部3の通路33によって、次々と自動的に受け取ることができ、ポケット7からの玉8の取り出しが簡単となる。
【0042】
各ポケット7は、一つの玉8のみが入る大きさとしていることから、また、玉8は前記のとおり洗浄液によって洗浄されることから、玉8はポケット7に付着しやすい。特に玉8が小さく軽い場合、自由落下が可能となる位置に玉8が到達しても、洗浄液による粘性等が原因となって、玉8がポケット7に取り残されることが考えられる。
【0043】
そこで、図9に示しているように、無端ベルト13を、複数枚の板部材115が搬送方向(矢印A方向)に連結された構成とし、各板部材115に形成するポケット7を、穴ではなく、切り欠きとしている。この切り欠きは、搬送方向に直交する方向に一列に並び、かつ、搬送方向の前方に向かって各板部材115の縁部120で開口している。すなわち、図9に示しているポケット7は、板部材115をU字形に複数切り欠いて得られたものであり、縁部120に切り欠きの開口部121が形成されている。
【0044】
このポケット7の形状によれば、前記のとおり(図3参照)、玉8を保持したポケット7がプーリー12の外周側を通過することにより上下反転するまでの間に、玉8がポケット7から自由落下するが、ポケット7は、板部材115の縁部120に開口部121が形成されている切り欠きにより構成されているため、ポケット7がプーリー12の外周側を通過している間に、玉8は切り欠きの開口部121から容易に落下することができ、ポケット7に玉8が残ってしまうのを防ぐことができる。
【0045】
図3では、無端ベルト13からの玉8の取り出し位置が、プーリー12の頂部を越えた後の位置としているが、図10に示している搬送装置の場合、玉8の取り出し位置を、プーリー12の頂部の手前とすることができる。
すなわち、図10の場合、支持板18の上部には、玉8を通過させる穴36が形成されている。穴36は、下流側のブラシ22(27)よりもさらに下流側に設けられており、支持板18の上面17を転がりながら洗浄を終えた玉8が、穴36の形成部まで到達すると、当該穴36を通過して自由落下する。
そして、この場合、穴36の下方に、受け取り部3の通路33が設けられており、自由落下した玉8を、受け取り部3が自動的に受け取ることができる。
【0046】
以上の前記各実施形態の球体洗浄装置によれば、ポケット7に保持された玉8は、プーリー11,12間で搬送方向が直線方向となって移動するため、複数のポケット7に保持されている玉8それぞれは、どれも搬送方向に同じ移動距離を有する。このため、図11に示した従来のように、玉が入るポケットの位置によって玉の移動距離が異なり洗浄の仕上がり度合いに差が生じることがなく、本実施形態の球体洗浄装置によれば、玉の洗浄の仕上がり度合いを均一にすることが可能となる。この結果、玉に残留する異物の量を減少させることができ、しかも、玉の表面の様子は玉毎にばらつきが生じず、品質の高い玉を得ることができる。この玉を転動体として玉軸受に用いることで、例えば回転により発生する音のレベルを低減することが可能となる。
【0047】
さらに、図6、図7及び図8に示したブラシ装置4によれば、回転するブラシ26の玉8に対する移動方向は、当該玉8の搬送方向に交差(直交)する方向であり、また、ブラシ26の毛26aの移動方向は直線的である。このため、搬送装置1による玉8の転がり方向と交差する方向に毛26aが送られるため、当該毛26aに接触した玉8の転がり方向は、ランダムとなり、玉8の全面を、ブラシ26によって洗浄することが可能となる。
また、搬送路よりも幅方向に長い無端ベルト30にブラシ26の毛26aを設けた構成とし、この無端ベルト30の回転方向、つまり毛26aの送り方向を、玉8の搬送方向に直交する方向に向けているため、ポケット7の幅方向の位置に関係なく、全ての玉8は同じ距離だけブラシ26と接触する。
また、搬送方向に直線的に搬送される全ての玉8それぞれに対して、ブラシ26の毛26aを同じ方向から接触させることができる。
以上より、図6、図7及び図8に示したブラシ装置によれば、玉8が入るポケット7の位置に関係なく、玉8の洗浄の仕上がり度合いをより一層均一にすることが可能となる。
【0048】
また、前記実施形態(図4、図9)では、無端ベルト13は、複数枚の板部材15(115)がピン16aと連結片16bとによって連結された構成であるため、仮にポケット7の一部が損傷した場合、無端ベルト13全体を修理や交換しなくても、当該ポケット7が形成されている板部材15(151)のみを修理や交換すればよい。このため、保守のコスト低減が可能となり、また、そのための作業時間も短縮化される。
【0049】
本発明の球体洗浄装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、前記実施形態では、ブラシ装置4に関して、ブラシを2カ所に設置したが、3カ所以上であってもよい。ブラシを3カ所とした場合、搬送路は、粗洗浄領域、中洗浄領域及び仕上げ洗浄領域を有する。
また、無端ベルト13に形成するポケットの配置は、縦横に直線的に並べた格子状であってもよいが、千鳥状であってもよい。
今回開示した実施形態は、本発明の例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等な意味、及び、範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1:搬送装置、 1a:上流側部、 1b:下流側部、 2:供給部、 3:受け取り部、 4:ブラシ装置、 7:ポケット、 8:玉(球体)、 11:プーリー、 12:プーリー(回転車)、 13:無端ベルト(無端コンベア)、 14:駆動部、 15,115:板部材、 17:上面、 18:支持板、 120:縁部、 21,22:ブラシ、 23,24:ブラシ回転部、 26,27:ブラシ、 28,29:ブラシ回転部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球体を保持するポケットが複数形成され当該ポケットに保持された前記球体を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置のうち球体の搬送方向の上流側部に前記球体を供給する供給部と、
前記搬送装置によって搬送された球体を受け取る受け取り部と、
前記搬送装置によって搬送されている前記球体に接触するブラシ、及び、前記ブラシを回転させるブラシ回転部を有しているブラシ装置と、を備え、
前記搬送装置は、
前記ポケットが前記球体の搬送方向及びその直交方向に複数形成され、かつ、一対の回転車間に掛け渡され無限軌道を構成している無端コンベアと、
前記無端コンベアを前記回転車間で回転させる駆動部と、を有していることを特徴とする球体洗浄装置。
【請求項2】
前記球体の搬送方向が低い位置から高い位置へと向かうように前記無端コンベアは傾斜して配置されている請求項1に記載の球体洗浄装置。
【請求項3】
前記搬送装置は、前記ポケットに入って搬送される前記球体を上面に載せる支持板を有し、
前記ブラシ回転部によって回転する前記ブラシの前記球体に対する移動方向は、当該球体の搬送方向に交差する方向である請求項1又は2に記載の球体洗浄装置。
【請求項4】
前記球体を保持した前記ポケットが、搬送方向の下流側にある前記回転車の外周側を通過することにより上下反転するまでの間で、当該ポケットから自由落下する球体を受ける位置に、前記受け取り部は設けられている1〜3のいずれか一項に記載の球体洗浄装置。
【請求項5】
前記無端コンベアは、複数枚の板部材が搬送方向に連結された構成を有し、
前記板部材それぞれには、搬送方向に直交する方向に一列に並びかつ搬送方向の前方に向かって当該板部材の縁部で開口している切り欠きが、前記ポケットとして形成されている請求項4に記載の球体洗浄装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−206717(P2011−206717A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78037(P2010−78037)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(507112479)株式会社西田機械工作所 (2)
【Fターム(参考)】