説明

球状アルミナ粉末、その製造方法及び用途

【課題】放熱特性を改善した放熱部材の製造に用いることができる球状アルミナ粉末と、それをゴム及び樹脂の少なくとも一方に含有させてなる組成物と、この組成物の固化物からなる放熱部材と、本発明の球状アルミナ粉末の容易な製造方法を提供する。
【解決手段】平均粒子径が0.5〜5μm、平均球形度が0.85以上、(累積頻度が85体積%となる粒子径)/(最頻径)で示される粒度分布指数が4未満であることを特徴とする球状アルミナ粉末。この球状アルミナ粉末をゴム及び樹脂の少なくとも一方に含有させてなる組成物。この組成物が温度30℃の粘度が150000mP・s以下を示すシリコーンゴム組成物であって、その固化物からなる熱伝導率が3.0W/mK以上の放熱部材。還元性火炎に金属アルミニウム粉末を可燃性有機媒体に同伴さて供給する球状アルミナ粉末の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は球状アルミナ粉末、その製造方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IC等の発熱性電子部品の高機能化と高速化の進展に伴い、それが搭載された電子機器の発熱量が増大し、その効率のよい放熱方法が依然として待たれている。電子機器の放熱は、発熱性電子部品の搭載された基板をヒートシンクに取り付けるか、ヒートシンクを取り付けるスペースを確保することができないときは、直接、電子機器の金属製シャーシに取り付けることなどによって行われている。このとき、電気絶縁性かつ熱伝導性の良好な無機質粉末、例えば窒化ホウ素粉末、窒化アルミニウム粉末、アルミナ粉末等の無機質粉末をシリコーンゴムに充填させてなるシートや、アスカC硬度が25以下の柔軟性シート、などの放熱部材を介して取り付けられている(特許文献1)。
【0003】
放熱特性の良否は、放熱部材の熱伝導性と被着物への密着性(形状追従性)に大きく左右される。密着性の向上は、無機質粉末の低充填化で可能であるが、熱伝導性が不十分となる。そこで、充填率をある程度確保して高熱伝導性を保持し、密着性も大きく損なわせない無機質粉末として、球状アルミナ粉末の使用が提案(特許文献2)されている。しかし、要求されている放熱特性を充分に満たしているとはいえず、改善の余地があった。
【特許文献1】特開平9−296114号公報
【特許文献2】特開2000-1616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、例えば放熱特性を改善した放熱部材の製造に用いることができる球状アルミナ無機粉末と、それをゴム及び樹脂の少なくとも一方に含有させてなる組成物と、この組成物の固化物からなる放熱部材と、本発明の球状アルミナ粉末の容易な製造方法を提供することである。本発明の目的は、理論燃焼量未満の条件で形成された火炎中に、金属アルミニウム粉末を可燃性有機媒体に分散させて供給し、特定の粒度の球状アルミナ粉末を製造することによって達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、平均粒子径が0.5〜5.0μm、平均球形度が0.85以上、(累積頻度が85体積%となる粒子径)/(最頻径)で示される粒度分布指数が4未満であることを特徴とする球状アルミナ粉末である。好ましくは、平均粒子径が1.0〜2.5μm、平均球形度が0.92以上、(累積頻度が85体積%となる粒子径)/(最頻径)で示される粒度分布指数が2.8未満である。
【0006】
また、本発明は、助燃ガス量を燃料ガスと可燃性有機媒体の合計理論燃焼量に対して0.5倍以上、1.0倍未満として形成された火炎中に、可燃性有機媒体と金属アルミニウム粉末のスラリーを供給し、得られた粉末を必要に応じて分級することを特徴とする上記球状アルミナ粉末の製造方法である。この場合において、スラリーは助燃ガス供給用バーナーから噴射することが好ましい。とくに、可燃性有機媒体がメタノールであり、燃料ガスとメタノールの合計発熱量1000MJ当たり、金属アルミニウム粉末の供給量を20〜50kgとすることが好ましい。
【0007】
また、本発明は、本発明の球状アルミナ粉末をゴム及び樹脂の少なくとも一方に含有させてなることを特徴とする組成物である。この場合において、ゴム及び樹脂の少なくとも一方がシリコーンゴムであり、温度30℃の粘度が150000mP・s以下を示すものであることが好ましい。
【0008】
さらに、本発明は、ゴム及び樹脂の少なくとも一方がシリコーンゴムであり、温度30℃の粘度が150000mP・s以下を示す組成物の固化物からなり、熱伝導率が3.0W/mK以上であることを特徴とする放熱部材である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、更なる高い放熱特性を有する放熱部材と、例えば放熱部材等の製造に用いられる球状アルミナ粉末と、そのような球状アルミナ粉末の容易な製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
平均粒子径が0.5〜5.0μm、平均球形度が0.85以上の球状アルミナ粉末は公知であるので、本発明の球状アルミナ粉末は、(累積頻度が85体積%となる粒子径)/(最頻径)で示される粒度分布指数が4未満であることが特徴である。この粒度分布指数は粒度分布のシャープさを表す指標であり、これが小さいとシャープな粒度分布となり、大きいとブロードな粒度分布となる。本発明において粒度分布指数を4未満に限定した理由は、本発明の球状アルミナ粉末をそれよりも粗い粒度の球状アルミナ粉末と混合使用する態様においては、その混合粉末をゴム及び樹脂の少なくとも一方に高充填させることが困難となるからである。好ましい粒度分布指数は3.0以下であり、特に好ましくは2.8以下である。この指数は、可燃性有機媒体と金属アルミニウム粉末を含むスラリーの濃度及び供給量や、スラリーを助燃ガス供給バーナーから噴射させる態様においてはその助燃ガス量の噴射量によって増減させることができる。
【0011】
粒度分布指数を算出するための、85体積%となる粒子径及び最頻径と、平均粒子径とは、いずれもレーザー回折散乱法によって測定することができる。本発明で用いた粒度分布測定機は、ベックマンコールター社製商品名「モデルLS−230」である。これは、0.04〜2000μmの粒径範囲を116分割(log(μm)=0.04の幅)して粒度分布を測定する機器である。詳細は、「レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置 LSシリーズ」( ベックマンコールター株式会社)や、豊田 真弓著「粒度分布を測定する」(ベックマン・コールター株式会社 粒子物性本部 学術チーム)、に記載されている。
【0012】
最頻径とは、最も高い頻度値を示す粒度分布チャンネル階級の中心の粒子径のことであり、モード径ともいわれる。上記機器では自動測定される。85体積%となる粒子径とは、85体積%前後の粒度分布チャンネル階級から最小二乗法で算出された粒子径である。平均粒子径は最頻径と同様、自動測定される。
【0013】
本発明の球状アルミナ粉末の平均粒子径が0.5μm未満であると組成物の粘度が上昇する。一方、平均粒子径が5μmをこえると、本発明の球状アルミナ粉末をそれよりも粗い粒度の球状アルミナ粉末と混合使用する態様においては、組成物の粘度が上昇する。好ましい平均粒子径は0.5〜3.5μmであり、特に1.0〜2.5μmが好ましい。
【0014】
本発明の球状アルミナ粉末の平均球形度が0.85未満であると、樹脂又はゴムへの充填率を高めることが困難となる。好ましい平均球形度は0.90以上であり、特に好ましくは0.92以上である。
【0015】
本発明の球状アルミナ粉末は、還元性火炎中に、可燃性有機媒体と金属アルミニウム粉末を含むスラリーを供給し、得られた粉末を必要に応じて分級することによって製造することができる。還元性火炎は、助燃ガス量を燃料ガスと可燃性有機媒体の合計理論燃焼量に対して0.5倍以上、1.0倍未満とすることによって形成させることができる。特に好ましい比率は0.6〜0.8倍である。還元性火炎を用いることによって、硬化阻害の原因となり得るNOxの発生を著しく低減させることができる。
【0016】
金属アルミニウム粉末は、可燃性有機媒体と金属アルミニウム粉末を含むスラリーとして供給される。可燃性有機媒体の典型例はアルコール系媒体であり、メタノール、エタノール、ブタノール等であるが、メタノールが好ましい。スラリー中の金属アルミニウム粉末の濃度は、輸送性と球状アルミナ粉末の生産性の点から、50〜70質量%であることが好ましく、同様な理由によって金属アルミニウム粉末の平均粒子径は30μm以下であることが好ましい。
【0017】
さらには、球状アルミナ粉末の生産性を向上させる点から、可燃性有機媒体と金属アルミニウム粉末を含むスラリーは、還元性火炎を形成するのに用いた助燃ガスをキャリアーとし助燃ガス供給バーナーから噴射させることが好ましい。スラリーは、燃料ガス供給バーナーから噴射させることも、また助燃ガス供給バーナーや燃料ガス供給バーナーとは異なる第三のバーナーから噴射させることもできる。さらには、助燃ガス以外のガスをキャリアーとして噴射することもできるし、いかなるキャリアーガスをも用いないで機械的手段により供給することもできる。
【0018】
最適な方法は、メタノールと金属アルミニウム粉末を含む、金属アルミニウム粉末濃度が50〜70質量%であるスラリーを、燃料ガスとメタノールの合計発熱量1000MJ当たり金属アルミニウム粉末の供給量を20〜50kgとし、助燃ガスをキャリアーとして、助燃ガス供給バーナーから噴射することである。
【0019】
燃料ガスとしては、例えば水素、天然ガス、アセチレンガス、プロパンガス、ブタン等が、また助燃ガスとしては、例えば空気、酸素等が用いられる。助燃ガス供給バーナーから助燃ガスが、燃料ガス供給バーナーから燃料ガスが噴射される。燃料ガス供給バーナーと助燃ガス供給バーナーとは別々に設けてもよいし、助燃ガス供給バーナーを内管、燃料ガス供給バーナーを外管とする複合構造としてもよい。
【0020】
還元性火炎の還元度すなわち燃料ガスと可燃性有機媒体の合計理論燃焼量に対する助燃ガス量の割合と、可燃性有機媒体と金属アルミニウム粉末を含むスラリー中の金属アルミニウム粉末の濃度と、可燃性有機媒体と金属アルミニウム粉末を含むスラリーの供給量等によって、得られる球状アルミナ粉末の平均粒子径、平均球形度、及び粒度分布指数を増減させることができる。
【0021】
得られた粉末は捕集され、必要に応じ分級・混合することによって本発明の球状アルミナ粉末が製造される。装置としては、例えば特開平11−57451号公報に記載のものが使用される。捕集は、サイクロン、バグフィルター等の捕集装置で行われる。
【0022】
本発明の組成物は、本発明の球状アルミナ粉末をゴム及び樹脂の少なくとも一方に含有させたものである。含有率は、用途が放熱部材である場合、60〜85体積%、特に70〜80体積%であることが好ましい。この場合において、本発明の球状アルミナ粉末の一部を本発明の球状アルミナ粉末よりも熱伝導性の高い無機粉末で置換することもできる。その置換率は、用途が放熱部材である場合、10質量%未満であることが好ましい。本発明の球状アルミナ粉末以外の無機粉末としては、例えば、酸化マグネシウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、炭化珪素等から選ばれた少なくとも一種である。
【0023】
本発明の組成物に用いるゴムとしては、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体などをあげることができ、また樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネイト、マレイミド変成樹脂、ABS樹脂、AAS(アクリロニトリルーアクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴムースチレン)樹脂等をあげることができる。
【0024】
これらの中、放熱部材としては、例えばオルガノポリシロキサンの主鎖がジメチルシロキサン単位からなるシリコーン樹脂、このオルガノポリシロキサンの主鎖に例えばビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基などを導入したシリコーン樹脂などが好ましい。さらには、アスカC硬度が25未満の高柔軟性放熱部材であるときは、付加反応型液状シリコーンゴム、例えば一分子中にビニル基とH−Si基の両方を有する一液性の付加反応型シリコーン、または末端或いは側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサン(A液)と末端或いは側鎖に2個以上のH−Si基を有するオルガノポリシロキサン(B液)との二液性の付加反応型シリコーンの付加反応により得られたシリコーンゴムが好ましい。
【0025】
一液性の付加反応型シリコーン又は二液性の付加反応型シリコーンを構成するベースポリマーは、その主鎖にメチル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基などの有機基を持つものが用いられる。付加反応の元となるビニル基、H−Si基の混合比率としては、ビニル基1モル当量に対して、H−Si基が0.5〜3モル当量であることが、硬化速度、硬化後のゴム物性の観点から好適である。また、付加反応型液状シリコーンゴムには付加反応を促進するため付加反応触媒を用いることができるが、その具体的なものとしては、Pt、白金黒、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィンとの錯体などの白金系触媒を例示することができる。
【0026】
付加反応型液状シリコーンゴムの具体例としては、例えばGE東芝シリコーン社の「YE5822A/B」、あるいは東レダウコーニング社の「SE1880」、「SE1885A/B」、「SE1886A/B」、「SE1887A/B」、「SE4440A/B」、「SE1891KA/B」、「CY52−283A/B」等をあげることができる。
【0027】
本発明の放熱部材は、本発明の組成物の固化物からなる熱伝導率が3.0W/mk以上の成形物からなるものであって、その組成物が本発明のシリコーンゴム組成物からなっており、しかも温度30℃で粘度を測定したときに150000mP・s以下を示すものである。本発明の放熱部材は、本発明の球状アルミナ粉末を含有させたシリコーンゴム組成物を例えば注型法、押出成形法等によって成形し、硬化させることによって製造することができる。形状は、厚みが0.5〜20mmのシート状が一般的である。
【実施例】
【0028】
実施例1
装置として、特開平11−57451号公報の図面に記載されたものを用いた。LPG(燃料ガス)と酸素ガス(助燃ガス)によって形成された還元性火炎中に、金属アルミニウム粉末(平均粒子径18.5μm)とメタノールからなるスラリーを、酸素ガスをキャリアーとして助燃ガス供給バーナーから噴射し、球状化処理を行い、表1に示す球状アルミナ粉末(微紛A)を製造した。燃料ガス供給バーナーと助燃ガス供給バーナーは、助燃ガス供給バーナーを内管、燃料ガス供給バーナーを外管とする二流体ノズルを用いた。
一方、粗粉Iとして、電気化学工業社製球状アルミナ「DAW−20」を用意した。微紛Aと粗粒Iを表2に示す割合で混合し、この無機粉末と、2成分付加反応型液状シリコーンゴム(GE東芝シリコーン社製「YE5822A」、「YE5822B」)と、遅延剤とを表3に示す割合で混合し組成物を製造し、以下に従う物性を測定した。また、この組成物を用いて放熱部材を製造し、以下に従って熱伝導率を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0029】
(1)粉末の平均球形度
シスメックス社製商品名「FPIA−1000 」のフロー式粒子像分析装置を用い、以下のようにして測定した。粒子像から粒子の投影面積(A)と周囲長(PM)を測定する。周囲長(PM)に対応する真円の面積を(B)とすると、その粒子の球形度はA/Bとして表示できる。そこで試料粒子の周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円を想定するとPM=2πr、B=πrであるから、B=π×(PM/2π)となり、個々の粒子の球形度は、円形度=A/B=A×4π/(PM)として算出できる。これを任意に選ばれた100個以上の粒子について測定し、その平均値を2乗したものを平均球形度とした。測定溶液はサンプル0.1gに蒸留水20mlとプロピレングリコール10mlを加え、3分間超音波分散処理を行い調製した。
【0030】
(2)(3)(4)粉末の85体積%となる粒子径、最頻径、平均粒子径
いずれもレーザー回折散乱法(ベックマンコールター社製商品名「モデルLS−230」)によって測定した。この装置は、0.04〜2000μmの粒径範囲を116分割(log(μm)=0.04の幅)して粒度分布を測定する機器である。詳細は、「レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置 LSシリーズ」( ベックマンコールター株式会社)、 豊田 真弓著「粒度分布を測定する」(ベックマン・コールター株式会社 粒子物性本部 学術チーム)、に記載されている。測定溶液は純水にサンプルを加えホモジナイザーで1分間分散処理を行い、装置の濃度調整ウインドウの表示が45〜55%になるように調製した。
【0031】
(5)粉末のNOx量
試料10gをイオン水70mlの中に投入し、95℃、20時間抽出処理を行い、遠心分離された上澄み液をイオンクロマト装置(Dionex社製商品名「DX−100」)を用いてNO2−とNO3−を定量した。NO2−とNO3−の合計をNOx量とした。
【0032】
(6)放熱部材の熱伝導率
表3のシリコーンゴムA液に、遅延剤、無機粉末及びシリコーンゴムB液の順に投入と攪拌を繰り返し行った後脱泡処理した。得られた液状試料を、直径28mm、厚さ3mmのくぼみの設けられた金型に流し込み、脱気後、150℃×20分で成型し、室温における熱伝導率を温度傾斜法で測定した。熱伝導率測定装置としてアグネ社製商品名「ARC−TC−1型」)を用いた。
【0033】
(7)組成物の粘度
上記硬化前の熱伝導率測定試料について、B型粘度計(大和建工社製商品名「DB−10」)を用い、温度30℃で測定した。
【0034】
(8)摩耗量
厚み6mm、孔径3mmのアルミニウム製ディスクの孔に硬化前のシリコーンゴム組成物を常温加圧式押出機で150cm通過させた際のディスクの質量減少量を摩耗量とした。
【0035】
実施例2〜4
実施例1において、スラリー供給量を調節して平均球形度の0.85の球状アルミナ粉末(微紛B:実施例2)を製造した。実施例1において、還元性火炎条件を調節して粒度分布指数3.8の球状アルミナ粉末(微紛D:実施例3)を製造した。実施例1において、還元性火炎条件とスラリー供給量を調節して平均粒子径が4.2μmの球状アルミナ粉末(微紛F:実施例4)を製造した。これらの微紛B、D、Fを微紛Aのかわりに用いたこと以外は、実施例1と同様にして組成物を製造した。
【0036】
実施例5〜8
市販の炭化珪素粉末及び窒化アルミニウム粉末を粉砕、分級し、表1に示す微紛J及び微紛Kを製造した。これを微紛Aと一部置き換えて使用したこと以外は(置換率を表2に示す)、実施例1に準じて組成物を製造した。
【0037】
比較例1〜6
表1に示す種々の微粉を製造し、微粉Aのかわりに用いたこと以外は、実施例1と同様にして組成物を製造した。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
実施例と比較例の対比から、本発明の組成物用いて製造された放熱部材は熱伝導性が著しく優れていることがわかる。また、組成物製造時の混合成型機の摩耗も少なかった。さらに、粒度分布指数が小さい微粉を用いた方が(例えば実施例1と実施例3との対比)、また添加微粉として炭化珪素粉末や窒化アルミニウム粉末を使用した方が(例えば実施例1と、実施例5、実施例6、実施例7、実施例8との対比)、放熱部材の熱伝導性が一段と高まることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の球状アルミナ粉末は、ゴム及び樹脂の少なくとも一方に含有させてなる組成物を製造するための充填材の他に、焼結原料としても使用することができる。本発明の組成物は、一般の電源、電子機器等に用いられる熱伝導性シートなどとして使用することができる。本発明の放熱部材は、パーソナルコンピューター、デジタルビデオディスク、携帯電話等の電子機器類に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が0.5〜5.0μm、平均球形度が0.85以上、(累積頻度が85体積%となる粒子径)/(最頻径)で示される粒度分布指数が4未満である球状アルミナ粉末。
【請求項2】
平均粒子径が1.0〜2.5μm、平均球形度が0.92以上、(累積頻度が85体積%となる粒子径)/(最頻径)で示される粒度分布指数が2.8未満である球状アルミナ粉末。
【請求項3】
助燃ガス量を燃料ガスと可燃性有機媒体の合計理論燃焼量に対して0.5倍以上、1.0倍未満として形成された火炎中に、可燃性有機媒体と金属アルミニウム粉末を含むスラリーを供給し、得られた粉末を必要に応じて分級することを特徴とする請求項1又は2に記載の球状アルミナ粉末の製造方法。
【請求項4】
スラリーを助燃ガス供給用バーナーから噴射することを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
可燃性有機媒体がメタノールであり、燃料ガスとメタノールの合計発熱量1000MJ当たり、金属アルミニウム粉末の供給量を20〜50kgとすることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の球状アルミナ粉末をゴム及び樹脂の少なくとも一方に含有させてなる組成物。
【請求項7】
ゴム及び樹脂の少なくとも一方がシリコーンゴムであり、温度30℃の粘度が150000mP・s以下を示すものである請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の組成物の固化物からなり、熱伝導率が3.0W/mK以上である放熱部材。

【公開番号】特開2007−290876(P2007−290876A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117341(P2006−117341)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】