説明

球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金及びその製造方法、並びに球状シリカ粉末

【課題】ケイ素の純度が高くなくても電子部品に悪影響を与え難い球状シリカ粉末を得ることができる球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金を提供すること。
【解決手段】火炎中で酸素と反応させて球状シリカ粉末を製造する原料であるケイ素含有合金であって、ケイ素を80質量%以上含有し、(13族元素の含有量)/{(5族元素の含有量)+(6族元素の含有量)+(7族元素の含有量)}の値が質量基準で4以上である。5〜7族元素の含有量に応じて、13族元素を含有させることにより、高い性能を発揮させることが可能になる。5〜7族元素がシリカ粉末中に含有されていると、溶出などのおそれがある。溶出などした5〜7族元素は電子部品に対して望ましくない作用を及ぼすおそれがあるが、所定の比率で13族元素を含有させることにより5〜7族元素における溶出などのおそれを小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安価に球状シリカ粉末を提供できる球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金及びその製造方法、並びに安価な球状シリカ粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージは熱的性質向上などを目指し、球状シリカを含有する樹脂組成物により封止されることが一般的である。また、電子部品を実装する基板材料についても熱安定性などの向上を目的として、球状シリカを含有する樹脂組成物が採用されることがある。
【0003】
それら樹脂組成物に用いられる球状シリカとしては電子部品などに悪影響を与えないことが求められる。例えば、球状シリカ粉末に含まれる不純物が溶出乃至拡散することにより封止した電子部品に悪影響を及ぼすことが知られている。
【0004】
従来は電子部品に影響を与えないようにするために球状シリカ粉末に含まれる不純物の量を低減し高い純度をもつ球状シリカとすることが行われていた。球状シリカ粉末を製造する方法としては、原料となる金属ケイ素を火炎中にて酸素と反応させる方法(VMC法)が知られており、高い純度の球状シリカを得るためには原料の純度を高くする方法や、製造後の球状シリカから不純物を抽出する方法が考えられる。
【0005】
製造された球状シリカの性状に影響を与えない方法であるため、原料中の不純物濃度を減少させる方法が汎用されている。球状シリカを製造する方法に適用するために、高純度の金属ケイ素を製造する方法としては種々の方法が提案されている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−61856号公報
【特許文献2】特許第2665437号公報
【特許文献3】特許第3415382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の製造方法では高い純度の金属ケイ素を得るために多くの工数を必要としており、高いコストを要していた。
【0008】
本発明は上記実情に鑑み完成されたものであり、封止材に適用したときに、ケイ素の純度が高くなくても電子部品に悪影響を与え難い球状シリカ粉末を得ることができる球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金及びその製造方法、そのような球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金により製造された球状シリカ粉末を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する請求項1に係る球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金の特徴は、火炎中で酸素と反応させて球状シリカ粉末を製造する原料であるケイ素含有合金であって、
ケイ素を80質量%以上含有し、(13族元素の含有量)/{(5族元素の含有量)+(6族元素の含有量)+(7族元素の含有量)}の値が質量基準で4以上であることにある。
【0010】
上記課題を解決する請求項2に係る球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金の特徴は、火炎中で酸素と反応させて球状シリカ粉末を製造する原料であるケイ素含有合金であって、
ケイ素を80質量%以上含有し、(13族元素の含有量)/{(5族元素の含有量)+(6族元素の含有量)+(7族元素の含有量)}の値が質量基準で20以上であることにある。
【0011】
上記課題を解決する請求項3に係る球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金の特徴は、火炎中で酸素と反応させて球状シリカ粉末を製造する原料であるケイ素含有合金であって、
ケイ素を80質量%以上含有し、(13族元素の含有量)/{(バナジウムの含有量)+(クロムの含有量)+(マンガンの含有量)}の値が質量基準で4以上であることにある。
【0012】
上記課題を解決する請求項4に係る球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金の製造方法の特徴は、請求項1〜3の何れかに記載の球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金を製造する方法であって、
金属ケイ素又はケイ素含有合金からなる粗材に含まれる5族元素、6族元素、7族元素の質量基準での含有量の和に基づき、金属アルミニウム、アルミニウム合金及び/又はアルミニウム化合物からなるアルミニウム源を添加し、(13族元素の含有量)/{(5族元素の含有量)+(6族元素の含有量)+(7族元素の含有量)}の値を調節する工程を有することにある。
【0013】
上記課題を解決する請求項5に係る球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金の製造方法の特徴は、請求項1〜3の何れかに記載の球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金を製造する方法であって、
金属アルミニウム、アルミニウム合金及び/又はアルミニウム化合物からなるアルミニウム源をケイ石に添加し、(13族元素の含有量)/{(5族元素の含有量)+(6族元素の含有量)+(7族元素の含有量)}の値を調節した原料混合物を調製する工程と、
前記原料混合物を炭剤により還元する工程と、
を有することにある。
【0014】
上記課題を解決する請求項6に係る球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金の製造方法の特徴は、請求項5において、前記アルミニウム源は、前記ケイ石及び前記アルミニウム源の質量の和を基準として、0.1質量%〜20質量%の範囲で添加することにある。
【0015】
上記課題を解決する請求項7に係る球状シリカ粉末の特徴は、請求項1〜3の何れかに記載の球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金、又は、請求項4〜6の何れかに記載の球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金の製造方法により製造された球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金を火炎中にて酸素と反応させて製造されたことにある。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明においては、5〜7族元素の含有量に応じて、13族元素を含有させることにより、高い性能を発揮させることが可能になる。5〜7族元素がシリカ粉末中に含有されていると、溶出などのおそれがある。溶出などした5〜7族元素は電子部品に対して望ましくない作用を及ぼすおそれがあるが、所定の比率で13族元素を含有させることにより5〜7族元素における溶出などのおそれを小さくすることができる。特に、請求項2に係る発明のように、13族元素の比率を上昇させることにより、より確実に5〜7族元素の影響を低減させることができる。
【0017】
請求項3に係る発明においては、特に(13族元素の含有量)/{(バナジウムの含有量)+(クロムの含有量)+(マンガンの含有量)}の値を4以上に制御することにより優れた球状シリカ粉末を製造可能な球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金を提供することができる。粗材中に含まれる不純物元素としてはこれらの元素が主であるため、これらの元素のみについて含有量を測定することに簡略化することができる。
【0018】
請求項4に係る発明においては、金属ケイ素、ケイ素含有合金に対し、その含有する5〜7族元素の量に基づきアルミニウム、アルミニウム合金、アルミニウム化合物などのアルミニウム源を添加することにより、5〜7族元素の影響を低減させることができる。
【0019】
請求項5に係る発明においては、ケイ石を炭剤により還元して金属ケイ素、ケイ素含有合金を製造する工程において、そのケイ石中に含まれる5〜7族元素の量に応じてアルミニウム、アルミニウム合金、アルミニウム化合物などのアルミニウム源を添加することにより、5〜7族元素の影響を低減させることができる。特に請求項6に係る発明のように、アルミニウム源の量を規定することにより5〜7族元素による影響を低減させることが可能になる。
【0020】
請求項7に係る発明においては、上述の球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金や、上述の球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金の製造方法により製造された球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金を用いて製造された球状シリカなので、5〜7族元素の影響が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例の各試験例における球状シリカ粉末のECと所定元素の質量比との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金、球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金の製造方法、球状シリカについて、以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0023】
本実施異形態の球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金は火炎中で酸素と反応させて球状シリカ粉末を製造する球状シリカの製造方法に供される原料である。以下、球状シリカの製造方法の一例(VMC法)を説明する。
【0024】
球状シリカの製造方法としては、前述のケイ素含有合金(本実施形態の球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金はこの用途に用いられる。)を用いていわゆるVMC(Vaperized Metal Combustion)法にて球状シリカを製造する工程である。ケイ素含有合金は何らかの方法(粉砕など)にて粉末化されている。VMC法は、酸素を含む雰囲気中でバーナーにより化学炎を形成し、この化学炎中にケイ素含有合金粉末を粉塵雲が形成される程度の量、投入し、爆燃を起こさせて酸化物粒子を得る方法である。具体的には、前述のケイ素含有合金をキャリヤガスと共に酸素過剰の酸化炎中に投入する工程である。
【0025】
VMC法の手法について説明すれば以下のようになる。まず、容器中に反応ガスである酸素を含有するガスを充満させ、この反応ガス中で化学炎を形成する。化学炎は可燃ガス(メタン、プロパンなどの炭化水素ガスが例示できる)を燃焼させることにより形成できる。次いで、この化学炎中にケイ素含有合金粉末を投入し高濃度(500g/m3以上)の粉塵雲を形成する。すると、化学炎によりケイ素含有合金粉末表面に熱エネルギーが与えられ、ケイ素含有合金粉末の表面温度が上昇し、ケイ素含有合金粉末表面から金属ケイ素の蒸気が周囲に広がる。この金属ケイ素蒸気が酸素ガスと反応して発火し火炎を生じる。この火炎により生じた熱は、さらにケイ素含有合金粉末の気化を促進し、生じた金属ケイ素蒸気と酸素ガスとが混合され、連鎖的に発火伝播する。このときケイ素含有合金粉末自体も破壊して飛散し、火炎伝播を促す。燃焼後に生成ガスが自然冷却されることにより、シリカ粒子の雲ができる。得られたシリカ粒子は、バグフィルターや電気集塵器等により捕集される。
【0026】
VMC法は粉塵爆発の原理を利用するものである。VMC法によれば、瞬時に大量のシリカ粒子が得られる。得られるシリカ粒子は、略真球状の形状の球状シリカ粉末となっている。投入するケイ素含有合金粉末の粒子径、投入量、火炎温度等を調整することにより、得られる球状シリカ粉末の粒子径を調整することが可能である。また、原料物質としてはケイ素含有合金粉末に加えて、シリカ粉末も添加することができる。シリカ粉末は本方法により得られる球状シリカ粉末を採用することで得られる球状シリカの性能を保つことができる。
【0027】
得られた球状シリカ粉末を樹脂組成物に混合して用いる場合には、樹脂との密着性を向上させる目的で、表面処理を施すことができる。例えば、シラン系、チタネート系、アルミネート系、ジルコネート系の各種カップリング剤、カチオン、アニオン、両性、中性の各種界面活性剤を混合することができる。
【0028】
その他にも塩基性物質及び/又は塩基性混合物にて球状シリカに対して表面処理を行うことができる。塩基性物質、塩基性混合物としては、アンモニア、有機アミン、シラザン類、窒素を含む環状化合物又はその溶液、アミン系シランカップリング剤又はその溶液等が挙げられる。これら塩基性物質の中で、シラザン類が好ましく例示され、特に、へキサメチルジシラザン(HMDS)が好ましい。
【0029】
表面処理を行う際の表面処理剤の添加量としては特に限定しないが、球状シリカの表面とすべて反応できる程度の量を添加することが望ましい。
【0030】
本実施形態のケイ素含有合金は、ケイ素を80質量%以上含有する。好ましくはケイ素を95質量%以上含有する。本実施形態のケイ素含有合金は、ケイ素以外の元素である不純物元素を含有する。不純物元素としては、(13族元素の含有量)/{(5族元素の含有量)+(6族元素の含有量)+(7族元素の含有量)}の値が所定値以上であること以外は特に限定しない。所定値としては4を挙げることができ、望ましくは20である。不純物元素の含有量の測定方法としてはXPS、ICP原子吸光光度法などの元素分析法が例示できる。
【0031】
この元素の存在比を所定値以上に制御するためには、球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金の原料となる粗材(金属ケイ素又はケイ素含有合金)に対し、13族元素の量を増加させたり、5〜7族元素の量を減少させたりすることが考えられるが、操作の簡便化のためには5〜7族元素の含有量に応じて13族元素を添加する方法を採用することが望ましい。
【0032】
ここで13族元素としてはホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムがあるが、添加する13族元素としてはホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムが望ましく、アルミニウムであることが特に望ましい。
【0033】
13族元素を添加するためには元素単体で添加することはもちろん、何らかの化合物・混合物として添加することができる。例えば、アルミニウムを添加する場合には、金属アルミニウム、アルミニウム合金及び/又はアルミニウム化合物からなるアルミニウムを含有する材料(アルミニウム源と称する)を添加することができる。アルミニウム合金としては5〜7族元素の含有量が少ないもの(望ましくは含まないもの)を採用する。
【0034】
アルミニウム化合物としては特に限定しないが、シリカに含まれない余分な元素を含まない水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムを採用することが望ましい。13族元素を添加する場合にはケイ素含有合金の状態で添加する方法と、ケイ素含有合金を製造する材料の段階で添加する方法とがある。
【0035】
含有量が少ないことが望ましい元素である5〜7族元素の量を全て考慮する場合に代えて、バナジウム、クロム、及びマンガンの総和のみを考慮することができる。すなわち、5〜7族元素のうち、バナジウム、クロム、及びマンガン以外の元素の含有量は考慮せずに13族元素を添加する方法が採用できる。他の元素に比べてこれらの元素の混入が特に多いため、これらの元素についてのみ含有量を測定すれば十分に実用性が高い。その結果、製造操作の簡略化を図ることができる。
【0036】
その他に不純物元素として含まないことが望ましい元素としては1族元素(特にNa、Kなどのアルカリ金属)、2族元素(特にMg,Caなどのアルカリ土類金属)が挙げられる。特に1族元素を含有しないことが望ましい。1族元素の含有量は20ppm以下(より好ましくは10ppm以下)とすることが望ましい。2族元素の含有量は300ppm以下とするか、それ以上含有する場合であってもCaを500ppm以下となるように添加することが望ましい。その他、P、Moの含有量は少ないことが望ましい。Pは60ppm以下とすることが望ましい。Moは20ppm以下とすることが望ましい。これら以外の元素を含むことは特に妨げない。特に、Fe、Ti、Cu、Ni、Co、Zn、As、Sbなどはある程度含有可能である。
【0037】
球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金は、金属ケイ素又はケイ素含有合金からなる粗材における不純物元素濃度を調節することで製造する上述したような方法の他、ケイ石と炭剤とを混合後、加熱する方法により製造可能である。ケイ石の主成分であるシリカが炭剤により還元されて金属ケイ素が生じることになる。ケイ石としては不純物ができるだけ少ないものを採用することが望ましい。そして、ケイ石中の5〜7族元素の量(又は、バナジウム、クロム、及びマンガンの総和)に応じて13族元素(アルミニウム源)を添加することができる。その後、炭剤と共に加熱することにより不純物元素の存在比が制御されたケイ素含有合金を得ることができる。また、ケイ石からケイ素含有合金を調製した後、5〜7族元素の量(又は、バナジウム、クロム、及びマンガンの総和)を測定し、13族元素(アルミニウム源)を添加することもできる。
【0038】
炭剤としては炭素を含有する材料であれば特に限定しないが、炭素の構成比が高いものを採用することが望ましい。例えば、(石油)コークス、炭、石炭などが例示できる。炭剤中の不純物元素としても5〜7族元素の含有量が少ないものを選択することが望ましい。
【0039】
ケイ石と炭剤との混合比としては特に限定しないが、ケイ石中に含まれる二酸化ケイ素を十分に還元できる量を混合することが望ましい。具体的には炭剤の混合比はケイ石の質量を基準として40質量%〜60質量%程度とすることが望ましい。
【0040】
ケイ石と炭剤はどのように混合しても良いが、双方共に粉砕などにより細粒化して混合することが望ましい。例えば、ケイ石及び炭剤の粒径としては50cm以下を採用することが望ましい。
【0041】
ケイ石と炭剤とを混合した後、加熱(例えば、通電することにより加熱する)することにより、炭剤中の炭素と二酸化ケイ素中の酸素とが反応して、ケイ素含有合金が生成する。生成したケイ素含有合金は金属ケイ素の融点である1420℃以上(特に1450℃以上)で加熱することが望ましい。また、1800℃以下で加熱することが望ましい。
【0042】
得られたケイ素含有合金は、徐冷することにより不純物を偏析させることが可能になる。偏析した不純物を除去することによりケイ素含有合金中における不純物の含有量を低減できる。また、熔解状態のケイ素含有合金に対して電場を印加することにより、含有する不純物元素のうち、イオン化しているものを偏析させることが可能になる。偏析した不純物を除去することにより不純物の含有量を低下できる。電場を印加する際には撹拌することが望ましい。その場合に撹拌を中心部にて行い、その中心部から径方向外側に向けて不純物が移動するように電場を印加することができる。
【実施例】
【0043】
本発明の球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金及びその製造方法、並びに球状シリカについて実施例に基づき以下詳細に説明を行う。
【0044】
(球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金の製造)
各試験例のケイ石70質量部に石油コークス30質量部と表1に示す添加量(ケイ石の質量を基準とする。)の金属アルミニウムとを混合し、1600℃に保持して電場をかけながら十分攪拌した後、徐冷することにより金属ケイ素を得た。得られた金属ケイ素を粉砕することにより、表1に示す平均粒径の球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金粉末を得た。得られたケイ素含有合金粉末をキャリヤガスと共に酸素過剰の酸化炎中に投入することにより、表2に示す平均粒径及び比表面積をもつ球状シリカ粉末を得た。
【0045】
得られた球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金及び球状シリカ粉末について組成比、体積平均粒径、比表面積、抽出液の電気伝導度及びpHを測定した。球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金の結果を表1及び2に、球状シリカ粉末の結果を表3及び4にそれぞれ示す。また、球状シリカ粉末における電気伝導度(EC)と球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金における(13族元素の含有量)/{(5族元素の含有量)+(6族元素の含有量)+(7族元素の含有量)}で表される所定元素の質量比との関係についてのグラフを図1に示す。
【0046】
電気伝導度及びpHはそれぞれの粉末をイオン交換水に懸濁し10%スラリーとした状態で耐圧容器中に投入して、室温で30分間震とうした。その後、遠心沈降させて上澄み液を株式会社堀場製作所製導電率メータES−51にて測定した。対照としたイオン交換水の導電率は1.4μS/cmであった。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
結果(特に図1)から明らかなように、所定元素の質量比が大きくなるにつれてECも小さくなることが分かった。特に所定元素の質量比が4近傍から20近傍にかけてECが大きく変化する臨界値が存在することが分かった。また、各元素の含有量の分析からECに大きな影響を与える元素としてP、V、Cr、Mn、Mo、Ca、Na、Mg、及びKがあることが分かった。これらの元素の量が増加すると、ECも増加することが分かった。そして、ECに与える影響が小さい(又は、添加によりECを低減できる)元素としてAl、Fe、Ti、Cu、Ni、Co、Zn、As、及びSbがあることが分かった。
【0052】
なお、ケイ素含有合金についても電気伝導度を同様に測定したが(表1)、所定元素の質量比との明確な関係は分からなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炎中で酸素と反応させて球状シリカ粉末を製造する原料であるケイ素含有合金であって、
ケイ素を80質量%以上含有し、(13族元素の含有量)/{(5族元素の含有量)+(6族元素の含有量)+(7族元素の含有量)}の値が質量基準で4以上であることを特徴とする球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金。
【請求項2】
火炎中で酸素と反応させて球状シリカ粉末を製造する原料であるケイ素含有合金であって、
ケイ素を80質量%以上含有し、(13族元素の含有量)/{(5族元素の含有量)+(6族元素の含有量)+(7族元素の含有量)}の値が質量基準で20以上であることを特徴とする球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金。
【請求項3】
火炎中で酸素と反応させて球状シリカ粉末を製造する原料であるケイ素含有合金であって、
ケイ素を80質量%以上含有し、(13族元素の含有量)/{(バナジウムの含有量)+(クロムの含有量)+(マンガンの含有量)}の値が質量基準で4以上であることを特徴とする球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金を製造する方法であって、
金属ケイ素又はケイ素含有合金からなる粗材に含まれる5族元素、6族元素、7族元素の質量基準での含有量の和に基づき、金属アルミニウム、アルミニウム合金及び/又はアルミニウム化合物からなるアルミニウム源を添加し、(13族元素の含有量)/{(5族元素の含有量)+(6族元素の含有量)+(7族元素の含有量)}の値を調節する工程を有することを特徴とする球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかに記載の球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金を製造する方法であって、
金属アルミニウム、アルミニウム合金及び/又はアルミニウム化合物からなるアルミニウム源をケイ石に添加し、(13族元素の含有量)/{(5族元素の含有量)+(6族元素の含有量)+(7族元素の含有量)}の値を調節した原料混合物を調製する工程と、
前記原料混合物を炭剤により還元する工程と、
を有することを特徴とする球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金の製造方法。
【請求項6】
前記アルミニウム源は、前記ケイ石及び前記アルミニウム源の質量の和を基準として、0.1質量%〜20質量%の範囲で添加する請求項5に記載の球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3の何れかに記載の球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金、又は、請求項4〜6の何れかに記載の球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金の製造方法により製造された球状シリカ粉末製造用ケイ素含有合金を火炎中にて酸素と反応させて製造されたことを特徴とする球状シリカ粉末。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−163317(P2010−163317A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6838(P2009−6838)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(501402730)株式会社アドマテックス (82)
【Fターム(参考)】