説明

球状熱可塑性樹脂粒子の製造方法

【課題】分散媒に添加する疎水性シリカ微粒子の使用量を少なくし、分散媒の繰り返し使用が可能な工業的に有利な球状熱可塑性樹脂粒子の製造方法を提供すること。
【解決手段】不定形熱可塑性樹脂粉末を、多価アルコール中に前記不定形熱可塑性樹脂粉末100重量部に対し0.1重量部以上3重量部未満の疎水性シリカ微粒子を分散させた含水率が10重量%以下の分散媒中に、分散させ、前記不定形熱可塑性樹脂粉末の溶融温度以上で加熱攪拌し、その後冷却することを特徴とする球状熱可塑性樹脂粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状熱可塑性樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
球状熱可塑性樹脂粒子の粉末は、ファンデーション、制汗剤、スクラブ剤等の化粧品用の配合剤、塗料用艶消し剤、ブロッキング防止材、滑り性付与剤、光拡散剤用の添加剤等の用途に広く利用されている。特に、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂粉末やナイロン系樹脂粉末は、優れた滑り性、耐熱性を有する等の特徴を有しており幅広く利用されている。
【0003】
球状熱可塑性樹脂粒子の粉末を製造する方法としては、原料樹脂と原料樹脂と相溶性のない成分をお互いの溶融温度以上で溶融混合し、その後冷却して球状熱可塑性樹脂粉末を得る方法(特許文献1参照)や、ポリオレフィン系樹脂と、常温常圧ではポリオレフィン系樹脂を溶解しない流体との混合物を加熱および/または加圧して、上記流体の少なくとも一成分を超臨界状態または亜臨界状態にした後、上記流体を降温して解圧する方法などが知られている。(特許文献2参照)しかしながら、特許文献1の場合には0.01ミクロン〜100ミクロン程度の粒径のものが得られるとの記載はあるが、実質上50ミクロン以上の粒径の大きい球状のものは得難く、また粒度分布も広いという欠点がある。特許文献2についても、数ミクロン〜100ミクロン程度の粒径に限定され、さらに、反応容器を超臨界状態に維持する必要があるなど容易な製造方法とは言えない。一方、本出願人は、原料樹脂粉末と相溶性のない溶剤を媒体とし、溶剤および原料樹脂粉末に不活性な1ミクロン以下の粒径を持つ無機質の分散剤を原料樹脂粉末100重量部に対し、3重量部以上100重量部以下存在させ、原料樹脂粉末の溶融温度以上に加熱攪拌し、その後冷却する球状熱可塑性樹脂粉末の製造方法を開示している。(特許文献3参照)この製造方法においては原料樹脂粉末と相溶性のない溶剤として水あるいはプロピレングリコールを用いる場合、良好に球状粒子は得られるものの、無機質の分散剤を多く使用しているために濾過・洗浄工程に長時間を要したり、この溶剤を繰り返し使用すると球形化時に凝集体状物が生成する場合があり工業的には有利な方法とは言えなかった。
【特許文献1】特開昭60−192728号公報
【特許文献2】特開2004−143404号公報
【特許文献3】特開昭62−280226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、分散媒に添加する疎水性シリカ微粒子の使用量を少なくし、分散媒の繰り返し使用が可能な工業的に有利な球状熱可塑性樹脂粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、不定形熱可塑性樹脂粉末を、多価アルコール中に前記不定形熱可塑性樹脂粉末100重量部に対し0.1重量部以上3重量部未満の疎水性シリカ微粒子を分散させた含水率が10重量%以下の分散媒中に、分散させ、前記不定形熱可塑性樹脂粉末の溶融温度以上で加熱攪拌し、その後冷却することを特徴とする球状熱可塑性樹脂粒子の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、分散媒に添加する疎水性シリカ微粒子の使用量を少なくし、分散媒の繰り返し使用が可能になることより工業的により有利な方法で各種の球状熱可塑性樹脂粒子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で使用される不定形熱可塑性樹脂粉末は、熱可塑性を有する樹脂の不定形状の粉末であれば特に限定はされない。これらの粉末の製造方法としては重合時に不定形の樹脂粉末を直接得る方法、あるいは一旦樹脂ペレットとして得られたものを機械粉砕法、冷凍粉砕法などにより粉砕する方法などが挙げられる。
【0008】
熱可塑性樹脂の種類については、熱可塑性を有していれば特に限定はされないが、代表的な熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂などを挙げることができる。
【0009】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、オレフィンと他のモノマーとの共重合体樹脂等を挙げることができる。
【0010】
前記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、オレフィンのホモポリマー、コポリマーおよびこれらの酸変性ポリマー等を挙げることができる。オレフィンのホモポリマーとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等を挙げることができる。またオレフィンのコポリマーとしては、例えば、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−1−ブテンコポリマー、エチレン−1−オクテンコポリマーおよびエチレン−1−ヘキセンコポリマー等を挙げることができる。オレフィンのホモポリマーやコポリマーの酸変性ポリマーとしては、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレンおよび無水マレイン酸変性ポリプロピレン等を挙げることができる。
【0011】
前記のオレフィンと他のモノマーとの共重合体樹脂を構成するオレフィンとしては、特に限定されず、例えば、エチレンやプロピレン等を挙げることができる。一方、他のモノマーとしては、前記オレフィンと共重合可能なモノマーであれば特に限定されず、例えば、ビニルエステル、α,β−不飽和カルボン酸、α,β−不飽和カルボン酸無水物、α,β−不飽和カルボン酸の金属塩およびα,β−不飽和カルボン酸エステル等を挙げることができる。ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル等を挙げることができる。また、α,β−不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。α,β−不飽和カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸等を挙げることができ、α,β−不飽和カルボン酸の金属塩としては、(メタ)アクリル酸のナトリウム塩やマグネシウム塩等を挙げることができる。さらに、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらオレフィンおよび他のモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上のものを併用してもよい。
【0012】
このようなオレフィンと他のモノマーとの共重合体樹脂の具体例としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体の部分鹸化物、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、プロピレン/無水マレイン酸共重合体;エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/グリシジル(メタ)アクリレート共重合体等のエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体;エチレン/グリシジル(メタ)アクリレート/メチル(メタ)アクリレート共重合体等のエチレン/(メタ)アクリル酸エステル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体;エチレン/グリシジル(メタ)アクリレート/酢酸ビニル共重合体等のエチレン/(メタ)アクリル酸エステル/酢酸ビニル共重合体およびエチレン/(メタ)アクリル酸メチル/無水マレイン酸共重合体等のエチレン/(メタ)アクリル酸エステル/無水マレイン酸共重合体、並びにこれらの金属塩の樹脂等を挙げることができる。
【0013】
前記ナイロン系樹脂としては、例えば、−[NH(CHCO]−、−[NH(CHNHCO(CHCO]−、−[NH(CHNHCO(CHCO]−、−[NH(CH10CO]−および−[NH(CH11CO]−からなる群より選ばれた少なくとも1種を構造単位としているナイロン樹脂を挙げることができる。それらの具体例としては、6ナイロン、66ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、6/66共重合ナイロン、6/10共重合ナイロン、6/11共重合ナイロン、6/12共重合ナイロン、6/66/10共重合ナイロン、6/66/11共重合ナイロン、6/66/12共重合ナイロン、6/66/11/12共重合ナイロン、6/66/10/11/12共重合ナイロンおよび上記共重合ナイロンとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリアミドエラストマー等が挙げられる。
【0014】
前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、テレフタル酸およびイソフタル酸を含む酸成分と、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールを含むジオール成分との重縮合反応により得られるポリエステル樹脂を挙げることができる。それらの具体例としては、テレフタル酸/エチレングリコール共重合ポリエステル樹脂、テレフタル酸/ブチレングリコール共重合ポリエステル樹脂、テレフタル酸/イソフタル酸/1,4−ブタンジオール共重合ポリエステル樹脂、テレフタル酸/イソフタル酸/1,6−ヘキサンジオール共重合ポリエステル樹脂、テレフタル酸/イソフタル酸/ポリエチレングリコール共重合ポリエステル樹脂、テレフタル酸/イソフタル酸/エチレングリコール/1,4−ブタンジオール共重合ポリエステル樹脂、テレフタル酸/イソフタル酸/アジピン酸/1,4−ブタンジオール共重合ポリエステル樹脂およびテレフタル酸/イソフタル酸/1,4−ブタンジオール/ジエチレングリコール共重合ポリエステル樹脂等が挙げられる。また、前記ポリエステル系樹脂としては、前記共重合ポリエステル樹脂とポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステル系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0015】
本発明において前記ポリオレフィン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上のものを混合して使用してもよい。
【0016】
前記樹脂のなかでも好ましいものとしては、安価で汎用性の高い球状熱可塑性樹脂粒子を得ることができる観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、および12ナイロンを挙げることができる。
【0017】
不定形熱可塑性樹脂粉末の中位粒子径は特に限定されないが、1ミクロン〜3000ミクロンであることが好ましい。1ミクロンより小さくなると、球状粒子は得られるが、濾過等の後工程が難しく工業的には利用が難しい場合がある。3000ミクロンより大きくなると球状化に時間がかかるため好ましくない場合がある。
【0018】
本発明で用いる不定形熱可塑性樹脂粉末中には、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、シリカなどの無機顔料、鉄、銅、ニッケル、コバルトなどの金属粉および紫外線吸収剤、耐熱安定剤などの有機物質を含有させることもできる。
【0019】
本発明で使用する多価アルコールは、使用する前記樹脂粉末を実質的に膨潤あるいは溶解しない多価アルコールであればよく、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、ポリエチレングリコール、メトキシエタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどを挙げることができる。本発明において前記多価アルコールは、それぞれ単独で、あるいは2種以上のものを混合して使用してもよい。これらのなかでも特にエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0020】
多価アルコールの使用量は、不定形熱可塑性樹脂粉末100重量部に対して50〜2000重量部が好ましく、使用量が50重量部未満では樹脂濃度が高すぎて充分に攪拌混合することが難しく、2000重量部を超えて使用することは装置の大きさに比して生産量が少なくなるので好ましくない。
【0021】
本発明において用いられる疎水性シリカ微粒子としては、例えば、親水性シリカ微粒子を疎水性化合物で疎水化処理したものが用いられる。具体的には、親水性シリカ微粒子の表面を疎水性化合物で被覆処理したもの、親水性シリカ微粒子表面のシラノール基に分子内に疎水基を有する疎水性化合物を化学的に結合させたものなどが挙げられる。
【0022】
親水性シリカ微粒子を疎水化処理する方法としては特に限定されず、親水性シリカ微粒子を疎水性化合物の溶液に浸漬後、乾燥、加熱処理する方法や、親水性シリカ微粒子の粉体を攪拌しながら疎水性化合物の溶液を噴霧し、乾燥、加熱処理する方法などの公知の方法で行えば良い。
【0023】
疎水化処理に供される親水性シリカ微粒子としては、溶融シリカや乾式法、湿式法で得られるホワイトカーボン等の通常の親水性シリカ微粒子が利用できる。
【0024】
疎水化処理に使用される前記疎水性化合物としては、シリコーン系化合物、シラン系化合物、金属セッケン、ワックスなどが挙げられ、なかでもシリコーン系化合物およびシラン系化合物が好ましく用いられる。シリコーン系化合物としては、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンや、側鎖や末端にアミノ基やエポキシ基等を導入した変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーンオイルなどが挙げられる。シラン系化合物としては、例えば、メタクリロキシシラン、メチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等のシラン化合物、メチルアルコキシシラン、フェニルアルコキシシラン、イソブチルアルコキシシラン、ヘキシルアルコキシシラン、オクチルアルコキシシラン、デシルアルコキシシラン等のアルコキシシラン化合物、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン化合物等が挙げられる。
【0025】
本発明において前記疎水性シリカ微粒子は、それぞれ単独で、あるいは2種以上のものを混合して使用してもよい。
【0026】
本発明において疎水性シリカ微粒子の平均粒子径は分散媒中で不定形熱可塑性樹脂粉末粒子の表面に付着し、粒子間の融着を防止できれば特に限定はないが、使用する不定形熱可塑性樹脂粉末との関係で、平均粒子径が0.001〜0.5ミクロンの疎水性シリカ微粒子を用いると好ましい場合が多い。平均粒子径が0.001ミクロンより小さいシリカ微粒子は入手が困難である。一方0.5ミクロンより大きい場合、不定形熱可塑性樹脂粉末粒子間の凝集が発生する可能性が高くなる。
【0027】
疎水性シリカ微粒子の使用量は、不定形熱可塑性樹脂粉末および、多価アルコールとの組み合わせにより異なるが不定形熱可塑性樹脂粉末100重量部に対し、0.1重量部以上3重量部未満、好ましくは0.5重量部以上2.8重量部以下使用すると好結果が得られる。0.1重量部より少ない場合は、球状化時に熱可塑性樹脂粒子の凝集が起こり良好な球状粒子が得られない場合がある。一方、3重量部以上用いると、球状化は可能であるが濾過洗浄に長時間を要し工業的に有利でない場合がある。
【0028】
多価アルコール中に疎水性シリカ微粒子を分散する方法は、多価アルコール中に均一分散が可能であれば使用する分散機に特に限定はなく、通常のプロペラ型の攪拌機やホモミキサー、ホモジェッター等を用いることができる。
【0029】
疎水性シリカ微粒子を分散させた分散媒の含水率は、10重量%以下、好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.2〜8重量%であることが好ましい。分散媒の含水率は0.1重量%より低くてもよいが、水分の管理が難しく実際的ではない。一方、分散媒を繰り返し使用した場合、濾過・洗浄液から水が混入し含水率が10重量%より高くなる場合があるが、このような分散媒を使用すると疎水性シリカ微粒子の疎水基部が分解するためか、凝集物が多く生成し良好な球状粒子が得られない場合がある。
【0030】
本発明においては、分散媒の含水率を10重量%以下とすることで、疎水性シリカ微粒子の使用量を少なくすることが可能となった。つまり分散媒の含水率が10重量%より高い場合、疎水性シリカ微粒子の疎水基部の分解が進みやすく、疎水性シリカ微粒子の使用量が不定形熱可塑性樹脂粉末100重量部に対して3重量部以上必要であったが、含水率を10重量%以下とすることで疎水基部の分解が発生しにくくなったため、疎水性シリカ微粒子の使用量が3重量部未満でも球状粒子の製造が可能になったと考えられる。また本発明の分散媒は含水率が低く調整されることより、分散媒の繰り返し使用を行った場合でも安定的に使用することができる。
【0031】
本発明において不定形熱可塑性樹脂粉末の球状化は不定形熱可塑性樹脂粉末の溶融温度以上、すなわち不定形熱可塑性樹脂粉末と相溶性のない分散媒中で樹脂が流動性を有し始める温度以上で加熱攪拌することにより行う。ただし必要以上に温度を上げることは樹脂や疎水性シリカ微粒子の疎水基部の分解が起ることもあるので好ましくない。具体的には不定形熱可塑性樹脂粉末の溶融温度以上、好ましくは溶融温度からプラス10〜50℃の温度で、通常は1〜60分、好ましくは10〜30分間、加熱攪拌した後冷却する。必要ならば加熱時間を60分以上とする事もできるが、分散媒の劣化を招く可能性があり好ましくない場合がある。球状化後、樹脂の溶融温度未満まで冷却し、濾過、水洗、乾燥し、目的とする球状熱可塑性樹脂粒子の粉末を得る。
【0032】
工業的実施においては不定形熱可塑性樹脂粉末と多価アルコールとの組み合せを適宜選択し、樹脂の溶融温度が多価アルコールの沸点以上の温度にならないよう配慮するのが好ましいが、容器が加圧に耐えるものであれば特に限定される訳ではない。
【実施例】
【0033】
以下実施例および比較例を示して本発明を具体的に説明する。
【0034】
評価方法
実施例および比較例で得られた樹脂粒子の中位粒子径および分散媒の含水率については下記の方法に従って測定した。
(中位粒子径)原料である不定形熱可塑性樹脂粉末および得られた球状樹脂粒子の中位粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所の商品名“SALD−2000J”)を用いて測定した。
(含水率)分散媒中の含水率については、カールフィッシャー式水分計(平沼産業株式会社の商品名“AQ−6”)を用いて測定した。
【0035】
実施例1
500ml容の四つ口フラスコにプロピレングリコール200g、疎水性シリカ微粒子(日本アエロジル製、商品名;アエロジルR972 平均粒子径0.016ミクロン)1.2gを仕込み攪拌混合した。得られた分散媒の含水率は0.3重量%であった。その後不定形ポリエチレン粉末(溶融温度107℃,中位粒子径180ミクロン) 50gを仕込み、攪拌、混合した。その後攪拌を継続しながら内温が125℃になるまで昇温した。内温を125℃に保ったまま15分間攪拌し、次いで60℃まで冷却した。濾過後、水洗、乾燥することによりガラ状物がほとんどない中位粒子径175ミクロンの球状のポリエチレン粒子を得た。なお、本明細書中でガラ状物とは、樹脂粒子が融着して粗大粒子となったものを意味する。
【0036】
実施例2
500ml容の四つ口フラスコにエチレングリコール200g、疎水性シリカ微粒子(日本アエロジル製、商品名;アエロジルR972 平均粒子径0.016ミクロン)0.5gと疎水性シリカ微粒子(日本アエロジル製、商品名;アエロジルR812 平均粒子径0.007ミクロン)0.25gを仕込み攪拌混合した。得られた分散媒の含水率は0.3重量%であった。その後不定形エチレン/アクリル酸共重合体粉末(溶融温度104℃,中位粒子径280ミクロン)50gを仕込み、攪拌混合した。その後攪拌を継続しながら内温が140℃になるまで昇温した。内温を140℃に保ったまま15分間攪拌し、次いで60℃まで冷却した。濾過後、水洗、乾燥することによりガラ状物がほとんどない中位粒子径270ミクロンの球状のエチレン/アクリル酸共重合体粒子を得た。
【0037】
実施例3
500ml容の四つ口フラスコにポリエチレングリコール200(分子量200)200g、疎水性シリカ微粒子(日本アエロジル製、商品名;アエロジルR805 平均粒子径0.012ミクロン)0.3gを仕込み攪拌混合した。得られた分散媒の含水率は0.3重量%であった。その後不定形エチレン/酢酸ビニル共重合体粉末(溶融温度93℃,中位粒子径200ミクロン)50gを仕込み、攪拌、混合した。その後攪拌を継続しながら内温が130℃になるまで昇温した。内温を130℃に保ったまま15分間攪拌し、次いで60℃まで冷却した。濾過後、水洗、乾燥することによりガラ状物がほとんどない中位粒子径190ミクロンの球状のエチレン/酢酸ビニル共重合体粒子を得た。
【0038】
実施例4
500ml容のオートクレーブにポリプロピレングリコール1000(分子量1000)200g、疎水性シリカ微粒子(日本アエロジル製、商品名;アエロジルR202 平均粒子径0.014ミクロン)1gを仕込み攪拌混合した。得られた分散媒の含水率は0.3重量%であった。その後不定形ポリプロピレン粉末(溶融温度158℃,中位粒子径300ミクロン)50gを仕込み、攪拌、混合した。その後攪拌を継続しながら内温が200℃になるまで昇温した。内温を200℃に保ったまま15分間攪拌し、次いで60℃まで冷却した。濾過後、水洗、乾燥することによりガラ状物がほとんどない中位粒子径290ミクロンの球状のポリプロピレン粒子を得た。
【0039】
実施例5
500ml容の四つ口フラスコにプロピレングリコール200g、疎水性シリカ微粒子(日本アエロジル製、商品名;アエロジルR972 平均粒子径0.016ミクロン)0.5gと疎水性シリカシリカ微粒子(日本アエロジル製、商品名;アエロジルR805 平均粒子径0.012ミクロン)0.9gを仕込み攪拌混合した。得られた分散媒の含水率は0.3重量%であった。その後不定形エチレン/メタクリル酸メチル共重合体粉末(溶融温度100℃,中位粒子径300ミクロン)50gを仕込み、攪拌混合した。その後攪拌を継続しながら内温が140℃になるまで昇温した。内温を140℃に保ったまま15分間攪拌し、次いで60℃まで冷却した。濾過後、水洗、乾燥することによりガラ状物がほとんどない中位粒子径295ミクロンの球状のエチレン/メタクリル酸メチル共重合体粒子を得た。
【0040】
実施例6
500ml容のオートクレーブにポリエチレングリコール200(分子量200) 200g、疎水性シリカ微粒子(日本アエロジル製、商品名;アエロジルR812 平均粒子径0.007ミクロン)1.2gを仕込み攪拌混合した。得られた分散媒の含水率は0.3重量%であった。その後不定形12ナイロン粉末(溶融温度178℃,中位粒子径200ミクロン)50gを仕込み、攪拌、混合した。その後攪拌を継続しながら内温が220℃になるまで昇温した。内温を220℃に保ったまま15分間攪拌し、次いで60℃まで冷却した。濾過後、水洗、乾燥することによりガラ状物がほとんどない中位粒子径195ミクロンの球状の12ナイロン粒子を得た。
【0041】
実施例7
実施例1において使用した分散媒を3回繰り返し使用し、濾過洗浄水からの水の混入により含水率が7重量%となった分散媒を用いた以外は、実施例1と同様にして、ガラ状物がほとんどない中位粒子径180ミクロンの球状のポリエチレン粒子を得た。
【0042】
実施例8
実施例3において使用した分散媒を2回繰り返し使用し、濾過洗浄水からの水の混入により含水率が4重量%となった分散媒を用いた以外は、実施例3と同様にして、ガラ状物がほとんどない中位粒子径190ミクロンの球状のエチレン/酢酸ビニル共重合体粒子を得た。
【0043】
比較例1
実施例1において疎水性シリカ微粒子を2.5g用いた以外は実施例1と同様な操作を行ったところ、濾過や水洗に要する水の量が多くなり、濾過洗浄に長時間を要した。得られた粉末はガラ状物もほとんどなく中位粒子径175ミクロンの球状のポリエチレン粒子であった。
【0044】
比較例2
実施例1において疎水性シリカ微粒子を0.03g用いた以外は実施例1と同様な操作を行ったところ、昇温の途中で凝集体状となり球状のポリエチレン粒子は得られなかった。
【0045】
比較例3
実施例1において使用した分散媒を6回繰り返し使用し、濾過洗浄水からの水の混入により分散媒中の含水率が15重量%となった分散媒を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、昇温の途中で凝集体状となり球状のポリエチレン粒子は得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明により得られる、球状で種々の粒子径を有する熱可塑性樹脂粒子は、スクラブ洗顔剤等の各種化粧品、触媒等の担体、印刷用インキや塗料等への添加剤、多孔質体の原料、造形用原料等に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不定形熱可塑性樹脂粉末を、多価アルコール中に前記不定形熱可塑性樹脂粉末100重量部に対し0.1重量部以上3重量部未満の疎水性シリカ微粒子を分散させた含水率が10重量%以下の分散媒中に、分散させ、前記不定形熱可塑性樹脂粉末の溶融温度以上で加熱攪拌し、その後冷却することを特徴とする球状熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
多価アルコールがエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の球状熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
不定形熱可塑性樹脂粉末がポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体および12ナイロンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1または2記載の球状熱可塑性樹脂粒子の製造方法。

【公開番号】特開2007−246718(P2007−246718A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73001(P2006−73001)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】