説明

球状金属酸化物粉末の製造方法

【課題】異物の量、特に着磁性異物の量を低減した球状金属酸化物粉末の製造方法を提供すること。
【解決手段】金属酸化物粉末及び金属水酸化物粉末の少なくとも一方からなる原料粉末を火炎中に噴射して球状化し、それを捕集系で回収する工程を含む球状金属酸化物粉末の製造方法において、上記原料粉末中の粒径45μm以上の異物を、異物除去装置を通過させることにより450個/50g以下に減ずる工程を含むことを特徴とする球状金属酸化物粉末の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物の量を低減した球状金属酸化物粉末の製造方法に関する。詳しくは、半導体封止材の充填材、基板、電子材料等に適する、導電性金属粒子等の異物の混入量が極めて低い球状金属酸化物粉末を製造する際に、原料粉末を球状化処理するのに先立ち、原料粉末から着磁性及び非着磁性の異物を減ずる工程を含む、球状金属酸化物粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
球状金属酸化物粉末は、天然に産出される珪石を粉砕したものや、半導体用シリコンウエハ製造工程において発生するシリカ屑や、地殻中に多く存在するアルミナ等の金属酸化物を粉砕して粉状にしたものなどを原料とし、それを粉末状態のまま(例えば特許文献1)、又は水、アルコール等の媒体中に分散させてスラリーとし(例えば特許文献2〜4)、火炎中に噴射して球状化することにより製造されている。
球状金属酸化物粉末は、例えば半導体封止材の分野においては、半導体デバイスのワイヤーの狭ピッチ化に伴い、電気的なショートを発生させないよう異物の量をできるだけ低減したものが望まれている。そこで、原料粉末の火炎噴射からその処理物を捕集系で回収するまでの間に、適宜数の異物除去装置を設け、異物を除去(低減することも含む。以下同じ。)することが行われているが、現在求められているレベルを考慮しても、近い将来求められるレベルを考慮しても十分に満足いく程度に除去されていない。また、捕集系からの回収品に含まれる異物を、更に磁石、篩等を用いて除去することが考えられるが、回収品に含まれる異物の量などによって除去効率が異なり、これもまた現在の要求を十分に満たしえないか、又はそのためには多大な設備、処理時間等が必要であった。
【0003】
【特許文献1】特開2004−175825号公報
【特許文献2】特開2002−179409号公報
【特許文献3】特開2004−51409号公報
【特許文献4】特開2006−182594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、火炎処理物の捕集品に含まれる異物を効率良く低減することができる球状金属酸化物粉末を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題は、原料粉末を火炎中に噴射するのに先立ち、粒径45μm以上の異物を450個/50g以下に減じておくことによって達成することができる。
すなわち、本発明は、金属酸化物粉末及び金属水酸化物粉末の少なくとも一方を含む原料粉末を火炎中に噴射して球状化し、それを捕集系で回収する方法において、上記原料粉末中の粒径45μm以上の異物を、異物除去装置を通過させることにより450個/50g以下に減ずる工程を含むことを特徴とする球状金属酸化物粉末の製造方法である。
本発明においては、(1)原料粉末中の異物を減ずる方法が、原料粉末をキャリアガスに同伴させ、磁束密度4,000ガウス以上の磁石が組み込まれた異物除去装置に、50〜600kg/hrの割合で通過させること、(2)原料粉末中の粒径45μm以上の異物を80〜200個/50gに調整すること、(3)捕集系から回収された球状金属酸化物粉末をキャリアガスに同伴させ、磁束密度4,000ガウス以上の磁石が組み込まれた異物除去装置に、50〜600kg/hrの割合で通過させること、から選ばれた少なくとも一つの実施態様を採ることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
球状金属酸化物粉末に含まれる粒径45μm以上の異物の量、特に粒径45μm以上の着磁性異物の量を、550個/50g以下に容易に除去することができる。また、原料粉末中の粒径45μm以上の異物の量を80〜200個/50gに調整しておくことによって、球状金属酸化物粉末中に含まれる異物の量を100〜250個/50gの狭範囲内に制御することができるので均質なものとなり、しかも更なる異物の量を100個/50g未満に除去するときにその除去操作が容易となる。その上、原料の種類が同じでも、それどころか同じロット原料でも、同じ質量の原料に含まれる異物の個数にばらつきがあるため、球状金属酸化物粉末の品質が安定しない恐れがあるところ、本発明によれば、原料粉末中の粒径45μm以上の異物の量を450個/50g以下、特に80〜200個/50gに調整しておくことによって、得られる球状金属酸化物粉末の品質が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で用いる原料は、金属酸化物粉末及び金属水酸化物粉末の少なくとも一方からなるものである。それを例示すると、シリカ粉末、アルミナ系粉末、ムライト粉末、コージェライト粉末等である。シリカ粉末としては、天然珪石の粉砕物や、例えばゾルゲル法等による合成物などがある。アルミナ系粉末としては、水酸化アルミニウム、バイヤー法アルミナ等がある。
原料粉末の種類や、天然物か合成物かの違い等により異なるが、原料粉末には非酸化鉄系、チタニア、SUS(例えばマルテンサイト系SUS)等の着磁性異物と、アルミニウム、ウラン等の非着磁性異物とが含まれる。異物は粉状又は塊状等の形態となって原料粉末と別個独立に存在するか、又は原料粉末中に埋没した状態で存在するが、本発明によれば、主として、原料粉末と別個独立に存在する異物を除去することができる。
ここで、異物とは、金属酸化物以外の着磁性又は非着磁性の物質にして、粒径45μm以上の粒子である、と定義される。
【0008】
原料粉末は、異物除去及び球状化の容易さの観点から、平均粒径が3〜70μmであるのが好ましく、5〜50μmであるのがより好ましい。これには市販品があるのでそれを用いることができる。それを例示すれば、シリカ粉末としては、商品名F2075で株式会社ニッチツから販売されているもの(平均粒径20μm)、商品名F3575で株式会社ニッチツから販売されているもの(平均粒径30μm)があげられる。アルミナ系粉末としては、商品名LS−13で株式会社日軽金から販売されているものがあげられる。
市販の原料粉末には、500〜1000個/50gの異物が含まれているので、得られた球状金属酸化物粉末中に含まれる異物の量は、球状化工程から捕集工程の間において揮散する異物もあるが、部材磨耗によって混入する異物もあり、通常は多くなる。そのため用途に制約を受ける。また、得られた球状金属酸化物粉末から更に異物を除去するにしても、異物の量が多いことに加えて、混入量も原料粉末によってかなりばらつき、制御された範囲内にすることが困難であり、その後の除去操作が容易ではなかった。
【0009】
本発明においては、原料粉末から異物、特に着磁性異物を450個/50g以下、好ましくは300個/50g以下に除去する。これによって、部材磨耗によって異物が混入してしまっても、捕集系から回収された球状金属酸化物粉末中の異物の量は、550個/50g以下、特に350個/50g以下にすることができる。異物の除去手段には特に限定はなく、例えば磁石、篩、空気分級、比重差分離等によることができる。これらは二種以上を組み合わせることもできる。
原料粉末はそのままの状態で処理することもできるし(以下、「乾式」と称することもある。)、水、例えばメタノール、エタノール等のアルコール、例えば灯油等の液体燃料などの媒体に分散させてスラリーとした状態で処理することもできる(以下、「湿式」と称することもある。)。これらのうち、操作の容易性の観点から磁石による方法が好ましく、中でも原料粉末をキャリアガスに同伴させ、磁束密度4,000ガウス以上の磁石が組み込まれた異物除去装置に、50〜800kg/hrの割合で通過させる方法が特に好ましい。
【0010】
磁石としては、電磁石、永久磁石、超伝導磁石等を用いることができる。原料粉末が天然珪石の粉砕物である場合、粉砕時にマルテンサイト系SUSが多く混入する傾向にあるので、特に磁束密度が4,000ガウス以上、より好ましくは10,000ガウス以上、好ましくは20,000ガウス以下の磁石が組み込まれた異物除去装置に原料粉末を通過させることが好ましい。このような異物除去装置は、例えば棒状磁石を管体に挿通させたものを一定間隔で、例えば10〜50mm、好ましくは10〜30mmの磁石間隙で、平行又は格子状にして枠体に配列したもの(例えば特開平11−47633号公報)や、更にそれらを数段重ねたものが使用される。市販品には、例えば日本エリーズマグネチックス株式会社、永久磁石式格子型除鉄装置がある。
磁石の表面を、樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等で被覆すると、原料粉末と磁石とが接触することにより磁石表面が削れ、着磁性異物が発生することを抑制することができるので好ましい。
【0011】
原料粉末を異物除去装置に通過させるには、それをキャリアガスに同伴させ、水平方向又は垂直方向(上方向及び下方向)に、一方の口から他方の口に送給すればよい。キャリアガスとしては、火炎を形成させるのに用いた、燃料ガス及び助燃ガスの少なくとも一方であることが好ましい。とくに、酸素50体積%以上、空気50体積%以下の混合ガスが好ましく、中でも酸素ガスが好ましい。供給量は50〜800kg/hrが好ましく、特に300〜600kg/hrが好ましい。これによって、原料粉末が磁石と接触することなく通過することから回避させることができる。また、この除去操作を繰り返し行って所定個数の異物の量に制御することもできる。なお、異物除去が行われる場は、コンタミネーションコントロールが行われた清浄な場であるのが好ましいことは言うもでもない。
上記方法の他に、原料粉末を磁石に接触させるには、キャリアガスに同伴させることなく原料粉末を異物除去装置に自然落下させる方法や、容器に原料粉末を入れ磁石を挿し込み適宜動かす方法をも採用することができる。
【0012】
原料粉末を篩にかけて異物を除去することができる。この方法によれば非着磁性異物を除去することができる。篩のメッシュサイズは、原料粉末の平均粒径により異なるが、例えば平均粒径が10μm程度の場合、篩い網目開き30μm程度のものを用いるのが好適である。篩の材質としては、原料粉末と篩とが接触して発生する摩耗物による汚染を防止する観点から、ポリエステル、ナイロン、ポリイミド、フッ素系樹脂等が好適である。
【0013】
原料粉末から異物を空気分級で除去することができる。分級の原理は粉体に作用させる力によって分けられ、重力、慣性力、遠心力を利用する。これには、慣性と重力を巧みに組み合わせた慣性式分級機や、粗粉に対して遠心力を大きくさせ、微粉に対しては極力これを殺して限界粒子径を境に粗粉と微粉とを分ける遠心分級機がある。
【0014】
鉱物等の比重差を利用して異物を除去することができる。これは、液体の比重と、金属酸化物粉末との、異物の比重差を利用するものである。異物と金属酸化物粉末との比重差を利用することも可能であるが、重液の後処理が必要となる。
【0015】
原料粉末中の異物の量を450個/50g以下に調整しておくと、部材磨耗によって異物が混入したとしても、捕集系から回収された球状金属酸化物粉末中の異物の量を550個/50g以下にすることができる。しかも、原料粉末中の異物の量を80〜200個/50gに調整しておくことによって、球状金属酸化物粉末中の異物の量を100〜250個/50gの狭範囲内にすることもできる。これは、球状化工程から捕集工程の間において、揮散する異物、逆に部材磨耗によって混入する異物を考慮すると、全く驚くべき効果である。これによって、比較的均質な球状金属酸化物粉末を容易に製造することができる。さらには、この球状金属酸化物粉末から異物を除去する場合においても、異物の含有率が所定範囲に制御されているので効率良く行うことができる。たとえば、上記原料粉末の除去で説明したキャリアガスを用いる方法によって球状金属酸化物粉末を更に異物除去装置に通過させると、容易に着磁性異物の量を100個/50g未満までに除去することができる。
【0016】
原料粉末の火炎による球状化処理と、得られた球状金属酸化物粉末の回収は、常法によって行うことができる。それを概説すれば以下のとおりである。
装置としては、例えばバーナーを備えた炉体に捕集装置が接続されたものが採用される。その一例を示せば特開平11−57451号公報、同11−71107号公報である。炉体は開放型又は密閉型にして縦型又は横型のいずれであってもよい。捕集装置には、サイクロン、バグフィルター等が用いられる。
火炎の形成は、バーナー(通常は二流体ノズルの中心部に組み込まれているが、この構造には限定されない。)から、燃料ガスと助燃ガスを噴射することによって行うことができる。燃料ガスには水素、天然ガス、アセチレンガス、プロパンガス、ブタン等を用い、助燃ガスには空気、酸素等を用いる。
火炎温度は1730〜2000℃が好ましく、特に1750〜1900℃であることが好ましい。このような温度で原料粉末を熱処理すると、原料粉末粒に埋没した状態で存在し、物理的手段によっては除去しにくい着磁性異物を酸化物に変換され、実質的に導電性を消失させることができる。
【0017】
原料粉末はそのままの状態で、つまり乾式で火炎中に噴射することもできるし、水、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、例えば灯油等の液体燃料などの媒体に分散させてスラリーとした状態で、つまり湿式で噴射することもできる。
スラリーの場合、異物除去効果の観点から、原料粉末の濃度は10〜50質量%が好ましく、特に15〜45質量%であることが好ましい。また、スラリー比重(25℃)は、媒体の種類を問わず、シリカ粉末の場合、1.35以下、好ましくは1.05〜1.33とするのが好ましい。アルミナ系粉末の場合、1.59以下、好ましくは1.08〜1.42とするのが好ましい。いずれのスラリーにおいても、媒体は5〜40質量%エタノール水溶液であることが好ましい。
原料粉末を火炎中に噴射するには、取扱い性及び量産性の観点から、乾式、湿式のいずれの場合であっても、二流体ノズルを用いることが好ましい。その場合のキャリアガスとしては、通常、助燃ガス又は燃料ガスが用いられるが、炉内温度を調節するなどのために炭酸ガス、窒素ガス等の不燃性ガスを用いることもできる。二流体ノズルからの原料粉末の噴射速度は20m/秒以上とすることが好ましく、25〜50m/秒とするのがより好ましい。
【0018】
本発明においては、捕集系から回収された球状金属酸化物粉末から更に着磁性異物を除去することもできる。その除去手段としては、原料粉末からの異物の除去に関連して説明した上記方法を採用することができる。なかでも、上記原料粉末の除去で説明したキャリアガスを用いる方法が好ましい。この操作は複数回繰り返して行うこともできる。
【実施例】
【0019】
〔実施例1〕
原料シリカ粉末(株式会社ニッチツ製、F2075、平均粒径20μm、異物の量607個/50g(表1中、「除鉄前原料粉末」として示す))を、磁束密度が12000ガウスの磁石が組み込まれた異物除去装置に、空気をキャリアガスとして600kg/hrの割合で通過させた。その結果、異物の量は表1に示すとおりとなった(表1中、「除鉄後原料粉末」として示す)。
異物除去装置は、ステンレス製の枠体(150mm×225mm)の内部に、図1に示される多段式永久磁石(直径25mm、長さ150mm、10本)を格子状に5段重ねたものである(合計の磁石数50本)。
異物の除去された原料シリカ粉末を、LPGと酸素の燃焼によって火炎の形成された炉に、二流体ノズルを用い、0.3MPaの酸素ガスをキャリアガスとして噴射した。噴射量は400kg/hr、火炎温度は1850℃とした。
得られた球状化処理物を捕集系(サイクロン)にブロワーで吸引して導き、球状金属酸化物粉末(球状シリカ粉末)を回収し、以下に従う異物の量(表1中、「球状シリカ粉末」として示す)、平均粒径及び平均球形度を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0020】
〔比較例1〕
原料シリカ粉末から異物の除去を行わないで火炎中に噴射したこと以外は、実施例1と同様にして球状金属酸化物粉末を製造した。なお、用いた原料粉末(株式会社ニッチツ製、F2075)の異物の量は表1に示すとおりである。
〔実施例2〕
原料シリカ粉末を異物除去装置に400kg/hrの割合で通過させたこと以外は、実施例1と同様にして球状金属酸化物粉末を製造した。なお、用いた原料粉末(株式会社ニッチツ製、F2075)の異物の量は表1に示すとおりである。
【0021】
〔実施例3〕
異物除去装置として磁束密度が8000ガウスの磁石を格子状に3段重ねたものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして球状金属酸化物粉末を製造した。なお、用いた原料粉末(株式会社ニッチツ製、F2075)の異物の量は表1に示すとおりである。
〔実施例4〕
原料シリカ粉末を異物除去装置に400kg/hrの割合で通過させることを2回行ったこと以外は、実施例1と同様にして球状金属酸化物粉末を製造した。なお、用いた原料粉末(株式会社ニッチツ製、F2075)の異物の量は表1に示すとおりである。
〔実施例5〕
異物除去装置として磁束密度が12000ガウスの磁石を1段用いたこと以外は、実施例1と同様にして球状金属酸化物粉末を製造した。なお、用いた原料粉末(株式会社ニッチツ製、F2075)の異物の量は表1に示すとおりである。
【0022】
実施例1〜5及び比較例1で製造された球状金属酸化物粉末から更に異物を除去した。除去方法は、原料シリカ粉末を球状金属酸化物粉末に変えたこと以外は実施例1と同一条件で行った。それに含まれる異物の量(表1中、「球状シリカ粉末」として示す)を、上に述べたのと同様にして測定した。その結果を「更なる異物除去品」として表1に示す。また、平均粒径及び平均球形度も上に述べたのと同様にして測定した。その結果も表1に併記する。
球状シリカ粉末中に含まれる異物の量(表1中「球状シリカ粉末」)と更なる異物除去品(表1中「更なる異物除去品」)に含まれる異物の量とから、除去効率を求めた。結果を表1に併記する。
除去効率(%)=(「球状シリカ粉末」−「更なる異物除去品」)×100
/「球状シリカ粉末」
【0023】
<粒径45μm以上の異物の量>
(a)磁石
磁石として、図2に示す構造の棒磁石を準備した。この棒磁石は、直径25mm、長さ150mmの円筒状カバー(1)の内部に、図示されるような配置で、厚み20mmの円柱状磁石片(2)が、厚み1mmのスペーサ(3)を介して固定されている。円筒状カバーは、SUS316製であった。棒磁石の磁束密度は、10000ガウスであった。
(b)磁性体の準備
次に、袋状のゴム製被膜(ラテックス(天然ゴム)、長さ180mm、直径25mm)を棒磁石に密着して被覆した。この際、まず、袋状のゴム製被膜の内部に脱イオン水を8割ほど注入し、ゴム製被膜を円筒状に膨らませて安定化し、その中に棒磁石を先端から110mm挿入した。内部の脱イオン水を除去した後、ゴム製被膜を被着した状態で、マイクロスコープ(Hirox製KH−3000モデル)で棒磁石に被着したゴム製被膜の厚みを測定した。被着時のゴム製被膜の厚みは、0.02mmであった。このようにゴム製被膜を被着した棒磁石を、以降、単に被着棒磁石という。
【0024】
(c)操作
被着棒磁石をスラリー中に挿入し、撹拌装置により、回転数550rpmで1分間スラリーを攪拌した。攪拌は、5秒毎に回転方向が逆になるようにして行った。操作は25℃で行った。
着磁性粒子の付着した被着棒磁石をスラリーから取り出し、空のビーカーの上方に移動し、脱イオン水でゴム製被膜を洗浄して該ビーカー内に着磁性粒子を落とし入れた。その後、被着棒磁石を別の空のビーカー内に入れ、ゴム製被膜と磁性体との間に脱イオン水を注入し、被着棒磁石からゴム製被膜を脱着した。別の容器内で、脱イオン水の入ったゴム製被膜の表面を脱イオン水で洗浄して、ゴム製被膜から着磁性粒子を脱離させた。容器からゴム製被膜を取り出した後、脱イオン水を該容器に注入し、全体として500mLの分散液とした。また残ったスラリーを保管した。
得られた分散液を、直径25mmのナイロンフィルター(目開き35μm)を装着した吸引ろ過装置によりろ過し、そのナイロンフィルター上に着磁性粒子を収集した。
得られたナイロンフィルターを、マイクロスコープ(Hirox製KH−3000モデル)にセットし、100倍の倍率にてフィルター全領域を移動させながら、ナイロンフィルター上に収集された着磁性粒子の個数を計測した。結果を表1に示す。
【0025】
(d)着磁性異物の回収確認
残ったスラリーを、再度上記操作(c)に従って洗浄及びろ過したところ、回収された着磁粒子の個数は0個であった。更に同じ操作を3回繰り返して、残存している着磁物の回収を試みたが、回収された着磁物はいずれも0個であった。これにより、スラリー中に含まれる着磁性粒子は全て回収し、計測に供したことを確認した。
【0026】
<平均粒径及び平均球形度>
平均粒径はシーラス社製、シーラス・グラニュロメーター/モデル920(レーザー回折式粒度分布測定器)により測定した。試料0.35gを秤取り、イオン交換水100mLの入った100mLビーカーに投入する。分散効果向上のためエタノール1滴を加えて、超音波で180秒分散して、粒度分布を測定した。
平均球形度は、SYSMEX社製FPIA3000で測定した。試料10gを200mLビーカーに秤取り、イオン交換水150mLを加える。超音波で3分間分散し、JIS篩45μmで篩い分け篩い上を測定サンプルとする。篩い上より0.02〜0.03gを分取して20mLガラス容器に投入、25%プロピレングリコール水溶液5mLを加えて、フロー式粒子像分析装置で45μm以上の平均球形度を測定した。
平均球形度の計算式={(対象粒子の投影面積)*4π)}2/(対象粒子の投影周囲長)2




【0027】
【表1】



【0028】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の方法で製造された球状金属酸化物粉末は、半導体封止材の充填材、基板、電子材料等として使用することができる。さらには、更なる異物を除去した球状金属酸化物粉末を製造するための原料として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例で使用した多段式永久磁石の概略を示す。
【図2】実施例で使用した棒磁石の断面図(a)及び斜視図(b)を示す。
【符号の説明】
【0031】
10 外筒
20 永久磁石
30 磁石抜き出し部
1 円筒状カバー
2 円柱状磁石片
3 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物粉末及び金属水酸化物粉末の少なくとも一方からなる原料粉末を火炎中に噴射して球状化し、それを捕集系で回収する工程を含む球状金属酸化物粉末の製造方法において、上記原料粉末中の粒径45μm以上の異物を、異物除去装置を通過させることにより450個/50g以下に減ずる工程を含むことを特徴とする球状金属酸化物粉末の製造方法。
【請求項2】
原料粉末中の異物を減ずる方法が、原料粉末をキャリアガスに同伴させ、磁束密度4,000ガウス以上の磁石が組み込まれた異物除去装置に、50〜800kg/hrの割合で通過させることであることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
原料粉末中の粒径45μm以上の異物を80〜200個/50gに調整することを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
さらに、捕集系から回収された球状金属酸化物粉末を、キャリアガスに同伴させ、磁束密度4,000ガウス以上の磁石が組み込まれた異物除去装置に、50〜600kg/hrの割合で通過させることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−159168(P2010−159168A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116739(P2007−116739)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】