説明

球面すべり軸受

【課題】製造を比較的に容易としつつも、接触面圧を下げるとともに耐磨耗性を向上させ得る球面すべり軸受を提供する。
【解決手段】単一の円弧からなる凹曲面状の摺動面3が内周面に形成された外輪1と、該外輪1に滑動可能に内嵌されるとともに単一の円弧からなる凸曲面状の摺動面4が外周面に形成された内輪2とを備え、前記内外輪2、1相互の摺動面4、3からなる球面座を有する球面すべり軸受10であって、前記内外輪2、1相互の摺動面4、3の接触位置Tを、摺動面相互の大径側端部とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球面すべり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
球面すべり軸受は、内周に凹曲面状の摺動面を形成した外輪と、この外輪に滑動可能に内嵌されるとともに外周に凸曲面状の摺動面を形成した内輪とを有し、これら外内輪相互の摺動面から球面座が構成されている(例えば特許文献1ないし2参照)。
ここで、重荷重、低回転数の用途で使用される球面すべり軸受の球面座による調心機構は、調芯性に優れるとともに、摩耗が少ないことが望まれる。耐磨耗性は、球面座を構成する摺動面の接触面圧が低いほどよい。一方、球面座による調芯性は、摺動面の半径が小さい程良いと考えられる。このため、球面座を構成する摺動面相互の接触位置(「あたり位置」)は、通常、球面すべり軸受の小径側に設定した「小径側端部」になっている。なお、内外輪の接触位置である「あたり位置」は、内外輪の摺動面を構成する曲面のR寸法、および各曲面の中心位置の設定により異なってくる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−109926号公報
【特許文献2】特開平10−169547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、球面すべり軸受の耐摩耗性を重視する場合は、球面座を構成する摺動面相互の接触面圧をより抑える必要がある。この接触面圧を下げるには、摺動面相互の「あたり位置」を「小径側端部」よりも、球面すべり軸受の幅方向中央寄りに設定した「中間あたり」として接触面積を大きくすることが望ましい。
しかし、一般の球面すべり軸受の球面座では、内外輪相互の曲率半径の差が小さいため、摺動面相互の「あたり位置」を「中間あたり」とするには、摺動面の加工公差を小さく規定しなければならず、外内輪の製造が難しくなる。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、球面すべり軸受の球面座を構成する摺動面相互の「あたり位置」を所定に調整することにより、外内輪の製造を比較的に容易としつつも、摺動面相互の接触面圧を下げるとともに耐磨耗性を向上させ得る球面すべり軸受を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、単一の円弧からなる凹曲面状の摺動面が内周面に形成された外輪と、該外輪に滑動可能に内嵌されるとともに単一の円弧からなる凸曲面状の摺動面が外周面に形成された内輪とを備え、前記内外輪相互の摺動面からなる球面座を有する球面すべり軸受であって、前記外輪と内輪の摺動面相互の接触位置を、摺動面相互の大径側端部で接触させるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る球面すべり軸受によれば、球面すべり軸受の球面座を構成する摺動面相互の接触位置である「あたり位置」を、摺動面相互の大径側端部で接触させる構成(つまり、通常の「小径側端部」に替えて「大径側端部」)にしたので、実施形態にて詳述するように、外内輪の製造を比較的に容易としつつも、摺動面相互の接触面圧を下げるとともに耐磨耗性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の球面すべり軸受の球面座の構成例(「あたり位置」が「大径側端部」)を説明する図である。
【図2】「あたり位置」を「小径側端部」および「大径側端部」に設定したときの、「あたり位置」と面圧との関係を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1に示すように、この球面すべり軸受10は、円環状の外輪1と、この外輪1に滑動可能に内嵌される円環状の内輪2とを備えている。外輪1は、その内周に単一の円弧からなる凹曲面状の摺動面3を有し、他方、内輪2は、その外周に単一の円弧からなる凸曲面状の摺動面4を有しており、これら対向する摺動面3、4によって球面座5が構成されている。外輪1の摺動面3は半径R1の凹曲面からなり、内輪2の摺動面4は半径R2の凸曲面からなる。そして、本実施形態の球面すべり軸受10においては、外内輪1,2相互の摺動面3,4の「あたり位置」を、摺動面3、4相互の「大径側端部」としている。
【0010】
詳しくは、球面すべり軸受10の球面座5は、同図に示すように、外内輪1,2の摺動面3、4を構成する球面のR寸法(半径R1,R2)、および各球面の中心位置O1,O2により、外内輪1,2の接触位置である「あたり位置T」が異なってくる。この「あたり位置T」を、球面すべり軸受10の幅方向の中央C(最大幅寸法Wとしたときのその1/2の位置)に対して、「小径側端部」に設定した場合と、図1に示す「大径側端部」に設定した場合のそれぞれについて接触面圧をシミュレーションによって求めると、図2に示すようになる。同図からわかるように、「大径側端部」にした場合の最大面圧の大きさは、「小径側端部」にした場合の最大面圧の大きさよりも小さくなる。よって、内輪1,2の接触位置である「あたり位置T」を「大径側端部」にした場合の方が摩擦特性が良くなり、長寿命化を図ることができることがわかる。そこで、本実施形態の球面すべり軸受10においては、外内輪1,2相互の摺動面3,4の「あたり位置」を摺動面3、4相互の「大径側端部」としているのである。
【0011】
以上説明したように、この球面すべり軸受10によれば、摺動面3,4相互の「あたり位置T」を「大径側端部」にすることにより、外内輪1,2の製造を比較的に容易としつつも、摺動面3,4相互の接触面圧を下げるとともに耐磨耗性を向上させることができる。
なお、本発明に係る球面すべり軸受は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
【0012】
例えば、球面すべり軸受10においては、外内輪1,2相互の球面座5の「あたり位置T」は、外内輪1,2の球面の半径R1,R2およびオフセットδ1、δ2された中心位置O1,O2により定まるが、外内輪1,2相互の摺動面3,4相互の「あたり位置T」が「大径側端部」でさえあれば、各球面の半径R1,R2やその中心位置O1,O2は特に限定されるものではない。オフセットδ1、δ2の方向も、径方向の外向き内向きのどちらにずれていてもかまわない。つまり、外輪1については、その中心位置O1が、球面すべり軸受10の回転軸Lの軸線上または径方向にオフセットδ1された位置のいずれかにあればよい。また、同様に、内輪2についても、その摺動面4の半径R2の凸曲面の中心位置O2が、回転軸Lの軸線上または径方向にオフセットδ2された位置のいずれかにあればよい。
【符号の説明】
【0013】
1 外輪
2 内輪
3 (外輪の)摺動面
4 (内輪の)摺動面
5 球面座
10 球面すべり軸受
C 軸受の幅方向の中央位置
L 回転軸
O1 (外輪摺動面の凹曲面の)中心位置
O2 (内輪摺動面の凸曲面の)中心位置
R1 (外輪摺動面の凹曲面の)半径
R2 (外輪摺動面の凹曲面の)半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の円弧からなる凹曲面状の摺動面が内周面に形成された外輪と、該外輪に滑動可能に内嵌されるとともに単一の円弧からなる凸曲面状の摺動面が外周面に形成された内輪とを備え、前記内外輪相互の摺動面からなる球面座を有する球面すべり軸受であって、
前記外輪と内輪の摺動面相互の接触位置を、摺動面相互の大径側端部で接触させるように構成したことを特徴とする球面すべり軸受。

【図1】
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【図2】
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