球面モータ
【課題】圧電素子を駆動源として用いて新規なメカニズムにより動作する球面モータを提供する。
【解決手段】ベース12の表面には4個の支持台14が円周方向に均等角度間隔に固定配置されている。各支持台14には圧電素子11がそれぞれ収容されている。各圧電素子11は電圧の印加により長手方向に伸長する。各支持台14の上部には凹所16がそれぞれ形成されている。凹所16には円柱状のローラ18が上下方向に移動自在にそれぞれ横倒しで収容されている。ローラ18は圧電素子11の上に載置支持されている。4個のローラ18上には大球20の下面が四点支持されている。大球20は板ばね30、小球48,スライド棒38、コイルスプリング46等で構成された弾性押圧部材により上側から支持されている。各圧電素子11は矩形波、のこぎり波等により選択的に駆動される。
【解決手段】ベース12の表面には4個の支持台14が円周方向に均等角度間隔に固定配置されている。各支持台14には圧電素子11がそれぞれ収容されている。各圧電素子11は電圧の印加により長手方向に伸長する。各支持台14の上部には凹所16がそれぞれ形成されている。凹所16には円柱状のローラ18が上下方向に移動自在にそれぞれ横倒しで収容されている。ローラ18は圧電素子11の上に載置支持されている。4個のローラ18上には大球20の下面が四点支持されている。大球20は板ばね30、小球48,スライド棒38、コイルスプリング46等で構成された弾性押圧部材により上側から支持されている。各圧電素子11は矩形波、のこぎり波等により選択的に駆動される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は圧電素子を駆動源として用いて新規なメカニズムにより動作する球面モータに関する。
【背景技術】
【0002】
球面モータは球面を有する球面体をその球面方向に回転駆動するモータである。圧電素子を駆動源として用いた球面モータとして下記特許文献1〜3に記載のものがあった。特許文献1記載の球面モータはベースを構成する弾性体に4本の突出部材を立設し、球体を該突出部材に四点支持し、該突出部材相互間の位置で弾性体に複数の圧電素子を配置し、これら複数の圧電素子を位相が異なる高周波で駆動することにより、弾性体に縦振動と屈曲振動を生じさせ、両振動の合成により球体を回転させるようにしたものである。
【0003】
特許文献2記載の球面モータは球体(ロータ)を圧電素子がそれぞれ貼り付けられた3または4個のステータで包囲して支持し、各圧電素子に2相の高周波電圧を印加することにより各ステータの表面に進行波を生じさせて球体を回転させるようにしたものである。
【0004】
特許文献3記載の球面モータは1個の圧電素子の上に摩擦材を介して球体を支持し、該圧電素子を交番信号で駆動して横方向に繰り返し屈曲させて球体に周方向の回転力を与え、このとき交番信号として、立ち上がりと立ち下がりのスピードが異なる信号を用いることにより、該交番信号の立ち上がりと立ち下がりで摩擦材と球体との滑りを異ならせ、もって球体を一方向に回転させるようにしたものである。
【0005】
【特許文献1】特開平9−219980号公報
【特許文献2】特開平11−84526号公報
【特許文献3】特開2006−238644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は圧電素子を駆動源として用いて前記特許文献1〜3記載のものとは異なるメカニズムにより動作する球面モータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明はベースと、円周方向に相互に適宜の角度間隔を隔てて配置した状態に前記ベースに支持され、それぞれ電圧を印加することにより伸長し、該電圧の印加を解除することにより元の長さに戻る3以上の複数個の圧電素子と、前記各圧電素子にそれぞれ支持されて該各圧電素子の伸長に応じて移動し、該圧電素子が元の長さに戻るのに応じて元の位置に戻る複数個の移動体と、球面を有し該球面が前記複数個の移動体により複数点支持される球面体とを具備してなり、前記各移動体が前記球面体を支持する位置で、該移動体の前記移動方向が該球面体の接線方向成分を含んでいるものである。この発明によれば複数個の圧電素子を選択的に駆動することにより球面体に接線方向の回転力が与えられ、該球面体が回転する。
【0008】
この発明は前記球面体を、前記複数個の移動体による複数点支持の中心の反対側から弾性押圧して支持する弾性押圧部材をさらに具備することができる。これによれば球面体を安定に保持した状態で回転させることができる。
【0009】
この発明において前記移動体はローラ、球体等で構成することができる。この発明は例えば4個の移動体を円周方向に均等角度間隔に配置したものとすることができる。この場合前記4個の移動体を例えば同一平面上に配置することができる。あるいは4個の移動体を対向する対ごとに別々の平面上に配置することもできる。圧電素子は例えば矩形波またはのこぎり波等の繰り返し信号で駆動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の実施の形態を図1、図2、図3に示す。図1は断面正面図(図2のA−A矢視断面図)、図2は平面図、図3は板ばね30の平面図(図1のB−B矢視位置で示す)である。球面モータ10は圧電素子11以外は全体が例えば金属で構成されている。球面モータ10は円盤状のベース12を具えている。図1ではベース12を水平に配置した姿勢で示しているが、球面モータ10の使用時の姿勢はこれに限らず傾けて使用することができる。ベース12の表面12bには、ベース12の中心軸12aを中心とする同一円周上に4個の支持台14が円周方向に均等角度間隔に配置されねじ止め等で固定されている。あるいは支持台14をベース12と一体に構成することもできる。各支持台14はベース12の中心軸12aに対面する向きにそれぞれ配置されている。
【0011】
各支持台14にはベース表面12bに対し直角な方向(中心軸12aに対し平行な方向)に孔14aが開設されている。各孔14aには同一製品(すなわち同一形状で同一特性)の4個の圧電素子11(11A,11B,11C,11D)が抜き差し自在に収容されている。各圧電素子11は電圧の印加により長手方向(中心軸12aに平行な方向)に伸長し、該電圧の印加を解除することにより元の長さに戻るものが用いられている。圧電素子11の下端面11aはベース表面12bに当接し係止されているので、圧電素子11は電圧の印加により上端面11bが上方向(中心軸12aに平行な方向)に変位する。圧電素子11は該電圧の印加を解除すると元の長さに戻り、これに伴い上端面11bは下方に変位して元の位置に戻る。
【0012】
各支持台14の上部には凹所16がそれぞれ形成されている。凹所16は中心軸12aに対面する方向と上方が開口している。圧電素子11の上端面11bは後述するローラ18が常に当接した状態となるように凹所16の底面16aと同一平面上かあるいは該底面16aよりもやや突出した位置に形成されている。凹所16の後壁16bおよび両側壁16c,16cはベース表面12bに対し垂直に形成されている。両側壁16c,16cは後述する大球20と衝突しないようにその上端縁が図1に示すように斜め上方に向けてカットされている。
【0013】
各凹所16には移動体として同一部材(すなわち同一材質で同一形状)の円柱状のローラ18(18A,18B,18C,18D)が上下方向(圧電素子11の伸長・戻り方向すなわち中心軸12aに平行な方向)に移動自在にそれぞれ横倒しで収容されている。ローラ18の左右両端面は凹所16の両側壁16c,16cで係止されてローラ18の軸方向の移動が規制されている。またローラ18の外周面は凹所16の後壁16bで係止されてローラ18の外方向(中心軸12aに対し放射方向)の移動が規制されている。ローラ18は、その外周面下面を圧電素子11の上端面11bに当接させた状態で、圧電素子11の上に載置される。4個の圧電素子11の上端面11bは同一平面13上にあり、これにより4個のローラ18は同一平面13上に配置される。4個のローラ18上には球面体として大球20の下面が均等に四点支持されている。各ローラ18は大球20から受ける押圧力により凹所16内で圧電素子11上に安定に支持される。また各圧電素子11は各ローラ18から受ける押圧力により、下端面11aをベース表面12bに当接させた状態で孔14a内に安定に保持される。
【0014】
ベース12の表面12bには中心軸12aに対して対称の位置に2本の支柱22,24がねじ26,28により立設固定されている。支柱22,24は図2に示すように支持台14の相互の中間の位置に配置されている。支柱22,24の頂部には板ばね30が載置されている。板ばね30には図3に示すように一端部付近に支柱22と同軸位置に小径の穴30a(ねじ通し穴)が開設され、他端部付近に支柱24と同軸位置に大径の穴30bが開設されている。板ばね30の上からは支柱22,24と同軸に短管32,34(図1)が配置される。支柱22側の位置では板ばね30の小径の穴30aの直径は支柱22および短管32のいずれの外径よりも小さく、板ばね30は支柱22と短管32との間に挟み込まれる。支柱24側の位置では短管34の下部に小径部34aが形成されている。板ばね30の大径の穴30bの直径は支柱24の外径よりも小さく、短管34の小径部34aの外径よりも大きい。したがって短管34の小径部34aは板ばね30の穴30b内に軸方向に移動自在に通される。短管34の下端面は支柱24の上端面に当接する。
【0015】
図1に示すように短管32,34の上には上ベース36が載置される。上ベース36の上からねじ37,39を上ベース36、短管32,34および板ばね30を貫通して差し込み、支柱22,24の上端部のねじ穴22a,24aにねじ込むことにより、上ベース36、短管32,34および板ばね30は支柱22,24に固定される。このとき板ばね30は支柱22側で支柱22と短管32との間に挟み込まれて固定され、支柱24側で短管34の小径部34aに案内されて図1に矢印Cで示すように上下方向に撓むことができる。つまり板ばね30は上下に撓めるように支柱22側に片持ち支持されている。
【0016】
上ベース36の中央部には中心軸12aと同軸上に円筒部36aが形成されている。円筒部36aの内部空間36bには円柱状のスライド棒38が中心軸12aの方向に移動自在に収容されている。スライド棒38の下部38bは大径に形成され、円筒部36aにわずかな隙間で収容される。これによりスライド棒38が中心軸12aに対して傾いてスライド棒38の下端面が横ずれするのが防止される。スライド棒38の頂部には抜け止め用の円板状板材40がねじ44により装着されている。円筒部36aの内部空間36bにはスライド棒38の外周面を取り囲むようにコイルスプリング46が収容されている。コイルスプリング46の上端部は円筒部36aの天井面に係止され、コイルスプリング46の下端部はスライド棒38の大径下部38bの上面に係止される。コイルスプリング46によりスライド棒38には中心軸12aに沿って下向き(大球20の中心に向かう方向)に移動する力が付与される。スライド棒38の下端面中央部には凹所38aが形成され、そこに小球48が収容されている。小球48はコイルスプリング46の付勢力により板ばね30を押下する。これにより板ばね30は下方に撓み、中心軸12a上で大球20の頂部に所定の押圧力で当接し、大球20を上側(4個のローラ18による四点支持の中心の反対側)から支持する。この大球20の上側からの支持により、球面モータ10が水平に対し傾いた姿勢で使用されても、4個のローラ18による下側からの大球20の4点支持が安定に保持される。なお弾性押圧部材(板ばね30,スライド棒38,コイルスプリング46,小球48)による大球20に対する押圧力は、各圧電素子11が伸長できかつ該伸長により大球20が回転できる程度の大きさに設定する。
【0017】
なお板ばね30は大球20を安定に回転させるために配置したものである。すなわち大球20と小球48が直接当接していると、圧電素子11を駆動して大球20の中心が中心軸12aから一旦ずれて(後述する図6の大球20の中心が駆動前の位置o0から駆動後の位置o1に移動した状態)、その後圧電素子11の駆動を解除したときに大球20と小球48との噛み合いにより大球20の中心が位置o1から位置o0に戻らない現象が生じることがある。この現象の対策として大球20と小球48との間に板ばね30を配置することにより、大球20と小球48との噛み合いを防止して、圧電素子11の駆動を解除したときに大球20の中心が位置o1から位置o0にスムーズに戻れる(後述する図8の大球20の中心が位置o1から位置o0に戻る状態)ようにしている。なお小球48を無くしてスライド棒38の下端面(平坦面とする)を大球20に直接当接させても大球20の回転が保証される場合は、大球20と小球48との噛み合いは生じないので、板ばね30を省くことができる。
【0018】
以上のように構成した球面モータ10は4個の圧電素子11(11A,11B,11C,11D)のいずれかに繰り返し信号を印加することにより、大球20を対応する方向に回転駆動することができる。すなわち圧電素子11を駆動して圧電素子11が伸長したときにローラ18は上方(4個のローラ18が配置された平面13に対し垂直上方の方向)に移動するが、この移動方向は大球20の中心に向かう方向に対してずれているので、ローラ18と大球20の当接位置でローラ18の移動方向は大球20の接線方向成分(4個のローラ18の上方への移動量は相互に等しいので、4個のローラ18による接線方向成分は相互に等しい)を含んでいる。このローラ18の移動方向の接線方向成分により大球20に回転力(4個のローラ18とも同じ大きさの回転力を発生する)が与えられ大球20は回転する。この大球20の回転の回転軸は大球20の中心を通り4個のローラ18が配置された平面13に平行な位置にあり、かつ中心軸12aの方向から見て隣接するローラ11ごとに90度ずつずれている。したがって対向位置にあるローラ対11A,11Bによる大球20の回転方向は互いに逆方向であり、対向位置にある別のローラ対11C、11Dによる大球20の回転方向は互いに逆方向であり、かつローラ対11A,11Bによる大球20の回転方向とローラ対11C、11Dによる大球20の回転方向は互いに90度ずれている。したがって4個の圧電素子11を適宜に駆動することにより、大球20を回転させて大球20の表面上の任意の点を任意の方向に向けることができる。大球20はこのように動作するので、大球20に適宜の角度調整対象を連結することにより、該角度調整対象の角度を任意に調整することができる。駆動用の繰り返し信号は例えば図4(a)に示すような矩形波や図4(b)に示すようなのこぎり波等を用いることができる。
【0019】
図1の球面モータ10の動作を図5〜図9を参照して説明する。図5〜図9は圧電素子11Aを繰り返し信号の一波で駆動して大球20を図示上で左回り方向に所定角度回転する場合の1行程分の動作を示している。なお図5〜図9は図1の球面モータ10を模式的に示す。大球20の上側の支持は、コイルスプリング46で下方に付勢されたスライド棒38が直接大球20に当接して押圧するように簡略化して図示している。図5は動作前の状態を示す。このとき大球20の中心をo0、大球20の外周面がローラ18A,18B,スライド棒38と当接する位置をそれぞれPa0,Pb0,Pe0とする。大球20は4個のローラ18で四点支持されてくさび状態に挟持されている。このとき大球20は上側からスライド棒38が当接しているので保持トルクが働き静止状態が保持される。したがって静止状態を保つための電力は不要である。
【0020】
図6は圧電素子11Aに印加する信号の一波が立ち上がって圧電素子11Aが伸長したときの状態を示す。このときの圧電素子11Aの伸長量をΔuとする。圧電素子11AがΔu伸長すると、その上に載置されているローラ18Aも上方に同量Δu押し上げられる。このときローラ18Aは外周面が凹所16の後壁16bに当接しているので、垂直方向(中心軸12aに平行な方向)に移動する。ローラ18Bの位置は変動しない。ローラ18Aが上方へ移動すると、ローラ18Aに当接している大球20の当接箇所Pa0は上方に突き上げられる。この突き上げ方向は大球20の中心o0(重心)に向かう方向から外れているので、この突き上げ力は当接箇所Pa0において大球20の接線方向成分を含んでいる。この接線方向の力成分により大球20は左回り方向に回転する。このときの大球20の表面における点Pa0、Pa1間の回転移動距離はほぼΔuである。大球20が回転するとき、大球20とローラ18Bとの当接面、大球20とスライド棒38との当接面には滑りが生じる。大球20の突き上げによる上方への移動と回転により、図5の位置o0,Pa0,Pb0,Pe0は図6の位置o1,Pa1,Pb1,Pe1にそれぞれ移動する。
【0021】
図7は圧電素子11Aに印加された信号の一波が立ち下がって圧電素子11Aが元の長さに戻った後ローラ18Aが元の位置に戻る前の状態を示す。
【0022】
図8はその後ローラ18Aが元の位置に戻ったときの状態である。大球20は自重およびコイルスプリング46で付勢されているスライド棒38の下方への押圧力により下方へ移動しようとする。このとき大球20は左回り方向の慣性が残っているので、右回り方向に回転を戻さずに、回転角度を維持したままローラ18A,18Bおよびスライド棒38との各当接面に滑りを生じて平行移動する。この平行移動により図7の位置o1,Pa1,Pb1,Pe1は図8の位置o0,Pa2,Pb2,Pe2にそれぞれ移動する。これで繰り返し信号の一波による動作が終了する。
【0023】
図9は以上の動作による繰り返し信号の一波による駆動前と駆動後の大球20の回転角度位置の変化を示す。大球20は繰り返し信号の一波で角度φ回転して、駆動前にPa0,Pb0,Pe0であった位置が駆動後はPa2,Pb2,Pe2にそれぞれ移動する。大球20の表面における回転移動距離は圧電素子11Aの伸長量Δuにほぼ等しい。繰り返し信号で連続的に駆動することにより大球20を“φ×繰り返し信号の波数”に相当する回転角度分一方向に連続的に回転させることができる。したがって大球20に例えば回転角度調整対象を連結して駆動することにより、該回転角度調整対象の回転角度を任意の角度に調整することができる。
【0024】
以上は圧電素子11Aを駆動する場合について説明したが、他の圧電素子11B,11C,11Dを駆動する場合も同様であり、いずれを駆動するかによって大球20の回転方向を変えることができる。また隣接する圧電素子を同時または交互に駆動することにより、単独駆動による回転方向の中間の方向に大球20を回転させることができる。
【0025】
なお前記実施の形態では大球20を弾性押圧部材(板ばね30,スライド棒38,コイルスプリング46,小球48)で上側から支持するようにしたが、水平の姿勢でのみ使用する球面モータの場合は弾性押圧部材による上側からの支持を省略することができる。そのように構成した球面モータの他の実施の形態を図10に示す。この球面モータ50は図1の球面モータ10から支柱22,24、板ばね30,短管32,34、上ベース36、ねじ26,28,37,39、スライド棒38、小球48、コイルスプリング46、円板状板材40,ねじ44を取り去ったものである。大球20は下側からローラ18(18A,18B,18C,18D)により四点支持されている。圧電素子11の駆動方法および該駆動方法によるローラ18,大球20の動作は図1の実施の形態と同じである。ただし弾性押圧部材が無いので、大球20は圧電素子の駆動信号が立ち下がったときに自重でのみ下方へ移動する。この球面モータ50は下側でのみ支持されているが、水平の姿勢で使用されるので、大球20はローラ18で安定に四点支持された状態を保って回転することができる。
【0026】
また前記実施の形態では4個のローラ18A,18B,18C,18Dを同一円周上(同一平面13(図1)上)に配置したがこれに限らない。例えば対向する一方のローラ対18A,18Bを1つの同一円周上(1つの同一平面上)に配置し、対向する他方のローラ対18C,18Dを別の同一円周上(別の同一平面上)に配置することができる。そのように配置した一例を図11に示す。図1、図2の実施の形態と共通する部分には同一の符号を用いる。また図11はベース12の一部、圧電素子11、ローラ18、大球20のみ示し、他の構成は省略する。対向する一方のローラ対18A,18Bは同一円周52a上(同一平面52b上)に配置されている。対向する他方のローラ対18C,18Dは別の同一円周54a上(別の同一平面54b上)に配置されている。このような配置によれば、ローラ対18A,18Bとローラ対18C,18Dとではローラ18と大球20との当接位置でローラ18の移動量の大球接線方向成分の大きさが異なるので、1回の駆動あたりの大球20の回転角度が異なる。
【0027】
なお前記各実施の形態では移動体としてローラを使用したが、ローラに代えて小球を使用することもできる。また前記各実施の形態では球面体として全球(大球20)を使用したが、球面体の回転角度が限られている場合は全球である必要はなく、半球体等を使用することもできる。また前記各実施の形態では圧電素子を4個使用した場合について説明したが、3個または5個以上の圧電素子を円周方向に均等角度間隔に配置することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施の形態を示す図で、図2のA−A矢視断面図である。
【図2】図1の球面モータの平面図である。
【図3】板ばね30の平面図で、図1のB−B矢視位置で示したものである。
【図4】図1の球面モータの駆動に用いられる繰り返し信号の具体例を示す波形図である。
【図5】図1の球面モータの動作説明図で、動作前の状態を示す。
【図6】図1の球面モータの動作説明図で、圧電素子に印加する繰り返し信号の一波が立ち上がって圧電素子が伸長したときの状態を示す。
【図7】図1の球面モータの動作説明図で、圧電素子に印加する繰り返し信号の一波が立ち下がって圧電素子が元の長さに戻った後ローラが元の位置に戻る前の状態を示す。
【図8】図1の球面モータの動作説明図で、ローラが元の位置に戻ったときの状態を示す。
【図9】図1の球面モータの動作説明図で、図5〜図8の動作による駆動前と駆動後の大球の回転角度位置の変化を示す。
【図10】この発明の他の実施の形態を示す断面図である。
【図11】4個のローラを対向するローラ対ごとに別々の平面上に配置した実施の形態を示す正面図および平面図である。
【符号の説明】
【0029】
10,50…球面モータ、11(11A,11B,11C,11D)…圧電素子、12…ベース、13…4個のローラを配置する平面、18(18A,18B,18C,18D)…ローラ(移動体)、20…大球(球面体)、30,38,46,48…弾性押圧部材、52b…対向する一方のローラ対を配置する平面、54b…対向する他方のローラ対を配置する平面
【技術分野】
【0001】
この発明は圧電素子を駆動源として用いて新規なメカニズムにより動作する球面モータに関する。
【背景技術】
【0002】
球面モータは球面を有する球面体をその球面方向に回転駆動するモータである。圧電素子を駆動源として用いた球面モータとして下記特許文献1〜3に記載のものがあった。特許文献1記載の球面モータはベースを構成する弾性体に4本の突出部材を立設し、球体を該突出部材に四点支持し、該突出部材相互間の位置で弾性体に複数の圧電素子を配置し、これら複数の圧電素子を位相が異なる高周波で駆動することにより、弾性体に縦振動と屈曲振動を生じさせ、両振動の合成により球体を回転させるようにしたものである。
【0003】
特許文献2記載の球面モータは球体(ロータ)を圧電素子がそれぞれ貼り付けられた3または4個のステータで包囲して支持し、各圧電素子に2相の高周波電圧を印加することにより各ステータの表面に進行波を生じさせて球体を回転させるようにしたものである。
【0004】
特許文献3記載の球面モータは1個の圧電素子の上に摩擦材を介して球体を支持し、該圧電素子を交番信号で駆動して横方向に繰り返し屈曲させて球体に周方向の回転力を与え、このとき交番信号として、立ち上がりと立ち下がりのスピードが異なる信号を用いることにより、該交番信号の立ち上がりと立ち下がりで摩擦材と球体との滑りを異ならせ、もって球体を一方向に回転させるようにしたものである。
【0005】
【特許文献1】特開平9−219980号公報
【特許文献2】特開平11−84526号公報
【特許文献3】特開2006−238644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は圧電素子を駆動源として用いて前記特許文献1〜3記載のものとは異なるメカニズムにより動作する球面モータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明はベースと、円周方向に相互に適宜の角度間隔を隔てて配置した状態に前記ベースに支持され、それぞれ電圧を印加することにより伸長し、該電圧の印加を解除することにより元の長さに戻る3以上の複数個の圧電素子と、前記各圧電素子にそれぞれ支持されて該各圧電素子の伸長に応じて移動し、該圧電素子が元の長さに戻るのに応じて元の位置に戻る複数個の移動体と、球面を有し該球面が前記複数個の移動体により複数点支持される球面体とを具備してなり、前記各移動体が前記球面体を支持する位置で、該移動体の前記移動方向が該球面体の接線方向成分を含んでいるものである。この発明によれば複数個の圧電素子を選択的に駆動することにより球面体に接線方向の回転力が与えられ、該球面体が回転する。
【0008】
この発明は前記球面体を、前記複数個の移動体による複数点支持の中心の反対側から弾性押圧して支持する弾性押圧部材をさらに具備することができる。これによれば球面体を安定に保持した状態で回転させることができる。
【0009】
この発明において前記移動体はローラ、球体等で構成することができる。この発明は例えば4個の移動体を円周方向に均等角度間隔に配置したものとすることができる。この場合前記4個の移動体を例えば同一平面上に配置することができる。あるいは4個の移動体を対向する対ごとに別々の平面上に配置することもできる。圧電素子は例えば矩形波またはのこぎり波等の繰り返し信号で駆動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の実施の形態を図1、図2、図3に示す。図1は断面正面図(図2のA−A矢視断面図)、図2は平面図、図3は板ばね30の平面図(図1のB−B矢視位置で示す)である。球面モータ10は圧電素子11以外は全体が例えば金属で構成されている。球面モータ10は円盤状のベース12を具えている。図1ではベース12を水平に配置した姿勢で示しているが、球面モータ10の使用時の姿勢はこれに限らず傾けて使用することができる。ベース12の表面12bには、ベース12の中心軸12aを中心とする同一円周上に4個の支持台14が円周方向に均等角度間隔に配置されねじ止め等で固定されている。あるいは支持台14をベース12と一体に構成することもできる。各支持台14はベース12の中心軸12aに対面する向きにそれぞれ配置されている。
【0011】
各支持台14にはベース表面12bに対し直角な方向(中心軸12aに対し平行な方向)に孔14aが開設されている。各孔14aには同一製品(すなわち同一形状で同一特性)の4個の圧電素子11(11A,11B,11C,11D)が抜き差し自在に収容されている。各圧電素子11は電圧の印加により長手方向(中心軸12aに平行な方向)に伸長し、該電圧の印加を解除することにより元の長さに戻るものが用いられている。圧電素子11の下端面11aはベース表面12bに当接し係止されているので、圧電素子11は電圧の印加により上端面11bが上方向(中心軸12aに平行な方向)に変位する。圧電素子11は該電圧の印加を解除すると元の長さに戻り、これに伴い上端面11bは下方に変位して元の位置に戻る。
【0012】
各支持台14の上部には凹所16がそれぞれ形成されている。凹所16は中心軸12aに対面する方向と上方が開口している。圧電素子11の上端面11bは後述するローラ18が常に当接した状態となるように凹所16の底面16aと同一平面上かあるいは該底面16aよりもやや突出した位置に形成されている。凹所16の後壁16bおよび両側壁16c,16cはベース表面12bに対し垂直に形成されている。両側壁16c,16cは後述する大球20と衝突しないようにその上端縁が図1に示すように斜め上方に向けてカットされている。
【0013】
各凹所16には移動体として同一部材(すなわち同一材質で同一形状)の円柱状のローラ18(18A,18B,18C,18D)が上下方向(圧電素子11の伸長・戻り方向すなわち中心軸12aに平行な方向)に移動自在にそれぞれ横倒しで収容されている。ローラ18の左右両端面は凹所16の両側壁16c,16cで係止されてローラ18の軸方向の移動が規制されている。またローラ18の外周面は凹所16の後壁16bで係止されてローラ18の外方向(中心軸12aに対し放射方向)の移動が規制されている。ローラ18は、その外周面下面を圧電素子11の上端面11bに当接させた状態で、圧電素子11の上に載置される。4個の圧電素子11の上端面11bは同一平面13上にあり、これにより4個のローラ18は同一平面13上に配置される。4個のローラ18上には球面体として大球20の下面が均等に四点支持されている。各ローラ18は大球20から受ける押圧力により凹所16内で圧電素子11上に安定に支持される。また各圧電素子11は各ローラ18から受ける押圧力により、下端面11aをベース表面12bに当接させた状態で孔14a内に安定に保持される。
【0014】
ベース12の表面12bには中心軸12aに対して対称の位置に2本の支柱22,24がねじ26,28により立設固定されている。支柱22,24は図2に示すように支持台14の相互の中間の位置に配置されている。支柱22,24の頂部には板ばね30が載置されている。板ばね30には図3に示すように一端部付近に支柱22と同軸位置に小径の穴30a(ねじ通し穴)が開設され、他端部付近に支柱24と同軸位置に大径の穴30bが開設されている。板ばね30の上からは支柱22,24と同軸に短管32,34(図1)が配置される。支柱22側の位置では板ばね30の小径の穴30aの直径は支柱22および短管32のいずれの外径よりも小さく、板ばね30は支柱22と短管32との間に挟み込まれる。支柱24側の位置では短管34の下部に小径部34aが形成されている。板ばね30の大径の穴30bの直径は支柱24の外径よりも小さく、短管34の小径部34aの外径よりも大きい。したがって短管34の小径部34aは板ばね30の穴30b内に軸方向に移動自在に通される。短管34の下端面は支柱24の上端面に当接する。
【0015】
図1に示すように短管32,34の上には上ベース36が載置される。上ベース36の上からねじ37,39を上ベース36、短管32,34および板ばね30を貫通して差し込み、支柱22,24の上端部のねじ穴22a,24aにねじ込むことにより、上ベース36、短管32,34および板ばね30は支柱22,24に固定される。このとき板ばね30は支柱22側で支柱22と短管32との間に挟み込まれて固定され、支柱24側で短管34の小径部34aに案内されて図1に矢印Cで示すように上下方向に撓むことができる。つまり板ばね30は上下に撓めるように支柱22側に片持ち支持されている。
【0016】
上ベース36の中央部には中心軸12aと同軸上に円筒部36aが形成されている。円筒部36aの内部空間36bには円柱状のスライド棒38が中心軸12aの方向に移動自在に収容されている。スライド棒38の下部38bは大径に形成され、円筒部36aにわずかな隙間で収容される。これによりスライド棒38が中心軸12aに対して傾いてスライド棒38の下端面が横ずれするのが防止される。スライド棒38の頂部には抜け止め用の円板状板材40がねじ44により装着されている。円筒部36aの内部空間36bにはスライド棒38の外周面を取り囲むようにコイルスプリング46が収容されている。コイルスプリング46の上端部は円筒部36aの天井面に係止され、コイルスプリング46の下端部はスライド棒38の大径下部38bの上面に係止される。コイルスプリング46によりスライド棒38には中心軸12aに沿って下向き(大球20の中心に向かう方向)に移動する力が付与される。スライド棒38の下端面中央部には凹所38aが形成され、そこに小球48が収容されている。小球48はコイルスプリング46の付勢力により板ばね30を押下する。これにより板ばね30は下方に撓み、中心軸12a上で大球20の頂部に所定の押圧力で当接し、大球20を上側(4個のローラ18による四点支持の中心の反対側)から支持する。この大球20の上側からの支持により、球面モータ10が水平に対し傾いた姿勢で使用されても、4個のローラ18による下側からの大球20の4点支持が安定に保持される。なお弾性押圧部材(板ばね30,スライド棒38,コイルスプリング46,小球48)による大球20に対する押圧力は、各圧電素子11が伸長できかつ該伸長により大球20が回転できる程度の大きさに設定する。
【0017】
なお板ばね30は大球20を安定に回転させるために配置したものである。すなわち大球20と小球48が直接当接していると、圧電素子11を駆動して大球20の中心が中心軸12aから一旦ずれて(後述する図6の大球20の中心が駆動前の位置o0から駆動後の位置o1に移動した状態)、その後圧電素子11の駆動を解除したときに大球20と小球48との噛み合いにより大球20の中心が位置o1から位置o0に戻らない現象が生じることがある。この現象の対策として大球20と小球48との間に板ばね30を配置することにより、大球20と小球48との噛み合いを防止して、圧電素子11の駆動を解除したときに大球20の中心が位置o1から位置o0にスムーズに戻れる(後述する図8の大球20の中心が位置o1から位置o0に戻る状態)ようにしている。なお小球48を無くしてスライド棒38の下端面(平坦面とする)を大球20に直接当接させても大球20の回転が保証される場合は、大球20と小球48との噛み合いは生じないので、板ばね30を省くことができる。
【0018】
以上のように構成した球面モータ10は4個の圧電素子11(11A,11B,11C,11D)のいずれかに繰り返し信号を印加することにより、大球20を対応する方向に回転駆動することができる。すなわち圧電素子11を駆動して圧電素子11が伸長したときにローラ18は上方(4個のローラ18が配置された平面13に対し垂直上方の方向)に移動するが、この移動方向は大球20の中心に向かう方向に対してずれているので、ローラ18と大球20の当接位置でローラ18の移動方向は大球20の接線方向成分(4個のローラ18の上方への移動量は相互に等しいので、4個のローラ18による接線方向成分は相互に等しい)を含んでいる。このローラ18の移動方向の接線方向成分により大球20に回転力(4個のローラ18とも同じ大きさの回転力を発生する)が与えられ大球20は回転する。この大球20の回転の回転軸は大球20の中心を通り4個のローラ18が配置された平面13に平行な位置にあり、かつ中心軸12aの方向から見て隣接するローラ11ごとに90度ずつずれている。したがって対向位置にあるローラ対11A,11Bによる大球20の回転方向は互いに逆方向であり、対向位置にある別のローラ対11C、11Dによる大球20の回転方向は互いに逆方向であり、かつローラ対11A,11Bによる大球20の回転方向とローラ対11C、11Dによる大球20の回転方向は互いに90度ずれている。したがって4個の圧電素子11を適宜に駆動することにより、大球20を回転させて大球20の表面上の任意の点を任意の方向に向けることができる。大球20はこのように動作するので、大球20に適宜の角度調整対象を連結することにより、該角度調整対象の角度を任意に調整することができる。駆動用の繰り返し信号は例えば図4(a)に示すような矩形波や図4(b)に示すようなのこぎり波等を用いることができる。
【0019】
図1の球面モータ10の動作を図5〜図9を参照して説明する。図5〜図9は圧電素子11Aを繰り返し信号の一波で駆動して大球20を図示上で左回り方向に所定角度回転する場合の1行程分の動作を示している。なお図5〜図9は図1の球面モータ10を模式的に示す。大球20の上側の支持は、コイルスプリング46で下方に付勢されたスライド棒38が直接大球20に当接して押圧するように簡略化して図示している。図5は動作前の状態を示す。このとき大球20の中心をo0、大球20の外周面がローラ18A,18B,スライド棒38と当接する位置をそれぞれPa0,Pb0,Pe0とする。大球20は4個のローラ18で四点支持されてくさび状態に挟持されている。このとき大球20は上側からスライド棒38が当接しているので保持トルクが働き静止状態が保持される。したがって静止状態を保つための電力は不要である。
【0020】
図6は圧電素子11Aに印加する信号の一波が立ち上がって圧電素子11Aが伸長したときの状態を示す。このときの圧電素子11Aの伸長量をΔuとする。圧電素子11AがΔu伸長すると、その上に載置されているローラ18Aも上方に同量Δu押し上げられる。このときローラ18Aは外周面が凹所16の後壁16bに当接しているので、垂直方向(中心軸12aに平行な方向)に移動する。ローラ18Bの位置は変動しない。ローラ18Aが上方へ移動すると、ローラ18Aに当接している大球20の当接箇所Pa0は上方に突き上げられる。この突き上げ方向は大球20の中心o0(重心)に向かう方向から外れているので、この突き上げ力は当接箇所Pa0において大球20の接線方向成分を含んでいる。この接線方向の力成分により大球20は左回り方向に回転する。このときの大球20の表面における点Pa0、Pa1間の回転移動距離はほぼΔuである。大球20が回転するとき、大球20とローラ18Bとの当接面、大球20とスライド棒38との当接面には滑りが生じる。大球20の突き上げによる上方への移動と回転により、図5の位置o0,Pa0,Pb0,Pe0は図6の位置o1,Pa1,Pb1,Pe1にそれぞれ移動する。
【0021】
図7は圧電素子11Aに印加された信号の一波が立ち下がって圧電素子11Aが元の長さに戻った後ローラ18Aが元の位置に戻る前の状態を示す。
【0022】
図8はその後ローラ18Aが元の位置に戻ったときの状態である。大球20は自重およびコイルスプリング46で付勢されているスライド棒38の下方への押圧力により下方へ移動しようとする。このとき大球20は左回り方向の慣性が残っているので、右回り方向に回転を戻さずに、回転角度を維持したままローラ18A,18Bおよびスライド棒38との各当接面に滑りを生じて平行移動する。この平行移動により図7の位置o1,Pa1,Pb1,Pe1は図8の位置o0,Pa2,Pb2,Pe2にそれぞれ移動する。これで繰り返し信号の一波による動作が終了する。
【0023】
図9は以上の動作による繰り返し信号の一波による駆動前と駆動後の大球20の回転角度位置の変化を示す。大球20は繰り返し信号の一波で角度φ回転して、駆動前にPa0,Pb0,Pe0であった位置が駆動後はPa2,Pb2,Pe2にそれぞれ移動する。大球20の表面における回転移動距離は圧電素子11Aの伸長量Δuにほぼ等しい。繰り返し信号で連続的に駆動することにより大球20を“φ×繰り返し信号の波数”に相当する回転角度分一方向に連続的に回転させることができる。したがって大球20に例えば回転角度調整対象を連結して駆動することにより、該回転角度調整対象の回転角度を任意の角度に調整することができる。
【0024】
以上は圧電素子11Aを駆動する場合について説明したが、他の圧電素子11B,11C,11Dを駆動する場合も同様であり、いずれを駆動するかによって大球20の回転方向を変えることができる。また隣接する圧電素子を同時または交互に駆動することにより、単独駆動による回転方向の中間の方向に大球20を回転させることができる。
【0025】
なお前記実施の形態では大球20を弾性押圧部材(板ばね30,スライド棒38,コイルスプリング46,小球48)で上側から支持するようにしたが、水平の姿勢でのみ使用する球面モータの場合は弾性押圧部材による上側からの支持を省略することができる。そのように構成した球面モータの他の実施の形態を図10に示す。この球面モータ50は図1の球面モータ10から支柱22,24、板ばね30,短管32,34、上ベース36、ねじ26,28,37,39、スライド棒38、小球48、コイルスプリング46、円板状板材40,ねじ44を取り去ったものである。大球20は下側からローラ18(18A,18B,18C,18D)により四点支持されている。圧電素子11の駆動方法および該駆動方法によるローラ18,大球20の動作は図1の実施の形態と同じである。ただし弾性押圧部材が無いので、大球20は圧電素子の駆動信号が立ち下がったときに自重でのみ下方へ移動する。この球面モータ50は下側でのみ支持されているが、水平の姿勢で使用されるので、大球20はローラ18で安定に四点支持された状態を保って回転することができる。
【0026】
また前記実施の形態では4個のローラ18A,18B,18C,18Dを同一円周上(同一平面13(図1)上)に配置したがこれに限らない。例えば対向する一方のローラ対18A,18Bを1つの同一円周上(1つの同一平面上)に配置し、対向する他方のローラ対18C,18Dを別の同一円周上(別の同一平面上)に配置することができる。そのように配置した一例を図11に示す。図1、図2の実施の形態と共通する部分には同一の符号を用いる。また図11はベース12の一部、圧電素子11、ローラ18、大球20のみ示し、他の構成は省略する。対向する一方のローラ対18A,18Bは同一円周52a上(同一平面52b上)に配置されている。対向する他方のローラ対18C,18Dは別の同一円周54a上(別の同一平面54b上)に配置されている。このような配置によれば、ローラ対18A,18Bとローラ対18C,18Dとではローラ18と大球20との当接位置でローラ18の移動量の大球接線方向成分の大きさが異なるので、1回の駆動あたりの大球20の回転角度が異なる。
【0027】
なお前記各実施の形態では移動体としてローラを使用したが、ローラに代えて小球を使用することもできる。また前記各実施の形態では球面体として全球(大球20)を使用したが、球面体の回転角度が限られている場合は全球である必要はなく、半球体等を使用することもできる。また前記各実施の形態では圧電素子を4個使用した場合について説明したが、3個または5個以上の圧電素子を円周方向に均等角度間隔に配置することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施の形態を示す図で、図2のA−A矢視断面図である。
【図2】図1の球面モータの平面図である。
【図3】板ばね30の平面図で、図1のB−B矢視位置で示したものである。
【図4】図1の球面モータの駆動に用いられる繰り返し信号の具体例を示す波形図である。
【図5】図1の球面モータの動作説明図で、動作前の状態を示す。
【図6】図1の球面モータの動作説明図で、圧電素子に印加する繰り返し信号の一波が立ち上がって圧電素子が伸長したときの状態を示す。
【図7】図1の球面モータの動作説明図で、圧電素子に印加する繰り返し信号の一波が立ち下がって圧電素子が元の長さに戻った後ローラが元の位置に戻る前の状態を示す。
【図8】図1の球面モータの動作説明図で、ローラが元の位置に戻ったときの状態を示す。
【図9】図1の球面モータの動作説明図で、図5〜図8の動作による駆動前と駆動後の大球の回転角度位置の変化を示す。
【図10】この発明の他の実施の形態を示す断面図である。
【図11】4個のローラを対向するローラ対ごとに別々の平面上に配置した実施の形態を示す正面図および平面図である。
【符号の説明】
【0029】
10,50…球面モータ、11(11A,11B,11C,11D)…圧電素子、12…ベース、13…4個のローラを配置する平面、18(18A,18B,18C,18D)…ローラ(移動体)、20…大球(球面体)、30,38,46,48…弾性押圧部材、52b…対向する一方のローラ対を配置する平面、54b…対向する他方のローラ対を配置する平面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
円周方向に相互に適宜の角度間隔を隔てて配置した状態に前記ベースに支持され、それぞれ電圧を印加することにより伸長し、該電圧の印加を解除することにより元の長さに戻る3以上の複数個の圧電素子と、
前記各圧電素子にそれぞれ支持されて該各圧電素子の伸長に応じて移動し、該圧電素子が元の長さに戻るのに応じて元の位置に戻る複数個の移動体と、
球面を有し該球面が前記複数個の移動体により複数点支持される球面体とを具備してなり、
前記各移動体が前記球面体を支持する位置で、該移動体の前記移動方向が該球面体の接線方向成分を含んでいる球面モータ。
【請求項2】
前記球面体を、前記複数個の移動体による複数点支持の中心の反対側から弾性押圧して支持する弾性押圧部材をさらに具備してなる請求項1記載の球面モータ。
【請求項3】
前記移動体がローラまたは球体である請求項1または2記載の球面モータ。
【請求項4】
前記複数個の移動体が4個の移動体を円周方向に均等角度間隔に配置したものである請求項1から3のいずれか1つに記載の球面モータ。
【請求項5】
前記4個の移動体を同一平面上に配置し、または4個の移動体を対向する対ごとに別々の平面上に配置してなる請求項4記載の球面モータ。
【請求項6】
前記複数個の圧電素子が繰り返し信号により個別に駆動される請求項1から5のいずれか1つに記載の球面モータ。
【請求項7】
前記繰り返し信号が矩形波またはのこぎり波である請求項6記載の球面モータ。
【請求項1】
ベースと、
円周方向に相互に適宜の角度間隔を隔てて配置した状態に前記ベースに支持され、それぞれ電圧を印加することにより伸長し、該電圧の印加を解除することにより元の長さに戻る3以上の複数個の圧電素子と、
前記各圧電素子にそれぞれ支持されて該各圧電素子の伸長に応じて移動し、該圧電素子が元の長さに戻るのに応じて元の位置に戻る複数個の移動体と、
球面を有し該球面が前記複数個の移動体により複数点支持される球面体とを具備してなり、
前記各移動体が前記球面体を支持する位置で、該移動体の前記移動方向が該球面体の接線方向成分を含んでいる球面モータ。
【請求項2】
前記球面体を、前記複数個の移動体による複数点支持の中心の反対側から弾性押圧して支持する弾性押圧部材をさらに具備してなる請求項1記載の球面モータ。
【請求項3】
前記移動体がローラまたは球体である請求項1または2記載の球面モータ。
【請求項4】
前記複数個の移動体が4個の移動体を円周方向に均等角度間隔に配置したものである請求項1から3のいずれか1つに記載の球面モータ。
【請求項5】
前記4個の移動体を同一平面上に配置し、または4個の移動体を対向する対ごとに別々の平面上に配置してなる請求項4記載の球面モータ。
【請求項6】
前記複数個の圧電素子が繰り返し信号により個別に駆動される請求項1から5のいずれか1つに記載の球面モータ。
【請求項7】
前記繰り返し信号が矩形波またはのこぎり波である請求項6記載の球面モータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−94004(P2010−94004A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264693(P2008−264693)
【出願日】平成20年10月11日(2008.10.11)
【出願人】(000148689)株式会社村上開明堂 (185)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月11日(2008.10.11)
【出願人】(000148689)株式会社村上開明堂 (185)
【Fターム(参考)】
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