説明

理美容用椅子の昇降装置

【課題】 従来における足踏み式の昇降装置にあっては、座部の上昇を行なうには、操作レバーを何度も踏み込むことで行なうので操作が面倒であると共に座部は間欠的に上昇するので、被施術者に不快感を与えるといった問題があった。
【解決手段】 踏み込むことによりスイッチ15をオン状態となしモータポンプ6を駆動して昇降シリンダ3を上昇させる上昇ペダル10と、踏み込むことにより排油シリンダ4内の逆止弁7を開放して前記昇降シリンダ内の油を排油させる下降ペダル9と、該下降ペダルと前記上昇ペダルとを回転軸13によって連結すると共に前記上昇ペダルの回転を前記回転軸に対して遊びを持たせて下降ペダルを踏み込んでも上昇ペダルが前記スイッチをオン状態としないようにし、かつ、上昇ペダルを踏み込んでも下降ペダルによる排油が行なわれないようにした理美容用椅子の昇降装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧手段によって座部の昇降を行なうようにした理美容用椅子であって、座部の上昇用ペダルと、座部の下降用ペダルおよび座部の回転を阻止するためのロックペダルとを有する理美容用椅子の昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における理美容用椅子、特に、美容用椅子のような小型、軽量およびコストの安い椅子にあっては、操作レバーを美容師が足で踏み込んむことでシリンダ内に油タンクより油を供給してラムを上昇させ、施術等が終了したなら前記操作レバーを最下降位置まで踏み込むことでシリンダ内の油をタンク内に戻してラムを下降させて、被施術者が着座している座部を上下動させるものであった。
【0003】
また、前記座部の上昇位置および下降位置において回転しないようにするためにラムの上部をロックする。一方、操作レバーを踏み込んでラムを昇降する場合にはラムのロックを解除する。そして、前記ロックとロックの解除は、操作レバーを美容師が靴の先で押し上げることでロックを行い、また、操作レバーを踏み込むことでロックの解除を行うものである。
【非特許文献1】http://www.takarabelmont.co.jp/ribiyou/index.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記した従来における足踏み式の昇降装置にあっては、座部を昇降する時には操作レバーを踏み込むことでラムのロックは解除されるが、座部が昇降した後には前記操作レバーを足先で蹴上げてロックを行なうため靴の爪先を損傷する可能性があり、かつ、操作がし難く、また、座部の上昇を行なうには、操作レバーを何度も踏み込むことで行なうので操作が面倒であると共に座部は間欠的に上昇するので、被施術者に不快感を与えるといった問題もあった。
【0005】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、従来の足踏み式の椅子に油圧ポンプを取付けスムースな座部の上昇を可能にすると共にコストの低減を図り、また、ラムの上昇と下降用の2つの操作レバーを設けて操作性の向上を図り、さらに、踏み込み式のロックレバーを設けて靴の損傷を防止した理美容用椅子の昇降装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の理美容用椅子の昇降装置は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、踏み込むことによりスイッチをオン状態となしモータポンプを駆動して昇降シリンダを上昇させる上昇ペダルと、踏み込むことにより排油シリンダ内の逆止弁を開放して前記昇降シリンダ内の油を排油させる下降ペダルと、該下降ペダルと前記上昇ペダルとを回転軸によって連結すると共に前記上昇ペダルの回転を前記回転軸に対して遊びを持たせて下降ペダルを踏み込んでも上昇ペダルが前記スイッチをオン状態としないようにし、かつ、上昇ペダルを踏み込んでも下降ペダルによる排油が行なわれないようにしたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の手段は、前記した請求項1において、前記上昇ペダルおよび前記下降ペダルの踏み込み初期において昇降シリンダのラムをロックするロック手段の締め付けを解除し、前記上昇ペダルによる前記昇降シリンダのラムの上昇時、および、前記下降ペダルによる前記昇降シリンダのラムの下降時において、前記上昇ペダルおよび下降ペダルを押し上げることで前記ロック手段によるロックが行なわれることを特徴とする。
【0008】
請求項3の手段は、前記した請求項1において、前記上昇ペダルおよび前記下降ペダルの踏み込み初期において昇降シリンダのラムをロックするロック手段の締め付けを解除し、前記上昇ペダルによる前記昇降シリンダのラムの上昇停止時、および、前記下降ペダルによる前記昇降シリンダのラムの下降停止時において、前記上昇ペダルおよび下降ペダルを押し上げることで前記ロック手段によるロックが行なわれ、また、ロックペダルを設け、該ロックペダルを踏み込むことで前記ロック手段によるロックが行なわれるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は前記したように、上昇ペダルと下降ペダルを同一の回転軸に取付けると共に上昇ペダルに遊びを設けて下降ペダルの踏み込み時に上昇ペダルが干渉しないようにしたので、構造が簡単となってコストの低減を図ることができる。
【0010】
また、上昇ペダルと下降ペダルの何れにおいても踏み込み終了時に、それぞれのペダルを押し上げることで昇降シリンダのラムのロックが行なえるので、ラムの昇降・回転タイプの構造において操作性の向上が図れる。
【0011】
さらに、上昇ペダルと下降ペダルの他に踏み込むことで昇降シリンダのラムのロックが行なえるので、従来のようなロックのためにペダルを蹴上げる必要がなくなり、靴の状面に傷を付けることがない等の効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、上昇ペダルと下降ペダルを同一の回転軸に取付けると共に上昇ペダルに遊びを設けて下降ペダルの踏み込み時に上昇ペダルが干渉しないようにした。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明に係る理美容用椅子の昇降装置の一実施例を図面と共に説明する。
図1、図2において、1は台盤、2は該台盤1上に固定された座部昇降用の昇降シリンダ3および排油シリンダ4とが収容されたオイルタンクにして、該オイルタンク2のブロック2aには前記昇降シリンダ3におけるシリンダ3aの下端が嵌合固定され、また、排油シリンダ4のシリンダ4aの下端が嵌合固定されている。さらに、ブロック2aには前記シリンダ3a,4aとを連通する油路2bが形成が形成され、該油路2bは逆止弁5を介して前記台盤1の裏面に取付けられたモータポンプ6の出口側6aに接続されている。なお、モータポンプ6の入口側6bは前記オイルタンク2に接続されている。
【0014】
前記昇降シリンダ3のラム3aの上端には図示しない座部が取付けられ、下部には一端がシリンダ3bの油注入口側に開口され、他端がシリンダ3a側に開口した排油孔3cが形成されている。また、シリンダ3aのオイルタンク2の油面より高い位置には、前記ラム3aが上昇して最高の位置に達した時に前記排油孔3cと連通する排油口3dが形成されている。
【0015】
前記排油シリンダ4の上下動杆4aの中間部に設けられた鍔4bと前記ブロック2aとの間にはスプリング4cが取付けられており、該スプリング4cによって上下動杆4aは常時上方へバネ付勢されている。また、排油シリンダ4の下部における前記ブロック2a内にはスプリング7aとボール7bからなる逆止弁7が形成されている。
【0016】
前記排油シリンダ4の前記上下動杆4aの下部には、該上下動杆4aを最下部位置まで下降させた時に下端が前記ボール7bをスプリング7aのバネ力に抗して押し下げ昇降シリンダ3よりの油を排油するための排油回路4dが形成されている。また、前記排油回路4dの水平部はシリンダ4eに開口されており、かつ、シリンダ4eには上下動杆4aが最下降位置に達した時に前記排油パイプ4dの油を油タンク2内に戻すための排油口4fが形成されている。
【0017】
このように構成した昇降装置にあっては、モータポンプ6に通電すると、タンク2内の油は入口側6bから吸引され出口側6aを介して逆止弁5に供給される。該逆止弁5は出口側6aよりの油圧によって開口されて昇降シリンダ3内に油が供給されるので、ラム3aはモータポンプ6よりの油の供給が行なわれている間上昇する。そして、モータポンプ6の通電が停止されず油の供給が連続されている場合には、ラム3aの排油孔3cがシリンダ3bの排油口3dに達した位置において油は油タンク2内に戻されることから、それ以上のラム3aの上昇は停止される。
【0018】
そして、施術等が終了して昇降シリンダ3のラム3aを下降させる場合には、排油シリンダ4における油タンク2より突出してい上下動杆4aの上端を後述する下降ペダル9を施術者が踏み込んで押し下げると、排油パイプ4dがボール7bを押し下げ逆止弁7の通路を開放するので、昇降シリンダ3よりの油は逆止弁7から排油パイプ4dを介して排油口4fから油タンク2内に戻される。従って、ラム3aは最下降位置に戻されるものである。
【0019】
次に、前記昇降シリンダ3のラム3aの上昇および下降を行なうための手段およびラム3aが上昇位置あるいは下降位置においてラム3aの回転を阻止し、座部の回転を防止するための手段について説明する。
【0020】
8は後述する下降ペダル9、上昇ペダル10、ロックペダル11およびラム3aの回転を阻止するためのロック手段12を取付けるための支持台である。該支持台8には回転軸13が軸支され、該回転軸13の一端(図2、図4において左側)には下降ペダル9の上端が固定されたパイプ9aがネジ止めされている。また、前記回転軸13の他端には上昇ペダル10が所望の角度だけ回転軸13が回転した後に回動するようにパイプ10aを介して取付けられている。
【0021】
すなわち、図5に示すように、回転軸13に扇状の孔13aを形成し、該孔13aにピン13bを貫通すると共に該ピン13bの両端をパイプ10aに固定することで、下降ペダル9を踏み込んで回転軸13を回転しても上昇ペダル10が取付けられているパイプ10aは前記扇状の孔13aの遊び分だけ遅れて回転を開始することになる。
【0022】
前記ロックペダル11は前記支持台8に対して軸11aを介して回動自在に軸支されており、この軸11aと支持バー1aとの間にはロックペダル11の先端を押し上げる方向にスプリング11bによってバネ付勢されている。14は前記回転軸13に固定されたコの字状のロック制御杆にして、該ロック制御杆14から突出された突片14aと前記ロック手段12とは連結片12aによって連結されている。
【0023】
そして、ロック手段12は前記ロック杆14が時計方向に回動されるとラム3aの締め付けを開放し、また、反時計方向に回動されるとラム3aの締め付けを行いラム3aの回転を阻止する構造となっている。従って、ラム3aの昇降時にはロック手段12によるロックを解除し、ラム3aの上昇や下降が終了した場合にはロック手段12によるロックが行なわれるようになっている。
【0024】
前記ロックペダル11の上端は、該ペダル11をスプリング11bのバネ力に抗して踏み込むと前記軸11aから突出している押上片11cが前記ロック制御杆14を反時計方向(ロック方向)に回動し、踏み込みを終了するとスプリング11bによって撥ね上げられる構造となっている。
【0025】
15は前記支持台8の前記上昇ペダル10が取付けられているパイプ10aから延長されているスイッチ操作片10bと対向した位置に取付けられたスイッチにして、該スイッチ15がオン状態になると前記モータポンプ6が駆動状態となって、昇降シリンダ3内に油タンク2内の油が供給されラム3aが上昇する。
【0026】
なお、前記した排油シリンダ4の上下動杆4aの上端は前記ロック制御杆14におけるコの字状背部と対向して配置されている。従って、下降ペダル9を踏み込んでロック制御杆14をロック解除方向に回動させると上下動杆4aを押下するので、ロック解除と共に前記逆止弁7を開放して昇降シリンダ3内の油を油タンク2内に戻してラム3aの下降が行なわれる。
【0027】
また、図示していないが、上昇ペダル10を踏み込んでスイッチ15をオン状態にし、この状態において踏み込み力を解除した場合に上昇ペダル10のスイッチ操作片10bがスイッチ15から離れる位置まで戻すための付勢手段が設けられているものとする。すなわち、下降ペダル9が踏み込まれても上昇ペダル10が干渉を受けることがない。
【0028】
なお、前記付勢力はロック手段12によるラム3aのロックを行なえる程の付勢力ではなく、ロック手段12によるラム3aのロックを行なうためには、ロックペダル11を踏み込むか、下降ペダル9や上昇ペダル10を蹴上げるかによって行なえる。
【0029】
次に、前記した構成に基づいて動作を説明する。
先ず、座部を上昇させる動作について説明するに、上昇ペダル10を踏み込むと前記パイプ1aと回転軸13とによる遊び分だけの踏み込み量の後に、回転軸13が回転するのでロック制御杆14が回動してロック手段12によるラム3aの締め付けを解除する。さらに、昇降ペダル10を踏み込むとスイッチ操作片10bがスイッチ15をオン状態とするので、モータポンプ6が駆動して昇降シリンダ3内に油タンク2内の油を供給してラム3aを上昇させる。なお、上昇ペダル10を踏み込んでスイッチ15をオン状態とする踏み込み量では下降ペダル9による排油シリンダ4の上下動杆4aを押し下げて逆止弁7を開放することはない。
【0030】
そして、上昇ペダル10を踏み続けてラム3aが最上昇位置に達すると、シリンダ3b内の油は排油孔3c、排油口3dを介して油タンク2内に戻される状態となるのでそれ以上の上昇は行なわれない。また、ラム3aの上昇を途中で停止させる場合には、踏み込んでいた上昇ペダル10から足を離すと図示しない戻しスプリングによって前記スプリング操作片11bがスイッチ15から離れてモータポンプ6への通電が遮断されラム3aの上昇は停止する。この状態において、ロックペダル11を踏み込むと前記した動作によってロック手段12によるラム3aの締め付けが行なわれロック状態となる。
【0031】
次に、施術等が終了し座部を下降する場合について説明するに、下降ペダル9を踏み込むと回転軸13が回転して制御杆14を回動するのでロック手段12によるラム3aの締め付けが解除される。さらに、下降ペダル9を踏み込むと排油シリンダ4の上下動杆4aが押下され、逆止弁7を開放して昇降シリンダ3内の油を油タンク2内に戻してラム3aの下降が行なわれ、ラム3aがシリンダ3bの下端に到達した時点で下降は停止する。
【0032】
なお、下降ペダル9の踏み込み時において回転軸13が回転するので、この回転力は上昇ペダル10のパイプ10aに伝達されるが、パイプ10aと回転軸13との間には遊びが存在するので、下降ペダル9の踏み込み量に対して上昇ペダル10がスイッチ15をオン状態とすることはない。そして、前記ラム3aが下降停止した状態においてロックペダル11を踏み込むと前記した動作によってロック手段12によるラム3aの締め付けが行なわれロック状態となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る理美容用椅子の昇降装置を示す概略図である。
【図2】同上の昇降装置における具体例の左側から見た一部断面斜視図である。
【図3】右側から見た斜視図である。
【図4】同上の正面図である。
【図5】回転軸とパイプとの関係を示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
2 油タンク
3 昇降シリンダ
3a ラム
4 排油シリンダ
6 モータポンプ
7 逆止弁
9 下降ペダル
10 上昇ペダル
9a,10a パイプ
11 ロックペダル
12 ロック手段
13 回転軸
15 スイッチ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏み込むことによりスイッチをオン状態となしモータポンプを駆動して昇降シリンダを上昇させる上昇ペダルと、踏み込むことにより排油シリンダ内の逆止弁を開放して前記昇降シリンダ内の油を排油させる下降ペダルと、該下降ペダルと前記上昇ペダルとを回転軸によって連結すると共に前記上昇ペダルの回転を前記回転軸に対して遊びを持たせて下降ペダルを踏み込んでも上昇ペダルがスイッチをオン状態としないようにし、かつ、上昇ペダルを踏み込んでも下降ペダルによる排油が行なわれないようにしたことを特徴とする理美容用椅子の昇降装置。
【請求項2】
前記上昇ペダルおよび前記下降ペダルの踏み込み初期において昇降シリンダのラムをロックするロック手段の締め付けを解除し、前記上昇ペダルによる前記昇降シリンダのラムの上昇時、および、前記下降ペダルによる前記昇降シリンダのラムの下降時において、前記上昇ペダルおよび下降ペダルを押し上げることで前記ロック手段によるロックが行なわれることを特徴とする請求項1記載の理美容用椅子の昇降装置。
【請求項3】
前記上昇ペダルおよび前記下降ペダルの踏み込み初期において昇降シリンダのラムをロックするロック手段の締め付けを解除し、前記上昇ペダルによる前記昇降シリンダのラムの上昇停止時、および、前記下降ペダルによる前記昇降シリンダのラムの下降停止時において、前記上昇ペダルおよび下降ペダルを押し上げることで前記ロック手段によるロックが行なわれ、また、ロックペダルを設け、該ロックペダルを踏み込むことで前記ロック手段によるロックが行なわれるようにしたことを特徴とする請求項1記載の理美容用椅子の昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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