説明

理美容用鋏

【課題】
従来、刃部と指環と柄部とを備えた一対の刃材をクロスするように枢着軸で枢着させた理美容用鋏では、ヘアをカットするときに親指を挿通させた側の刃材の刃部を動刃として動かし、他側の薬指等を挿通させた側の刃部を静止させた静刃として使用するものであり、動刃と静刃を代えるとき持ち替えてやっていた。
【解決手段】
本発明は、刃部1a.1aと指環1b.1bと柄部1c.1cとを夫々備えた一対の刃材1.1をクロスするように枢着軸2で枢着させた理美容用鋏であって、前記何れか片方の刃材1の指環1bと枢着軸2との間の柄部1cの側方に親指挿通方向を前記指環1b.1bの指挿通方向と略直交させると共に中心3aが柄部1c.1cの厚み方向の軸心A−Aと同一平面上に位置するように親指挿通部3を突設したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘアをカットする理美容用鋏に関するものであり、更に、詳細には、周知である理美容用の鋏にもう一つの親指挿通部を突設して、動刃と静刃を持ち替えることなく自在に使い分けることを可能とした理美容用鋏に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、刃部と指環と柄部とを夫々備えた一対の刃材をクロスするように枢着軸で枢着させた周知の理美容用鋏では、ヘアをカットするときに親指を挿通させた側の刃材の刃部を動刃として動かし、他側の薬指等を挿通させた側の刃部を静止させた静刃として使用するものであった。
【0003】
例えば、親指の挿通部を複数備えたものとして、刃体は刃部10と柄部20と指環30,31,32,33とが配置されており、少なくとも一方の刃体には、2個以上の指環が柄部の長手方向になる配置で柄部に設けられている事により、理容鋏1Aを逆手に握る状態で指環に指を通す事により、2本の刃体2を開いた状態で髪を梳き切るスライドカットの時に理容鋏の姿勢を安定させることを特徴とするもの(特許文献1参照)や、洋はさみの二枚の刃の角度を従来の55゜前後3より30゜前後4と鋭くし鋭利に研ぎ上げる。また、柄2の構造を前に押し出しやすい3リング構造5、6、7にすることを特徴とするもの(特許文献2参照)や、更に、親指挿通部が直交する方向に回動できるものとして、一対の刃身1、2を 開閉可能に軸支し、各刃身1,2に連続する操作用の柄3,4を夫々設けた鋏であって、親指をそえる一方の柄3と連続した刃身1と親指が略平行となるように、また略平行となる線を中心に左右へ向き調整可能に親指かけ5を支軸6により取付けた構成を有するもの(特許文献3参照)が開示されている。
【特許文献1】特開2003−205186号公報
【特許文献2】登録実用新案登録第3040159号公報
【特許文献3】実開平1−101487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然し乍ら、前述の特許文献1では、少なくとも一方の刃体には、2個以上の指環が柄部の長手方向になる配置で柄部に設けられているものであるが、2個以上の指環が同一面状に形成されているため、順手から逆手に移行する場合には従来の一対の指環を備えた理美容用鋏と同様に鋏を一旦反対の手で持って、指を通し代えなければ成らず、更に、特許文献2では、柄2の構造を前に押し出しやすい3リング構造5、6、7にしたものであるが、並設された2つのリングは特許文献1と同様に同一面状に形成されており、且つ、2つのリングは人差し指と中指を挿通させて、特に、新聞紙等の用紙を切り抜くための洋バサミであり、理美容用鋏としては不適当であり、更には、特許文献3では、親指をそえる一方の柄3と連続した刃身1と親指が略平行となるように、また略平行となる線を中心に左右へ向き調整可能に親指かけ5を支軸6により取付けたものであり、他方の指かけ10の面と調整可能に親指かけ5の面とが平面又は直交面として使用できる構造のものであるが、従来から用いられている一般の理美容用鋏の親指かけ5が支軸6により回動するものであるが、親指の挿通する方向を変えるのみであり、前記夫々の文献では動刃と静刃を自在に代えて使い分けることはできないものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の理美容用鋏は、前述の課題に鑑み、鋭意研鑽の結果、刃部と指環と柄部とを夫々備えた一対の刃材をクロスするように枢着軸で枢着させた理美容用鋏であって、片方の刃材の指環と枢着軸との間の柄部に親指挿通方向を指環の指挿通方向と略直交させると共に中心が柄部の厚み方向の軸心と同一平面上に位置するように親指挿通部を突設したものであり、更に、親指挿通部は環状としたものであり、更には、親指挿通部は一部が欠落した略環状としたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の理美容用鋏は、理美容用鋏の片方の刃材の柄部に親指挿通部の指挿通方向を指環の指挿通方向と略直交させると共に、親指挿通部の中心が柄部の厚み方向の軸心と同一平面上に位置するように突設したことにより、既設の一対の指環に親指と薬指等を挿通させてヘアをカットすると、親指を挿通させた側の刃部が動刃と成り可動して、薬指等を挿通させた側の刃部が静刃と成り停止させた状態でカットするもので、つまり、薬指等を挿通させた側の静刃は殆ど動くことなく固定された状態で、親指を可動させることにより、親指を挿通させた側の動刃の開閉のみによってカットするものであるが、カット中に動刃と静刃とを入れ替えてカットしたい場合でも、鋏を持ち代えることなく親指を直交方向に突設した親指挿通部に挿通させることにより、親指の掌側の付け根辺に既設の指環の外周部に当接されることにより固定され、親指を挿通させた側の刃部が静刃と成り、薬指等を可動させることにより、薬指等を挿通させた側の刃部が動刃と成り、動刃と静刃を自在に代えながらカットできるものである。
【0007】
即ち、親指を指環に挿通させて従来通りのカットをすると共に、親指を前記指環から抜いて親指挿通部に挿通させることにより、直ちに動刃と静刃とを入れ替えて使用できるもので、特に、人間の皮膚や目等に近い部位の髪の毛のカットでは、右から左にカットしても、左から右にカットしても、或いは、上から下、下から上にカットしても、絶えず皮膚や目等に近い側を静刃として使用でき、客に安心感を与えることができ、更には、親指が腱鞘炎等によりスムーズに動かないときには、親指を固定して薬指等を可動させてカットできるもので、画期的で実用性の高い発明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明はヘアをカットする理美容用鋏に関するものであり、更に、詳細には、周知である理美容用の鋏にもう一つの親指挿通部を突設して、動刃と静刃を自在に使い分けることを可能とした理美容用鋏に関するものであり、刃部1a.1aと指環1b.1bと柄部1c.1cとを夫々備えた一対の刃材1.1をクロスするように枢着軸2で枢着させた理美容用鋏であって、前記何れか片方の刃材1の指環1bと枢着軸2との間の柄部1cの側方に親指挿通方向を前記指環1b.1bの指挿通方向と略直交させると共に中心3aが柄部1c.1cの厚み方向の軸心A−Aと同一平面上に位置するように親指挿通部3を突設したことを特微とするものである。
【0009】
更に、請求項2に記載の理美容用鋏は、請求項1に記載の理美容用鋏において、前記親指挿通部3は環状としたことを特微とするものである。
【0010】
更には、請求項3に記載の理美容用鋏は、請求項1に記載の理美容用鋏において、前記親指挿通部3は一部が欠落した略環状であることを特微とするものである。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の理美容用鋏の実施例の図面を用いて詳細に説明すると、図1は本発明の理美容用鋏の実施例の平面図であり、図2は本発明の理美容用鋏の実施例の側面図であり、図3は本発明の理美容用鋏の実施例の柄部の方向から見た側面図である。
【0012】
即ち、本発明の理美容用鋏は、図1に図示する如く、髪の毛をカットする刃部1a.1aと、親指又は薬指等を挿通する指環1b.1bと、刃部1a.1aと指環1b.1bとを接続する柄部1c.1cとを夫々備えた一対の刃材1.1と、前記一対の柄部1c.1cをクロスさせて枢着軸2で枢着させているものである。
【0013】
そして、親指挿通部3は何れか片方の刃材1の指環1bと枢着軸2との間の柄部1cの側方に突設したもので、親指挿通部3の指挿通方向を指環1b.1bの指挿通方向と略直交させると共に、親指挿通部3の中心3aが柄部1c.1cの厚み方向の軸心A−Aと同一平面上に位置させたもので、親指を親指挿通部3に挿通させてヘアをカットするときに負荷が正確に刃材1に係るようにしたものである。
【0014】
更に、前記親指挿通部3は環状としたもので、親指を挿通させ易い楕円形状にしても、真円形状にして構わないものであり、また、外側には宝石等を埋め込むような装飾を施しても構わないもので、親指挿通部3が一体に接続されているものである。
【0015】
更には、前記親指挿通部3は一部が欠落した略環状としたもので、例えば、柄部1cとの接続部位の片方を欠落させたC字状としても、親指挿通部3の頂部を欠落させて欠落部位に装飾品等の別部材を嵌め込んでも構わないものである。
【0016】
つまり、図示したものは右利き仕様の図面であり、図1に図示する理美容用鋏の夫々の指環1b.1bに親指と薬指又は中指を挿通させてヘアをカットすると、親指を挿通させた側の刃部1aが動刃と成り、薬指又は中指を挿通させた側の刃部1aが静刃と成るもので、この状態から、親指を指環1bから抜き、親指挿通部3に挿通させると指環1bの外側が親指の根元に当接するため固定されて静刃と成り、薬指又は中指を可動させてカットするもので、薬指又は中指を挿通させた側の刃部1aが動刃と成るものである。
【0017】
尚、右利きと左利きが有る理美容用鋏に適用する場合は前述説明と左右が対称となるものである。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の理美容用鋏は理美容業界で好適に使用できる理美容専門の鋏であって、動刃と静刃とを自在に代えてヘアをカットできるもので、客に安心感を与えると共に、親指が腱鞘炎等にも負担をかけることなく使用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の理美容用鋏の実施例の平面図である。
【図2】図2は本発明の理美容用鋏の実施例の側面図である。
【図3】図3は本発明の理美容用鋏の実施例の柄部の方向から見た側面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 刃材
1a 刃部
1b 指環
1c 柄部
2 枢着軸
3 親指挿通部
3a 中心
A−A 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃部と指環と柄部とを夫々備えた一対の刃材をクロスするように枢着軸で枢着させた理美容用鋏であって、前記何れか片方の刃材の指環と枢着軸との間の柄部の側方に親指挿通方向を前記指環の指挿通方向と略直交させると共に中心が柄部の厚み方向の軸心と同一平面上に位置するように親指挿通部を突設したことを特微とする理美容用鋏。
【請求項2】
前記親指挿通部は環状としたことを特微とする請求項1に記載の理美容用鋏。
【請求項3】
前記親指挿通部は一部が欠落した略環状としたことを特微とする請求項1に記載の理美容用鋏。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−6999(P2007−6999A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189161(P2005−189161)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(501452159)株式会社ネットワーク (2)
【Fターム(参考)】