説明

理美容鋏

【課題】強固にボルトとナットを螺合させた状態でも、スムーズに回動動作を行うことができる理美容鋏を提供する。
【解決手段】下刃体と上刃体が回動可能に固定された理美容鋏の、前記上刃体および前記下刃体にボルト13が挿入される貫通孔と、その周囲に円筒形の窪みが設けられ、前記円筒形の窪みの底面部に薄板が貼り付けられており、前記2つの窪みによってベアリングとワッシャーが保持され、前記上刃体に埋め込まれた前記ベアリングの上には板ばね15が配置され、前記ボルトが、前記下刃体に埋め込まれたベアリングに挿入されて、前記下刃体、前記2つの窪みに保持された前記ベアリングおよび前記ワッシャー、前記上刃体、および前記上刃体に埋め込まれたベアリングを貫通し、前記板ばねから前記ボルトの先端が突出され、前記ボルトの先端が前記ナットと螺合されることにより、前記上刃体と前記下刃体は互いに回動可能に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋏、特に理美容鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
鋏の基本的構成は、一対の刀体をX状に交叉させ、両刀体を貫通する孔を設けて、前記孔に挿通したボルトにナットを螺合させて両刀体が前記ボルトを軸に回動可能にしたものである。前記鋏は、2つの刃体が1つの軸を中心として常に回動動作を行うので、緊締ナットの緩み止め手段を採用する必要がある。
【0003】
従来のナットの緩み止めの一手段として、両端縁若しくは片端縁点を刀体に支持させた板ばねをナットの座金として使用し、ナットの底面に放射状凹凸面を円周状に形成し、板ばねの前記凹凸面対応部分に小突起を設け、ナットをボルトに螺合させる際にナットの凹凸面と板ばねの表面の小突起とを噛合させ、ナットの緩み止めとしている技術が用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55−63673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来の鋏では、ボルトとナットを螺合させることと、スムーズな回動動作を両立させるのは難しく、ボルトとナットの螺合状態と、スムーズな回動動作とはバランスを取りながら調節する必要があった。
【0006】
そこで、本発明は前記問題を解決するために、強固にボルトとナットを螺合させた状態でも、スムーズに回動動作を行うことができる鋏、特に理美容鋏を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の理美容鋏は、動刃とハンドルからなる下刃体と静刃とハンドルからなる上刃体が、ボルトおよびナットを用いて互いに回動可能に固定された理美容鋏であって、前記上刃体および前記下刃体にはボルトが挿入される貫通孔が設けられ、前記上刃体および前記下刃体が互いに接する面にはそれぞれ前記貫通孔が中心に位置する円筒形の窪みが設けられ、前記円筒形の窪みの底面の前記ハンドル側の3/1から4/1の部分に薄板が貼り付けられており、前記2つの窪みによってベアリングとワッシャーが保持され、前記上刃体および前記下刃体の前記円筒形の窪みが設けられたのとは反対面にそれぞれ前記ボルトが挿入されるベアリングが埋め込まれ、前記上刃体に埋め込まれた前記ベアリングの上には板ばねが配置され、前記ボルトが、前記下刃体に埋め込まれた前記ベアリングに挿入されて、前記下刃体、前記2つの窪みに保持された前記ベアリングおよび前記ワッシャー、前記上刃体、および前記上刃体に埋め込まれた前記ベアリングを貫通し、前記上刃体に配置された前記板ばねの孔から前記ボルトの先端が突出され、前記ボルトの先端が前記ナットと螺合されることにより、前記上刃体と前記下刃体は互いに回動可能に固定されていることを特徴とする。
【0008】
さらに、前記貫通孔の周囲に埋め込まれたベアリングとしてアンギュラボールベアリングを用い、前記円筒形の窪みに配置されるベアリングとしてスラストボールベアリングを用いることができる。
【0009】
また、前記ワッシャーの枚数を変更することにより、前記上刃体と前記下刃体との間隔を調節することが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の理美容鋏は、動刃とハンドルからなる下刃体と静刃とハンドルからなる上刃体が、ボルトおよびナットを用いて互いに回動可能に固定された理美容鋏であって、前記上刃体および前記下刃体にはボルトが挿入される貫通孔が設けられ、前記上刃体および前記下刃体が互いに接する面にはそれぞれ前記貫通孔が中心に位置する円筒形の窪みが設けられ、前記円筒形の窪みの底面の前記ハンドル側の3/1から4/1の部分に薄板が貼り付けられており、前記2つの窪みによってベアリングとワッシャーが保持され、前記上刃体および前記下刃体の前記円筒形の窪みが設けられたのとは反対面にそれぞれ前記ボルトが挿入されるベアリングが埋め込まれ、前記上刃体に埋め込まれた前記ベアリングの上には板ばねが配置され、前記ボルトが、前記下刃体に埋め込まれた前記ベアリングに挿入されて、前記下刃体、前記2つの窪みに保持された前記ベアリングおよび前記ワッシャー、前記上刃体、および前記上刃体に埋め込まれた前記ベアリングを貫通し、前記上刃体に配置された前記板ばねの孔から前記ボルトの先端が突出され、前記ボルトの先端が前記ナットと螺合されることにより、前記上刃体と前記下刃体は互いに回動可能に固定されていることにより、強固なボルトとナットの螺合状態を保ちながら、スムーズに回動動作を行うことが可能となる。
【0011】
さらに、前記貫通孔の周囲に埋め込まれたベアリングとしてアンギュラボールベアリングを用い、前記円筒形の窪みに配置されるベアリングとしてスラストボールベアリングを用いることにより、よりスムーズな回動動作が可能となる。
【0012】
また、前記ワッシャーの枚数を変更することにより、前記上刃体と前記下刃体との間隔を調節することにより、下刃体と上刃体の摺り合わせ状態を微調節することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の理美容鋏の平面図である。
【図2】上刃体の平面図である。
【図3】下刃体の平面図である。
【図4】(a)は板ばねの平面図、(b)は板ばねの側面図である。
【図5】(a)はベアリングの平面図、(b)はベアリングの側面図である。
【図6】ワッシャーの平面図である。
【図7】(a)はナットの側面図、(b)はナットの底面図である。
【図8】ボルトの側面図である。
【図9】上刃体と下刃体をボルトとナットを用いて回動可能に固定した状態の、固定部分の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を、図を用いて以下に詳細に説明する。図1が本発明の理美容鋏1の平面図であり、図2が前記理美容鋏1の上刃体2の平面図、図3が前記理美容鋏1の下刃体3の平面図である。
【0015】
本発明の理美容鋏1は、図1〜3に示すように、動刃7とハンドル6からなる下刃体3と静刃5とハンドル4からなる上刃体2が、ボルト13およびナット14を用いて互いに回動可能に固定されており、前記ボルト13を中心として、前記上刃体2と前記下刃体3が回動する構造である。
【0016】
前記上刃体2にはボルト13が挿入される貫通孔8が設けられ、前記上刃体2の前記下刃体3と接する面には、図2(b)に示すように、前記貫通孔8が中心に位置する円筒形の窪み10が設けられ、前記円筒形の窪み10の底面の前記ハンドル4側の3/1から4/1の部分に薄板11を貼り付けている。ここでは、前記薄板11として理美容鋏1に用いるワッシャー17と同じものを3/1の大きさに切断したものを用いている。
【0017】
前記上刃体2の前記窪み10が設けられたのと反対面には、図2(a)に示すように、前記ボルト13が挿入されるベアリング9が埋め込まれており、さらに、前記上刃体2の前記ベアリング9の上に板ばね15を配置する際に位置決めするための凹部12が設けられている。前記ベアリング9として、アンギュラボールベアリングを用いることにより、前記上刃体2が前記ボルト13を軸としてスムーズに回動することができる。
【0018】
前記下刃体3にはボルト13が挿入される貫通孔8’が設けられ、前記下刃体3の前記上刃体2と接する面には、図3(b)に示すように、前記貫通孔8’が中心に位置する円筒形の窪み10’が設けられ、前記円筒形の窪み10’の底面の前記ハンドル6側の3/1から4/1の部分に薄板11’を貼り付けている。ここでは、前記上刃体2と同様に、前記薄板11として前記ワッシャー17と同じものを3/1の大きさに切断したものを用いている。
【0019】
前記下刃体3の前記窪み10’が設けられたのと反対面には、図3(a)に示すように、前記ボルト13が挿入されるベアリング9’が埋め込まれており、ここでは前記上刃体2と同様に前記ベアリング9’としてアンギュラボールベアリングを用いている。これにより、前記上刃体2と同様に、前記下刃体3が前記ボルト13を軸としてスムーズに回動することができる。
【0020】
前記ボルト13と前記ナット14を用いて前記上刃体2と前記下刃体3とを回動可能に固定する際に、前記板ばね15、ベアリング16、およびワッシャー17を用いる。前記板ばね15は前記上刃体2の前記ベアリング9の上に配置されて、前記ナット14によって締め付けられ、前記上刃体2に弾性力を作用することで所定の締付力を保持するものである。また、前記板ばね15は、図4に示すように、前記ボルト13が挿入される孔22と、前記上刃体2の前記凹部12に挿入される突出部20が設けられており、前記孔22に前記ボルト13が挿入され、前記突出部20が前記上刃体2に設けれた前記凹部12に挿入されることで、前記板ばね15は前記上刃体2に対して容易に位置決めされる。さらに、前記板ばね15の表面には凸部21が設けられている。
【0021】
前記ベアリング16としてここでは、図5に示すような、座金状の2つの軌道盤19とボールが組み込まれた保持器組立品18からなり、前記軌道盤19に前記保持器組立品18が挟まれたスラストボールベアリングを用いる。前記ベアリング16は、前記上刃体2の窪み10と前記下刃体3の窪み10’に、前記ワッシャー17とともに挟まれており、前記上刃体2と前記下刃体3がスムーズに回動させる働きを行う。このほかの形状のベアリングを用いることも可能である。
【0022】
図6に示すような前記ワッシャー17をここでは1つ用いているが、前記ワッシャー17の枚数を変更することで前記上刃体2と前記下刃体3との間隔を調節することができる。これにより、前記上刃体2の静刃5と前記下刃体3の動刃7との摺り合わせ状態を調節することができる。また、前記軌道盤19をワッシャーとして用いることで、前記ワッシャー17を無くすことも可能である。
【0023】
図7に示すように、前記ナット14は中心に前記ボルト13と螺合するためのネジ山が形成された貫通孔24が設けられ、外周面は締付易くするために凹凸が刻まれており、さらに、その裏面には放射状に凹凸23が形成されている。前記ナット14を前記ボルト13に螺合させて締め付けていくと、前記凹凸23が前記板ばね15の表面の凸部と係合することとなるので前記凹凸23は前記ナット14の緩み止めとして作用する。
【0024】
前記ボルト13と前記ナット14を用いて前記上刃体2と前記下刃体3を回動可能に固定する方法について説明する。前記ボルト13を前記下刃体3に埋め込まれた前記ベアリング9’に挿入し、前記下刃体3の貫通孔8’に挿入する。そして、前記下刃体3の前記窪み10’から突出した前記ボルト13の先端から前記ベアリング16を入れて、前記ベアリング16を前記下刃体3の前記窪み10’に配置する。この時、前記ベアリング16の一部、ここでは1/3(図9の前記ボルト13より右側の部分)が前記薄板11’に重なった状態となり、前記ベアリング16の上側の一部が前記窪み10'から突出した状態となっている。
【0025】
前記ベアリング16を配置したら、所定の枚数のワッシャー17を前記ベアリング16の上に重ねて配置する。ここでは1つのワッシャー17を用いるが、複数の前記ワッシャー17を用いること、また、前記ワッシャー17を前記ベアリング16の下に配置することも可能であり、複数の前記ワッシャー17を用いる場合は、前記ベアリング16の上下に分けて配置することも可能である。
【0026】
前記下刃体3に前記ボルト13を挿入し、前記ベアリング16と前記ワッシャー17が配置できたら、前記上刃体3の貫通孔8に前記ボルト13を挿入する。この時、前記ワッシャー17と前記ベアリング16の一部が前記上刃体2の前記窪み10内に配置され、前記ベアリング16と前記ワッシャー17は前記窪み10,10’に保持された状態となる。この時、前記ワッシャー17の一部、ここでは1/3(図9の前記ボルト13より右側の部分)が前記薄板10の下に重なった状態となっている。このようにして、前記下刃体3に前記上刃体2が重ね合わされる。
【0027】
その後、前記上刃体2に埋め込まれた前記ベアリング9から突出した前記ボルト13の先端を前記板ばね15の孔22に挿入する。この時、前記板ばね15の前記突出部20を前記上刃体2の前記凹部12に入れることで、前記板ばね15は所定の位置に配置される。そして、最後に、前記ナット14を締め付けて前記ボルト13と螺合させると、図9の状態となり、前記上刃体2と前記下刃体3は互いに回動可能に固定され、前記理美容鋏1の完成形となる。
【0028】
このように、前記上刃体2と前記下刃体3は互いに回動可能に固定された時、図9に示すように前記上刃体2と前記下刃体3は前記ボルト13の周囲では所定の間隔を有しているが、前記動刃7と前記静刃5は互いに接する状態となっている。これは、前記窪み10,10’に前記薄板11,11’を設けることにより、前記ボルト13と前記ナット14を螺合させた時に、前記上刃体2と前記下刃体3が前記静刃5と前記動刃7の先端に向かって互いに近付くように傾斜することによる。
【0029】
このような状態で、前記上刃体2と前記下刃体3が互いに回動可能に固定されていることにより、理美容鋏1は強固にボルトとナットを螺合させた状態でも、スムーズに回動動作を行うことが可能となる。また、前記ベアリング9,9’としてアンギュラボールベアリングを用い、前記ベアリング16としてスラストボールベアリングを用いることによって、よりスムーズな回動動作が可能となる。
【0030】
本発明の理美容鋏1の実施形態として、一般的な理美容鋏を用いて説明してきたが、刃の形状、あるいはハンドルの形状等は様々な形態を用いることができる。例えば、セニングシザーの形状とすることも可能である。また、ベアリングについても他の種類のベアリングを使用することも可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 理美容鋏
2 上刃体
3 下刃体
4 ハンドル
5 静刃
6 ハンドル
7 動刃
8,8’ 貫通孔
9,9’ ベアリング
10,10’ 窪み
11,11’ 薄板
12 凹部
13 ボルト
14 ナット
15 板ばね
16 ベアリング
17 ワッシャー
18 保持器組立品
19 軌道盤
20 突出部
21 凸部
22 孔
23 凹凸
24 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動刃とハンドルからなる下刃体と静刃とハンドルからなる上刃体が、ボルトおよびナットを用いて互いに回動可能に固定された理美容鋏であって、
前記上刃体および前記下刃体にはボルトが挿入される貫通孔が設けられ、前記上刃体および前記下刃体が互いに接する面にはそれぞれ前記貫通孔が中心に位置する円筒形の窪みが設けられ、前記円筒形の窪みの底面の前記ハンドル側の3/1から4/1の部分に薄板が貼り付けられており、前記2つの窪みによってベアリングとワッシャーが保持され、
前記上刃体および前記下刃体の前記円筒形の窪みが設けられたのとは反対面にそれぞれ前記ボルトが挿入されるベアリングが埋め込まれ、前記上刃体に埋め込まれた前記ベアリングの上には板ばねが配置され、
前記ボルトが、前記下刃体に埋め込まれた前記ベアリングに挿入されて、前記下刃体、前記2つの窪みに保持された前記ベアリングおよび前記ワッシャー、前記上刃体、および前記上刃体に埋め込まれた前記ベアリングを貫通し、前記上刃体に配置された前記板ばねの孔から前記ボルトの先端が突出され、前記ボルトの先端が前記ナットと螺合されることにより、前記上刃体と前記下刃体は互いに回動可能に固定されていることを特徴とする理美容鋏。
【請求項2】
前記貫通孔の周囲に埋め込まれたベアリングとしてアンギュラボールベアリングを用い、前記円筒形の窪みに配置されるベアリングとしてスラストボールベアリングを用いることを特徴とする請求項1に記載の理美容鋏。
【請求項3】
前記ワッシャーの枚数を変更することにより、前記上刃体と前記下刃体との間隔を調節することを特徴とする請求項1または2に記載の理美容鋏。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−29923(P2012−29923A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172810(P2010−172810)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(510209199)株式会社武芸社 (1)
【Fターム(参考)】