説明

環境に優しい、はんだ付け可能なワイヤエナメル

本発明は、
A) アルキルフェノールでブロックされているブロックトポリイソシアナートアダクト少なくとも1種 10〜60質量%、好ましくは20〜50質量%、特に好ましくは25〜45質量%、
B) エステル−及び/又はイミド−及び/又はアミド基を有するヒドロキシポリエステル少なくとも1種 4〜30質量%、好ましくは7〜25質量%、特に好ましくは9〜20質量%、
C) 炭化水素ベースの有機溶媒 20〜70質量%、好ましくは30〜60質量%、好ましくは35〜45質量%、
D) 更なる助剤及び添加剤 1〜20質量%、好ましくは5〜18質量%、好ましくは10〜16質量%からなり、
その際、この成分A)+B)+C)+D)の合計は100質量%に加算される、ポリウレタン−ワイヤエナメル、及び、その製造方法及びその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願において引用されている全ての文献は、参照により完全な範囲で本願の開示に取り込まれる(= incorporated by reference in their entirety)。
【0002】
本発明は、炭化水素に溶解されているポリウレタンを基礎とする、ワイヤにはんだ付け可能な被覆物を生じさせるための、環境に優しい、はんだ付け可能なワイヤエナメルに関する。
【0003】
従来技術:
ヒドロキシル基含有ポリエステル及びブロックトイソシアナートを基礎とする電気絶縁コーティング剤としてのポリウレタンは多数知られており、かつ、例えばDE1957157、DE10051392、DE19507942に記載されている。この種の電気絶縁コーティング剤は、ワイヤコーティング剤としてのその使用の際に特にその良好な絶縁特性により優れている。さらに、これはスズめっき可能である利点を有する。スズめっき可能な絶縁したワイヤは、高められた温度に加熱されたはんだ浴中への浸漬の際にこの絶縁層の破壊下でこの導体のむきだしの金属を放出し、これは従って電導性化合物にとって直接的に使用可能である。スズめっき性は、塗料フィルム中のウレタン基の存在に起因することができる。
【0004】
先行技術においては、ポリウレタンワイヤエナメルは、ヒドロキシ基含有ポリエステル、ブロックトイソシアナート、触媒及び助剤並びに複雑な溶媒混合物からなる。主たる溶媒は、クレゾール性溶媒であり、これは芳香族炭化水素と混合される。クレゾール及びキシレノールは工業的に提供可能な溶媒である。これらは蒸留カット(Destillationsschnitte)であるので、この異性体組成は品質から品質へとゆらぐ。全てのクレゾール性溶媒は毒性があり、かつ、極めて不快な匂いにより特徴付けられることが著しい欠点である。
【0005】
このワイヤエナメルの加工は、市販のワイヤ塗装設備で行われ、この場合に前記溶媒混合物は蒸発し、そして結合剤が硬化する。この蒸発した溶媒は塗装設備において燃焼され、この硬化炉の加熱に併用される。
【0006】
DE2718898及びEP0055085からは、ポリエステルイミドを含有するコーティング剤が知られており、これはキャップしたイソシアナートを含有する。しかし、ここに記載のコーティング剤はとりわけスズめっき可能でない。
【0007】
クレゾール不含のワイヤエナメルは知られており、その際このクレゾール性溶媒は他の溶媒により置き換えられる。例えば、メチルジグリコール、エチルジグリコール、ガンマ−ブチロラクトン(Lienert, "Loesemittel fuer kresolfreie Drahtlacke", 8. Fachtagung Elektroisoliersysteme, Hamburg 1989)、アルキレンカーボナート(EP0502858)及び他の多くのものが使用されることができる。この代替的な溶媒が、クレゾール性溶媒が有するよりも大抵はより少ない発熱量を有することにより、この塗装機械はエネルギーを欠失する。
【0008】
課題:
本発明の課題は、クレゾール不含に溶解している、ワイヤのためのスズめっき可能なコーティング剤の開発であった。この代替的な溶媒は市販されており、この塗料の成分を全て良好に溶解し、かつ、この存在する塗装設備が運転されることができるように高い燃焼熱を有することが望ましく、この場合に、付加的なエネルギーは、例えば電流の形で供給される必要はない。
【0009】
解決策:
意外なことに、この課題は、ソルベントナフサ溶解性の、特殊なブロックトイソシアナートアダクトで変性した、ヒドロキシ基含有ポリエステル、炭化水素ベースの有機溶媒、並びに、通常の触媒及び塗料助剤を処方したことにより満たされることができた。
【0010】
イソシアナートのブロック化剤には、この場合に、鍵となる役割が認められる。
【0011】
定義概念:
本発明の範囲内において、全ての量の記載は、他のことが記載されていない限りは、質量記載(例えば質量%)と理解されるべきである。
【0012】
本発明の範囲内においては、概念「室温」とは20℃の温度を意味する。温度の記載は、他のことが記載されていない限りは、セルシウス度(℃)である。
【0013】
他のことが記載されていない限りは、この挙げられる反応又は方法工程は常圧(雰囲気圧力)で実施される。
【0014】
(メタ)アクリルとの表現は、本発明の範囲内においては、メタクリルもアクリル又はこの両者の混合物も含むものである。
【0015】
アルキルフェノールとの表現は、他のことが記載されていない限りは、本発明の範囲内においては、1〜5個のC1〜C5−アルキル基でもってベンゼン核で置換されているフェノールであり、但し、このアルキル基の単純な置換の場合には少なくとも2個の炭素原子を含むとの条件付きである。
【0016】
詳細な説明:
本発明の主題は、
A) アルキルフェノールでブロックされているブロックトポリイソシアナートアダクト少なくとも1種 10〜60質量%、好ましくは20〜50質量%、特に好ましくは25〜45質量%、
B) エステル−及び/又はイミド−及び/又はアミド基を有するヒドロキシポリエステル少なくとも1種 4〜30質量%、好ましくは7〜25質量%、特に好ましくは9〜20質量%、
C) 炭化水素ベースの有機溶媒 20〜70質量%、好ましくは30〜60質量%、好ましくは35〜45質量%、
D) 更なる助剤及び添加剤 1〜20質量%、好ましくは5〜18質量%、好ましくは10〜16質量%からなるポリウレタン−ワイヤエナメルであり、
その際、この成分A)+B)+C)+D)の合計は100質量%に加算される。
【0017】
本発明により使用すべきブロックトポリイソシアナートアダクトA)の製造のためには、芳香族、脂肪族及び脂環式のポリイソシアナートa)、好ましくは均一な又は平均値で平均して140〜600の分子量の、NCO官能性2〜4であるポリイソシアナートが適している。このようなポリイソシアナートは、例えばプロピレンジイソシアナート、エチルエチレンジイソシアナート、3,3,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,3−シクロペンチルジイソシアナート、1,4−シクロヘキシルジイソシアナート、1,2−シクロヘキシルジイソシアナート、1,3−及び1,4−フェニレンジイソシアナート、2,4−及び2,6−ジイソシアナトトルエン(TDI)並びにこの異性体の混合物及びそのジ−及びトリマー、4,4−、2,4−及び2,2−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)並びにこの異性体の混合物又はこの異性体とそのより高級な相同体との混合物であり、これは例えば既知の方式においてアニリン/ホルムアルデヒド−縮合物のホスゲン化により得られ、1,5−ナフタチレンジイソシアナート、1,4−ブタンジイソシアナート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアナート、1,5−ヘキサンジイソシアナート、1,6−ヘキサンジイソシアナート(HDI)、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジイソシアナート並びにこの異性体の混合物、2,4−及び2,6−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサン並びにこの異性体の混合物、3,5,5−トリメチル−3−イソシアナトメチルシクロヘキサンイソシアナート(IPDI)及びジシクロヘキシルメタン−2,4−及び−4,4−ジイソシアナート及びこのイソシアナートの混合物、4,4′−ジイソシアナトジフェニルエーテル及び2,3−ビス−(8−イソシアナトオクチル)−4−オクチル−5−ヘキシルシクロヘキセン、1−イソシアナトメチル−5−イソシアナト−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、4,4′−ビフェニレンジイソシアナート、1,4−ナフチレンジイソシアナートである。好ましくは出発イソシアナートとしてNCO官能性2〜3を有する芳香族ポリイソシアナートである。
【0018】
アダクト形成のためのイソシアナートa)の反応パートナーとしては多価アルコールb)、好ましくはエチレングリコール、1,2−及び1,3−プロピレングリコール、1,2−、1,3−及び1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ビスフェノール及び/又はトリオール、好ましくはグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン又はトリス−2−ヒドロキシエチルイソシアヌラート(THEIC)が適する。好ましく使用されるのはトリオール、特にトリメチロールプロパン及びグリセリンである。特にとりわけ好ましくは、1molのトリメチロールプロパンと3molの4,4−、2,4−及び2,2−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)からのアダクト並びにこの異性体の混合物又はこの異性体とより高級な相同体との混合物であり、これは例えば既知の方式でアニリン/ホルムアルデヒド−縮合物のホスゲン化により得られる。
【0019】
ブロック化剤としては本発明によりアルキルフェノールが使用される。好ましくはこのクレゾール不含のはんだ付け可能なワイヤエナメルの処方のためには、ブロック化剤、例えばアルキル化フェノールであり、その際、このアルキル鎖は2〜6個の炭素原子からなり、かつ、直鎖状であるか又は分枝鎖状であることもできる。一置換したアルキルフェノールの場合には、このアルキル残基は少なくとも2個の炭素原子を含む。一置換したフェノールの他に、二及び三−置換したフェノールも使用可能である。特に好ましいのは、ブチル化フェノールであり、これは例えばo−、m−、p−ブチルフェノール、o−sec−ブチルフェノール、m−sec−ブチルフェノール、p−sec−ブチルフェノール、ジ−sec−ブチルフェノールである。この本発明により最も好ましく使用される製品は、sec−ブチルフェノールの混合物である。市販製品の一例は、SI-Group(R)のIsosolve(R) 231である。
【0020】
本発明の一変形において、このブロックトポリイソシアナートアダクトの製造の場合には過剰量のブロック化剤が使用されることができ、これは次いで付加的な溶媒又は共溶媒として機能する。
【0021】
この好ましい製造形態に応じて、このブロック化剤又はブロック化剤混合物c)が装入される。このポリイソシアナート又はポリイソシアナートa)は添加され、ブロック化剤と反応させる。次いでこの好ましいトリオール及びジオールb)はアダクト形成のために添加され、反応され、かつこれはソルベントナフサで希釈される。
【0022】
最も好ましくは本発明の範囲内においては、ブロックトポリイソシアナートアダクトA)は、
i)ジイソシアナート、特に4,4−ジイソシアナトジフェニルメタン、
ii)ポリオール、特にトリメチロールプロパン及び
iii)置換したフェノール、好ましくはブチル置換したフェノール、特にsec−ブチルフェノールの混合物
から構築される。
【0023】
本発明により使用されるヒドロキシポリエステルB)の製造には、多価アルコールd)、好ましくはエチレングリコール、1,2−及び1,3−プロピレングリコール、1,2−、1,3−及び1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及び/又はトリオール、好ましくはグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン又はトリス−2−ヒドロキシエチルイソシアヌラートが適する。特に好ましくはエチレングリコール、1,2−及び1,3−プロピレングリコール及びトリメチロールプロパン並びにこれらアルコールからの混合物である。
【0024】
さらに、B)のために芳香族及び脂肪族のポリカルボン酸並びにそのエステル化可能な誘導体e)が使用できる:シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、ソルビン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメシン酸、ナフタレンジカルボン酸。このエステル化可能な誘導体は、好ましくは、メチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−、アミル−、ヘキシル−及びオクチルエステルである。この半エステル、このジアシルエステルまた同様にこの化合物の混合物また同様にこの相応する酸ハロゲン化物も使用可能である。同様に使用可能であるのは、無水物、例えばピロメリット酸二無水物及びトリメリット酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物又はテトラカルボン酸の二無水物であって分子中の2個のベンゼン核を有するものであり、この場合にこのカルボキシル基は3,3′4−及び4′−の位置にある。好ましいのはテレフタル酸及びトリメリット酸無水物である。
【0025】
さらに、好ましい一変形においてB)のために芳香族及び脂肪族のモノカルボン酸並びにそのエステル化可能な誘導体が、末端基の栓としてソルベントナフサ中でのこのヒドロキシポリエステルの溶解性を改善するため使用されることができ、すなわち、この末端のヒドロキシル基の一部がモノカルボン酸とエステル化されていることができる。このための例は、酪酸、ヘキサン酸、ステアリン酸、o−、m−、p−メチル/エチル−/プロピル−/ブチル安息香酸である。特に好ましくはtert−ブチル安息香酸である。
【0026】
当業者には、熱特性プロフィールを高めるために、ポリエステルポリオールB)がイミド変性されることができることが知られている。本発明により使用されるポリエステルポリオールB)のイミド変性のためには、芳香族、脂肪族及び脂環式ジアミンf)、例えばエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ベンジジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、−スルホキシド、−エーテル、−チオエーテル、フェニレンジアミン、トルイレン、ジオキシリレン、ジアミンであって分子中に3個のベンゼン核を有するもの、例えばビス(4−アミノフェノキシ)−1,4−ベンゼン、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン、モノエタノールアミン及びモノプロパノールアミン、さらにアミノカルボン酸、例えばグリセリン、アミノプロパン酸、アミノカプロン酸又はアミノ安息香酸が適する。好ましくは芳香族ジアミン、例えばジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、−スルホキシド、−エーテル、−チオエーテル、フェニレンジアミンである。
【0027】
最も好ましくは本発明の範囲内においては、
−アルカンジオール、特に1,2−プロピレングリコール、
−トリオール、特にトリメチロールプロパン、
−ポリカルボン酸無水物、特に無水フタル酸、
−ポリカルボン酸エステル、特にジメチルテレフタラート及び
−芳香族酸、特にp−tert−ブチル安息香酸
から構築されるポリエステルポリオールB)である。
【0028】
このポリエステル−及び変性ポリエステル樹脂の製造には、既知のエステル交換触媒が使用される。例えば、重金属塩、有機チタナート及びジルコナート、亜鉛−、スズ−及びCer化合物並びに有機酸、例えばp−トルエンスルホン酸が考慮される。ポリエステルの製造には、適した触媒は使用混合物に対して0.01〜5質量%、好ましくは0.3〜3質量%の量で使用される。
【0029】
成分B)のための好ましい一製造形態によれば、この好ましい多価アルコールd)、好ましいカルボン酸並びにそのエステル化可能な誘導体及び無水物e)及びこの好ましいエステル化触媒が装入され、温度100〜200℃、好ましくは140℃〜180℃で縮合される。イミド変性された成分Bが製造されることが望ましい場合には、次いで、一回で又は部分量ごとに、このイミド形成成分、好ましいジアミンf)を、好ましい無水物e)と共に1:3〜3:1、好ましくは1:0.8〜0.8:1の比で添加する。この温度を段階的に180〜250℃、好ましくは190〜230℃に高め、この蒸留物が得られるまで維持する。ソルベントナフサを用いてこの所望される固形物含有量に希釈する。
【0030】
炭化水素をベースとする有機溶媒とは、この場合に好ましくは、炭素及び水素のみから構築されているものを理解すべきである。
【0031】
この製造される結合剤のための有機溶媒C)としては、一変形において、キシレン、ソルベントナフサ、トルエン、エチルベンゼン、クメン、重ベンゼン、様々なSolvesso(R)及びShellsol(R)タイプ、Deasol(R)及びこの混合物からなる群から選択されるものが適している。
【0032】
当業者にはこれら3つの商品名/−製品が十分に知られており、このため、更なるより詳細な説明は必要でない;これら製品はそのそれぞれの沸騰範囲により十分に特徴付けられ、その正確に定義された化学組成によって特徴付けられるのでなく、これは本質的に異なる、芳香族炭化水素の混合物、炭化水素混合物及び芳香族リッチな炭素水素混合物である。適しているのは、沸点範囲155〜175℃を有する炭化水素混合物であり、これは99質量%までが9又は10個の炭素原子を有する芳香族炭化水素からなり、この一例はDeasol(R) 99である。同様に適しているのは、沸点範囲150〜170℃を有する高沸性芳香族化合物の混合物である(例えばDeasol(R))。
【0033】
適しているのはとりわけトルエン、キシレン及び脂肪族炭化水素からの混合物でもあり、例えばShellsol(R) X7B、99%より多くの芳香族割合を有する主としてC9−炭化水素の混合物、例えばShellsol(R) A100、99%より多くの芳香族割合を有するC9〜C11−炭化水素の混合物、例えばShellsol(R) A150、並びに、>61℃のフラッシュポイントを有する狭い炭化水素カット、例えばShellsol(R) A150 NDである。
【0034】
製造される結合剤のための有機溶媒C)としては、他の一変形において、キシレン、ソルベントナフサ、トルエン、エチルベンゼン、クメン、重ベンゼン、C9〜C10−芳香族混合物、C10〜C13−芳香族混合物、トルエン、キシレン及び脂肪族炭化水素から構成される混合物、99%より多くの芳香族割合を有する主としてC9−炭化水素の混合物、99%より多くの芳香族割合を有するC9〜C11−炭化水素の混合物、>61℃のフラッシュポイントを有する狭い炭化水素カット及びこの混合物、からなる群から選択されたものが適する。
【0035】
製造される結合剤のための有機溶媒C)としては、他の一変形において、キシレン、ソルベントナフサ、トルエン、エチルベンゼン、クメン、重ベンゼン、C9〜C10−芳香族混合物、C10〜C13−芳香族混合物、99%より多くの芳香族割合を有する主としてC9−炭化水素の混合物、99%より多くの芳香族割合を有するC9〜C11−炭化水素の混合物及びこの混合物、からなる群から選択されたものが適する。
【0036】
本発明の一変形において、成分A)の製造の際に過剰量で添加された限り、前述の溶媒の他にこの成分C)の一部として成分A)のために使用されるブロック化剤が存在できる。
【0037】
記載の成分の他に、このポリウレタンベースの被覆剤は、更に通常の助剤及び添加剤D)を含有する。ワイヤ被覆剤のための助剤として例えば流動性改善性フェノール−又はメラミン樹脂又は他の通常の流動剤、例えばポリアクリラート及びポリシロキサンを基礎とするものが使用されることができる。更に塗料当業者には、高沸性物質、例えばアルキレンカーボナート、フタル酸エステル、高沸性炭化水素、例えばアルキル化ベンゼン及びナフタレン、アルキル化フェノール、高沸性アルコール、例えばブタノール及び/又はベンジルアルコールその他が、この流動性及びフィルム形成に好ましい影響を有することが知られている。助剤と共溶媒との間の境界は多くの場合に流動的である。
【0038】
さらに、本発明によるポリウレタンワイヤエナメルは架橋触媒を含有できる。ポリウレタンベースのワイヤ被覆剤の場合には、有機金属化合物、例えば金属カリウム、マグネシウム、アルミニウム、スズ、鉛、亜鉛、鉄、チタン、ビスマス、アンチモン及びジルコニウム並びに第三級アミンが架橋触媒として有効であることが実証されており、これは通常はヒドロキシル基含有ポリエステル及びブロックトイソシアナートアダクトの全質量に対して0.2〜2.0質量%の量で使用される。
【0039】
活性化剤又は架橋触媒の好ましい一群は、アルデヒドとアミンの、特に好ましくは脂肪族アルデヒド及び脂肪族アミンとの縮合生成物であり、特に好ましくはブチルアルデヒドとアニリンとの反応生成物である。市販で入手できる製品の一例は、Lanxess社のVulkacit(R) 576である。
【0040】
ヒドロキシル含有ポリエステルB)及びブロックトイソシアナートアダクトA)は本発明による一変形において、一緒になって、このポリウレタンワイヤエナメルの全質量に対して14〜90質量%、好ましくは27〜75質量%、特に好ましくは34〜65質量%の量で使用される。ヒドロキシル基含有ポリエステルの量はこの場合に、100質量部のブロックトシソシアナートアダクト毎に、好ましくは30〜60質量部、特に37〜50質量部であり、これは(変性した)ポリエステルのOH価及びイソシアナートアダクトのブロック化NCO基の含有量に依存する。この場合に、ヒドロキシル基対イソシアナート基の比は3:1〜1:3、好ましくは2:1〜1:2であることができる。
【0041】
最も好ましい本発明の一実施態様は、
A) ブチル化フェノール、好ましくはsec−ブチルフェノールからの混合物でブロックされているブロックトポリイソシアナートアダクト少なくとも1種 25〜45質量%、
B) エステル−及び/又はイミド−及び/又はアミド基を有するヒドロキシポリエステル少なくとも1種 9〜20質量%、
C) 炭化水素ベースの有機溶媒35〜45質量%、
D) 更なる助剤及び添加剤10〜16質量%、
から構成される本発明のポリウレタンワイヤエナメルであり、
その際、成分A)+B)+C)+D)の合計は100質量%に加算され、
−ブロックトポリイソシアナートアダクトA)は、4,4−ジイソシアナトジフェニルメタン、トリメチロールプロパン及びsec−ブチルフェノールの混合物から構築されている、
及び/又は
−ポリエステルポリオールB)は、1,2−プロプレングリコール、トリメチロールプロパン、無水フタル酸、ジメチルテレフタラート及びp−tert−ブチル安息香酸から構築されている。
【0042】
このポリウレタンワイヤエナメルは、通常のワイヤ塗装機械を用いて設けられ、かつ硬化される。この場合にこのその都度必要とされる塗装フィルム強度は、少なくとも1〜20、好ましくは1〜10の個々の設置により設けられ、その際、このその都度の個々の設置塗膜は新たな塗膜設置前に気泡なく硬化される。通常の塗装機械は、コーティングすべきワイヤの厚さに応じて、5m/分〜数百m/分の流出速度で作業する。典型的な炉温度は300〜550℃である。
【0043】
好ましい塗装条件:
温度:約500℃
設置システム:フェルト(Filz)
ワイヤ直径:0.50mm
通過(Durchzueg)数:8
増加度(Zunahmegrad):2L。
【0044】
この塗装したワイヤはIEC 60851に応じて試験される。
【0045】
本発明によるワイヤエナメルの大きな利点は、これが全体として見れば市販のワイヤエナメルに比較して、特に使用される溶媒に関して、より安価な原料からなることである。本発明によるワイヤエナメルは更に、環境負荷がより少ない。これは、エコロジー的並びに経済的観点において大きな利点を提示する。
【0046】
本発明のこの様々な態様、例えば、様々な従属請求項の態様は、この場合に任意の手法で相互に組み合わせられることができる。
【0047】
本発明は、以下の限定的でない実施例に関連して説明される。
【0048】
実施例1:ブロックトポリイソシアナートアダクトA1の製造
凝縮物分離器(Kondensatabscheider)を備えた反応装置において、撹拌及び窒素の導通下で、Isosolve 231(R)108g、ソルベントナフサ216g及び4,4−ジイソシアナトジフェニルメタン271gを秤入れた。このバッチを40℃に加熱した。別個に、トリメチロールプロパン41g及びIsosolve 231(R)164gから構成される混合物を製造した。これをフラスコ中に添加した。この温度を60℃に高めた。次いでジブチルスズジラウラート0.2gを添加した。この温度は反応を通じて上昇した。これは120℃で1時間維持された。このバッチを80℃に冷却し、残りの溶媒、ソルベントナフサ97g、ジメチルフタラート49g及びプロピレングリコール49gを添加し、2時間撹拌した。この得られるポリイソシアナートアダクトは、約3900mPas(23℃)の粘度及び固形物質含有量52%(1g/1h/130℃)を有した。
【0049】
実施例2:ブロックトポリイソシアナートアダクトA2の製造
凝縮物分離器を備えた反応装置において、撹拌及び窒素の導通下で、Isosolve 231(R)350g及び4,4−ジイソシアナトジフェニルメタン265gを秤入れた。このバッチを120℃に加熱した。次いでジブチルスズジラウラート0.1gを添加し、1時間撹拌した。これを100℃に冷却し、トリメチロールプロパン40gを添加した。この温度を150℃に高め、半時間後に80℃でソルベントナフサ344gを添加し、2時間撹拌した。この得られるポリイソシアナートアダクトは、約3400mPas(23℃)の粘度及び固形物質含有量49%(1g/1h/130℃)を有した。
【0050】
実施例3:本発明によるヒドロキシポリエステルB1の製造
凝縮物分離器を備えた反応装置中に撹拌及び窒素導通下で以下の成分を秤入れた:1,2−プロピレングリコール51g、トリメチロールプロパン188g、無水フタル酸101g及び酢酸亜鉛0.4g。次いで215℃に加熱した。この蒸留の終了後に165℃に冷却し、ジメチルテレフタラート132g及びp−tert−ブチル安息香酸132gを添加した。218℃でこのバッチを最後まで凝縮した。165℃でソルベントナフサ395gで溶解した。このように製造したヒドロキシポリエステルB1は3000mPas(30℃)の粘度及び固形物質含有量43%(1g/1h/180℃)を有した。
【0051】
実施例4:本発明によるヒドロキシポリエステルB2の製造
凝縮物分離器を備えた反応装置中に撹拌及び窒素導通下で以下の成分を秤入れた:1,2−プロピレングリコール43g、トリメチロールプロパン165g、無水フタル酸89g及び酢酸亜鉛0.4g。次いで215℃に加熱した。この蒸留の終了後に165℃に冷却し、ジメチルテレフタラート116g及びp−tert−ブチル安息香酸116gを添加した。218℃でこのバッチを最後まで凝縮した。165℃でソルベントナフサ391g及びジメチルフタラート78gで溶解した。このように製造したヒドロキシポリエステルB1は3200mPas(30℃)の粘度及び固形物質含有量44%(1g/1h/180℃)を有した。
【0052】
実施例5:本発明によるワイヤエナメル1の製造
混合機中に以下のPUR塗料原料を秤入れた:ポリイソシアナートアダクトA1 485g、ヒドロキシポリエステルB1 183g、ソルベントナフサ145g、Vulkacit(R) 576 2g、ジブチルスズジラウラート2g、ブタノール17g、ベンジルアルコール43g。この塗料バッチを4時間強力に撹拌した。ソルベントナフサ121gでもってこのワイヤエナメルを固形物質42%(3g/1h/180℃)及び370mPas(23℃)に調整した。
【0053】
実施例6:本発明によるワイヤエナメル2の製造
混合機中に以下のPUR塗料原料を秤入れた:ポリイソシアナートアダクトA2 572g、ヒドロキシポリエステルB2 253g、ソルベントナフサ169g、Vulkacit(R) 576 2g及びジブチルスズジラウラート2g。この塗料バッチを2時間強力に撹拌した。ソルベントナフサでもってこのワイヤエナメルを固形物質37%(3g/1h/180℃)及び330mPas(23℃)に調整した。
【0054】
塗装結果:
本発明によるワイヤエナメルをSICME SEL450でノズル及び通過数8でもって45m/分で、かつ2Lの増加で0.5mmのワイヤに塗装した。この塗装したワイヤをIEC 60851に応じて試験した。
【0055】
試験結果:
【表1】

【0056】
この結果は、市販のクレゾール性ワイヤエナメルに相応する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)アルキルフェノールでブロックされているブロックトポリイソシアナートアダクト少なくとも1種 10〜60質量%、
B)エステル−及び/又はイミド−及び/又はアミド基を有するヒドロキシポリエステル少なくとも1種 4〜30質量%、
C)炭化水素ベースの有機溶媒 20〜70質量%、
D)更なる助剤及び添加剤 1〜20質量%
からなり、
この成分A)+B)+C)+D)の合計は100質量%に加算される、
クレゾール不含に溶解したポリウレタン−ワイヤエナメル。
【請求項2】
A) A)の割合が、この電気絶縁塗料の質量に対して20〜50質量%、好ましくは25〜45質量%であり、
B) B)の割合が、この電気絶縁塗料の質量に対して、7〜25質量%、好ましくは9〜20質量%であり、
C) C)の割合が、この電気絶縁塗料の質量に対して30〜60質量%、好ましくは35〜55質量%であり、
D) D)の割合が、ポリイソシアナートアダクト及びポリエステルヒドロキシポリオールの質量に対して、5〜18質量%、好ましくは10〜16質量%であり、
この成分A)+B)+C)+D)の合計は100質量%に加算される、
ことを特徴とする請求項1記載のクレゾール不含に溶解したポリウレタン−ワイヤエナメル。
【請求項3】
ポリイソシアナートアダクトA)が、ブチル置換したフェノール、特にsec−ブチルフェノールの混合物でブロックされていることを特徴とする請求項1又は2記載のクレゾール不含に溶解したポリウレタン−ワイヤエナメル。
【請求項4】
成分C)がソルベントナフサを含有するか又はこれからなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のクレゾール不含に溶解したポリウレタン−ワイヤエナメル。
【請求項5】
成分C)がソルベントナフサ及び成分A)のために使用されるブロック化剤を含有するか又はこれからなることを特徴とする請求項4記載のクレゾール不含に溶解したポリウレタン−ワイヤエナメル。
【請求項6】
成分B)の末端ヒドロキシル基の一部がモノカルボン酸、好ましくはtert−ブチル安息香酸でエステル化されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のクレゾール不含に溶解したポリウレタン−ワイヤエナメル。
【請求項7】
成分A)、B)、C)及びD)を相互に混合することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載のクレゾール不含に溶解したポリウレタン−ワイヤエナメルの製造方法。
【請求項8】
銅ワイヤ及び/又はアルミニウムワイヤのコーティングのための、請求項1から6のいずれか1項記載のクレゾール不含に溶解したポリウレタン−ワイヤエナメルの使用。

【公表番号】特表2012−518876(P2012−518876A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550505(P2011−550505)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051182
【国際公開番号】WO2010/094556
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(511204407)エランタス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】ELANTAS GmbH
【住所又は居所原語表記】Abelstr. 43, D−46483 Wesel, Germany
【Fターム(参考)】