説明

環境アレルゲンによって引き起こされるアレルギーを軽減する方法

アレルゲンに対してアレルギー応答を起こしやすい動物の肥満細胞に対するアレルゲンの結合能を特異的に阻害する分子を含む、環境アレルゲンに対するアレルギー応答の症状を軽減するのに適した組成物、並びにこのような組成物を環境アレルゲンの源と接触させることを含む、このような症状を軽減するための方法。キット、パッケージ、薬物、並びに組成物及び方法についての伝達手段も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001]本願は、参照することによって開示内容を本明細書に組み入れる2007年7月9日出願の米国特許仮出願第60/958845号の優先権を主張するものである。
【0002】
[発明の背景]
[発明の分野]
[0002]本発明は、アレルギー又はその症状を軽減又は防止する組成物及び方法に関し、詳細には、環境アレルゲンによって引き起こされるアレルギー又はその症状を軽減又は防止する組成物及び方法に関する。
【0003】
[関連技術の説明]
[0003]アレルギーは、普通なら動物に有害ではない外来性抗原(又はアレルゲン)に対する動物の免疫応答の状態と定義することができる。
【0004】
[0004]環境アレルゲンとして、植物、カビ、動物、及び虫などの生物に由来するアレルゲンを挙げることができる。環境アレルゲンの例として、植物の花粉やカビの胞子を挙げることができる。他の環境アレルゲンは、毛皮を持つ動物、及びダニやゴキブリなどの虫の排泄物に見られる。
【0005】
[0005]環境アレルゲンは、あらゆる年代の人々、特に子供に健康被害を与える。環境にこのようなアレルゲンが存在すると、軽度鼻炎から皮膚の問題(例えば、痒みやじんま疹)、喘息、急性呼吸困難、さらには生命を脅かすアナフィラキシー反応までの症状や応答が起こることがある。
【0006】
[0006]特定の環境アレルゲン、例えば、ナッツ類、特にピーナッツからの食物アレルゲンは、有力なメディアの報道により、一般大衆の大きな注目を集めた。この一般大衆の認識、感作された個体におけるアレルギー応答の病因の理解の向上、及び治療や治療方式の改善にもかかわらず、医学の研究者は、発展途上国及び先進国の双方で、近年、上記した様々な症状及びアレルギー応答の罹患率及び死亡率の両方の異常発生の割合が増加していることに気づいた。例えば、喘息は、すべての年齢群、特に都市部の子供において、過去20年間に亘って増加していると報告されている。顕著な増加の理由は、多数の要因があると考えられるが、屋内及び屋外の両方の環境アレルゲンに対する曝露の増加、一般大衆及び医療従事者の両方による意識の改善による医師の診断数の増加を挙げることができる。
【0007】
[0007]様々な環境アレルゲンの広範な発生にもかかわらず、このようなアレルゲンに対する応答を抑制するための方法として開発された主な方法は、耐性を持たせること及び単純な回避を含む。
【0008】
[0008]回避法は、アレルギー誘発性健康問題の治療又は防止に有効であるとして、国立衛生研究所によって承認されている。残念ながら、個体を「アレルゲンのない山の施設や病院」に移せば環境アレルゲン誘発性の症状が長期的に改善されるが、多くの場合、このようなアレルゲンを完全に回避すること、又はアレルギー患者がこのような施設で費やす時間及びコストをまかなうことは現実的ではない。しかしながら、1つのアレルゲンを回避すれば、たとえ他のアレルゲンを回避できない場合でも、例えば喘息の症状が軽減されることを示した臨床試験により、回避法はある程度奨励されている。したがって、例えば、環境のチリダニアレルゲンの回避により、ダニの数が抑制され、関連するアレルゲン濃度が少なくとも100倍低下し、症状が見事に緩和された。
【0009】
[0009]耐性法では、外来アレルゲンに対する無害又はより生産的応答の確立又は再確立を行う。このような免疫状態は、アレルギー免疫系の反生産性の潜在的に致命的な過剰応答よりも遥かに有利である。耐性誘発法には、アレルゲン免疫療法があり、この療法では、感作動物を、例えば、継続的な注射、経口投与、又は鼻吸引などの制御された方式でアレルゲンに意図的に曝露する。免疫療法は、100年以上に亘って利用され成功しているが、許容レベルの耐性を得るまでに数年かかることがある。耐性を確立するための最近の方法は、アレルゲンペプチドを用いた手法を使用する。一部の適用例では、この手法は、アレルゲンに連結された免疫刺激配列を含む共役分子又はキメラ分子を利用する。近年、Fel D1に共有結合したヒト免疫グロブリン(IgG Fc)の一部を含むキメラ分子を作製する分野で研究が行われた。この分子は、治療中にアレルギー細胞反応性を実質的に無効にするとともに、治療した患者にFel D1耐性を誘導する。キメラ分子は、媒介物の放出を活発に阻害する特性を持つ好塩基球と肥満細胞の複合凝集体となるため、たとえ免疫療法を誘発する用量のアレルゲンでも、あらゆる顕著なアレルギー応答を最小限にする。耐性法は、未処理のCD4+T細胞を、アレルゲンに対する耐性応答を緩和する調節T細胞に変換するように設計された細胞法も利用している。
【0010】
[0010]耐性法は、治療を受ける特定の個体に潜在的に有効であるが、高価で侵襲性であり、時間がかかり、しかも投与に際して医師や免疫学者などの専門家を必要とする。耐性をつける治療は、有害反応や負の結果に関連した一定レベルのリスクも伴う。さらに、アレルゲンに曝される環境の他の動物は、治療の恩恵にあずかれない、すなわち他の動物は完全に区別されている。したがって、回避法は、利用できれば、恩典を付与することができる。
【0011】
[0011]回避法は、具体的な特定可能な点源を有するアレルゲンに対して最も容易に利用することができる。チリダニに加えて、ペットアレルギーも、ペット源まで特に追跡しやすい。ネコアレルギーの場合、複数のアレルゲンが存在しうるが、1つの特定のアレルゲン、Fel D1が感作された個体の大部分のアレルギー応答の源であることが判明している(Ohman J.L.、Lowell F.C.、及びBloch K.J.ら、(1974)、「Allergens of mammalian origin.III.Properties of major feline allergen.」、J.Immunol.、113:1668−77)。アレルゲンFel D1は、ネコの皮膚の皮脂腺から出たり、毛づくろいの際にネコの唾液を通じて排出される。これが、ネコアレルギーの主な原因である。
【0012】
[0012]したがって、米国ではネコの所有権が議論されているが、ネコアレルギーが、ネコが動物保護施設に送られる主な理由となっている(Scarlettら、J.Appl.Animal Welfare Sci.、2(1):41−57、1999年)。ネコのいる世帯の研究により、Fel D1が広範囲に存在していることが示された。アレルゲンは、家のほとんどどこにでも存在し、ベッドの96.6%、寝室の床の96.9%、居間の床の96.1%、そしてソファの97.9%で確認されている(Geanyら、Pediatrics、116(2):2005年8月)。家でネコを飼っている生徒の衣服を家の外(学校内)で検査したら、Fel D1抗原が付着していることが分かった。したがって、この環境アレルゲンは、ネコのいる家庭で生活している感作された個体だけではなく、アレルギーのあるヒト集団全体にかなりのリスクを与える(Gerge&Dreborg、Ped.Allergy.Immun.、9(1):25−30、1998年)。
【0013】
[0013]Fel D1アレルゲンは、家庭用ELISA試験によって容易に検出することができる。6歳〜19歳の子供又はそれよりも年上の約14%がネコに対してアレルギーがある(NIH新聞発表)。Fel D1の回避は、所有者のアピール、ペットの所有権、及び子供や感作したペット所有者の健康に役立つであろう。
【0014】
[0014]しかしながら、回避は、一般的な概念として、実際的手段によって実施するのが困難である。Fel D1の量の低減は、たとえわずかな低減であっても、感作した個体の健康にかなり良い影響を与え、家で人が感作したことによるペット廃棄が最小限になるであろう。今日まで、Fel D1を低減する方法では、例えば、アレルギーの人をネコが居住していない清潔な空間に保つこと、又はネコを定期的に入浴させてFel D1の分散を最小限にすることによって物理的隔離又は除去を行う。
【0015】
[0015]環境からFel D1を物理的に除去するための別の手法として、Fel D1を産生しないように遺伝子が組み換えられたネコが現在市販されている。このような遺伝子組換えネコは、アレルギー誘発型のFel D1を産生する遺伝子が欠失しており、代わりに異なる非アレルギー誘発性タンパク質を産生する。この手法は、有効であることを証明できるが、試験があまり行われておらず、遺伝子組換えネコの長期の健康及び活力については一般には全く知られていない。さらに、このような遺伝子組換えネコは、購入できる種類及び選択が極めて限定されている。加えて、このようなネコは、約3,000ドル〜約5,000ドル(USドル)と極めて高価である。
【0016】
[0016]環境アレルゲンの問題に取り組むための方策を考える助けとして、免疫系におけるアレルギー反応を理解することが有用である。アレルギー応答は、アレルゲン特異的IgE抗体の産生をもたらす感作で始まる。例えば、アレルゲンを吸い込むと、気道粘膜の抗原提示細胞が、内部移行し、アレルゲンを処理する。次いで、アレルゲンが、それらの細胞の表面に発現され、他の免疫細胞、特にTリンパ球に提示される。結果として、Bリンパ球が、抗体分泌形質細胞に形質転換される。アレルギー応答では、形質細胞は、特定のアレルゲンに対して特異的に結合するIgE抗体を産生する。循環に入ると、IgEは、肥満細胞、好塩基球、ランゲルハンス細胞、及び活性化された単球の表面の高親和性受容体に結合する。このような結合は、同じアレルゲンとのさらなる相互作用のために、IgEのアレルゲン特異的受容体部位から離れてこの部位を空ける。
【0017】
[0017]アレルゲンに再び曝されると、アレルゲンのIgEへの結合により、免疫系からの迅速且つ強い応答が始まる。アレルゲンによる肥満細胞/好塩基球結合IgE抗体の架橋結合が、細胞内シグナル伝達カスケードを開始させ、これにより免疫細胞の脱顆粒が生じ、同時に炎症媒介物が放出される。肥満細胞は、結合していないIgE受容体部位の数を一定に保つために、それらのIgE受容体発現を調節する。循環しているIgE抗体が、特定のアレルゲンに出会うのを待っているこれらの受容体部位に結合する。
【0018】
[0018]アレルゲン曝露に対する免疫系の応答は、アレルゲンに曝露されて15分以内に起こる即時過感受性又は初期相反応と、第1相の症状が消えてから4〜6時間後に発生し、数日〜数週間も続く第2又は遅発相反応に分類することができる。初期相反応は、ヒスタミン、プロスタグランジン、ロイコトリエン、及びトロンボキサンを含む肥満細胞によって放出される媒介物によって特徴付けられる。これらの媒介物は、IgE及び肥満細胞に局在する組織のアレルギーの応答特性を引き起こす。くしゃみ、腫張及びうっ血、鼻詰まり、気管支収縮、咳、及び喘鳴がよく知られている影響である。遅発相反応は、気管支反応、浮腫、及び炎症の増加を引き起こす肺における細胞浸潤、線維素沈着、及び組織破壊によって特徴付けることができる。したがって、アレルゲン、IgE、及び肥満細胞の相互作用が、免疫系の応答の中心であり、肥満細胞媒介物の放出を誘発し、これにより初期相反応及び遅発相反応の両方が直接引き起こされる。
【0019】
[0019]国際出願第07113633A2号に、少なくとも1つのFel D1ポリペプチド若しくはその断片又はFel D1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物をネコに投与することによって、ネコから出るFel D1の量を低減する方法が開示されている。米国特許出願公開第2006000474180号に、免疫受容体チロシン系抑制性モチーフ(ITIM)を含む天然IgG抑制性受容体に特異的に結合できる別のポリペプチド配列にIgGヒンジ領域を介して連結されたFel D1の配列などのアレルゲン配列を含む融合タンパク質が開示されている。国際出願第06097530A2号に、第1の付着部位を備えたウイルス様又はウイルスコア粒子と、第2の付着部位を備え、これらの付着部位を介して共有結合した特異的ネコタンパク質抗原を含む、ネコアレルギーを治療するための薬物が開示されている。
【0020】
[0020]抗体生産方法の近年の進展により、感作した個体にアレルギーを引き起こす環境抗原を回避するための代替手段が可能となるであろう。例えば、乳を用いた抗体系及び卵を用いた抗体系、例えば、米国特許出願公開第20030003133A1号に、ネコのふけ及び他のアレルゲンに対する経口耐性を誘発するためにアレルゲンの担体として乳を使用することが開示されている。
【0021】
[0021]したがって、環境アレルゲンを軽減して、アレルゲンに曝されるとこのような応答が起きやすい動物におけるアレルギー応答又はこのような応答の症状を軽減する、最小限にする、又は防止さえするのに有用な組成物及び方法が当分野で要望されている。
【0022】
[発明の概要]
[0022]したがって、本発明の目的は、環境アレルゲンによって引き起こされるアレルギーを軽減する、最小限にする、又は防止することにある。
【0023】
[0023]本発明のさらなる目的は、感作動物のアレルギー反応の少なくとも1つの症状を軽減する、最小限にする、又は防止するための組成物及び方法を提供することにある。
【0024】
[0024]本発明のさらに別の目的は、環境アレルゲンに対するアレルギー応答を軽減又は防止するのに有用な組成物、食品又は食物組成物、及び他の化合物、並びにデバイスの組合せを含むキットの形態の製造品を提供することにある。
【0025】
[0025]1つ又は複数のこれら及び他の目的は、アレルゲンに対してアレルギー応答を起こしやすい動物の肥満細胞に対するアレルゲンの結合能を特異的に阻害する少なくとも1つの分子を利用した新規の組成物及び方法を用いて達成することができる。
【0026】
[0026]これらの目的、他の目的、及びさらなる目的は、環境アレルゲンに対する動物のアレルギー応答を軽減する方法を用いて達成することもできる。この方法は、環境のアレルゲンの源を、アレルゲンに対してアレルギー応答を起こしやすい動物の肥満細胞に対するアレルゲンの結合能を阻害する分子を含む組成物と接触させることによって、アレルゲンに対してアレルギー応答を起こしやすい動物のアレルゲンに対する曝露を最小限にし、これにより環境のアレルゲンに対する動物のアレルギー応答を軽減することを含む。
【0027】
[0027]本発明の他の目的及びさらなる目的、特徴、及び利点は、当業者には明らかになるであろう。
【0028】
[発明の詳細な説明]
[定義]
[0028]本明細書で用いる用語「アレルギー」は、「アレルギー応答」又は「アレルギー反応」と同義である。これらの各用語は、普通なら動物に有害でない外来性抗原(又は「アレルゲン」)に対して特異的な動物の免疫応答の状態を指す。アレルギー応答の「症状」は、例えば、分子レベル(タンパク質、転写物、又は遺伝子の活性若しくは発現の測定を含む)、細胞レベル、器官レベル、全身レベル、又は生物レベルにおける上記の免疫応答のあらゆる程度を指す。このような症状は、1つ又は複数のこのようなレベルを含むことができる。症状の例として、一般化された現象、例えば、炎症、呼吸困難(respiratory complaint)、腫張、又は通常はアレルギー、鼻炎、浮腫、及びアレルギー性皮膚障害(アトピー性皮膚炎(例えば、湿疹)、皮膚の掻痒(例えば、じんま疹)及び血管性浮腫、及びアレルギー性接触皮膚炎を含むが、これらに限定されない)に関連した苦痛を挙げることができる。アレルギー応答の「症状」であるより具体的な現象の例として、あらゆる測定可能又は観察可能な変化、例えば、細胞レベルにおいて、限定するものではないが、細胞集団における局所的又は全体の変化、好酸球増加症、免疫細胞(例えば、肥満細胞及び/又は好塩基球)の動員及び/又は活性化、抗原提示細胞(限定するものではないが、FcεRI保有樹状細胞)の変化、免疫学的カスケードにおける1つ又は複数のステップの測定値又は観察結果を含む細胞内又は分子の変化、アレルギー応答を媒介する細胞内化合物(例えば、メディエーター)の放出、1つ又は複数のサイトカイン(例えば、IL−3、IL−5、IL−9、IL−4、又はIL−13)又はその関連化合物又はアンタゴニストの変化を挙げることができる。当業者であれば、本明細書で定義する特定の症状は他の症状よりも容易に測定され、一部の症状はその主観的評価又は自己評価によって決定されることを理解できよう。他の症状の場合、客観的に変化を評価するための便利で迅速なアッセイ又は測定法が存在する。
【0029】
[0029]本明細書で用いる用語「動物」は、あらゆる種又は種類、例えば、トリ、ウシ、イヌ、ウマ、ネコ、ヤギ(hicrine)、マウス、ヒツジ、ブタ、及びサルなどの動物を含め、ヒト及び非ヒト動物の両方を含む。本明細書では、ある文脈で記載した「動物」は、環境抗原に対してアレルギー応答が起きやすい又は起こしている、又はアレルゲン曝露時のこのようなアレルギー応答の少なくとも1つの症状が出やすい又は出ている、あらゆる動物を指す。別の文脈では、「動物」は、源又は環境アレルゲンの源であるあらゆる動物を含みうる。文脈が意図する用語のどの使用法からも、アレルギーを持つ動物か又はアレルゲンの源である動物かは明らかであろう。
【0030】
[0030]動物は、様々な形で環境アレルゲンの源となりうる。例えば、アレルゲンは、髪、皮膚、皮膚細胞、例えば、死んだ、瀕死の、剥がれた皮膚、皮膚細胞、又は皮膚の砕片などと共に又はこれらの中に入って撒き散らされることがある。このようなアレルゲンには、様々な動物の鱗屑も含まれうる。加えて、便及び/又は尿を含む動物からの廃棄物は、感受性個体に対する1つ又は複数のアレルゲンを含むことがある。また、動物は、唾液などの他の体液中に特定のアレルゲンを産生及び/又は分泌することもある。唾液内に含まれる、唾液中に産生される、又は唾液によって伝わる又は散らばるアレルゲンを、本明細書では、時に「経口分散」アレルゲンとも呼ぶが、このようなアレルゲンは、他の非経口手段でも分散されることがある。動物はまた、虫、微生物(例えば、細菌、酵母、又はカビ)、寄生虫などの特定の有害生物を保有、保持、又は運搬することがあり、これらのいずれもが、アレルゲンの直接の源となったり、より多くの皮膚、髪、又は他の潜在的なアレルゲンを直接又は間接的に動物から出させたり、又は1つ又は複数のアレルゲンを産生するように動物の健康状態を変化させることがある。そして、多くの場合、動物の毛は、自体公知の高いアレルゲン性ではないが、このような毛は、花粉、ダスト、及びカビなどのアレルゲンの源となって、環境に撒き散らされることがある。本明細書に開示する方法は、イヌやネコなどのペット動物の存在に対するアレルギー応答を緩和するのに特に有用である。
【0031】
[0031]本明細書で用いる用語「環境」は、それぞれ本明細書で「環境」として用いることができる動物の局所環境、例えば、人家、部屋、車、職場、ホテル、庭、及び車庫などを指す。さらに、ペット、虫、又は植物などのアレルゲンの源に曝されるあらゆる領域も、本明細書の対象となる環境とみなすことができる。環境は屋内である場合多いが、本明細書では、環境とすべき部分的又は完全に開放された又は屋外の制限領域、例えば、パティオ、デッキ、踊り場、ベランダ、東屋、又はポーチなどは、除外するものではなく、本明細書の対象となる環境の一部である。環境はまた、動物、植物、虫、又は他のアレルゲンの源の一部又はすべても含みうる。例えば、アレルゲンの源である動物に対して組成物を供給する又は経口摂取用の治療を行うことは、アレルゲンに対してアレルギー性又はアレルギー反応しやすい別の動物の「環境」を治療することになる。
【0032】
[0032]本明細書で用いる用語「アレルギー治療」は、本明細書では時には「アレルギーの治療薬」とも呼び、動物の抗原に対するアレルギー応答を軽減する、最小限にする、防止する、又は治療するのに有用、又はこのような動物のアレルギーの複数の症状又は少なくとも1つの症状を緩和するのに有用なあらゆる化合物、組成物、食物、又は薬物を意味する。
【0033】
[0033]用語「個体」は、あらゆる種又は種類の個々の動物を意味する。
【0034】
[0034]本明細書で用いる用語「抗体」は、あらゆる種からのあらゆるタイプのポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体、並びにFv、Fab、Fab’、F(ab’)などの免疫グロブリン断片、又は抗原と分子特異的に相互作用する(例えば、特異的結合を実証する)他の抗体結合抗体断片、配列、又は部分配列を含む。
【0035】
[0035]用語「単一パッケージ」は、キットの構成要素が、1つ又は複数の容器の中又は外に物理的に結合され、製造、供給、販売、又は使用のための単位とみなされること意味する。容器の例として、限定するものではないが、あらゆるタイプ、デザイン、又は材料のバッグ、箱又はボール箱、ビン、パッケージ、上包み、収縮包装、取り付けられた要素(例えば、ステープル留めされた、接着された等)、又はこれらの任意の組合せを挙げることができる。例えば、単一パッケージキットは、製造、供給、販売、又は使用のための単位とみなされるように物理的に結合された個々の構成要素及び/又は食物組成物の容器とすることができる。
【0036】
[0036]用語「仮想パッケージ」は、キットの構成要素に、例えば、1つの構成要素を含むバッグ又は他の容器に入れる他の構成要素の入手方法を使用者に指示する1つ又は複数の物理的又は仮想キットの使用案内と、ウェブサイトを閲覧して記録されたメッセージを受け取るか又はファックスバックサービスを受ける、仮想メッセージを見る、又はオペレータ又はインストラクターに連絡を取って、例えばキットの使用方法、又はキットの1つ又は複数の構成要素についての安全性又は技術情報の説明書を使用者が得られるようにする使用案内が付属していることを意味する。仮想キットの一部を提供できる情報の例として、物質の安全性データシートなどの安全性の情報、毒物管理情報、潜在的な有害反応及び臨床試験結果などについての情報、食物組成物又はカロリー組成物などの食事情報、アレルギーの治療についての一般情報、又は特定の環境アレルゲンが存在しない又は比較的少ない環境に維持すること又は環境の特定のアレルゲンを最小限にすることについての一般情報を挙げることができる。
【0037】
[0037]本明細書に記載するすべてのパーセンテージは、特段の記載がない限り、乾物基準における組成物の質量で表す。当業者であれば、用語「乾物基準」は、組成物中の成分の濃度を組成物中のすべての遊離水分を除去した後に測定することを意味することを理解できよう。
【0038】
[0038]本明細書で使用する範囲は、長さを設定して範囲内のすべての値を記載することを避けるために、本明細書では簡潔明瞭に使用する。範囲内のあらゆる適当な値は、必要に応じて、範囲の高い値、低い値、又は限界値として選択することができる。
【0039】
[0039]本明細書で表す投与量は、特段の記載がない限り、1日当たりの体重1kgに対するmg(mg/kg/日)の単位である。
【0040】
[0040]用語「微生物」は、細菌、カビ及び他の菌類、及び酵母を意味する。
【0041】
[0041]本明細書及び特許請求の範囲で使用する用語は、文脈に特段の記載がない限り、単数形は複数形を含み、複数形は単数形を含む。したがって、「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その(the)」の指示内容は、一般に各用語の複数形も含む。例えば、「1つの仔犬」、「1つの方法」、又は「1つの食物」への言及は、「複数の仔犬」、「複数の方法」、又は「複数の食物」の複数形を含む。本明細書では、例えば、「1つの抗体」への言及は、このような複数の抗体を含み、「複数の部分(pieces)」への言及は1つの部分を含む。同様に、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」と記載した場合は、排他的ではなく包含的に解釈するべきである。
【0042】
[0042]本明細書に開示する方法、組成物、及び他の進展は、当業者には分かるように、様々に変更できるため、本明細書に開示する特定の方法、プロトコル、及び試薬に限定されるものではない。さらに、本明細書で使用する専門用語は、特定の実施形態のみを説明することを目的としており、開示又は請求する範囲に限定されることを意図するものでも限定するものでもない。
【0043】
[0043]特段の記載がない限り、本明細書で用いるすべての技術用語、科学用語、当分野の用語、及び頭字語は、本発明の分野(複数可)又は用語が用いられる分野(複数可)の一般的な技術者が共通に理解する意味を有する。本明細書に開示する組成物、方法、製品、又は他の手段若しくは物質と同様若しくは同等のすべてのものを、本発明の実施に用いることができ、好適な組成物、方法、製品、又は他の手段若しくは物質を本明細書に記載する。
【0044】
[0044]本明細書で言及又は参照するすべての特許、特許出願、刊行物、及び他の参照文献は、支配法によって許容される範囲まで、参照することによって本明細書に組み入れる。これらの文献の参照は、それらの明細書での主張を単に要約することが目的である。このようなどの特許、特許出願、刊行物又は参照文献、又はそれらのどの部分も、関連性のある、重要な、または、先行技術と認められるものではない。関連性のある、重要な、または先行技術としてのこのような特許、特許出願、刊行物、及び他の参照文献のあらゆる主張の正確性及び妥当性に対する異議申立ての権利は明確に留保される。
【0045】
[発明]
[0045]一般に、様々な態様では、本発明は、感作された動物の環境に存在するアレルゲンに対するアレルギー又はアレルギー応答の症状を軽減又は防止するのに有用な組成物、方法、デバイス、及びキットを提供する。このような組成物は、一般に、感作された動物の肥満細胞にアレルゲンが結合するのを防止する分子を提供する。ある好適な実施形態は、アレルゲンの源を治療するためにアレルゲンに特異的に結合できる分子、例えば、アレルゲンに特異的な抗体を用いる。例えば、このような分子は、アレルゲンが存在する表面、又は特定の環境の空気、又はアレルゲンの源である動物を処理するために用いられる。ある好適な実施形態では、アレルゲンは、動物の口から散布され、組成物は、経口的に分散されるアレルゲンの源である動物に対して食物組成物として提供する。組成物中の分子は、環境に放出される前に動物の口内に存在するアレルゲンに特異的に結合して、遊離アレルゲンが感受性動物の環境に放出されるのを防止する、又は最小限にする。結合型のアレルゲンは、感受性動物の免疫系の肥満細胞に結合できないため、症状又はアレルギー応答を誘発することができない。例えば、多くのヒトは、ネコの口から分泌されるアレルゲンに対してアレルギーを持っている。ネコは、自身の体を舐め、それらの環境内にある物体と接触し、アレルゲンをこのような物体にばら撒く。ヒトは、アレルゲンが付着した物体に触れると、アレルギー応答を起こす。本発明の組成物は、ネコの口に入れられると、アレルゲンがヒトと接触する前にアレルゲンに結合するため、たとえヒトがこの結合したアレルゲンに曝露されても、アレルゲンによるヒトでのアレルギー応答が生じない。結合したアレルゲンは、ヒトの肥満細胞と相互作用してアレルギー応答を引き起こすことができない。
【0046】
[0046]より具体的には、第1の態様では、本発明は、ある環境のアレルゲンに対するアレルギー応答の少なくとも1つの症状を軽減するのに適した組成物を提供する。このような組成物は、好ましくは、アレルゲンに対してアレルギー応答を起こしやすい動物の肥満細胞に対するアレルゲンの結合能を阻害する少なくとも1つの分子を含む。本明細書で用いる「少なくとも1つの症状を軽減する」は、アレルギー応答の症状が出ないように症状が出る前に症状を軽減して、アレルギー応答を防止することを含む。
【0047】
[0047]いくつかのタイプの分子は、本明細書に記載する組成物に一致して有用である。ある実施形態では、このような分子は、高度の特異性でアレルゲンに結合する。例えば、アレルゲンの抗体、アプタマー、及びアゴニスト/アンタゴニストは、本発明に有用である。このような分子の一部、例えば、抗体の抗原結合断片(Fab)も本発明に有用である。アレルゲンに対する結合特異性を維持したあらゆる分子又はその一部や断片は、組成物の中に含める分子として用いることができ、このような分子が、例えば共有結合によって互いに連結された2つ以上の部分からなるキメラである場合は、分子の一部として用いることができる。
【0048】
[0048]ある実施形態では、本組成物は、さらに、別の機能性を付与するために1つ又は複数の追加の要素又は成分を含む。したがって、香味料、香料、安定剤、表面活性剤、結合剤、又は界面活性剤の1つ又は複数を、様々な実施形態の組成物に含めることができる。上記したように、本組成物は、一般に、アレルギーを持つ動物のワクチン接種又は直接の治療を意図していないが、特定の実施形態でのこのような可能性を排除することも意図していない。むしろ、本組成物は、一般に、環境の全般的な処理、又は環境アレルゲンの点源などの1つ又は複数の特定の源の処理に用いられる。特定の実施形態では、組成物は、例えば、食物と共に又は食物としてアレルゲンの源である動物又は虫に経口投与する。
【0049】
[0049]ある実施形態では、組成物は、アレルゲンがヒト、イヌ、ネコ、ダニ、ゴキブリ、植物、又は微生物に由来する場合に有用である。他の種類及び源のアレルゲン、例えば、具体的に列記しなかった他の動物、他の虫、又は他の源すべてに由来するアレルゲンは、本明細書に記載する組成物で対応することができる。
【0050】
[0050]ある実施形態では、アレルゲンは、Fel D1、Can f1、Der p1、Der p2、Bla g1、Bla g2、Asf 1、Ara h1、Ara h2、又はAra h3である。これらのアレルゲンは、家、職場、ホテル、レストラン、ショッピングモール及び小売店センター、学校、及び他の公共又は私設空間の環境でのこれらのアレルゲンの普及又はこれらのアレルゲンに対する一般大衆の実際又は潜在的な暴露の点で顕著である。
【0051】
[0051]ある実施形態では、分子の少なくとも一部が、アレルゲンに対して特異的である。別の実施形態では、分子の少なくとも一部は、アレルゲンに特異的に結合する抗体、アプタマー、アゴニスト、又はこれらいずれかの一部を含む。抗体、又は抗体の結合部分や断片、又は他の結合特異的タンパク質又はペプチドを含むある実施形態では、抗体又は他の結合分子は、生物工学的手段、例えば、微生物の大量発酵、動物の乳や卵などの容易に手に入る動物の生産物での生産、又は植物や穀物の生産(例えば、いわゆる「植物抗体」)によって生産される。このような抗体製造のための大量生産技術により、本発明の組成物に使用する抗体又は他の分子の経済的且つ潤沢な供給が容易になる。当業者であれば、結合分子を十分な量で生産する生産技術が利用可能であり、このような生産技術は、当分野で既知の技術を用いて導入し、記載した組成物に経済的に利用できることを理解できよう。
【0052】
[0052]好適な実施形態では、抗体は、卵の抗体の産生を引き起こす抗原でニワトリなどのトリを免疫化することによって生産する。抗体は、卵から分離して動物に投与するか、又は卵又は卵黄などの卵の一部を、動物に投与するのに適した他の組成物又は食物に直接適用するか又は混合することができる。トリの卵を用いて抗体を調製する方法及び抗体を含むトリの卵を特に食物組成物に含めて投与する方法は、当業者には公知であり、例えば、本明細書で言及した米国特許第6413515号、米国特許第5080895号、米国特許第4748018号、及び参考文献に開示されている。
【0053】
[0053]特定の実施形態では、卵に抗Fel D1抗体を産生させる抗原を用いて、トリ、好ましくはニワトリを免疫化する;抗Fel D1抗体を含むトリの卵を収集し、任意選択で卵を処理して抗体を濃縮する;このような卵又は処理した卵を、ネコに適した食物に混合するか又は適用する;抗体を含む食物をネコに与える;そして抗体がネコの口内の抗Fel D1抗原と複合体を形成し、これによりアレルギーを持つ動物が、ネコ又はネコの環境、特にネコが舐めた又は他の形で接触して抗Fel D1抗原が残った物体と接触した場合に、抗Fel D1抗原の抗原性を中和して、アレルギー又はアレルギーの症状を軽減又は防止する。
【0054】
[0054]別の実施形態では、組成物は、少なくとも一部がカオトロピック(choatropic)剤、界面活性剤、又は塩である分子を含む。さらに別の実施形態では、この分子は、pHを変更する。さらに別の実施形態では、分子がアレルゲンの肥満細胞への結合に関与するタンパク質エピトープを破壊する組成物を提供する。この分子は、タンパク質分解活性、結合活性化改変タンパク質複合体(binding−activated modified protein complex)、又はアレルゲンに不可逆的に結合するリガンドを含む。
【0055】
[0055]ある実施形態では、組成物は食用である。この組成物は、動物に与えるためにあらゆる種類の食物と容易に混合することができる。世話をする人は、その管理下で動物に食物と共に組成物を投与することができる。組成物は、動物に必要な多量養素及び微量養素の一部を含むか又は供給するように製剤することができ、且つ動物の通常の食事の代用として、又は補助食として提供することができる。組成物は、スナック食品、トリート、咀嚼する物、又は通常摂取の食物の他の追加物として、これらに添加して、又はこれらと混合して提供することができ、且つ1日当たり、1週間当たり、又は他の時間枠当たり1回又は複数回提供するように製剤することができる。組成物はまた、例えば、動物の飲料水の中に入れて又は飲料水と一緒にして動物の液体摂取の添加物として提供することもできる。明確にするために、このような食用組成物は、例えば、経口ワクチンとして、又はアレルゲンに対する一定の耐性を経口的に誘発するために、アレルギー応答をする動物には与えないことに留意されたい。むしろ、本明細書に記載する食用組成物は、源又は環境アレルゲンの源である動物に直接与えるのが好ましい。
【0056】
[0056]好適な実施形態では、アレルゲンは、Fel D1であり、分子は、Fel D1に特異的な抗体を含む。このような実施形態の食用組成物の場合には、組成物は、食物や補助食品として、又は飲料水の中に入れてネコに与える。Fel D1抗原は、例えば、ネコの唾液の中又は唾液と共にとにかく著しく経口的に分散される。本明細書に記載する組成物の経口摂取により、アレルゲン誘発型のFel D1の局所分散を低減する、好ましくは実質的に低減する、又は完全に排除する。好ましくは、組成物は、分散される前か直後にアレルゲンに結合する、すなわちアレルゲンを不活化させる。
【0057】
[0057]ある実施形態では、分子は、キメラタンパク質を含む。ある実施形態では、分子は、IgG分子の少なくとも一部と融合したアレルゲンに対する抗体の少なくとも結合部分を含む。例えば、IgG分子の少なくとも一部と融合した、Fel D1に特異的に結合する抗Fel D1抗体の少なくとも一部。このような分子は、潜在的に特に有用である。なぜなら、このような分子は、環境アレルゲンに結合して肥満細胞との相互作用を防止するのに加えて、環境から感作された動物内に導入されると、特に分子のIgG部分がアレルギーを持つ動物と同じ種に由来する場合、アレルギーを持つ動物におけるある程度の耐性の誘発を助けるためである。したがって、ペットのネコに対してアレルギーを持つ人の家を処理する場合、キメラ分子が環境のFel D1を不活化させ、感作された人が複合体の又は結合したFel D1に曝露されると、IgG部分及び結合したFel D1抗原の存在によってアレルゲンに対するある程度の耐性が誘発される可能性がある。
【0058】
[0058]別の態様では、食物に混合又は添加するのではなく、組成物は、本発明の組成物を含む食品として提供される。ある実施形態では、食品は、家庭のペット用に製剤され、アレルゲンは、ペットの口から分散されるアレルゲンであり、分子は、抗原に特異的に結合する抗体の少なくとも一部を含む。好適な実施形態では、ペット用食品は、ネコ用に製剤される。ネコ用に製剤された食品の一例では、組成物で結合されるアレルゲンは、Fel D1である。一部の例では、同じ源に由来する複数のアレルゲンを、1つの食物組成物で対象にすることができる。上記したように、食物組成物は、1日に1回又は複数回、1週間に1回又は複数回、定期的又は不定期に与えることができる。食物組成物は、動物の通常の食事の代用品として、又は補助食品として製造することができる。特定の実施形態では、食物組成物は、トリート、咀嚼する物、又はスナックなどの形態である。食物組成物は、流体の形態で提供する、又は飲用流体と共に提供することができる。例えば、食物組成物は、動物の飲料水又は摂取用の他の流体又は飲料に容易に溶解するように製剤するか、懸濁する形態に製剤するか、又は混合するように製剤することができる。このような目的のために、固体、錠剤、粉末、液体、濃縮液、ゲル、又は動物に投与する前に希釈するのに適した又は直接の使用に適した他の形態として製剤するのが有用であろう。一部の適用例では、食物組成物は、動物に与えると動物が頻繁又は定期的に該組成物を積極的に舐めて、アレルゲンが感受性個体の肥満細胞に結合するのを防止する分子に動物が頻繁に曝露されるように、トリート又は「舐め物(lick)」又はブロックの形態で提供することができる。
【0059】
[0059]別のいくつかの態様では、本発明は、環境アレルゲンに対するアレルギー応答の少なくとも1つの症状を軽減する、最小限にする、又は防止する方法を提供する。この方法は、一般に、アレルゲンに結合して、アレルゲンによってアレルギーが起きやすい又は起きる動物にアレルギー反応をアレルゲンが誘発するのを防止する1つ又は複数の抗体又は他の分子と環境アレルゲンを接触させることを含む。
【0060】
[0060]したがって、ある実施形態では、本発明は、アレルゲンに対してアレルギー応答を起こしやすい動物の環境のアレルゲンに対するアレルギー応答を軽減する方法を提供する。この方法は、動物の肥満細胞に対するアレルゲンの結合能を阻害する分子を含む組成物にアレルゲンの源を接触させることを含む。この分子は、アレルゲンに結合して、環境アレルゲンに対する動物のアレルギー応答を防止又は軽減する。基本的に、この方法は、アレルゲンに対してアレルギー応答を起こしやすい動物のアレルゲンに対する曝露を最小限にすることを含む。
【0061】
[0061]ある実施形態では、アレルギー応答を起こしやすい動物は、ヒト、ネコ、又はイヌである。好ましくは、このような動物はヒトである。
【0062】
[0062]ある実施形態では、対象となる環境は、家、職場、宿泊施設、庭、小売施設、又はこれらのいずれかの部分である。ある実施形態では、対象となる環境は、上記のすべてであり、アレルゲンの源は、人家のペットやペストなどの異なる動物である。
【0063】
[0063]別の実施形態では、アレルゲンは、ヒト、イヌ、ネコ、虫、植物、又は微生物に由来する。好適な実施形態では、アレルゲンは、Fel D1、Can f1、Der p1、Der p2、Bla g1、Bla g2、Asf 1、Ara h1、Ara h2、又はAra h3である。
【0064】
[0064]ある実施形態では、分子は抗体である。組成物と同様に、この抗体は、本方法に使用するために実用的な量の抗体を生産するいくつかの手段のいずれかによって生産することができる。好適な実施形態では、抗体は、ニワトリが産む卵に抗体を産生させる抗原でニワトリを免疫化することによって生産する。卵は、動物に投与するのに適した食物又は他の組成物に直接適用するか又は混合することができる。
【0065】
[0065]ある実施形態では、本方法に使用するための組成物は、エアロゾル、液体、ゲル、半固体、固体、又は粉末の形態である。特定の実施形態では、この組成物を、例えば、吹付け、ミスチング、擦り付け、振動、ダスチング、付着、又は表面に適用する他の方法によって環境の表面に適用する。ある実施形態では、このような表面は、アレルゲンの源である動物の表面である。このような適用例では、このような処理は、例えば、皮膚又は毛髪の処理として、例えば、クリーム、ローション、軟膏、保湿剤、ゲル、石鹸、シャンプー、消臭剤、粉末剤、口腔洗浄剤、マウスウォッシュ、歯磨き剤、又は研磨剤、ペースト剤、又は洗浄剤などを含む他の口腔又は歯の処理として適用することができる。
【0066】
[0066]ある実施形態では、アレルゲンは、動物に由来し、組成物は、その動物が摂取する。ある実施形態では、動物は、環境におけるアレルゲンの唯一の又は主な源である。ある実施形態の動物は、アレルゲンに対してアレルギー応答を起こしやすい動物とは異なる種である。
【0067】
[0067]好適な実施形態では、アレルゲンは、ネコ由来のFel D1であり、分子は抗Fel D1抗体であり、組成物はネコが摂取する。
【0068】
[0068]ある実施形態では、分子は、アレルゲンに対する抗体の少なくとも結合部分とIgGなどの免疫タンパク質の少なくとも一部を含むハイブリッド分子である。このような実施形態では、免疫タンパク質は、アレルゲンとは完全に無関係とすることができる。例えば、ある実施形態では、アレルゲンは、ネコアレルゲン、特にネコアレルゲンFel D1であり、アレルギー応答する動物はヒトである。このような目的のために、この実施形態では、分子は、Fel D1に対する抗体の少なくとも結合部分とヒトIgGの少なくとも一部とのキメラである。
【0069】
[0069]さらなる態様では、本発明は、組成物を用いて環境アレルゲンを処理するのに適したキットを提供する。ある実施形態では、キットは、キットの構成要素に適した別個の容器、単一パッケージ、又は仮想パッケージの別個の容器の中に少なくとも1つの組成物を含む。この組成物は、アレルゲンに対してアレルギー応答を起こしやすい動物の肥満細胞に対するアレルゲンの結合能を阻害する少なくとも1つの分子と、(1)少なくとも1つの環境アレルゲンの源である動物が摂取するのに適した1つ又は複数の成分、(2)パラタント(palatant)、香味料、香料、又は組成物を生成するための他の添加物、又は用意又は消費する前、最中、又は後で、消費者、購入者、又は世話をする人にとって心地よい又は魅力的である食物又は飲料と混合した組成物、(3)健康を増進する、又はアレルゲンの源である動物によるアレルゲンの産生、輸送、又は分散を最小限にする1つ又は複数の栄養素又は栄養補助食品、(4)アレルギー又はアレルギー症状を防止又は治療するのに適した1つ又は複数の薬物又は他の物質、(5)例えば、本明細書に記載する方法に従って、特に、感受性動物のアレルギー応答を緩和又は防止するためのキットの組成物及び任意選択の構成要素の使用説明書のうちの少なくとも1つとを含む。キットが仮想パッケージを含む場合、キットは、1つ又は複数のキットの物理的構成要素と組み合わせられた仮想環境の説明書に制限される。
【0070】
[0070]ある実施形態では、キットは、ペットフードのパッケージなどの食物組成物に取り付けられた袋又はポーチの中に入った、本明細書に記載した食用形態の組成物と、食用の組成物を食物に混ぜるため、この組成物を食物に添加するため、又は食物を摂取する動物に投与される飲料水などの流体に組成物を溶解、混合、又は添加するための説明書とを含む。別の実施形態では、キットは、アレルゲンに結合する分子を含む本明細書に記載した食物組成物と、使用説明書とを含む。別のキットでは、濃縮された形態の組成物と、処理するアレルゲンの源である動物に与える食物又は流体と混合、添加、希釈、又は溶解するのに適した量の濃縮物を簡便に測定するための器具又はデバイスとを提供する。このようなキットの現在好適な実施形態では、アレルゲンはFel D1であり、提供する組成物は、ネコに餌を与える際にネコの口内のFel D1抗原に結合する抗Fel D1抗体の少なくとも結合部分を含む。ある実施形態では、分子、例えば、抗Fel D1抗体を含む組成物とキットの他の食用の構成要素を、動物が摂取する前、通常は摂取の直前に説明書に従って混合する。あるキットでは、食用形態の組成物は、測定しなくても組成物の1つのパッケージをペットフードの1つパッケージ(例えば、缶)に添加できるように、一連の同一パッケージの簡便な投与量として提供する。このようなキットは、販売時のパッケージのペットフードの各パッケージに対して、食用の抗体含有組成物のパッケージ1つが付くように提供することができる。例えば、12缶のペットフードと12パッケージの組成物を1つのキットの中に一緒に入れる。
【0071】
[0071]別の実施形態では、キットは、濃縮形態又は他の形態の組成物、必要に応じて適当な希釈物の調製のための説明書を含む使用説明書、並びに任意選択で、希釈剤又は増量剤、適当な希釈物の調製に用いる器具又は測定デバイス、及び噴霧器、ダスター、雑巾などのためのアプリケータのうちの1つ又は複数を含む。このようなキットは、表面を処理し、環境の空気を処理し、又は外用の組成物で動物を処理するために製剤した組成物に有用であろう。
【0072】
[0072]このようなすべてのキットでは、キットは、自動、すなわち適切な使用のために組成物の投与、希釈、混合、添加、又は適用を自動的に行うデバイス、アプリケータ、及び希釈器などを含むことができる。ここに記載するいずれのキットも、使用及び購入の簡便性、コンプライアンス、及び効率を最大限にするために小袋として、又は他製品と抱き合わせて提供することができる。したがって、アレルゲンがペット由来の場合、キットは、ペット用の食物、ペット用の寝具、ペット用のシャンプーや美容用品、又はペット用の薬の一部又はすべてを含むか、又は抱き合わせることができる。アレルゲンが虫又は植物起源の場合、キットは、例えば、洗濯用洗剤及びイエダニ感染症を最小限にする製品などを含む殺虫剤又は他の処理剤などの適当な追加の製品、又は花粉又は「花粉症」タイプのアレルギーを最小限にする、治療する、又は緩和するための製品を含むことができる。キットはまた、アレルゲンに対してアレルギー応答する動物に提供するアレルギー治療又は投薬を含むこともでき、小袋などとして取り付けることができる。
【0073】
[0073]上記キットのすべて及び他のキットも、仮想キットとして提供することもできる。キットが仮想パッケージを含む場合、キットは、上記した構成要素などの1つ又は複数のキットの物理的構成要素と組み合わせられた仮想環境の説明書を提供する。キットは、本明細書に記載した少なくとも1つの組成物と、任意選択の構成要素を含む他の構成要素を含む。キットは、様々な組合せ及び/又は混合のいずれものキット構成要素を含むことができる。ある実施形態では、キットは、1つ又は複数の組成物を含むパケットと、動物に摂取させる食物の容器を含む。キットは、組成物及び成分を混合するためのデバイス又は餌入れなどの混合物を入れるデバイスなどの追加の品目を含むことができる。別の実施形態では、組成物は、動物の健康を増進させるビタミンやミネラルなどの追加の栄養補助食品に混合されている。さらなる情報及び説明書は、購入者に提供する仮想環境、すなわちウェブサイトへの案内、ファックスバックサーバー、又は同梱のCD−ROMなどのコンピュータ可読デバイスとして提供される。
【0074】
[0074]別の態様では、本発明は、伝達手段、すなわち(1)例えば、アレルゲンと肥満細胞の相互作用を最小限にする、軽減する、又は防止することによって、環境アレルゲンに対するアレルギー応答を最小限にする、軽減する、又は防止するためにアレルゲン特異的分子を使用すること、(2)アレルギー応答を起こしやすい動物のアレルギー応答を最小限にする、軽減する、又は防止するために、このようなアレルゲン特異的分子(例えば、Ab)を含む組成物と他の構成要素と混合すること、(3)単独又は組成物に含めたアレルゲン特異的分子を、単独又は本発明の他の要素と組み合わせて、アレルゲンの源である動物に投与すること、(4)アレルギー応答を起こしやすい動物のアレルギー応答を最小限にする、軽減する、又は防止するために本明細書に記載するキットを使用することのうちの1つ又は複数についての情報又は説明書を伝達するための手段を提供する。
【0075】
[0075]伝達手段は、テキスト情報、音情報、静止画又はアニメーションを含む動画、又はビデオの1つ又は複数を含む。様々な実施形態では、伝達手段は、印刷文書、静止又は動的電子文書、例えば、ハイパーテキスト文書、コンピュータ可読又はデジタル記憶媒体、例えば、限定するものではないが、あらゆるタイプの電子、光学、又は磁気媒体、音情報、音響、視聴覚又は視覚表示装置又は表現、又は暗号化されたビデオ情報を含み、伝達手段は、上記のいずれかを含む情報又は説明書を表示するか又は含む。特定の実施形態では、伝達手段は、ウェブサイト、FAQ(よくある質問)のページ又はファイル、電子ファイル又は同じ又は異なるタイプの2つ以上の電子ファイルの集合体、Eメール又はEメールファイル、視覚表示装置、キオスク、冊子、広告、パッケージ又は製品のラベル、パッケージ又は製品の折り込み広告、折り畳み広告、公示、あらゆる機械可読又はコンピュータ可読媒体で具現される録音テープ又は電子音声ファイル、ビデオテープ、ビデオディスク、又はあらゆる機械可読又はコンピュータ可読媒体で具現される電子ビデオファイル、DVD、CD−ROM、又は同等物、又はこのような情報又は説明書を含む上記のあらゆる組合せを含む。有用な情報には、(1)アレルゲン特異的分子及び/又は他の構成要素を組み合わせて投与するための方法及び技術、(2)キット、組成物、又はその使用について質問があるかないかについて使用するアレルゲン動物又はその管理者又は世話をする人の連絡先、(3)どのキットにも含まれる食物組成物及び他の構成要素についての栄養情報、(4)例えば、緊急情報、及び副作用が起きたときのさらなる連絡:毒物管理、物質データ安全性シートを含む安全情報、(5)例えば、自動実行システムによる再注文の有用な情報、(6)アレルギー、環境アレルゲン、及び特定の環境アレルゲンを最小限にする又は排除するための方法についての一般情報のうちの1つ又は複数が含まれる。有用な説明書は、混合の量、投与の量及び頻度を含むことができる。伝達手段は、本発明の使用の利点についての教示及び本発明を動物に投与する認可された方法の伝達に有用である。
【0076】
[0076]本発明の別の態様は、本明細書に記載した、アレルゲンの源である動物が摂取するように適合された食物組成物、例えば、ネコ又はイヌの食物組成物を含めるのに適した材料を含むパッケージを提供する。このようなパッケージには、パッケージの内容物が、環境アレルゲンの源である動物が摂取するように適合された食物組成物を含むことを示す、1つ又は複数の用語、絵、記号、デザイン、頭字語、スローガン、フレーズ、又は他の図案、又はこれらの組合せ(ラベル「図案」)を含むラベルが貼付されている。一般に、このようなラベル図案は、用語「アレルゲン誘発動物用に製剤された」、「アレルゲンを持つ動物用に製剤された」、又はパッケージに印刷された同等の表現を含む。食物、食物組成物、又は食物成分などを含めるのに適したあらゆるパッケージ又はパッケージング材料、例えば、紙、プラスチック、ホイル、及び金属など、又はこれらの任意の組合せから製造されるバッグ、箱又はボール箱、ビン、缶、及びポーチなどは、本発明に有用である。好適な実施形態では、パッケージは、アレルギー反応しやすい動物の肥満細胞にアレルゲンが結合するのを防止する分子を含めることによって、アレルギー応答を起こしやすい動物の少なくとも環境アレルゲンに対するアレルギー応答を軽減するように適合された食物組成物を含む。
【0077】
[0077]さらなる態様では、本発明は、アレルゲンに対してアレルギー応答を起こしやすい動物の肥満細胞に対するアレルゲンの結合能を阻害する少なくとも1つの分子を含む組成物の、薬物を調製するための使用を提供する。この組成物は、食事用組成物としてもよいが、好ましくは抗体である。また、本発明は、環境のアレルゲンに対する動物のアレルギー応答を軽減する薬物を調製するためのこのような組成物の使用を提供する。一般に、薬物は、食事用成分、化合物、又は組成物を、賦形剤、緩衝液、結合剤、可塑剤、着色剤、希釈剤、圧縮剤、潤滑剤、香味料、保湿剤、及び動物に投与するのに適した薬物を製造し、薬物を製剤するのに有用な当業者が周知の他の成分と混合することによって調製する。
【実施例】
【0078】
[0078]本発明の様々な態様は、以下に示す実施例によってさらに例示することができる。これらの実施例は、単なる例示目的であり、特段の記載がない限り、本明細書に開示する本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0079】
[0079]実施例1
アレルゲンFel D1を含むネコの唾液を、異なる濃度の抗体と共に、又はコントロールとしてPBSと共に(「未処理」と名付ける)37℃で60分間インキュベートした。2つの異なる抗体、(1)完全なFel D1タンパク質に対して作製した抗体(「インドア Ab(Indoor Ab)」)と(2)Fel D1タンパク質に見られる特定のペプチドに対して作製した抗体(「FGI Ab」)の2つの異なる抗体を用いた。これらの抗体を、アレルゲンのヒトIgEに対する結合を阻害する能力について試験した。インキュベーションの後、Fel D1のヒトIgEに対する結合能を、Fel D1特異的IgEを含有する血漿を含むヒト血漿を用いてELISAシステムで試験した。3つの異なる種類のヒト血清、すなわち(1)Fel D1血漿:Fel D1特異的IgEを有するネコアレルギー個体から得た血漿、(2)他のアレルギー血漿:ネコに対するアレルギー以外のアレルギーを持つ個体から得た血漿(この血清には、IgEは存在するが、Fel D1特異的IgEは存在しない)、及び(3)非アレルギー血漿:IgEの濃度が低い非アレルギー個体から得た血漿を試験に用いた。使用するELISAシステムでFel D1がヒトIgEに結合すると、非常に高い信号が得られる。測定した信号は、450nmでの吸光度である。
【表1】

【0080】
[0080]表1から分かるように、コントロールとしてPBSのみと共にプレインキュベートしたFel D1を含むネコの唾液は、Fel D1血漿中のヒトIgEによく結合し、高い信号[0.88]が得られた。たとえ抗Fel D1抗体が存在していなくても、Fel D1抗原を含むネコの唾液は、ネコに対する特異的アレルギー応答を持たない個体から得た非特異的血清では信号を生成しなかった。これにより、Fel D1特異的ヒトIgEで観察された高い信号が、アレルゲンの特異的な結合であることが確認された。また、この特異的結合は、Fel D1を含むネコの唾液を、全Fel D1タンパク質に対して作製したポリクローナル抗体と共にインキュベートすることによって阻害できることが観察された。表1から分かるように、コントロール反応(表1の「コントロール」)で得られた0.88の信号は、Fel D1を含む唾液を異なる濃度の「インドア Ab(Indoor Ab)」と共にプレインキュベートすると0.12未満に低下した。表から分かるように、Fel D1を含む唾液を抗体FGI Abと共にインキュベーションしても、ヒトIgEに対する結合を妨げない、すなわち阻害が存在しないため、阻害現象は特異的である。
【0081】
[0081]抗Fel D1ポリクローナル抗体、インドア抗体(Indoor Antibody)とのインキュベーションの後に観察された、Fel D1のヒトIgEに対する結合を阻害する性質をさらに調べるために、高い希釈度の阻害インドア抗体(Indoor Antibody)で実験を繰り返した。表2から分かるように、阻害の程度は、抗体の希釈度の関数であった。1:2000の希釈では、前の実験と同様に、信号の実質的な低下が観察され、抗体とのプレインキュベーションが、抗原Fel D1のIgEに対する結合能を阻害したことを示している。しかしながら、阻害は、抗体の希釈度が高くなると減少した。このような試験条件下で、Fel D1を1:200,000よりも高い希釈度の「インドア Ab(Indoor Ab)」と共にプレインキュベートすると、ヒトIgEに対する結合が実質的に回復した。
【表2】

【0082】
[0082]表1及び表2を参照すると、データが、極めて低い濃度のFel D1特異的抗体を用いても、Fel D1のヒトIgEに対する結合を特異的に阻害できることを明確に示している。予め感作された肥満細胞におけるアレルゲンのヒトIgEへの結合の出現が、アレルギー反応の初めのトリガーである。したがって、アレルゲンのIgEに対する結合能を阻害することにより、このトリガーを回避して、アレルギー個体におけるアレルギー応答を最小限又は軽減することができ、予防することさえ可能である。また、これらの実験では、Fel D1の抗Fel D1抗体とのインキュベーションをその天然型で行うだけではなく、ネコの唾液のその天然基質でも行うことを繰り返すことも有用である。
【0083】
[0083]本明細書において、本発明の典型的な好適な実施形態を開示し、特定の用語を用いたが、これらの用語は、単に一般的及び記述的意味で用いたものであって、限定を目的とするものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲で定めている。上記の技術から、明らかに、本発明の様々な変更形態及び変形形態が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、具体的に記載した以外の方法でも本発明を実施できることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境中のアレルゲンに対する動物のアレルギー応答を軽減するための方法であって、環境中のアレルゲンの源を、前記アレルゲンに対してアレルギー応答を起こしやすい動物の肥満細胞に対する前記アレルゲンの結合能を阻害する分子を含む組成物と接触させることによって、前記アレルゲンに対してアレルギー応答を起こしやすい前記動物の前記アレルゲンに対する曝露を最小限にし、これにより前記環境中のアレルゲンに対する前記動物のアレルギー応答を軽減するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記動物が、ヒト、ネコ、又はイヌである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アレルゲンが、ヒト、イヌ、ネコ、虫、植物、又は微生物由来である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記アレルゲンが、Fel D1、Can f1、Der p1、Der p2、Bla g1、Bla g2、Asf 1、Ara h1、Ara h2、又はAra h3である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記分子が抗体である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、エアロゾル、液体、ゲル、半固体、固体、又は粉末の形態である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、前記環境の表面に適用される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記アレルゲンが動物由来であり、前記組成物をその動物に摂取させる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記アレルゲンがネコ由来のFel D1であり、前記分子が抗Fel D1抗体を含み、前記接触させるステップが前記組成物をネコが摂取するときに起こる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記分子が、前記アレルゲンに特異的な抗体の少なくとも結合部分とヒトタンパク質の少なくとも一部とを含むハイブリッド分子である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記ヒトタンパク質がIgGである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
環境中のアレルゲンに対するアレルギー応答の少なくとも1つの症状を軽減するのに適した組成物であって、前記アレルゲンに対してアレルギー応答を起こしやすい動物の肥満細胞に対する前記アレルゲンの結合能を特異的に阻害する分子を含む、組成物。
【請求項13】
食用物質、栄養素、香味料、香料、安定剤、表面活性剤、結合剤、又は界面活性剤の1つ又は複数をさらに含む、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
前記アレルゲンが、ヒト、イヌ、ネコ、虫、植物、又は微生物由来である、請求項12記載の組成物。
【請求項15】
前記アレルゲンが、Fel D1、Can f1、Der p1、Der p2、Bla g1、Bla g2、Asf 1、Ara h1、Ara h2、又はAra h3である、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
前記分子が、前記アレルゲンに対して特異的である少なくとも一部分を含む、請求項12記載の組成物。
【請求項17】
前記分子が、前記抗原に特異的に結合する抗体、アプタマー、又はアゴニストの少なくとも一部を含む、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記分子が、カオトロピック剤、界面活性剤、又は塩である、請求項12記載の組成物。
【請求項19】
前記分子がpHを変更する、請求項12記載の組成物。
【請求項20】
前記分子が、肥満細胞に対する前記アレルゲンの結合に関与するタンパク質エピトープ又はその活性を破壊し、前記分子が、タンパク質分解活性、結合活性化改変タンパク質複合体、又は前記アレルゲンに不可逆的に結合するリガンドを含む、請求項12記載の組成物。
【請求項21】
食用である請求項12記載の組成物。
【請求項22】
前記アレルゲンがFel D1であり、前記分子が、Fel D1に対して特異的な抗体を含む、請求項12記載の組成物。
【請求項23】
前記分子が、IgG分子の少なくとも一部と融合した、Fel D1に特異的に結合する抗Fel D1抗体の少なくとも一部を含む、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
請求項12記載の組成物を含む食物組成物。
【請求項25】
前記食物組成物がペット用に製剤されており、前記アレルゲンがペットから経口的に分散されるアレルゲンであり、前記分子が、前記アレルゲンに特異的に結合する抗体の少なくとも一部を含む、請求項25記載の食物組成物。
【請求項26】
ネコ用に製剤されている請求項25記載の食物組成物。
【請求項27】
前記アレルゲンがFel D1である、請求項25記載の食物組成物。
【請求項28】
環境中のアレルゲンに対する動物のアレルギー応答を軽減するのに適したキットであって、キットの構成要素に適当な、別個の容器、単一パッケージ、又は仮想パッケージの別個の容器の中に少なくとも1つの組成物を含み、前記少なくとも1つの組成物が、アレルゲンに対してアレルギー応答を起こしやすい動物の肥満細胞に対する前記アレルゲンの結合能を阻害する少なくとも1つの分子と、(1)環境アレルゲンの少なくとも1つの源である動物が摂取するのに適した1つ又は複数の成分、(2)パラタント、香味料、香料、又は前記組成物を生成するための他の添加物、又は用意又は消費する前、最中、又は後で、消費者、購入者、世話をする人にとって心地よい又は魅力的である食物又は飲料と混合した組成物、(3)健康を増進する、又は前記アレルゲンの源である動物によるアレルゲンの産生、輸送、又は分散を最小限にする1つ又は複数の栄養素又は栄養補助食品、(4)アレルギー又はアレルギー症状を防止又は治療するのに適した1つ又は複数の薬物又は他の物質、(5)感受性動物のアレルギー応答を緩和又は防止するための前記キットの前記組成物及び任意選択の構成要素の使用説明書のうちの少なくとも1つとを含む、キット。
【請求項29】
前記使用説明書が、アレルギー応答を起こしやすい前記動物の肥満細胞に前記アレルゲンが結合できないように、前記アレルゲンに結合するのに十分な量の前記組成物を前記アレルゲンの源である動物に与えるための説明書を含む、請求項28記載のキット。
【請求項30】
前記説明書の少なくとも一部又は別の情報が、仮想的に提供される、請求項28記載のキット。
【請求項31】
環境アレルゲンに対してアレルギー応答を起こしやすい動物の肥満細胞に対する前記環境アレルゲンの結合を防止する1つ又は複数の分子の使用、表面に適用するための前記分子の使用方法、前記環境アレルゲンの源である動物に与えるための前記分子の使用方法、前記分子を含むキット、前記キットの使用についての情報又は説明書を伝達するための手段。
【請求項32】
ウェブサイト、視覚表示装置キオスク、冊子、製品のラベル、パッケージの折り込み広告、広告、折り畳み広告、公示、録音テープ、ビデオテープ、DVD、CD−ROM、コンピュータ可読チップ、コンピュータ可読カード、コンピュータ可読ディスク、コンピュータメモリ、又はこれらの組合せを含む、請求項31記載の手段。
【請求項33】
食物組成物を、環境アレルゲンの源である動物に摂取させる又は与えることを意図していることを示すラベル図案を含むパッケージ。
【請求項34】
アレルゲンに対してアレルギー応答を起こしやすい動物の肥満細胞に対するアレルゲンの結合能を阻害する少なくとも1つの分子を含む組成物の、薬物を調製するための使用。
【請求項35】
前記組成物が抗体を含む、請求項34記載の使用。

【公表番号】特表2010−533179(P2010−533179A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516043(P2010−516043)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/008405
【国際公開番号】WO2009/009061
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】