説明

環境保全具

【課題】ドラフトが無いような場合でも、揮発性薬剤が大気中に拡散するのを抑制できる技術を提供することである。
【解決手段】 揮発性薬剤が充填された容器を開蓋して作業するに際して該容器の背部に設置されて用いられる環境保全具であって、
函体と、前記函体の前面上方部に設けられた斜下方向けて気体を吐出するライン状の吐出口と、前記吐出口にQ(Q>0)m/hrの割合で気体を供給する給気装置と、前記函体の前面部であって、かつ、前記ライン状吐出口の下側に設けられた面状の吸気口と、前記吸気口から(Q+α(α>0))m/hrの割合で前記函体の前面部に存する気体を吸引する吸気装置と、前記函体の左側部から前方側に延在する左延在板と、前記函体の右側部から前方側に延在する右延在板とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は環境保全具に関する。
【背景技術】
【0002】
特定化学物質障害予防規則が改正され、例えばホルムアルデヒドや1,3−ブタンジエン、硫酸ジエチルの取扱いには大きな注意が要求されるようになった。そして、前記有機化合物からなる溶剤などの揮発性薬剤の取扱作業に際しては、揮発性薬剤が生活空間(作業空間:作業環境下)に拡散しないようすることが求められる。例えば、ドラフト内での作業が求められている。
【0003】
しかしながら、揮発性薬剤が充填された容器をドラフト内で取り扱うことが出来ない場合もある。例えば、ドラフトが近くに存在しない環境下での揮発性薬剤取扱作業を要請される場合もある。
【0004】
このような場合には、これまでは、作業環境下で揮発性薬剤が拡散するに任せていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、前記課題を解決することである。すなわち、ドラフトが無いような場合でも、揮発性薬剤が大気中に拡散するのを抑制できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題は、
揮発性薬剤が充填された容器を開蓋して作業するに際して該容器の背部に設置されて用いられる環境保全具であって、
函体と、
前記函体の前面上方部に設けられた斜下方向けて気体を吐出するライン状の吐出口と、
前記吐出口にQ(Q>0)m/hrの割合で気体を供給する給気装置と、
前記函体の前面部であって、かつ、前記ライン状吐出口の下側に設けられた面状の吸気口と、
前記吸気口から(Q+α(α>0))m/hrの割合で前記函体の前面部に存する気体を吸引する吸気装置と、
前記函体の左側部から前方側に延在する左延在板と、
前記函体の右側部から前方側に延在する右延在板
とを具備することを特徴とする環境保全具によって解決される。
【0007】
又、上記環境保全具であって、好ましくは、ライン状吐出口から吐出される気体の吐出方向角度を調整できる調整機構を更に具備してなることを特徴とする環境保全具によって解決される。
【0008】
又、上記環境保全具であって、好ましくは、函体に対して左延在板および右延在板が回動可能に取り付けられてなることを特徴とする環境保全具によって解決される。
【発明の効果】
【0009】
本発明になる環境保全具を用意しておけば、ドラフト等が無い建物外で作業する場合でも、大気中への揮発性薬剤の拡散を抑制できる。従って、環境保全に大きく貢献できる。しかも、大掛かりな装置を要するものでも無いから、利用が簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】環境保全具の概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は環境保全具である。本環境保全具は、揮発性薬剤が充填された容器を開蓋して作業するに際して、該容器の背部に設置されて用いられる。すなわち、本環境保全具の手前側(作業者側)に揮発性薬剤が充填された容器を置き、所定の作業を行うに際して用いられるものである。本環境保全具(装置)は、函体(ケース体)を有する。尚、この函体(ケース体)は、外枠体と言った程度のものである。前記函体の前面上方部には、斜下方向けて気体を吐出するライン状の吐出口が設けられている。尚、好ましくは、前記ライン状吐出口から吐出される気体の吐出方向角度を調整できる調整機構を有する。例えば、長方形状の吐出口そのものが軸を中心にして回動(回転)されるように構成しておけば、吐出口の回動(回転)角度の調整により、吐出方向角度が調整される。或いは、吐出口に回動(回転)式ガイド板を設け、このガイド板の回動(回転)角度の調整により、ガイド板で案内される気体の吐出方向角度が調整される。そして、例えば、前記容器の背丈が低い場合には、前記吐出口から吐出される気体の吐出方向角度を大(傾斜角度を大)きなものとし、前記吐出される気体(空気)によるエアカーテン空間を上下方向において狭くし、狭い空間内で作業できるものとする。逆に、前記容器の背丈が高い場合には、前記吐出口から吐出される気体の吐出方向角度を小さな(吐出方向を出来るだけ水平方向に近い)ものとし、前記吐出される気体(空気)によるエアカーテン空間を上下方向において広くし、広い空間内で作業できるものとする。つまり、容器の大きさに応じて、処理空間を、適宜、調整できるようにしている。これにより、揮発性薬剤の拡散がより効果的に抑制される。前記函体の前面部であって、かつ、前記ライン状吐出口の下側には、面状の吸気口が設けられている。そして、気体(空気)が前記吐出口から斜下方向けて吐出(噴出)され、前記函体の前面部に存する気体(空気や他の気体)が前記吸気口から吸い込まれるように構成されている。本環境保全具(装置)は給気装置(給気量:Q(Q>0)m/hr)および吸気装置(吸気量:Q+α(α>0)m/hr)を有する。そして、前記給気装置は前記ライン状吐出口に繋がっており、前記吸気装置は前記面状吸気口に繋がっている。本環境保全具(装置)は、左延在板および右延在板を有する。すなわち、前記函体の左側部から前方側に延在する左延在板を有する。かつ、前記函体の右側部から前方側に延在する右延在板を有する。これにより、吸気量を出来るだけ少なくできる。つまり、前記左延在板や右延在板が設けられてないと、左右方向において非常に広い範囲の空気を吸引するようになる。この結果、函体の前方部に置かれた容器から揮散した揮発性溶剤を面状の吸気口から吸い込むことが出来ず、揮発性溶剤が拡散してしまう恐れが高い。前記左延在板および右延在板は、好ましくは、回動可能に取り付けられている。例えば、前記左延在板や右延在板の角度を、函体前面に対して90°、70°、或は110°と言った如くに、調整できるようにしておけば、吸気装置で吸引する気体の量を最適で少ないものに調整できる。例えば、前記容器が小さな場合には、前記左延在板や右延在板の角度を函体前面に対して70°に設定してやれば、90°の場合よりも、吸気量を少なくでき、それだけ効果的なものになる。又、前記左延在板や右延在板を函体前面に対して折り畳むようにしてやれば、本環境保全具の保管に際しての必要空間を小さくでき、好都合である。
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の詳細な具体的な実施形態を説明する。但し、本発明は本実施形態に限られるものでは無い。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態になる環境保全具の概略斜視図である。
【0014】
図中、1は函体(ケース体:枠体)である。この函体1の前面上方部には、斜下方向けて気体を吐出するライン状の吐出口2が設けられている。このライン状の吐出口2の下側であって、函体1の前面部には、面状の吸気口3が設けられている。この面状の吸気口3は、例えばパンチングメタル板で構成される。
【0015】
4は、函体1内に設けられた気体供給路である。この気体供給路4はライン状の吐出口2に繋がっている。図中、4aは気体供給路端部である。この気体供給路端部4aにホース(図示せず)一端が接続され、ホース他端がブロワ(給気装置:給気量はQ(Q>0)m/hr:図示せず)に接続されている。これにより、ブロワからの気体(空気)がQm/hrの割合でライン状の吐出口2から吐出される。
【0016】
面状の吸気口3には排気路が繋がって設けられている。図中、5aは、函体1に設けられた排気路端である。この排気路端5aには排気路(例えば、ホース)を介しては吸気装置(吸気量はQ+α(α>0))m/hr:図示せず)が接続されている。これにより、函体1の前面部(前方部)に存する気体が面状吸気口3から吸引される。吸気装置で吸引された気体(揮発性薬剤を含む空気)はホース等の排気路を介して所定の無害化処理室に送られる。無害化処理を受けた後、大気中に放出される。
【0017】
6は、函体1の左側部から前方側に延在する左延在板である。7は、函体1の右側部から前方側に延在する右延在板である。左延在板6や右延在板7は、例えば蝶番などにより開閉(回動)可能に取り付けられている。図では、左延在板6や右延在板7は、函体1の前面に対して、90°の角度であるが、これは、60°にすることも可能であり、110°にすることも可能である。適宜の角度に調整できる。又、左延在板6や右延在板7を函体1の前面に重ねる(折り畳む)こともできる。
【0018】
尚、図示していないが、ライン状の吐出口2から吐出(噴出)される空気量がライン位置によらず略同等のものとなるようにする為の整流(分流)板が函体1内に設けられた気体供給路に設けられている。これにより、ライン状の吐出口2の右端側でも中央側でも左端側でも、ほぼ均等量の空気が吐出(噴出)され、エアカーテンが綺麗に形成される。又、図示していないが、面状の吸気口3から吸引される空気量が場所によらず略同等のものとなるようにする為の整流(分流)板が函体1内に設けられた排気路に設けられている。
【0019】
上記のように構成させた環境保全具を、図1に示す如く、揮発性薬剤が充填された容器11の背部に設置した後、給気装置を作動させて、エアカーテンを形成すると共に、吸気装置を作動させて、容器11周辺に存する気体(空気など)を吸気するようにした後、容器11の蓋を開いて、所定の作業を実行する。この時、容器11から揮発性薬剤が揮散しても、この揮発性薬剤は上記エアカーテン及び左延在板6や右延在板7によって揮散を抑制されている。そして、吸気装置により吸引される。従って、作業環境下において薬剤が揮散し難い。つまり、恰も、ドラフト内で作業するかの如くに処理できる。
【符号の説明】
【0020】
1 函体(ケース体:枠体)
2 ライン状吐出口
3 面状吸気口
6 左延在板
7 右延在板
11 揮発性薬剤が充填された容器



【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性薬剤が充填された容器を開蓋して作業するに際して該容器の背部に設置されて用いられる環境保全具であって、
函体と、
前記函体の前面上方部に設けられた斜下方向けて気体を吐出するライン状の吐出口と、
前記吐出口にQ(Q>0)m/hrの割合で気体を供給する給気装置と、
前記函体の前面部であって、かつ、前記ライン状吐出口の下側に設けられた面状の吸気口と、
前記吸気口から(Q+α(α>0))m/hrの割合で前記函体の前面部に存する気体を吸引する吸気装置と、
前記函体の左側部から前方側に延在する左延在板と、
前記函体の右側部から前方側に延在する右延在板
とを具備することを特徴とする環境保全具。
【請求項2】
ライン状吐出口から吐出される気体の吐出方向角度を調整できる調整機構を具備してなる
ことを特徴とする請求項1の環境保全具。
【請求項3】
函体に対して左延在板および右延在板が回動可能に取り付けられてなる
ことを特徴とする請求項1の環境保全具。



【図1】
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【公開番号】特開2011−177649(P2011−177649A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44150(P2010−44150)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(507328335)株式会社ゲンダイプラント (6)
【出願人】(591274314)
【出願人】(507327752)
【出願人】(507327763)
【Fターム(参考)】