説明

環境対応型感光インクを利用した回路パターンの製造方法

【課題】環境対応型感光インクを利用した回路パターンの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明はプリント基板上の銅箔に回路パターンを形成するための、環境対応型感光インクを利用した回路パターンの製造方法である。まず環境対応型感光インク及び回路パターン図を用意し、次に前記回路パターン図に基づき前記環境対応型感光インクをプリント基板の銅箔に噴射し、前記回路パターン図が印刷された前記プリント基板を形成する。次に光線を前記プリント基板に当てることで前記光線に含まれる紫外線が前記環境対応型感光インクに作用する。そして、前記銅箔を銅洗浄及びアルカリ洗浄することで、前記プリント基板に回路パターンを形成する。本発明の回路パターンの製造方法は従来のプリント基板製造工程を減らすことが可能であり、化学材料の使用量が少なく、製造工程の切換が単純で、コストの低下及びより優れたプリント基板の製造を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境対応型感光インクを利用した回路パターンの製造方法に関し、より詳しくは、環境対応型感光インクを利用し、プリント基板上で回路パターンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプリント基板(Printed Circuit Board,PCB)は印刷による方式で回路基板に回路パターンを製作するものであるが、時間と共に前記プリント基板の配線の解析度への要求が高まり、従来のプリント基板製作工程の改善が行われた。現在ほとんどのプリント基板は積層膜或いはサブトラクティブ法を採用している。露光、現像した後、エッチングにより銅箔の不要部分を除去することで回路パターンを形成し、マスキング剤を洗い流すことでプリント基板の製造が完了する。しかし、電子製品の小型化が進むにつれて、更に細かいプリント基板が必要とされた。その要求に応える為に現れたのが紫外線硬化インクをマスキング剤として利用したプリント基板製造方法である。紫外線硬化インクを利用した製造方法は従来のシルクスクリーン印刷やインクジェット印刷による製造方法に必要な焼付工程を必要とせず、プリント基板の生産効率及び質の向上を実現した。紫外線硬化インクを利用した製造方法に重要な技術は、その工程で使用されるインク及び回路パターン製造方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明は、環境対応型感光インクを直接プリント基板に噴射し、プリント基板上の銅箔に回路パターンを形成するための、環境対応型感光インクを利用した回路パターンの製造方法の提供を目的とする。
【0004】
本発明は更に、上述の方法を利用し、環境対応型感光インクによりプリント基板上の銅箔に回路パターンを形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明はプリント基板上の銅箔に回路パターンを形成するための、環境対応型感光インクを利用した回路パターンの製造方法を提供する。本発明の回路パターンの製造方法は、まず環境対応型感光インク及び回路パターン図を用意し、次に前記回路パターン図に基づき前記環境対応型感光インクをプリント基板の銅箔に噴射し、前記回路パターン図が印刷された前記プリント基板を形成する。次に光線を前記プリント基板に当てることで前記光線に含まれる紫外線が前記環境対応型感光インクに作用する。そして、前記銅箔を銅洗浄及びアルカリ洗浄することで、前記プリント基板に回路パターンを形成する。前記環境対応型感光インクはナノ級粒子であり、表面張力が22〜24mN/mであり、光重合プレポリマー、モノマー、光重合開始剤、混合溶剤、環境対応型カラーペースト及び添加剤のうち少なくとも1つから成るインクである。
【0006】
従来の技術と比べ、本発明の環境対応型感光インクを利用した回路パターンの製造方法は、従来のプリント基板製造工程に必要だったマスクフィルム、銅メッキ処理、露光及び現像等の複雑な工程が無い。つまり、本発明はインクジェット技術により、前記環境対応型感光インクをヘッドから銅箔を備えるプリント基板上の特定の位置に噴射し、回路パターンを印刷することで、回路パターンを備えるプリント基板を製造する。また、前記プリント基板の表面だけを見ると、その製造工程は一般の紙の印刷とほぼ同じである。更に、本発明の環境対応型感光インクは環境にやさしく、安全に保管でき、プリント基板等の硬質基材に使用でき、化学物質に強く、耐摩耗、耐熱性を備え、乾燥時間が短く、滲みにくく、解析度が高い等のメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の環境対応型感光インクを利用した回路パターンの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0009】
図1は本発明の環境対応型感光インクを利用した回路パターンの製造方法を示すフローチャートである。前記回路パターンの製造方法は、プリント基板上の銅箔に回路パターンを形成するのに利用される。その工程は、まず環境対応型感光インク及び回路パターン図を用意し(S1)、次に前記回路パターン図に基づき前記環境対応型感光インクをプリント基板の銅箔に噴射し、前記回路パターン図が印刷された前記プリント基板を形成する(S2)。次に光線を前記プリント基板に当てることで前記光線に含まれる紫外線が前記環境対応型感光インクに作用する(S3)。そして、前記銅箔を銅洗浄及びアルカリ洗浄することで、前記プリント基板に回路パターンを形成する(S4)。
【0010】
前記光線は可視光線或いは不可視光線のうちの少なくとも一方である。前記不可視光線は波長域が250nm〜400nmの紫外線である。前記可視光線は波長域が400nm〜800nmである。前記光線は、特に波長域が395nm、405nm或いは450nmのいずれかである。
【0011】
前記環境対応型感光インクは光重合プレポリマー、モノマー、光重合開始剤、混合溶剤、環境対応型カラーペースト及び添加剤のうちの少なくとも1つから成るインクである。前記光重合開始剤は光によって励起する化合物であり、前記インクが光線を吸収した際に励起しフリーラジカルとなり、エネルギーを感光性高分子或いは光架橋剤に転移させることで、前記環境対応型感光インクに硬化反応を発生させる。
【0012】
前記光重合プレポリマーはオリゴマーとも呼ばれ、前記環境対応型インクの主要成分であり、不飽和官能基を含むポリマーである。前記光重合プレポリマーは構造式に不飽和二重結合(C=C)を含む低分子樹脂であり、その分子量は平均約数百から数千である。前記オリゴマーはエポキシアクリル樹脂、ポリウレタンアクリル樹脂、ポリエステルアクリル樹脂、アルカリ可溶性アクリル樹脂等である。
【0013】
前記モノマーは不飽和基を含む低分子化合物であり、光線に照射されることで前記オリゴマーと相互反応を起こし架橋結合を行うものであり、その分子量は数百から数千である。また、反応性希釈剤をプレポリマーに加えることで、前記環境対応型感光インクの粘度を調節することが可能である。前記調節により、インクの硬化結合密度を調節し、光線により硬化した後の柔軟性や硬度等の物理特性を改善する。前記反応型希釈剤は単官能基反応性希釈剤及び多官能基反応性希釈剤に分けられ、前記多官能基反応性希釈剤は希釈効果や硬化速度が前記単官能基反応性希釈剤より優れる。前記反応性希釈剤は前記インクの硬化過程及び硬化膜において重要な役割を持つので、反応型希釈剤の選択は非常に重要である。前記モノマーは状況に応じて、粘度、機能性、揮発性、臭い、毒性学的性質、溶解性等の特性を考慮する必要がある。前記反応性希釈剤はトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、トリエチレングリコールジメタクリラート(TEGDA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)等である。
【0014】
前記光重合開始剤は光線硬化に必要な物の主な成分であり、光線に照射されることで、前記光重合開始剤はフリーラジカルへと分解され、重合及び架橋結合反応を引き起こす。つまり、前記光重合開始剤は光を吸収することで励起し、活性化しフリーラジカルとなり、エネルギーを高分子ポリマー或いは転移させることで連鎖反応を起こし、前記樹脂を網状構造に変化させることでインクの硬化膜を形成する。また、光線は前記光重合プレポリマーの二重結合を開くことが困難であるため、光重合開始剤がない状況では、感光性材料であっても硬化する速度は速くない。一般的に、インクに少量の光重合開始剤を加えることで、前記光重合開始剤を含む前記インクを光線に曝すと、前記光重合開始剤が光を吸収し、分解されフリーラジカルとなり、連鎖反応を引き起こす。不飽和二重結合が重合し、ポリマー分子が架橋結合することで網状結合を形成し、前記フリーラジカルの連鎖反応が停止することで、前記インクが硬化する。前記光重合開始剤は潜在開始剤、感光開始剤或いはカチオン性開始剤のうちの少なくとも1つを含む。
【0015】
前記混合溶剤は前記インクを希釈するのに用い、また、前記インクの担体である。前記混合溶液はその種類と容量が前記インクの安定性に大きな影響を与える。低沸点アルコール、高沸点アルコール、エーテル、ヘテロサイクリックアミン、サイクリックエステルからなる有機溶剤から前記インクの安定性を高めるものを選び出し、安定性、粘度、表面張力や導電率がインクの商品としての性能基準を満たす前記インクを調合する。前記混合溶剤はエチルアセテート、ブチルアセテート、プロピルアセテートの組み合わせからなる族から選択する。
【0016】
前記環境対応型カラーペーストはナノ粒子を含むトナーを重合したものである。前記トナーのサイズは300nmを下回る大きさであり、50nm〜100nmが好ましい。
【0017】
前記添加剤は乳化剤、界面活性剤或いは紫外線吸収剤の少なくとも1つを含む。前記乳化剤は液滴の周囲に界面膜を形成し、静電気の発生を抑え、媒質の粘度を増加させる。また、前記乳化剤により前記インクは酸、アルカリ、塩に対して安定性を備え、更に刺激性を抑える効果がある。
【0018】
前記界面活性剤は前記インクの表面張力を低下させる物質である。前記インクは表面張力が22〜24mN/mである。前記界面活性剤は親水性基及び疎水性基を有する両親媒性分子であり、有機溶液や水溶液に溶かすことが可能である。前記界面活性剤は前記インクの表面張力を大幅に低下させ、更に前記インクにぬれ性、浸透性、分散性、乳化、清潔さ等の特性を持たせることが可能である。前記界面活性剤はイオン性界面活性剤(Ionic surfactant)、非イオン性界面活性剤(Nonionic Surfactant)及び両性界面活性剤(Amphoteric Surfactant)であり、前記イオン性界面活性剤は更にカチオン性界面活性剤(Cationic surfactant)及びアニオン性界面活性剤(Anionic surfactant)を含む。
【0019】
前記紫外線吸収剤はサリチル酸類、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、置換アクリロニトリル類、トリアジン類及びヒンダードアミン類を配合することで、紫外線吸収剤を単独で使用するよりもより良い紫外線吸収効果が得られる。前記紫外線吸収剤は前記インクに分解及び変色し辛い特性を持たせることが可能である。
【0020】
従来の技術と比べ、本発明の環境対応型感光インクを利用した回路パターンの製造方法は、従来のプリント基板製造工程に必要だったマスクフィルム、銅メッキ処理、露光及び現像等の複雑な工程が無い。つまり、本発明はインクジェット技術により、前記環境対応型感光インクをヘッドから銅箔を備えるプリント基板上の特定の位置に噴射し、回路パターンを印刷することで、回路パターンを備えるプリント基板を製造する。また、前記プリント基板の表面だけを見ると、その製造工程は一般の紙の印刷とほぼ同じである。更に、本発明の環境対応型感光インクは環境にやさしく、安全に保管でき、プリント基板等の硬質基材に使用でき、化学物質に強く、耐摩耗、耐熱性を備え、乾燥時間が短く、滲みにくく、解析度が高い等のメリットがある。
【0021】
上述において、本発明の説明の利便性のために最良の実施例を挙げて説明したが、これらの実施例は本発明の請求の範囲を限定するものではなく、本発明に基づく本発明の要旨を逸脱しないあらゆる変更は本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0022】
S1〜S4 フローチャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境対応型感光インクを利用した回路パターンの製造方法であって、そのステップは、
まず環境対応型感光インク及び回路パターン図を用意するステップ、
次に前記回路パターン図に基づき前記環境対応型感光インクをプリント基板の銅箔に噴射し、前記回路パターン図が印刷された前記プリント基板を形成するステップ、
次に光線を前記プリント基板に当てることで前記光線に含まれる紫外線が前記環境対応型感光インクに作用するステップ、
そして、前記銅箔を銅洗浄及びアルカリ洗浄することで、前記プリント基板に回路パターンを形成するステップを含み、
前記製造方法は銅箔を備えるプリント基板に利用されることを特徴とする回路パターンの製造方法。
【請求項2】
前記環境対応型感光インクは、光重合プレポリマー、モノマー、光重合開始剤、混合溶剤、環境対応型カラーペースト及び添加剤のうち少なくとも1つから成ることを特徴とする請求項1に記載の回路パターンの製造方法。
【請求項3】
前記混合溶剤は、エチルアセテート、ブチルアセテート、プロピルアセテートの組み合わせからなる族から選択することを特徴とする請求項2に記載の回路パターンの製造方法。
【請求項4】
前記添加剤は、乳化剤、界面活性剤或いは紫外線吸収剤の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2に記載の回路パターンの製造方法。
【請求項5】
前記環境対応型感光インクは表面張力が22〜24mN/mであることを特徴とする請求項2に記載の回路パターンの製造方法。
【請求項6】
前記環境対応型カラーペーストのサイズは300nmを下回ることを特徴とする請求項2に記載の回路パターンの製造方法。
【請求項7】
前記環境対応型カラーペーストのサイズは50nm〜100nmであることを特徴とする請求項6に記載の回路パターンの製造方法。
【請求項8】
前記光重合開始剤は潜在開始剤、感光開始剤或いはカチオン性開始剤のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2に記載の回路パターンの製造方法。
【請求項9】
前記光線は可視光線或いは不可視光線のうちの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載の回路パターンの製造方法。
【請求項10】
前記不可視光線は波長域が250nm〜400nmの紫外線であることを特徴とする請求項9に記載の回路パターンの製造方法。
【請求項11】
前記可視光線は波長域が400nm〜800nmであることを特徴とする請求項9に記載の回路パターンの製造方法。
【請求項12】
前記光線は波長域が395nm、405nm或いは450nmのいずれかであることを特徴とする請求項9に記載の回路パターンの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−186435(P2012−186435A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115247(P2011−115247)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(511125249)台湾納米科技股▲ふん▼有限公司 (2)
【Fターム(参考)】