説明

環境浄化化粧料素材

【課題】
シルク含有アパタイトで被覆を施した光触媒機能を有する金属酸化物を化粧料として使用することを目途として開発したのがこの発明の環境浄化化粧料素材である。しかもシルク含有アパタイトで被覆を施した光触媒機能を有する金属酸化物からなる添加剤は、配合した全身化粧料の使用後に、廃液が汚水として排出されたときに環境浄化の作用を果たすことができるようになった。
【解決手段】
シルク粉末を含有したアパタイトで被覆した光触媒機能を有する金属酸化物からなることを特徴とする環境浄化化粧料素材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、化粧料等に配合して環境浄化化粧料として使用することができ、また配合して得た環境浄化化粧料が、使用後の廃液が汚水として排出されたときに環境浄化の作用を果たすことができるようにした環境浄化化粧料素材に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒機能を有する金属酸化物はその酸化力により基材を傷めるので、アパタイトを被覆する技術が先に開発された。このアパタイト被覆技術により、塗料などへ光触媒が応用されている。例えば特開平10−17847号公報(特許文献1参照)
【0003】
また、アパタイト被覆技術に生体融合しやすい加工技術を開発し、すでにシルク含有アパタイト被覆技術として確立されている。これにより生体内に光触媒機能を有する金属酸化物を取り込むことができるようになった。生体に取り込まれた金属酸化物は、生体を変化させることなく対外へ排泄される。
他方、シルク粉末を含有する化粧料が種々提案されている。例えば、特開平7−316011号公報(特許文献2参照)等である。
【特許文献1】特開平10−17847号公報
【特許文献2】特開平7−316011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シルク含有アパタイトで被覆を施した光触媒機能を有する金属酸化物を化粧料として使用した場合に、金属酸化物の酸化力により肌を痛めることがないかどうかについてはいまだ確認されていなかった。
また、シルク粉末を含有する化粧料が種々提案されてはいるけれども、このことが金属酸化物の酸化力により肌を痛めることがないかどうかを推認させるものではないことは明らかであり、シルク含有アパタイトで被覆を施した光触媒機能を有する金属酸化物を化粧料として使用した場合の反応についてはいまだ未解明であった。
【0005】
そこで、シルク含有アパタイトで被覆を施した光触媒機能を有する金属酸化物を化粧料として使用することを目途として開発したのがこの発明の環境浄化化粧料素材である。しかもシルク含有アパタイトで被覆を施した光触媒機能を有する金属酸化物からなる添加剤は、配合した全身化粧料の使用後に、廃液が汚水として排出されたときに環境浄化の作用を果たすことができるようになった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の環境浄化化粧料素材は、シルク粉末を含有したアパタイトで被覆した光触媒機能を有する金属酸化物からなることを特徴とするものである。
【0007】
この発明の環境浄化化粧料素材は、シルク粉末を含有したアパタイトで被覆した光触媒機能を有する金属酸化物からなり、化粧料基材に0.1〜5重量%混合して環境浄化全身化粧料として使用できるようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
この発明の環境浄化化粧料素材は、前記シルク粉末として、絹糸もしくは天然の蚕を使用し、シルク繊維に含まれているフィブロインという絹タンパク質を分解抽出したあとに、分子レベルのアミノ酸パウダーに加熱処理したものを使用することをも特徴とするものである。
【0009】
この発明の環境浄化化粧料素材は、前記シルク粉末を含有したアパタイトで被覆した光触媒機能を有する金属酸化物として、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化銅、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化レニウム、酸化ビスマス、チタン酸ストロンチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種類の酸化物が混合されていることをも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、シルク含有アパタイトで被覆を施した光触媒機能を有する金属酸化物からなる添加剤を化粧料に配合して使用した場合、何ら問題なく使用することができることはもちろん、使用後の廃液が汚水として排出されたときに環境浄化の作用を果たすことができる環境浄化化粧料素材が提供可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の環境浄化化粧料素材の実施の形態について、実施例に基いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
シルク粉末として、絹糸もしくは天然の蚕を使用し、シルク繊維に含まれているフィブロインという絹タンパク質を分解抽出したあとに、分子レベルのアミノ酸パウダーに加熱処理したものを使用する。これをアパタイトに対して0.1〜数%(重量)の割合で混合し、シルク粉末含有アパタイトの微細粉末を得る。
次に、シルク粉末含有アパタイトで光触媒機能を有する金属酸化物を被覆する。この金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化銅、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化レニウム、酸化ビスマス、チタン酸ストロンチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種類の酸化物が混合されている。なお本実施例では二酸化チタンを使用した。
前記実施例の環境浄化化粧料素材は、シルク含有アパタイトで被覆を施した光触媒機能を有する金属酸化物からなり、これを添加剤として化粧料基材に0.1〜5%(重量)混合し、得られた配合物を環境浄化化粧料として用いるものである。
前記化粧料基材としては、一般に使用されている肌用の、ローションやスキンクリーム、洗顔クリーム、メイク落としや、毛髪用のシャンプー、リンス、整髪料等、種々の化粧料基材が適用可能である。
前記化粧料基材にシルク含有アパタイトで被覆を施した光触媒機能を有する金属酸化物を0.1〜5%(重量)混合する方法としては、すでに完成した化粧料基材に配合して攪拌混合する方法や、化粧料素材の製造工程中において添加混合する方法を採用することができる。
表1に、シルク含有アパタイトで被覆を施した光触媒機能を有する金属酸化物を添加剤として、これを化粧料基材に0.2%(重量)混合して得られた環境浄化化粧料の肌に及ぼす影響についてのデータを示す。

【表1】

【0013】
上記においてビーワンシステムとは、特願2004−193214(本件出願人と提携関係にある全国BSC理美容協同組合の出願)に詳しく記載されているが、その要旨を述べると下記の通りである。
『下記プロセスを順次行なうようにしたことを特徴とする毛髪のカール処理方法。
a)シャンプー(天然水を用いた頭髪用化粧水とシャンプーとを等量配合したもの)
b)頭髪用化粧水の塗布(天然水を用いた頭髪用化粧水を霧吹きで塗布)
c)コーミング(コーム)
d)プレ処理(天然水を用いた頭髪用化粧水に、この化粧水にさらに増粘剤を溶かしこんだ溶液を等量配合した混合液を用いて頭皮に浸透させる)
e)1液塗布(天然水を用いた頭髪用化粧水と1剤とを所定割合に配合した混合液)を塗布し、コーミング
f)テストカール(カール用のロッドで毛先から根元の軟化をチェックする)
g)プレーンリンス(薬品や香料や油などの入っていない清水や微温湯にてゆすぐ)
h)頭髪用化粧水の塗布(天然水を用いた頭髪用化粧水を塗布してコーミング)
i)完全ドライ(ブロー)
j)カールエッセンス塗布(天然水を用いた頭髪用化粧水と、この化粧水にさらに増粘剤を溶かしこんだ溶液と、かぼくを原料とするモイスチャークリームとを所定割合に配合した混合液を塗布)
k)エアアイロン(エアをブローできるヘアアイロンで毛髪のくせ付け処理)
l)ピニング(エアアイロンで仕上がったカールを固定)
m)2液塗布(天然水を用いた頭髪用化粧水と、この化粧水にさらに増粘剤を溶かしこんだ溶液と、2剤とを所定割合に配合した混合液を塗布)
n)プレーンリンス(薬品や香料や油などの入っていない清水や微温湯にてゆすぐ)
o)セットアップ(天然水を用いた頭髪用化粧水と、この化粧水にさらに増粘剤を溶かしこんだ溶液を所定割合に配合した混合液を塗布してブロー)』

またビーワンオールとは、ビーワン(商品名)と生体融合型光触媒(商品名:トリニティー)が合体したものである。
前記ビーワン(商品名)は、本願出願人が姫路市の地下500mから汲み上げている天然水で、汲み上げたのちにフィルターで不純物を取り除き、タンクに導いた水を循環させたものである。
また、生体融合型光触媒トリニティーはアバタイト被覆の二酸化チタンに高分子シルクを含有させることで、生体や環境への適合性を飛躍的に向上させたものであり、微弱な光でも活性効果を発揮したり、吸着作用が大幅にアップしたのが特長である。

上記ビーワンオールを実際に使用した場合の効果について実験結果(施術日2005/10/06)を表2に示す。

【表2】

【0014】
上記実施例において使用されるシルクパウダーとしては、好ましくは国産の純粋な絹糸を100%使用し、シルク繊維に含まれているフィブロインという絹タンパク質を分解抽出したあとに、分子レベルのアミノ酸パウダーに加熱処理したものである。吸湿防止などのため、デキストリンを30%配合していることが通例である。
得たシルクパウダーには、グリシン、アラニン、セシリン、チロシンなど18種類ものアミノ酸が含まれている。その上パウダー状に分解してあるため、化粧料として使用した場合に肌に密着して肌を金属酸化物等の酸化反応から保護することができる。
【0015】
この実施例において使用されるアパタイトは、細菌やウィルスなどのタンパク質やアンモニアや窒素酸化物、アルデヒド類などの吸着能に優れ、それらを大量に吸着することができる。そのため環境改善材料としての利用も可能である。
一方、光触媒は光を照射することで強い酸化力を生じるため、有害な有機化学物質や細菌、臭いなどを分解し炭酸ガスや水などに分解・除去することができる。
反面、樹脂や有機系の塗料や繊維などに粉末を混合すると機材やバインダーそのものを分解して、変色させたりぼろぼろにしてしまうためそのままでは混合して応用できない。また、大気中に浮遊したり水中の分散している有機物や細菌などをその表面に引き寄せたり多量に吸着しておくことはできないため、たまたま接触した物質しか分解できない。さらには、最も重大な欠点として、光が当たらないとまったく機能しないことが挙げられる。
【0016】
そこで、これらのアパタイトや二酸化チタン光触媒の欠点を補うため、二酸化チタンの表面にナノメートルオーダーのアパタイト結晶を析出させた複合材料が開発された。この複合材料は、以下のような点で優れている。
1)アパタイトが吸着した物質は光が当たれば二酸化チタンが分解・除去するためアパタイトの吸着能はその都度再生し半永久的に使用を続けることができる。すなわち、吸着・分解機能を有する複合材料である。
夜間など必ずしも光が当たらない状況や光が微弱な場合でもアパタイトは多量の細菌や物質を吸着しておくことができる。一般家庭の室内の有害物質程度であれば何日かは光がなくても吸着・除去できる。
2)アパタイトは有機物質と光触媒を隔離する働きもする。したがってアパタイトを被覆した二酸化チタンをプラスチックや繊維、紙などの有機系の媒体などに混合しても二酸化チタンと基材が直接接触しないため、基材を分解することがなく、この複合材料はそのまま混合することができる。
アパタイトで捉えておいた物質を二酸化チタンで分解することができるのでわずかな光でも確実に物質を分解できる。光触媒は、通常有機物を炭酸ガスと水にまで分解するのに一定の時間が必要である。しかし、空気中や水中の物質が光触媒表面に留まっていることはむしろ稀でたまたま一定時間表面留まっていた物質しか分解できない。
3)アパタイトは、二酸化チタンの表面を完全に覆っているのではなく、分散して析出しているため二酸化チタンの表面は、部分的に露出しており、その光触媒機能はほとんど失われていない。すなわち、表面をアパタイトが覆っているため、アパタイトがスペーサーとなり、二酸化チタンが直接接触しないため、これらの媒体を分解することがない。従来の二酸化チタン単体の粉末は、繊維に練りこんでも繊維を分解してしまい、変色したりぼろぼろになったりして使用できなかった。また、白色顔料として使用されている二酸化チタンでも、塗料化した際に、やはり光により媒体を分解して塗料が粉状になってしまうことがある。
4)以上のように、環境に優しい材料製法プロセスを用いてアパタイトを二酸化チタンに被覆することができた。この複合材料は、アパタイトの吸着機能に加え二酸化チタンの分解機能を付与することで、光の有無にかかわらずアパタイトが細菌やウィルス、アルデヒド類などを吸着し、これを二酸化チタンが分解する。そのため、従来では使用期限が限られていたアパタイトを、半永久的に使用できる。このように、複合化材料により、従来のアパタイトや二酸化チタンの応用範囲を飛躍的に拡大する可能性がある。
5)また、紫外線から皮膚を守るために二酸化チタンを配合した化粧品が商品化されているが、光触媒作用による皮膚への影響が懸念されている。単なるアパタイトではなく、シルク含有アパタイトは皮膚にもなじみがよいので、シルク含有アパタイトを被覆した二酸化チタン粉末は、化粧品として使用した場合に大きな効果を発揮する。
【実施例2】
【0017】
シルク粉末として、絹糸もしくは天然の蚕を使用し、シルク繊維に含まれているフィブロインという絹タンパク質を分解抽出したあとに、分子レベルのアミノ酸パウダーに加熱処理したものを使用する。これをアパタイトに対して0.1〜数%(重量)の割合で混合し、シルク粉末含有アパタイトの微細粉末を得る。
次に、シルク粉末含有アパタイトで光触媒機能を有する金属酸化物を被覆する。この金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化銅、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化レニウム、酸化ビスマス、チタン酸ストロンチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種類の酸化物が混合されている。なお本実施例では二酸化チタンを使用した。
前記実施例の環境浄化化粧料素材は、シルク含有アパタイトで被覆を施した光触媒機能を有する金属酸化物からなり、これを添加剤として化粧料基材に0.1〜5%(重量)混合し、得られた配合物を環境浄化化粧料として用いるものである。
前記化粧料基材としては、第1の実施例と同様、一般に使用されている肌用の、ローションやスキンクリーム、洗顔クリーム、メイク落としや、毛髪用のシャンプー、リンス、整髪料等、種々の化粧料基材が適用可能である。
前記化粧料基材にシルク含有アパタイトで被覆を施した光触媒機能を有する金属酸化物を0.1〜5%(重量)混合する方法としては、すでに完成した化粧料基材に配合して攪拌混合する方法や、化粧料素材の製造工程中において添加混合する方法を採用することができる。
表3に、シルク含有アパタイトで被覆を施した光触媒機能を有する金属酸化物を添加剤として、これを化粧料基材に4.5重量%混合して得られた環境浄化化粧料の肌に及ぼす影響についてのデータを示す(図面代用写真を手続補足書にて提出する)。

【表3】

【産業上の利用可能性】
【0018】
この発明の環境浄化化粧料素材は、例えば紫外線防止のための肌用化粧料としてのみならず、洗浄用の各種化粧料、全身洗浄剤、シャンプー、リンスなどへの利用拡大が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シルク粉末を含有したアパタイトで被覆した光触媒機能を有する金属酸化物からなることを特徴とする環境浄化化粧料素材。
【請求項2】
シルク粉末を含有したアパタイトで被覆した光触媒機能を有する金属酸化物からなり、化粧料基材に0.1〜5重量%混合して環境浄化全身化粧料として使用できるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の環境浄化化粧料素材。
【請求項3】
シルク粉末として、絹糸もしくは天然の蚕を使用し、シルク繊維に含まれているフィブロインという絹タンパク質を分解抽出したあとに、分子レベルのアミノ酸パウダーに加熱処理したものを使用することを特徴とする請求項1に記載の環境浄化化粧料素材。
【請求項4】
シルク粉末を含有したアパタイトで被覆した光触媒機能を有する金属酸化物として、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化銅、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化レニウム、酸化ビスマス、チタン酸ストロンチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種類の酸化物が混合されていることを特徴とする請求項1および2に記載の環境浄化化粧料素材。

【公開番号】特開2007−169164(P2007−169164A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364233(P2005−364233)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(500304235)株式会社ビーワン (4)
【Fターム(参考)】