説明

環境調整制御装置

【課題】個人別の環境の快適性を確保するとともに省エネルギを実現する。
【解決手段】ユーザAによる要求端末130の操作によって供給される端末IDと調光制御要求コマンドとを取得するコマンド取得部141と、コマンド取得部141が取得したときの照明装置110の照明光の照度データを取得する照度データ取得部142と、その照度データに基づいて、所定の照度の照明光を照明させるための調光データを決定して照明装置110に供給し、時間経過に伴って照明装置110が省エネルギ運転となるように調光データを変化させる照明調節制御部とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置や空調装置等の環境調整装置を制御する環境調整制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザが操作するリモコン装置から送信されるリモコン信号を受信して、目標の明るさに設定する照明装置や、ユーザが操作する操作手段により空調の運転モード、設定温度、快適度データ等を空調機に設定して動作させる運転制御装置が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。また、近年では、無線通信携帯端末により照明装置や空調装置を制御する試みも実施されており、個人別の環境調整ができるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−155869号公報
【特許文献2】特開2001−33073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようにユーザが自身の好みに応じて環境調整を行うと、快適さを求めるがゆえに必要以上に明るく照明したり冷房したりといった過剰な環境調整を行うおそれがある。環境調整の制御において、制御される環境の状態と省エネルギ効果とは、一般的にトレードオフの関係にある。よって、個人別の環境調整の制御を行う場合において、快適な環境の確保と省エネルギの実現とを両立させる技術が求められる。
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、個人別の環境の快適性を確保するとともに省エネルギを実現することができる環境調整制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]上記の課題を解決するため、本発明の一態様である環境調整制御装置は、環境調整装置が調整する環境の享受者による要求端末の操作によって前記要求端末から供給される環境制御要求コマンドを取得するコマンド取得部と、前記コマンド取得部が前記環境制御要求コマンドを取得したときの、前記環境調整装置が調整する環境の指標を示す環境データを取得する環境データ取得部と、前記環境データ取得部が取得した環境データに基づいて、前記環境調整装置が調整する環境を改善させるよう環境制御データを決定して前記環境制御データを前記環境調整装置に供給し、時間経過に伴って前記環境調整装置が省エネルギ運転となるように前記環境制御データを変化させる環境調整制御部と、を備えることを特徴とする。
[2]上記[1]記載の環境調整制御装置において、前記コマンド取得部が環境制御要求コマンドを取得するたびに、前記環境データ取得部が取得する環境データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶した環境データに基づいて、前記享受者における好み環境データを学習する学習部と、をさらに備え、前記環境調整制御部は、前記学習部が学習した好み環境データに基づいて前記環境調整装置の環境制御データを決定して前記環境制御データを前記環境調整装置に供給することを特徴とする。
[3]上記[1]または[2]記載の環境調整制御装置において、前記環境調整制御部は、環境制御データを前記環境調整装置に供給するたびに、前記環境制御データの変化率を小さくすることを特徴とする。
[4]上記[1]から[3]のうちいずれか一項記載の環境調整制御装置において、前記環境調整制御部は、前回決定した環境制御データにより前記環境調整装置から得られる環境データよりも省エネルギ効果が得られる環境データとなるように、前記環境データ取得部が取得した環境データに基づいて環境制御データを決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、個人別の環境の快適性を確保するとともに省エネルギを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1実施形態である環境調整制御装置を適用した照明調節制御装置を含む照明調節制御システムの全体構成図である。
【図2】同実施形態における、要求履歴情報のデータ構成の例を示す図である。
【図3】同実施形態において、照明調節制御装置が照明調節学習モードで動作しているときに、光センサが測定する照明装置照度値を経過時間に対応させて線グラフ化した図である。
【図4】図3に示した線グラフにおいて、照明装置が調光値を設定してその調光値による照明を開始してから、照明調節制御装置が調光制御要求コマンドに基づいて新たな調光値を照明装置に供給するまでの照度値の減少の仕方を模式的に示す図である。
【図5】同実施形態において、照明調節制御装置が照明調節学習モードに設定されている場合に実行する照明調節学習処理の動作手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態である環境調整制御装置を適用した空調調節制御装置を含む空調調節制御システムの全体構成図である。
【図7】同実施形態における、要求履歴情報のデータ構成の例を示す図である。
【図8】同実施形態において、空調調節制御装置が風量調節学習モードで動作しているときに、風量センサが測定する空調装置の風量値を経過時間に対応させて線グラフ化した図である。
【図9】同実施形態において、空調調節制御装置が風量調節学習モードに設定されている場合に実行する風量調節学習処理の動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
環境調整装置として照明装置を適用した場合の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態である環境調整制御装置を適用した照明調節制御装置を含む照明調節制御システム(環境調整制御システム)の全体構成図である。同図に示すように、照明調節制御システム1は、照明装置(環境調整装置)110と、光センサ120と、要求端末130と、照明調節制御装置(環境調整制御装置)140とを含んで構成される。
【0009】
照明装置110は、外部からの調光制御が可能な照明器具である。照明装置110は、照明調節制御装置140から供給される調光値(環境制御データ)に応じた強さの照明光を照明する。照明装置110は、ユーザAが着席する位置付近を照明するように設けられている。
光センサ120は、受光する光の照度を測定して照度データ(環境データ)を出力するセンサ装置であり、例えば照度計である。光センサ120は、照明装置110が照明する照明光を受光可能な位置に設けられ、測定した照度の照度データを照明調節制御装置140に供給する。なお、光センサ120は、照明装置110に一体的に設けられてもよい。
【0010】
要求端末130は、ユーザAによって操作される無線端末であり、ユーザAによる操作部の操作にしたがって端末ID(Identifier)と所定のコマンドとを照明調節制御装置140に送信する。端末IDは、要求端末130の識別子である。コマンドは、例えば、照明装置110の電源をオンにするための電源オン要求コマンド、照明装置110の電源をオフにするための電源オフ要求コマンド、照明調節制御装置140を照明調節学習モードに設定するための照明調節学習モード設定コマンド、照明調節制御装置140を通常照明モードに設定するための通常照明モード設定コマンド、および、照明装置110の調光の制御要求を行うための調光制御要求コマンド(環境制御要求コマンド)である。
要求端末130は、例えば、照明装置110の電源のオン/オフを操作したり調光量を調節したりして遠隔操作するリモートコントロール(リモコン)装置であってもよいし、スマートフォンのような携帯情報端末であってもよい。
【0011】
照明調節制御装置140は、照明装置110の調光を制御する制御装置である。照明調節制御装置140は、要求端末130が送信する端末IDと上記各種コマンドとを受信して取り込むと、これら端末IDとコマンドとに基づいた照明調節制御処理を実行して照明装置110の調光を制御する。
照明調節制御装置140は、その機能構成上、コマンド取得部141と、照度データ取得部(環境データ取得部)142と、照明調節制御部(環境調整制御部)143と、要求履歴情報記憶部(記憶部)144と、学習部145とを備える。
【0012】
コマンド取得部141は、要求端末130が送信する端末IDと上記各種コマンドとを受信して取り込み、これら端末IDとコマンドとを照明調節制御部143に供給する。
照度データ取得部142は、光センサ120から供給される照度データを取り込んで照明調節制御部143に供給する。
【0013】
照明調節制御部143は、コマンド取得部141から供給される端末IDとコマンドとに基づいて照明調節制御処理を実行する。
具体的には、照明調節制御部143は、コマンド取得部141から端末IDと照明調節学習モード設定コマンドとの供給を受けると、端末IDに対応付けられた要求端末130に対応した照明調節学習を行う照明調節学習モードに設定して照明調節学習処理を行う。
【0014】
照明調節学習処理として、照明調節制御部143は次の処理を行う。すなわち、照明調節制御部143は、コマンド取得部141から端末IDと調光制御要求コマンドとの供給を受けると、照度データ取得部142から供給される照度データを取り込む。そして、照明調節制御部143は、端末IDと、調光制御要求コマンドの内容を表す情報と、照度データと、図示しない計時部が計時する現在の年月日および時刻とを対応付けた要求履歴情報を要求履歴情報記憶部144に記憶する。そして、照明調節制御部143は、要求履歴情報記憶部144に記憶された要求履歴情報に基づく学習部145による学習処理の結果に基づいて、照明装置110に設定すべき調光値を計算し、その調光値を照明装置110に供給する。そして、照明調節制御部143は、上記の学習処理の結果に基づいて、照明装置110の照明光の照度を下げる方向、つまり省エネルギ運転となる方向に調光値を変化させる。
【0015】
また、照明調節制御部143は、コマンド取得部141から端末IDと通常照明モード設定コマンドとの供給を受けると、端末IDに対応付けられた要求端末130に対応した省エネルギ照明を行う通常照明モードに設定して通常照明処理を行う。
通常照明処理として、照明調節制御部143は、以前実行した照明調節学習処理によって学習したユーザAの好み照度値(好み環境データ)を読み出して、この好み照度値に対応する調光値を求めて照明装置110に供給する。この好み照度値については下述する。
【0016】
要求履歴情報記憶部144は、例えばメモリまたは磁気ハードディスク装置等のデータ記憶装置であり、要求履歴情報を書き込みおよび読み出し可能に記憶する。
【0017】
学習部145は、照明調節制御部143が照明調節学習モードに設定されているときに、要求履歴情報記憶部144に記憶された要求履歴情報に基づいて、端末IDに対応付けられた要求端末130に対応する照明装置110の好み照度値を学習し、その好み照度値と学習率とを照明調節制御部143に供給する。好み照度値は、要求履歴情報に含まれる照度データを学習して得られる照明装置110の照度の学習値である。本実施形態において、好み照度値は、ユーザAの好みの照度の下限領域であると推定されるデータである。学習率は、好み照度値の学習度合いを表す指標である。例えば、照明装置110の連続動作において好み照度値の学習を10回行った場合に、学習率が100%であると定義する。
【0018】
学習部145が実行する学習処理は、機械学習、例えば公知の学習モデルであるサポートベクタマシンを適用した処理である。また、学習部145は、公知の統計分析処理を適用して好み照度値を学習してもよい。この統計分析処理には、要求履歴情報に格納された照度データの平均値を求め、この平均値を好み照度値とする平均値計算処理も含まれる。
【0019】
図2は、要求履歴情報のデータ構成の例を示す図である。同図に示すように、要求履歴情報は、「年月日」と「時刻」と「端末ID」と「調光制御要求コマンド」と「照度データ」との各項目を対応付けたデータテーブルである。「年月日」と「時刻」とのそれぞれは、照明調節制御部143が端末IDと調光制御要求コマンドの内容を表す情報と照度データとを記憶するときに計時部から取得する現在の年月日の情報と時刻の情報とをそれぞれ格納する項目である。「端末ID」と「調光制御要求コマンド」とのそれぞれは、照明調節制御部143がコマンド取得部141から供給される端末IDと調光制御要求コマンドの内容を表す情報とをそれぞれ格納する項目である。調光制御要求コマンドの内容を表す情報は、例えば、“もっと明るく”や“もっと暗く”等、照明に対する要求事項を表す情報である。「照度データ」は、照明調節制御部143が照度データ取得部142から供給される照度データを取得して格納する項目である。照度データの単位は、例えばルクスである。
【0020】
図3は、照明調節制御装置140が照明調節学習モードで動作しているときに、光センサ120が測定する照明装置110の照度値を経過時間に対応させて線グラフ化した図である。同図において、(t0,i0)は、時刻t0における光センサ120の照度値i0を示し、照明調節制御装置140が、要求端末130から供給された電源オン要求コマンドに基づいて、予め記憶した電源オン時の調光値を照明装置110に供給したポイントを示している。この電源オン時の調光値は、照明装置110の照明環境において十分に明るいとユーザAに知覚される程度の照度を得ることのできる値である。また、(t1,i1)は、時刻t1における光センサ120の照度値i1を示し、照明調節制御装置140が、要求端末130から供給された一番目の調光制御要求コマンドに基づいて求めた一番目の調光値を照明装置110に供給したポイントを示している。この一番目の調光値は、この調光値の設定により得られる照度が、電源オン時の調光値の設定により得られる照度よりも低くなる値である。同様に、(t2,i2)は、時刻t2における光センサ120の照度値i2を示し、照明調節制御装置140が、要求端末130から供給された二番目の調光制御要求コマンドに基づいて求めた二番目の調光値を照明装置110に供給したポイントを示している。この二番目の調光値は、この調光値の設定により得られる照度が、一番目の調光値の設定により得られる照度よりも低くなる値である。
【0021】
つまり、電源オン要求コマンドおよび複数の調光制御要求コマンドそれぞれに基づいて照明装置110に供給される調光値は、その時系列において、調光値の設定により得られる照度値が減少するように変化する。これら照度値の減少度合いは、学習部145における学習処理の結果に応じて決定される。例えば、表1に示すように、学習率Lが低い段階では、減少度合いを大きくし、学習率Lが高くなるに伴って減少度合いを小さくする。
【0022】
【表1】

【0023】
照明調節制御装置140は、表1に係るデータを保有している。
このように減少度合いを決定することにより、照明装置110の無駄なエネルギを削減することができ、省エネルギ効果が大きくなる。
【0024】
また、図3に示すように、照明調節制御装置140は、電源オン時の調光値を照明装置110に供給した後、照明装置110の照明光の照度を下げる方向に調光値を変化させる。このときの時間に対する照度値の変化率を変化率R1とする。また、照明調節制御装置140は、一番目の調光値を照明装置110に供給した後、照明装置110の照明光の照度を下げる方向に調光値を変化させる。このときの時間に対する照度値の変化率を変化率R2とし、変化率R2が変化率R1以下の値になるようにする。同様に、照明調節制御装置140は、二番目の調光値を照明装置110に供給した後、照明装置110の照明光の照度を下げる方向に調光値を変化させる。このときの時間に対する照度値の変化率を変化率R3とし、変化率R3が変化率R2以下の値になるようにする。
【0025】
つまり、照明調節制御装置140は、電源オン要求コマンドおよび複数の調光制御要求コマンドそれぞれに基づいて計算した調光値を照明装置110に供給した後、照明装置110の照明光の照度を下げる方向に調光値を変化させるが、コマンドごとの照度値の変化率は、時系列において等しいか小さくなるかのいずれかになるようにする。これら照度値の変化率は、学習部145における学習処理の結果に応じて決定される。例えば、学習率が低い段階では変化率を大きくし、学習率が高くなるに伴って変化率を小さくする。また、例えば、学習率が一定レベルに達するまでは変化率を一定率に保ち、学習率がその一定レベルを超えた場合は、学習率が高くなるに伴って変化率を小さくする。
このように変化率を決定することにより、効率的に学習率を高めていくことができ、よってユーザAの好み照度値の絞り込みを早く行うことができる。
【0026】
図3において、照度値i0を除く照度値i1,i2,i3,・・・,i7は好み照度値である。学習部145は、学習率が100%になるまで好み照度値を学習することにより、好み照度値の範囲、言い換えると、ユーザAが“もっと明るくしたい”と感じる範囲を求めることができる。
【0027】
図4(a)〜(d)のそれぞれは、図3に示した線グラフにおいて、照明装置110が調光値を設定してその調光値による照明を開始してから、照明調節制御装置140が調光制御要求コマンドに基づいて新たな調光値を照明装置110に供給するまでの照度値の減少の仕方を模式的に示す図である。図4(a)〜(d)それぞれに示すように、照度値の減少の仕方は、同図(a)に示すような比例的な減少であってもよいし、同図(b)〜(d)それぞれに示すような減少曲線を描くような減少であってもよい。
【0028】
次に、照明調節制御装置140の照明調節学習モードにおける照明調節学習処理の動作について説明する。図5は、照明調節制御装置140が照明調節学習モードに設定されている場合に実行する照明調節学習処理の動作手順を示すフローチャートである。
まず、ステップS101において、コマンド取得部141は、ユーザAにより操作された要求端末130が送信する端末IDと電源オン要求コマンドとを受信すると、これら端末IDと電源オン要求コマンドとを取り込んで照明調節制御部143に供給する。次に、照明調節制御部143は、電源オン要求コマンドに基づいて、予め記憶した電源オン時の調光値を読み出して照明装置110に供給する。
【0029】
次に、ステップS102において、照明調節制御部143は、照明装置110の照明光の照度を下げる方向に調光値を変化させる。具体的には、照明調節制御部143は、学習部145における学習処理の結果、具体的には、例えば学習率に応じて照度値の変化率を決定し、その変化率に合致するように調光値を算出して照明装置110に供給する。
次に、ステップS103において、コマンド取得部141は、要求端末130から端末IDと調光制御要求コマンドとが供給されるのを待ち(S103:NO)、ユーザAにより操作された要求端末130が送信する端末IDと調光制御要求コマンドとを受信すると(S103:YES)、これら端末IDと調光制御要求コマンドとを取り込んで照明調節制御部143に供給する。
【0030】
次に、ステップS104において、照度データ取得部142は、光センサ120から照度データを取得し、その照度データを照明調節制御部143に供給する。
次に、ステップS105において、照明調節制御部143は、ステップS103の処理において供給を受けた端末IDおよび調光制御要求コマンドの内容を表す情報と、ステップS104の処理において供給を受けた照度データと、計時部が計時する現在の年月日および時刻とを対応付けた要求履歴情報を要求履歴情報記憶部144に記憶する。
次に、ステップS106において、学習部145は、要求履歴情報記憶部144に記憶された要求履歴情報に基づいて、端末IDに対応付けられた要求端末130に対応する照明装置110の好み照度値を機械学習や統計分析等の学習処理の実行によって学習し、その好み照度値と学習率とを学習処理の結果として照明調節制御部143に供給する。
【0031】
次に、ステップS107において、照明調節制御部143は、学習処理の結果に基づいて照明装置110に設定すべき調光値を計算する。具体的には、照明調節制御部143は、例えば、前記の表1に係るデータに基づいて目標の照度値を決定し、この目標の照度値に対応する調光値を計算する。
次に、ステップS108において、照明調節制御部143は、調光値を照明装置110に供給する。
次に、ステップS109において、照明調節制御部143は、照明調節学習モードを終了させるか否かを判定する。具体的には、照明調節制御部143は、学習率が100%に達したか否かを判定する。そして、照明調節制御部143は、学習率が100%に達していないと判定した場合(S109:NO)は、ステップS102の処理に移り、学習率が100%に達したと判定した場合(S109:YES)は、本フローチャートの処理を終了させる。
【0032】
以上詳述したように、照明装置110の調光を制御する照明調節制御装置140は、照明装置110の電源がオンして照明を開始した状態から照明の照度を下げる方向、すなわち省エネルギ効果が奏されるように調光値を徐々に変化させる。そして、照明装置110の徐々に照度が下がる照明を受けているユーザAが、「もっと明るくしたい」と感じたときに、要求端末130が操作されて端末IDと調光制御要求コマンドとが照明調節制御装置140に供給される。端末IDと調光制御要求コマンドとの供給を受けて取り込んだ照明調節制御装置140は、所定の照度の照明光を得るための調光値を計算して照明装置110に供給するとともに、調光制御要求コマンドを取り込んだ時点の照度値を好み照度値として学習する。照明調節制御装置140は、ユーザAの操作による要求端末130からの調光制御要求コマンドの取得と、この取得した調光制御要求コマンドに基づく調光制御とを繰り返し行って学習率を高めることにより、照明装置110の省エネルギ効果を奏しながらユーザAの好み照度値、言い換えるとユーザAの好みの照度の下限領域を求めることができる。
【0033】
学習が完了した後は、照明調節制御装置140は、通常照明モードに設定して、ユーザAの好み照度値に対応する調光値を求めて照明装置110に供給する。そして、その調光値の供給を受けた照明装置110は、ユーザAの好み照度値となる照明を行う。よって、照明調節制御装置140は、通常照明状態において、ユーザAの快適性を損なわない範囲で、且つ省エネルギ効果のある照明を行わせることができる。
【0034】
したがって、本発明の第1実施形態によれば、ユーザAにおける照明の快適性を確保するとともに、照明装置110の省エネルギを実現することができる。
【0035】
[第2の実施の形態]
環境調整装置として空調装置を適用した場合の実施形態について説明する。図6は、本発明の第2実施形態である環境調整制御装置を適用した空調調節制御装置を含む空調調節制御システム(環境調整制御システム)の全体構成図である。同図に示すように、空調調節制御システム2は、空調装置(環境調整装置)210と、風量センサ220と、要求端末230と、空調調節制御装置(環境調整制御装置)240とを含んで構成される。
【0036】
空調装置210は、外部からの風量制御が可能な空調機である。空調装置210は、空調調節制御装置240から供給される風量設定値(環境制御データ)に応じた風量の送風を行う。空調装置210は、ユーザBが着席する位置付近に送風するように設けられている。
風量センサ220は、風量を測定して風量データ(環境データ)を出力するセンサ装置であり、例えば風量計である。風量センサ220は、空調装置210が送風する風を受けることのできる位置に設けられ、測定した風量データを空調調節制御装置240に供給する。なお、風量センサ220は、空調装置210に一体的に設けられてもよい。
【0037】
要求端末230は、ユーザBによって操作される無線端末であり、ユーザBによる操作部の操作にしたがって端末ID(Identifier)と所定のコマンドとを空調調節制御装置240に送信する。端末IDは、要求端末230の識別子である。コマンドは、例えば、空調装置210の電源をオンにするための電源オン要求コマンド、空調装置210の電源をオフにするための電源オフ要求コマンド、空調調節制御装置240を風量調節学習モードに設定するための風量調節学習モード設定コマンド、空調調節制御装置240を通常送風モードに設定するための通常送風モード設定コマンド、および、空調装置210の風量の制御要求を行うための風量制御要求コマンド(環境制御要求コマンド)である。
要求端末230は、例えば、空調装置210の電源のオン/オフを操作したり風量を調節したりして遠隔操作するリモートコントロール(リモコン)装置であってもよいし、スマートフォンのような携帯情報端末であってもよい。
【0038】
空調調節制御装置240は、空調装置210の送風量を制御する制御装置である。空調調節制御装置240は、要求端末230が送信する端末IDと上記各種コマンドとを受信して取り込むと、これら端末IDとコマンドとに基づいた風量調節制御処理を実行して空調装置210の送風量を制御する。
空調調節制御装置240は、その機能構成上、コマンド取得部241と、風量データ取得部(環境データ取得部)242と、空調調節制御部(環境調整制御部)243と、要求履歴情報記憶部(記憶部)244と、学習部245と、詳細ステータス取得部246とを備える。
【0039】
コマンド取得部241は、要求端末230が送信する端末IDと上記各種コマンドとを受信して取り込み、これら端末IDとコマンドとを空調調節制御部243に供給する。
【0040】
詳細ステータス取得部246は、コマンド取得部241が要求端末230から端末IDと風量制御要求コマンドとを供給されたことを受けて所定の詳細ステータスを取得する。詳細ステータスは、例えば、端末IDに対応するユーザBに関する個人属性情報と入館時刻情報とユーザ位置情報とである。個人属性情報は、例えば性別、年齢等の個人に関する情報である。その他、個人属性情報は、“暑がり”や“寒がり”等の個人の特性を示す情報を含めてもよい。詳細ステータス取得部246は、要求端末230の端末IDと個人属性情報とを対応付けた個人属性データテーブルを予め記憶し、コマンド取得部241から端末IDの供給を受けることにより、その端末IDをキーとして個人属性データテーブルから個人属性情報を抽出する。入館時刻情報は、ユーザBが建物に入館したときの時刻情報である。詳細ステータス取得部246は、例えば、ユーザBの入館時の個人認証記録から入館時刻情報を取得したり、ユーザBが携帯するGPS(Global Positioning System)受信機の測位情報と建物の位置情報と時刻情報とに基づいて、ユーザBが入館したときの入館時刻情報を取得したりする。また、キーボードやマウス等の入力装置を用いて入館時刻情報を入力してもよい。ユーザ位置情報は、ユーザBの位置情報であり、ユーザBが携帯するGPS受信機や、要求端末230を携帯している場合は、要求端末230に内蔵されたGPS受信部の測位情報である。詳細ステータス取得部246は、詳細ステータスを取得すると空調調節制御部243に供給する。
【0041】
風量データ取得部242は、風量センサ220から供給される風量データを取り込んで空調調節制御部243に供給する。
【0042】
空調調節制御部243は、コマンド取得部241から供給される端末IDとコマンドとに基づいて風量調節制御処理を実行する。
具体的には、空調調節制御部243は、コマンド取得部241から端末IDと風量調節学習モード設定コマンドとの供給を受けると、端末IDに対応付けられた要求端末230に対応した風量調節学習を行う風量調節学習モードに設定して風量調節学習処理を行う。
【0043】
風量調節学習処理として、空調調節制御部243は次の処理を行う。すなわち、空調調節制御部243は、コマンド取得部241から端末IDと風量制御要求コマンドとの供給を受けると、詳細ステータス取得部246から上記の詳細ステータスを取得し、また風量データ取得部242から供給される風量データを取り込む。そして、空調調節制御部243は、端末IDと、風量制御要求コマンドの内容を表す情報と、風量データと、図示しない計時部が計時する現在の年月日および時刻と、詳細ステータスとを対応付けた要求履歴情報を要求履歴情報記憶部244に記憶する。そして、空調調節制御部243は、要求履歴情報記憶部244に記憶された要求履歴情報に基づく学習部245による学習処理の結果に基づいて、空調装置210に設定すべき風量設定値を計算し、その風量設定値を空調装置210に供給する。そして、空調調節制御部243は、上記の学習処理の結果に基づいて、空調装置210の風量を少なくする方向、つまり省エネルギ運転となる方向に風量設定値を変化させる。
【0044】
また、空調調節制御部243は、コマンド取得部241から端末IDと通常送風モード設定コマンドとの供給を受けると、端末IDに対応付けられた要求端末230に対応した省エネルギ送風を行う通常送風モードに設定して通常送風処理を行う。
通常送風処理として、空調調節制御部243は、以前実行した風量調節学習処理によって学習したユーザBの好み風量値(好み環境データ)を読み出して、この好み風量値に対応する風量設定値を求めて空調装置210に供給する。この好み風量値については下述する。
【0045】
要求履歴情報記憶部244は、例えばメモリまたは磁気ハードディスク装置等のデータ記憶装置であり、要求履歴情報を書き込みおよび読み出し可能に記憶する。
【0046】
学習部245は、空調調節制御部243が風量調節学習モードに設定されているときに、要求履歴情報記憶部244に記憶された要求履歴情報に基づいて、端末IDに対応付けられた要求端末230に対応する空調装置210の好み風量値を学習し、その好み風量値と学習率とを空調調節制御部243に供給する。好み風量値は、要求履歴情報に含まれる風量データを学習して得られる空調装置210の風量の学習値である。本実施形態において、好み風量値は、ユーザBの好みの風量の下限領域であると推定されるデータである。学習率は、好み風量値の学習度合いを表す指標である。例えば、空調装置210の連続動作において好み風量値の学習を10回行った場合に、学習率が100%であると定義する。
【0047】
学習部245が実行する学習処理は、機械学習、例えば公知の学習モデルであるサポートベクタマシンを適用した処理である。本実施形態において、学習部245は、要求履歴情報に含まれる詳細ステータスを参照して好み風量値を学習する。具体的には、例えば、学習部245は、詳細ステータスに含まれる性別や年齢に応じた係数を用いて好み風量値を学習する。この係数は、例えば、女性よりも男性の方が好み風量値を大きくしたり、若年者よりも年配者の方が好み風量値を小さくしたりする係数である。また、学習部245は、詳細ステータスに含まれる入館時刻情報に基づいて建物内の滞在時間を計算し、その滞在時間に応じた係数を用いて好み風量値を学習する。この係数は、例えば、建物内の滞在時間が長い程、好み風量値を小さくする係数である。また、学習部245は、詳細ステータスに含まれるユーザ位置情報に基づいて空調装置210の送風口からユーザBまでの距離を計算し、その距離に応じた係数を用いて好み風量値を学習する。この係数は、例えば、距離が長い程、好み風量値を大きくする係数である。
【0048】
また、学習部245は、公知の統計分析処理を適用して好み風量値を学習してもよい。この統計分析処理には、要求履歴情報に格納された風量データの平均値を求め、この平均値を好み風量値とする平均値計算処理も含まれる。
【0049】
図7は、要求履歴情報のデータ構成の例を示す図である。同図に示すように、要求履歴情報は、「年月日」と「時刻」と「端末ID」と「風量制御要求コマンド」と「風量データ」と「詳細ステータス」との各項目を対応付けたデータテーブルである。「年月日」と「時刻」とのそれぞれは、空調調節制御部243が端末IDと風量制御要求コマンドの内容を表す情報と風量データと詳細ステータスとを記憶するときに計時部から取得する現在の年月日の情報と時刻の情報とをそれぞれ格納する項目である。「端末ID」と「風量制御要求コマンド」とのそれぞれは、空調調節制御部243がコマンド取得部241から供給される端末IDと風量制御要求コマンドの内容を表す情報とをそれぞれ格納する項目である。風量制御要求コマンドの内容を表す情報は、例えば、“もっと風を強く”や“もっと風を弱く”等、送風に対する要求事項を表す情報である。「風量データ」は、空調調節制御部243が風量データ取得部242から供給される風量データを取得して格納する項目である。風量データの単位は、例えばm/minである。
【0050】
「詳細ステータス」は、「性別」と「年齢」と「入館時刻」と「位置データ」との各項目を含んでいる。「性別」は、空調調節制御部243が詳細ステータス取得部246から取得するユーザBの性別を表す情報である。「年齢」は、空調調節制御部243が詳細ステータス取得部246から取得するユーザBの年齢を表す情報である。「入館時刻」は、空調調節制御部243が詳細ステータス取得部246から取得するユーザBの入館時刻情報である。「位置データ」は、空調調節制御部243が詳細ステータス取得部246から取得するユーザBのユーザ位置情報である。
【0051】
図8は、空調調節制御装置240が風量調節学習モードで動作しているときに、風量センサ220が測定する空調装置210の風量値を経過時間に対応させて線グラフ化した図である。同図において、(t0,a0)は、時刻t0における風量センサ220の風量値a0を示し、空調調節制御装置240が、要求端末230から供給された電源オン要求コマンドに基づいて、予め記憶した電源オン時の風量設定値を空調装置210に供給したポイントを示している。この電源オン時の風量設定値は、空調装置210の空調環境において十分に快適であるとユーザBに知覚される程度の風量を得ることのできる値である。また、(t1,a1)は、時刻t1における風量センサ220の風量値a1を示し、空調調節制御装置240が、要求端末230から供給された一番目の風量制御要求コマンドに基づいて求めた一番目の風量設定値を空調装置210に供給したポイントを示している。この一番目の風量設定値は、この風量設定値の設定により得られる風量が、電源オン時の風量設定値の設定により得られる風量よりも少なくなる値である。同様に、(t2,a2)は、時刻t2における風量センサ220の風量値a2を示し、空調調節制御装置240が、要求端末230から供給された二番目の風量制御要求コマンドに基づいて求めた二番目の風量設定値を空調装置210に供給したポイントを示している。この二番目の風量設定値は、この風量設定値の設定により得られる風量が、一番目の風量設定値の設定により得られる風量よりも少なくなる値である。
【0052】
つまり、電源オン要求コマンドおよび複数の風量制御要求コマンドそれぞれに基づいて空調装置210に供給される風量設定値は、その時系列において、風量設定値の設定により得られる風量値が減少するように変化する。これら風量値の減少度合いは、学習部245における学習処理の結果に応じて決定される。例えば、第1実施形態における表1に示すように、学習率Lが低い段階では、減少度合いを大きくし、学習率Lが高くなるに伴って減少度合いを小さくする。
空調調節制御装置240は、表1に係るデータを保有している。
このように減少度合いを決定することにより、空調装置210の無駄なエネルギを削減することができ、省エネルギ効果が大きくなる。
【0053】
また、図8に示すように、空調調節制御装置240は、電源オン時の風量設定値を空調装置210に供給した後、空調装置210の風量を少なくする方向に風量設定値を変化させる。このときの時間に対する風量値の変化率を変化率R1とする。また、空調調節制御装置240は、一番目の風量設定値を空調装置210に供給した後、空調装置210の風量を少なくする方向に風量設定値を変化させる。このときの時間に対する風量値の変化率を変化率R2とし、変化率R2が変化率R1以下の値になるようにする。同様に、空調調節制御装置240は、二番目の風量設定値を空調装置210に供給した後、空調装置210の風量を少なくする方向に風量設定値を変化させる。このときの時間に対する風量値の変化率を変化率R3とし、変化率R3が変化率R2以下の値になるようにする。
【0054】
つまり、空調調節制御装置240は、電源オン要求コマンドおよび複数の風量制御要求コマンドそれぞれに基づいて計算した風量設定値を空調装置210に供給した後、空調装置210の風量を少なくする方向に風量設定値を変化させるが、コマンドごとの風量値の変化率は、時系列において等しいか小さくなるかのいずれかになるようにする。これら風量値の変化率は、学習部245における学習処理の結果に応じて決定される。例えば、学習率が低い段階では変化率を大きくし、学習率が高くなるに伴って変化率を小さくする。また、例えば、学習率が一定レベルに達するまでは変化率を一定率に保ち、学習率がその一定レベルを超えた場合は、学習率が高くなるに伴って変化率を小さくする。
このように変化率を決定することにより、効率的に学習率を高めていくことができ、よってユーザBの好み風量値の絞り込みを早く行うことができる。
【0055】
図8において、風量値a0を除く風量値a1,a2,a3,・・・,a7は好み風量値である。学習部245は、学習率が100%になるまで好み風量値を学習することにより、好み風量値の範囲、言い換えると、ユーザBが“もっと風を強くしたい”と感じる範囲を求めることができる。
【0056】
なお、空調装置210が風量設定値を設定してその風量設定値による送風を開始してから、空調調節制御装置240が要求端末230から供給された風量制御要求コマンドに基づいて新たな風量設定値を空調装置210に供給するまでの風量値の減少の仕方は、第1実施形態において説明した図4(a)〜(d)のそれぞれと同様である。
【0057】
次に、空調調節制御装置240の風量調節学習モードにおける風量調節学習処理の動作について説明する。図9は、空調調節制御装置240が風量調節学習モードに設定されている場合に実行する風量調節学習処理の動作手順を示すフローチャートである。
まず、ステップS201において、コマンド取得部241は、ユーザBにより操作された要求端末230が送信する端末IDと電源オン要求コマンドとを受信すると、これら端末IDと電源オン要求コマンドとを取り込んで空調調節制御部243に供給する。次に、空調調節制御部243は、電源オン要求コマンドに基づいて、予め記憶した電源オン時の風量設定値を読み出して空調装置210に供給する。
【0058】
次に、ステップS202において、空調調節制御部243は、空調装置210の風量を少なくする方向に風量設定値を変化させる。具体的には、空調調節制御部243は、学習部245における学習処理の結果、具体的には、例えば学習率に応じて風量値の変化率を決定し、その変化率に合致するように風量設定値を算出して空調装置210に供給する。
次に、ステップS203において、コマンド取得部241は、要求端末230から端末IDと風量制御要求コマンドとが供給されるのを待ち(S203:NO)、ユーザBにより操作された要求端末230が送信する端末IDと風量制御要求コマンドとを受信すると(S203:YES)、これら端末IDと風量制御要求コマンドとを取り込んで空調調節制御部243に供給する。
【0059】
次に、ステップS204において、詳細ステータス取得部246は、詳細ステータスを取得して空調調節制御部243に供給する。具体的には、詳細ステータス取得部246は、ユーザBに関する個人属性情報と入館時刻情報とユーザ位置情報とを取得して空調調節制御部243に供給する。
次に、ステップS205において、風量データ取得部242は、風量センサ220から風量データを取得し、その風量データを空調調節制御部243に供給する。
次に、ステップS206において、空調調節制御部243は、ステップS203の処理において供給を受けた端末IDおよび風量制御要求コマンドの内容を表す情報と、ステップS204の処理において供給を受けた詳細ステータスと、ステップS205の処理において供給を受けた風量データと、計時部が計時する現在の年月日および時刻とを対応付けた要求履歴情報を要求履歴情報記憶部244に記憶する。
【0060】
次に、ステップS207において、学習部245は、要求履歴情報記憶部244に記憶された要求履歴情報に基づいて、端末IDに対応付けられた要求端末230に対応する空調装置210の好み風量値を機械学習や統計分析等の学習処理の実行によって学習し、その好み風量値と学習率とを学習処理の結果として空調調節制御部243に供給する。
次に、ステップS208において、空調調節制御部243は、学習処理の結果に基づいて空調装置210に設定すべき風量設定値を計算する。具体的には、空調調節制御部243は、例えば、前記の表2に係るデータに基づいて目標の風量値を決定し、この目標の風量値に対応する風量設定値を計算する。
次に、ステップS209において、空調調節制御部243は、風量設定値を空調装置210に供給する。
【0061】
次に、ステップS210において、空調調節制御部243は、風量調節学習モードを終了させるか否かを判定する。具体的には、空調調節制御部243は、学習率が100%に達したか否かを判定する。そして、空調調節制御部243は、学習率が100%に達していないと判定した場合(S210:NO)は、ステップS202の処理に移り、学習率が100%に達したと判定した場合(S210:YES)は、本フローチャートの処理を終了させる。
【0062】
以上詳述したように、空調装置210の風量を制御する空調調節制御装置240は、空調装置210の電源がオンして送風を開始した状態から風量を少なくする方向、すなわち省エネルギ効果が奏されるように風量設定値を徐々に変化させる。そして、空調装置210の徐々に風量が少なくなる送風を受けているユーザBが、「もっと風を強くしたい」と感じたときに、要求端末230が操作されて端末IDと風量制御要求コマンドとが空調調節制御装置240に供給される。端末IDと風量制御要求コマンドとの供給を受けて取り込んだ空調調節制御装置240は、所定の風量の風を得るための風量設定値を計算して空調装置210に供給するとともに、風量制御要求コマンドを取り込んだ時点の風量値を好み風量値として学習する。空調調節制御装置240は、ユーザBの操作による要求端末230からの風量制御要求コマンドの取得と、この取得した風量制御要求コマンドに基づく風量制御とを繰り返し行って学習率を高めることにより、空調装置210の省エネルギ効果を奏しながらユーザBの好み風量値、言い換えるとユーザBの好みの風量の下限領域を求めることができる。
【0063】
本実施形態においては、空調調節制御装置240は、詳細ステータスである、個人属性情報と入館時刻情報とユーザ位置情報とを参照して好み風量値を学習するようにした。これにより、個人の属性等に応じた学習を行うことができ、精度の高い好み風量値を求めることができる。
【0064】
学習が完了した後は、空調調節制御装置240は、通常送風モードに設定して、ユーザBの好み風量値に対応する風量設定値を求めて空調装置210に供給する。そして、その風量設定値の供給を受けた空調装置210は、ユーザBの好み風量値となる送風を行う。よって、空調調節制御装置240は、通常送風状態において、ユーザBの快適性を損なわない範囲で、且つ省エネルギ効果のある送風を行わせることができる。
【0065】
したがって、本発明の第2実施形態によれば、ユーザBにおける送風の快適性を確保するとともに、空調装置210の省エネルギを実現することができる。
【0066】
なお、前述した第1実施形態において、照明調節制御部143は、前記の表1に係るデータに基づいて目標の照度値を決定し、この目標の照度値に対応する調光値を計算するようにした。これ以外に、照明調節制御部143は、一定量の照度を上げるための調光値を計算したり、一定の照度になるように調光値を計算したりしてもよい。
【0067】
また、第2実施形態においても同様に、空調調節制御部243は、一定の風量を上げるための風量設定値を計算したり、一定の風量になるように風量設定値を計算したりしてもよい。
【0068】
また、上述した第1実施形態および第2実施形態における環境調整制御装置の一部の機能をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、その制御機能を実現するための環境調整制御プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録された環境調整制御プログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺装置のハードウェアを含むものである。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、メモリカード等の可搬型記録媒体、コンピュータシステムに内蔵される磁気ハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバ装置やクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持するものを含んでもよい。また上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせにより実現するものであってもよい。
【0069】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はその実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 照明調節制御システム(環境調整制御システム)
2 空調調節制御システム(環境調整制御システム)
110 照明装置(環境調整装置)
120 光センサ
130 要求端末
140 照明調節制御装置(環境調整制御装置)
141 コマンド取得部
142 照度データ取得部(環境データ取得部)
143 照明調節制御部(環境調整制御部)
144 要求履歴情報記憶部(記憶部)
145 学習部
210 空調装置(環境調整装置)
220 風量センサ
230 要求端末
240 空調調節制御装置(環境調整制御装置)
241 コマンド取得部
242 風量データ取得部(環境データ取得部)
243 空調調節制御部(環境調整制御部)
244 要求履歴情報記憶部(記憶部)
245 学習部
246 詳細ステータス取得部
A,B ユーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境調整装置が調整する環境の享受者による要求端末の操作によって前記要求端末から供給される環境制御要求コマンドを取得するコマンド取得部と、
前記コマンド取得部が前記環境制御要求コマンドを取得したときの、前記環境調整装置が調整する環境の指標を示す環境データを取得する環境データ取得部と、
前記環境データ取得部が取得した環境データに基づいて、前記環境調整装置が調整する環境を改善させるよう環境制御データを決定して前記環境制御データを前記環境調整装置に供給し、時間経過に伴って前記環境調整装置が省エネルギ運転となるように前記環境制御データを変化させる環境調整制御部と、
を備えることを特徴とする環境調整制御装置。
【請求項2】
前記コマンド取得部が環境制御要求コマンドを取得するたびに、前記環境データ取得部が取得する環境データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶した環境データに基づいて、前記享受者における好み環境データを学習する学習部と、
をさらに備え、
前記環境調整制御部は、前記学習部が学習した好み環境データに基づいて前記環境調整装置の環境制御データを決定して前記環境制御データを前記環境調整装置に供給する
ことを特徴とする請求項1記載の環境調整制御装置。
【請求項3】
前記環境調整制御部は、環境制御データを前記環境調整装置に供給するたびに、前記環境制御データの変化率を小さくする
ことを特徴とする請求項1または2記載の環境調整制御装置。
【請求項4】
前記環境調整制御部は、前回決定した環境制御データにより前記環境調整装置から得られる環境データよりも省エネルギ効果が得られる環境データとなるように、前記環境データ取得部が取得した環境データに基づいて環境制御データを決定する
ことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項記載の環境調整制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−38514(P2012−38514A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176481(P2010−176481)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】