説明

環状シール材

【課題】装着面と当接面との間からのシール材のはみ出し、溝内での傾き等を防止するシール材の提供。
【解決手段】装着部材の装着面に形成された環状のシール溝内に装着され、シール溝の底部から流体を導入することで当接面に押し付けられことにより装着部材と当接部材との間を封止する環状シール材で、シール溝内に装着された際その断面において、シール溝の開口側に位置するよう配設されるとともに、その装着面よりも当接面側に膨出してなる膨出部12と、シール溝の底部側に位置するよう配設され、シール溝の径内側面および径外側面に沿うように膨出部から連続してそれぞれ延出された第1リップ部14および第2リップ部16とを少なくとも備えた本体部18を有し、さらに膨出部の径内周側および/または径外周側に位置する隅角部分30に、本体部よりも硬質な材料からなるはみ出し防止用バックアップリング92が配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着部材に形成された環状のシール溝内に装着され、この装着部材と当接部材との間を封止するために用いられる環状シール材に関し、より具体的には処理釜の収容部と蓋体との間を封止するために用いられる環状シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より処理釜を用いて、例えば薫蒸処理などが行われている。このような処理釜は、略円筒状の収容部と、この収容部の両端を密封するために設けられた一方と他方の蓋体と、を備えており、例えば蓋体側にシール溝が形成され、このシール溝内に環状シール材を装着し、蓋体と収容部とを対向させて環状シール材を収容部と当接させることで、環状シール材が蓋体と収容部との間を封止するようになっている。
【0003】
ところで封止に用いられる環状シール材100は、図9に示したように、その断面形状が略U字型であって、膨出部102と、膨出部102から連続的に延出された第1リップ部104および第2リップ部106と、を備える本体部108から構成され、第1リップ部104と第2リップ部106との間で凹部114が形成されたものであって、環状シール材100の幅が、装着されるシール溝の幅と略同程度の大きさに設定されたものである。
【0004】
この環状シール材100を、図10に示したように例えば処理釜200の蓋体220に設けられたシール溝230内に装着する際には、まず環状シール材100の第1リップ部104と第2リップ部106側が、シール溝230の底部232側に位置し、開口240側に膨出部102が位置するように装着され、膨出部102は開口240よりも若干外側に膨出するように装着される。
【0005】
なお環状シール材100がシール溝230に装着された時点では、シール溝230の径内側面236と環状シール材100の径内周側110との間、およびシール溝230の径外側面238と環状シール材100の径外周側112との間が封止されている。
【0006】
次いで、この状態で蓋体220と収容部210とを対向させ、蓋体220に形成されたシール溝230の底部232側の流体導入孔234から流体300をシール溝230内に導入する。
【0007】
すると環状シール材100の凹部114がこの流体300を受け、環状シール材100が対向する収容部210側に押圧され、膨出部102が収容部210に当接されて、膨出部102と収容部210との間が封止されることとなる。
【0008】
この3箇所を封止することで、収容部210と蓋体220との間が環状シール材100で完全に封止された状態とすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、このように収容部210と蓋体220との間を環状シール材100で封止する際、シール溝230の底部232側から導入される流体300の圧力を上げて行くと、環状シール材100は、図11(a)に示したようにシール溝230の底部232側から導入された流体300の圧力により収容部210側に強く押され、特に膨出部102全体が収容部210の当接面212に押し付けられて変形されることとなる。
【0010】
このとき、膨出部102の隅角部分116,118は、蓋体220の装着面222と収容部210の当接面212との間にはみ出してしまう場合がある。
そして、はみ出しが生じた状態で収容部210と蓋体220との間が封止された後、図11(b)に示したように収容部210の内部に炭酸ガスなどの流体302が導入されて、収容部210の内方から外方に向かって圧力が生ずると、今後は膨出部102の径内周側110の隅角部分116が径外周側112に向かって押圧され、径外周側112の隅角部分118は蓋体220の装着面222と収容部210の当接面212との間にさらにはみ出しを生ずるようになる。
【0011】
このように膨出部102の隅角部分118のみが蓋体220の装着面222と収容部210の当接面212との間にはみ出してしまうと、環状シール材100の姿勢がシール溝230内で傾いてしまう。
【0012】
特に図11(b)に示した状態のように、環状シール材100がシール溝230の底部232から導入される流体300による圧力と、収容部210の内部から生ずる流体302による圧力との両方の圧力を受ける場合、環状シール材100全体がこのはみ出しを生じている方向(図11(b)では左下の方向)に引っ張られて、環状シール材100の径内周側110とシール溝230の径内側面236との間におけるシール性が悪くなり、この環状シール材100の径内周側110とシール溝230の径内側面236との間から、シール溝230の底部232側から導入された流体300が漏れ出してしまう場合があった。
【0013】
このような流体300の漏れ出しは、所望のシール性能を得られない原因にもなるため、特に重大な問題である。
また、環状シール材100のはみ出しが生じた部分には、局部的に大きな負荷がかかっているため、製品寿命を短命化させてしまう要因でもあり、また収容部210と蓋体220との間で擦れているため、パーティクルが発生したり千切れたりする場合もあり、これらの問題解決が求められているのが現状である。
【0014】
本発明はこのような現状に鑑みなされたものであって、シール溝の底部側から導入された流体が、シール溝から漏れ出すことがなく、装着部材と当接部材との間を確実に封止することのできる環状シール材を提供することを目的とする。
【0015】
さらに本発明は、膨出部の隅角部分が装着部材と当接部材との間からはみ出すことがなく、これによりシール溝内で傾きを生ずることがなく、パーティクルの発生や千切れを抑え、装着部材と当接部材との間を確実に封止することのできる環状シール材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、前述したような従来技術における問題点を解決するために発明されたものであって、
本発明の環状シール材は、
装着部材の装着面に形成された環状のシール溝内に装着され、前記装着部材の装着面と当接部材の当接面とを対向させた後、前記シール溝の底部から流体を導入することで前記当接面に押し付けられ、これにより前記装着部材と前記当接部材との間を封止する環状シール材であって、
前記環状シール材は、前記シール溝内に装着された際その断面において、
前記シール溝の開口側に位置するよう配設されるとともに、その前記装着面よりも当接面側に膨出してなる膨出部と、
前記シール溝の底部側に位置するよう配設され、前記シール溝の径内側面および径外側面に沿うように前記膨出部から連続してそれぞれ延出された第1リップ部および第2リップ部と、
を少なくとも備えた本体部を有し、
さらに前記本体部は、
前記膨出部の径内周側および/または径外周側に位置する隅角部分に、前記本体部よりも硬質な材料からなるはみ出し防止用バックアップリングが配設されていることを特徴とする。
【0017】
このようにはみ出し防止用バックアップリングが配設されていれば、本体部よりもはみ出し防止用バックアップリングが硬質であるため、膨出部の隅角部分が変形しにくくなり装着部材と当接部材との間からはみ出してしまうことを防止できる。また、これによりシール溝内で環状シール材が傾いてしまうことも防止できる。
【0018】
したがって環状シール材の製品寿命の短命化を防止でき、さらにパーティクルの発生や千切れを防止できるとともに、シール溝の底部側から導入された流体が、装着部材と当接部材との間から漏れ出してしまうことも防止できる。
【0019】
本発明の環状シール材は、
前記はみ出し防止用バックアップリングが配設された隅角部分とは逆側の隅角部分に、はみ出し防止用面取り部が形成されていることを特徴とする。
【0020】
このように隅角部分の一方側にはみ出し防止用バックアップリングを設け、他方側にはみ出し防止用面取り部が形成されていれば、はみ出し防止用バックアップリングのみが設けられていた場合よりも、さらに膨出部の隅角部分が変形しにくくなり装着部材と当接部材との間からはみ出してしまうことを防止でき、これによりシール溝内で環状シール材が傾いてしまうことをさらに防止できる。
【0021】
また、本発明の環状シール材は、
前記第1リップ部および第2リップ部が、
前記膨出部と連続された側を先端、この逆側を後端とした際、
前記先端から後端に向かうにしたがって、前記膨出部の幅よりも外方に拡開するように構成されていることを特徴とする。
【0022】
このように第1リップ部と第2リップ部が構成されていれば、シール溝内に環状シール材を装着した際、両リップ部がシール溝の径内側面と径外側面とに対し常に突っ張った状態であるため、シール溝の底部側からシール溝内に導入される流体が、シール溝の径内側面と環状シール材の径内周側およびシール溝の径外側面と環状シール材の径外周側の間から漏れ出してしまうことを確実に防止することができる。
【0023】
また、本発明の環状シール材は、
前記第1リップ部および第2リップ部が、
その先端から後端にかけて、略同肉厚となるように構成されていることを特徴とする。
【0024】
このように第1リップ部と第2リップ部が略同肉厚であれば、シール溝の底部側から流体がシール溝内に導入された際に、両リップ部がシール溝の内側に向かってめくれてしまうことがない。
【0025】
したがって、シール溝の底部側からシール溝内に導入される流体が、シール溝の径内側面と環状シール材の径内周側およびシール溝の径外側面と環状シール材の径外周側の間から漏れ出してしまうことを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の環状シール材によれば、膨出部の隅角部に本体部よりも硬質な材料からなるはみ出し防止用バックアップリングを配設したので、膨出部の隅角部分が装着部材と当接部材との間からはみ出してしまうことがなく、装着部材と当接部材との間を確実に封止することができる。
【0027】
さらに本発明の環状シール材によれば、はみ出し防止用バックアップリングが配設された隅角部分とは逆側の隅角部分に、さらにはみ出し防止用面取り部を形成したので、膨出部の隅角部分が装着部材と当接部材との間からはみ出してしまうことがなく、装着部材と当接部材との間を確実に封止することができる。
【0028】
また本発明の環状シール材によれば、上記の構成に加えて、第1リップ部と第2リップ部が膨出部の幅よりも外方に拡開するように構成されているので、さらにシール溝の底部側から導入された流体が、シール溝から漏れ出すことがなく、装着部材と当接部材との間を確実に封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態における環状シール材の断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態における環状シール材をシール溝に装着した状況を説明するための断面図である。
【図3】図3は、分割体から成るはみ出し防止用バックアップリングの概略図である。
【図4】図4は、流体により膨出部が変形した本発明の第1の実施形態における環状シール材の説明図であって、図4(a)はシール溝から流体を導入した状態の環状シール材の説明図、図4(b)はシール溝から流体を導入するとともに、収容部の内方から外方に向かって流体が生じた状態の環状シール材の説明図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施形態における環状シール材の断面図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施形態における環状シール材をシール溝に装着した状況を説明するための断面図である。
【図7】図7は、流体により膨出部が変形した本発明の第2の実施形態における環状シール材の説明図であって、図7(a)はシール溝から流体を導入した状態の環状シール材の説明図、図7(b)はシール溝から流体を導入するとともに、収容部の内方から外方に向かって流体が生じた状態の環状シール材の説明図である。
【図8】図8は、本発明の環状シール材が装着されるシール溝の他の形態を示した説明図である。
【図9】図9は、従来の環状シール材の断面図である。
【図10】図10は、従来の環状シール材をシール溝に装着した状況を説明するための断面図である。
【図11】図11は、流体により膨出部が変形した従来の環状シール材の説明図であって、図11(a)はシール溝から流体を導入した状態の環状シール材の説明図、図11(b)はシール溝から流体を導入するとともに、収容部の内方から外方に向かって流体が生じた状態の環状シール材の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいてより詳細に説明する。
本発明の環状シール材は、例えば薫蒸処理などに用いられる処理釜の収容部と蓋体との間を封止するために用いられるものである。
【0031】
<第1の実施形態>
まず本発明の第1の実施形態における環状シール材10aは、図1に示したように、その断面形状が略Y字型であって、当接面と当接される膨出部12と、径内周側20と径外周側22にそれぞれ形成され、膨出部12から連続的に延出された第1リップ部14および第2リップ部16と、を備える本体部18から構成され、第1リップ部14と第2リップ部16との間で凹部24が形成されている。
【0032】
環状シール材10aの材質は、通常のシール材に用いられるもので有れば特に限定されないが、例えばニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)などの各種合成ゴム材料を用いることができる。
【0033】
中でもシール性能と形状保持性の両方に優れるシリコーンゴムまたはエチレンプロピレンゴム(EPDM)を用いることが好ましい。
そして特に特徴的な構成として膨出部12の径外周側22に位置する隅角部分32に、本体部18よりも硬質な材料からなるはみ出し防止用バックアップリング92が配設されている。
【0034】
このはみ出し防止用バックアップリング92は、本体部18よりも硬質な材料であれば如何なる材質でも構わないが、例えば高密度ポリエステル、ポリアセタールを用いることが好ましい。
【0035】
一方、第1リップ部14と第2リップ部16とは、膨出部12と連続された側を先端、この逆側を後端とした際、先端から後端に向かうにしたがって、膨出部12の幅よりも外方に拡開するように構成されている。
【0036】
このような第1リップ部14と第2リップ部16との拡開幅T2は、膨出部12の幅T1の1.30〜1.40倍程度であることが好ましい。
なお第1リップ部14および第2リップ部16は、その先端から後端にかけて、肉厚T3が略同じとなるように設定されている。
【0037】
そして、このようにして構成された本発明の環状シール材10aを、処理釜80の蓋体50に設けられたシール溝60内に装着した際には、図2に示したように、まず環状シール材10aの第1リップ部14と第2リップ部16側が、シール溝60の底部62側に位置し、膨出部12が開口63側に位置するように装着される。
【0038】
シール溝60の幅T4は、膨出部12の幅T1の0.95〜1.05倍程度であることが好ましい。このような幅T4に設定することで、シール溝60内への環状シール材10aの装着を容易にし、またシール溝60の径内側面66と環状シール材10aの径内周側20との間、およびシール溝60の径外側面68と環状シール材10aの径外周側22との間におけるシール性能を確保することができる。
【0039】
そして、続けてはみ出し防止用バックアップリング92が装着されることとなるが、はみ出し防止用バックアップリング92は、本体部18とともにシール溝60に装着された際、抜け落ちが生じないように、本体部18に対して引っ掛かることのできる形態を有している。
【0040】
このような形態としては特に限定されるものではないが、例えば図1〜図4に示したような逆テーパー形状としたり、パズルのように相互に嵌め合わせ可能な形状(図示せず)としたりすることができ、加工のし易さを考慮して決定すれば良いものである。
【0041】
また、はみ出し防止用バックアップリング92は環状でなくても良く、例えば図3に示したように環状シール材10aの外周長さに合わせて形成された複数の直線状の分割体98とし、この複数の分割体98を互いに重ね合わせてシール溝60内へ装着するようにしても良いものである。
【0042】
これによりはみ出し防止用バックアップリング92が、蓋体50と収容部40との隙間を塞ぐように配置され、シール溝60の径内側面66と環状シール材10aの径内周側20との間、およびシール溝60の径外側面68と環状シール材10aの径外周側22との間が封止された状態となる。
【0043】
そして図4(a)に示したように、蓋体50に形成されたシール溝60の底部62側の流体導入孔64より流体70をシール溝60内に導入すると、環状シール材10aの凹部24がこの流体70を受け、環状シール材10aが対向する収容部40側に移動し膨出部12が収容部40の当接面42に当接され、膨出部12と収容部40との間が封止されることとなる。
【0044】
ここでシール溝60内に導入される流体70としては特に限定されるものではないが、気体が好ましく、中でも窒素ガスは取り扱いが容易であるため好適である。
次いで図4(b)に示したように、収容部40の内部に炭酸ガスなどの流体72が導入されて、収容部40の内方から外方に向かって圧力が生ずると、今後は膨出部12の径内周側20の隅角部分30が径外周側22に押しつぶされるが、径外周側22の隅角部分32は、蓋体50と収容部40との隙間を塞ぐようにはみ出し防止用バックアップリング92が位置しているため、蓋体50と収容部40との間にはみ出しを生じないようになっている。
【0045】
加えて、第1リップ部14と第2リップ部16とが膨出部12の幅T1よりも外方に拡開するように構成されているため、シール溝60内に環状シール材10aを装着した際、この第1リップ部14と第2リップ部16とがシール溝60の径内側面66と径外側面68とにしっかりと当接することとなる。
【0046】
そしてシール溝60の底部62側より流体70をシール溝60内に導入しても、この第1リップ部14と第2リップ部16とが流体70を食い止め、流体70がシール溝60の径内側面66と環状シール材10aの径内周側20およびシール溝60の径外側面68と環状シール材10aの径外周側22の間から漏れ出すことを確実に防止できるようになっている。
【0047】
なお、第1リップ部14と第2リップ部16とは、その先端から後端にかけて略同肉厚T3となるように設定されているため、後端がこの流体70によってめくれを生じることもなく、シール溝60の径内側面66と環状シール材10aの径内周側20およびシール溝60の径外側面68と環状シール材10aの径外周側22の間から流体70が漏れ出すおそれもないものである。
【0048】
したがって、シール溝60内で環状シール材10aが傾きを生ずることがなく、これにより環状シール材10aの製品寿命の短命化を防止でき、さらにパーティクルの発生や千切れを防止できるとともに、シール溝60の底部62側から導入された流体70が、シール溝60の径内側面66と環状シール材10aの径内周側20およびシール溝60の径外側面68と環状シール材10aの径外周側22の間から漏れ出すことがなく、蓋体50と収容部40との間を確実に封止することができる。
【0049】
<第2の実施形態>
次に本発明の第2の実施形態における環状シール材10bについて図5〜図7を用いて説明する。
【0050】
図5〜図7に示した環状シール材10bは、基本的には、図1〜図4に示した第1の実施形態における環状シール材10aと同じ構成であるので、同じ構成部材には、同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0051】
図5に示した環状シール材10bは、径外周側22の隅角部分32にはみ出し防止用バックアップリング92が配設されているとともに、径内周側20の隅角部分30に、はみ出し防止用面取り部90が形成されている点で第1の実施形態の環状シール材10aと異なっている。
【0052】
このような環状シール材10bは、シール溝60に装着されると図6に示したように径内周側20の隅角部分30に設けられたはみ出し防止用面取り部90により、蓋体50と収容部40との隙間から離れた状態となる。
【0053】
このため、図7(a)に示したように、シール溝60の底部62側より流体70を導入しても、環状シール材10bの隅角部分30が蓋体50と収容部40との間から、はみ出しを生じないようになっている。
【0054】
そして図7(b)に示したように、収容部40の内部に炭酸ガスなどの流体72が導入されて、収容部40の内方から外方に向かって圧力が生じた場合にも、径外周側22の隅角部分32は、蓋体50と収容部40との隙間を塞ぐようにはみ出し防止用バックアップリング92が位置しているため、蓋体50と収容部40との間にはみ出しを生じないようになっている。
【0055】
したがって、本実施例における環状シール材10bは、蓋体50と収容部40との間にはみ出しを生じないため、シール溝60内で環状シール材10bが傾きを生ずることがなく、流体70がシール溝60の径内側面66と環状シール材10aの径内周側20およびシール溝60の径外側面68と環状シール材10aの径外周側22の間から漏れ出すことを確実に防止できるとともに、パーティクルの発生や千切れを防止することができる。
【0056】
なお図5〜図7では、はみ出し防止用面取り部90の面取り形状は45度のC面取りであるが、例えばR面取りであっても良く、要は従来であればはみ出しが生じていた隅角部分30が無くなるようにこの部分が面取りされていれば、如何なる形状であっても良く、特に形状は限定されないものである。
【0057】
また、はみ出し防止用面取り部90を設ける範囲を必要以上に大きくしすぎると、膨出部12の当接面42と当接する箇所が小さくなりすぎて膨出部12と当接面42との間のシール性能が落ちてしまうため、所望のシール性能がどの程度であるかを考慮し、はみ出し防止用面取り部90をどの程度の大きさで設定するか決めると良い。
【0058】
したがって、第2の実施形態における環状シール材10bは、第1の実施形態の環状シール材10aよりもさらに確実に蓋体50と収容部40との間を確実に封止することができる。
【0059】
上記したように第1の実施形態および第2の実施形態における環状シール材10は、上記したような形態を有することで、シール溝60の底部62側から導入された流体70がシール溝60の径内側面66と環状シール材10の径内周側20およびシール溝60の径外側面68と環状シール材10の径外周側22の間から漏れ出すことがなく、蓋体50と収容部40との間を確実に封止することができるものであるが、この環状シール材10が装着されるシール溝60の形態については、上記説明に用いたものに限定されるものではないものである。
【0060】
例えば実施形態ではストレート形状のシール溝60を想定して図示されているが、他にも図8に示したように、シール溝60の径内側面66と径外側面68に切り欠き部94,96を設けても良いものである。
【0061】
なおこの切り欠き部94,96は、処理釜80を開けて流体70,72による負荷が無くなった際に、シール溝60から環状シール材10が落下しないようにするためのものである。
【0062】
また、本実施形態では、環状シール材10の径外周側22の隅角部分32に、はみ出し防止用バックアップリング92を配設したが、径内周側20の隅角部分30であっても両側20,22であっても良く、要は環状シール材10が圧力を受けて変形する方向に合わせてこれらの位置を設定すれば良いものである。
【0063】
このように本発明の環状シール材10は、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0064】
10・・・環状シール材
10a・・環状シール材
10b・・環状シール材
12・・・膨出部
14・・・第1リップ部
16・・・第2リップ部
18・・・本体部
20・・・径内周側
22・・・径外周側
24・・・凹部
30・・・隅角部分
32・・・隅角部分
40・・・収容部
42・・・当接面
50・・・蓋体
52・・・装着面
60・・・シール溝
62・・・底部
63・・・開口
64・・・流体導入孔
66・・・径内側面
68・・・径外側面
70・・・流体
72・・・流体
80・・・処理釜
90・・・はみ出し防止用面取り部
92・・・はみ出し防止用バックアップリング
94・・・切り欠き部
96・・・切り欠き部
98・・・分割体
T1・・膨出部の幅
T2・・第1リップ部と第2リップ部との拡開幅
T3・・リップ部の肉厚
T4・・シール溝の幅
100・・・環状シール材
102・・・膨出部
104・・・第1リップ部
106・・・第2リップ部
108・・・本体部
110・・・径内周側
112・・・径外周側
114・・・凹部
116・・・隅角部分
118・・・隅角部分
200・・・処理釜
210・・・収容部
212・・・当接面
220・・・蓋体
222・・・装着面
230・・・シール溝
232・・・底部
234・・・流体導入孔
236・・・径内側面
238・・・径外側面
240・・・開口
300・・・流体
302・・・流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着部材の装着面に形成された環状のシール溝内に装着され、前記装着部材の装着面と当接部材の当接面とを対向させた後、前記シール溝の底部から流体を導入することで前記当接面に押し付けられ、これにより前記装着部材と前記当接部材との間を封止する環状シール材であって、
前記環状シール材は、前記シール溝内に装着された際その断面において、
前記シール溝の開口側に位置するよう配設されるとともに、その前記装着面よりも当接面側に膨出してなる膨出部と、
前記シール溝の底部側に位置するよう配設され、前記シール溝の径内側面および径外側面に沿うように前記膨出部から連続してそれぞれ延出された第1リップ部および第2リップ部と、
を少なくとも備えた本体部を有し、
さらに前記本体部は、
前記膨出部の径内周側および/または径外周側に位置する隅角部分に、前記本体部よりも硬質な材料からなるはみ出し防止用バックアップリングが配設されていることを特徴とする環状シール材。
【請求項2】
前記はみ出し防止用バックアップリングが配設された隅角部分とは逆側の隅角部分に、はみ出し防止用面取り部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の環状シール材。
【請求項3】
前記第1リップ部および第2リップ部が、
前記膨出部と連続された側を先端、この逆側を後端とした際、
前記先端から後端に向かうにしたがって、前記膨出部の幅よりも外方に拡開するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の環状シール材。
【請求項4】
前記第1リップ部および第2リップ部が、
その先端から後端にかけて、略同肉厚となるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の環状シール材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−72863(P2012−72863A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219124(P2010−219124)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】