環状体及び画像形成装置
【課題】環状体の幅方向の両端部における最も外側の層及び最も内側の層の少なくとも一方に、350℃における熱収縮率が%以下の添加剤を含有しない環状体に比べて、環状体の幅方向の両端部の外側への反りが抑制された環状体を提供する。
【解決手段】少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する多層構成とされ、少なくとも該幅方向の両端部における最も外側の第1の層及び該幅方向の両端部における最も内側の第2の層が、熱硬化性樹脂と、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤と、を含み、該第1の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該第1の層に含まれる該添加剤の体積含有率が、該第2の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該第2の層に含まれる該添加剤の体積含有率より低い環状体である。
【解決手段】少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する多層構成とされ、少なくとも該幅方向の両端部における最も外側の第1の層及び該幅方向の両端部における最も内側の第2の層が、熱硬化性樹脂と、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤と、を含み、該第1の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該第1の層に含まれる該添加剤の体積含有率が、該第2の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該第2の層に含まれる該添加剤の体積含有率より低い環状体である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状体及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環状の部材である環状体は、各種の部材を搬送する部材や、各種の材料を供給する部材等として用いられている。
【0003】
引用文献1には、環状体としての無端状の樹脂ベルトの両端部に、PET(ポリエチレンテレフタレート)から構成されたシームレス補強層を設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−107942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、環状体の幅方向の両端部における最も外側の層及び最も内側の層の少なくとも一方に、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤を含有しない環状体に比べて、環状体の幅方向の両端部の外側への反りが抑制された環状体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する多層構成とされ、少なくとも該幅方向の両端部における最も外側の第1の層及び該幅方向の両端部における最も内側の第2の層が、熱硬化性樹脂と、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤と、を含み、前記第1の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該第1の層に含まれる前記添加剤の体積含有率が、前記第2の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該第2の層に含まれる前記添加剤の体積含有率より低い環状体である。
【0007】
請求項2に係る環状体は、前記複数の層の各々に含まれる前記熱硬化性樹脂が、同じ熱硬化性樹脂である請求項1に記載の環状体である。
【0008】
請求項3に係る発明は、像保持体と、前記像保持体を帯電する帯電装置と、前記帯電装置によって帯電された前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成装置と、前記像保持体上の前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像が転写される転写体と、前記転写体に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、前記記録媒体に転写された前記トナー像を該記録媒体に定着する定着装置と、を備え、前記帯電装置、前記現像装置、前記転写体、前記転写装置、及び前記定着装置の少なくとも1つが請求項1または請求項2に記載の環状体を有する画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、環状体の幅方向の両端部における最も外側の層及び最も内側の層の少なくとも一方に、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤を含有しない環状体に比べて、環状体の幅方向の両端部の外側への反りが抑制された環状体が提供される。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、複数の層の各々に含まれる熱硬化性樹脂が互いに異なる場合に比べて、各層の間の密着性が高まる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、環状体の幅方向の両端部における最も外側の層及び最も内側の層の少なくとも一方に、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤を含有しない環状体を用いた構成に比べて、環状体の幅方向の両端部の外側への反りが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(A)第1の実施の形態に係る環状体を示す斜視図である。(B)第1の実施の形態に係る環状体の幅方向の端部の断面を示す模式図である。
【図2】(A)〜(D)第1の実施の形態に係る環状体の作製工程を示す模式図である。
【図3】(A)(B)抵抗率の測定方法を示す模式図である。
【図4】第2の実施の形態に係る環状体を示す斜視図である。
【図5】(A)〜(D)第2の実施の形態に係る環状体の作製工程を示す模式図である。
【図6】(A)第3の実施の形態に係る環状体を示す斜視図である。(B)第4の実施の形態に係る環状体を示す斜視図である。
【図7】第4の実施の形態に係る画像形成装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施の形態に係る環状体は、少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する多層構成とされている。なお、「環状体の、少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する多層構成である」とは、環状体の幅方向の縁部に沿った面を含む領域が多層構成とされていることを示しており、これらの複数の層の、上記幅方向の端面がそろっている状態を示している。
本発明者らは、少なくとも、この幅方向の両端部における最も外側の第1の層及び該幅方向の両端部における最も内側の第2の層が、熱硬化性樹脂と、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤と、を含み、前記第1の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該第1の層に含まれる前記添加剤の体積含有率が、前記第2の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該第2の層に含まれる前記添加剤の体積含有率より低い環状体とすることによって、環状体の幅方向の両端部の外側への反りが抑制されることを見いだした。
【0014】
以下、本実施の形態の環状体について詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1(A)及び図1(B)に示すように、本実施の形態の環状体10は、幅方向の両端部が複数の層を有する多層構成とされている。
図1(A)及び図1(B)に示す形態では、環状体10は、環状のベルト12と、該ベルト12の内側の面における幅方向の両端部に設けられた補強層14と、から構成されている。この補強層14は、ベルト12の内側の面における幅方向の両端部の縁部に沿って帯状に設けられている。
第1の実施の形態では、ベルト12の内側の面における幅方向の両端部に補強層14を設けた構成とすることで、環状体10を、少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する構成としている。このため、環状体10では、環状体10の幅方向の両端部における最も外側の層はベルト12であり、該幅方向の両端部における最も内側の層は補強層14とされている。
このため、環状体10では、環状体10の幅方向の両端部における最も外側の層であるベルト12、及び該両端部における最も内側の層である補強層14が、熱硬化性樹脂と、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤と、を含み、ベルト12に含まれる熱硬化性樹脂に対する該ベルト12に含まれる添加剤の体積含有率が、補強層14に含まれる熱硬化性樹脂に対する該補強層に含まれる添加剤の体積含有率より低い構成とされている。
【0016】
なお、本発明の環状体が環状体10に相当し、本発明の環状体における第1の層がベルト12に相当し、本発明の環状体における第2の層が、補強層14に相当する。
【0017】
ベルト12及び補強層14は、熱硬化性樹脂と、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤と、を含んで構成されている。
【0018】
ベルト12及び補強層14に含まれる熱硬化性樹脂としては、ポリアミドイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド、フェノール、エポキシ、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、ジアクリルフタレートが挙げられる。これらの中でもポリアミドイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂、ポリアミド樹脂が良く、強度や寸法安定性、耐熱性等の点でポリイミド樹脂が良い。
【0019】
ベルト12及び補強層14に含まれる添加剤は、上述のように、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤である。
【0020】
この添加剤の「350℃における熱収縮率」とは、350℃に昇温することで反応が起こり、体積減少することによる熱収縮率を示している。具体的には、添加剤の「350℃における熱収縮率」とは、測定対象の添加剤を22℃、湿度55%RHの環境下に24時間放置したときの平均径T1と、該平均径T1の測定の後に、該測定対象の添加剤を350℃、湿度20%RH以下の環境下に24時間放置した後、再度22℃、湿度55%RHの環境下に24時間放置したときの平均径T2と、を測定し、処理前後での変化率((T2/T1)×100)を示している。
なお、350℃とは、この添加剤と共にベルト12または補強層14に含まれる熱硬化性樹脂として何れの種類の熱硬化性樹脂を用いた場合であっても、硬化する温度を超える温度である。
【0021】
上記特性を有する添加剤としては、上記特性を満たし、熱硬化性樹脂中に分散される材料であればよく、粒子状、粉体状、の何れであってもよい。
この添加剤としては、具体的には、電子導電剤、イオン導電剤、及び導電性ポリマー等の導電剤や、絶縁性の粉体等が挙げられる。
【0022】
電子導電剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの粉体が挙げられる。
【0023】
イオン導電剤としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;が挙げられる。
【0024】
導電性ポリマーとしては、例えば、カルボキシル基が4級アンモニウム塩基を結合する(メタ)アクリレートと、他の化合物(例えばスチレン)との共重合体;4級アンモニウム塩基を結合するマレイミドと、メタアクリレートとの共重合体等の4級アンモニウム塩基を結合するポリマー;ポリスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸のアルカリ金属塩を結合するポリマー;ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール系ポリアミド共重合体、ポリエチレンオキド−エピクロルヒドリン共重合体ポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルを主セグメントとするブロック型のポリマー等の分子鎖中に少なくともアルキルオキシドの親水性ユニットを結合するポリマー等が挙げられる。また、更には、電子伝導性系導電剤として、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン等が挙げられ、これらの導電性ポリマーは、脱ドープ状態、またはドープ状態で用いられる。
【0025】
絶縁性の粉体としては、ポリフッ化ビニル,PVDF,テトラフルオロエチレン(TFE)樹脂,クロロトリフルオロエチレン(CTFE)樹脂,ETFE,CTFE−エチレン共重合体,PFA(TFE−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体),FEP(TFE−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体),EPE(TFE−HFP−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等のフッ化系化合物の樹脂粒子が挙げられる。
【0026】
これらの添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0027】
これらの添加剤としては、1次粒子における体積平均粒子径が10nm以上500nm以下の粉末を用いることが良い。
【0028】
添加剤の含有率としては、第1の実施の形態における環状体10では、環状体10の幅方向の両端部における最も外側の層はベルト12であり、該幅方向の両端部における最も内側の層は補強層14とされていることから、ベルト12に含まれる熱硬化性樹脂に対する該ベルト12に含まれる添加剤の体積含有率が、補強層14に含まれる熱硬化性樹脂に対する該補強層14に含まれる添加剤の体積含有率より低い構成であればよい。
【0029】
この添加剤の添加量は、この条件を満たせば特に制限は無いが、添加剤として導電剤を用いる場合には、ベルト12及び補強層14の内の、環状体10の幅方向の中央部を構成する層(本実施の形態ではベルト12)の表面抵抗率が1×109Ω/□〜1×1014Ω/□の範囲となるように、添加量を調整することがよい。
なお、添加剤として導電剤を用いて、上記表面抵抗率となるように、該導電剤の添加量を調整することで、環状体10は、後述する電子写真方式の画像形成装置の中間転写ベルトや記録媒体を搬送する搬送ベルトとして適用される。
【0030】
なお、添加剤として絶縁性の材料を用いる場合には、このような制限は無く、例えば、同じ層(ベルト12または補強層14)に含まれる熱硬化性樹脂100質量部に対して、
40質量部以上であってもよいし、5質量部以下であってもよい。
【0031】
なお、この電子写真方式の画像形成装置の中間転写ベルトや記録媒体を搬送する搬送ベルトの抵抗率を調整するために、上述のように、上記添加剤として導電剤を用いて該導電剤の含有量を調整してもよいが、抵抗率の調整のためには、別途の各種の導電剤を用いて調整を行い、本実施の形態の添加剤としては、絶縁性の粉体を用いた形態であってもよい。このように、添加剤として絶縁性の粉体を用いれば、環状体10を抵抗率の調整を必要とする装置の部材に適用する場合であっても、その添加量や添加される領域が制限されることが抑制されると考えられる。
【0032】
なお、表面抵抗率は、円形電極(例えば、株)ダイヤインスツルメント製URプローブ)を用い、JIS K6911(1995)に従って測定すればよい。
詳細には、図3に示す円形電極((株)ダイヤインスツルメント製ハイレスタURプローブ:第一電圧印加電極Aと板状絶縁体Bとを備え、円柱状電極部Cの外径φ16mm、リング状電極部Dの内径φ30mm、外径φ40mm)を用い、電圧を100V印加して10秒後の電流値を求め算出する。具体的には、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと板状絶縁体Bとの間に測定対象部材Tを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cとリング状電極部Dとの間に電圧V(V)を印加したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式(1)により表面抵抗率ρs(Ω/□)を算出すればよい。なお、22℃、55%RH環境で測定を行う。ここで、下記式(1)中、d(mm)は円柱状電極部Cの外径を示す。このようにして、測定対象物の24点(幅方向3箇所×周方向8箇所)を測定し、その平均値を表面抵抗率とすればよい。
式(1) ρs=π×(D+d)/(D−d)×(V/I)
【0033】
ここで、「導電」及び「導電性」とは、体積抵抗率で1.0×109Ωcm以下の範囲を意味し、以下同様である。また、「絶縁」及び「絶縁性」とは、この導電性の範囲を外れること、即ち体積抵抗率で1.0×1013Ωcmより高い範囲を意味する。
【0034】
環状体10の幅方向の両端部における最も外側の層であるベルト12に含まれる添加剤の体積含有率と、最も内側の層である補強層14に含まれる添加剤の体積含有率と、の差は、上記関係(ベルト12に含まれる熱硬化性樹脂に対する該ベルト12に含まれる添加剤の体積含有率が、補強層14に含まれる熱硬化性樹脂に対する該補強層14に含まれる添加剤の体積含有率より低い構成)を満たせば良く、その体積含有率の差は、熱硬化性樹脂として用いる材料、添加される添加剤の種類、添加剤の平均粒子径等によって異なる。
【0035】
また、環状体10の幅方向の両端部における最も外側の層であるベルト12に含まれる添加剤の体積含有率と、最も内側の層である補強層14に含まれる添加剤の体積含有率と、の差は、上記関係(ベルト12に含まれる熱硬化性樹脂に対する該ベルト12に含まれる添加剤の体積含有率が、補強層14に含まれる熱硬化性樹脂に対する該補強層14に含まれる添加剤の体積含有率より低い構成)を満たせば良い。
なお、このベルト12及び補強層14には、上記に挙げた材料の他、分散剤や滑剤などの加工助剤を添加してもよい。
【0036】
なお、このベルト12及び補強層14を構成する熱硬化性樹脂は、同じであることが良い。熱硬化性樹脂が同じであると、ベルト12と補強層14との間の密着性が向上し、環状体10の幅方向の両端部の外側への反りが更に抑制されることから良い。
【0037】
ベルト12は環状であれば、つなぎ目があってもなくてもよい。
【0038】
なお、第1の実施の形態では、環状体10を、環状のベルト12と、該ベルト12の内側の面における幅方向の両端部に設けられた補強層14と、から構成することによって、少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する構成とした形態を説明した。しかし、第1の実施の形態の環状体10では、このような構成に限られず、このベルト12と補強層14の間に他の層を1層または複数層設けた構成であってもよい。
【0039】
このベルト12と補強層14との間に設けられる層としては、ベルト12及び補強層14と同じように、熱硬化性樹脂及び添加剤を含んだ構成としてもよいが、異なった構成であってもよい。
ベルト12と補強層14との間に設けられた各層が、熱硬化性樹脂及び添加剤を含んだ構成である場合には、ベルト12と補強層14との間に設けられた各層における熱硬化性樹脂に対する各層における添加剤の体積含有率は、補強層14またはベルト12と同じであってもよく、異なっていても良い。また、ベルト12と補強層14との間に設けられた各層が、熱硬化性樹脂及び添加剤を含んだ構成である場合には、ベルト12と補強層14との間に設けられた各層における熱硬化性樹脂は、ベルト12及び補強層14を含む各層の密着性が向上される観点から、同じ熱硬化性樹脂であることが良い。
【0040】
第1の実施の形態における環状体10の製造方法の一例を説明する。
【0041】
本実施の形態において、環状体10は、円柱状の金型32の外側の面に、熱硬化性樹脂及び添加剤を含む熱硬化性樹脂溶液を塗布することによって、金型32上に塗膜を形成し(塗布工程)、該塗膜に熱を加える(加熱工程)一連の工程を繰り返すことによって多層構成とされた後に、金型32から分離する(分離工程)ことによって作製される。
【0042】
熱硬化性樹脂の溶媒としては、有機極性溶媒が用いられる。金型32上に塗布される熱硬化性樹脂溶液としては、この有機極性溶媒と熱硬化性樹脂とを含む溶液中に、各層に応じた体積含有率の添加剤と、その他の材料と、を添加した熱硬化性樹脂溶液が用いられる。
【0043】
この熱硬化性樹脂溶液の金型32への塗布方法には、一般的な塗布方法と用いればよい。例えば、図2(A)及び図2(C)に示すような成膜装置30を用いる方法が挙げられる。
【0044】
一例として、図1に示す環状体10を作製する方法を説明すると、図1に示す環状体10を作製する場合には、まず、補強層14の形成のための溶液として、添加剤の体積含有率を予め調整された熱硬化性樹脂溶液20Aを用意する。そして、成膜装置30では、金型32を図2(A)中の矢印A方向に回転させながら、該金型32の外側の面に該熱硬化性樹脂溶液20Aを塗布し、これを金型32の外側の面に接して配置されたブレード28によってならしながら、金型32の幅方向の両端端部に相当する領域に塗布する。
【0045】
詳細には、成膜装置30では、貯留部20に貯留された熱硬化性樹脂溶液20Aを、ポンプ24によって供給管22及びノズル26を介して、矢印A方向に回転されている金型32の外側の面の、幅方向の一端部と他端部と、の各々に供給する、
金型32の外側の面の、幅方向の一端部と他端部と、の各々に塗布された熱硬化性樹脂溶液20Aは、筋状に該金型32上に供給されるが、ブレード28によって平滑化され、螺旋状の筋が残ることなく塗膜14Aが形成される。これによって、環状体10として構成されたときの補強層14の設けられる領域に対応する金型32上の領域(幅方向の両端部)に、塗膜14Aが形成される(塗布工程)。
この塗布時の金型32の回転速度としては、例えば、20rpm以上300rpm以下であり、ノズル26と金型32との相対移動速度は、例えば、0.5mm/秒以上10.0mm/秒以下である。
【0046】
なお、熱硬化性樹脂溶液20Aの金型32への塗布方法としては、上記方法に限られず、浸漬塗布等の他の方法を用いても良い。
【0047】
次に、金型32上の幅方向の両端部に塗布された熱硬化性樹脂溶液20Aによる塗膜14Aを乾燥させた後に、加熱することによって、金型32の外側の面の、幅方向の両端部の各々に、補強層14が形成された状態となる(図2(B)参照)(加熱工程)。
【0048】
次に、ベルト12の形成のための溶液として、熱硬化性樹脂に対する添加剤の体積含有率が、上記熱硬化性樹脂溶液20Aにおける熱硬化性樹脂の該溶液における添加剤の体積含有率より低くなるように予め調整された熱硬化性樹脂溶液20Bを用意する。そして、成膜装置30では、金型32を図2(C)中の矢印A方向に回転させながら、該金型32の外側の面に該熱硬化性樹脂溶液20Bを塗布し、これを金型32の外側の面に接して配置されたブレード28によってならしながら、金型32の幅方向の一端部から他端部に渡る領域に塗布する(塗布工程)。
【0049】
詳細には、成膜装置30では、貯留部20に貯留された熱硬化性樹脂溶液20Bを、ポンプ24によって供給管22及びノズル26を介して、矢印A方向に回転されている金型32の外側の面の、幅方向の一端部と他端部と、の各々に供給する(図2(C)参照)。金型32の外側の面の、幅方向の一端部と他端部と、の各々に塗布された熱硬化性樹脂溶液20Bは、筋状に該金型32上に供給されるが、ブレード28によって平滑化され、螺旋状の筋が残ることなく塗膜12Aが形成される。これによって、金型32の幅方向の両端部に先に形成された補強層14を覆うように、金型32の幅方向の一端側から他端側の渡る領域に塗膜12Aが形成される。
【0050】
この塗布時の金型32の回転速度としては、例えば、20rpm以上300rpm以下であり、ノズル26と金型32との相対移動速度は、例えば、0.5mm/秒以上10.0mm/秒以下である。
【0051】
なお、熱硬化性樹脂溶液20Bの金型32への塗布方法としては、上記方法に限られず、浸漬塗布等の他の方法を用いても良い。
【0052】
次に、金型32上に塗布された熱硬化性樹脂溶液20Bによる塗膜14Bを乾燥させた後に、加熱することによって、金型32の外側の面に、幅方向の両端部の各々に先に形成された補強層14を覆うように、ベルト12が形成された状態となる(図2(D)参照)(加熱工程)。
【0053】
なお、上記熱硬化性樹脂溶液20Aによる補強層14とされる塗膜14A、及び上記熱硬化性樹脂溶液20Bによるベルト12とされる塗膜12Aの、上記加熱工程における加熱温度としては、具体的には、これらの熱硬化性樹脂溶液20A及び熱硬化性樹脂溶液20Bに含まれる熱硬化性樹脂が、ポリイミドの場合には、250℃以上450℃以下の範囲や、300℃以上350℃以下の範囲等で、20分間以上120分間以下加熱する。
【0054】
これによって、金型32上に環状体10が形成される(図2(D)参照)。
【0055】
次に、この環状体10を金型32から分離する(分離工程)。この環状体10の金型32からの分離には、環状体10の両端部と、金型32の外側の面との間に空気を流入して隙間を設ける方法を用いればよい。金型32から分離された環状体10は、側面(環状体10の幅方向に交差する方向の面)が、補強層14及びベルト12からなる面とされるように、幅方向の両端部を切断される。
【0056】
これによって、図1に示す環状体10が作製される。すなわち、上記工程を経ることによって、ベルト12の内側の面における幅方向の両端部に補強層14を設けることで、少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する多層構成とされた環状体10が作製される。
【0057】
ところで、第1の実施の形態における環状体10では、補強層14が、環状体10の幅方向の両端部に設けられており、この幅方向の両端部における最も内側の層とされている。また、第1の実施の形態における環状体10では、ベルト12が、環状体10の幅方向の両端部における最も外側の層とされている。
このため、上述のように、この補強層14とされる塗膜14A(熱硬化性樹脂溶液)中の熱硬化性樹脂に対する添加剤の体積含有率は、ベルト12とされる塗膜14B(熱硬化性樹脂溶液)中の熱硬化性樹脂に対する添加剤の体積含有率より高くなるように調整されている。
【0058】
環状体10の製造工程における加熱工程においては、これらの塗膜14A及び塗膜12Aの各々に熱を加えることによって、これらの塗膜に含まれる熱硬化性樹脂を硬化させることで、補強層14及びベルト12を形成している。
この熱硬化性樹脂の硬化時には、体積の減少が生じることから、作製された補強層14及びベルト12には、径方向(金型32の周方向)に沿った引張り応力が蓄積する。
【0059】
ここで、第1の実施の形態における環状体10では、幅方向の両端部において最も外側の層とされるベルト12に含まれる熱硬化性樹脂に対する該ベルト12に含まれる添加剤の体積含有率が、該幅方向の最も内側の層とされる補強層14に含まれる熱硬化性樹脂に対する該補強層14に含まれる添加剤の体積含有率より低い。このため、上記加熱工程においては、最も外側のベルト12とされる塗膜14Bの上記加熱工程による体積収縮率は、補強層14とされる塗膜14Aの上記加熱工程による体積収縮率より大きいと考えられる。従って、作製された環状体10においては、幅方向の両端部において最も外側の層とされるベルト12の引張り応力は、該幅方向の両端部において最も内側の層とされる補強層14の引張り応力に比べて大きくなると考えられる。
【0060】
従って、作製された環状体10の内面側及び外面側に傷がついたときに、環状体10の幅方向の両端部において最も外側の層とされたベルト12の方が、該幅方向の両端部において最も内側の層とされた補強層14に比べて、より大きな引張り応力が解放されることとなり、環状体10の幅方向の両端部が外側に反ることが抑制されると考えられる。
【0061】
また、作製された環状体10においては、幅方向の両端部において最も外側の層とされるベルト12の引張り応力は、該幅方向の両端部において最も内側の層とされる補強層14の引張り応力に比べて大きいと考えられる。このため、作製された環状体10の内面側に外面側に比べて多くの傷がついた場合であっても、環状体10の幅方向の両端部において最も外側の層とされたベルト12の方が、該幅方向の両端部において最も内側の層とされた補強層14に比べて、より大きな引張り応力が解放されることから、環状体10の幅方向の両端部が外側に反ることが抑制されると考えられる。
【0062】
従って、環状体10の幅方向の両端部における最も外側の層であるベルト12、及び該両端部における最も内側の層である補強層14が、熱硬化性樹脂と、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤と、を含み、該両端部における最も外側の層であるベルト12に含まれる熱硬化性樹脂に対する該ベルト12に含まれる添加剤の体積含有率が、該両端部における最も内側の層とされた補強層14に含まれる熱硬化性樹脂に対する該補強層に含まれる添加剤の体積含有率より低い構成することで、環状体10の幅方向の両端部が外側に反ることが抑制されると考えられる。
【0063】
(第2の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、幅方向の両端部が複数の層を有する多層構成の環状体10として、ベルト12の内側の面における幅方向の両端部に該両端部の縁部に沿って帯状の補強層14を設けた構成とした形態を説明した。そして、この構成としたことによって、環状体10の幅方向の両端部における最も外側の層はベルト12であり、該幅方向の両端部における最も内側の層は補強層14とされた形態を説明した。
【0064】
ここで、本実施の形態の環状体は、幅方向の両端部が複数の層を有する多層構成であり、該幅方向の両端部における最も外側の層と、該幅方向の両端部における最も内側の層と、が熱可塑性樹脂及び添加剤を含んだ構成とされ、該最も外側の層の熱可塑性樹脂における添加剤の体積含有率が、最も内側の層の熱可塑性樹脂における添加剤の体積含有率に比べて低い構成であればよく、図1を用いて説明した環状体10の構成に限られない。
【0065】
具体的には、図4に示すように、環状体11を、環状のベルト13と、該ベルト13の外側の面における幅方向の両端部に設けられた補強層15と、から構成してもよい。この補強層15は、ベルト13の外側の面における幅方向の両端部の縁部に沿って帯状に設ければよい。
そして、環状体11では、ベルト13の外側の面における幅方向の両端部に補強層15を設けた構成とすることで、環状体11を、少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する構成としている。このため、環状体11では、環状体11の幅方向の両端部における最も外側の層は補強層15であり、該幅方向の両端部における最も内側の層はベルト13とされていることとなる。
このため、第2の実施の形態における環状体11では、環状体11の幅方向の両端部における最も内側の層であるベルト13、及び該両端部における最も外側の層である補強層15が、熱硬化性樹脂と、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤と、を含み、補強層15に含まれる熱硬化性樹脂に対する該補強層15に含まれる添加剤の体積含有率が、ベルト13に含まれる熱硬化性樹脂に対する該ベルト13に含まれる添加剤の体積含有率より低い構成とすればよい。
【0066】
この場合、本発明の環状体が環状体11に相当し、本発明の環状体における第1の層が補強層15に相当し、本発明の環状体における第2の層が、ベルト12に相当する。
【0067】
環状体11を構成する各ベルト13及び補強層15に含まれる熱硬化性樹脂、添加剤、及びその他の材料については、第1の実施の形態で説明した環状体10におけるベルト12及び補強層14に含まれる熱硬化性樹脂、添加剤、及びその他の材料として挙げたものを用いればよい。
【0068】
但し、添加剤の含有率としては、第2の実施の形態における環状体11では、環状体11の幅方向の両端部における最も外側の層は補強層15であり、該幅方向の両端部における最も内側の層はベルト13とされていることから、該最も外側の層である補強層15に含まれる熱硬化性樹脂に対する該補強層15に含まれる添加剤の体積含有率が、最も内側の層であるベルト13に含まれる熱硬化性樹脂に対する該ベルト13に含まれる添加剤の体積含有率より低い構成であればよい。
【0069】
なお、このベルト13及び補強層15を構成する熱硬化性樹脂についても、同じであることが良い。熱硬化性樹脂が同じであると、ベルト13と補強層15との間の密着性が向上することから良い。
【0070】
ベルト13は環状であれば、つなぎ目があってもなくてもよい。
【0071】
なお、第2の実施の形態では、環状体11を、環状のベルト13と、該ベルト13の外側の面における幅方向の両端部に帯状に設けられた補強層15と、から構成することによって、少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する構成とした形態を説明した。しかし、第2の実施の形態の環状体11についても、環状体10と同様に、このような構成に限られず、このベルト13と補強層15の間に他の層を1層または複数層設けた構成であってもよい。
【0072】
このベルト13と補強層15との間に設けられる層としては、ベルト13及び補強層15と同じように、熱硬化性樹脂及び添加剤を含んだ構成としてもよいが、異なった構成であってもよい。
【0073】
第2の実施の形態における環状体11は、上記第1の実施の形態で説明した環状体10の製造方法と同様に、円柱状の金型32の外側の面に、熱硬化性樹脂及び添加剤を含む熱硬化性樹脂溶液を塗布することによって、金型32上に塗膜を形成し(塗布工程)、該塗膜に熱を加える(加熱工程)一連の工程を繰り返すことによって多層構成とされた後に、金型32から分離する(分離工程)ことによって作製すればよい。
【0074】
そして、まず、ベルト13形成のための溶液として、添加剤の体積含有率を予め調整された熱硬化性樹脂溶液21Aを用意する。そして、成膜装置30では、金型32を図5(A)中の矢印A方向に回転させながら、該金型32の外側の面に該熱硬化性樹脂溶液21Aを塗布し、これを金型32の外側の面に接して配置されたブレード28によってならしながら、金型32の幅方向の一端側から他端側に渡る領域に連続して塗布する。これによって、金型32上の幅方向の一端側から他端側に渡る領域に、塗膜13Aが形成される(塗布工程)。
【0075】
次に、金型32上に塗布された塗膜13Aを乾燥させた後に、加熱することによって、金型32の外側の面の、幅方向の一端側から他端側に渡る領域に、ベルト13が形成された状態となる(図5(B)参照)(加熱工程)。
【0076】
次に、補強層15の形成のための溶液として、熱硬化性樹脂に対する添加剤の体積含有率が、上記熱硬化性樹脂溶液21A(ベルト12形成用)における熱硬化性樹脂の該溶液における添加剤の体積含有率より低くなるように予め調整された熱硬化性樹脂溶液21Bを用意する。そして、図5(C)に示すように、成膜装置30では、金型32を図5(C)中の矢印A方向に回転させながら、金型32上に形成されたベルト12の外側の面の両端部の各々に、該熱硬化性樹脂溶液21Bを塗布して、該両端部の各々に、塗膜15Aを形成する(塗布工程)。
【0077】
次に、金型32上に塗布された熱硬化性樹脂溶液21Bによる塗膜15Bを乾燥させた後に、加熱することによって、金型32の外側の面に形成されたベルト12の幅方向の両端部の各々に、補強層15が形成された状態となる(図5(D)参照)(加熱工程)。
【0078】
これによって、金型32上に環状体11が形成される(図5(D)参照)。
【0079】
次に、この環状体11を、第1の実施の形態における分離工程と同じ方法を用いて金型32から分離する(分離工程)。そして、金型32から分離された環状体11について、側面(環状体11の幅方向に交差する方向の面)が、補強層15及びベルト13からなる面とされるように、幅方向の両端部を切断する。
【0080】
これによって、図4に示す環状体11が作製される。すなわち、上記工程を経ることによって、ベルト13の外側の面における幅方向の両端部に、帯状の補強層15が設けられ、少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する多層構成とされた環状体11が作製される。
【0081】
この第2の実施の形態における環状体11では、補強層15が、環状体11の幅方向の両端部に設けられており、この幅方向の両端部における最も外側の層とされている。また、第2の実施の形態における環状体11では、ベルト13が、環状体11の幅方向の両端部における最も内側の層とされている。
このため、上述のように、このベルト13とされる塗膜13A(熱硬化性樹脂溶液)中の熱硬化性樹脂に対する添加剤の体積含有率は、補強層15とされる塗膜15A(熱硬化性樹脂溶液)中の熱硬化性樹脂に対する添加剤の体積含有率より高くなるように調整されている。
【0082】
環状体11の製造工程における加熱工程においては、これらの塗膜13A及び塗膜15Aの各々に熱を加えることによって、これらの塗膜に含まれる熱硬化性樹脂を硬化させることで、補強層15及びベルト13を形成している。このため、第1の実施の形態でも説明したように、この熱硬化性樹脂の硬化時には、体積の減少が生じることから、作製された補強層15及びベルト13には、径方向(金型32の周方向)に沿った引張り応力が蓄積される。従って、作製された環状体11においては、幅方向の両端部において最も外側の層とされる補強層15の引張り応力は、該幅方向の両端部において最も内側の層とされるベルト13の引張り応力に比べて大きくなると考えられる。
【0083】
従って、作製された環状体11の内面側及び外面側に傷がついたときに、環状体11の幅方向の両端部において最も外側の層とされた補強層15の方が、該幅方向の両端部において最も内側の層とされたベルト13に比べて、より大きな引張り応力が解放されることとなり、環状体11の幅方向の両端部が外側に反ることが抑制されると考えられる。
【0084】
また、作製された環状体11においては、幅方向の両端部において最も外側の層とされる補強層15の引張り応力は、該幅方向の両端部において最も内側の層とされるベルト13の引張り応力に比べて大きいと考えられることから、作製された環状体11の内面側に外面側に比べて多くの傷がついた場合であっても、環状体11の幅方向の両端部において最も外側の層とされた補強層15の方が、該幅方向の両端部において最も内側の層とされたベルト13に比べて、より大きな引張り応力が解放されることから、環状体11の幅方向の両端部が外側に反ることが抑制されると考えられる。
【0085】
(第3の実施の形態)
上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、環状体の幅方向の両端部のみが多層構造とされた形態を説明したが、環状体の全面にわたって多層構造とされた形態であってもよい。
具体的には、図6(A)に示すように、環状のベルト40Bの外側の面の全領域を覆うように、環状のベルト40Aが設けられた構成の環状体40であってもよい。また、この場合についても、2層に限られず、図6(B)に示すように3層(環状のベルト40Aの外側に、環状のベルト40C及び環状のベルト40Aが重ねられた構成)の環状体42であってもよいし、図示は省略するが、4層以上であってもよい。
【0086】
環状体の全面にわたって多層構造とされた形態である場合についても、幅方向両端部における最も外側の層(図6(A)及び図6(B)ではベルト40B)、及び最も内側の層(図6(A)及び図6(B)ではベルト40A)が、第1の実施の形態で挙げた熱硬化性樹脂と、第1の実施の形態で挙げた添加剤と、を含み、この最も外側の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該最も外側の層に含まれる前記添加剤の体積含有率が、最も内側の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該最も内側の層に含まれる前記添加剤の体積含有率より低い環状体40及び環状体42とすればよい。
【0087】
(第4の実施の形態)
上記実施の形態で説明した環状体(環状体10、環状体11、環状体40、環状体42)は、各種装置に設けられる環状の部材として用いられる。例えば、複写機やプリンタ等の電子写真方式を用いた画像形成装置の中間転写ベルト、用紙搬送ベルト、定着ベルト等に用いられる。
【0088】
図7には、本実施の形態の環状体が適用される画像形成装置の一の実施の形態を示した。本実施形態に係る画像形成装置100は、中間転写ベルト107を備えている。この中間転写ベルト107に沿って、4つの像保持体101a、像保持体101b、像保持体101c、及び像保持体101dが配置されている。像保持体101aの周囲には、その回転方向にそって、帯電装置102a、露光装置114a、現像装置103a、一次転写装置105a、クリーニング装置104aが配置されている。像保持体101bの周囲には、その回転方向にそって、帯電装置102b、露光装置114b、現像装置103b、一次転写装置105b、クリーニング装置104bが配置されている。像保持体101cの周囲には、その回転方向にそって、帯電装置102c、露光装置114c、現像装置103c、一次転写装置105c、クリーニング装置104cが配置されている。像保持体101dの周囲には、その回転方向にそって、帯電装置102d、露光装置114d、現像装置103d、一次転写装置105d、クリーニング装置104dが配置されている。
【0089】
中間転写ベルト107は、テンションロール106a、テンションロール106b、テンションロール106c、テンションロール106d、及びドライブロール112によって支持されている。これらのテンションロール106a、テンションロール106b、テンションロール106c、テンションロール106d、及びドライブロール112によって、中間転写ベルト107は、4つの像保持体101a、像保持体101b、像保持体101c、及び像保持体101dの各々の表面に接触しながら、これらの像保持体101a、像保持体101b、像保持体101c、及び像保持体101dの各々に対応して配置された一次転写装置105a、一次転写装置105b、一次転写装置105c、一次転写装置105dとの間を矢印Aの方向に移動される。これらの一次転写装置105a、一次転写装置105b、一次転写装置105c、一次転写装置105dの各々が中間転写ベルト107を介して像保持体101a、像保持体101b、像保持体101c、及び像保持体101dの各々に向かい合う領域が、一次転写部となる。この像保持体101a、像保持体101b、像保持体101c、及び像保持体101dの各々と、一次転写装置105a、一次転写装置105b、一次転写装置105c、一次転写装置105dの各々と、の間には、一次転写電圧が印加される。
【0090】
また、二次転写装置として、中間転写ベルト107を介してバックアップロール108と二次転写ロール109が向かい合うように配置されている。紙等の記録媒体113が中間転写ベルト107の表面に接触しながら中間転写ベルト107と二次転写ロール109との間を矢印Bの方向に移動し、その後、定着装置110を通過する。二次転写ロール109が中間転写ベルト107を介してバックアップロール108に向かい合う部位が二次転写部となり、二次転写ロール109とバックアップロール108との間には二次転写電圧が印加される。更に、転写後の中間転写ベルト107と接触するように、中間転写ベルトのクリーニング装置111が配置されている。また、画像形成装置100には、定着装置110が設けられている。
【0091】
なお、画像形成装置100が、本発明の画像形成装置に相当し、像保持体101a、像保持体101b、像保持体101c、及び像保持体101dが、本発明の画像形成装置の像保持体に相当する。また、帯電装置102a、帯電装置102b、帯電装置102c、及び帯電装置102dが、本発明の画像形成装置の帯電装置に相当する。また、露光装置114a、露光装置114b、露光装置114c、及び露光装置114dが、本発明の画像形成装置の露光装置に相当する。また、現像装置103a、現像装置103b、現像装置103c、及び現像装置103dが、本発明の画像形成装置の現像装置に相当する。また、一次転写装置105a、一次転写装置105b、一次転写装置105c、一次転写装置105c、中間転写ベルト107、二次転写ロール109、及びバックアップロール108が、本発明の画像形成装置の転写装置に相当する。また、定着装置110が、本発明の画像形成装置の定着装置に相当する。
【0092】
画像形成装置100では、像保持体101aが矢印の方向に回転するとともに、その表面が帯電装置102aによって一様に帯電された後、レーザー光等の露光装置114aにより第1色目の潜像が形成される。形成された潜像はその色に対応するトナーを収容した現像装置103aにより、トナーで現像(可視化)されてトナー像が形成される。なお、現像装置103a、現像装置103b、現像装置103c、及び現像装置103dの各々には、各色の静電潜像に対応するトナー(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)が収容されている。
【0093】
像保持体101a上に形成されたトナー像は、一次転写部を通過する際に、一次転写装置105aによって中間転写ベルト107上に静電的に一時的に転写(一次転写)される。以降、同様にして、第1色目のトナー像を保持した中間転写ベルト107上に、一次転写装置105b、一次転写装置105c、及び一次転写装置105dによって、第2色目、第3色目、第4色目のトナー像が順次重ね合わせられるよう一次転写され、最終的にフルカラーの多重トナー像が得られる。
【0094】
中間転写ベルト107上に形成された多重トナー像は、二次転写部を通過する際に、記録媒体113に静電的に一括転写される。トナー像が転写された記録媒体113は、定着装置110に搬送され、加熱及び加圧により定着処理された後、機外に排出される。
【0095】
一次転写後の像保持体101a、像保持体101b、像保持体101c、及び像保持体101dは、クリーニング装置104a、クリーニング装置104b、クリーニング装置104c、及びクリーニング装置104dの各々によって、表面に残留したトナー等を除去される。一方、二次転写後の中間転写ベルト107は、中間転写ベルトのクリーニング装置111により表面に残留したトナー等が除去され、次の画像形成プロセスに備える。
【0096】
上記第1の実施の形態〜第3の実施の形態で説明した環状体は、画像形成装置100における、帯電装置102a、帯電装置102b、帯電装置102c、帯電装置102d、現像装置103a、現像装置103b、現像装置103c、現像装置103d、一次転写装置105a、一次転写装置105b、一次転写装置105c、一次転写装置105c、中間転写ベルト107、二次転写ロール109、バックアップロール108、及び定着装置110における環状の部材として用いられる。
【0097】
例えば、環状体10(図1参照)を、中間転写ベルト107として用いた場合には、この中間転写ベルト107の内側の面は、テンションロール106a、テンションロール106b、テンションロール106c、テンションロール106d、及びドライブロール112等に接触された状態で支持されるので、外側の面より内側の面の方が、より数多くの傷がつくと考えられる。このため、環状体が1層の構成である場合や、本実施の形態の環状体の構成を有さない場合には、該傷によって内側の面の引張り応力が外側の面に比べて多く解放されることで、環状体の両端部が外側に向かって沿ってしまうと考えられる。
一方、本実施の形態では、環状体10を、中間転写ベルト107として用いることから、中間転写ベルト107の幅方向の両端部が外側に反ることが抑制されると考えられる。
【0098】
また、第2の実施の形態〜第3の実施の形態で説明した環状体11、環状体40、及び環状体42を中間転写ベルト107として用いた場合や、環状体10、環状体11、環状体40、及び環状体42を、帯電装置102a、帯電装置102b、帯電装置102c、帯電装置102d、現像装置103a、現像装置103b、現像装置103c、現像装置103d、一次転写装置105a、一次転写装置105b、一次転写装置105c、一次転写装置105c、二次転写ロール109、バックアップロール108、及び定着装置110における環状の部材として用いた場合についても、環状体の幅方向の両端部が外側に反ることが抑制されると考えられる。
【実施例】
【0099】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0100】
−環状体1の作製−
まず、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)とからなるポリアミック酸のN−メチル−2ピロリドン(NMP)溶液(宇部興産株式会社製ユーワニスS(イミド転化後の固形分18質量%)に、ポリアミック酸100質量部に対して、添加剤として、乾燥したカーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH3.0、揮発分:14.0%))を90質量部になるよう添加して、ジェットミル分散機(ジーナス株式会社製GeanusPY、衝突部の最小部断面積0.032mm2)を用い、圧力200MPaで、分散ユニット部を5回通過させて、分散及び混合して、分散液Aを得た。
【0101】
なお、このカーボンブラックの350℃における熱収縮率を、SEMを用いて測定したところ、0%であった。
【0102】
次に、この得られた分散液Aに上記NMP溶液を添加し、該NMP溶液を添加した後の溶液中におけるポリアミック酸100質量部に対するカーボンブラックの含有率が27質量部となるように調整した。そして、この溶液を、プラネタリー式ミキサー(アイコーミキサー:愛工舎製作所製)を用いて混合・攪拌することにより、添加剤としてのカーボンブラックの分散されたポリイミド前駆体溶液A1を調製した。
【0103】
一方、上記調整した分散液Aに上記NMP溶液を添加し、該NMP溶液を添加した後の溶液中におけるポリアミック酸100質量部に対するカーボンブラックの含有率が25質量部となるように調整した。そして、この溶液を、プラネタリー式ミキサー(アイコーミキサー:愛工舎製作所製)を用いて混合・攪拌することにより、添加剤としてのカーボンブラックの分散されたポリイミド前駆体溶液B1を調製した。
【0104】
次に、図2に示す金型32として、外径166mm、長さ650mmのアルミニウム製円筒体を用意した。このアルミニウム製円筒体は、表面を切削して外径を189mmとした後、球形ガラス粒子によるブラスト処理により、表面を表面粗さRa:1.52umに粗面化したものである。この金型32の表面にシリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)製)を塗布し、300℃で1時間焼き付け処理を施した。さらに、塗布工程として、図2(A)に示すように、金型32の幅方向を水平または水平に近い状態にして40rpmで回転させた(図2(A)中、矢印A方向)。ブレード28としては幅20mm、厚さ0.5mmのSUSからなり、弾力性を有する板状の部材を用いた。このブレード28を金型32に押し付け、上記調整したポリイミド前駆体溶液A1を、貯留部20に充填し、口径2mmのノズル26から金型32の表面に押し出した。なお、ポリイミド前駆体溶液A1がブレード28を通過する際、ブレード28が押し広げられ、ブレード28と金型32との間には隙間ができた。次いで、ノズル26とブレード28とを金型32の幅方向に120mm/分の速さで移動させた。なお、塗布の際には、金型32の幅方向の両端に端部から幅方向の中央部に向かって70mmずつの不塗布の領域を設けた。
【0105】
次に、このポリイミド前駆体溶液A1が塗布されて塗膜A1の形成された金型32の幅方向を水平または水平に近い状態としたまま、6rpmで回転させながら120℃で25分間加熱乾燥させ、図4に示すベルト13に相当する基材A1を得た。
なお、この基材A1の膜厚は、イミド化後の膜厚が70umになるように、塗布時のノズル26からの押出し液量を調整した。
【0106】
次に、上記調整したポリイミド前駆体溶液B1を、上記ポリイミド前駆体A1と同じ方法を用いて金型32上に形成された基材A1の幅方向の両端部に相当する領域に塗布した。このポリイミド前駆体溶液B1の塗布の領域は、金型32の幅方向の一端から20mmの位置を塗布の開始位置として、この開始位置から金型32の幅方向に向かって160mmの位置までの領域と、金型32の幅方向の他端から20mmの位置を塗布の開始位置として、この開始位置から金型32の幅方向に向かって160mmの位置までの領域と、とした。これによって、金型32上に形成された基材A1の幅方向の両端部に、該基材A1に重ねて塗膜B1が形成された状態となった。
【0107】
次に、このポリイミド前駆体溶液B1が塗布されて、幅方向の両端部に基材A1に重ねて塗膜B1の形成された金型32の幅方向を水平または水平に近い状態としたまま、6rpmで回転させながら120℃で25分間加熱乾燥させた。これによって、図4に示す補強層15に相当する補強層B1を形成した。
なお、この層B1の膜厚は、イミド化後の膜厚が10umになるように、塗布時のノズル26からの押出し液量を調整した。
【0108】
上記基材A1の外側の面の幅方向の両端部に補強層B1の形成された環状の部材C1を、310℃で30分間加熱させた後に、室温にまで冷えたところで、金型32から該環状の部材Cを剥離した。剥離した環状の部材Cの幅方向の中央部を、369mmの幅で切断することによって、図4に示す構成の環状体1を得た。
【0109】
作製された環状体1について、塗膜A1の加熱によって基材A1とするときの、該基材A1の体積減少率と、塗膜B1の加熱によって補強層B1とするときの、該補強層B1の体積減少率と、を計算したところ、各々、11.2%と10.7%であった。
【0110】
この体積減少率は、カーボンブラックの比重を1.85g/cm3、ポリイミド前駆体の比重を1.30g/cm3、ポリイミド樹脂の比重を1.39g/cm3とし、ポリイミド前駆体が完全にイミド化したものとして、下記式を用いて算出した。
【0111】
式(1−(X/1.85+0.9271×Y/1.39)/(X/1.85+Y/1.39))×100
ただし、式中Xはカーボンブラック量(g)を表し、Yはポリアミック酸量(g)を表す。
【0112】
また、同様にカーボンブラックの体積含有率は、下記式を用いて算出した。
式((X/1.85)/(X/1.85+0.9271×Y/1.39))×100
【0113】
作製された環状体1について、塗膜A1の加熱によって基材A1とするときの、該基材A1の添加剤(カーボンブラック)含有率と、塗膜B1の加熱によって補強層B1とするときの、該補強層B1の添加剤(カーボンブラック)と、を計算したところ、各々、17.95%と16.85%であった。
【0114】
―環状体2、環状体3、環状体4、環状体5、及び環状体6の作製―
上記環状体1の作製において、補強層B1の形成のために用いたポリイミド前駆体溶液B1中におけるポリアミック酸100質量部に対するカーボンブラックの含有量を、表1に示す値とした以外は、環状体1と同様にして環状体2、環状体3、環状体4、環状体5、及び環状体6を作製した。
【0115】
作製した環状体2、環状体3、環状体4、環状体5、及び環状体6の各々における基材及び補強層における、熱硬化性樹脂(ポリイミド)に対する添加剤としてのカーボンブラックの体積含有率、及び体積減少率を、環状体1と同じ方法で測定した。測定結果を表1に示した。
【0116】
―環状体7の作製―
ビスフェノールCタイプのポリカーボネート100質量部をTHF(テトラヒドロフラン)230質量部に溶解した溶液、該溶液におけるポリアミック酸100質量部に対して、添加剤としてのカーボンブラック(Special Black 4:Degussa社製)を27質量部添加し、ジェットミル分散機(Geanus PY[衝突部の最小部断面積0.032mm2]:ジーナス社製)を用い、圧力200MPaで分散ユニット部を5回通過させて分散・混合を行った。これにより、添加剤としてカーボンブラックの分散されたポリカーボネート溶液A7を調製した。
【0117】
次に、PET樹脂100質量部を、THF230質量部に溶解し、添加剤の分散されていない樹脂溶液として、PET樹脂溶液B7を調整した。
【0118】
得られたポリカーボネート溶液A7を用い、環状体1の作製と同様にしてシリコーン系離型剤を塗布して焼き付け処理を行った金型32上に、塗布工程として、ポリカーボネート溶液A2を塗布し、次いで、ノズル26とブレード28とを金型32の幅方向に120mm/分の速さで移動させた。なお、塗布の際には、金型32の幅方向の両端に端部から幅方向の中央部に向かって70mmずつの不塗布の領域を設けた。
【0119】
次に、このポリカーボネート溶液A7が塗布されて塗膜A7の形成された金型32の幅方向を水平または水平に近い状態としたまま、6rpmで回転させながら120℃で90分間加熱乾燥させ、図4に示すベルト13に相当する基材A7を得た。
なお、この基材A7の膜厚は、加熱乾燥後の膜厚が70umになるように、塗布時のノズル26からの押出し液量を調整した。
【0120】
次に、上記調整したPET樹脂溶液B7を、上記ポリカーボネート溶液A7と同じ方法を用いて金型32上に形成された基材A7の幅方向の両端部に相当する領域に塗布して塗膜B7を形成した。この塗布の領域は、金型32の幅方向の一端から20mmの位置を塗布の開始位置として、この開始位置から金型32の幅方向に向かって160mmの位置までの領域と、金型32の幅方向の他端から20mmの位置を塗布の開始位置として、この開始位置から金型32の幅方向に向かって160mmの位置までの領域と、とした。これによって、金型32上に形成された基材A7の幅方向の両端部に、該基材A7に重ねて塗膜B7が形成された状態となった。
【0121】
次に、このPET樹脂溶液B7が塗布されて、幅方向の両端部に基材A7に重ねて塗膜B7の形成された金型32の幅方向を水平または水平に近い状態としたまま、6rpmで回転させながら120℃で90分間加熱乾燥させた。これによって、図4に示す補強層15に相当する補強層B7を形成した。
なお、この補強層B7の膜厚は、加熱乾燥後の膜厚が10umになるように、塗布時のノズル26からの押出し液量を調整した。
【0122】
この補強層B7について、補強層B7における熱硬化性樹脂に対する添加剤としてのカーボンブラックの体積含有率を求めた。詳細には、カーボンブラックの比重を1.85g/cm3、ポリカーボネートの比重を1.20g/cm3、として、下記式を用いて算出したところ、カーボンブラックの体積含有率は14.90体積%であった。
【0123】
式((X/1.85)/(X/1.85+Z/1.20))×100
ただし、式中Xはカーボンブラック量(g)を表し、Zはポリカーボネート量(g)を表す。
【0124】
上記基材A7の外側の面の幅方向の両端部に補強層B7の形成された環状の部材C1が室温にまで冷えたところで、金型32から該環状の部材Cを剥離した。剥離した環状の部材Cの幅方向の中央部を、369mmの幅で切断することによって、図4に示す構成の環状体7を得た。
【0125】
作製された環状体7について、基材A7の体積減少率と、補強層B7の体積減少率と、を計算し、結果を表1に示した。
【0126】
―環状体8の作製―
環状体1の作製時に調整した分散液Aに対して、環状体1の作製時に用いたNMP溶液を添加した後の溶液中におけるポリアミック酸100質量部に対するカーボンブラックの含有量が28質量部になるように、NMP溶液を添加し、プラネタリー式ミキサー(アイコーミキサー:愛工舎製作所製)を用いて混合・攪拌することにより、補強層用のポリイミド前駆体溶液B8を調製した。
【0127】
次に、環状体1の作製と同様にして得られた分散液Aに対して、環状体1の作製時に用いたNMP溶液を、該溶液中のポリアミック酸100質量部に対してカーボンブラックが27質量部になるように添加し、プラネタリー式ミキサー(アイコーミキサー:愛工舎製作所製)を用いて混合・攪拌することにより、基材層用のポリイミド前駆体溶液A8を調製した。
【0128】
得られた補強層用のポリイミド前駆体溶液B8を用い、環状体1の作製と同様にしてシリコーン系離型剤を塗布して焼き付け処理を行った金型32上に、塗布工程として、ポリイミド前駆体溶液B8を塗布し、次いで、ノズル26とブレード28とを金型32の幅方向に120mm/分の速さで移動させた。なお、塗布領域は、金型32の幅方向の一端から20mmの位置を塗布の開始位置として、この開始位置から金型32の幅方向の中央部に向かって160mmの位置までの領域と、金型32の幅方向の他端から中央部に向かって20mmの位置を塗布の開始位置として、この開始位置から金型32の幅方向の中央部に向かって160mmの位置までの領域と、とした。これによって、金型32上の幅方向の両端部に、補強層用のポリイミド前駆体溶液B8による塗膜B8が形成された状態となった。
【0129】
次に、このポリイミド前駆体溶液B8が塗布されて塗膜B8の形成された金型32の幅方向を水平または水平に近い状態としたまま、6rpmで回転させながら120℃で25分間加熱乾燥させ、図1に示す補強層14に相当する補強層B8を得た。
なお、この基材B7の膜厚は、加熱乾燥後(イミド化後)の膜厚が10umになるように、塗布時のノズル26からの押出し液量を調整した。
【0130】
この補強層B8について、補強層B8における熱硬化性樹脂(ポリイミド)に対する添加剤としてのカーボンブラックの体積含有率を測定した。測定結果を表1に示した。
【0131】
次に、上記ポリイミド前駆体溶液B8と同じ方法を用いて、金型32の幅方向の両端部に形成された一対の補強層B8を覆うように、金型32の幅方向の一端側から他端側に向かって、塗布工程として、上記調整した基材層用のポリイミド前駆体溶液A8を塗布した。このとき、ノズル26とブレード28とを金型32の幅方向に120mm/分の速さで移動させた。なお、塗布の際には、金型32の幅方向の両端に端部から幅方向の中央部に向かって70mmずつの不塗布の領域を設けた。
【0132】
次に、このポリイミド前駆体溶液A8による塗膜A8の形成された金型32の幅方向を水平または水平に近い状態としたまま、6rpmで回転させながら120℃で25分間加熱乾燥させ、図1に示すベルト12に相当する基材A8を得た。
なお、この基材A8の膜厚は、加熱乾燥後の膜厚が70umになるように、塗布時のノズル26からの押出し液量を調整した。
【0133】
この基材A8について、基材A8における熱硬化性樹脂(ポリイミド)に対する添加剤としてのカーボンブラックの体積含有率を上記と同様にして測定した。測定結果を表1に示した。
【0134】
上記の、金型32の幅方向の両端部に補強層B8が形成され、その上に該金型32の幅方向の一端側から他端側に渡る領域に基材A8の形成された環状の部材C8を、310℃で30分間加熱させた後に、室温にまで冷えたところで、金型32から該環状の部材C8を剥離した。剥離した環状の部材C8の幅方向の中央部を、369mmの幅で切断することによって、図1に示す構成の環状体8を得た。
【0135】
作製された環状体8について、補強層B8及び基材A8の体積減少率を環状体1と同様にして求めた。結果を表1に示した。
【0136】
―環状体9、環状体10、環状体11、環状体12、及び環状体13の作製−
上記環状体8の作製において、補強層B8の形成のために用いたポリイミド前駆体溶液B8中におけるポリアミック酸100質量部に対するカーボンブラックの含有量を、表1に示す値とした以外は、環状体8と同様にして環状体9、環状体10、環状体11、環状体12、及び環状体13を作製した。
【0137】
作製した環状体9、環状体10、環状体11、環状体12、及び環状体13の各々における基材及び補強層における、熱硬化性樹脂に対する添加剤としてのカーボンブラックの体積含有率、及び体積減少率を、環状体1と同じ方法で測定した。測定結果を表1に示した。
【0138】
―環状体14の作製―
PET樹脂100質量部をTHF400質量部に溶解し、補強層用のPET樹脂溶液B14を調整した。
【0139】
次にビスフェノールCタイプのポリカーボネート100質量部をTHF400質量部に溶解した溶液に、カーボンブラック(Special Black 4:Degussa社製)を27質量部添加し、ジェットミル分散機(Geanus PY[衝突部の最小部断面積0.032mm2]:ジーナス社製)を用い、圧力200MPaで分散ユニット部を5回通過させて分散・混合を行い、基材層用のカーボンブラックの分散されたポリカーボネート溶液A14を調製した。
【0140】
シリコーン系離型剤を塗布して焼き付け処理を行った金型32上に、塗布工程として、PET樹脂溶液B14を塗布し、次いで、ノズル26とブレード28とを金型32の幅方向に120mm/分の速さで移動させた。なお、塗布領域は、金型32の幅方向の一端から20mmの位置を塗布の開始位置として、この開始位置から金型32の幅方向の中央部に向かって160mmの位置までの領域と、金型32の幅方向の他端から中央部に向かって20mmの位置を塗布の開始位置として、この開始位置から金型32の幅方向の中央部に向かって160mmの位置までの領域と、とした。これによって、金型32上の幅方向の両端部に、補強層用のPET樹脂溶液B14による塗膜B14が形成された状態となった。
【0141】
次に、この補強層用のPET樹脂溶液B14による塗膜B14の形成された金型32の幅方向を水平または水平に近い状態としたまま、6rpmで回転させながら120℃で25分間加熱乾燥させ、図1に示す補強層14に相当する補強層B14を得た。
なお、この基材B7の膜厚は、加熱乾燥後の膜厚が10umになるように、塗布時のノズル26からの押出し液量を調整した。
【0142】
この補強層B14について、補強層B14における熱硬化性樹脂に対する添加剤としてのカーボンブラックの体積含有率を測定した。測定結果を表1に示した。
【0143】
次に、金型32の幅方向の両端部に形成された一対の補強層B14を覆うように、金型32の幅方向の一端側から他端側に向かって、塗布工程として、上記調整した基材層用のカーボンブラックの分散されたポリカーボネート溶液A14を塗布した。このとき、ノズル26とブレード28とを金型32の幅方向に120mm/分の速さで移動させた。なお、塗布の際には、金型32の幅方向の両端に端部から幅方向の中央部に向かって70mmずつの不塗布の領域を設けた。
【0144】
次に、この基材層用のカーボンブラックの分散されたポリカーボネート溶液A14による塗膜A14の形成された金型32の幅方向を水平または水平に近い状態としたまま、6rpmで回転させながら120℃で90分間加熱乾燥させ、図1に示すベルト12に相当する基材A14を得た。
なお、この基材A14の膜厚は、加熱乾燥後の膜厚が70umになるように、塗布時のノズル26からの押出し液量を調整した。
【0145】
この基材A14について、基材A14における熱硬化性樹脂に対する添加剤としてのカーボンブラックの体積含有率を上記と同様にして測定した。測定結果を表1に示した。
【0146】
上記の、金型32の幅方向の両端部に補強層B14が形成され、その上に該金型32の幅方向の一端側から他端側に渡る領域に基材A14の形成された環状の部材C14が室温にまで冷えたところで、金型32から該環状の部材C14を剥離した。剥離した環状の部材C14の幅方向の中央部を、369mmの幅で切断することによって、図1に示す構成の環状体14を得た。
【0147】
作製された環状体14について、補強層B14及び基材A14の体積減少率を環状体1と同様にして求めた。結果を表1に示した。
【0148】
(実施例1)
図7に示す基本構成を有するフルカラープリンター(DocuPrint C5450:富士ゼロックス社製)に装着されている中間転写ベルト(図7では、中間転写ベルト107)に代えて、上記作製した環状体1を装着し、28℃、85%RHの環境下で、A4用紙をヨコ向きにして2万枚連続してプリントを行なった。この2万枚のプリント後に、環状体1をフルカラープリンターよりはずし、両端部の外側への反り量を測定した。
【0149】
この反り量の測定は、環状体1を幅方向に切断して板状の部材とし、この板状の部材とした環状体1を、平板状の部材(基準部材と称する)の上に置いた。そして、板状の部材とされた環状体1の環状であったときの幅方向の両端部について、基準部材からの浮き上がり量(高さ)を測定した。なお、この測定は、板状の部材とした環状体1が環状であったときの内側の面を基準部材に接するように置いて行った。このため、この浮き上がり量は、環状体1の外側への反り量を示している。
さらに、この測定は環状体1の両端に対しそれぞれ周方向等間隔で6箇所ずつ行い、合計12箇所の値を平均化して求めた。結果を表1に示す。
【0150】
(実施例2)
上記作製した環状体2を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0151】
(実施例3)
上記作製した環状体3を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0152】
(実施例4)
上記作製した環状体4を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0153】
(実施例5)
上記作製した環状体8を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0154】
(実施例6)
上記作製した環状体9を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0155】
(実施例7)
上記作製した環状体10を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0156】
(実施例8)
上記作製した環状体11を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0157】
(比較例1)
上記作製した環状体5を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0158】
(比較例2)
上記作製した環状体6を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0159】
(比較例3)
上記作製した環状体7を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0160】
(比較例4)
上記作製した環状体12を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0161】
(比較例5)
上記作製した環状体13を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0162】
(比較例6)
上記作製した環状体14を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0163】
【表1】
【0164】
表1に示すように、幅方向の両端部における最も外側の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する添加剤(350℃における熱収縮率が2.0%以下)の体積含有率が、該幅方向の両端部における最も内側の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該体積含有率より低い、実施例の環状体1〜4,環状体8〜11では、この関係を満たさない比較例の環状体5〜7、及び環状体4〜6に比べて、外側への反り量の抑制が確認された。
【符号の説明】
【0165】
10 環状体
11 環状体
12、13 ベルト
14、15 補強層
40、42 環状体
100 画像形成装置
101a〜101d 像保持体
102a〜102d 帯電装置
103a〜103d 現像装置
105a〜105d 一次転写ロール
105a〜105d 一次転写装置
107 中間転写ベルト
109 二次転写ロール
114a〜114d 露光装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状体及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環状の部材である環状体は、各種の部材を搬送する部材や、各種の材料を供給する部材等として用いられている。
【0003】
引用文献1には、環状体としての無端状の樹脂ベルトの両端部に、PET(ポリエチレンテレフタレート)から構成されたシームレス補強層を設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−107942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、環状体の幅方向の両端部における最も外側の層及び最も内側の層の少なくとも一方に、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤を含有しない環状体に比べて、環状体の幅方向の両端部の外側への反りが抑制された環状体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する多層構成とされ、少なくとも該幅方向の両端部における最も外側の第1の層及び該幅方向の両端部における最も内側の第2の層が、熱硬化性樹脂と、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤と、を含み、前記第1の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該第1の層に含まれる前記添加剤の体積含有率が、前記第2の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該第2の層に含まれる前記添加剤の体積含有率より低い環状体である。
【0007】
請求項2に係る環状体は、前記複数の層の各々に含まれる前記熱硬化性樹脂が、同じ熱硬化性樹脂である請求項1に記載の環状体である。
【0008】
請求項3に係る発明は、像保持体と、前記像保持体を帯電する帯電装置と、前記帯電装置によって帯電された前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成装置と、前記像保持体上の前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像が転写される転写体と、前記転写体に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、前記記録媒体に転写された前記トナー像を該記録媒体に定着する定着装置と、を備え、前記帯電装置、前記現像装置、前記転写体、前記転写装置、及び前記定着装置の少なくとも1つが請求項1または請求項2に記載の環状体を有する画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、環状体の幅方向の両端部における最も外側の層及び最も内側の層の少なくとも一方に、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤を含有しない環状体に比べて、環状体の幅方向の両端部の外側への反りが抑制された環状体が提供される。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、複数の層の各々に含まれる熱硬化性樹脂が互いに異なる場合に比べて、各層の間の密着性が高まる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、環状体の幅方向の両端部における最も外側の層及び最も内側の層の少なくとも一方に、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤を含有しない環状体を用いた構成に比べて、環状体の幅方向の両端部の外側への反りが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(A)第1の実施の形態に係る環状体を示す斜視図である。(B)第1の実施の形態に係る環状体の幅方向の端部の断面を示す模式図である。
【図2】(A)〜(D)第1の実施の形態に係る環状体の作製工程を示す模式図である。
【図3】(A)(B)抵抗率の測定方法を示す模式図である。
【図4】第2の実施の形態に係る環状体を示す斜視図である。
【図5】(A)〜(D)第2の実施の形態に係る環状体の作製工程を示す模式図である。
【図6】(A)第3の実施の形態に係る環状体を示す斜視図である。(B)第4の実施の形態に係る環状体を示す斜視図である。
【図7】第4の実施の形態に係る画像形成装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施の形態に係る環状体は、少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する多層構成とされている。なお、「環状体の、少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する多層構成である」とは、環状体の幅方向の縁部に沿った面を含む領域が多層構成とされていることを示しており、これらの複数の層の、上記幅方向の端面がそろっている状態を示している。
本発明者らは、少なくとも、この幅方向の両端部における最も外側の第1の層及び該幅方向の両端部における最も内側の第2の層が、熱硬化性樹脂と、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤と、を含み、前記第1の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該第1の層に含まれる前記添加剤の体積含有率が、前記第2の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該第2の層に含まれる前記添加剤の体積含有率より低い環状体とすることによって、環状体の幅方向の両端部の外側への反りが抑制されることを見いだした。
【0014】
以下、本実施の形態の環状体について詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1(A)及び図1(B)に示すように、本実施の形態の環状体10は、幅方向の両端部が複数の層を有する多層構成とされている。
図1(A)及び図1(B)に示す形態では、環状体10は、環状のベルト12と、該ベルト12の内側の面における幅方向の両端部に設けられた補強層14と、から構成されている。この補強層14は、ベルト12の内側の面における幅方向の両端部の縁部に沿って帯状に設けられている。
第1の実施の形態では、ベルト12の内側の面における幅方向の両端部に補強層14を設けた構成とすることで、環状体10を、少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する構成としている。このため、環状体10では、環状体10の幅方向の両端部における最も外側の層はベルト12であり、該幅方向の両端部における最も内側の層は補強層14とされている。
このため、環状体10では、環状体10の幅方向の両端部における最も外側の層であるベルト12、及び該両端部における最も内側の層である補強層14が、熱硬化性樹脂と、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤と、を含み、ベルト12に含まれる熱硬化性樹脂に対する該ベルト12に含まれる添加剤の体積含有率が、補強層14に含まれる熱硬化性樹脂に対する該補強層に含まれる添加剤の体積含有率より低い構成とされている。
【0016】
なお、本発明の環状体が環状体10に相当し、本発明の環状体における第1の層がベルト12に相当し、本発明の環状体における第2の層が、補強層14に相当する。
【0017】
ベルト12及び補強層14は、熱硬化性樹脂と、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤と、を含んで構成されている。
【0018】
ベルト12及び補強層14に含まれる熱硬化性樹脂としては、ポリアミドイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド、フェノール、エポキシ、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、ジアクリルフタレートが挙げられる。これらの中でもポリアミドイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂、ポリアミド樹脂が良く、強度や寸法安定性、耐熱性等の点でポリイミド樹脂が良い。
【0019】
ベルト12及び補強層14に含まれる添加剤は、上述のように、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤である。
【0020】
この添加剤の「350℃における熱収縮率」とは、350℃に昇温することで反応が起こり、体積減少することによる熱収縮率を示している。具体的には、添加剤の「350℃における熱収縮率」とは、測定対象の添加剤を22℃、湿度55%RHの環境下に24時間放置したときの平均径T1と、該平均径T1の測定の後に、該測定対象の添加剤を350℃、湿度20%RH以下の環境下に24時間放置した後、再度22℃、湿度55%RHの環境下に24時間放置したときの平均径T2と、を測定し、処理前後での変化率((T2/T1)×100)を示している。
なお、350℃とは、この添加剤と共にベルト12または補強層14に含まれる熱硬化性樹脂として何れの種類の熱硬化性樹脂を用いた場合であっても、硬化する温度を超える温度である。
【0021】
上記特性を有する添加剤としては、上記特性を満たし、熱硬化性樹脂中に分散される材料であればよく、粒子状、粉体状、の何れであってもよい。
この添加剤としては、具体的には、電子導電剤、イオン導電剤、及び導電性ポリマー等の導電剤や、絶縁性の粉体等が挙げられる。
【0022】
電子導電剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの粉体が挙げられる。
【0023】
イオン導電剤としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;が挙げられる。
【0024】
導電性ポリマーとしては、例えば、カルボキシル基が4級アンモニウム塩基を結合する(メタ)アクリレートと、他の化合物(例えばスチレン)との共重合体;4級アンモニウム塩基を結合するマレイミドと、メタアクリレートとの共重合体等の4級アンモニウム塩基を結合するポリマー;ポリスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸のアルカリ金属塩を結合するポリマー;ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール系ポリアミド共重合体、ポリエチレンオキド−エピクロルヒドリン共重合体ポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルを主セグメントとするブロック型のポリマー等の分子鎖中に少なくともアルキルオキシドの親水性ユニットを結合するポリマー等が挙げられる。また、更には、電子伝導性系導電剤として、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン等が挙げられ、これらの導電性ポリマーは、脱ドープ状態、またはドープ状態で用いられる。
【0025】
絶縁性の粉体としては、ポリフッ化ビニル,PVDF,テトラフルオロエチレン(TFE)樹脂,クロロトリフルオロエチレン(CTFE)樹脂,ETFE,CTFE−エチレン共重合体,PFA(TFE−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体),FEP(TFE−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体),EPE(TFE−HFP−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等のフッ化系化合物の樹脂粒子が挙げられる。
【0026】
これらの添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0027】
これらの添加剤としては、1次粒子における体積平均粒子径が10nm以上500nm以下の粉末を用いることが良い。
【0028】
添加剤の含有率としては、第1の実施の形態における環状体10では、環状体10の幅方向の両端部における最も外側の層はベルト12であり、該幅方向の両端部における最も内側の層は補強層14とされていることから、ベルト12に含まれる熱硬化性樹脂に対する該ベルト12に含まれる添加剤の体積含有率が、補強層14に含まれる熱硬化性樹脂に対する該補強層14に含まれる添加剤の体積含有率より低い構成であればよい。
【0029】
この添加剤の添加量は、この条件を満たせば特に制限は無いが、添加剤として導電剤を用いる場合には、ベルト12及び補強層14の内の、環状体10の幅方向の中央部を構成する層(本実施の形態ではベルト12)の表面抵抗率が1×109Ω/□〜1×1014Ω/□の範囲となるように、添加量を調整することがよい。
なお、添加剤として導電剤を用いて、上記表面抵抗率となるように、該導電剤の添加量を調整することで、環状体10は、後述する電子写真方式の画像形成装置の中間転写ベルトや記録媒体を搬送する搬送ベルトとして適用される。
【0030】
なお、添加剤として絶縁性の材料を用いる場合には、このような制限は無く、例えば、同じ層(ベルト12または補強層14)に含まれる熱硬化性樹脂100質量部に対して、
40質量部以上であってもよいし、5質量部以下であってもよい。
【0031】
なお、この電子写真方式の画像形成装置の中間転写ベルトや記録媒体を搬送する搬送ベルトの抵抗率を調整するために、上述のように、上記添加剤として導電剤を用いて該導電剤の含有量を調整してもよいが、抵抗率の調整のためには、別途の各種の導電剤を用いて調整を行い、本実施の形態の添加剤としては、絶縁性の粉体を用いた形態であってもよい。このように、添加剤として絶縁性の粉体を用いれば、環状体10を抵抗率の調整を必要とする装置の部材に適用する場合であっても、その添加量や添加される領域が制限されることが抑制されると考えられる。
【0032】
なお、表面抵抗率は、円形電極(例えば、株)ダイヤインスツルメント製URプローブ)を用い、JIS K6911(1995)に従って測定すればよい。
詳細には、図3に示す円形電極((株)ダイヤインスツルメント製ハイレスタURプローブ:第一電圧印加電極Aと板状絶縁体Bとを備え、円柱状電極部Cの外径φ16mm、リング状電極部Dの内径φ30mm、外径φ40mm)を用い、電圧を100V印加して10秒後の電流値を求め算出する。具体的には、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと板状絶縁体Bとの間に測定対象部材Tを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cとリング状電極部Dとの間に電圧V(V)を印加したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式(1)により表面抵抗率ρs(Ω/□)を算出すればよい。なお、22℃、55%RH環境で測定を行う。ここで、下記式(1)中、d(mm)は円柱状電極部Cの外径を示す。このようにして、測定対象物の24点(幅方向3箇所×周方向8箇所)を測定し、その平均値を表面抵抗率とすればよい。
式(1) ρs=π×(D+d)/(D−d)×(V/I)
【0033】
ここで、「導電」及び「導電性」とは、体積抵抗率で1.0×109Ωcm以下の範囲を意味し、以下同様である。また、「絶縁」及び「絶縁性」とは、この導電性の範囲を外れること、即ち体積抵抗率で1.0×1013Ωcmより高い範囲を意味する。
【0034】
環状体10の幅方向の両端部における最も外側の層であるベルト12に含まれる添加剤の体積含有率と、最も内側の層である補強層14に含まれる添加剤の体積含有率と、の差は、上記関係(ベルト12に含まれる熱硬化性樹脂に対する該ベルト12に含まれる添加剤の体積含有率が、補強層14に含まれる熱硬化性樹脂に対する該補強層14に含まれる添加剤の体積含有率より低い構成)を満たせば良く、その体積含有率の差は、熱硬化性樹脂として用いる材料、添加される添加剤の種類、添加剤の平均粒子径等によって異なる。
【0035】
また、環状体10の幅方向の両端部における最も外側の層であるベルト12に含まれる添加剤の体積含有率と、最も内側の層である補強層14に含まれる添加剤の体積含有率と、の差は、上記関係(ベルト12に含まれる熱硬化性樹脂に対する該ベルト12に含まれる添加剤の体積含有率が、補強層14に含まれる熱硬化性樹脂に対する該補強層14に含まれる添加剤の体積含有率より低い構成)を満たせば良い。
なお、このベルト12及び補強層14には、上記に挙げた材料の他、分散剤や滑剤などの加工助剤を添加してもよい。
【0036】
なお、このベルト12及び補強層14を構成する熱硬化性樹脂は、同じであることが良い。熱硬化性樹脂が同じであると、ベルト12と補強層14との間の密着性が向上し、環状体10の幅方向の両端部の外側への反りが更に抑制されることから良い。
【0037】
ベルト12は環状であれば、つなぎ目があってもなくてもよい。
【0038】
なお、第1の実施の形態では、環状体10を、環状のベルト12と、該ベルト12の内側の面における幅方向の両端部に設けられた補強層14と、から構成することによって、少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する構成とした形態を説明した。しかし、第1の実施の形態の環状体10では、このような構成に限られず、このベルト12と補強層14の間に他の層を1層または複数層設けた構成であってもよい。
【0039】
このベルト12と補強層14との間に設けられる層としては、ベルト12及び補強層14と同じように、熱硬化性樹脂及び添加剤を含んだ構成としてもよいが、異なった構成であってもよい。
ベルト12と補強層14との間に設けられた各層が、熱硬化性樹脂及び添加剤を含んだ構成である場合には、ベルト12と補強層14との間に設けられた各層における熱硬化性樹脂に対する各層における添加剤の体積含有率は、補強層14またはベルト12と同じであってもよく、異なっていても良い。また、ベルト12と補強層14との間に設けられた各層が、熱硬化性樹脂及び添加剤を含んだ構成である場合には、ベルト12と補強層14との間に設けられた各層における熱硬化性樹脂は、ベルト12及び補強層14を含む各層の密着性が向上される観点から、同じ熱硬化性樹脂であることが良い。
【0040】
第1の実施の形態における環状体10の製造方法の一例を説明する。
【0041】
本実施の形態において、環状体10は、円柱状の金型32の外側の面に、熱硬化性樹脂及び添加剤を含む熱硬化性樹脂溶液を塗布することによって、金型32上に塗膜を形成し(塗布工程)、該塗膜に熱を加える(加熱工程)一連の工程を繰り返すことによって多層構成とされた後に、金型32から分離する(分離工程)ことによって作製される。
【0042】
熱硬化性樹脂の溶媒としては、有機極性溶媒が用いられる。金型32上に塗布される熱硬化性樹脂溶液としては、この有機極性溶媒と熱硬化性樹脂とを含む溶液中に、各層に応じた体積含有率の添加剤と、その他の材料と、を添加した熱硬化性樹脂溶液が用いられる。
【0043】
この熱硬化性樹脂溶液の金型32への塗布方法には、一般的な塗布方法と用いればよい。例えば、図2(A)及び図2(C)に示すような成膜装置30を用いる方法が挙げられる。
【0044】
一例として、図1に示す環状体10を作製する方法を説明すると、図1に示す環状体10を作製する場合には、まず、補強層14の形成のための溶液として、添加剤の体積含有率を予め調整された熱硬化性樹脂溶液20Aを用意する。そして、成膜装置30では、金型32を図2(A)中の矢印A方向に回転させながら、該金型32の外側の面に該熱硬化性樹脂溶液20Aを塗布し、これを金型32の外側の面に接して配置されたブレード28によってならしながら、金型32の幅方向の両端端部に相当する領域に塗布する。
【0045】
詳細には、成膜装置30では、貯留部20に貯留された熱硬化性樹脂溶液20Aを、ポンプ24によって供給管22及びノズル26を介して、矢印A方向に回転されている金型32の外側の面の、幅方向の一端部と他端部と、の各々に供給する、
金型32の外側の面の、幅方向の一端部と他端部と、の各々に塗布された熱硬化性樹脂溶液20Aは、筋状に該金型32上に供給されるが、ブレード28によって平滑化され、螺旋状の筋が残ることなく塗膜14Aが形成される。これによって、環状体10として構成されたときの補強層14の設けられる領域に対応する金型32上の領域(幅方向の両端部)に、塗膜14Aが形成される(塗布工程)。
この塗布時の金型32の回転速度としては、例えば、20rpm以上300rpm以下であり、ノズル26と金型32との相対移動速度は、例えば、0.5mm/秒以上10.0mm/秒以下である。
【0046】
なお、熱硬化性樹脂溶液20Aの金型32への塗布方法としては、上記方法に限られず、浸漬塗布等の他の方法を用いても良い。
【0047】
次に、金型32上の幅方向の両端部に塗布された熱硬化性樹脂溶液20Aによる塗膜14Aを乾燥させた後に、加熱することによって、金型32の外側の面の、幅方向の両端部の各々に、補強層14が形成された状態となる(図2(B)参照)(加熱工程)。
【0048】
次に、ベルト12の形成のための溶液として、熱硬化性樹脂に対する添加剤の体積含有率が、上記熱硬化性樹脂溶液20Aにおける熱硬化性樹脂の該溶液における添加剤の体積含有率より低くなるように予め調整された熱硬化性樹脂溶液20Bを用意する。そして、成膜装置30では、金型32を図2(C)中の矢印A方向に回転させながら、該金型32の外側の面に該熱硬化性樹脂溶液20Bを塗布し、これを金型32の外側の面に接して配置されたブレード28によってならしながら、金型32の幅方向の一端部から他端部に渡る領域に塗布する(塗布工程)。
【0049】
詳細には、成膜装置30では、貯留部20に貯留された熱硬化性樹脂溶液20Bを、ポンプ24によって供給管22及びノズル26を介して、矢印A方向に回転されている金型32の外側の面の、幅方向の一端部と他端部と、の各々に供給する(図2(C)参照)。金型32の外側の面の、幅方向の一端部と他端部と、の各々に塗布された熱硬化性樹脂溶液20Bは、筋状に該金型32上に供給されるが、ブレード28によって平滑化され、螺旋状の筋が残ることなく塗膜12Aが形成される。これによって、金型32の幅方向の両端部に先に形成された補強層14を覆うように、金型32の幅方向の一端側から他端側の渡る領域に塗膜12Aが形成される。
【0050】
この塗布時の金型32の回転速度としては、例えば、20rpm以上300rpm以下であり、ノズル26と金型32との相対移動速度は、例えば、0.5mm/秒以上10.0mm/秒以下である。
【0051】
なお、熱硬化性樹脂溶液20Bの金型32への塗布方法としては、上記方法に限られず、浸漬塗布等の他の方法を用いても良い。
【0052】
次に、金型32上に塗布された熱硬化性樹脂溶液20Bによる塗膜14Bを乾燥させた後に、加熱することによって、金型32の外側の面に、幅方向の両端部の各々に先に形成された補強層14を覆うように、ベルト12が形成された状態となる(図2(D)参照)(加熱工程)。
【0053】
なお、上記熱硬化性樹脂溶液20Aによる補強層14とされる塗膜14A、及び上記熱硬化性樹脂溶液20Bによるベルト12とされる塗膜12Aの、上記加熱工程における加熱温度としては、具体的には、これらの熱硬化性樹脂溶液20A及び熱硬化性樹脂溶液20Bに含まれる熱硬化性樹脂が、ポリイミドの場合には、250℃以上450℃以下の範囲や、300℃以上350℃以下の範囲等で、20分間以上120分間以下加熱する。
【0054】
これによって、金型32上に環状体10が形成される(図2(D)参照)。
【0055】
次に、この環状体10を金型32から分離する(分離工程)。この環状体10の金型32からの分離には、環状体10の両端部と、金型32の外側の面との間に空気を流入して隙間を設ける方法を用いればよい。金型32から分離された環状体10は、側面(環状体10の幅方向に交差する方向の面)が、補強層14及びベルト12からなる面とされるように、幅方向の両端部を切断される。
【0056】
これによって、図1に示す環状体10が作製される。すなわち、上記工程を経ることによって、ベルト12の内側の面における幅方向の両端部に補強層14を設けることで、少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する多層構成とされた環状体10が作製される。
【0057】
ところで、第1の実施の形態における環状体10では、補強層14が、環状体10の幅方向の両端部に設けられており、この幅方向の両端部における最も内側の層とされている。また、第1の実施の形態における環状体10では、ベルト12が、環状体10の幅方向の両端部における最も外側の層とされている。
このため、上述のように、この補強層14とされる塗膜14A(熱硬化性樹脂溶液)中の熱硬化性樹脂に対する添加剤の体積含有率は、ベルト12とされる塗膜14B(熱硬化性樹脂溶液)中の熱硬化性樹脂に対する添加剤の体積含有率より高くなるように調整されている。
【0058】
環状体10の製造工程における加熱工程においては、これらの塗膜14A及び塗膜12Aの各々に熱を加えることによって、これらの塗膜に含まれる熱硬化性樹脂を硬化させることで、補強層14及びベルト12を形成している。
この熱硬化性樹脂の硬化時には、体積の減少が生じることから、作製された補強層14及びベルト12には、径方向(金型32の周方向)に沿った引張り応力が蓄積する。
【0059】
ここで、第1の実施の形態における環状体10では、幅方向の両端部において最も外側の層とされるベルト12に含まれる熱硬化性樹脂に対する該ベルト12に含まれる添加剤の体積含有率が、該幅方向の最も内側の層とされる補強層14に含まれる熱硬化性樹脂に対する該補強層14に含まれる添加剤の体積含有率より低い。このため、上記加熱工程においては、最も外側のベルト12とされる塗膜14Bの上記加熱工程による体積収縮率は、補強層14とされる塗膜14Aの上記加熱工程による体積収縮率より大きいと考えられる。従って、作製された環状体10においては、幅方向の両端部において最も外側の層とされるベルト12の引張り応力は、該幅方向の両端部において最も内側の層とされる補強層14の引張り応力に比べて大きくなると考えられる。
【0060】
従って、作製された環状体10の内面側及び外面側に傷がついたときに、環状体10の幅方向の両端部において最も外側の層とされたベルト12の方が、該幅方向の両端部において最も内側の層とされた補強層14に比べて、より大きな引張り応力が解放されることとなり、環状体10の幅方向の両端部が外側に反ることが抑制されると考えられる。
【0061】
また、作製された環状体10においては、幅方向の両端部において最も外側の層とされるベルト12の引張り応力は、該幅方向の両端部において最も内側の層とされる補強層14の引張り応力に比べて大きいと考えられる。このため、作製された環状体10の内面側に外面側に比べて多くの傷がついた場合であっても、環状体10の幅方向の両端部において最も外側の層とされたベルト12の方が、該幅方向の両端部において最も内側の層とされた補強層14に比べて、より大きな引張り応力が解放されることから、環状体10の幅方向の両端部が外側に反ることが抑制されると考えられる。
【0062】
従って、環状体10の幅方向の両端部における最も外側の層であるベルト12、及び該両端部における最も内側の層である補強層14が、熱硬化性樹脂と、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤と、を含み、該両端部における最も外側の層であるベルト12に含まれる熱硬化性樹脂に対する該ベルト12に含まれる添加剤の体積含有率が、該両端部における最も内側の層とされた補強層14に含まれる熱硬化性樹脂に対する該補強層に含まれる添加剤の体積含有率より低い構成することで、環状体10の幅方向の両端部が外側に反ることが抑制されると考えられる。
【0063】
(第2の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、幅方向の両端部が複数の層を有する多層構成の環状体10として、ベルト12の内側の面における幅方向の両端部に該両端部の縁部に沿って帯状の補強層14を設けた構成とした形態を説明した。そして、この構成としたことによって、環状体10の幅方向の両端部における最も外側の層はベルト12であり、該幅方向の両端部における最も内側の層は補強層14とされた形態を説明した。
【0064】
ここで、本実施の形態の環状体は、幅方向の両端部が複数の層を有する多層構成であり、該幅方向の両端部における最も外側の層と、該幅方向の両端部における最も内側の層と、が熱可塑性樹脂及び添加剤を含んだ構成とされ、該最も外側の層の熱可塑性樹脂における添加剤の体積含有率が、最も内側の層の熱可塑性樹脂における添加剤の体積含有率に比べて低い構成であればよく、図1を用いて説明した環状体10の構成に限られない。
【0065】
具体的には、図4に示すように、環状体11を、環状のベルト13と、該ベルト13の外側の面における幅方向の両端部に設けられた補強層15と、から構成してもよい。この補強層15は、ベルト13の外側の面における幅方向の両端部の縁部に沿って帯状に設ければよい。
そして、環状体11では、ベルト13の外側の面における幅方向の両端部に補強層15を設けた構成とすることで、環状体11を、少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する構成としている。このため、環状体11では、環状体11の幅方向の両端部における最も外側の層は補強層15であり、該幅方向の両端部における最も内側の層はベルト13とされていることとなる。
このため、第2の実施の形態における環状体11では、環状体11の幅方向の両端部における最も内側の層であるベルト13、及び該両端部における最も外側の層である補強層15が、熱硬化性樹脂と、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤と、を含み、補強層15に含まれる熱硬化性樹脂に対する該補強層15に含まれる添加剤の体積含有率が、ベルト13に含まれる熱硬化性樹脂に対する該ベルト13に含まれる添加剤の体積含有率より低い構成とすればよい。
【0066】
この場合、本発明の環状体が環状体11に相当し、本発明の環状体における第1の層が補強層15に相当し、本発明の環状体における第2の層が、ベルト12に相当する。
【0067】
環状体11を構成する各ベルト13及び補強層15に含まれる熱硬化性樹脂、添加剤、及びその他の材料については、第1の実施の形態で説明した環状体10におけるベルト12及び補強層14に含まれる熱硬化性樹脂、添加剤、及びその他の材料として挙げたものを用いればよい。
【0068】
但し、添加剤の含有率としては、第2の実施の形態における環状体11では、環状体11の幅方向の両端部における最も外側の層は補強層15であり、該幅方向の両端部における最も内側の層はベルト13とされていることから、該最も外側の層である補強層15に含まれる熱硬化性樹脂に対する該補強層15に含まれる添加剤の体積含有率が、最も内側の層であるベルト13に含まれる熱硬化性樹脂に対する該ベルト13に含まれる添加剤の体積含有率より低い構成であればよい。
【0069】
なお、このベルト13及び補強層15を構成する熱硬化性樹脂についても、同じであることが良い。熱硬化性樹脂が同じであると、ベルト13と補強層15との間の密着性が向上することから良い。
【0070】
ベルト13は環状であれば、つなぎ目があってもなくてもよい。
【0071】
なお、第2の実施の形態では、環状体11を、環状のベルト13と、該ベルト13の外側の面における幅方向の両端部に帯状に設けられた補強層15と、から構成することによって、少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する構成とした形態を説明した。しかし、第2の実施の形態の環状体11についても、環状体10と同様に、このような構成に限られず、このベルト13と補強層15の間に他の層を1層または複数層設けた構成であってもよい。
【0072】
このベルト13と補強層15との間に設けられる層としては、ベルト13及び補強層15と同じように、熱硬化性樹脂及び添加剤を含んだ構成としてもよいが、異なった構成であってもよい。
【0073】
第2の実施の形態における環状体11は、上記第1の実施の形態で説明した環状体10の製造方法と同様に、円柱状の金型32の外側の面に、熱硬化性樹脂及び添加剤を含む熱硬化性樹脂溶液を塗布することによって、金型32上に塗膜を形成し(塗布工程)、該塗膜に熱を加える(加熱工程)一連の工程を繰り返すことによって多層構成とされた後に、金型32から分離する(分離工程)ことによって作製すればよい。
【0074】
そして、まず、ベルト13形成のための溶液として、添加剤の体積含有率を予め調整された熱硬化性樹脂溶液21Aを用意する。そして、成膜装置30では、金型32を図5(A)中の矢印A方向に回転させながら、該金型32の外側の面に該熱硬化性樹脂溶液21Aを塗布し、これを金型32の外側の面に接して配置されたブレード28によってならしながら、金型32の幅方向の一端側から他端側に渡る領域に連続して塗布する。これによって、金型32上の幅方向の一端側から他端側に渡る領域に、塗膜13Aが形成される(塗布工程)。
【0075】
次に、金型32上に塗布された塗膜13Aを乾燥させた後に、加熱することによって、金型32の外側の面の、幅方向の一端側から他端側に渡る領域に、ベルト13が形成された状態となる(図5(B)参照)(加熱工程)。
【0076】
次に、補強層15の形成のための溶液として、熱硬化性樹脂に対する添加剤の体積含有率が、上記熱硬化性樹脂溶液21A(ベルト12形成用)における熱硬化性樹脂の該溶液における添加剤の体積含有率より低くなるように予め調整された熱硬化性樹脂溶液21Bを用意する。そして、図5(C)に示すように、成膜装置30では、金型32を図5(C)中の矢印A方向に回転させながら、金型32上に形成されたベルト12の外側の面の両端部の各々に、該熱硬化性樹脂溶液21Bを塗布して、該両端部の各々に、塗膜15Aを形成する(塗布工程)。
【0077】
次に、金型32上に塗布された熱硬化性樹脂溶液21Bによる塗膜15Bを乾燥させた後に、加熱することによって、金型32の外側の面に形成されたベルト12の幅方向の両端部の各々に、補強層15が形成された状態となる(図5(D)参照)(加熱工程)。
【0078】
これによって、金型32上に環状体11が形成される(図5(D)参照)。
【0079】
次に、この環状体11を、第1の実施の形態における分離工程と同じ方法を用いて金型32から分離する(分離工程)。そして、金型32から分離された環状体11について、側面(環状体11の幅方向に交差する方向の面)が、補強層15及びベルト13からなる面とされるように、幅方向の両端部を切断する。
【0080】
これによって、図4に示す環状体11が作製される。すなわち、上記工程を経ることによって、ベルト13の外側の面における幅方向の両端部に、帯状の補強層15が設けられ、少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する多層構成とされた環状体11が作製される。
【0081】
この第2の実施の形態における環状体11では、補強層15が、環状体11の幅方向の両端部に設けられており、この幅方向の両端部における最も外側の層とされている。また、第2の実施の形態における環状体11では、ベルト13が、環状体11の幅方向の両端部における最も内側の層とされている。
このため、上述のように、このベルト13とされる塗膜13A(熱硬化性樹脂溶液)中の熱硬化性樹脂に対する添加剤の体積含有率は、補強層15とされる塗膜15A(熱硬化性樹脂溶液)中の熱硬化性樹脂に対する添加剤の体積含有率より高くなるように調整されている。
【0082】
環状体11の製造工程における加熱工程においては、これらの塗膜13A及び塗膜15Aの各々に熱を加えることによって、これらの塗膜に含まれる熱硬化性樹脂を硬化させることで、補強層15及びベルト13を形成している。このため、第1の実施の形態でも説明したように、この熱硬化性樹脂の硬化時には、体積の減少が生じることから、作製された補強層15及びベルト13には、径方向(金型32の周方向)に沿った引張り応力が蓄積される。従って、作製された環状体11においては、幅方向の両端部において最も外側の層とされる補強層15の引張り応力は、該幅方向の両端部において最も内側の層とされるベルト13の引張り応力に比べて大きくなると考えられる。
【0083】
従って、作製された環状体11の内面側及び外面側に傷がついたときに、環状体11の幅方向の両端部において最も外側の層とされた補強層15の方が、該幅方向の両端部において最も内側の層とされたベルト13に比べて、より大きな引張り応力が解放されることとなり、環状体11の幅方向の両端部が外側に反ることが抑制されると考えられる。
【0084】
また、作製された環状体11においては、幅方向の両端部において最も外側の層とされる補強層15の引張り応力は、該幅方向の両端部において最も内側の層とされるベルト13の引張り応力に比べて大きいと考えられることから、作製された環状体11の内面側に外面側に比べて多くの傷がついた場合であっても、環状体11の幅方向の両端部において最も外側の層とされた補強層15の方が、該幅方向の両端部において最も内側の層とされたベルト13に比べて、より大きな引張り応力が解放されることから、環状体11の幅方向の両端部が外側に反ることが抑制されると考えられる。
【0085】
(第3の実施の形態)
上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、環状体の幅方向の両端部のみが多層構造とされた形態を説明したが、環状体の全面にわたって多層構造とされた形態であってもよい。
具体的には、図6(A)に示すように、環状のベルト40Bの外側の面の全領域を覆うように、環状のベルト40Aが設けられた構成の環状体40であってもよい。また、この場合についても、2層に限られず、図6(B)に示すように3層(環状のベルト40Aの外側に、環状のベルト40C及び環状のベルト40Aが重ねられた構成)の環状体42であってもよいし、図示は省略するが、4層以上であってもよい。
【0086】
環状体の全面にわたって多層構造とされた形態である場合についても、幅方向両端部における最も外側の層(図6(A)及び図6(B)ではベルト40B)、及び最も内側の層(図6(A)及び図6(B)ではベルト40A)が、第1の実施の形態で挙げた熱硬化性樹脂と、第1の実施の形態で挙げた添加剤と、を含み、この最も外側の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該最も外側の層に含まれる前記添加剤の体積含有率が、最も内側の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該最も内側の層に含まれる前記添加剤の体積含有率より低い環状体40及び環状体42とすればよい。
【0087】
(第4の実施の形態)
上記実施の形態で説明した環状体(環状体10、環状体11、環状体40、環状体42)は、各種装置に設けられる環状の部材として用いられる。例えば、複写機やプリンタ等の電子写真方式を用いた画像形成装置の中間転写ベルト、用紙搬送ベルト、定着ベルト等に用いられる。
【0088】
図7には、本実施の形態の環状体が適用される画像形成装置の一の実施の形態を示した。本実施形態に係る画像形成装置100は、中間転写ベルト107を備えている。この中間転写ベルト107に沿って、4つの像保持体101a、像保持体101b、像保持体101c、及び像保持体101dが配置されている。像保持体101aの周囲には、その回転方向にそって、帯電装置102a、露光装置114a、現像装置103a、一次転写装置105a、クリーニング装置104aが配置されている。像保持体101bの周囲には、その回転方向にそって、帯電装置102b、露光装置114b、現像装置103b、一次転写装置105b、クリーニング装置104bが配置されている。像保持体101cの周囲には、その回転方向にそって、帯電装置102c、露光装置114c、現像装置103c、一次転写装置105c、クリーニング装置104cが配置されている。像保持体101dの周囲には、その回転方向にそって、帯電装置102d、露光装置114d、現像装置103d、一次転写装置105d、クリーニング装置104dが配置されている。
【0089】
中間転写ベルト107は、テンションロール106a、テンションロール106b、テンションロール106c、テンションロール106d、及びドライブロール112によって支持されている。これらのテンションロール106a、テンションロール106b、テンションロール106c、テンションロール106d、及びドライブロール112によって、中間転写ベルト107は、4つの像保持体101a、像保持体101b、像保持体101c、及び像保持体101dの各々の表面に接触しながら、これらの像保持体101a、像保持体101b、像保持体101c、及び像保持体101dの各々に対応して配置された一次転写装置105a、一次転写装置105b、一次転写装置105c、一次転写装置105dとの間を矢印Aの方向に移動される。これらの一次転写装置105a、一次転写装置105b、一次転写装置105c、一次転写装置105dの各々が中間転写ベルト107を介して像保持体101a、像保持体101b、像保持体101c、及び像保持体101dの各々に向かい合う領域が、一次転写部となる。この像保持体101a、像保持体101b、像保持体101c、及び像保持体101dの各々と、一次転写装置105a、一次転写装置105b、一次転写装置105c、一次転写装置105dの各々と、の間には、一次転写電圧が印加される。
【0090】
また、二次転写装置として、中間転写ベルト107を介してバックアップロール108と二次転写ロール109が向かい合うように配置されている。紙等の記録媒体113が中間転写ベルト107の表面に接触しながら中間転写ベルト107と二次転写ロール109との間を矢印Bの方向に移動し、その後、定着装置110を通過する。二次転写ロール109が中間転写ベルト107を介してバックアップロール108に向かい合う部位が二次転写部となり、二次転写ロール109とバックアップロール108との間には二次転写電圧が印加される。更に、転写後の中間転写ベルト107と接触するように、中間転写ベルトのクリーニング装置111が配置されている。また、画像形成装置100には、定着装置110が設けられている。
【0091】
なお、画像形成装置100が、本発明の画像形成装置に相当し、像保持体101a、像保持体101b、像保持体101c、及び像保持体101dが、本発明の画像形成装置の像保持体に相当する。また、帯電装置102a、帯電装置102b、帯電装置102c、及び帯電装置102dが、本発明の画像形成装置の帯電装置に相当する。また、露光装置114a、露光装置114b、露光装置114c、及び露光装置114dが、本発明の画像形成装置の露光装置に相当する。また、現像装置103a、現像装置103b、現像装置103c、及び現像装置103dが、本発明の画像形成装置の現像装置に相当する。また、一次転写装置105a、一次転写装置105b、一次転写装置105c、一次転写装置105c、中間転写ベルト107、二次転写ロール109、及びバックアップロール108が、本発明の画像形成装置の転写装置に相当する。また、定着装置110が、本発明の画像形成装置の定着装置に相当する。
【0092】
画像形成装置100では、像保持体101aが矢印の方向に回転するとともに、その表面が帯電装置102aによって一様に帯電された後、レーザー光等の露光装置114aにより第1色目の潜像が形成される。形成された潜像はその色に対応するトナーを収容した現像装置103aにより、トナーで現像(可視化)されてトナー像が形成される。なお、現像装置103a、現像装置103b、現像装置103c、及び現像装置103dの各々には、各色の静電潜像に対応するトナー(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)が収容されている。
【0093】
像保持体101a上に形成されたトナー像は、一次転写部を通過する際に、一次転写装置105aによって中間転写ベルト107上に静電的に一時的に転写(一次転写)される。以降、同様にして、第1色目のトナー像を保持した中間転写ベルト107上に、一次転写装置105b、一次転写装置105c、及び一次転写装置105dによって、第2色目、第3色目、第4色目のトナー像が順次重ね合わせられるよう一次転写され、最終的にフルカラーの多重トナー像が得られる。
【0094】
中間転写ベルト107上に形成された多重トナー像は、二次転写部を通過する際に、記録媒体113に静電的に一括転写される。トナー像が転写された記録媒体113は、定着装置110に搬送され、加熱及び加圧により定着処理された後、機外に排出される。
【0095】
一次転写後の像保持体101a、像保持体101b、像保持体101c、及び像保持体101dは、クリーニング装置104a、クリーニング装置104b、クリーニング装置104c、及びクリーニング装置104dの各々によって、表面に残留したトナー等を除去される。一方、二次転写後の中間転写ベルト107は、中間転写ベルトのクリーニング装置111により表面に残留したトナー等が除去され、次の画像形成プロセスに備える。
【0096】
上記第1の実施の形態〜第3の実施の形態で説明した環状体は、画像形成装置100における、帯電装置102a、帯電装置102b、帯電装置102c、帯電装置102d、現像装置103a、現像装置103b、現像装置103c、現像装置103d、一次転写装置105a、一次転写装置105b、一次転写装置105c、一次転写装置105c、中間転写ベルト107、二次転写ロール109、バックアップロール108、及び定着装置110における環状の部材として用いられる。
【0097】
例えば、環状体10(図1参照)を、中間転写ベルト107として用いた場合には、この中間転写ベルト107の内側の面は、テンションロール106a、テンションロール106b、テンションロール106c、テンションロール106d、及びドライブロール112等に接触された状態で支持されるので、外側の面より内側の面の方が、より数多くの傷がつくと考えられる。このため、環状体が1層の構成である場合や、本実施の形態の環状体の構成を有さない場合には、該傷によって内側の面の引張り応力が外側の面に比べて多く解放されることで、環状体の両端部が外側に向かって沿ってしまうと考えられる。
一方、本実施の形態では、環状体10を、中間転写ベルト107として用いることから、中間転写ベルト107の幅方向の両端部が外側に反ることが抑制されると考えられる。
【0098】
また、第2の実施の形態〜第3の実施の形態で説明した環状体11、環状体40、及び環状体42を中間転写ベルト107として用いた場合や、環状体10、環状体11、環状体40、及び環状体42を、帯電装置102a、帯電装置102b、帯電装置102c、帯電装置102d、現像装置103a、現像装置103b、現像装置103c、現像装置103d、一次転写装置105a、一次転写装置105b、一次転写装置105c、一次転写装置105c、二次転写ロール109、バックアップロール108、及び定着装置110における環状の部材として用いた場合についても、環状体の幅方向の両端部が外側に反ることが抑制されると考えられる。
【実施例】
【0099】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0100】
−環状体1の作製−
まず、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)とからなるポリアミック酸のN−メチル−2ピロリドン(NMP)溶液(宇部興産株式会社製ユーワニスS(イミド転化後の固形分18質量%)に、ポリアミック酸100質量部に対して、添加剤として、乾燥したカーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH3.0、揮発分:14.0%))を90質量部になるよう添加して、ジェットミル分散機(ジーナス株式会社製GeanusPY、衝突部の最小部断面積0.032mm2)を用い、圧力200MPaで、分散ユニット部を5回通過させて、分散及び混合して、分散液Aを得た。
【0101】
なお、このカーボンブラックの350℃における熱収縮率を、SEMを用いて測定したところ、0%であった。
【0102】
次に、この得られた分散液Aに上記NMP溶液を添加し、該NMP溶液を添加した後の溶液中におけるポリアミック酸100質量部に対するカーボンブラックの含有率が27質量部となるように調整した。そして、この溶液を、プラネタリー式ミキサー(アイコーミキサー:愛工舎製作所製)を用いて混合・攪拌することにより、添加剤としてのカーボンブラックの分散されたポリイミド前駆体溶液A1を調製した。
【0103】
一方、上記調整した分散液Aに上記NMP溶液を添加し、該NMP溶液を添加した後の溶液中におけるポリアミック酸100質量部に対するカーボンブラックの含有率が25質量部となるように調整した。そして、この溶液を、プラネタリー式ミキサー(アイコーミキサー:愛工舎製作所製)を用いて混合・攪拌することにより、添加剤としてのカーボンブラックの分散されたポリイミド前駆体溶液B1を調製した。
【0104】
次に、図2に示す金型32として、外径166mm、長さ650mmのアルミニウム製円筒体を用意した。このアルミニウム製円筒体は、表面を切削して外径を189mmとした後、球形ガラス粒子によるブラスト処理により、表面を表面粗さRa:1.52umに粗面化したものである。この金型32の表面にシリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)製)を塗布し、300℃で1時間焼き付け処理を施した。さらに、塗布工程として、図2(A)に示すように、金型32の幅方向を水平または水平に近い状態にして40rpmで回転させた(図2(A)中、矢印A方向)。ブレード28としては幅20mm、厚さ0.5mmのSUSからなり、弾力性を有する板状の部材を用いた。このブレード28を金型32に押し付け、上記調整したポリイミド前駆体溶液A1を、貯留部20に充填し、口径2mmのノズル26から金型32の表面に押し出した。なお、ポリイミド前駆体溶液A1がブレード28を通過する際、ブレード28が押し広げられ、ブレード28と金型32との間には隙間ができた。次いで、ノズル26とブレード28とを金型32の幅方向に120mm/分の速さで移動させた。なお、塗布の際には、金型32の幅方向の両端に端部から幅方向の中央部に向かって70mmずつの不塗布の領域を設けた。
【0105】
次に、このポリイミド前駆体溶液A1が塗布されて塗膜A1の形成された金型32の幅方向を水平または水平に近い状態としたまま、6rpmで回転させながら120℃で25分間加熱乾燥させ、図4に示すベルト13に相当する基材A1を得た。
なお、この基材A1の膜厚は、イミド化後の膜厚が70umになるように、塗布時のノズル26からの押出し液量を調整した。
【0106】
次に、上記調整したポリイミド前駆体溶液B1を、上記ポリイミド前駆体A1と同じ方法を用いて金型32上に形成された基材A1の幅方向の両端部に相当する領域に塗布した。このポリイミド前駆体溶液B1の塗布の領域は、金型32の幅方向の一端から20mmの位置を塗布の開始位置として、この開始位置から金型32の幅方向に向かって160mmの位置までの領域と、金型32の幅方向の他端から20mmの位置を塗布の開始位置として、この開始位置から金型32の幅方向に向かって160mmの位置までの領域と、とした。これによって、金型32上に形成された基材A1の幅方向の両端部に、該基材A1に重ねて塗膜B1が形成された状態となった。
【0107】
次に、このポリイミド前駆体溶液B1が塗布されて、幅方向の両端部に基材A1に重ねて塗膜B1の形成された金型32の幅方向を水平または水平に近い状態としたまま、6rpmで回転させながら120℃で25分間加熱乾燥させた。これによって、図4に示す補強層15に相当する補強層B1を形成した。
なお、この層B1の膜厚は、イミド化後の膜厚が10umになるように、塗布時のノズル26からの押出し液量を調整した。
【0108】
上記基材A1の外側の面の幅方向の両端部に補強層B1の形成された環状の部材C1を、310℃で30分間加熱させた後に、室温にまで冷えたところで、金型32から該環状の部材Cを剥離した。剥離した環状の部材Cの幅方向の中央部を、369mmの幅で切断することによって、図4に示す構成の環状体1を得た。
【0109】
作製された環状体1について、塗膜A1の加熱によって基材A1とするときの、該基材A1の体積減少率と、塗膜B1の加熱によって補強層B1とするときの、該補強層B1の体積減少率と、を計算したところ、各々、11.2%と10.7%であった。
【0110】
この体積減少率は、カーボンブラックの比重を1.85g/cm3、ポリイミド前駆体の比重を1.30g/cm3、ポリイミド樹脂の比重を1.39g/cm3とし、ポリイミド前駆体が完全にイミド化したものとして、下記式を用いて算出した。
【0111】
式(1−(X/1.85+0.9271×Y/1.39)/(X/1.85+Y/1.39))×100
ただし、式中Xはカーボンブラック量(g)を表し、Yはポリアミック酸量(g)を表す。
【0112】
また、同様にカーボンブラックの体積含有率は、下記式を用いて算出した。
式((X/1.85)/(X/1.85+0.9271×Y/1.39))×100
【0113】
作製された環状体1について、塗膜A1の加熱によって基材A1とするときの、該基材A1の添加剤(カーボンブラック)含有率と、塗膜B1の加熱によって補強層B1とするときの、該補強層B1の添加剤(カーボンブラック)と、を計算したところ、各々、17.95%と16.85%であった。
【0114】
―環状体2、環状体3、環状体4、環状体5、及び環状体6の作製―
上記環状体1の作製において、補強層B1の形成のために用いたポリイミド前駆体溶液B1中におけるポリアミック酸100質量部に対するカーボンブラックの含有量を、表1に示す値とした以外は、環状体1と同様にして環状体2、環状体3、環状体4、環状体5、及び環状体6を作製した。
【0115】
作製した環状体2、環状体3、環状体4、環状体5、及び環状体6の各々における基材及び補強層における、熱硬化性樹脂(ポリイミド)に対する添加剤としてのカーボンブラックの体積含有率、及び体積減少率を、環状体1と同じ方法で測定した。測定結果を表1に示した。
【0116】
―環状体7の作製―
ビスフェノールCタイプのポリカーボネート100質量部をTHF(テトラヒドロフラン)230質量部に溶解した溶液、該溶液におけるポリアミック酸100質量部に対して、添加剤としてのカーボンブラック(Special Black 4:Degussa社製)を27質量部添加し、ジェットミル分散機(Geanus PY[衝突部の最小部断面積0.032mm2]:ジーナス社製)を用い、圧力200MPaで分散ユニット部を5回通過させて分散・混合を行った。これにより、添加剤としてカーボンブラックの分散されたポリカーボネート溶液A7を調製した。
【0117】
次に、PET樹脂100質量部を、THF230質量部に溶解し、添加剤の分散されていない樹脂溶液として、PET樹脂溶液B7を調整した。
【0118】
得られたポリカーボネート溶液A7を用い、環状体1の作製と同様にしてシリコーン系離型剤を塗布して焼き付け処理を行った金型32上に、塗布工程として、ポリカーボネート溶液A2を塗布し、次いで、ノズル26とブレード28とを金型32の幅方向に120mm/分の速さで移動させた。なお、塗布の際には、金型32の幅方向の両端に端部から幅方向の中央部に向かって70mmずつの不塗布の領域を設けた。
【0119】
次に、このポリカーボネート溶液A7が塗布されて塗膜A7の形成された金型32の幅方向を水平または水平に近い状態としたまま、6rpmで回転させながら120℃で90分間加熱乾燥させ、図4に示すベルト13に相当する基材A7を得た。
なお、この基材A7の膜厚は、加熱乾燥後の膜厚が70umになるように、塗布時のノズル26からの押出し液量を調整した。
【0120】
次に、上記調整したPET樹脂溶液B7を、上記ポリカーボネート溶液A7と同じ方法を用いて金型32上に形成された基材A7の幅方向の両端部に相当する領域に塗布して塗膜B7を形成した。この塗布の領域は、金型32の幅方向の一端から20mmの位置を塗布の開始位置として、この開始位置から金型32の幅方向に向かって160mmの位置までの領域と、金型32の幅方向の他端から20mmの位置を塗布の開始位置として、この開始位置から金型32の幅方向に向かって160mmの位置までの領域と、とした。これによって、金型32上に形成された基材A7の幅方向の両端部に、該基材A7に重ねて塗膜B7が形成された状態となった。
【0121】
次に、このPET樹脂溶液B7が塗布されて、幅方向の両端部に基材A7に重ねて塗膜B7の形成された金型32の幅方向を水平または水平に近い状態としたまま、6rpmで回転させながら120℃で90分間加熱乾燥させた。これによって、図4に示す補強層15に相当する補強層B7を形成した。
なお、この補強層B7の膜厚は、加熱乾燥後の膜厚が10umになるように、塗布時のノズル26からの押出し液量を調整した。
【0122】
この補強層B7について、補強層B7における熱硬化性樹脂に対する添加剤としてのカーボンブラックの体積含有率を求めた。詳細には、カーボンブラックの比重を1.85g/cm3、ポリカーボネートの比重を1.20g/cm3、として、下記式を用いて算出したところ、カーボンブラックの体積含有率は14.90体積%であった。
【0123】
式((X/1.85)/(X/1.85+Z/1.20))×100
ただし、式中Xはカーボンブラック量(g)を表し、Zはポリカーボネート量(g)を表す。
【0124】
上記基材A7の外側の面の幅方向の両端部に補強層B7の形成された環状の部材C1が室温にまで冷えたところで、金型32から該環状の部材Cを剥離した。剥離した環状の部材Cの幅方向の中央部を、369mmの幅で切断することによって、図4に示す構成の環状体7を得た。
【0125】
作製された環状体7について、基材A7の体積減少率と、補強層B7の体積減少率と、を計算し、結果を表1に示した。
【0126】
―環状体8の作製―
環状体1の作製時に調整した分散液Aに対して、環状体1の作製時に用いたNMP溶液を添加した後の溶液中におけるポリアミック酸100質量部に対するカーボンブラックの含有量が28質量部になるように、NMP溶液を添加し、プラネタリー式ミキサー(アイコーミキサー:愛工舎製作所製)を用いて混合・攪拌することにより、補強層用のポリイミド前駆体溶液B8を調製した。
【0127】
次に、環状体1の作製と同様にして得られた分散液Aに対して、環状体1の作製時に用いたNMP溶液を、該溶液中のポリアミック酸100質量部に対してカーボンブラックが27質量部になるように添加し、プラネタリー式ミキサー(アイコーミキサー:愛工舎製作所製)を用いて混合・攪拌することにより、基材層用のポリイミド前駆体溶液A8を調製した。
【0128】
得られた補強層用のポリイミド前駆体溶液B8を用い、環状体1の作製と同様にしてシリコーン系離型剤を塗布して焼き付け処理を行った金型32上に、塗布工程として、ポリイミド前駆体溶液B8を塗布し、次いで、ノズル26とブレード28とを金型32の幅方向に120mm/分の速さで移動させた。なお、塗布領域は、金型32の幅方向の一端から20mmの位置を塗布の開始位置として、この開始位置から金型32の幅方向の中央部に向かって160mmの位置までの領域と、金型32の幅方向の他端から中央部に向かって20mmの位置を塗布の開始位置として、この開始位置から金型32の幅方向の中央部に向かって160mmの位置までの領域と、とした。これによって、金型32上の幅方向の両端部に、補強層用のポリイミド前駆体溶液B8による塗膜B8が形成された状態となった。
【0129】
次に、このポリイミド前駆体溶液B8が塗布されて塗膜B8の形成された金型32の幅方向を水平または水平に近い状態としたまま、6rpmで回転させながら120℃で25分間加熱乾燥させ、図1に示す補強層14に相当する補強層B8を得た。
なお、この基材B7の膜厚は、加熱乾燥後(イミド化後)の膜厚が10umになるように、塗布時のノズル26からの押出し液量を調整した。
【0130】
この補強層B8について、補強層B8における熱硬化性樹脂(ポリイミド)に対する添加剤としてのカーボンブラックの体積含有率を測定した。測定結果を表1に示した。
【0131】
次に、上記ポリイミド前駆体溶液B8と同じ方法を用いて、金型32の幅方向の両端部に形成された一対の補強層B8を覆うように、金型32の幅方向の一端側から他端側に向かって、塗布工程として、上記調整した基材層用のポリイミド前駆体溶液A8を塗布した。このとき、ノズル26とブレード28とを金型32の幅方向に120mm/分の速さで移動させた。なお、塗布の際には、金型32の幅方向の両端に端部から幅方向の中央部に向かって70mmずつの不塗布の領域を設けた。
【0132】
次に、このポリイミド前駆体溶液A8による塗膜A8の形成された金型32の幅方向を水平または水平に近い状態としたまま、6rpmで回転させながら120℃で25分間加熱乾燥させ、図1に示すベルト12に相当する基材A8を得た。
なお、この基材A8の膜厚は、加熱乾燥後の膜厚が70umになるように、塗布時のノズル26からの押出し液量を調整した。
【0133】
この基材A8について、基材A8における熱硬化性樹脂(ポリイミド)に対する添加剤としてのカーボンブラックの体積含有率を上記と同様にして測定した。測定結果を表1に示した。
【0134】
上記の、金型32の幅方向の両端部に補強層B8が形成され、その上に該金型32の幅方向の一端側から他端側に渡る領域に基材A8の形成された環状の部材C8を、310℃で30分間加熱させた後に、室温にまで冷えたところで、金型32から該環状の部材C8を剥離した。剥離した環状の部材C8の幅方向の中央部を、369mmの幅で切断することによって、図1に示す構成の環状体8を得た。
【0135】
作製された環状体8について、補強層B8及び基材A8の体積減少率を環状体1と同様にして求めた。結果を表1に示した。
【0136】
―環状体9、環状体10、環状体11、環状体12、及び環状体13の作製−
上記環状体8の作製において、補強層B8の形成のために用いたポリイミド前駆体溶液B8中におけるポリアミック酸100質量部に対するカーボンブラックの含有量を、表1に示す値とした以外は、環状体8と同様にして環状体9、環状体10、環状体11、環状体12、及び環状体13を作製した。
【0137】
作製した環状体9、環状体10、環状体11、環状体12、及び環状体13の各々における基材及び補強層における、熱硬化性樹脂に対する添加剤としてのカーボンブラックの体積含有率、及び体積減少率を、環状体1と同じ方法で測定した。測定結果を表1に示した。
【0138】
―環状体14の作製―
PET樹脂100質量部をTHF400質量部に溶解し、補強層用のPET樹脂溶液B14を調整した。
【0139】
次にビスフェノールCタイプのポリカーボネート100質量部をTHF400質量部に溶解した溶液に、カーボンブラック(Special Black 4:Degussa社製)を27質量部添加し、ジェットミル分散機(Geanus PY[衝突部の最小部断面積0.032mm2]:ジーナス社製)を用い、圧力200MPaで分散ユニット部を5回通過させて分散・混合を行い、基材層用のカーボンブラックの分散されたポリカーボネート溶液A14を調製した。
【0140】
シリコーン系離型剤を塗布して焼き付け処理を行った金型32上に、塗布工程として、PET樹脂溶液B14を塗布し、次いで、ノズル26とブレード28とを金型32の幅方向に120mm/分の速さで移動させた。なお、塗布領域は、金型32の幅方向の一端から20mmの位置を塗布の開始位置として、この開始位置から金型32の幅方向の中央部に向かって160mmの位置までの領域と、金型32の幅方向の他端から中央部に向かって20mmの位置を塗布の開始位置として、この開始位置から金型32の幅方向の中央部に向かって160mmの位置までの領域と、とした。これによって、金型32上の幅方向の両端部に、補強層用のPET樹脂溶液B14による塗膜B14が形成された状態となった。
【0141】
次に、この補強層用のPET樹脂溶液B14による塗膜B14の形成された金型32の幅方向を水平または水平に近い状態としたまま、6rpmで回転させながら120℃で25分間加熱乾燥させ、図1に示す補強層14に相当する補強層B14を得た。
なお、この基材B7の膜厚は、加熱乾燥後の膜厚が10umになるように、塗布時のノズル26からの押出し液量を調整した。
【0142】
この補強層B14について、補強層B14における熱硬化性樹脂に対する添加剤としてのカーボンブラックの体積含有率を測定した。測定結果を表1に示した。
【0143】
次に、金型32の幅方向の両端部に形成された一対の補強層B14を覆うように、金型32の幅方向の一端側から他端側に向かって、塗布工程として、上記調整した基材層用のカーボンブラックの分散されたポリカーボネート溶液A14を塗布した。このとき、ノズル26とブレード28とを金型32の幅方向に120mm/分の速さで移動させた。なお、塗布の際には、金型32の幅方向の両端に端部から幅方向の中央部に向かって70mmずつの不塗布の領域を設けた。
【0144】
次に、この基材層用のカーボンブラックの分散されたポリカーボネート溶液A14による塗膜A14の形成された金型32の幅方向を水平または水平に近い状態としたまま、6rpmで回転させながら120℃で90分間加熱乾燥させ、図1に示すベルト12に相当する基材A14を得た。
なお、この基材A14の膜厚は、加熱乾燥後の膜厚が70umになるように、塗布時のノズル26からの押出し液量を調整した。
【0145】
この基材A14について、基材A14における熱硬化性樹脂に対する添加剤としてのカーボンブラックの体積含有率を上記と同様にして測定した。測定結果を表1に示した。
【0146】
上記の、金型32の幅方向の両端部に補強層B14が形成され、その上に該金型32の幅方向の一端側から他端側に渡る領域に基材A14の形成された環状の部材C14が室温にまで冷えたところで、金型32から該環状の部材C14を剥離した。剥離した環状の部材C14の幅方向の中央部を、369mmの幅で切断することによって、図1に示す構成の環状体14を得た。
【0147】
作製された環状体14について、補強層B14及び基材A14の体積減少率を環状体1と同様にして求めた。結果を表1に示した。
【0148】
(実施例1)
図7に示す基本構成を有するフルカラープリンター(DocuPrint C5450:富士ゼロックス社製)に装着されている中間転写ベルト(図7では、中間転写ベルト107)に代えて、上記作製した環状体1を装着し、28℃、85%RHの環境下で、A4用紙をヨコ向きにして2万枚連続してプリントを行なった。この2万枚のプリント後に、環状体1をフルカラープリンターよりはずし、両端部の外側への反り量を測定した。
【0149】
この反り量の測定は、環状体1を幅方向に切断して板状の部材とし、この板状の部材とした環状体1を、平板状の部材(基準部材と称する)の上に置いた。そして、板状の部材とされた環状体1の環状であったときの幅方向の両端部について、基準部材からの浮き上がり量(高さ)を測定した。なお、この測定は、板状の部材とした環状体1が環状であったときの内側の面を基準部材に接するように置いて行った。このため、この浮き上がり量は、環状体1の外側への反り量を示している。
さらに、この測定は環状体1の両端に対しそれぞれ周方向等間隔で6箇所ずつ行い、合計12箇所の値を平均化して求めた。結果を表1に示す。
【0150】
(実施例2)
上記作製した環状体2を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0151】
(実施例3)
上記作製した環状体3を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0152】
(実施例4)
上記作製した環状体4を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0153】
(実施例5)
上記作製した環状体8を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0154】
(実施例6)
上記作製した環状体9を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0155】
(実施例7)
上記作製した環状体10を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0156】
(実施例8)
上記作製した環状体11を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0157】
(比較例1)
上記作製した環状体5を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0158】
(比較例2)
上記作製した環状体6を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0159】
(比較例3)
上記作製した環状体7を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0160】
(比較例4)
上記作製した環状体12を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0161】
(比較例5)
上記作製した環状体13を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0162】
(比較例6)
上記作製した環状体14を用いた以外は、実施例1と同じ方法を用いて、外側への反り量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0163】
【表1】
【0164】
表1に示すように、幅方向の両端部における最も外側の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する添加剤(350℃における熱収縮率が2.0%以下)の体積含有率が、該幅方向の両端部における最も内側の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該体積含有率より低い、実施例の環状体1〜4,環状体8〜11では、この関係を満たさない比較例の環状体5〜7、及び環状体4〜6に比べて、外側への反り量の抑制が確認された。
【符号の説明】
【0165】
10 環状体
11 環状体
12、13 ベルト
14、15 補強層
40、42 環状体
100 画像形成装置
101a〜101d 像保持体
102a〜102d 帯電装置
103a〜103d 現像装置
105a〜105d 一次転写ロール
105a〜105d 一次転写装置
107 中間転写ベルト
109 二次転写ロール
114a〜114d 露光装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する多層構成とされ、少なくとも該幅方向の両端部における最も外側の第1の層及び該幅方向の両端部における最も内側の第2の層が、熱硬化性樹脂と、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤と、を含み、
前記第1の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該第1の層に含まれる前記添加剤の体積含有率が、前記第2の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該第2の層に含まれる前記添加剤の体積含有率より低い環状体。
【請求項2】
前記複数の層の各々に含まれる前記熱硬化性樹脂が、同じ熱硬化性樹脂である請求項1に記載の環状体。
【請求項3】
像保持体と、
前記像保持体を帯電する帯電装置と、
前記帯電装置によって帯電された前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体上の前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像が転写される転写体と、
前記転写体に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を該記録媒体に定着する定着装置と、
を備え、
前記帯電装置、前記現像装置、前記転写体、前記転写装置、及び前記定着装置の少なくとも1つが請求項1または請求項2に記載の環状体を有する画像形成装置。
【請求項1】
少なくとも幅方向の両端部が複数の層を有する多層構成とされ、少なくとも該幅方向の両端部における最も外側の第1の層及び該幅方向の両端部における最も内側の第2の層が、熱硬化性樹脂と、350℃における熱収縮率が2.0%以下の添加剤と、を含み、
前記第1の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該第1の層に含まれる前記添加剤の体積含有率が、前記第2の層に含まれる熱硬化性樹脂に対する該第2の層に含まれる前記添加剤の体積含有率より低い環状体。
【請求項2】
前記複数の層の各々に含まれる前記熱硬化性樹脂が、同じ熱硬化性樹脂である請求項1に記載の環状体。
【請求項3】
像保持体と、
前記像保持体を帯電する帯電装置と、
前記帯電装置によって帯電された前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体上の前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像が転写される転写体と、
前記転写体に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を該記録媒体に定着する定着装置と、
を備え、
前記帯電装置、前記現像装置、前記転写体、前記転写装置、及び前記定着装置の少なくとも1つが請求項1または請求項2に記載の環状体を有する画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2011−43579(P2011−43579A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190370(P2009−190370)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]