説明

環状化合物の開環反応に使用する主成分の白金と第2の第VIII族金属からなる二元金属触媒

【課題】環状化合物の開環反応に使用する主成分の白金と第2の第VIII族金属からなる二元金属触媒を提供する。
【解決手段】少なくとも一つの多孔性の担体と、少なくともいくらかの白金、そして少なくともいくらかのロジウムからなる触媒であって、該触媒が少なくとも以下の方法で製造されているもの。工程a):白金前駆体を含む少なくとも一つの溶液で担体を含浸すること、工程b):120から800℃の温度で中性または酸化性雰囲気中での活性化、
工程c):0から800℃の温度で還元性媒体中での活性化、工程d1):水溶液での含浸、
工程d2):少なくとも一つの水素供与化合物で200℃以下の温度での処理、工程e):白金で既に含浸された担体をロジウム前駆体を含む少なくとも一つの溶液で含浸すること、工程f):100から800℃の温度で中性、還元性、または酸化性雰囲気での活性化。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンの品質を改善する目的でナフテン化合物の選択的開環反応に使用される触媒の分野に関するものである。より正確には、該触媒はメチルシクロペンタンおよび/またはメチルシクロヘキサンの選択的開環反応を意図した金属触媒である。
【背景技術】
【0002】
環境保護に適用されるさらに厳しい法律を考慮して、よりクリーンなガソリンが製造される必要がある。詳しくは、今日自動車の燃料として使用されるガソリンとしては、芳香族化合物の含有量は少なく、オクタン価が高いパラフィン、特に分岐パラフィンの含有量を多くするべきである。そのようなガソリンを製造するのは芳香族化合物のナフテン化合物への完全な水素添加、続いて該ナフテン化合物の選択的開環反応によるパラフィンへの変換が要求される。ナフテン化合物のパラフィンへの選択的開環反応は既に従来技術で知られている。特に、米国特許5,763,731号はナフテン環、特に少なくとも3つの炭素原子を有する少なくとも一つの置換基を有する6員環の開環反応用としてイリジウム、ルテニウムおよび/またはロジウムを含有する触媒を開示している。米国特許5,763,731号は、目的の生成物を得る開環反応の転化率と選択率の点でイリジウムを主成分とする触媒の共存に於いて一番良い触媒の成績が得られることを開示している。イリジウムを主成分とする触媒の主な欠点はこの金属が自然状態に於いて非常に量が少ないことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この自然からの入手の困難と、ナフテン環の開環反応の装置で工業的規模で使用するイリジウム主成分の触媒を大規模に生産するのは両立しない。本発明は、ナフテン環の開環反応を行う目的の金属触媒の供給を提案する。公知の従来の触媒の代案としてその金属触媒はイリジウム主成分の触媒とほぼ同じ活性を示す。
【解決するための手段】
【0004】
本発明は、少なくとも一つの多孔性の担体、少なくともいくらかの白金、そして白金とイリジウムとは別の第2の第VIII 族金属を少なくとも含む触媒に関し、該触媒は少なくとも以下の方法によって製造される。
【0005】
a)白金の前駆体を含む少なくとも一つの溶液で担体を含浸する、
b)120℃から800℃の温度で中性または酸化性の雰囲気での活性化、
c)0℃から800℃の温度で還元性媒体中で活性化する、
d1)水溶液で含浸し、そしてd2)200℃以下の温度で少なくとも一つの水素供与体で処理する。ただし、該工程が、工程c)の後でかつ工程e)の前に実施される場合は、工程d1)とd2)が実施される順序は重要でない、
e)白金およびイリジウム以外の第2の第VIII 族金属の前駆体を含む少なくとも一つの溶液で、既に白金で含浸された担体を含浸する、
f)100℃と800℃の間の温度で中性、還元性または酸化性の雰囲気で活性する。
【0006】
本発明の触媒に使用される多孔性の担体は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、アルミナ、シリカ−アルミナ、塩素化アルミナ、フッ素を助触媒とするアルミナ、シリコン、ジルコニウム、またはチタンから選ばれる。アルミナは、ρ−アルミナ、γ−アルミナ、η−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、κ−アルミナ、α−アルミナ、塩素化アルミナ、そしてそれらの混合物から選ばれる。該多孔性の担体は好ましくは塩素化アルミナである。
【0007】
塩素化アルミナは一般的にアルミナに塩酸を含浸させて調製される。含浸は当業者に知られている乾式含浸法または過剰の溶液による含浸法の種々の方法で実施できる。乾式含浸法において塩酸の溶液がアルミナと接触するように置かれる。たとえば、アルミナの球状物や押出物に塩酸溶液を振りかけるようにする。塩酸溶液の容積は、アルミナの細孔体積と等しくなるように選ばれる。そうすれば含浸されたアルミナは含浸の最後においても実質的に乾燥した外観を保つ。溶液中の塩酸の濃度は全ての塩素がアルミナに固定されるという事実を考慮して調整される。過剰に溶液で含浸すると、溶液の容積はアルミナの細孔体積より明らかに大きく、塩酸溶液がアルミナが接触する状態に置かれる。溶液中の塩素イオンとアルミナの表面の間で交換が起こる。アルミナに固定される塩素の量は、溶液中の塩素濃度、温度、持続時間の交換条件の関数である。アルミナ中の塩素の好ましい濃度はアルミナのタイプや比表面積に依存する。アルミナ中の塩素濃度0.5から2重量%が、150と300m/gの比表面積を有するγ−アルミナの塩素化のために一般的に選択される。
【0008】
本発明に従えば、該多孔性担体は球状物、押出物、ペレットまたは粉体の形状が好ましい。非常に良いのは該担体が球状物または押出物の形状である。担体の細孔体積は0.1から1.5cm/gである。さらに好ましくは0.4から0.8cm/gである。この細孔体積は、細孔の直径3から20nmの間の中間の細孔が主に存在することから生じる。該担体は好適に150から300m/gの比表面積を持っている。
【0009】
本発明の触媒は元素の周期律分類の白金とイリジウムを除いた第2の第VIII 族金属を含んでいる。それはルテニウム、ロジウム、鉄、コバルト、ニッケルから選ばれる。該第2の第VIII 族金属がロジウムであるのが好ましい。
【0010】
本発明の触媒は、さらに好適に塩素を含んでいる。
【0011】
本発明の触媒は、以下を含むことがさらに好ましい。
【0012】
−少なくとも該触媒に存在する多少の白金。その含有量は、触媒の0.1から4重量%、好ましくは0.2から2重量%、さらに好ましくは0.3から1.5重量%である。
【0013】
−元素の周期律分類の少なくとも一つの第2の第VIII 族金属(白金とイリジウムは除く)は、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケルから選ばれる。好ましくはロジウムである。該触媒中の第2の第VIII 族金属の含有量は0.05から3重量%、好ましくは0.1から1重量%、さらに好ましくは0.2から0.6重量%である。
【0014】
−該触媒中に存在する塩素は、0.1から3重量%、好ましくは0.2から2重量%、さらに好ましくは0.3から1.5重量%である。
【0015】
−触媒が100重量%になるように調整された少なくとも一つの多孔性の担体。
【0016】
本発明の触媒の調製工程a)は、有機溶媒または無機溶媒の溶液に少なくとも一つの白金の前駆体を入れることにある。含浸は、該担体の細孔体積の1/10と100倍の間の溶液の容積で行われる。当業者は該多孔性の担体の形態(ボール、粉体、押出品、またはペレットの形状のどれか)に応じて工程を調整する。該工程a)を実施するには、白金の前駆体は、特に、塩化白金酸、ヒドロキシ白金酸、ジニトロソ−ジアミノ白金、テトラアミン硝酸白金またはテトラアミン塩化白金、から選ばれる。好ましくは塩化白金酸である。白金の前駆体の溶液中の濃度は、本発明の触媒の製造工程の終点において該触媒中の白金の濃度(該触媒について重量で表される)が0.1から4重量%、好ましくは0.2から2重量%、さらに好ましくは0.3から1.5重量%になるように選択される。白金の前駆体を含む溶液は、もし必要であれば、媒体の酸−塩基の性質を変化させるため、および/または多孔性の担体の交換する場所の数を変化させるために、水素イオンアンモニウム、塩化物、硝酸塩を含んでいても良い。
【0017】
白金の前駆体の含浸する温度は、一般的に0から100℃、好ましくは10から50℃である。含浸時間は一般的に1分から10時間、好ましくは2分と4時間である。
【0018】
本発明の触媒の製造の工程b)に応じて、白金で含浸された多孔性の担体は、120から800℃、好ましくは300から600℃の温度で加熱して活性化される。処理される雰囲気は酸化性または中性である。該雰囲気は、例えば、窒素、アルゴン、空気、酸素、空気と炭化水素の混合物(1以下または1に等しい濃度)を燃焼させたガス、そしてそれらの混合物である。好ましくは空気である。処理時間は一般的に30分から30時間、好ましくは1から6時間である。
【0019】
工程b)に応じた方法で処理された担体は、本発明の触媒を製造する工程c)に応じて、0から800℃の温度、好ましくは100から550℃で還元性媒体中で処理される。該還元性媒体は以下の純粋な化合物または混合物を含んでいる。例えば、水素、一酸化炭素、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、アセチレン、ベンゼン、またはトルエンのような飽和または不飽和の脂肪族または芳香族炭化水素、ギ酸、酢酸のようなカルボン酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドのようなアルデヒド、メタノール、エタノールまたはプロパノールのようなアルコール、エチレングリコールまたはプロピレングリコールのようなポリオール、メチルアミンまたはエチルアミンのようなアミン、尿素、イソシアン酸、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、空気と炭化水素の混合物(1以上の濃度)の燃焼ガス、およびそれらの混合物である。好ましい還元性媒体は水素を含んでいる。さらに好ましくは、該c)工程は水素の存在下、100から550℃の温度で実施される。該還元化合物と、例えば、窒素またはアルゴン(これらは前記の還元性化合物の還元性の性質を変えない)のような不活性化合物を混合することは都合が良い。工程c)を実施するには工程b)から生じた固体は一般的に垂直の加熱炉の中に挿入される管からなるガラス装置の中に導入される。管は白金を担持した担体からなる該固体を保持するフリットを備えている。管の底に種々のガスを供給する装置と液体を排出する装置がある。管のトップには管と連絡するための下部のコックと、ガスを逃がし、試薬を投入するための上部の3つのコックを備えたガラス製のアンプルがある。該工程c)で調製された固体は管の中に置かれる。
【0020】
本発明の触媒の製造の工程c)の後に、工程c)で調製された該担体を水溶液で含浸する工程d1)か、該工程c)で調製された該担体を少なくとも一つの水素供与化合物で0から200℃の温度、好ましくは10から50℃の温度で処理する工程d2)のどちらかが続く。工程d1)とd2)が実施される順序は、もし該工程が工程c)の後でかつ以下に説明する工程e)の前であれば重要でない。工程d1)が工程d2)に先行するか、または工程d2)が工程d1)に先行するかのどちらかである。工程d1)に従って、工程c)または工程d2)から調製された担体の含浸は、水溶液を利用して10℃から100℃の温度、好ましくは10から40℃で行われる。工程d1)は15から30分続く。工程d1)に従って含浸に使用される該水溶液の容積は、触媒層が溶液で覆われるように、担体の細孔体積と粒子間体積の合計より大きいか、または等しい。溶液の容積は一般的には固体のg当たり0.5から50ml、好ましくは1から20mlである。水溶液はもっぱら水、または水と塩素のような競争剤からなる。競争剤として好ましくは塩素であり、該水溶液中の塩素濃度は0.01から1%である。過剰な水溶液は流し出すことで除かれる。過剰な水溶液は容器に集められる。工程d1)が工程d2)に先行する時は、該水溶液の過剰分は工程d2)の前、または直ぐ後か、どちらかで除かれる。工程d2)に従って、該水素供与体化合物は好適に水素、アンモニア、飽和または不飽和脂肪族、そして芳香族炭化水素から選ばれる。好ましくは水素である。該工程d2)は好ましくは10から50℃の温度で実施される。それは5から60分、好ましくは10から30分持続する。工程d1)が該工程d2)に先行する時は、工程c)から調製された担体は、室温に戻され、そして工程d1)自身が実施される前に、窒素のような中性ガスによって好適に汚れが除かれる。本発明の触媒を製造する工程e)に従って、工程a)で白金で既に含浸された該多孔性の担体は、白金とイリジウムを除いた少なくとも一つの第2の第VIII 族金属の前駆体を含んでいる少なくとも一つの溶液で含浸される。少なくとも一つの第2の第VIII 族金属の該前駆体の溶液の容積は、好適に該担体の細孔体積の1/10から100倍である。好ましくは該担体の細孔体積の5から10倍である。工程e)を実施するために、第2の第VIII 族金属の前駆体は無機または有機媒体に溶解する化合物から選ばれる。特に、以下の塩化物、塩素化酸、非塩素化酸、硝酸塩、アミン錯体、カルボン酸塩である。該第2の第VIII 族金属がロジウムである場合、ロジウムの前駆体は、特に、塩化ロジウム、硝酸ロジウム、ペンタアミン クロル ロジウム塩化物、アセチルアセトンロジウムから選ばれる。溶液中の第2の第VIII 族金属、好ましくはロジウム、中の前駆体の濃度は、本発明の触媒の製造工程の終点において白金とイリジウムを除いた第2の第VIII 族金属の該触媒中の濃度(該触媒に関して重量で表される)、特にロジウム、の濃度が、0.05から3重量%、好ましくは0.1から1重量%、さらに好ましくは0.2から0.6重量%になるように選ばれる。第2の第VIII 族金属、好ましくはロジウム、の前駆体を含んでいる溶液は、必要であれば水素イオン、アンモニウム、塩化物、硝酸塩を含むことが出来る。前駆体が第2の第VIII 族金属、好ましくはロジウム、で含浸される温度は、一般的には0から100℃、好ましくは10から40℃である。含浸は一般的には1分から10時間、好ましくは2分から4時間である。
【0021】
第2の第VIII 族金属、好ましくはロジウム、の前駆体の含浸は、中性、または酸化性、または還元性雰囲気でも行われる。工程e)は好適には水素以外のガス雰囲気で実施される。
【0022】
本発明の触媒の製造は工程f)で終わる。工程f)は白金と該第2の第VIII 族金属、好ましくはロジウム、で含浸された多孔性の担体を中性、還元性、酸化性の雰囲気中、100から800℃、好ましくは300から600℃で、活性化することである。さらに可能であれば続けて還元雰囲気で0から800℃、好ましく100から500℃の温度で活性化される。
【0023】
第2の第VIII 族金属の量を増やすためと、触媒へのその添加を制御するために、工程e)には好適には直ぐに工程e1)が続けられる。工程e1)は、該工程e)から調製された触媒から汚れを少なくとも水素中で除去することからなり、続けて該第2の第VIII 族金属、好ましくはロジウム、の少なくとも一つの前駆体を含む溶液によって該触媒の含浸が再び行われる。工程e1)は、本発明の触媒中に該第2の第VIII 族金属、好ましくはロジウム、が所望する含有量になるまで繰り返される。
【0024】
本発明は、またメチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンおよびそれらの混合物から選ばれた少なくとも一つのナフテン化合物の選択的開環方法おける本発明の触媒の使用に関するものである。
【0025】
本発明に従えば、本発明のメチルシクロペンタンおよび/またはメチルシクロヘキサンの選択的開環反応は好ましくは一つの分岐を持つパラフィンを製造することを目指している。メチルシクロペンタンおよび/またはメチルシクロヘキサンの本発明に従って実施される選択的開環反応は、メチルシクロペンタンおよび/またはメチルシクロヘキサンの炭素−炭素の単結合の切断が必要である。メチルシクロペンタンの選択的開環反応は2−メチルペンタン、3−メチルペンタンおよび/またはn−ヘキサンを生成する。メチルシクロヘキサンの選択的開環反応は2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサンおよび/またはn−ヘプタンを生成する。メチルシクロペンタンおよび/またはメチルシクロヘキサンの脱水素反応を伴う好ましくない二次的反応(生成した直鎖と一つの分岐のパラフィンの異性化や、またメチルシクロペンタンおよび/またはメチルシクロヘキサンのクラッキング)が観測され、これは、主反応、即ちメチルシクロペンタンおよび/またはメチルシクロヘキサンの選択的開環反応を促進するために最大限に制限される必要がある。
【0026】
本発明のメチルシクロペンタンおよび/またはメチルシクロヘキサンの選択的開環は一般的には次の条件で起こる。温度が200から500℃、好ましくは250から400℃、全圧力が2から5MPa、好ましくは2.5から4MPa、H/ナフテン酸化合物のモル比が3から8、そしてppH(投入量の時間当たりの流速/触媒量)が2から20h−1、好ましくは2から10h−1である。
【実施例】
【0027】
次の実施例で本発明を説明する。
【0028】
実施例1(本発明)(白金とロジウムからなる触媒の製造)
a)比表面積215m/g、細孔体積0.6cm/g、直径2mmの球状物のγ−アルミナの担体10gを、ビーカーの中で、攪拌しながら1モル/L濃度の塩酸溶液15cmで含浸する。15分後、白金0.12gを含む塩化白金酸溶液50cmを攪拌しながら添加する。塩化白金酸を含む溶液中で処理1時間後、ビーカーを60℃のサンドバスの上に置き、溶液が蒸発するまで攪拌しながら操作を続ける。そしてビーカーを120℃の加熱炉に16時間入れて置く。
【0029】
b)塩化白金酸を含浸したアルミナを管状炉に導入し、10L/hの流速で空気を流しながら、室温から10℃/分で450℃まで昇温し、さらに450℃で4時間保持し焼成する。白金を担持したアルミナからなる焼成固体が生成する。
【0030】
c)該焼成固体が縦型の炉内に挿入する管を構成するガラス製装置に導入される。管は該固体を保持するフリットを備えている。管の底には種々のガスを供給するためと液体を排出するための装置がある。管のトップには管と連絡するための下部のコックと、ガスを逃がし、試薬を投入するための上部の3つのコックを備えたガラス製のアンプルがある。
【0031】
白金を担持したアルミナの焼成固体を管内に導入し、10℃/分で室温から500℃まで昇温し、さらに1時間、500℃に保持し、その後室温まで冷却される間、水素中(10L/h)で還元される。
【0032】
d1)固体は10L/hの流速の窒素で15分間汚れを除かれ、そしてガラス製アンプルから脱気した純水の15cmで湿らせる。過剰な水溶液は排出して除かれる。
【0033】
d2)該固体は室温で10L/hの流速の水素で15分間、そして10L/hの流速の窒素で15分間汚れを除かれる。
【0034】
e)0.04gのロジウムを含む硝酸ロジウムの200mlがアンプルに導入され、そして10分間窒素で置換される。溶液は白金を担持したアルミナからなる固体の上に注がれる。固体−液体の構成物は窒素の向流(2L/h)で5分間かき混ぜられる。そして室温で窒素の流速を10L/hに増加し、触媒をこの条件で45分間乾燥する。
【0035】
f)窒素の流れは、水素(10L/h)で置き換えられ、温度を100℃に上げる。12時間後、2℃/分の速度で触媒を500℃まで上げ、この温度で1時間保持する。
【0036】
このように製造された触媒C1は、1.17重量%の白金、0.39重量%のロジウム、そして1.4重量%の塩素をアルミナに加えて含有している。
【0037】
実施例2(比較例)(白金とロジウムからなる触媒の製造)
a)比表面積215m/g、細孔体積0.6cm/g、直径2mmの球状物のγ−アルミナの担体10gを、ビーカーの中で、攪拌しながら1モル/L濃度の塩酸溶液15cmで含浸する。15分後、白金0.12gを含む塩化白金酸溶液50cmを攪拌しながら添加する。塩化白金酸を含む溶液中で処理1時間後、ビーカーを60℃のサンドバスの上に置き、溶液が蒸発するまで攪拌しながら操作を続ける。そしてビーカーを120℃のストーブに16時間入れて置く。
【0038】
b)塩化白金酸を含浸したアルミナを管状炉に導入し、10L/hの流速で空気を流しながら、室温から10℃/分で450℃まで昇温し、さらに450℃で4時間保持し焼成する。白金を担持したアルミナからなる焼成固体が生成する。
【0039】
c)該焼成固体が縦型の炉内に挿入する管を構成するガラス製装置に導入される。管は該固体を保持するフリットを備えている。管の底には種々のガスを供給するためと液体を排出するための装置がある。管のトップには管と連絡するための下部のコックと、ガスを逃がし、試薬を投入するための上部の3つのコックを備えたガラス製のアンプルがある。
【0040】
白金を担持したアルミナの焼成固体を管内に導入し、10℃/分で室温から500℃まで昇温し、さらに1時間500℃に保持し、その後室温まで冷却される間、水素(10L/h)中で還元される。
【0041】
d2)該固体は室温で10L/hの流速の水素で15分間、そして10L/hの流速の窒素で15分間汚れを除かれる。
【0042】
e)0.04gのロジウムを含む硝酸ロジウムの200mlがアンプルに導入され、そして10分間窒素で置換される。溶液は白金を担持したアルミナからなる固体の上に注がれる。固体−液体の構成物は窒素の向流(2L/h)で5分間かき混ぜられる。そして室温で窒素の流速を10L/hに増加し、触媒をこの条件で45分間乾燥する。
【0043】
f)窒素の流れは、水素(10L/h)で置き換えられ、温度を100℃に上げる。12時間後、2℃/分の速度で触媒を500℃まで上げ、この温度で1時間保持する。
【0044】
このように製造された触媒C2は、1.17重量%の白金、0.39重量%のロジウム、そして1.4重量%の塩素をアルミナに加えて含有している。
【0045】
実施例3(比較例)(イリジウムを主成分とする触媒の製造)
a)比表面積215m/g、細孔体積0.6cm/g、直径2mmのボール形状のγ−アルミナの担体10gを、ビーカーの中で、攪拌しながらpHが1の塩酸溶液15cmで含浸する。15分後、イリジウム0.16gを含む塩化イリジウム酸溶液50cmを攪拌しながら添加する。塩化イリジウム酸を含む溶液中で処理1時間後、ビーカーを60℃のサンドバスの上に置き、溶液が蒸発するまで攪拌しながら続ける。そしてビーカーを120℃の加熱炉に16時間入れる。
【0046】
b)塩化イリジウム酸を含浸したアルミナを管状炉に導入し、10L/hの流速で空気を流しながら、室温から10℃/分で300℃まで昇温し、さらに300℃で4時間保持し焼成し、その後室温まで冷却する。イリジウム触媒を担持した焼成したアルミナが生成する。
【0047】
c)焼成した触媒は、2℃/分で500℃まで昇温し、さらに4時間500℃に保持し、水素(10L/h)の存在下で還元される。
【0048】
このように製造された触媒C3は、アルミナ、1.56重量%のイリジウムと1.47重量%の塩素を含有している。
【0049】
実験例4(メチルシクロヘキサおよび/またはメチルシクロペンタンンの開環反応への触媒C1,C2とC3の適用)
実験例1から3(C1、C2とC3)の触媒は、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、そしてメチルシクロヘキサン−メチルシクロペンタンの混合物の開環反応を連続して下記の装置で試験された。
【0050】
−ブロックス 5866 の流量計により流速と圧力が調節可能な水素供給回路。
【0051】
−ピストンポンプで制御された流速で液体の注入量を供給する回路。
【0052】
−炉内に置かれた金属製の反応器
−圧力調節装置
−反応器から排出するための回路に置かれた気体−液体分離器
−開環反応の生成物、クラッキング生成物、異性化生成物、そして脱水素反応生成物の分離用のアルミナ PLOT カラムを装備したバリアン 3400 クロマトグラフ
各試験の前に、触媒C1からC3の各々は200から400ミクロンの粒子サイズに粉砕される。触媒C1からC3の各々は、触媒層の流体力学を改善するために2つのカーボランダム層の間の反応器の中に250mg充填される。
【0053】
第一段階は、触媒C1からC3の各々が水素(40 バール、3.6L/h)の存在下で500℃で1時間還元される。温度が200℃に下げられ、溶液(メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、またはメチルシクロヘキサン−メチルシクロペンタンの量で50−50の混合物)の注入量が、2.5のPPH(2.5g/(触媒)g/時間)、3MPaの全圧力で注入される。H/炭化水素のモル流速が5にセットされる。
【0054】
反応生成物のクロマトグラフ分析は、2時間後に変換段階に到達することを示している。そして温度が2時間で25℃だけ上昇し、そして2時間の一定期間は安定している。一定期間が続くこの昇温サイクルが毎回25℃で400℃まで続く。
【0055】
以下の表は、純粋なメチルシクロヘキサン(MCH),純粋なメチルシクロペンタン(MCP)とメチルシクロヘキサン−メチルシクロペンタン(MCH−MCP)の混合物を用いた試験の開環反応における最大の収率を比較する。
【表1】

【0056】
本発明の触媒C1は開環反応の最大の収率を示し、触媒3より明らか高く、触媒2より実質的に高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの多孔性の担体と、少なくともいくらかの(some)白金、そして少なくともいくらかの(some)ロジウムからなる触媒であって、該触媒が少なくとも以下の方法で製造されているもの、
工程a):白金前駆体を含む少なくとも一つの溶液で担体を含浸すること、
工程b):120から800℃の温度で中性または酸化性雰囲気中での活性化、
工程c):0から800℃の温度で還元性媒体中での活性化、
工程d1):水溶液での含浸、
工程d2):少なくとも一つの水素供与化合物で200℃以下の温度での処理、ただし、該工程が該工程c)の後で、以下の工程e)の前に実施されるのであれば工程d1)と工程d2)の実施される順序は重要でない、
工程e):白金で既に含浸された担体をロジウム前駆体を含む少なくとも一つの溶液で含浸すること、
工程f):100から800℃の温度で中性、還元性、または酸化性雰囲気での活性化。
【請求項2】
該多孔性の担体がアルミナと塩素化アルミナから選ばれる請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
塩素を含む請求項1または請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
該工程a)で使用される該白金前駆体が塩化白金酸である請求項1から3のいずれかに記載の触媒。
【請求項5】
該工程b)が300から600℃の温度で実施される請求項1から4のいずれかに記載の触媒。
【請求項6】
該工程c)が水素の存在下、100から550℃の温度で実施される請求項1から5のいずれかに記載の触媒。
【請求項7】
工程d1)に応じて使用される該水溶液が水単独からなるか、または、水と競争剤(competitor agent)からなる請求項1から6のいずれかに記載の触媒。
【請求項8】
工程d2)で使用される該水素供与化合物が水素である請求項1から7のいずれかに記載の触媒。
【請求項9】
該工程e)で使用される溶液に存在する第2の第VIII 族金属の該前駆体がロジウム前駆体である請求項1から8のいずれかに記載の触媒。
【請求項10】
工程f)に応じて中性または酸化性雰囲気での該活性化の後に、0から800℃の温度で還元性雰囲気での活性化が続く請求項1から9のいずれかに記載の触媒。
【請求項11】
該工程e)で調製された触媒の汚れを水素中で除くことを少なくとも含む工程e1)と、これに続いて該第2の第VIII 族金属の前駆体を少なくとも含む溶液で該触媒を再度含浸する工程とを含む方法に従って製造される請求項1から10のいずれかに記載の触媒。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の触媒の存在下に実施されるメチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンおよびそれらの混合物から選ばれた少なくとも一つのナフテン化合物の選択的開環方法であって、該方法は200から500℃の温度で2から5MPaの全圧力で、H/ナフテン化合物のモル比が3から8で、ppH(時間当たり注入量の流速/触媒量)が2から20h−1で実施される方法。

【公開番号】特開2008−114223(P2008−114223A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289099(P2007−289099)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】