説明

環状N−置換α−イミノカルボン酸の製法

本発明は、式(I)の環状N−置換α−イミノカルボン酸の製法に関する。この方法によれば、ビフェニル−4−カルバミン酸エステルは4’−カルバミン酸エステル−ビフェニル−4−スルホン酸塩に変換され、次に該スルホン酸塩を塩素化して相当するスルホニルクロリドを得、後者の生成物をシリル化α−イミノカルボン酸と反応させて式(I)の化合物を形成させる。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は式Iの環状N−置換α−イミノカルボン酸の製造方法に関する。式Iの化合物はコラゲナーゼ(MMP13)の選択的阻害剤であり、それゆえ変性関節疾患の治療に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
環状および複素環状N−置換α−イミノヒドロキサム酸およびカルボン酸がメタロプロテイナーゼの阻害剤であることが知られている(EP0861236)。これらの化合物を製造するための既知の方法は、数多の工程を有し、収率が比較的低く、発がん性の中間体、例えばニトロビフェニル類を使用し、またラセミ体または部分的にラセミ化した化合物を生じ、これらのラセミ化化合物はその後にエナンチオマーに再分離しなければならない。さらには、既知の方法での中間体はカラムクロマトグラフィーによって精製しなければならないことが多く、これがパイロットプラントまたは生産操業における大量の物質の合成を複雑なものとする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したような不利な点が、短時間で、効率がよく、かつラセミ化のない合成法によって避けることができ、例えばカラムクロマトグラフィーのような複雑な精製工程をなしですましうることが見いだされた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、式IIのビフェニルカルバミン酸エステルをスルホン化し、形成されたスルホン酸をアリカリ金属塩として沈殿させることによって達成される。次いで、有機塩基の存在下にハロゲン化を実施する。カルバミン酸エステル官能基の酸触媒分解反応は、できたとしても、効率悪く一段階のみで直接にクロロスルホン化できないことから、この二段階の方法で、ハロゲン化スルホニルの製造に成功したのである。次に、式Iの化合物は次いで初めにシリル化剤でシリル化されている化合物Vと反応させて製造される。
【0005】
従って、本発明は下記の式Iの化合物および/または式Iの化合物の全ての立体異性形態および/または任意の比率のこれらの形態の混合物、および/または式Iの化合物の生理学的に許容し得る塩を得る方法に関する。
【化1】

[式中、
R1は、
1.−(C1−C10)アルキル(アルキルは直鎖または分枝鎖である)、
2.−(C2−C10)アルケニル(アルケニルは直鎖または分枝鎖である)、
3.−(C2−C10)アルキニル(アルキニルは直鎖または分枝鎖である)、
4.−(C1−C4)アルキルフェニル、
5.−(C1−C4)アルキル−(C3−C7)−シクロアルキル、
6.−(C3−C7)−シクロアルキルまたは
7.−CH2CF3
であり、そして
【化2】

は以下の群からの基であり、
【化3】

そして置換されていないかまたはR2で一、二または三置換されていて、そしてR2は水素原子または−(C1−C4)−アルキルである]。
【0006】
本発明の方法は、以下のa)、b)およびc)を包含する:
a)式IIの化合物
【化4】

(式中R1は式Iでの定義の通りである)を有機溶媒中でスルホン化試薬と反応させ、それからアルカリ金属塩水溶液を使用して式IIIの化合物に変換し
【化5】

(式中Xはアルカリ金属または水素である)、そして
b)式IIIの化合物を有機塩基の存在下有機溶媒II中で塩素化試薬により式IVの化合物に変換し
【化6】

そして
c)有機溶媒III中でシリル化剤を使用して式Vの化合物
【化7】

を変換し、そして次に式IVの化合物を使用して式Iの化合物に変換する。
【0007】
用語「(C1−C10)−アルキル」は、炭素鎖が直鎖または分枝鎖であって炭素原子1〜10個を含有する炭化水素基を言うものであり、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2,3−ジメチルブチル、ネオヘキシル、ヘプチル、オクタニル、ノナニルまたはデカニルである。
【0008】
用語「(C2−C10)−アルケニル」は、炭素鎖が直鎖または分枝鎖であって炭素原子1〜10個を含有し、そして鎖の長さの如何によって1、2または3個の二重結合を有する炭化水素基を言うものである。用語「(C2−C10)−アルキニル」は、炭素鎖が直鎖または分枝鎖であって炭素原子1〜10個を含有し、そして鎖の長さの如何によって1、2または3個の三重結合を有する炭化水素基を言うものである。(C3−C7)−シクロルアルキル基は、例えば、3−乃至7−員の単環の化合物から誘導された例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルである。
【0009】
用語「スルホン化試薬」は、例えばM.B.SmithおよびJ.March,March’s Advanced Organic Chenistry:Reactions,Mechanisms,and Structure,Wiley,New York,2001,p.702−704およびそこで引用されている文献に記載の通りの化合物を言うものであり、例えばクロロスルホン酸、硫酸、塩化スルフリル、発煙硫酸カラム(fuming sulfuric column)または三酸化硫黄またはこれらの混合物である。
【0010】
用語「有機溶媒」は、非プロトン性溶媒を言うものであり、例えばクロロホルム、ジクロロメタン、ペンタン、ヘプタン、ヘキサン、テトラクロロメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレンである。
【0011】
用語「アルカリ金属塩水溶液」は、水溶性アルカリ金属塩、例えばNaCl、KCl、LiCl、RbClまたはCsClのようなアルカリ金属ハロゲン化物、または例えばNa2SO4、K2SO4、Li2SO4、Rb2SO4またはCs2SO4のようなアルカリ金属硫酸塩の溶液を言うものである。例えば、NaCl 10g〜300gは水1lに25℃で溶解される。
【0012】
用語「有機溶媒II」は、非プロトン性溶媒を言うものであり、例えばクロロホルム、ジクロロメタン、ペンタン、ヘプタン、ヘキサン、テトラクロロメタン、トルエン、ベンゼン、キシレン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレンである。
【0013】
用語「有機塩基」は、有機アミンを言うものであり、例えばキノリン、モルホリン、ピペリジン、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリン、ルチジンである。ピリジンが好ましい。
【0014】
用語「塩素化試薬」は、カルボン酸、スルホン酸またはそれらの塩をカルボニルクロリドまたはスルホニルクロリドに変換するのに使用し得る化合物を言うもので例えばPCl5、POCl3、SOCl2、CCl4中のトリフェニルホスフィンまたはこれらの塩素化試薬の混合物である。このような試薬は、例えばR.C.Larock,Comprehensive Organic Transformations:a Guide to Functional Group Preparations,VCH Publishers,New York,Weinheim,1999、p.1929−1930に記載されている。
【0015】
用語「有機溶媒III」は、非プロトン性溶媒を言うもので例えばアセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメトキシエタン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテルである。
【0016】
用語「シリル化剤」は、例えばT.W.Greene,P,G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Chemistry,Wiley,New York,1991,Chapter 5に記載されているようなカルボキシル基をシリル化するのに適している化合物を言うものである。シリル化剤の例はN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミドまたはトリメチルシリルクロリドまたはこれらのシリル化剤の混合物である。
【0017】
式Iの化合物の製造には、操作は最初に式IIの化合物が有機溶媒中でスルホン化試薬と攪拌しながら反応させられる。反応温度は−40℃〜+20℃、好ましくは−30℃〜+20℃である。反応時間は一般には混合物の組成および選択された温度範囲の如何によって0.5〜6時間の範囲にある。次いで得られた式IIIの化合物はアルカリ金属塩水溶液を使用して沈殿させる。式IIIの化合物は次いで反応混合物から濾過により取り出される。
【0018】
好ましくは、式IIの化合物0.1〜5モルが有機溶媒1000mlに溶解される。式IIの化合物1モル当りスルホン化試薬1モル〜10モル、特に1モル〜3モル、を使用するのが好ましい。好ましいスルホン化試薬は、クロロスルホン酸、硫酸、塩化スルフリル、発煙硫酸カラムまたは三酸化硫黄である。沈殿には、式IIの化合物との反応混合物1lを基にして0.1l〜10lのアルカリ金属塩水溶液を使用する。アルカリ金属塩水溶液の濃度は水1l当り10〜300gであり、そしてアルカリ金属塩の総量は有機化合物1モル当り少なくとも1モルである。
【0019】
濾過は、例えば減圧を施してBuechner吸引フィルターおよび吸引フラスコを使用してまたは加圧フィルターを使用して実施される。
【0020】
式IIの化合物は既知であるか、または、例えばビフェニル4−イソシアネートを有機溶媒中で適切なアルコールR1−OHと反応させることにより製造することができる。
【0021】
次いで、式IIIの化合物および有機塩基を初めに有機溶媒II中に装入し、そして攪拌しながら塩素化試薬と反応させる。反応温度は10℃〜150℃、好ましくは30℃〜100℃である。反応時間は一般には混合物の組成および選択された温度範囲の如何に応じて0.5〜6時間の範囲にある。次いで、得られた式IVの化合物は反応混合物から水性処理および溶媒抽出により反応混合物から取り出す。
【0022】
好ましくは、式IIIの化合物0.2〜10モルを有機溶媒1000mlに溶解する。
式IIIの化合物1モル当り有機塩基0.1モル〜5モル、特に0.1モル〜1モル、を使用するのが好ましい。好ましくは、式IIIの化合物1モル当り塩素化試薬1モル〜5モル、特に1モル〜2モル、を使用するのが好ましい。好ましい塩素化試薬は、PCl5、POCl3、SOCl2、CCl4中のトリフェニルホスフィンまたはこれらの塩素化試薬の混合物である。得られた式IVの化合物は水性処理および生成物の有機溶媒抽出によって取り出される。
【0023】
次いで、式IIIの化合物を初めに有機溶媒III中に装入し、そして攪拌しながらシリル化剤と反応させる。反応温度は10℃〜150℃、好ましくは30℃〜100℃である。反応時間は一般には混合物の組成および選択された温度範囲の如何に応じて0.5〜10時間の範囲にある。その後で、得られた式Vのシリル化化合物を同じ反応混合物中で式IVの化合物と反応させられる。このために、化合物IVは純粋な物質として、または有機溶媒IIIに溶解して加えられる。反応温度は10℃〜150℃、好ましくは30℃〜100℃である。反応時間は一般には混合物の組成および選択された温度範囲の如何に応じて0.5〜10時間の範囲にある。得られた式Iの化合物は水性処理および生成物の有機溶媒抽出により取り出される。
【0024】
好ましくは、式Vの化合物0.1〜10モルは有機溶媒1000mlに溶解される。式IVの化合物1モル当り式Vの化合物0.5モル〜2モル、特に0.9モル〜1.1モル、を使用するのが好ましい。好ましくは、式Vの化合物1モル当りシリル化剤1モル〜5モル、特に2モル〜2.5モル、を使用するのが好ましい。好ましいシリル化剤は、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミドまたはトリメチルシリルクロリドである。
【0025】
本発明のさらなる局面は、式IIの化合物および/または式IIの化合物の全ての立体異性形態および/または任意の比率のこれらの形態の混合物、および/または式IIの化合物の生理学的に許容し得る塩に関する。
【化8】

[式中、
R1は、
1.−(C1−C10)アルキル(アルキルは直鎖または分枝鎖である)、
2.−(C2−C10)アルケニル(アルケニルは直鎖または分枝鎖である)、
3.−(C2−C10)アルキニル(アルキニルは直鎖または分枝鎖である)、
4.−(C1−C4)アルキルフェニル、
5.−(C1−C4)アルキル−(C3−C7)−シクロアルキル、
6.−(C3−C7)−シクロアルキルまたは
7.−CH2CF3
である]。
【0026】
本発明のさらなる局面は、式IIIの化合物および/または式IIIの化合物の全ての立体異性形態および/または任意の比率のこれらの形態の混合物、および/または式IIIの化合物の生理学的に許容し得る塩に関する。
【化9】

[式中、
R1は、
1.−(C1−C10)アルキル(アルキルは直鎖または分枝鎖である)、
2.−(C2−C10)アルケニル(アルケニルは直鎖または分枝鎖である)、
3.−(C2−C10)アルキニル(アルキニルは直鎖または分枝鎖である)、
4.−(C1−C4)アルキルフェニル、
5.−(C1−C4)アルキル−(C3−C7)−シクロアルキル、
6.−(C3−C7)−シクロアルキルまたは
7.−CH2CF3
であり、そして
XはLi、Na、K、RbそしてCs
である]。
【0027】
本発明のさらなる局面は、式IVの化合物および/または式IVの化合物の全ての立体異性形態および/または任意の比率のこれらの形態の混合物、および/または式IVの化合物の生理学的に許容し得る塩に関する。
【化10】

[式中、
R1は、
1.−(C1−C10)アルキル(アルキルは直鎖または分枝鎖である)、
2.−(C2−C10)アルケニル(アルケニルは直鎖または分枝鎖である)、
3.−(C2−C10)アルキニル(アルキニルは直鎖または分枝鎖である)、
4.−(C1−C4)アルキルフェニル、
5.−(C1−C4)アルキル−(C3−C7)−シクロアルキル、
6.−(C3−C7)−シクロアルキルまたは
7.−CH2CF3
である]。
【0028】
式II、IIIおよびIVの化合物は、コラゲナーゼ(MMP13)の選択性阻害剤である式Iの化合物を合成する中間体として適当なものである。
【0029】
〔実施例〕
実施例を参照して以下に本発明を詳述する。
最終生成物は一般には1HNMR(400MHz、DMSO−D6中);各例では、メインピークまたは二つのメインピークを特定する。温度のデータは摂氏(℃)である;RTは室温(22℃〜26℃)を意味する。使用した略語は説明をしているか、または通例の慣行に該当しているものである。
【0030】
実施例1
【化11】

イソプロピルビフェニル−4−イルカルバメートの製造
トルエン1.2リットル(l)中の4−ビフェニルイソシアネート(204g、純度96.6%、1.0モル)の懸濁液に20℃で2分(min.)以内にイソプロパノール230ml(3モル)を加えた。氷浴を使用して穏やかな冷却をすることにより、内部温度を適宜30℃以下に保持した。75分後に、混合物を50℃に加熱し、次いで攪拌しながら2時間(h)以内に20℃に放冷し、この間に生成物が晶出した。次いで、混合物を氷浴で冷却し、析出した結晶を吸引濾取し、トルエンで洗浄した。結晶性生成物188gが得られた。濾液を減圧で濃縮し、残留物をトルエン(200ml)で結晶化させた。このようにして、生成物をさらに59g得た。
総収率:イソプロピルビフェニル−4−イルカルバメートの247g(97%)、無色結晶、融点(m.p.)138.5℃〜139℃
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) :δ = 1.31 (d, J= 6 Hz, 6 H), 5.04 (heptet, J=6 Hz, 1 H), 6.61 (bs, 1H), 7.31 (t, J= 7.5 H, 1 H), 7.41 (d, J= 8 Hz, 2 H), 7.45 (d, J= 9 Hz, 2 H), 7.55 (t, J= 8 Hz, 2 H) ppm。
分析値:C16H17NO2(255.32):計算値 C 75.27, H 6.71, N 5.49 ; 実測値 C 75.27, H 6.61, N 5.57。
【0031】
実施例2
【化12】

4’−イソプロポキシカルボニルアミノビフェニル−4−スルホン酸ナトリウム塩の製造
ジクロロメタン(2000ml)中のイソプロピル ビフェニル−4−イルカルバメート(256g、1モル)の懸濁液を−10℃に冷却し、ドライアイス−メタノール浴を使用して穏やかに冷却しながら25分でクロロスルホン酸(350g、200ml、3モル)を攪拌しながら滴加した。内部温度を−4℃以下に保持した。次いで、ドライアイスーメタノール浴を氷浴と置き換え、混合物を3℃〜14℃で1.5時間攪拌した。
その後、クロロスルホン酸(175ml,2.6モル)を2℃〜3℃で再び加え、混合物を30分間再び攪拌し、次いで後処理した。このために、初めに、氷(5kg)、塩化メチレン(1000ml)および濃NaCl溶液(1300ml)の混合物を激しく攪拌しながら装填し、次いで反応混合物をゆっくりと加えた。析出した固体を吸引濾取し、減圧下45℃で乾燥した。4’−イソプロポキシカルボニルアミノビフェニル−4−スルホン酸ナトリウム塩329g(92%)が白色結晶性粉末として得られた。融点>260℃、
1H-NMR (400 MHz, DMSO-D6) : δ = 1.27 (d, J= 6 Hz, 6 H), 4.91 (heptet, J= 6 Hz),
1 H), 7.54-7.66 (sh, 8 H), 9.66 (bs, 1 H) ppm。
分析値:C16H16NNaO5S (357.36) : 計算値 C 53.78, H 4.51, N 3.92, Na 6.43 ; 実測値 C 54.13, H 4.39, N 4.17, Na 5.9。
【0032】
実施例3
【化13】

イソプロピル(4’−クロロスルホニルビフェニル−4−イル)カルバメートの製造
4’−イソプロポキシカルボニルアミノビフェニル−4−スルホン酸ナトリウム塩(283g、0.79モル)、トルエン(700ml)およびピリジン(35ml、0.43モル)の混合物を室温で激しく攪拌し、そしてPOCl3(215ml)をゆっくりと滴加して、内部温度を30℃と45℃との間に保持した。次いで、PCl5(100g)をほぼ6部分量で35℃で加え、混合物を30分以内に60℃に加熱した。その後に、さらにPCl5(100g)を70℃で15分以内に加え、混合物は、さらに加熱することなく、1時間攪拌したままにしておいた。この時に、内部温度は約30℃に低下した。混合物をジクロロメタン(500ml)で希釈し、次いで後処理した。このために、初めに、氷水(5kg)、飽和NaCl溶液(1000ml)およびジクロロメタン(1000ml)の混合物を激しく攪拌しながら装填し、次いで反応混合物をゆっくりと加えた。この時に、氷(2kg)を加えて温度を15℃〜25℃に保持した。その次に、攪拌を1時間続け、この間に温度は30℃まで上昇した。相を分離し、水相をジクロロメタン(1500ml)を使用して二回抽出した。合わせた有機相を水(8000ml)を使用して再抽出し、Na2SO4上で乾燥し、そして減圧蒸発で濃縮した。粗製生成物約360gがベージュ色の結晶として得られた。これらの結晶をジクロロメタンに取り、シリカゲル層(15×30cm、70〜200μm)を通して濾過し、層をジクロロメタンで洗浄し、濾液を蒸発濃縮した。イソプロピル(4’−クロロスルホニルビフェニル−4−イル)カルバメート270g(96%)が黄色結晶として得られた。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) :δ = 1.33 (d, J= 6 Hz, 6 H), 5.05 (heptet, J= 6 Hz, 1
H), 6.68 (bs, 1 H), 7.53 (d, J= 9 Hz, 2 H), 7.59 (d, J= 9 Hz, 2 H), 7.88 (d, J= 9 Hz, 2 H), 8.08 (d,J= 9 Hz, 2 H) ppm。
【0033】
実施例4
【化14】

(R)−2−(4’−イソプロポキシカルボニルアミノビフェニル−4−スルホニル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸の製造
(R)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸(139g、0.78モル)を乾燥窒素下に無水アセトニトリル(3000ml)に懸濁させ、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(334g、400ml、1.64モル)を攪拌しながら5分以内に20℃で加えた。混合物を1.5時間加熱還流し、次に74℃に放冷した。その次に、イソプロピル(4’−クロロスルホニルビフェニル−4−イル)カルバメート(277g、0.78モル)を10分で8部分量で攪拌しながら加え、この間にガスの発生が認められた。形成された低沸点トリメチルシリルクロリドを留去し、混合物をさらに2.5時間加熱還流した。
その次に、混合物を室温に冷却し、激しく攪拌しながら水(10l)、クエン酸(80g)および酢酸エチル(1500ml)の混合物に注加し、そして相を分離した。酢酸エチル(1000ml/回)を使用して水相を二回抽出し、合わせた有機相を水(7l)で再抽出した。Na2SO4上で乾燥後、混合物を減圧下に蒸発濃縮した。ベージュ色の結晶性粗製生成物506gが得られ、このものをジクロロメタン(1000ml)からの再結晶によって精製した。
(R)−2−(4’−イソプロポキシカルボニルアミノビフェニル−4−スルホニル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸の収率316g(78%)、無色結晶、融点133℃〜135℃(軟化)、173℃〜175℃(ガスを発生して溶融)。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) :δ = 1.27 (d, J= 6 Hz, 6 H), 3.04 (dd, J1 = 16 Hz, J2= 6 Hz, 1 H), 3.11 (dd, J1= 16 Hz, J2= 3 Hz, 1 H), 4.49 (d, J= 16 Hz, 1 H), 4.61 (d, J= 16 Hz, 1 H), 4.85-4.95 (sh, 2 H), 7.15 (m, 4 H), 7.59 (d, J= 9 Hz, 1 H), 7.67 (d, J= 9 Hz, 1 H), 7.81 (d, J= 9 Hz, 1H), 7.86 (d, J= 9 Hz, 1 H), 9.74 (s, 1 H), 12.86 (bs, 1 H) ppm。
分析値:C26H26N206S (494.57) : 計算値 C 63.14, H 5.30, N 5.66 ; 実測値 C 62.81, H 5.57, N 5.49。
【0034】
キラル相でのHPLCによるエナンチオマー純度の測定
Chiralpak AD−H/39 250×4.6、溶離剤:8:1:1ヘプタン/メタノール/エタノール+1%NH4OAc、[(R)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸]の保持時間=7.349分(99.97%)、[(S)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸]の保持時間=8.521分(0.03%)。
エナンチオマー純度 99.94%ee。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式II:
【化1】

[式中、
R1は、
1.−(C1−C10)アルキル(アルキルは直鎖または分枝鎖である)、
2.−(C2−C10)アルケニル(アルケニルは直鎖または分枝鎖である)、
3.−(C2−C10)アルキニル(アルキニルは直鎖または分枝鎖である)、
4.−(C1−C4)アルキルフェニル、
5.−(C1−C4)アルキル−(C3−C7)−シクロアルキル、
6.−(C3−C7)−シクロアルキル、または
7.−CH2CF3
である]
の化合物および/または式IIの化合物の全ての立体異性形態および/または任意の比率のこれらの形態の混合物、および/または式IIの化合物の生理学的に許容し得る塩。
【請求項2】
式III:
【化2】

[式中、
R1は、
1.−(C1−C10)アルキル(アルキルは直鎖または分枝鎖である)、
2.−(C2−C10)アルケニル(アルケニルは直鎖または分枝鎖である)、
3.−(C2−C10)アルキニル(アルキニルは直鎖または分枝鎖である)、
4.−(C1−C4)アルキルフェニル、
5.−(C1−C4)アルキル−(C3−C7)−シクロアルキル、
6.−(C3−C7)−シクロアルキル、または
7.−CH2CF3
であり、そして
XはLi、Na、K、RbそしてCsである]
の化合物および/または式IIIの化合物の全ての立体異性形態および/または任意の比率のこれらの形態の混合物、および/または式IIIの化合物の生理学的に許容し得る塩。
【請求項3】
式IV:
【化3】

[式中、
R1は、
1.−(C1−C10)アルキル(アルキルは直鎖または分枝鎖である)、
2.−(C2−C10)アルケニル(アルケニルは直鎖または分枝鎖である)、
3.−(C2−C10)アルキニル(アルキニルは直鎖または分枝鎖である)、
4.−(C1−C4)アルキルフェニル、
5.−(C1−C4)アルキル−(C3−C7)−シクロアルキル、
6.−(C3−C7)−シクロアルキル、または
7.−CH2CF3
である]
の化合物および/または式IVの化合物の全ての立体異性形態および/または任意の比率のこれらの形態の混合物、および/または式IVの化合物の生理学的に許容し得る塩。
【請求項4】
式I:
【化4】

[式中、
R1は、
1.−(C1−C10)アルキル(アルキルは直鎖または分枝鎖である)、
2.−(C2−C10)アルケニル(アルケニルは直鎖または分枝鎖である)、
3.−(C2−C10)アルキニル(アルキニルは直鎖または分枝鎖である)、
4.−(C1−C4)アルキルフェニル、
5.−(C1−C4)アルキル−(C3−C7)−シクロアルキル、
6.−(C3−C7)−シクロアルキル、または
7.−CH2CF3
であり、そして
【化5】

は以下の群
【化6】

からの基であり、
そして置換されていないかまたはR2で一、二または三置換されていて、そしてR2は水素原子または−(C1−C4)−アルキルである]
の化合物および/または式Iの化合物の全ての立体異性形態および/または任意の比率のこれらの形態の混合物、および/または式Iの化合物の生理学的に許容し得る塩を得る方法であって、以下:
a)式II
【化7】

(式中R1は式Iでの定義の通りである)の化合物を有機溶媒中でスルホン化試薬と反応させ、それからアルカリ金属塩水溶液を使用して式III
【化8】

(式中Xはアルカリ金属または水素である)の化合物に変換し、そして
b)式IIIの化合物を有機塩基の存在下有機溶媒II中で塩素化試薬により式IV
【化9】

の化合物に変換し、そして
c)有機溶媒III中でシリル化剤を使用して式V
【化10】

の化合物を変換し、そして次に式IVの化合物を使用して式Iの化合物に変換することを包含する、上記方法。
【請求項5】
使用されるスルホン化試薬がクロロスルホン酸、硫酸、塩化スルフリル、発煙硫酸カラムまたは三酸化硫黄であり、
使用される有機溶媒がクロロホルム、ジクロロメタン、ペンタン、ヘプタン、ヘキサン、テトラクロロメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロエタンまたはトリクロロエチレンであり、
使用されるアルカリ金属塩水溶液が、NaCl、KCl、LiCl、RbClまたはCsClのような水溶性アルカリ金属塩、またはNa2SO4、K2SO4、Li2SO4、Rb2SO4またはCs2SO4のようなアルカリ金属硫酸塩の溶液であり、
使用される有機溶媒IIがクロロホルム、ジクロロメタン、ペンタン、ヘプタン、ヘキサン、テトラクロロメタン、トルエン、ベンゼン、キシレン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロエタンまたはトリクロロエチレンであり、
使用される有機塩基がキノリン、モルホリン、ピペリジン、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリンまたはルチジンであり、
使用される塩素化試薬がPCl5、POCl3、SOCl2、CCl4中のトリフェニルホスフィンまたはこれらの塩素化試薬の混合物のようなカルボン酸およびスルホン酸をカルボニルクロリドまたはスルホニルクロリドに変換する化合物であり、
使用される有機溶媒IIIがアセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメトキシエタン、ジオキサンまたはジエチレングリコールジメチルエーテルであり、
使用されるシリル化剤がN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミドまたはトリメチルシリルクロリドまたはこれらのシリル化剤の混合物のような化合物
である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式IIの化合物1モル当りスルホン化試薬1モル〜10モル、特に1モル〜3モル、を使用する請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
式IIIの化合物1モル当り有機塩基0.1モル〜5モル、特に0.1モル〜1モル、を使用する請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
式IIIの化合物1モル当り塩素化試薬1モル〜5モル、特に1モル〜2モル、を使用する請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
式IVの化合物1モル当り式Vの化合物0.5モル〜2モル、特に0.9モル〜1.1モル、を使用する請求項4〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
式Vの化合物1モル当りシリル化剤1モル〜5モル、特に2モル〜2.5モル、を使用する請求項4〜8のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2007−513067(P2007−513067A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537149(P2006−537149)
【出願日】平成16年10月23日(2004.10.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011997
【国際公開番号】WO2005/047263
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】