説明

生ゴミ含有ゲル状組成物の製造方法

【課題】 取り扱いの容易な形態の生ゴミ含有組成物の製造方法を提供し、また、臭気を発生しない生ゴミ含有組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 生ゴミを破砕して生ゴミペーストを形成すること、ゲル化剤によってゲル化することが可能なアニオン性官能基を有する水溶性高分子化合物を前記ペーストに添加して混合すること、多価金属塩および多価金属酸化物からなる群より選ばれるゲル化剤を前記ペーストに添加して混合し、生ゴミペーストをゲル化させることを含む、生ゴミ含有ゲル状組成物の製造方法。前記生ゴミペーストに、イオン交換性物質、還元性物質及び多孔性物質からなる群より選ばれる1種以上の臭気抑制剤を添加することをさらに含む、上記生ゴミ含有ゲル状組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生ゴミ含有ゲル状組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生ゴミは、人々が生命を維持し、そして豊かで健康な生活を送ろうとして、多量の資源を用いた結果として生じた残滓である。これらは見方をかえると、多大な資源が投入された貴重な有機物である。現状、生ゴミは、その一部は、完熟堆肥化された後に有機肥料や土壌改良材として活用されたり、又は、膨大な設備投資をしてメタン発酵を行いメタンガスとしてエネルギー回収されている。しかし、その大部分は、貴重な炭素資源をさらに投入して焼却処分され、二酸化炭素として大気中に放散されている。
【0003】
又、生ゴミは、過去には、田畑に還元され地力を保持するために活用されていたが、都市化の進展と共に、人口が都市部に偏在するようになり、また、処理や運搬の煩雑さも加わり、活用されることが少なくなって来た。又、これらの要因とともに、化学肥料の過施用も積み重なり、田畑の疲弊が進行し、その対策が希求されている。
【0004】
生ゴミは、上記のとおり、有効活用されることなく、焼却処理等を必要とする、環境に対する負荷物として取り扱われてきた。しかし、今後は、ゴミ廃棄場所が不足し、また、焼却処理により二酸化炭素等を排出するような環境に対する負荷を継続することは益々困難になっている。
【0005】
生ゴミの処理に関しては、たとえば、以下の特許文献1〜5に開示されている。特許文献1(特開2001−132915号公報)は、焼却灰を少なくすることができる生ゴミなどのゴミの焼却装置を開示している。また、特許文献2及び3(それぞれ、特開2002−119937号公報及び特開2004−74101号公報)はメタン発酵を用いた生ゴミ処理方法を開示している。さらに、特許文献4(特開2001−352959号公報)は生ゴミの飼料化又は肥料化システムを開示している。特許文献5(特開2001−261475号公報)は、生ゴミなどの堆肥化を促進する目的で利用する堆肥化助剤の製造方法と、使用方法を開示している。
【0006】
特許文献4は、より具体的には、ミキサーに生ゴミを投入して、ヘドロ状のスラッジにし、さらに、スラッジ処理物をミンチ装置に発送して、凝集剤、水、或いは、更に防腐剤や栄養剤と共に、粘稠性のペーストのスラッジにし、スネークポンプ(商標名)に供給し、発送装置で輸送した後、高圧フィルタープレスにより脱水して50%前後の含水比のケーキを排出し、最後に袋詰めやペレット化を行なうことで家畜用飼料或いは農業用肥料とする、生ゴミの飼料化又は肥料化システムを開示している。このシステムを用いた方法では、粘稠性の調整のために凝集剤を用いる旨の記載があるが、具体的にいかなる化合物を用いるかについては記載されていない。また、最終製品の臭気の問題については全く対策を講じていない。
また、特許文献5は、含水率の高い堆肥原料(生ゴミや、糞尿など)に対して、吸水倍率が高く、短時間に生分解されるポリマーからなる堆肥化助剤(水分調整材兼堆肥化促進補助材)を混合し、堆肥原料の含水率を下げ、ゲル化又は固化する方法を開示している。この発明に使用されるポリマーとしては、ポリアミノ酸架橋体やカルボキシメチルセルロース架橋体などの多糖類架橋体などの既に架橋構造を有する吸水性ポリマーが挙げられている。この方法によると、ポリマーの吸水性により生ゴミを脱水して堆肥化するわけであるが、減水された生ゴミと吸水した架橋ポリマーとの単なる混合物が生じるにすぎず、生ゴミそのものが固化されない。また、有機物の分解過程を変化させることもないので、堆肥化を行う場合、普通行われる堆肥化処理と同じ工程が必要となる。
【0007】
【特許文献1】特開2001−132915号公報
【特許文献2】特開2002−119937号公報
【特許文献3】特開2004−74101号公報
【特許文献4】特開2001−352959号公報
【特許文献5】特開2001−261475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在、貴重な有機資源である生ゴミの再生・リサイクルが求められている。従来の生ゴミ処理方法では、高圧フィルタープレスなどの機械的な脱水作用によりペレット化などを行い、取り扱い性を向上することが試みられている。しかし、このような方法では高圧フィルタープレスなどの設備が必要であり、また、臭気成分発生による処理困難性を克服することができない。
したがって、本発明の1つの目的は、取り扱いの容易な形態の生ゴミ含有組成物の製造方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、臭気を発生しない生ゴミ含有組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は、生ゴミを簡単に再生・リサイクルする方法を鋭意検討した結果、生ゴミを破砕してペースト状とし、それにゲル化可能な高分子化合物を添加し、さらにゲル化剤を混合して、生ゴミを包含した状態で高分子化合物をゲル化させた生ゴミ含有ゲル状組成物とすることにより、寒天を崩したようなポロポロの形状となり、取り扱いが容易になると共に団粒構造を有するゲル組成物が形成できることを発見し、本発明の1つの態様に至った。
また、さらに、ゲル状組成物形成後に微生物分解によって発生する臭気成分を吸収できる成分を生ゴミ含有組成物中に混合することにより、臭気成分の揮散が低減できることを見出し、本発明のさらなる態様に至った。
【0010】
本発明は、第一の態様によると、生ゴミを破砕して生ゴミペーストを形成すること、ゲル化剤によってゲル化することが可能なアニオン性官能基を有する水溶性高分子化合物を前記生ゴミペーストに添加して混合すること、多価金属塩および多価金属酸化物からなる群より選ばれるゲル化剤を前記生ゴミペーストに添加して混合し、生ゴミペーストをゲル化させることを含む、生ゴミ含有ゲル状組成物の製造方法を提供する。
【0011】
本発明は、第二の態様によると、前記生ゴミペーストに、イオン交換性物質、還元性物質及び多孔性物質からなる群より選ばれる1種以上の臭気抑制剤を添加することをさらに含む、上記生ゴミ含有ゲル状組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記第一の態様による生ゴミ含有ゲル状組成物の製造方法では、アニオン性基を有する水溶性高分子化合物のアニオン性基が多価金属塩もしくは多価金属酸化物のカチオンと反応することで架橋構造を形成し、生ゴミを包含するゲル状組成物とすることができる。結果として、寒天を崩したようなポロポロの形状となり、取り扱いが容易になると共に団粒構造を有するゲル組成物が形成できる。
【0013】
本発明の上記第二の態様による生ゴミ含有ゲル状組成物の製造方法では、生ゴミの微生物分解により発生する臭気成分を吸収する成分を含むので、ゲル状組成物の形成後に、臭気を発生しない。
【0014】
現在まで取り扱いが困難であった一般生活生ゴミについて、本発明の方法により、ゲル状組成物の製造時間、すなわち、生ゴミ処理時間が極めて短かく、また、処理後の臭気も気にならない程度となる。さらに、処理の過程において、例えば生ゴミに含有される水分の排出などといった二次廃棄物の発生が全くないことも有利である。
【0015】
本発明の製造方法により得られたゲル状組成物は、用法の一つとして土壌と混合することにより用土として活用することができる。ゲル状組成物は有機資源を含み、十分な養分を含んでいるので、植物の生育に適する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下において、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。しかし、本発明は以下の具体的な形態に限定されるものと解釈されるべきでない。
【0017】
本発明の方法により処理される生ゴミは、一般的な生活から発生する食物残飯などの生ゴミであってよい。生ゴミは破砕機に導入され、その中で破砕されて、好ましくは径が1mm以下、望ましくは径が0.5mm以下の生ゴミペーストが形成される。ペーストは、通常、含水量が生ゴミの質量を基準として30%以上であり、より通常には70%以上である。含水量によっては、生ゴミペーストに吸水性ポリマーを添加することにより、ゲル状組成物の形成のための水溶性高分子化合物及びゲル化剤の使用量を低減することができる。吸水性ポリマーとしては、ポリアクリル酸塩系吸水性ポリマーを用いることができる。ポリアクリル酸塩系吸水性ポリマーとしては、三洋化成工業製(サンウェットIM−5000D)(商品名)、花王(株)製(ポイズSA−20)(商品名)、住友精化製アクアキープ(商品名)などが効果的に利用できる。添加量は、生ゴミの含水量に依存して決められるが、通常は、生ゴミ100重量部に対して5重量部以下の量が適当である。吸水性ポリマーの量が多すぎると、ゲル状組成物の製造が困難になることがある。
【0018】
得られたペーストは、アニオン性基を有する水溶性高分子化合物と混合される。このような水溶性高分子化合物はそのアニオン性基がゲル化剤の多価カチオンと反応することで架橋構造を形成することができる。このような水溶性高分子化合物としては、カルボキシ基をその構造内に有する水溶性高分子化合物やヒドロキシル基を有する水溶性高分子化合物などがあり、より具体的には、合成系の化合物であるカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル化デンプン、或いは、天然系のアルギン酸ナトリウム、グアーガムなどを挙げることができる。これらの化合物は少なくとも一種又はその組み合わせとして用いることができる。これらの化合物のうち、合成系の水溶性高分子化合物のほうが性状の変動が少ないので、方法の制御が容易であるから望ましい。カルボキシメチルセルロースとしては、特に限定はしないが、ダイセル工業製商品名HP−80(商品名)等が、ヒドロキシエチルセルロースとしてダイセル工業製SE−600(商品名)等が、カルボキシメチル化デンプンとして日澱化学工業製EX−3(商品名)等が効果的に使用できる。
【0019】
水溶性高分子化合物の添加量は、生ゴミ(生ゴミの含水量:30%以上(以下、同じ))100重量部に対して1〜10重量部が適当である。1重量部より添加量が少ないと生じたゲル状組成物が若干脆弱となり、又、10重量部を超えると水溶性高分子化合物の特性である粘度上昇、接着性過大となり混合工程が困難となることがある。
【0020】
本発明の方法では、上記水溶性高分子化合物を含む生ゴミペーストに対して、ゲル化剤を導入し、ペーストをゲル化させることで取り扱いが容易なゲル状組成物とする。ゲル化剤としては、水溶性高分子化合物のアニオン性基と反応性のカチオンを有する化合物である。具体的には、多価金属塩又は多価金属酸化物がこのようなゲル化剤として使用でき、さらに詳細には、硫酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、ポリ硫酸第二鉄などから選択できる。ゲル化剤は、少なくとも一種又はその組み合わせとして使用できる。
【0021】
ゲル化剤の添加量は、先に添加したゲル形成能を有する水溶性高分子化合物のアニオン性基と反応するのに十分な量であることが望ましい。すなわち、水溶性高分子化合物のアニオン性基の当量と同一の当量の金属カチオンを提供する量のゲル化剤を用いることが望ましい。より具体的には、生ゴミ100重量部に対して1〜10重量部のゲル化剤が添加・混合されるのが適当である。
【0022】
本発明により得られるゲル状組成物は、上述のとおり、植物生育のための用土として応用できる。このため、生ゴミペーストには、土壌改良剤としての作用を発揮することができる多孔性無機物質を添加することが好ましい。このような多孔性無機物質としては、例えば、ゼオライト、ベントナイト、珪藻土、石炭火力発電所より発生するクリンカアッシュ、フライアッシュ及びフライアッシュを改質してなる人工ゼオライト、活性炭、燻炭、木炭、竹炭からなる群より選ばれる少なくとも一種又はその組み合わせを用いることができる。また、このような多孔性無機物質は臭気抑制剤としての作用も有する。
【0023】
本発明の方法では、得られるゲル状組成物の臭気を抑制するために、臭気抑制成分を添加することが望ましい。ここで、臭気は、一般に、生ゴミの微生物による分解により生じるものである。生ゴミが微生物により捕食、さらに好気性、嫌気性微生物によって分解されることは承知のことであり、その分解過程において炭水化物、脂肪、蛋白質が分解し、カダベリン、アグマチン等のジアミン類、インドール、スカトール等のモノアミン酸、メルカプタン等のイオウ化合物、プロピオン酸、酪酸等を発生させ不快感を与えている。
代表的な臭気成分としては以下の化合物が挙げられる。
ジアミン類 :カダベリン、アグマチン、プトレシン、エチレンジアミン
モノアミン類 :フェニルエチルアミン、チラミン、インドールエチルアミン
ヒスタミン、インドール、スカトール、トリメチルアミン
含イオウ化合物:メルカプタン、硫化水素
有機酸 :プロピオン酸、酪酸、不飽和脂肪酸類
塩基 :アンモニア
【0024】
上記のうち、塩基(例えば、アンモニア)はカチオン性臭気成分であり、有機酸(例えば、プロピオン酸、脂肪酸等)はアニオン性臭気成分であり、ジアミン、モノアミン類はpHによってはカチオン性臭気成分となる場合もあるが、通常は非イオン性臭気成分である。
【0025】
カチオン性臭気成分に対してはカチオン交換能を有するアニオン性化合物が臭気抑制剤として使用される。より具体的には、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル化デンプンの群より選ばれた少なくとも一種又はその組み合わせであり、すなわち、上記のゲル形成能を有する水溶性高分子化合物はカチオン性臭気成分に対する臭気抑制剤としても作用する。
【0026】
カチオン性臭気抑制剤の添加量は好ましくは生ゴミ100重量部に対して1〜10重量部であることが適当である。1重量部以下の混合量では、場合によっては臭気成分の揮散防止効果が十分でなく、又、10重量部を超えると形成されたゲル状組成物が十分形状を維持できなくなる傾向があり好ましくない。
【0027】
アニオン性臭気成分に対してはアニオン交換能を有するカチオン性化合物が臭気抑制剤として使用される。より具体的には、第4級アンモニウム基を有するポリアクリル系高分子凝集剤、第4級アンモニウム基を有するポリメタクリル系高分子凝集剤及びポリアミジン系高分子凝集剤として入手可能な化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種又はその組み合わせである。第4級アンモニウム基を有するポリメタクリル系高分子凝集剤としては例えば、三洋化成工業製サンフロックC−009P(商品名)等が、第4級アンモニウム基を有するポリアクリル系高分子凝集剤としては三洋化成工業製C−6860P(商品名)等が、及びポリアミジン系高分子凝集剤としては第一工業製薬製ハイセットC−2371(商品名)、ハイモ製ハイモロックZ−700(商品名)等が効果的に使用できる。
【0028】
また、アニオン交換能を有するカチオン性高分子化合物は、臭気成分捕捉能に加えて、ゲル形成能を有する水溶性高分子化合物と一部反応し、前記ゲル化剤によるゲル状組成物形成をより強固にする性能をも有している。カチオン性高分子化合物は比較的分子が大きいのでアルミニウムイオンなどの多価金属イオン程にはゲル形成は容易ではないと思われるが、分子内に多数のカチオン基(第4級アンモニウム基等)を有し、カルボキシメチルセルロース等のカルボキシ基と分子間架橋反応を起こし、ゲル構造形成に寄与していると考えられる。さらに、アニオン交換能を有するカチオン性高分子化合物である第4級アンモニウム基を有するポリ(メタ)アクリル系等のカチオン性高分子凝集剤はゼオライト等の多孔性物質と反応して団粒構造を付与することができる。
【0029】
形成されるゲル状組成物の構造はカチオン性高分子化合物(凝集剤)の作用により通気性、保水性を有した団粒構造(一次粒子が集合して2次粒子を作り、さらに順次集合を重ねて高次の粒団を形成した土壌の配列状態を言う。)を形成していると考えられる。本発明の方法で混合・撹拌工程を経た組成物は、数ミリから10ミリ程度の団粒構造を持ち、細かいゲル構造が集合、またはゲル構造に覆われた、所謂、ポロポロ状の粒団となっている。この形成されたゲル状組成物は、多数の大小様々な空隙を有し、また、包水ゲル構造である。さらに、微生物の餌となりうる成分が混合されているため、多様な微生物の生息に好適な住処となっている。尚、ここで言う「微生物」とは微小動物、細菌、糸状菌、放線菌等の広義の微生物の総称である。このような団粒構造は自然の土壌にみられる形態に類似しており、植物の生育に良好な環境を与える。
【0030】
アニオン性臭気抑制剤の添加量は好ましくは生ゴミ100重量部に対して0.1〜3重量部であることが適当であり、0.1重量部以下の添加量ではアニオン性臭気成分、例えばプロピオン酸等の有機酸成分が発生しやすい生ゴミを原料とする場合には臭気成分を抑制するには不十分となり、また、添加量が3重量部を超えると過剰添加となり、形成されたゲル組成物が粘凋で、取り扱いが困難となる傾向があるので好ましくない。
【0031】
非イオン性臭気成分に対しては多孔性無機物質などの吸着性材料が使用され、例えば、多孔性無機物質としてゼオライト、ベントナイト、珪藻土、石炭火力発電所より発生するクリンカアッシュ、フライアッシュ及びフライアッシュを改質してなる人工ゼオライト、活性炭、燻炭、木炭、竹炭からなる群より選ばれる少なくとも一種又はその組み合わせを用いることができる。これらは、得られるゲル状組成物を用土として応用する際の土壌改良剤としての作用も有する。
【0032】
非イオン性臭気抑制剤の添加量は生ゴミ100重量部に対して1〜10重量部であることが適当である。このような量であれば、臭気抑制作用を十分に発揮するとともに、土壌改良剤として用いる場合にも十分である。
【0033】
硫化水素などの含イオウ化合物に対しては、金属鉄などの還元性物質が臭気抑制剤として使用され、このような還元性物質を硫黄分と反応させることで、硫化鉄などの形態で硫黄を固定させ、臭気抑制を行なう。硫化水素などの含イオウ化合物に対しては、特に限定はなく還元性能を有する物質であれば何を用いてもよいが、価格、入手の容易さ等の点より金属鉄が望ましい。このような還元性物質による臭気抑制剤の添加量は好ましくは生ゴミ100重量部に対して0.1〜5重量部である。0.1重量部以下の添加量では、硫化水素発生源を多く含む成分、例えば、魚肉、肉などを多く含む生ゴミでは臭気抑制が不充分な場合があり、又、5重量部以上添加しても、過剰添加となり、効果増大は望めないからである。
【0034】
生ゴミの性状は様々であり、カチオン性臭気成分、アニオン性臭気成分及び非イオン性臭気成分の組み合わせ又はその全てが発散されることが多い。このため、望ましくは、異なる種類の臭気抑制剤を組み合わせて用いることが効果的である。
【0035】
尚、上記において、カチオン性、アニオン性及び非イオン性臭気成分の抑制剤として適切な材料を列記しているが、例示された抑制剤の効果は、必ずしも、その分類された臭気の抑制のみに限定されない。例えば、ゼオライトは多孔性の吸着性物質であって非イオン性臭気成分を吸着できる性能を有するが、同時に、アニオン性の官能基を有しているためにカチオン性臭気成分をイオン交換吸収できる性能をも有し、非イオン性臭気成分及びカチオン性臭気成分の両方を抑制することができる。
【0036】
本発明において、ゲル形成後のゲル状組成物の形状を維持するために強化成分として繊維成分を導入することができる。添加される繊維成分としては、特に限定はないが、ヤシ繊維、製紙工場排水スラッジ、石膏ボードよりの回収紙、古紙叩解紙等用いることができる。添加量は好ましくは生ゴミ100重量部に対して1〜10重量部である。1重量部以下の添加ではつなぎ材としての効果が十分でなく、又、10重量部以上では形成されたゲル状組成物が大きく固まる傾向が出てくるので望ましくないことがある。
【0037】
さらに、本発明において、得られるゲル状組成物の生ゴミの概観を隠蔽するために、着色剤を添加することもできる。適当な着色剤としては、酸化鉄が挙げられる。酸化鉄は、ゲル状組成物に赤土のような概観を付与し、取り扱い時に不快感を与えない。このような着色剤はごく少量で添加すればよく、例えば、生ゴミ100重量部当たりに0.01〜1重量部の量で十分である。
【0038】
さらに、本発明の方法により得られるゲル状組成物は、用土、例えば、植栽用用土、法面緑化工法での植生基盤材、園芸用用土、土壌改良材等に利用することができる。生ゴミを包含するゲル状組成物を用土に適用する場合は、好ましくは、植物生育に必須である土壌成分を補うため土壌成分を添加することができる。混合される土壌は特に限定はないが、通常の田畑土、建設・土木工事等で発生するローム、マサ土、黒ぼく土等が好適に使用できる。
【0039】
生ゴミを包含するゲル状組成物との混合比は特に限定はないが、ゲル状組成物:土壌成分=1:0.5〜2(容積比)の範囲が植物生育上好ましい。
【0040】
本発明の方法の工程について以下に説明する。本発明の方法は、
(1)生ゴミを破砕して生ゴミペーストを形成すること、
(2)ゲル化剤によってゲル化することが可能なアニオン性官能基を有する水溶性高分子化合物を前記ペーストに添加して混合すること、
(3)多価金属塩および多価金属酸化物からなる群より選ばれるゲル化剤を前記ペーストに添加して混合し、生ゴミのペーストをゲル化させること
の工程を含む。
【0041】
また、本発明の方法では、上述のとおり、場合により、(4)吸水性ポリマーを添加すること、(5)臭気抑制剤を添加すること、(6)強化成分として繊維成分を添加すること、の工程を含むことができる。
【0042】
工程(4):吸水性ポリマーの添加、工程(5):臭気抑制剤の添加、及び、工程(6):強化成分としての繊維成分の添加は、工程(3)ゲル化工程の前又はゲル化工程の際のいずれの段階で行なってもよい。しかし、好ましくは、生ゴミを十分に破砕し、ペースト化した後、ゲル化工程の前に、水溶性高分子化合物、及び、必要に応じて、吸水性ポリマー、土壌改良剤、繊維成分及び着色剤を添加して攪拌して均一なペーストを得ることが望ましい。ただし、臭気抑制剤は、ゲル状組成物の表面付近に存在することが好ましいので、ゲル化剤とともにペーストに添加されることが好ましい。臭気成分は一般に水分の蒸発とともに発散されるが、臭気抑制剤をゲル化剤とともに添加すれば、ゲル化反応によりポロポロの粒状物となったゲル状組成物の表面近傍に臭気抑制剤が分布し、臭気抑制効果が高くなるからである。なお、多孔性無機物質は非イオン性臭気抑制剤として作用するものであるが、土壌改良剤として作用させるためには、ゲル状組成物中に均一に存在することが好ましく、また、均一に分散された状態でも非イオン性臭気成分に対する臭気抑制作用が十分発揮されれる。したがって、多孔性無機物質はゲル化剤を添加する前にペースト中に添加することが好ましい。
【0043】
上述のように、ペーストをゲル化剤によりゲル化して生ゴミ含有ゲル状組成物が得られる。得られたゲル状組成物には、土壌成分を混合して、植物生育用の培土とすることができる。
【0044】
より具体的には、以下のような装置を用いて本発明の方法を実施することができる。
図1は本発明のゲル状組成物の製造方法において使用可能な破砕・攪拌装置の概略図を示している。破砕・攪拌装置100は、生ゴミGの破砕を行ない、ペースト化を行なう破砕容器(例えば、一次破砕容器10及び二次破砕容器20)及び攪拌・ゲル化反応を行なう攪拌容器30を具備する。まず、一次破砕容器10は生ゴミGの粗い破砕を行ない、二次破砕容器20は微細な径にまで破砕を行なう。一次破砕容器10には生ゴミGを貯留するホッパー1aが具備されており、生ゴミGは最初にホッパー1aに導入される。生ゴミGはホッパー1aを介して一次破砕容器10に導入される。一次破砕容器10はスクリューベルトコンベア2とブレード3とを有する。生ゴミGはスクリューベルトコンベア2において混練されながら移動し、出口付近に備えられたブレード3で粗く破砕される。次に、生ゴミGは二次破砕容器20中に導入される。二次破砕容器20において、垂直軸を中心に相対的に回転しているグラインダ要素(4a,4b)からなる回転式グラインダ4によって生ゴミペーストはすり潰され、さらに破砕される。一般に、グラインダ要素4aは回転し、グラインダ要素4bは固定されている。二次破砕容器20において、生ゴミペーストは他の成分A1(たとえば、吸水性ポリマー、ゲル形成能を有する水溶性高分子化合物、土壌改良剤、繊維成分、着色剤など)と混合されることができる。これらの他の成分A1はホッパー1bを介して二次破砕容器20に導入されるようになっている。二次破砕容器20で生ゴミペーストは1mm以下の径にまで破砕される。出てきたペーストは、次に、攪拌容器30に導入され、他の成分A2(たとえば、ゲル化剤、臭気抑制剤など)と混合される。攪拌容器30には回転シャフト5を有し、シャフト5には攪拌翼5aが装備されており、シャフト5の回転時に攪拌・混合を行なうようになっている。攪拌容器30はホッパー1cを有し、それを介して他の成分A2を添加することができるようになっている。また、上記ホッパー1bも攪拌容器30に接続されており、このため、生ゴミペースト以外の他のすべての成分A1及びA2は攪拌容器30で添加することもできるようになっている。ゲル化剤を添加した後に、ゲル化反応が進行し、ポロポロの粒状物として生ゴミ含有ゲル状組成物Pが出口6から排出される。排出された組成物は必要に応じて、土壌成分と混合されて培土とされてもよい。
【0045】
一次破砕容器10としては、例えば、(株)林鉄工所社製52K−3G型粉砕機、又は、増幸産業(株)社製MKCM−5型粉砕を用いることができ、二次破砕容器20としては、例えば増幸産業(株)社製MKCA6−3型粉砕機を用いることができる。破砕の前又は後に、ゲル形成能を有する水溶性高分子化合物、多孔性物質及び形成されるゲル状組成物の形状を保持するためのつなぎ材である繊維成分を混合することができる。
また、攪拌容器30は、例えば増幸産業(株)社製MK−4型撹拌機を用いることができ、ここでゲル化剤、アニオン性臭気抑制剤及び含イオウ化合物臭気抑制剤を添加・混合することができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例にて本発明を具体的に説明するが、以下の実施例によってその範囲を制約されるものではない。
実施例1
一般家庭より排出された生ゴミ(内容物の比率は、野菜くず類50%程度、魚類調理屑10%程度、調理済残渣20%程度、その他20%であった)1,000gを、あらかじめ粉砕してその径を1mmとしてペースト化し、カルボキシメチルセルロース(ダイセル工業製HP−80(商品名))50g、石膏ボードに由来する回収紙50g、ベントナイト50g、酸化鉄1gを合わせたものを混合し、撹拌した。
【0047】
上記の混合物を十分に撹拌し、硫酸アルミニウム50g、ポリアミジン系高分子凝集剤(第一工業製薬製ハイセットC−2371(商品名))5g、還元鉄5gを混合してさらに撹拌した。充分にゲル化するまで撹拌し、全体がポロポロの状態になったところで完了した。なお、生ゴミの粉砕から、ゲル化完了までの所要時間はおよそ15分程度であった。
【0048】
ここで、生ゴミ含有ゲル状組成物を用いた試験を行い、該ゲル状組成物の有効性を確認した。供試体は、生ゴミ含有ゲル状組成物、完熟樹皮堆肥、対照として水のみの3種類を用意し、それぞれの供試体を、30gビーカーにとり、300ccの水をいれ、60℃で3時間抽出した溶液を採取した。採取した溶液を10ccずつ、ろ紙を敷いたシャーレーに入れ、コマツナの種子30粒を均等に並べた。このシャーレーを25℃で1時間恒温室におき、発芽したコマツナの地上部、地下部の成長量を測定した。
【0049】
試験の結果を図2に示す。本試験により、完熟樹皮堆肥と比較しても遜色のない効果を本発明の方法により得られたゲル状組成物が有していることが証明された。
【0050】
実施例2
実施例1と同様の方法で得られたゲル状組成物を用土として用いるために、黒ぼく土と1:1の割合(容積比)で混合し、コマツナの種子を播き、成立本数を確認した。なお、比較のため、黒土のみでの発芽率も同様の条件で確認した。
試験結果を図3に示す。本試験により、本発明により生ゴミ含有ゲル状組成物が、用土と混合されることで、培土として有効に活用できることが分かった。
【0051】
本発明の方法で生ゴミ含有ゲル状組成物を得る場合には、従来の生ゴミ処理方法に比較して次の効果がある。
1.処理にかかる時間、手間が飛躍的に省ける。
2.処理の際、乾燥による排気や、脱水による排水など、二次的な排出物が一切発生しない。
3.処理された生ゴミ含有ゲル状組成物は、用土と混合して、培土として活用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の方法で使用可能な破砕・攪拌装置の概略図である。
【図2】コマツナの成長試験の結果を示すグラフである。
【図3】コマツナの発芽試験の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0053】
100 破砕・攪拌装置
10 一次破砕容器
20 二次破砕容器
30 攪拌容器
1a,1b,1c ホッパー
3 ブレード
4 回転式グラインダ
5 回転シャフト
5a 攪拌翼
6 出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ゴミを破砕して生ゴミペーストを形成すること、ゲル化剤によってゲル化することが可能なアニオン性官能基を有する水溶性高分子化合物を前記生ゴミペーストに添加して混合すること、多価金属塩および多価金属酸化物からなる群より選ばれるゲル化剤を前記生ゴミペーストに添加して混合し、生ゴミペーストをゲル化させることを含む、生ゴミ含有ゲル状組成物の製造方法。
【請求項2】
前記生ゴミペーストに、イオン交換性物質、還元性物質及び多孔性物質からなる群より選ばれる1種以上の臭気抑制剤を添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生ゴミペーストに吸水性ポリマーをさらに混合する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記吸水性ポリマーはポリアクリル酸塩系吸収性ポリマーである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記生ゴミペーストに、多孔性無機物質を添加して、植物生育用土壌改良作用を付与する、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記水溶性高分子化合物はカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル化デンプン及びそれらの混合物からなる群より選ばれ、前記ゲル化剤は硫酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、ポリ硫酸第二鉄及びそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記生ゴミペーストのゴミの径は1mm以下である、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
形成される生ゴミ含有ゲル状組成物の形状を保持するための強化成分として、繊維成分をさらに添加する、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の方法により得られる生ゴミ含有ゲル状組成物。
【請求項10】
請求項9記載の生ゴミ含有ゲル状組成物と、土壌成分とを混合してなる、培土。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−245043(P2007−245043A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73988(P2006−73988)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(591028946)株式会社 彩光 (3)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】