説明

生タイヤの成型方法およびタイヤ成型システム

【課題】作業工程の入れ替え等を簡単かつ容易にし、トラブルの発生に対して、成型ドラムを、タイヤの成型移動域から簡易・迅速に取り出すとともに、その域内へ再度入れ込むことも可能とし、そしてさらには、サイクルタイムの長短にかかわらず、作業ステーションの増設をも簡易に行うことができる生タイヤの成型方法を提供する。
【解決手段】停止状態の成型ドラムBD上に所定のタイヤ構成部材を組付ける複数の作業ステーションS1〜S7に成型ドラムBDを移動させながらその成型ドラム上に生タイヤGTを成型するに当り、複数台の成型ドラムBDのそれぞれを、成型ドラム側への生産指令に従って、平坦面上で、所要の作業ステーションに所要の順序で、相互に独立させて移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定の位置に配設した複数の固定作業ステーションで、剛性コアとすることもできる成型ドラム上に、所定のタイヤ構成部材を順次に組付けて生タイヤを成型する生タイヤの成型方法および、それに用いるタイヤ成型システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
成型ドラムをそれぞれの単能作業ステーションに、たとえば、所定のまたは所要の順序で移動させて、その成型ドラム上に、所定のタイヤ構成部材を所定の順序で組付けて生タイヤを成型する技術は従来から各種のものが提案されており、出願人も先に、特願2002−341275号としてこの種のタイヤ成型システムを提案している。
【0003】
このタイヤ成型システムは、成型ドラムを支持した台車を、床面等に敷設したレール上で移動させて、そのレールに沿わせて配設したそれぞれの作業ステーションでタイヤ構成部材の組付けを順次に行うことを前提とし、円弧状湾曲部分を含むほぼ長円形状等をなすエンドレスのレール上で、成型ドラムを、各作業ステーションに高い精度で位置決めすることを目的としたものである。
【0004】
このスシテムは、成型ドラム上にそれぞれのタイヤ構成部材の組付けを行うそれぞれの作業ステーションと、成型ドラムを支持して、その成型ドラムをそれぞれの作業ステーションに移動させる成型台車の、所定の経路上での移動を案内する台車ガイド手段とを具えるものであって、台車ガイド手段を、相互に平行に敷設された内外二本の無端レールおよび、成型台車に設けられ、ローラもしくはボールによって各無端レールの少なくとも両側面上を転動して、無端レールの延在方向と直交する方向での台車位置を規制する車輪を含むものとし、各無端レールを、少なくとも、一の直線状部分と一の円弧状部分とで構成して、それらの両部分を滑らかに連続させるとともに、円弧状部分のレール幅を、その円弧状部分の曲率半径に応じた量だけ、直線状部分のレール幅より狭幅としてなるものである。
【0005】
このようなタイヤ成型システムでは、無端レール上の複数台の成型台車のそれぞれを、複数の作業ステーションにシーケンシャル移動させて、それらの各作業ステーションで、それぞれの成型ドラムに対して異なった作業を同時に行うことで、簡単な機構の下で、所期した通りの生タイヤを、高い能率で成型することができる。
【特許文献1】特願2002−341275
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、このような提案技術にあっては、たとえば、図5に一部を略線平面図で示すように、成型台車a、ひいては、成型ドラムbを、無端レールc上でそれぞれの作業ステーション、図に示すところでは、最内層となる第1ベルト層の組付けステーションd、第2ベルト層の組付けステーションe、ベルト層間ゴムの組付けステーションf、第3ベルト層の組付けステーションg、第4ベルト層の組付けステーションh、トレッドアンダークッションゴムの組付けステーションi、ベーストレッドゴムの組付けステーションjおよび、キャップトレッドゴムの組付けステーションkに順送りすることが必要であって、作業工程の入れ替え等に対するフレキシビリティが低いため、タイヤ構造の切り替え、構造の異なる複数種類のタイヤの混流成型等が困難であり、また、成型不良等のトラブルの発生に対しては、分岐路の形成なしには成型ドラムを軌道外へ取り出すことができないという不都合もあった。
【0007】
しかもこの提案技術では、成型システムの構築に当って、それぞれの作業ステーションの、一工程に要する時間であるサイクルタイムのバランスを考慮して設計を行っているので、既設の成型システムの能力改善等を目的として、それに、サイクルタイムの異なる、とくにはサイクルタイムの長い作業ステーションを増設することが難しいという問題もあった。
【0008】
この発明は、提案技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題としてなされたものであり、それの目的とするところは、成型ドラムのための特別の走行軌道の敷設等を不要とすることで、作業工程の入れ替え等を簡単かつ容易にし、また、トラブルの発生に対して、成型ドラムを、タイヤの成型移動域から簡単・迅速に取り出すとともに、その域内へ再度入れ込むことも可能とし、そしてさらには、サイクルタイムの長短にかかわらず、作業ステーションの追加をも簡単に行うことができる生タイヤの成型方法および、それに用いるタイヤ成型システムを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の、生タイヤの成型方法は、停止姿勢の、剛性コアとすることもできる成型ドラム上に所定のタイヤ構成部材を組付ける複数の作業ステーションに成型ドラムを移動させながらその成型ドラム上に生タイヤを成型するに当って、複数台の成型ドラムのそれぞれを、成型ドラム側への生産指令に従って、平坦面上で、たとえば誘導走行車の作用に基いて、所要の作業ステーションに所要の順序で、相互に独立させて移動させるにある。
【0010】
この方法において、好ましくは、成型ドラムの移動経路を、生タイヤの構造に応じて変化させる。
そして、このような場合は、成型ドラムを、特定の作業ステーションをバイパスさせて移動させること、特定の作業ステーションで、一の成型ドラム上に複数回にわたって、同種もしくは異種のタイヤ構成部材を組付けること等ができる。
【0011】
また好ましくは、それぞれの作業ステーションの相互間での、サイクルタイムのバランスに応じて成型ドラムの移動経路を変化させる。
なお、このサイクルタイムとの関連において、特定の作業ステーションの一サイクルタイム内で、成型ドラム上に複数種類のタイヤ構成部材をそれぞれ別個にまたは同時に組付けることもできる。
【0012】
さらにこの方法では、成型不良の生じた成型ドラムを、所要の位置で、それの成型移動域の外は排出することが好ましく、この場合、成型不良を修正、改修等をした後の成型ドラムを、再び成型移動域内へ復帰させることが好ましい。
【0013】
この発明のタイヤ成型システムは、停止姿勢の成型ドラム上に所定のタイヤ構成部材を組付ける複数の作業ステーションと、成型ドラムを支持してその成型ドラムを所要に応じた作業ステーションに移動させる走行台車とを具えるものであって、走行台車を、生産指令とすることができる外部指令に応じて、所定の作業ステーションの作業位置まで成型ドラムを移動させてそこに停止させる、平坦面上を走行する誘導走行車としたものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明の成型方法では、たとえば、平坦面上で走行する、いわゆるAGVとすることができる誘導走行車に搭載した成型ドラムのそれぞれを、生産指令、これもたとえば、製品タイヤの生産計画との関連の下で、寸法、構造等をも含む、どのような種類の生タイヤを、成型ドラム上に、各種の作業ステーションをどのような順序で辿って成型するか等についての指令に従って、相互に独立に移動させることにより、それぞれの成型ドラムに対する、作業工程の相対的な入れ替え等を、平坦面上で、高い自由度をもって行わせることができるので、成型されるタイヤ構造の切替えおよび変更等ならびに、相互に構造の異なるそれぞれのタイヤの混流成型等に簡単に対処することができる。
【0015】
またここでは、成型途中のタイヤの成型不良、成型ドラムそれ自体の不具合等のトラブルが発生したときは、成型ドラムを、誘導走行車の作用下で、それの成型移動域の外側の最適位置へ、これも簡易にかつ迅速に取り出すことができ、この一方で、修正、補修、改修等を終えた成型ドラムの、成型移動域内への再度の入れ込みもまた簡易・迅速に行うことができる。
【0016】
しかもここでは、それぞれの作業ステーションのサイクルタイムの長短に対しては成型ドラムの移動経路の調整、選択等によって容易に対処することができるので、成型システムの能力改善等を目的とする作業ステーションの増設等に柔軟に対応することが可能となる。
【0017】
ところで、この場合の、誘導走行車への生産指令の伝達は、電磁波、レーザー光線等によって行うことができる他、床面等に敷設した誘電線に発生させた磁界その他によって行うことができる。
【0018】
かくしてここでは、成型ドラムの移動経路を、無軌道の平坦面上を走行する誘導走行車への指令の伝達に基き、生タイヤの構造に応じて、迅速かつ円滑にかつ常に適応に変化させることができる。
【0019】
従って、タイヤの構造に応じて、少なくとも一台の成型ドラムを、特定の作業ステーションを選択的にバイパスさせて移動させることもでき、これにより、作業能率を一層高めることができる。
【0020】
これをいいかえれば、提案技術のように、成型ドラムが、レール等の軌道に案内されて各個の作業ステーションを順次に通過することが必須となる場合には、軌道上の複数台の成型ドラムは、それぞれの作業ステーションの作業工程で要する工程時間の最大時間であるタクトタイムを基準として、揃って一斉に、次の作業ステーションに移動されることになるので、一もしくは複数台の成型ドラムを、特定の作業ステーションに対してバイパスさせることは実質的に不可能となり、この結果として、バイパスが可能であるタイヤも、不可能であるタイヤも成型時間はともに同一となるため、作業能率の向上は望み得ない。
【0021】
なおここで、特定の作業ステーションで、一の成型ドラムに複数回にわたってタイヤ構成部材、たとえば、ともに同一種類のゴムからなるベルト層間ゴムとトレッドアンダークッションゴムとを二回にわたって組付ける場合には、作業ステーションの総数を低減できる利点がある。
【0022】
そして、それぞれの作業ステーションの相互間での、サイクルタイムのアンバランスに応じて成型ドラムの移動経路を変化させる場合、たとえば、成型ドラム上に、一本もしくは複数本のプライコードをその全周にわたって貼着させてカーカスプライを形成するときのように、サイクルタイムが他の作業ステーションでのそれよりとくに長くなる作業ステーションについて、同一の作業を行う作業ステーションを複数配設して、成型ドラムのそれぞれを、相互の移動経路を変化させて互いに異なる作業ステーションに順次に搬入して、それぞれの成型ドラム上にともに同一のカーカスプライを形成する場合には、全体として、カーカスプライを形成するに要するサイクルタイムのアンバランスを有効に吸収して作業能率を有利に向上させることができる。
【0023】
さらに、特定の作業ステーションの一のサイクルタイム内で、成型ドラム上に、複数種類のタイヤ構成部材を、順次にまたは同時に組付ける場合、たとえば、トラック・バス用の重荷重用タイヤにおける外層側の二層のベルト層である第3ベルト層および第4ベルト層の、材質および、ベルト層コードの延在角度をともに同一にして、それらのそれぞれの層を順次にまたは同時に組付ける場合には、サイクルタイムのバランスが大きく崩れない限りにおいて、作業ステーションを低減させることができ、また、作業能率をより一層向上させることができる。
【0024】
ところで、成型不良等を生じた成型ドラムを、それの成型移動域の外に排除する場合には、そのままの成型を継続する場合に比して、タイヤ構成部材および時間の無駄な消費を防止できる利点があり、また、成型移動域外で成型不良を修正した後の成型ドラムを、再び成型移動域内に復帰させる場合には、タイヤ構成部材のその後の組付けを継続することで、既に組付けたタイヤ構成部材および、それの組付けに要した時間の有効利用を図ることができる利点がある。
【0025】
この発明のタイヤ成型システムでは、成型ドラムを搭載した誘導走行車を、電磁波等を介してそこへ伝達される外部指令に応じて、所定の作業ステーションの作業位置まで成型ドラムを移動させてそこに停止させ、そしてそこでの所定の作業の終了後に、その走行車を、上記の外部指令の下で、次の所定のステーションへ同様にして移動させ、これらのことを、生タイヤの成型が完了するまで、それぞれの成型ドラムを支持するそれぞれの誘導走行車について繰返し行うことで、先に述べた成型方法を、常に適正かつ確実に、しかも簡単かつ容易に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1はこの発明に係るタイヤ成型システムの実施形態を概念的に示す略線斜視図であり、図中S1〜S7は、作業能率を考慮して、床面上の所定位置にレイアウトしたそれぞれの作業ステーションを示し、これらの各作業ステーションS1〜S7に据付け固定した各装置D1〜D7は、後に述べる移動成型ドラム上に、それの停止姿勢の下で、直接的もしくは間接的に、多くは間接的に、特定種類のタイヤ構成部材を組付けるべく機能する。
【0027】
ここで、作業ステーションS1〜S7の配設領域Aは、走行台車としての誘導走行車AGVに搭載支持した、剛性コアとすることもできる成型ドラムBDが、生タイヤの成型に当って移動される、成型ドラムBDの成型移動域にも相当し、ここでは、この成型移動域A内に、誘導走行車AGVと成型ドラムBDとの組立体の複数台を配置する。
【0028】
ここにおいて、各成型ドラムBD、直接的には誘導走行車AGVは、生産指令とすることができる外部指令の、電磁波、レーザ光線等を介した、または、誘電線に発生させた磁界その他を介したそこへの伝達に基いて、平坦面上を走行して成型ドラムBDを所定の作業ステーションS1〜S7の作業位置まで移動させて、そこに位置決め停止させるべく機能し、このことを、各成型ドラムBD上への生タイヤの成型が完了するまで繰り返す。
【0029】
ところで、誘導走行車AGVに対する成型ドラムBDの搭載支持は、図2に側面図で概略を例示するように、全方向対応型のたとえば自走式の無人搬送車とすることができる誘導走行車AGVに、成型ドラムBDの基部を固定するとともに、その成型ドラムBDの先端成型部PBの回転駆動のために、ドラム軸DSをその誘導走行車AGVに駆動連結することにより行うことができる。
【0030】
またここで、誘導走行車AGVに対する外部作動指令は、たとえば、製品タイヤの生産計画等に則って、成型ドラムBDを、複数の作業ステーションS1〜S7のそれぞれをどのような順序で辿って移動させて、その成型ドラムBD上に、どのような種類の生タイヤを成型するかについての指令とすることができる。
【0031】
なお、図1に示すところにおいて、誘導走行車AGVと成型ドラムBDとの組立体Bは、成型不良の発生した成型ドラムBDの、成型移動域Aの外側への排除例を示し、組立体Cは、作業ステーションS6のバイパス例を示し、そして、組立体Dは、二つの作業ステーションS6,S7をバイパスして、完成した生タイヤGTを成型移動域A外は搬出する例を示す。一方、組立体Eは、全ての作業ステーションS1〜S7を辿って完成された生タイヤGTの搬出例を示す。
【0032】
このようなタイヤ成型システムによれば、それぞれの誘導走行車AGVへの生産指令に基いて、複数台の成型ドラムBDのそれぞれを、平坦面上で、所要の作業ステーションS1〜S7、ひいては、所要の装置D1〜D7に、所要の順序で、相互に独立させて移動させることができ、このような移動の後は、各成型ドラムBDの停止下で、各装置D1〜D7をもって、成型ドラムBD上、具体的にはそれの先端成型部PB上に、多くはそれの回動変位下で特定のタイヤ構成部材を組付け、その後は、成型ドラムBDの同様の移動およびタイヤ構成部材の組付けを所要の順序で繰返すことにより、各成型ドラムBD上に、同一種類のまたは相互に異なる種類の、所期した通りの生タイヤを成型することができる。
【0033】
またここでは、成型ドラムBDの移動を、平坦面上での誘導走行車AGVの自由な走行に基いて行わせることができるので、生タイヤの所要の構造に応じて成型ドラムBDの移動経路を高い自由度をもって簡易に変化させることができ、それ故に、成型ドラムBDを、特定の作業ステーションをバイパスさせて移動させることおよび、成型ドラムBDの、それぞれの作業ステーションへの立寄り順序を変更することもまた容易である。
【0034】
ところで、図5に例示するそれぞれの作業工程を順次に辿って生タイヤを成型する場合にあって、ベルト層間ゴムとトレッドアンダークッションゴムとを同一のゴムとしたときは、それらのそれぞれのゴムを一の作業ステーションにて組付けることも可能となることで、移動の自由な成型ドラムBDに対し、それぞれの作業ステーションを図3に略線平面図で示すような配置構成とすることが可能となり、これによれば、各成型ドラムBDを、相互に隣接する第1および第2の作業ステーション1、2へ順次に移動させて、それらのステーション1、2で、成型ドラムBD上に第1ベルト層および第2ベルト層のそれぞれを組付けた後、その成型ドラムBDを第3の作業ステーション3へ移動させ、そこでベルト層間ゴムを組付け、次いで、相互に隣接する第4および第5の作業ステーション4、5で、第3ベルト層および第4ベルト層を順次に組付け、その後、成型ドラムBDを再び第3作業ステーション3へ移動させて、そこで、トレッドアンダークッションゴムを組付けることにより、その第3作業ステーション3では、一の成型ドラムBD上に二回にわたって異なった種類のタイヤ構成部材を組付けることができる。
【0035】
しかる後は、成型ドラムBDを、第6および第7の作業ステーション6,7を順次に辿って移動させて、トレッドアンダークッションゴムの外周側に、ベーストレッドゴムおよびキャップトレッドゴムのそれぞれが組付けることで、所要の生タイヤGTの成型が完了することになる。
【0036】
従ってここでは、図5に示す場合に比し、作業ステーションの設置数を減らすことができる。
ところで、上述したような共用の作業ステーションでは、タイヤの構造に応じて、同種のタイヤ構成部材を二回以上の複数回にわたって組付けることも可能である。
【0037】
なお図に示すような作業ステーションの下で、ベルトが三層のベルト層からなる生タイヤを成型する場合には、たとえば第5作業ステーション5をバイパスさせて成型ドラムBDを移動させることができ、この場合には成型ドラムBDの無駄な滞留に起因する成型時間の延長を有効に防止することができる。
【0038】
そしてさらに、図3に示すところにおいて、組付けられる第3ベルト層および第4ベルト層の材質を相互に同じにするとともに、ベルト層コードの延在角度をもまた等しくした場合には、たとえば第5もしくは第6の作業ステーションのいずれかで、一のサイクルタイム内に、それらの両層を順次にまたは同時に組付けることもでき、これによれば、他方の作業ステーションの省略が可能となり、また、生タイヤの成型時間を、その他方の作業ステーションでのサイクルタイムとほぼ対応する時間だけ短縮することが可能となる。
【0039】
また、生タイヤを上述したようにして成型するに当って、生タイヤの中間品に成型不良が発生した場合、成型ドラムBDその他に故障が生じた場合等には、対応する成型ドラムBDを、図4に例示するように、成型移動域Aの外側に一旦排除し、そして、成型不良に対する修正、成型ドラムBD等の修理が可能なものについてはそれを行った後に、再び成型移動域A内の次の作業ステーション位置に復帰させることで、タイヤ構成部材のそれ以降の組付けを継続することができ、これによれば、既設のタイヤ構成部材および、それの組付け時間等の無駄を省くことができる。
【0040】
以上この発明を図面に示すところに基いて説明したが、指令系側または誘導走行車側に自己学習機能をもたせて、たとえば、カーカスプライのエンドカバーの有無、軟質ビードフィラゴムの有無等のように、組付けるタイヤ構成部材の数が増減する場合、ゴムチェーファがサイドゴムの外側に位置するものと内側に位置するもの、インナーライナゴムとゴムチェーファとの先貼り、後貼り等のように、部材の組付け順序が逆転する場合、または、使用材料や種類が異なる異種タイヤの、各種の切替えを伴う混流生産の場合等に、切替えのタイミング、回数等の他、成型ドラムBDの移動経路等を変更し、その結果を自己学習させて、次回の変更を最適制御し、以後同様の自己学習および最適制御を繰り返し行うことによって、生タイヤの成型効率の一層の向上をもたらし、また、総生産量および物流在庫が最適となるように成型ドラムBDを移動させることができる。
【0041】
そしてこれらのことは、カーカスプライの組付けステーション、ベルト層の組付けステーション等の、同一機能のステーションを複数設け、それらの稼動数を選択する場合等についてもまた同様である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明に係るタイヤ成型システムの実施形態を概念的に示す略線斜視図である。
【図2】成型ドラムの、誘導走行車への搭載支持例を示す略線斜視図である。
【図3】図1に示すタイヤ成型システムの使用例を示す略線平面図である。
【図4】図1に示すタイヤ成型システムの他の使用例を示す略線平面図である。
【図5】提案技術に従う成型ドラムの移動例を示す部分略線平面図である。
【符号の説明】
【0043】
A 成型移動域
B,C,D,E 組立体
S1〜S7 作業ステーション
D1〜D7 装置
AGV 誘導走行車
BD 成型ドラム
PB 先端成型部
GT 生タイヤ
1 第1作業ステーション
2 第2作業ステーション
3 第3作業ステーション
4 第4作業ステーション
5 第5作業ステーション
6 第6作業ステーション
7 第7作業ステーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
停止姿勢の成型ドラム上に所定のタイヤ構成部材を組付ける複数の作業ステーションに成型ドラムを移動させながらその成型ドラム上に生タイヤを成型するに当り、
複数台の成型ドラムのそれぞれを、成型ドラム側への生産指令に従って、平坦面上で、所要の作業ステーションに所要の順序で、相互に独立させて移動させる生タイヤの成型方法。
【請求項2】
成型ドラムの移動経路を、生タイヤの構造に応じて変化させる請求項1に記載の生タイヤの成型方法。
【請求項3】
成型ドラムを、特定の作業ステーションをバイパスさせて移動させる請求項1もしくは2に記載の生タイヤの成型方法。
【請求項4】
特定の作業ステーションで、一の成型ドラム上に複数回にわたってタイヤ構成部材を組付ける請求項1〜3のいずれかに記載の生タイヤの成型方法。
【請求項5】
それぞれの作業ステーションの相互間での、サイクルタイムのバランスに応じて成型ドラムの移動経路を変化させる請求項1〜4のいずれかに記載の生タイヤの成型方法。
【請求項6】
特定の作業ステーションの一のサイクルタイム内で、成型ドラム上に複数種類のタイヤ構成部材を組付ける請求項1〜5のいずれかに記載の生タイヤの成型方法。
【請求項7】
成型不良の生じた成型ドラムを、それの成型移動域の外に排除する請求項1〜6のいずれかに記載の生タイヤの成型方法。
【請求項8】
成型不良を修正した後の成型ドラムを、再び成型移動域内に復帰させる請求項7に記載の生タイヤの成型方法。
【請求項9】
停止姿勢の成型ドラム上に所定のタイヤ構成部材を組付ける複数の作業ステーションと、成型ドラムを支持してその成型ドラムを所要に応じた作業ステーションに移動させる走行台車とを具えるタイヤ成型システムであって、
走行台車を、外部指令に応じて、所定の作業ステーションの作業位置まで成型ドラムを移動させてそこに停止させる、平坦面上を走行する誘導走行車としてなるタイヤ成型システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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