説明

生乳検査装置

【課題】例えば乳房炎を初期段階で診断することを可能とする生乳検査装置を提供する。
【解決手段】生乳検査装置1Aは、生乳を保持するための容器2と、容器2が装着される回転台3とを備えている。回転台3は、容器2内の生乳に遠心力を与えることにより当該生乳を高比重物と上澄み液とに分離するためのものである。容器2内には、前記高比重物が集積する位置に、表面に活性酸素と反応する酵素が固定化された作用極が配置されている。容器2には、作用極との間に電圧が印加される対極も設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生乳の検査に用いられる生乳検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
畜産において、家畜の病気、けがの発見、投与した薬剤の効果の診断など、家畜の状態を早期に詳しく診断するニーズは近年ますます高まっている。特に感染性の疾病においてはそのニーズは高い。哺乳類、とりわけ牛、羊、山羊など酪農用の家畜の症状診断には家畜の生乳を分析することが重要かつ有効な手段である。
【0003】
たとえば乳房炎は、乳用牛の死廃傷病事故のなかで最大の問題になっている。乳房炎は、罹りやすい上に極めて治りにくい病気であるため、世界的に最難治疾病の一つとされている。乳房炎に罹患した乳用牛の生乳中の体細胞数は、正常な乳用牛が通常2〜10万個であるのに対し、30万個/mL以上、なかには300万個/mL以上の慢性乳房炎に至る場合も少なくない。体細胞数の測定は煩雑であり、しかもそれを実現する装置は高価なため、通常生乳の検査は大型タンクに集められて(多くの場合は別の検査機関などに搬送されて)から行われる。そうすると、発覚が遅れて被害量が増えるだけでなく、サンプリングした生乳中の体細胞数が規定値以上であることが発覚した場合、生乳がタンク単位で廃棄されたり酪農家へペナルティ(課徴金)が課されたりする。そして、その年間被害額は、日本全体で800億円〜1000億円と試算されている。
【0004】
また、乳房炎による体細胞数の増加は、食の安全にも直結した課題である。乳房炎に感染すると、黄色ブドウ球菌が乳腺組織に定着するとともに、生乳中に黄色ブドウ球菌が混入する。黄色ブドウ球菌は、食中毒の原因となるエンテロトキシンを産生し、これを生乳中に放出する。生乳の製造工程において、殺菌によって黄色ブドウ球菌は殺菌されるものの、エンテロトキシンは分解されないため、食中毒のリスクは排除されない。エンテロトキシンによる食中毒リスクを回避するためにも、乳房炎の早期発見と治療が望まれている。これら乳房炎の発見及び診断において、前記家畜の生乳を分析する方法は非常に有効である。
【0005】
けが、炎症、感染性の疾病においては生乳中の体細胞、例えば白血球の一種である好中球が増加する場合が多く見られる。とりわけ乳房炎においてはこの傾向は顕著である。そこで、好中球から放出された活性酸素の存在を電流として検出することが提案されている。
【0006】
例えば特許文献1には、円筒状の絶縁部材の内周面に作用極が形成され、外周面に対極が形成されたニードル状の活性酸素センサを備える乳房炎診断装置が開示されている。この乳房炎診断装置は、活性酸素センサによって活性酸素の濃度を測定し、その濃度に基づいて乳房炎に罹っているか否かを判定するものである。作用極及び対極は、導電性部材の表面に金属ポルフィリン錯体の重合膜が形成されたものであり、活性酸素の測定原理は次のとおりである。
【0007】
活性酸素センサを活性酸素(例えば、スーパーオキシドアニオン:O2-)の存在する生乳中に漬けると、金属ポルフィリン錯体中の金属が活性酸素により還元される(例えば、Fe3+→Fe2+)。そこで、作用極と対極との間にある程度の電圧を印加すると、還元された金属が再酸化され(例えば、Fe2+→Fe3+)、電流が流れる。このときの電流値は、活性酸素の濃度と対応しているため、その電流値から活性酸素の濃度を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−106490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
生乳の生産において、体細胞数の管理目標値は、30〜50万個/mL以下に設定されている。乳房炎に感染した生乳中の体細胞数に占める好中球の比率は、8割〜9割と報告されており、体細胞数が30〜50万個/mLの場合、好中球数は27〜45万個/mLと推定される。このような生乳中の体細胞数は、健康な牛の血液中の好中球数の約1/10程度と低濃度であることから、生乳の分析による家畜の症状診断においては低濃度の体細胞を再現性よく測定できることが望まれる。
【0010】
しかしながら、電極に金属ポルフィリン錯体の重合膜を用いたニードル状の活性酸素センサの場合、好中球数がそれほど増加しない乳房炎の初期段階では、金属ポルフィリン錯体の重合膜表面からの反応によって得られる電流値の増加量は非常に小さく、乳房炎を初期段階で診断することが困難であった。
【0011】
ニードル状の活性酸素センサの場合、測定を行う作用極及び対極はニードルの先端となり、反応面となる作用極の面積は極めて小さくなるため、得られる電流値は小さくなり、検出感度に課題を有していた。作用極の面積が極めて小さいため、生乳中の脂質粒子が作用極に付着すると、更に検出感度は低下することになる。作用極の面積を大きくしようとすると、ニードルの直径を太くすることが必要となり、ニードルの体積増加による電流量の損失が発生して検出感度を高めることにはならない。
【0012】
また、生乳中の体細胞から放出される活性酸素は生乳中に拡散しているため濃度が低く、ニードル状の活性酸素センサを生乳に浸しただけでは、活性酸素を検出することが困難であった。さらに、金属ポルフィリン錯体は、活性酸素との反応性が低いことも検出感度が低い一因となっている。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑み、例えば乳房炎を初期段階で診断することを可能とする生乳検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、生乳中の白血球が脂質粒子よりも比重が大きいことに着目し、この比重差を利用して遠心分離によって多くの白血球を積極的に作用極に付着させることを着想した。また、活性酸素の存在を電流として検出するには、作用極上に酵素を配置することが効果的である。本発明は、このような観点からなされたものである。
【0015】
すなわち、本発明は、生乳の検査に用いられる生乳検査装置であって、前記生乳が注入される容器と、前記容器が装着される回転台であって前記容器内の生乳に遠心力を与えることにより当該生乳を高比重物と上澄み液とに分離する回転台と、前記容器内における前記高比重物が集積する位置に配置された、表面に活性酸素と反応する酵素が固定化された作用極と、前記作用極との間に電圧が印加される対極と、を備える、生乳検査装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
上記の構成によれば、遠心分離によって高比重物が集積する位置に作用極が配置されているので、作用極に多くの体細胞(特に白血球の一種である好中球)を付着させることができる。これにより、高い電流値を得ることができる。また、作用極の表面には活性酸素との反応性が良好な酵素が固定化されている。従って、本発明によれば、活性酸素の検出感度を高めることができ、例えば乳房炎を初期段階で診断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る生乳検査装置の斜視図である。
【図2】図1に示した生乳検査装置の回転台側の平面図である。
【図3】容器を装置本体のコネクタ部に接続した状態を示す斜視図である。
【図4】(a)は第1実施形態における容器の分解斜視図、(b)はその容器を構成するベースプレートの平面図である。
【図5】(a)は図4(b)に示したベースプレートの側面図、(b)は変形例の容器を構成するベースプレートおよび支持板の側面図である。
【図6】(a)は変形例の容器の分解斜視図、(b)はその容器を構成するベースプレートの平面図である。
【図7】(a)は別の変形例の容器の分解斜視図、(b)はその容器を構成するベースプレートの平面図である。
【図8】(a)は作用極の表面を突起によって凹凸形状とした例を示す斜視図、(b)は突起の配置の変形例を示す平面図である。
【図9】突起の拡大断面図である。
【図10】図1に示した生乳検査装置のブロック図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る生乳検査装置の斜視図である。
【図12】図11に示した生乳検査装置の回転台側の平面図である。
【図13】図12のXIII−XIII線断面図である。
【図14】(a)は変形例の容器の断面図、(b)はその容器の平面図である。
【図15】本発明の第3実施形態に係る生乳検査装置の回転台側の平面図である。
【図16】(a)は図15のXVI−XVI線断面図、(b)は変形例の断面図である。
【図17】本発明の第4実施形態に係る生乳検査装置の斜視図である。
【図18】第4実施形態における容器の分解斜視図である。
【図19】図18に示した容器を構成するベースプレートの平面図である。
【図20】(a)は図19に示した容器に生乳を注入するための投入器の平面図、(b)はその投入器の正面図である。
【図21】本発明の第5実施形態に係る生乳検査装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態に係る生乳検査装置1Aを示す。この生乳検査装置1Aは、生乳中の体細胞数を測定可能なものであり、横長箱状の装置本体10と、装置本体10に回転可能に支持された回転台3と、回転台3に装着される、生乳を保持するための複数(図例では4つ)の容器2と、を備えている。なお、本明細書では、説明の便宜のために、図1の左下側を前方、右上側を後方、左側を左方、右側を右方という。
【0020】
装置本体10は、左側の略半分が右側の略半分よりも厚さが薄くなるように設計されており、上面10bと、この上面10bよりも一段低い段差面10aを有している。そして、段差面10aの略中央に回転台3が配置されている。また、装置本体10には、回転台3を回転させるモータ35(図2参照)が内蔵されているとともに、回転台3と共に回転する容器2をカバーする蓋11が図略のヒンジによって揺動可能に取り付けられている。
【0021】
上面10bには、容器2と接続されるコネクタ部4が容器2と同数設けられている。各コネクタ部4には、容器2の後述する接続用凸部20と嵌合可能な挿入口41が設けられており、挿入口41に接続用凸部20が差し込まれることにより容器2とコネクタ部4とが接続される(図3参照)。
【0022】
装置本体10の前面には、ユーザーから操作される入ボタン15a及び切ボタン15bが設けられているとともに、回転台3の回転を開始するための回転ボタン15d及び体細胞数の測定を開始するための測定ボタン15cが設けられている。また、装置本体10の前面には、動作表示用のLED14が設けられているとともに、体細胞数を表示する表示部16が設けられている。さらに、装置本体10の前面には、測定した体細胞数が予め定めた閾値よりも大きな場合にユーザーにそれを報知するブザー18、警報表示部17a及び警報ランプ17bが設けられている。
【0023】
なお、本実施形態では、表示部16が、図3に示すように体細胞数を数字で表示するようになっているが、表示部16は、例えば図21に示すように体細胞数をLEDの点灯によるバーの長さで表示するものであってもよい。
【0024】
さらに、本実施形態では、装置本体10の上面10bに、容器2内の生乳を加熱するためのヒータ5がヒータケーブルを介して取り付けられており、装置本体10の右側の側面には、ヒータ5の温度を設定するための温度設定器13aとヒータ5の実際の温度を表示する温度表示部13bが設けられている。本実施形態では、ヒータ5は、図3に示すように各容器2に側方から外嵌め可能なように、平面視で略コ字状の形状をなしている。
【0025】
回転台3は、容器2内の生乳に遠心力を与えることにより、当該生乳を高比重物と上澄み液とに分離するためのものである。本実施形態では、図2に示すように、回転台3に、容器2が同一円周上に等角度間隔で(すなわち90度ピッチで)装着される。容器2を回転台3へ装着するための構成は、係合構造であってもよいし、第2実施形態で説明するように磁力を用いた手段であってもよい。
【0026】
回転台3の回転条件は、相対遠心加速度0.3〜3000×gで行うことが好ましく、1〜250×gで行うことがより好ましい。
【0027】
図4(a)及び(b)に示すように、各容器2は、容器2内の空間を水平方向から取り囲む内周面2bと、容器2内の空間に下方から面する底面2aとを有している。また、各容器2内には、回転台3の回転によって上澄み液と分離された高比重物が集積する位置に、作用極6Aが配置されている。本実施形態では、容器2の底面2aに作用極6Aが設けられている。また、容器2の底面2aには、作用極6Aとの間に電圧が印加される対極6Cと、基準極として使用される参照極6Bも設けられている。
【0028】
具体的に、各容器2は、上方に開口して、その開口から生乳が注入される本体部2Bと、本体部2Bの開口を塞ぐ蓋部2Aとを含む。本体部2Bは、内周面2bを構成する矩形筒状の筒状部材23と、底面2aを構成する略長方形板状のベースプレート21とを有している。
【0029】
筒状部材23及びベースプレート21は硬質材料からなる。そのため、筒状部材23とベースプレート21の間には、それらの間をシールする軟質材料からなる矩形枠状のスペーサ22が配設されている。
【0030】
ベースプレート21を構成する硬質材料は、絶縁性のものであれば特に制限されるものではないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、スチレン系樹脂、アクリル−スチレン系共重合樹脂(MS樹脂)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−ビニルアルコール系共重合樹脂、スチレン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系樹脂、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂等を挙げることができる。筒状部材23も、ベースプレート21と同様の素材で構成されうる。
【0031】
ベースプレート21は、当該ベースプレート21の長手方向の一方の端部が筒状部材23から所定量張り出す大きさを有している。そして、ベースプレート21の筒状部材22から張り出す端部によって、上述したコネクタ部4の挿入口41に差し込まれる接続用凸部20が構成されている。
【0032】
さらに、ベースプレート21上には、作用極6A、参照極6B及び対極6Cのそれぞれから接続用凸部20まで延びる引き出し電極61〜63が設けられている。そして、接続用凸部20がコネクタ部4の挿入口41に差し込まれると、作用極6A、参照極6B及び対極6Cがコネクタ部4に設けられた通電端子(図示せず)に引き出し電極61〜63を介して電気的に接続される。
【0033】
筒状部材23の外周面には、係合用凹部23aが適所に設けられている一方、ベースプレート21には、係合用凹部23aに対応する位置に、係合用凹部23aに係合可能な係合爪21bを有する係合片21aが突設されている。そして、係合爪21bが係合凹部23aに係合することにより、筒状部材23がスペーサ22を押圧した状態でベースプレート21に固定される。
【0034】
本実施形態では、係合構造によってベースプレート21が筒状部材23と着脱可能になっているので、ベースプレート21のみを使い捨てとすることができ、材料を節約することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、図5(a)に示すようにベースプレート21に係合片21aが設けられているが、ベースプレート21には必ずしも係合片21aが設けられている必要はない。例えば図5(b)に示すように、ベースプレート21を支持板27で支持するようにし、この支持板27に係合片21aを設けてもよい。このようにすれば、ベースプレート21をフラットな形状にできるだけでなく、支持板27として磁性金属からなるものを採用可能であるために、ベースプレート21の下に磁性金属板を配置することができ、磁力によって容器2を回転台3に固定するのに適した構成とすることができる。
【0036】
また、参照極6B及び対極6Cは必ずしも底面2aに設けられている必要はない。例えば、図6(a)及び(b)に示すように、参照極6Bが棒電極となっていて蓋部2Aに固定されていてもよいし、図7(a)及び(b)に示すように、参照極6B及び対極6Cの双方が棒電極となっていて蓋部2Aに固定されていてもよい。このようにすれば、よりいっそう材料を節約することができる。なお、これらの場合には、装置本体10から引き出したケーブルを、蓋部2Aを貫通する棒電極に接続すればよい。
【0037】
作用極6Aの表面には、活性酸素と反応する酵素が固定化されている。このような酵素としては、例えば、スーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)、シトクロームc、ヘミン、西洋ワサビペルオキシダーゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、チロシナーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ラッカーゼ等があげられる。中でも、長期安定性(耐候性)、工業的に品質が安定していること、コストの観点から、SODを用いることが好ましい。また、必要に応じて、酵素に酵素活性化剤が添加されていてもよい。
【0038】
作用極6Aと対極6Cとの間及び参照極6Bと対極6Cとの間には、例えば直流1Vの電圧が均等に印加される。その上で、作用極6Aに重畳的に例えば0.3Vの追加電圧が印加されると、作用極6A上で酵素による生乳中に含まれる活性酸素の酸化分解(正確には生乳中の好中球から放出されたスーパーオキシドアニオンの酸化分解:O2-→O2+e-)が発生するとともに、作用極6A上から溶け出した酵素が対極6C上で還元されて、作用極6Aと対極6Cとの間に電流が流れる。作用極6Aと対極6Cとの間に流れる電流量を測定することにより、好中球から放出される活性酸素量、ひいては生乳中の体細胞数を測定することが可能となる。
【0039】
作用極6A、参照極6B及び対極6Cの形状は、特に限定されるものではないが、本実施形態では作用極6A及び対極6Cが円形状になっており、参照極6Bが長方形状になっている。作用極6Aと対極6Cとの間の抵抗値を低くするためには、それらを例えば0.5〜1.0mm程度に近接させて配置することが好ましい。対極6Cの面積は、作用極6Aの面積よりも大きいことが好ましい。このようになっていれば、作用極6A上での酸化分解に対する還元電流を検出しやすくできるからである。例えば、対極6Cの直径を作用極6Aの直径の2倍としてもよい。
【0040】
各種電極6A〜6C,61〜63の形成法は、蒸着、スパッタリング、電解メッキ、無電解メッキ、シルクスクリーン印刷、金属ペーストのインジェクション法等を用いることができる。電極に用いられる導電性材料としては金、銀、塩化銀、白金、銅、アルミニウム等を挙げることができる。本実施形態では、活性酸素として好中球から放出されるスーパーオキシドアニオンを主に検出するので、作用極6A及び第1引き出し電極61を金、参照極6B及び第2引き出し電極62を銀/塩化銀、対極33及び第3引き出し電極63を白金で構成している。
【0041】
作用極6Aの表面は、フラットであってもよいが、複数の点状の突起又は複数の点状の窪みによって凹凸形状とされていることが好ましい。通常、作用極6Aの面積が大きくなると、体細胞の付着面積が増大することで、作用極6Aから対極6Cに流れる電流量が多くなり、検出感度が向上する。一方、作用極6Aの面積が大きくなりすぎると、作用極6A上での電流が生乳中にも拡散するようになり、作用極6Aから対極6Cに流れる電流量は低下し、検出感度が低下する結果となる。
【0042】
体細胞から放出された活性酸素による電流値をS(信号)、作用極6Aから対極6Cに流れるベース電流値をN(ノイズ)とすると、S/N比を高めることで検出感度は高まる。S/N比の向上のため、電流値の生乳中への拡散を極力抑え、作用極6Aから対極6Cに流れる電流値を低くするために、小さな電極を複数配置する方法が考えられるが、小さな電極を複数有することは、電極の造形精度が求められ、収率低下による生産性が低下する。
【0043】
作用極6Aの表面に、複数の突起又は窪みを配置することで、電流の生乳中への拡散を抑制し、電流密度の増大による、S/N比の向上が期待できる。作用極6A上に複数の突起又は窪みを有することで、凹凸形状の先端面(突起の場合は突起の頂面又は窪みの場合は窪み以外の面)で発生した電流は生乳中に拡散するものの、凹凸形状の先端面以外の表面で発生した電流は生乳中に拡散することなく、作用極6Aから対極6Cに電流を流すことが可能となり、S/N比を飛躍的に高めることが可能となる。
【0044】
好ましい突起又は窪みの密度は、200〜15000個/mm2が好ましく、500〜10000個/mm2がより好ましい。突起又は窪みは、例えば柱形であり、その断面形状は円形であっても多角形であってもよい。突起又は窪みの密度が200個/mm2を下回る場合、電流が拡散しやすくなり、S/N比を高めることは困難な場合がある。一方15000個/mm2を上回る場合、造形精度を維持するために製造タクトタイムが長くなる等、工業生産における難易度が高くなり、高コストとなる場合がある。
【0045】
生乳中には、固形分である脂質粒子が、体細胞数の100倍以上存在している。また、脂質粒子の粒子径は、乳用牛の育種、飼料の内容等によって異なり、2μm〜30μmの広い範囲となっている。隣り合う突起の間の距離又は窪みの幅は、生乳中の脂質粒子による閉塞を考慮し、4〜100μmが好ましく、10〜60μmがより好ましい。
【0046】
好ましい突起の高さ又は窪みの深さは、0.5〜1000μmであり、より好ましくは5〜500μmである。突起の高さ又は窪みの深さが0.5μmを下回る場合、平坦な作用極と変わらず、S/N比の向上が困難となる場合がある。一方1000μmを上回る場合、造形精度を維持するために製造タクトタイムが長くなる等、工業生産における難易度が高くなり、高コストとなる場合がある。
【0047】
一方、突起の幅に対する高さのアスペクト比又は窪みの幅に対する深さのアスペクト比は、大きくなるほど体細胞が付着する可能性が高くなるが、同時に工業技術の観点で難易度が高くなり、生産性が低下する可能性があることから、0.2〜10の範囲から選択することが好ましく、0.5〜5の範囲から選択することがより好ましい。
【0048】
本実施形態では、図8(a)に示すように、作用極6Aの表面は、複数の点状(より詳しくは円形断円の柱状)の突起6aによって凹凸形状とされている。具体的に、作用極6Aの表面の凹凸形状は、図9に示すように、ベースプレート21に形成された凹凸構造21Aに作用極6Aが沿わされることにより形成されている。そして、作用極6Aの上に、酵素7が固定化されている。なお、酵素7の上には、疎水性材料により、水に対する接触角が30°以上110°以下の表面を有する表層が形成されていてもよい。
【0049】
凹凸構造21Aの形成方法は、特に限定されないが、例えば、射出成形、プレス成形、モノマーキャスト成形、溶剤キャスト成形、ホットエンボス成形、押出成形によるロール転写法等を挙げることができる。なかでも、生産性及び型転写性の観点から、射出成形が好ましく用いられる。
【0050】
突起6aは、図7(a)に示すようにマトリクス状に配置されていてもよいし、図7(b)に示すように千鳥状に配置されていてもよい。また、突起6aは、規則的に並んでいる必要はなく、ランダムに配置されていてもよい。なお、本発明の「隣り合う突起の間の距離」とは、図7(a)及び図7(b)中に符号Lで示すように、突起6aが並ぶ方向における突起6a同士の間の間隔のことである。
【0051】
酵素を作用極6Aの表面に固定化する方法は、作用極6A上に酵素をそのまま塗布して乾燥させてもよいが、電子伝搬性のある有機層によって固定化することが好ましい。このようにすれば、作用極6A上に酵素を強固に保持することができ、感度を安定化させることができる。また、酵素の立体構造を維持して酵素の活性劣化を抑制する効果もある。
【0052】
有機層による酵素の固定化方法としては、例えば作用極6A上に有機皮膜を形成して、その上に酵素を塗布又は共有結合によって固定する方法や、酵素を含有する有機ポリマーゲルを作用極6A上に塗布する方法等が挙げられる。特に、均質な有機皮膜を簡単に形成することができ、かつ、膜厚や酵素固定化量を制御することが容易な自己組織化単分子膜(SAM)を用いることが好ましい。さらに、SAMとしては、金や白金上で容易に強固な皮膜を形成するチオール基又はジスルフィド基を有する化合物によって形成されたSAMであることが好ましい。そのような化合物としては、例えば、ベンゼンチオール、4−アミノチオフェノール、4−メルカプトピリジン、4,4’−ジチオビスピリジン、メチオニン、p−メチルチオフェノール、2−メルカプトピリジン、ブタンチオール、2−アミノエタンチオール、イソシステイン、2−(アセチルアミノ)エタンチオール、N−アセチル−L−システイン、N−システイニルグリシン、システイン、L−システイン、D,L−ホモシステイン、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトウンデカン酸、メルカプトこはく酸、チオ乳酸、ジチオビス(スクシンイミジルオクタネート)、ジチオビス(スクシンイミジルヘキサネート)等が挙げられる。
【0053】
次に、図10を参照して、装置本体10の構成について詳細に説明する。装置本体10は、作用極6Aと対極6Cとの間に電圧を印加したときに流れる電流に基づいて生乳中に含まれる体細胞数を算出するものである。具体的に、装置本体10は、電源101と、作用極6Aと対極6Cとの間及び参照極6Bと対極6Cとの間に電圧を印加して、それらの間に流れる電流を検出する電流検出回路102と、検出された電流を電圧に変換する電流電圧変換回路103と、電圧値から体細胞数を算出する演算部104とを備えており、演算部104で算出された体細胞数が表示部16に表示される。また、装置本体10は、ヒータ5に電力を供給する電力供給部105を有しているとともに、回転台3を回転させるモータ35を制御するモータ制御部106を有している。なお、図10では、図面の簡略化のために電流検出回路102及び電流電圧変換回路103を1つだけ作図しているが、装置本体10にはこれら102,103が接続部4ごとに(すなわち4つ)設けられている。
【0054】
電源101は、電池やバッテリー等の内部電源であってもよいし、家庭用電源等の外部電源であってもよい。電流検出回路102は、スイッチング素子等で構成されている。電流電圧変換回路103は、電流電圧変換素子や電圧を増幅するオペアンプ等で構成されている。演算部104は、CPUや記憶部(ROM及びRAM)等からなっている。記憶部には、電圧値と体細胞数とを関係づける検量線が記憶されており、演算部104は、電流電圧変換回路103から送られる電圧値に応じた体細胞数を算出する。
【0055】
本実施形態では、参照極6Bが設けられているので、体細胞数を算出する際の電圧値は、参照極6Bを考慮した値である。すなわち、装置本体10は、作用極6Aと対極6Cとの間に電圧を印加したときに流れる電流を電圧に変換して作用電圧値を得るとともに、参照極6Bと対極6Cとの間に電圧を印加したときに流れる電流を電圧に変換して参照電圧値を得る。そして、装置本体10は、体細胞数を算出する際には、作用電圧値から参照電圧値を控除した電圧値から体細胞数を算出する。このようにすれば、生乳中に含まれる活性酸素と酵素との反応に基づく電圧値を正確に得ることができる。
【0056】
<使用要領>
次に、生乳検査装置1Aを使用して体細胞数を測定する方法を説明する。まず、容器2の本体部2Bに生乳を注入し、その本体部2Bに蓋部2Aを取り付けて、生乳入りの容器2を準備する。
【0057】
入ボタン15aを押すと、ヒータ5が温度設定部13aで設定された温度に保たれるように電力供給部105がヒータ5に電力を供給する。生乳入りの容器2を回転台3の所定位置に装着し、回転ボタン15dを押すと、モータ制御部106がモータ35を制御して、所定の回転数で所定時間だけ回転台3を回転させる。これにより、容器2内の生乳が高比重物と上澄み液とに遠心分離される。高比重物は、回転台3の回転中は、上澄み液との界面が回転台3の中心から遠ざかるにつれて上り勾配となるように、底面2aと内周面2bのうちの回転台3の中心から最も離れた部分(例えば、図2に示すようなレイアウトでは、接続用凸部20側の壁面)とに集積するが、回転台3の回転が停止すると、上澄み液との界面が容器2の底面2aと略平行になる。
【0058】
その後、容器2を回転台3から取り外し、コネクタ部4に接続するとともに、容器2にヒータ5を装着する。そして、測定ボタン15cを押すと、電流検出回路102によって作用極6Aと対極6Cとの間及び参照極6Bと対極6Cとの間に等しい電圧が印加され、さらにその後に作用極6Aに追加電圧が印加される。そうすると、体細胞(特に好中球)が放出する活性酸素と酵素が反応し、その酸化還元電流が装置本体10に送られて、体細胞数が算出される。算出された体細胞数は、コネクタ部4ごとに表示部16に表示される。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の生乳検査装置1Aでは、遠心分離によって高比重物が集積する位置に作用極6Aが配置されているので、作用極6Aに多くの体細胞(特に白血球の一種である好中球)を付着させることができる。これにより、高い電流値を得ることができる。また、作用極6Aの表面には活性酸素との反応性が高い酵素が固定化されている。従って、本実施形態によれば、活性酸素の検出感度を高めることができ、例えば乳房炎を初期段階で診断することが可能となる。
【0060】
さらに、本実施形態では、ヒータ5が設けられているので、生乳の温度を一定の温度域(例えば30〜45℃程度)に保つことができ、活性酸素の定量性を実現することができる。
【0061】
(第2実施形態)
図11に、本発明の第2実施形態に係る生乳検査装置1Bを示す。なお、本第2実施形態及び後述する第3〜第5実施形態では、第1実施形態と同一構成部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0062】
本実施形態の生乳検査装置1Bでは、遠心分離から体細胞数の算出までが自動的に行われるようになっている。具体的には、コネクタ部4が、上面10bではなく段差面10aに設けられている。コネクタ部4は、図12及び図13に示すように、コネクタ部4に設けられた通電端子42が容器2の接続用凸部20の真上に位置するように、同一円周上に等角度間隔で配置されている。
【0063】
コネクタ部4の挿入口41の上下幅は、接続用凸部20の厚みよりも十分に大きく設定されており、接続用凸部20が挿入口41内を回転台3の回転中心を中心とする周方向に通過できるようになっている。そして、コネクタ部4は、図略の昇降手段(例えばエアシリンダ)によって図13に示す待機位置から下降させられることにより、通電端子4が接続用凸部20上の引き出し電極61〜63(図4(b)参照)に接触し、これによりコネクタ部4が容器2に接続される。
【0064】
また、回転台3には、磁石31が埋め込まれており、容器2の下面には、磁性金属板28が設けられている。すなわち、本実施形態では、磁力によって容器2が回転台3に装着されるようになっている。
【0065】
次に、生乳検査装置1Bの使用要領を説明する。本実施形態では、図1に示すような回転ボタン15dが設けられておらず、測定ボタン15cのみが設けられている。そして、容器2を回転台3の所定位置に装着し、測定ボタン15cを押すと、モータ制御部106がモータ35を制御して、所定の回転数で所定時間だけ回転台3を回転させる。これにより、容器2内の生乳が高比重物と上澄み液とに遠心分離される。回転台3の回転が終了すると、装置本体10は、図略の昇降手段によりコネクタ部4を下降させて、コネクタ部4を容器2に接続する。その後、電流検出回路102によって作用極6Aと対極6Cとの間及び参照極6Bと対極6Cとの間に等しい電圧が印加され、さらにその後に作用極6Aに追加電圧が印加される。そうすると、体細胞(特に好中球)が放出する活性酸素と酵素が反応し、その酸化還元電流が装置本体10に送られて、体細胞数が算出される。算出された体細胞数は、コネクタ部4ごとに表示部16に表示される。
【0066】
本実施形態でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
なお、図10〜図12では、ヒータ5が設けられていないが、例えば図14(a)及び(b)に示すように、磁性金属板28の下にヒータ5を配設してもよい。この場合には、接続用凸部20の隣に、ヒータ5用の端子を有するヒータ接続部51を設け、コネクタ部4を利用して電力供給部105(図10参照)からヒータ5に電力を供給するようにしてもよい。
【0068】
(第3実施形態)
図15に、本発明の第3実施形態に係る生乳検査装置1Cを示す。第2実施形態では、コネクタ4と容器2との接続が、コネクタ部4の下降により行われていたが、本実施形態では、容器2の移動により行われる。
【0069】
具体的には、回転台3をリング状に形成し、その内側に容器2を径方向外側に押すための可動部91を有する、例えば複数のエアシリンダからなる移動手段9を配置する。そして、図16(a)に示すように、移動手段9の可動部91が容器2を押して径方向外側に移動させることにより、接続用凸部20がコネクタ部4の挿入口41に差し込まれて、容器2がコネクタ部4に接続される。
【0070】
なお、図16(b)に示すように、回転台3がテーパー状に傾斜していて、容器2が傾斜した状態で回転台3に装着されるようになっていてもよい。
【0071】
(第4実施形態)
図17に、本発明の第4実施形態に係る生乳検査装置1Dを示す。この生乳検査装置1Dは、第1実施形態の生乳検査装置1Aの容器2を水平方向に延びる容器2’に変更しただけのものであり、回転台3への装着位置や方法等は第1実施形態と同様である。
【0072】
容器2’は、図18に示すように、基本的には容器2と同様の構成となっているが、容器2が接続用凸部20が突出する方向と直交する方向に引き延ばされたような形状を有している。そして、容器2’内には、当該容器内を仕切る隔壁26によって当該容器2’の延びる方向に並ぶ複数(図例では4つ)のセル25が形成されている。
【0073】
また、図19に示すように、容器2’の底面2aには、作用極6A、参照極6B及び対極6Cがセル25ごとに設けられている。
【0074】
セル25に生乳を注入するには、例えば図20(a)及び(b)に示すような投入器8を用いればよい。この投入器8には、乳房ごとに生乳を配置可能な4つのパレット部81が設けられているとともに、これらのパレット部81からつながる一列に並ぶノズル83が設けられている。各パレット部81にはゲート82が設けられていて、ボタン8aの操作によりゲート82を開閉可能となっている。
【0075】
このような構成の容器2’を用いれば、4頭の乳牛の全ての乳房から搾取した生乳を同時に検査することができる。なお、容器2’は、上述した第2実施形態及び第3実施形態においても採用可能であることは言うまでもない。
【0076】
(第5実施形態)
図21に、本発明の第5実施形態に係る生乳検査装置1Eを示す。この生乳検査装置1Eでは、内部に隔壁26が1つだけ設けられた、第4実施形態で採用された容器2’よりも短い長さで水平方向に延びる容器2”が2つ用いられている。そして、容器2”は、同一円周上に等角度間隔で(すなわち180度ピッチで)で回転台3に装着される。
【0077】
このように、本発明において容器内にセルを形成する場合は、その数は特に制限されるものではない。また、容器の数も、例えばセルの数に応じて適宜選定可能である。
【0078】
(その他の実施形態)
前記各実施形態では、回転台3が装置本体10に支持されており、装置本体10内に回転台3を回転させるモータ35が配設されているが、回転台3を含む回転機構は、装置本体10と別体で構成されていてもよい。ただし、回転台3が装置本体10に回転可能に支持されていれば、持ち運び等の取り扱い性を向上させることができるだけでなく、コンパクトな装置とすることができる。
【0079】
また、前記各実施形態では、容器2の底面2aがベースプレート21によって構成されていてフラットになっているが、容器2の2aは、例えば半球状に窪む曲面となっていてもよい。
【0080】
また、回転台3は、板状である必要はなく、例えば、容器2が1つだけ装着される回転台である場合には、容器2を挿入可能な容器状であってもよい。
【0081】
さらには、容器2は、回転台3の中心回りを旋回する必要はなく、回転台3の中心に配置されていてもよい。この場合でも、回転台3の回転によって生じる遠心力により容器2内の生乳を高比重物と上澄み液とに分離することができる。ただし、容器2が回転台3の中心回りを旋回する構成であれば、容器2内の生乳により大きな遠心力を与えることができる。
【0082】
また、作用極6Aは、必ずしも容器2の底面2aに設けられている必要はない。例えば、容器2の内周面2bのうちの回転台3の中心から最も離れた部分にも高比重物が集積するので、この部分に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1A〜1E 生乳検査装置
2,2’,2” 容器
2a 底面
2b 内周面
21 ベースプレート
22 筒状部材
3 回転台
4 コネクタ部
5 ヒータ
6A 作用極
6a 突起
6B 参照極
6C 対極
7 酵素
10 装置本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生乳の検査に用いられる生乳検査装置であって、
前記生乳を保持するための容器と、
前記容器が装着される回転台であって前記容器内の生乳に遠心力を与えることにより当該生乳を高比重物と上澄み液とに分離する回転台と、
前記容器内における前記高比重物が集積する位置に配置された、表面に活性酸素と反応する酵素が固定化された作用極と、
前記作用極との間に電圧が印加される対極と、
を備える、生乳検査装置。
【請求項2】
前記容器と接続されるコネクタ部を有する装置本体であって、前記前記作用極と前記対極との間に電圧を印加したときに流れる電流に基づいて前記生乳中の体細胞数を算出する装置本体をさらに備える、請求項1に記載の生乳検査装置。
【請求項3】
前記装置本体は、前記回転台を回転可能に支持する、請求項2に記載の生乳検査装置。
【請求項4】
前記容器は、当該容器内の空間を取り囲む内周面と、当該容器内の空間に下方から面する底面とを有しており、
前記作用極は、前記底面に設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の生乳検査装置。
【請求項5】
前記作用極の表面は、複数の点状の突起又は複数の点状の窪みによって凹凸形状とされており、前記突起又は窪みの密度は200〜15000個/mm2である、請求項4に記載の生乳検査装置。
【請求項6】
前記容器は、前記内周面を構成する筒状部材と、前記底面を構成するベースプレートとを有し、
前記凹凸形状は、前記ベースプレートに形成された凹凸構造に前記作用極が沿わされることにより形成されている、請求項5に記載の生乳検査装置。
【請求項7】
前記複数の突起における隣り合う突起の間の距離又は前記窪みの幅は4〜100μmである、請求項5又は6に記載の生乳検査装置。
【請求項8】
前記突起の高さ又は前記窪みの深さは0.5〜1000μmであり、前記突起の幅に対する高さのアスペクト比又は前記窪みの幅に対する深さのアスペクト比は0.2〜10である、請求項5〜7のいずれか一項に記載の生乳検査装置。
【請求項9】
前記容器は複数設けられており、これらの容器は、前記回転台に等角度間隔で装着される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の生乳検査装置。
【請求項10】
前記容器は水平方向に延びており、前記容器内には、当該容器内を仕切る隔壁によって当該容器の延びる方向に並ぶ複数のセルが形成されており、
前記作用極及び前記対極は、前記セルごとに設けられている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の生乳検査装置。
【請求項11】
前記容器内の生乳を加熱するためのヒータをさらに備える、請求項1〜10のいずれか一項に記載の生乳検査装置。
【請求項12】
前記酵素は、スーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の生乳検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−33599(P2011−33599A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183112(P2009−183112)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】