説明

生体サンプル用のカラーマネージメント

生体材料の画像に対する色変換を決定するための方法であって、当該方法は、少なくとも1つの試験用対象を有する第1の生体の試験用対象101乃至105のセット100を、第1の製法を用いて準備するステップと、第2の生体の試験用対象131乃至135のセット130を、第2の製法を用いて準備するステップであって、第2の試験用対象のセット中にある試験用対象131の各々が、第1の試験用対象のセット中にある対応する試験用対象101と対応しており、試験用対象及び対応する試験用対象が同じタイプの生体材料である、ステップと、第1の試験用対象のセット中にある各々の試験用対象101に対して当該試験用対象の色111を決定し、これにより、第1の色111乃至115のセット110を生成するステップと、第2の試験用対象のセット中にある各々の試験用対象131に対して当該試験用対象の色121を決定し、これにより、第2の色121乃至125のセット120を生成するステップと、第1の色のセット110中にある色、及び第2色のセット120中にある対応する色の間のマッピングを示す換算テーブル140を生成するステップとを含んでいる。第1の製法及び第2の製法は、それぞれ第1の染色法及び第2の染色法を含んでいる。関連した態様において、画像ファイルは、生体材料を含んでいて、第1の方法により準備されていたサンプルのデジタル画像と、サンプルを準備する第1の方法に付随する一組の色及び第2の方法に付随する一組の色との間のマッピングを示す色換算テーブル140とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の態様では、本発明は生体材料の画像用の色変換を決定する方法に関する。
【0002】
第2の態様では、本発明は、細菌学、組織学、及び病理学で用いられる色の管理(カラーマネージメント)方法に関する。
【0003】
第3の態様では、本発明は、細菌学、組織学、及び病理学で用いられる別のカラーマネージメント方法に関する。
【0004】
本発明は更に、画像ファイルを担持するデータ担体に関する。
【背景技術】
【0005】
細菌学、組織学、及び病理学などの分野において、個体細胞又は組織サンプルなどの生体物質を含んでいるサンプルが、鏡検、特に透過鏡検を用いて日常的に調査されている。撮像される材料は、通常、異なるタイプの材料成分間の色コントラストを増すために染色される。染色しないと、細胞形態の差を見て取ることは非常に困難である。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)が、組織学、病理学、及び細菌学において一般に使用される染色体である。ヘマトキシリンは核を青く染め、エオシンは原形質をピンクに染める。顕微鏡下で組織を観察するために、断片が1つ以上の色素で染色される。
【0006】
細胞及び細胞成分を選択的に染色するために使われてきた何百もの様々な特別な染色技術がある。組織片を着色するための化合物は、サフラニン、オイルレッドo、コンゴレッド、ファストグリーンFCF、銀塩、並びに多数の天然染料及び人工染料を含み、これらは通常、繊維工業用の染料の開発から生まれている。
【0007】
近年、特にタンパク質、炭水化物、及び脂質を視覚化するために抗体が使われてきた。これは、免疫組織化学、又は染色体が蛍光分子である場合は免疫蛍光検査として知られている。この技術は顕微鏡下での細胞のカテゴリを識別する能力を非常に増大させた。この技術は、免疫蛍光検査及び酵素結合蛍光増幅用に使うことができる特定のDNA又はRNA分子を蛍光プローブ又はタグで識別するための放射性ではない原位置ハイブリッド形成などの他の進歩したテクニックと組み合わせることができる。蛍光顕微鏡検査法及び共焦顕微鏡観察法が、蛍光発光信号を良好な細胞内の詳細と共に検出するために用いられる。組織学的画像及び組織病理画像を捕捉するために、デジタルカメラが広く使われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しばしば生物学者及び病理学者は、彼等の検査室で使われている特定の染色法で作業してきたので、異なる染色法がサンプルの異なる色を結果として生じる事実に起因して、異なる染色法から生じた画像を解釈するのに苦労するという問題がある。例えば、第1の病理学者はH&Eを特定の割合で使用してきており、一方、第2の病理学者はH&Eの別の割合で使用している。第2の病理学者はH&E以外の染色法も日常的に使用する。いずれの場合においても、2人の病理学者は互いの画像を解釈することが困難であることを見出す。
【0009】
T. Abe等は[「染色量の定量化に基づく病理学的画像の色補正」、Optical Review誌 12、293-300(2005)]で、H&Eで染色したサンプルの病理学的画像用の色補正の方法を提案した。同提案では、H&E染料の量がBeer-Lambert法を用いたマルチ・スペクトル撮像技術に基づいて推定される。色画像が、染料の調整量に従って生成される。これにより画像が、任意の染色条件又は指定された最適染色条件の画像へと修正されることができる。同論文は、コンピュータディスプレイと顕微鏡との間の差に対して病理学画像を修正するために、カラーマネージメント技術の使用も開示している。
【0010】
デジタル撮影システムにおけるカラーマネージメントは、イメージスキャナ、デジタルカメラ、モニタ、テレビスクリーン、フィルム・プリンタ、コンピュータプリンタ、オフセット印刷機、及び対応する媒体などの各種デバイスの色表示法間で、管理された換算をすることである。カラーマネージメントの主な目的は、良好な色のマッチングを異なるデバイスにまたがって得ることである。例えばビデオは、コンピュータのLCDモニタ、プラズマTVのスクリーン、及びビデオが印刷されたコマ上で同じ色に見えなければならない。必要とされる色強度をデバイスが供給できると仮定すると、カラーマネージメントは全てのこれらのデバイス上で同じ外見を実現することを支援する。
【0011】
T. Abe等により提案された方法の欠点は、分光分析が多くの実験的な努力及び精巧な機器を必要とすることである。更に、H&Eから生じた色を種々異なるタイプの染料から生じた色へと換算するために、どのように彼等の方法が使われるかが明白ではない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、生体材料が準備される態様についての知識を必要とせずに、生体材料画像に対する色変換を決定する方法を提供することである。本発明の別の目的は、第1の製法から生じた色又は第2の製法から生じた色で二者択一的に、画像が表示されることができる画像ファイルを担持するデータ担体を提供することである。
【0013】
これらの目的が、独立請求項に記載された特徴により実現される。更なる仕様及び好ましい実施例が、従属請求項で概説されている。
【0014】
本発明の第1の態様によれば、生体材料の画像用の色変換を確定する方法は、
−第1の製法を用いて、少なくとも1つの試験用対象を有する第1の生体の試験用対象のセットを準備するステップと、
−第2の製法を用いて、第2の生体の試験用対象のセットを準備するステップと、
−第1の試験用対象のセット中の各々の試験用対象に対して当該試験用対象の色を決定し、これにより第1の色のセットを生成するステップと、
−第2の試験用対象のセット中の各々の試験用の対象に対して当該試験用対象の色を決定し、これにより第2の色のセットを生成するステップと、
−第1の色のセット中の色と、第2の色のセット中にある対応する色との間のマッピングを示している色換算テーブルを生成するステップとを含んでいる。ここで、第2の試験用対象のセット中にある各々の試験用対象が、第1の試験用対象のセット中にある試験用対象に対応し、試験用対象及び対応する試験用対象は同じタイプの生体材料である。第1の試験用対象のセット中にある試験用対象及び第2の試験用対象のセット中にある試験用対象の各々の色が、当該試験用対象の画像から抽出されてもよい。画像は、例えばデジタル画像又は写真フィルムの画像でもよい。第1の試験用対象のセット及び第2の試験用対象のセット中にある各々の試験用対象が、別々に撮影されてもよい。さもなければ、第1の試験用対象のセットの全ての画像と、第2の試験用対象のセットの全ての画像とが撮影されてもよい。また、第1の試験用対象のセット及び第2の試験用対象のセットの両方を特徴づけている画像を生成することも可能である。
【0015】
第1の製法及び第2の製法は、それぞれ第1の染色法及び第2の染色法を有する。第1の染色法及び/又は第2の染色法はヘマトキシリン及びエオシン、又は何らかの他の周知のタイプの染料を使用するステップを特に含む。更に一般的にいえば、第1の製法及び第2の製法は、天然の生体材料を採用した試験用対象を準備することを必要とする何らかの追加のステップを染色ステップ以外に有しても良い。
【0016】
本発明による方法は、第1の生体の試験用対象のセットを含んでいる第1のサンプルを準備するステップと、第2の生体の試験用対象のセットを含んでいる第2のサンプルを準備するステップとを含んでもよい。サンプルは液体でも又は固体でもよく、これらは生体の試験用対象に加え、他の生体材料又は妊卵材料を含んでいてもよい。第1のサンプル及び第2のサンプルが、単一の顕微鏡スライド上に配置されるか、又は両者が別々の顕微鏡スライド上に配置されてもよい。サンプルに含まれるすべての構成要素(例えばすべての組織サンプル又はすべての細胞)が、色換算テーブルを確定するために必ずしも使われるというわけではないことが指摘される。使われることがない斯様な構成要素が、第1の生体の試験対象のセット又は第2の生体の試験対象のセットの部材と考えられることはない。
【0017】
本発明による方法は、第1の染色法によって第1のサンプルを染色するステップと、第2の染色法によって第2のサンプルを染色するステップとを含んでいる。第1の染色法は、第2の染色法とは関与する染色法の構成物及び/又は濃度において異なり、染色の継続期間、又は結果として生じる画像の色に影響する他のいかなる特性においても異なる。
【0018】
本発明による方法は、生体材料を含んでいる硬化ブロックを作るステップを含んでもよく、第1のサンプルを準備するステップが、硬化ロックから第1のスライスを切り出すステップを含み、第2のサンプルを準備するステップが、硬化ブロックから前記第1のスライスと平行に第2のスライスを切り出すステップを含んでいる。これによって2つの非常に類似したサンプルが作られ、これは両者の色を比較することを容易にするだろう。第1のスライス及び第2のスライスは、それぞれ第1の染色法及び第2の染色法により染色される。2つのサンプルが十分に類似している場合、2つのサンプルのデジタル画像の画素毎の分析を実行することによって色換算テーブルが確定されることができる。より正確に言うと、第1のサンプルの画像の特定の画素の色値が、第2のサンプルの画像の対応する画素の色値に関連付けられて記憶される。好ましくは、2つのデジタル画像は同じフォーマット(即ち、同数の画素の列と同数の画素の行)を有する。2つ以上の類似のスライスが容易に作られることが可能である点にも留意されたい。スライスが、更に個別に処理されてもよい。特に、各々のスライスに特定の染色法が用いられてもよい。色変換が、サンプルの考え得る対の各々に対して次に決定されることができる。
【0019】
本方法は、第1のスライスの一組の領域と、第2のスライスの対応する一組の領域とが同じタイプの生体材料を有するよう、第1のスライスの一組の領域と、第2のスライスの対応する一組の領域とを決定するステップを更に含んでおり、ここで、第1のスライス領域のセットが第1の試験用対象のセットを提供し、第2のスライス領域のセットが第2の試験用対象のセットを提供する。特に、第1のスライス領域のセットと、第2のスライスの対応する領域のセットとが各々格子状に配置される。これにより、第1の試験用対象のセットと、第2の試験用対象のセットとを識別することが容易になる。
【0020】
第1のサンプル及び第2のサンプルは、それぞれ第1の組織サンプルのアレイ及び第2の組織サンプルのアレイを有し、第1の組織サンプルのアレイが第1の試験用対象のセットを提供し、第2の組織サンプルのアレイが第2の試験用対象のセットを提供する。各々のアレイは、異なるタイプの組織を特に有する。例えば、各々のアレイが胸部、腎臓、及び皮膚組織を有してもよく、健康な組織と病気にかかった組織とを両方有してもよい。組織のタイプが、組織がアレイに含有される前に病理学者により識別されてもよい。各々のアレイが単一の基質上に置かれてもよい。この場合、アレイ内の全ての組織サンプルが、同じ手順を用いて同時に染色されることができる。各々のアレイが、特に組織のマイクロ・アレイ(TMA)であってもよい。TMAは、数種類の組織サンプルが埋め込まれたパラフィンのブロックから製造される。パラフィン・ブロックの第1のスライス及び第2のスライスが次に別々に染色され、それぞれ第1のサンプル及び第2のサンプルとして使うことができる。好ましくは、第1のスライス及び2枚目のスライスは事実上構造が同一である。
【0021】
異なる実施例によれば、第1の試験用対象のセット中の試験用対象のうちの1つは、第1の細胞の膜、内壁、サイトゾル、又はオルガネラであり、第2の試験用対象のセット中の対応する試験用対象は、第2の細胞の同様の膜、内壁、サイトゾル、又はオルガネラである。このように、2つ以上の類似の細胞の類似の成分の色から、色換算テーブルが決定される。
【0022】
本方法は更に、第1の細胞の膜、内壁、サイトゾル、又はオルガネラを識別するステップと、第2の細胞の膜、内壁、サイトゾル、又はオルガネラを識別するステップとを含んでいる。第1の細胞及び第2の細胞のそれぞれの成分が、例えば、このために書かれたコンピュータ・プログラムを使用することによって、第1の細胞及び第2の細胞の画像を分析することにより識別される。当該コンピュータ・プログラムは、細胞の特定の成分に対応する画像中のこれらの領域を確定するよう設計されている。
【0023】
第1の色空間のベクトルによって第1の色のセットの各色を表し、第2の色空間のベクトルによって第2の色のセットの各色を表すことが好都合である。色の加算混合を用いることによって、色空間は例えば、基礎ベクトルとして赤、緑、及び青のスペクトル色を有する赤-緑-青(RGB)の色空間である。代替的には、色の減算混合が使われてもよい。この場合の色空間は、例えばシアン-マゼンタ-黄色-黒(CMYK)の色空間である。
【0024】
第1の色空間及び第2の色空間が同じでもよい。これは、第1の色のセットと第2の色のセットとの間のマッッピングを、特に単純で且つ正確な形態で表すことを可能にする。
【0025】
例えば、周知の3次元のRGB色空間(N=3)の場合のように、色空間がN次元の空間である場合、本方法は、N個の色をもつ第1のサブセットを第1の色のセットから選択し、対応するN個の色をもつ第2のサブセットを第2の色のセットから選択するステップと、第1のサブセットの色を表しているN個の色ベクトルを、第2のサブセットの色を表している対応するN個の色ベクトルにマッピングするN x Nのマトリックスを計算するステップとを含んでいる。N個の色が第1のサブセットに与えられ、対応するN個の色が第2のサブセットに与えられると、N x Nの変換マトリクスが、当該マトリクスのコンポーネントに対する線形システムを解くことにより決定される。N x Nの変換マトリクスは次に、色換算テーブル又は同テーブルの一部を生成するために使われる。N x Nのマトリックスを第1の色のセット全体に適用することによって換算テーブル全体を十分に正確に再現することは可能ではないが、一方、N x Nのマトリックスを第1の色のセットの十分に小さなサブセットに適用することによって、換算テーブルの一部を十分に正確に再現することは可能である。ここで、当該十分に小さいサブセットは十分に類似した色を有している。
【0026】
本発明の第2の態様によるカラーマネージメントの方法は、色換算テーブルを生成するために本発明の第1の態様による方法を実行するステップと、生体材料を含んでいるサンプルを準備するステップと、サンプルの画像を生成するステップと、サンプルの画像の色を、換算テーブルにより示された色に変換するステップとを含んでいる。このために、画像は各画素が特定の色をもつ画素のアレイにより表される。色が換算テーブルに示されている場合、色変換が直ちに適用されることができる。示されていない場合、換算テーブルは補間を必要とするかもしれない。
【0027】
本発明の第3の態様によるカラーマネージメントの方法は、色換算テーブルを生成するために、本発明の第1の態様による方法を実行するステップと、生体材料を含んでいるサンプルを準備するステップと、サンプルのデジタル画像を生成するステップと、
デジタル画像及び色換算テーブルを有する画像ファイルをデータ担体に書き込むステップとを含んでいる。このように、オリジナルの画像が換算データと共に記憶される。画像がオリジナルの色で表示されるか、又は変換された色で表示されるかどうかをユーザが選択できる態様で、画像をスクリーン又はプリンタ上に表示するためのコンピュータ・プログラムが、次に設計される。代替の方法では、画像をオリジナルの色及び変換された色の両方で記憶するステップを含む。しかしながらこれは、換算テーブルと共にオリジナルの画像データのみを記憶する提案された方法と比較して、より大きなメモリ量を必要とする。本方法は、第1の検査室から第2の検査室へと画像ファイルを送信するステップを更に含んでもよい。
【0028】
本発明の第4の態様によるデータ担体は、第1の方法により準備されたサンプルのデジタル画像を担持する。当該サンプルは生体材料を有し、色換算テーブルは第1の方法に付随する一組の色と第2の方法に付随する一組の色との間のマッピングを示している。既に説明したように、画像ファイルのユーザは、選択的にオリジナルの色又は換算された色で画像を見ることが可能になる。更にまた、オリジナルの色の画像及び換算された色の画像の両方を記憶するのに必要なメモリの量と比較して、メモリの量が減じられる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の試験用対象のセット及び対応する第2の試験用対象のセットの一例を、換算テーブルを規定している第1の色のセット及び第2の色のセットと共に概観的に例示する。
【図2】簡略化された態様で、第1の生体細胞の例と、類似した第2の生体細胞の例とを例示する。
【図3】簡略化された態様で、第1の組織サンプルのアレイの例と、対応する第2の第1のアレイの例とを例示する。
【図4】生体材料を含んでいる硬化ブロックの例の簡略化された表現である。
【図5】2枚の平行した薄いスライスが切り出された後の、図4に示されたブロックを例示する。
【図6】本発明の第1の態様による方法の例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
特に明記しない限り、異なる図に登場する同一又は類似の参照番号は、同一又は類似のコンポーネントとする。
【0031】
図1は、第1の生体試験用対象のセット100及び第2の生体試験用対象のセット130を示す。第1の試験用対象のセットは5つの試験用対象101、同102、同103、同104、同105を有し、一方、第2の試験用対象のセットは5つの試験用対象131、同132、同133、同134、同135を有する。第1の試験用対象のセット100中の試験用対象101乃至105の各々は、対応する試験用対象を第2の試験用対象のセット130中にもっている。各々の試験用対象及びそれぞれに対応する試験用対象は、同じタイプの生体材料から抽出される。この意味において両者は類似している。試験用対象101は試験用対象131と類似しており、試験用対象102は試験用対象132と類似しており、試験用対象103は試験用対象133と類似しており、以下同様である。第1のセット100中の試験用対象101乃至105が第1の方法により染色され、一方、第2のセット130中の試験用対象131乃至135が第2の方法により染色される。第1のセット100中の試験用対象101乃至105は、したがって、第1の色のセット110を形成しているそれぞれの色111乃至115を有し、一方、第2の試験用対象のセット130中の試験用対象131乃至135は、第2の色のセット120を形成しているそれぞれの色121乃至125を有する。色111乃至115のリスト、及び対応する色121乃至125のリストは一緒に、第1の色のセット110と、第2の色のセット120との間のマッピングを示している色換算テーブル140を形成する。色換算テーブル140は第1の色のセット110を第2の色のセット120へとマッピングし、逆もまた同様である。第1の色のセット及び第2の色のセット中の色の各々は、例えば、RGB色空間などの色空間中のベクトルにより表されることができる。
【0032】
試験用対象のセットのうちの1つ、例えば第2の試験用対象のセット130が、標準色121乃至125をもつことによって特徴づけられる標準の試験用対象のセットでもよいことに留意されたい。第1の試験用対象100のセットと、第3の色のセットをもつ第3の試験用対象のセット(図示せず)との間の色変換を規定するために、第3の色のセットを標準色のセット120へと関連づける色変換を規定することは便利である。この場合、第1の染色法の色を、最初に標準の第2の染色法の色へと色換算テーブル140を用いて換算し、次に、標準の第2の染色法の色から第3の染色法の色へと変換することによって、第3の染色法の色へと変換される。特定の染色法の色を、選択された標準の染色法の色に照会することによって、異なる検査室で働いている病理学者間の共同作業が単純化されることができる。
【0033】
図2は、第1の細胞200及び第2の細胞230を示す。細胞200、同230の各々は、膜201、同231、サイトゾル202、同232、及び様々なオルガネラを有する。図示されているオルガネラは、核203、同233、小胞体205、同235、及びミトコンドリア204、同206、同234、同236である。第1の細胞200は第1の染色法により染色されたサンプルの一部であり、一方、第2の細胞230は第2の染色法により染色されたサンプルの一部である。したがって、染色された細胞200、同230の色は異なる。図1を引用して上で説明された色換算を確定するために、第1の細胞200の図示された構成要素201乃至206、及び第2の細胞230の図示された構成要素231乃至236が、それぞれ第1の試験用対象のセット及び第2の試験用対象のセットとして選択される。
【0034】
図3は、組織サンプル301、同302、同303、、、の第1のアレイ300と、組織サンプル331、同332、同333、、、の第2のアレイ330とを例示している。アレイ300、同330の各々において、組織サンプルが矩形の格子に従って配置されている。アレイ300、同330は、サンプル301乃至306、及びサンプル331乃至336のみが図3においてラベル付けされている合計16個の組織サンプルを各々有する。組織アレイ300、同330は、両者が同じタイプの生体組織を有するという点でお互いに類似している。より正確に言うと、組織サンプル301は組織サンプル331と同じタイプであり、組織サンプル302は組織サンプル332と同じタイプであり、以下同様である。このように、アレイ300及びアレイ330の対応する場所が同じタイプの組織で満たされている。アレイ300が第1の染色法により染色され、一方、アレイ330が第2の染色法により染色された。この例では、第1のアレイ300の組織サンプル301、同302、同303、及び第2のアレイ330の対応する組織サンプル331、同332、同333、は、図1を引用して上で説明されたそれぞれ第1の試験用対象のセット100及び第2の試験用対象のセット130を形成する。
【0035】
図4及び図5は、第1の染色法の色と第2の染色法の色とを関係付ける色換算テーブルを確定させるために都合よく使うことができる一対の類似したサンプル400及びサンプル430を作る方法を、簡略な態様で例示している。第1のステップでは、生体材料がパラフィンに埋められる。当該生体材料は、例えば個々の生体細胞を有してもよいし、又は異なる組織サンプルの選択物であってもよい。組織サンプルは、例えば人体の異なる器官から採取されたものであり、健康な組織及び病気にかかった組織の両方を有する。当該組織サンプルは、図3を引用して上で説明したように、格子状に配置される。パラフィンが、生体材料を含んでいる固体ブロック490を形成するために硬化する。生体材料は特に、組織のマイクロアレイ内に配置されてもよい。次のステップにおいて、第1のスライス400及び隣接する第2のスライス430が、マイクロトームを使用して固体ブロック490から切り取られる。スライス400、同430は、お互いに実質的に同一であるよう、十分に薄い。次に、第1のスライス400が第1の染色法を用いて染色され、一方、第2のスライス430が第2の染色法を用いて染色される。本例では、第1のスライス400の成分401、同402、同403が第1の試験用対象のセット100を提供し、一方、第2のスライス430の類似する成分431、同432、同433が第2の試験用対象のセット130を提供する。図1を引用して上で説明したように、色換算テーブルが、第1の試験用対象のセットの色を第2の試験用対象のセットの色へとマッピングするよう確定される。例えば異なる染色法のペアに対して色換算テーブルを作るために、ブロック490から2枚以上のスライスを切り取ることが好都合である。
【0036】
図6のフロー図は、第1の製法に付随する色を第2の製法に付随する色へと関連付ける色換算テーブルを確定する方法の例を例示している。この方法では、第1の生体の試験用対象のセットが第1の製法を用いて準備され、一方、第2の生体の試験用対象のセットが第2の製法を用いて準備される。第1の製法の一部として、第1の試験用対象のセット中にある試験用対象が第1の染色法を用いて染色される(ステップ601)。第2の製法の一部として、第2の試験用対象のセット中にある試験用対象が第2の染色法を用いて染色される(ステップ602)。次のステップ603、同604において、第1の試験用対象のセットの色と、第2の試験用対象のセットの色とが測定される。次のステップ605において、第1の試験用対象のセット中にある試験用対象の測定された色、及び第2の試験用対象のセット中にある試験用対象の測定された色がリストとして記憶され、結果として色換算テーブルを生じる。当該色換算テーブルは、情報担体に記憶される。
【0037】
本出願で説明されているステップの何れかが、コンピュータによって実行又は制御されてもよい。このためにデータ担体が、これらのステップを実行又は制御するようコンピュータに指示するための機械読み取りが可能な命令を担持してもよい。
【0038】
本発明が図面及びこれまでの説明で詳細に例示され且つ説明されたが、当該図面及び説明は典型例であり、拘束性はないと看做される。本発明は、開示された実施例に限定されることはない。上で説明されてはいない等価物、組合せ、及び修正が、本発明の範囲から逸脱することなく実現されることもできる。
【0039】
動詞「有する」及びその派生語 は、「有する」が指し示す事項中の他のステップ又は他の要素の存在を除外することはない。不定冠詞「a」又は「an」が、項目が指し示す複数の対象物を除外することはない。単一のユニットが、請求項中に記載された複数の手段の機能を提供できる点にも留意されたい。特定の特徴が相互に異なる従属請求項において詳述されるという単なる事実は、これらの特徴の組合せが有効に使われることができないことを示してはいない。請求項のいかなる引用符号も、範囲を限定するものとして解釈されてはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体材料の画像に対する色変換を決定するための方法であって、
第1の製法を用いて、少なくとも1つの試験用対象を有する第1の生体の試験用対象のセットを準備するステップと、
第2の製法を用いて、第2の生体の試験用対象のセットを準備するステップであって、当該第2の試験用対象のセット中の各々の試験用対象が、前記第1の試験用対象中の対応する試験用対象と対応し、当該試験用対象及びこれに対応する試験用対象が同じタイプの生体材料である、ステップと、
前記第1の試験用対象のセット中にある各々の試験用対象に対して、当該試験用対象の色を決定し、これによって第1の色のセットを生成するステップと、
前記第2の試験用対象のセット中にある各々の試験用対象に対して、当該試験用対象の色を決定し、これによって第2の色のセットを生成するステップと、
前記第1の色のセット中にある色、及び前記第2の色のセット中にある対応する色との間のマッピングを示す換算テーブルを生成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の製法が第1の染色法を有し、前記第2の製法が第2の染色法を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の生体の試験用対象のセットを含んでいる第1のサンプルを準備するステップと、
前記第2の生体の試験用対象のセットを含んでいる第2のサンプルを準備するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の染色法によって前記第1のサンプルを染色するステップと、
前記第2の染色法によって前記第2のサンプルを染色するステップと、
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
生体材料を含んでいる硬化ブロックを作るステップ、
を含む請求項3に記載の方法であって、
前記第1のサンプルを準備するステップが、前記硬化ブロックから第1のスライスを切り出すステップと、前記第2のサンプルを準備するステップが、当該第1のスライスと平行に第2のスライスを前記硬化ブロックから切り出すステップを含んでいることを特徴とする、方法。
【請求項6】
前記第1のスライスの一組の領域内のそれぞれの領域と、前記第2のスライスの一組の領域内の対応する領域とが同じタイプの生体材料を有するよう、前記第1のスライスの一組の領域と、前記第2のスライスの一組の対応する領域とを決定するステップ、
を含む請求項5に記載の方法であって、前記第1のスライスの一組の領域が前記第1の試験用対象のセットを提供し、前記第2のスライスの一組の領域が前記第2の試験用対象のセットを提供することを特徴とする、方法。
【請求項7】
前記第1のサンプルが第1の組織サンプルのアレイを有し、前記第2のサンプルが第2の組織サンプルのアレイを有し、当該第1の組織サンプルのアレイが前記第1の試験用対象のセットを提供し、当該第2の組織サンプルのアレイが前記第2の試験用対象のセットを提供することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の試験用対象のセット中にある試験用対象のうちの1つが、第1の細胞の膜、内壁、サイトゾル、又はオルガネラであり、前記第2の試験用対象のセット中にある対応する試験用対象が、それぞれ第2の細胞の膜、内壁、サイトゾル、又はオルガネラであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の細胞の膜、内壁、サイトゾル、又はオルガネラを識別するステップと、
前記第2の細胞の同様の膜、内壁、サイトゾル、又はオルガネラを識別するステップと、
を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の色のセット中の各々の色を、第1の色空間のベクトルによって表すステップと、
前記第2の色のセット中の各々の色を、第2の色空間のベクトルによって表すステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の色空間と前記第2の色空間とが同じであることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記色空間がN次元の色空間であることを特徴とする、請求項11に記載の方法であって、
前記第1の色のセットにおいてN個の色の第1のサブセットを選択するステップであって、前記第2の色のセットは対応するN個の色の第2のサブセットを有するステップと、
前記第1のサブセットの色を表しているN個の色ベクトルを前記第2のサブセットの色を表しているN個の対応する色ベクトルへとマッピングするN x Nのマトリクスを算出するステップと、
を含む方法。
【請求項13】
細菌学、組織学、及び病理学で使われるカラーマネージメントの方法であって、
換算テーブルを生成するために、請求項1に記載の方法を実行するステップと、
生体材料を含んでいるサンプルを準備するステップと、
当該サンプルの画像を生成するステップと、
前記換算テーブルによって示されるように前記サンプルの前記画像の色を変換するステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
細菌学、組織学、及び病理学で用いられるカラーマネージメントの方法であって、
換算テーブルを生成するために、請求項1に記載の方法を実行するステップと、
生体材料を含んでいるサンプルを準備するステップと、
当該サンプルのデジタル画像を生成するステップと、
当該デジタル画像と前記換算テーブルとを有する画像ファイルをデータ担体に書き込むステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
画像ファイルを担持するデータ担体であって、当該画像ファイルが、
第1の方法により準備され、生体材料を含んでいるサンプルのデジタル画像と、
サンプルを準備するための第1の方法に関連する一組の色と第2の方法に関連する一組の色との間のマッピングを示す換算テーブルと、
を有する、データ担体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−506556(P2012−506556A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532747(P2011−532747)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【国際出願番号】PCT/IB2009/054557
【国際公開番号】WO2010/046821
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】