説明

生体供給用、生体移植用、生体添加用、生体投与用の解凍器官若しくは組織または解凍細胞群とその製造方法及びそれらに用いる過冷却液並びに製造装置

【課題】人体や動物から採取した器官または組織を組織のまま凍結保存して、必要な時期に解凍して幹細胞を抽出し蘇生させ医療にもちいることを提供する。
【解決手段】生体供給用、生体移植用、生体添加用、生体投与用の解凍器官若しくは組織または解凍細胞群とその製造方法及びそれらに用いる過冷却液並びに製造装置であって、人体や動物から採取した器官または組織を、冷凍・冷凍保存・解凍してその細胞を蘇生させ、器官や組織から採取した細胞の細胞分裂とコロニー形成をおこすことができる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体または動物から採取した器官または組織を凍結して保存し、次いで解凍した後に、器官または組織とそれらから採取培養した細胞を医療に用いることを目的とした再生医療分野、または畜産分野に属する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷凍精子、冷凍卵子、冷凍骨髄等の単細胞の保存およびそれらを用いての医療行為、および牧畜の計画生産は行われてきたが、器官や組織そのものを凍結した場合には、それらの細胞を蘇生することは不可能であった。器官や組織を凍結して保存し、そのものを移植に用いるか、または解凍後にそれらから得られる細胞群を医療に用いることは長い間の人類の夢であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
昨今幹細胞を用いて行う医療に注目が集中しているところであるが、当発明も冷凍・解凍した器官や組織から幹細胞を得て医療を行う基礎技術となることを目標のひとつとしている。当発明から得られる幹細胞群を細胞の由来で考察すれば、ES細胞と異なるのは受精卵を使用しないということ、IPS細胞と異なるのは不明な点をかかえたままの人工細胞ではないということがある。ES細胞、IPS細胞と共通して異なるのは、当発明では、器官または組織をそのまま冷凍保存するので、採取される細胞の絶対量が格段に多数になるということがある。
【0004】
実際に子供を生育し、かつ出産時には廃棄される組織の中には幹細胞を豊富に有するものがある。例えば、出産時に廃棄される臍帯、羊膜、臍帯等には幹細胞が豊富に含まれ、これらを組織のまま凍結保存して、必要な時期に解凍して幹細胞を抽出し蘇生させ医療にもちいることを目標にすることができる。
【0005】
この場合には、出産した本人とその子供を対象とするだけではなく、DNA、血液型、病歴、感染症検査、人種年齢等を凍結保存データで分類した多数のサンプルを凍結保存して準備・選択することによって、免疫拒絶を極力抑えた移植を一般医療として導入することも可能となる。また、今後のさらなる研究によっては、凍結・解凍した器官または組織そのものを移植する医療へと発展する。
【0006】
人体や動物から採取した器官や組織を凍結保存して、解凍の後に利用することができなかった理由には、主に二つの要因があった。すなわち、凍結時に起こる氷晶の拡大によって、細胞壁が破壊されること、および解凍時に起こる氷晶の拡大によってさらに細胞壁が破壊されることである。
【0007】
また、従来、精子細胞、卵子細胞等の単細胞の冷凍保存は、溶液および細胞のガラス化(不凍液としてエチレングリコール(EG)やジメチルスルオキシド(DMSO)やシュークロース(Suc)等を所定の配合で使用する。)によって行われてきた。その冷凍方法としてストロー法やヒトIVFチップ法があるが、いずれも器官や組織のような大型物質への対応は全く不可能であり、また細胞保存率は10〜25%前後と低い。したがって、器官や組織に冷凍保存と解凍を行って、それらの細胞を蘇生できる技術はかつて存在しなかったのであって、冷凍保存された器官や組織から、解凍を行って有用な細胞を大量に確保するということは不可能であった。

【課題を解決するための手段】
【0008】
人体や動物から採取した器官または組織のように大型のものを均質に細胞破壊を抑制しながら凍結する手段として、該器官や組織が、氷晶の拡大する温度帯といわれる−2〜−6℃よりも低い温度で凍結する方法を発見した。分子量が200前後のポリエチレングリコール(医薬品添加物規格品)の凝固点が低いことと、毒性(LD50値)が低いことに注目した。凝固点は、−50℃であり、LD50値は、28g/kg(経口、ラット)である。このポリエチレングリコールを30%濃度で生理的食塩水に溶解すると、溶液の凝固点は−7℃前後となり、これを器官や組織に含浸すれば、器官や組織の凝固点は−6℃前後となることが判明した。ただし、毒性が低いとはいえ、該過冷却液を該器官または組織に含浸してから凍結するまでの間に時間をかけすぎることは避けるべきである。そこで、以下に示す方法を発明し、溶液を過冷却液として器官や組織の多くの部位に短時間で含浸する方法をとった。
【0009】
ただし、過冷却液が器官や組織の細胞内を含めた全体に浸透しているわけではないので、凍結には、急速凍結が要求される。液体窒素を使用した場合には、急速すぎるために器官や組織に破壊現象が起こり不調である。当然ながら冷凍庫に搭載する緩慢凍結も不調であった。以下、3種類の凍結方法で解凍後の細胞の蘇生を記録している。一つは、槽にアルコールまたはアルコール溶液を搭載し、−30℃〜−40℃前後に冷却した液に浸漬する急速凍結法。一つは、−40℃内外以下の冷気によって急速凍結するエアーブラスト法。一つは、電磁場によって該器官または組織に過冷却を起こす冷凍庫による凍結法。この電磁場によって過冷却を起こす方法では、該過冷却液を使用しない場合、動物性たんぱく質は−2〜−3℃前後で凍結してしまうので細胞の保護はできない。しかしながら、該過冷却液を用いた場合、その濃度を大幅に下げることができることが判明した。将来、人体や動物のたんぱく質であっても−6℃までは凍結しない過冷却装置が完成した場合には、過冷却液の使用の必要がなくなって好ましい。この場合でも、請求項1における解凍器官または組織を得るための凍結必要条件は同じであり、過冷却液の使用の有無には拘束されない。
【0010】
次に、解凍時の細胞破壊を防ぐ手段として、当発明者が発明した解凍システム(日本特許;No.3,284,409. No.3,641,715.、米国特許; No.6,479,805 B1. No.6,559,429 B2.、欧州特許;
No. 1 049 359)を採用した。この技術は、器官や組織の内外部の解凍温度を近似にして、かつ−0℃に接近せしめて終了することのできる急速解凍システムであり、細胞破壊を極めて小さなレベルで解凍することができる。この解凍システムを用いれば、器官や組織の全体を急速に−2℃前後に昇温することができる。次いで全体を−2℃に解凍した該器官または組織を、+20〜30℃の恒温浴槽に浸漬してプラス温度に転化した。この該解凍器官または組織の全体をプラス温度に転じる方法として、温浴の他に赤外線レーザーを照射する方法等いくつかの方法が考えられるので当発明では拘束されない。
【0011】
次いで、過冷却液の除去と生理活性に供する物質の該器官または組織への含浸を行った。次いで分散培養法によって、解凍器官または組織の、細胞分裂、細胞増殖、コロニー形成を記録した。培養時には、当発明者が開発した天然物質で糖タンパクと高分子多糖体を含有するアロエベラ高分子パウダーの所定量の添加によって細胞修復効果と生理活性効果を確認した。
【0012】
本発明の請求項1〜請求項27の発明は次のとおりである。
請求項1記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織は、人体または動物から採取した器官または組織であって、凍結時における該器官または組織の細胞が自らの氷晶拡大を起こさない凍結状態で、かつ冷凍保存時には該器官または組織の細胞に劣化が発生しない保存状態で、かつ解凍時における該器官または組織はその中心部と表層部で解凍温度が近似し自らの氷晶拡大を起こさない解凍状態であり、該器官または組織の細胞の損傷、破壊が進まないように、解凍後の該器官または組織に生理活性作用または生体応答作用を生起せしめたことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍細胞群は、請求項1で得た解凍器官または組織から採取された細胞は、生理活性調製手段が施されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織は、請求項1で採取した器官または組織が、出産時に廃棄される臍帯、胎盤または羊膜、または採取された皮膚、口内粘膜、実質臓器等の幹細胞等の生理活性を豊富に有する器官または組織であることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解
凍細胞群は、請求項2記載の細胞群が、出産時に廃棄される臍帯、胎盤または羊膜、または採取された皮膚、口内粘膜、実質臓器等の幹細胞を豊富に有する解凍器官または組織から採取された細胞群であって、生理活性調整手段が施されたことを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織に用いる過冷却液は、請求項1または請求項3における器官または組織の凍結前における該器官または組織に含浸せしめる過冷却液が、該器官または組織の凍結点を−6℃内外以下にし、かつ該器官または組織に対し毒性が微少であることを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織に用いる過冷却液は、請求項5記載の過冷却液であって、その成分として分子量が200±30g/molのポリエチレングリコールと、生理的食塩水、または生理食塩水に生理活性に供する物質を細胞破壊が生起しない所定量添加した液体、またはリンゲル液、またはリンゲル液に生理活性に供する物質を細胞破壊が生起しない所定量添加した液体とを、所定の割合で混合した液であることを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織に用いる過冷却液は、請求項5または請求項6記載の過冷却液であって、分子量が200±30g/molのポリエチレングリコールと、生理的食塩水、または生理的食塩水に生理活性に供する物質を細胞破壊が生起しない所定量添加した液体、またはリンゲル液、またはリンゲル液に生理活性に供する物質を細胞破壊が生起しない所定量添加した液体とを混合する際に、該ポリエチレングリコール濃度を15〜35%とし、該器官または組織の凍結点が−6℃内外以下であることを特徴とする。
【0019】
請求項8記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織に用いる過冷却液は、請求項5、請求項6または請求項7記載の過冷却液であって、該過冷却液に、抗酸化剤、糖タンパク剤、高分子多糖体剤、抗生物質等の細胞の生理活性に供する物質を細胞破壊が生起しない所定量添加したことを特徴とする。
【0020】
請求項9記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織に用いる過冷却液は、請求項5、請求項6、請求項7、または請求項8記載の過冷却液であって、該過冷却液に、抗酸化剤、抗生物質等の細胞の生理活性に供する物質の他に、天然物質で糖タンパクと高分子多糖体を含有するアロエベラ高分子パウダーを、他の細胞の生理活性に供する物質との組み合わせを行って細胞破壊が生起しない所定量添加したことを特徴とする。
【0021】
請求項10記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法は、請求項1または請求項3における解凍器官または組織の製造方法であって、人体または動物から採取した器官または組織の血液および混雑物の除去を行い、次いで過冷却液を器官または組織に含浸させ自らの細胞に氷晶拡大が起きないようにして凍結し、次いで細胞破壊が生起しない温度で所定期間該器官または組織に劣化が起きない状態で冷凍保存した後に、該器官または組織の中心部と表面部の解凍温度を近似させて−0度に近い温度域まで急速に解凍したことによって解凍においても自らの細胞に氷晶拡大が起きないように解凍を終了し、次いで該器官または組織の温度をプラス温度に転換した後に、該器官または組織から過冷却液を除去し、次いで生理活性に供する液体を該器官または組織に含浸せしめて、当該解凍器官または組織に生理活性作用または生理応答作用を生起せしめたことを特徴とする。
【0022】
請求項11記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍細胞群の製造方法は、請求項1または請求項3記載の解凍器官または組織から採取した請求項2または請求項4の解凍細胞群の製造方法であって、解凍後に細胞破壊が生起しない温度、pH値、炭酸ガス濃度、および湿度を有する細胞培養液組成の至適培養環境下で、細胞修復剤および/または細胞活性補助剤等を用い、所定時間の修復および /または生育を行うという生理活性調整手段を施し、該細胞群に生理活性作用または生理応答作用を生起せしめたことを特徴とする。
【0023】
請求項12記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍細胞群の製造方法は、請求項11における細胞培養時に、細胞修復剤および/または細胞活性補助剤として、天然物質で糖タンパクと高分子多糖体を含有するアロエベラ高分子パウダーを細胞破壊が生起しない所定量添加し、所定時間の修復および/または生育を行うという生理活性手段を施し、該細胞群に生理活性作用または生理応答作用を生起せしめたことを特徴とする。
【0024】
請求項13記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法は、請求項10における人体または動物から採取した器官または組織の血液および混雑物の除去方法であって、生理的食塩水、または生理的食塩水に抗血液凝固剤や抗酸化剤や抗生物質等の生理活性に供する物質を任意に組み合わせて細胞破壊が生起しない所定量添加した溶液、またはリンゲル液、またはリンゲル液に抗血液凝固剤や抗酸化剤や抗生物質等の生理活性に供する物質を任意に組み合わせて細胞破壊が生起しない所定量添加した溶液を、該器官または組織の血管または細胞や細胞支持体等の間隙から注入し、血液および混雑物を押し出して除去することを特徴とする。
【0025】
請求項14記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法は、請求項10における人体または動物から採取した器官または組織の血液および混雑物の除去方法であって、生理的食塩水、または生理的食塩水に抗血液凝固剤や抗酸化剤や抗生物質等の生理活性に供する物質を任意に組み合わせて細胞破壊が生起しない所定量添加した溶液、またはリンゲル液、またはリンゲル液に抗血液凝固剤や抗酸化剤や抗生物質等の生理活性に供する物質を任意に組み合わせて細胞破壊が生起しない所定量添加した溶液の所定量を、該器官または組織と共に無菌袋に入れてから真空封印装置に搭載し、該無菌袋の内外を減圧し、次いで減圧下で無菌袋を封印し、さらに次いで大気圧に復圧することで発生する無菌袋の内部と外部との圧力差によって血液および混雑物と該生理的溶液を置換して血液および混雑物を除去することを特徴とする。
【0026】
請求項15記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法は、請求項10における人体または動物から採取した器官または組織に、凍結前に用いる過冷却液の含浸方法であって、該器官または組織の血管または細胞や細胞支持体等の間隙から過冷却液を注入して該器官または組織の全体に含浸せしめたことを特徴とする。
【0027】
請求項16記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法は、請求項10における人体または動物から採取した器官または組織に、凍結前に用いる過冷却液の含浸方法であって、該器官または組織と所定量の該過冷却液とを無菌袋に入れ、次いで真空封印装置に搭載し、該無菌袋内外を減圧し、次いで減圧下で無菌袋を封印し、さらに次いで大気圧に復圧することで発生する無菌袋の内部と外部との圧力差によって該過冷却液を該器官または組織に浸透せしめることを特徴とする。
【0028】
請求項17記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法は、請求項10における人体または動物から採取した器官または組織の凍結方法であって、該器官または組織に細胞破壊が生起しない所定濃度の該過冷却液を含浸せしめた後に、該器官または組織を無菌袋に搭載し、次いで無菌袋内を脱気して封印した後に、−30℃以下に冷却された液体に浸漬して該器官、組織、または該細胞群の全体を急速凍結したことを特徴とする。
【0029】
請求項18記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法は、請求項10における人体または動物から採取した器官または組織の凍結方法であって、該器官または組織細胞破壊が生起しない濃度の該過冷却液を含浸せしめた後に、該器官または組織を無菌袋に搭載し、次いで無菌袋内を脱気して封印した後に、−40℃以下の冷気を放出する冷凍装置に搭載して該器官または組織の全体を急速凍結したことを特徴とする。
【0030】
請求項19記載の発明である生体供給用、生体移植用または生体添加用の解凍器官または組織の製造方法は、請求項10における人体または動物から採取した器官または組織の凍結方法であって、該器官または組織に所定濃度の該過冷却液を含浸せしめた後に、槽内に電磁場環境をつくる過冷却凍結装置に搭載して凍結したことによって、該過冷却液の濃度を15〜25%に低減して該器官または組織の全体を凍結したことを特徴とする。
【0031】
請求項20記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法は、請求項10における冷凍保存した該器官または組織の解凍方法であって、該凍結器官または組織を減圧槽に搭載し、減圧をすすめ、マイクロ波加熱の可能な減圧圧力で所定時間、所定出力のマイクロ波照射を行い、ついでマイクロ波加熱を停止してから該凍結器官または組織の表層部に昇華が発生する圧力に減圧をすすめ、該凍結器官または組織の表層部に昇華を発生せしめて表層部の温度を低下せしめることで内部と表層部の温度差を近似せしめ、次いで圧力を再度マイクロ波加熱の可能な圧力に復圧し再度マイクロ波加熱を行い、さらに次いで再度マイクロ波加熱を停止してから再度該凍結器官または組織の表層部に昇華が発生する圧力に減圧をすすめ表層部の温度を低下せしめることで内部と表層部の温度を再度近似せしめるという工程を複数回繰り返すことで、内部と表層部の温度を近似せしめ、かつ−0℃に接近した温度帯で解凍を終了するということを特徴とする。
【0032】
請求項21記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法は、請求項10における解凍した該器官または組織のプラス温度への転換方法であって、−0℃に接近した温度帯で解凍を終了した後に、20℃〜30℃の温度域に保たれた生理的食塩水またはリンゲル液に、該器官または組織を浸漬してプラス温度化することを特徴とする。
【0033】
請求項22記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法は、請求項10における解凍器官または組織の過冷却液の除去方法であって、生理的食塩水、または生理的食塩水に抗酸化剤等の生理活性に供する物質を細胞破壊が生起しない所定量添加した溶液、またはリンゲル液、またはリンゲル液に抗酸化剤等の生理活性に供する物質を細胞破壊が生起しない所定量添加した溶液を、該解凍器官または組織の血管または細胞や細胞支持体の間隙から注入し、過冷却液を押し出して除去することを特徴とする。
【0034】
請求項23記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法は、請求項10における解凍器官または組織の過冷却液の除去方法であって、生理的食塩水、または生理的食塩水に抗酸化剤等の生理活性に供する物質を細胞破壊が生起しない所定量添加した溶液、またはリンゲル液、またはリンゲル液に抗酸化剤等の生理活性に供する物質を細胞破壊が生起しない所定量添加した溶液の所定量を、該器官または組織と共に無菌袋に入れてから真空封印装置に搭載し、該無菌袋の内外を減圧し、次いで減圧下で無菌袋を封印し、さらに次いで大気圧に復圧することで発生する無菌袋の内部と外部との圧力差によって過冷却液と該生理的溶液を置換して過冷却液を除去することを特徴とする。
【0035】
請求項24記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法は、請求項10における過冷却液除去後の解凍器官または組織への生理活性に供する液体の含浸方法であって、該液体を該解凍器官または組織の血管または細胞や細胞支持体の間隙から注入して含浸せしめることを特徴とする。
【0036】
請求項25記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法は、請求項10における過冷却液除去後の解凍器官または組織への生理活性に供する液体の含浸方法であって、所定量の該液体と該解凍器官または組織を無菌袋に入れてから真空封印装置に搭載し、該無菌袋の内外を減圧し、次いで減圧下で無菌袋を封印し、さらに次いで大気圧に復圧することで発生する無菌袋の内部と外部との圧力差によって含浸せしむることを特徴とする。
【0037】
請求項26記載の発明である生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官、組織または細胞群の製造方法は、請求項10または請求項11における解凍器官、組織または細胞群の生理活性を判定する手段であって、該解凍器官、組織または細胞群そのものからまたは一部抽出したものからの電気応答によるか、またはプローブを負荷したものからの光信号変化によるか、または培養による細胞分裂、細胞増殖やコロニー形成によって生理活性を判定することを特徴とする。
【0038】
請求項27記載の発明である解凍器官または組織の製造装置は、請求項1または請求項3における解凍器官または組織の製造システムであって、血液や混雑物を除去し、過冷却液を含浸せしめ、次いで無菌袋に脱気封入した人体または動物から採取した器官または組織を搭載するシステムは、(1)急速冷凍を可能とするリキッドフリーザー、またはエアーブラストフリーザー、または電磁場を用いた過冷却フリーザーと、(2)−60℃以下の温度で該冷凍器官または組織を所定期間保存する冷凍庫と、(3)該冷凍器官または組織の中心部と表層部の解凍温度を近似にして、かつ終了温度を−0℃に接近せしめることを可能とする急速解凍装置と、(4)該解凍器官または組織のプラス温度への転換装置と、(5)細胞の生理活性判定装置とを備えたシステムであって、解凍後の該器官または組織の生理活性作用または生体応答作用を生起せしめることを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
本発明によって、初期にはその獲得する細胞の絶対的多量性から、細胞を用いた医療であっても、細胞提供者のみならず他者にも供給できる一般再生医療の構築が可能となる。
【0040】
また、当発明を基礎として研究が進展すれば、解凍器官または組織を移植できる展望がひらける。細胞であっても器官や組織であっても、移植用の解凍器官、組織または細胞のDNA、血液型等の移植に適合し得るタイプを多数冷凍備蓄し選択することで、患者とのより高い生体適合性を確保できるばかりでなく、ドナー不足を緩和することにも供する。
【0041】
一方、畜産においては畜産動物の傷病に有意に対応できるばかりでなく、生産コストの低減や計画生産にも供する。
【0042】
本発明は、人体または動物から採取された器官や組織の冷凍保存を可能とする。冷凍保存した器官や組織は、細胞蘇生が可能であり、以下の利用方法の可能性がある。
(イ) 冷凍した器官や組織から抽出培養した幹細胞を用いた新再生医療の確立
現段階は、解凍細胞のコロニー形成が確認できた段階にある。今後研究をすすめ、動
物実験を経て臨床テストに入っていくことができる。幹細胞を利用した医療が発展し
てきており、幹細胞の絶対量を確保することのできる本発明は多くの患者の様々な傷
病の治癒に供する可能性を有する。また、幹細胞の備蓄体制を確立することによって、
白血病のようにドナー不足が理由で苦しんでいる患者を救う可能性を有し、同時にド
ナー不足を緩和する効果も期待される。
【0043】
(ロ) 幹細胞バンク(出産時に廃棄する臍帯、羊膜、胎盤等を利用)
解凍器官や組織から得た幹細胞による再生医療が進展した段階では、ノウハウの伝達と装置の輸出を行うことによって、世界の各病院または各地域で幹細胞バンクを設立することができる。冷凍保存する器官や組織には、DNA、血液型、出産年齢、病歴、人種、出産経過等のほかに、細胞検査結果等のデータが添付されて保存される。患者の拒絶反応を極力低く抑えるために、患者との生体適合性を確保するデータ管理が必須である。輸血レベルでの移植対応が可能となれば、最も効果の高い一般医療として確立される。
【0044】
(ハ) 出産者およびその子供向けの幹細胞保存システム
拒絶反応を極力低く抑えるという意味で、かつては出産時に廃棄されてきた器官や組織を長年にわたって冷凍保存する技術が確立されれば、家族の将来の医療用素材として利用される。
【0045】
(ニ) 解凍臓器の移植
現在、腎臓移植や心臓移植では、患者と生体適合性を有する臓器が出会うことは困難
を極めた状況となっている。また、移植を受けた患者は、拒絶反応に相当苦しんでい
るのが現実である。今後本発明をベースとした研究が進展すれば、冷凍保存した臓器
であって、そのサンプル数が豊富であるために、より拒絶反応の少ない移植が確保さ
れる可能性を有する。一連の開発で、再現性の確固とした技術を確保しているので、
今後の医療研究の発展に供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
解凍器官または組織、およびそれらから採取される細胞群の製造工程を(1)から(10)の工程により示す。
【0047】
(1) 該器官や組織の血液や混雑物の除去する工程
器官または組織を、人体または動物から採取した後に速やかに血液や混雑物の除去を行う。血液は停滞するとその成分のヘモグロビン等が細胞に対して強い悪影響を与えることが知られているところであるので、極力速やかに、かつ丁寧に行う。その際には、生理的食塩水やリンゲル液に抗血液凝固剤、抗酸化剤、抗生物質等の細胞の生理活性に供する物質を所定量添加して、該液体と血液を置換する。その方法は、血管が利用できる場合には血管に該液体を注入して血液や混雑物を押し出し、血管が確保されない場合には該器官や組織を該液体とともに無菌袋に搭載し、真空封印機を用い袋の内外に圧力差を起こすことで血液や混雑物と該液体を置換する。
【0048】
(2) 過冷却液の該器官や組織への含浸工程
冷凍時に氷晶の拡大によって細胞を破壊しないために、該器官や組織の凍結温度が−6℃前後以下となるように、過冷却液の調製と添加量を設計して該器官や組織に含浸せしめる。その方法は血液除去で用いる方法に順ずる。該過冷却液には、所定量の細胞の生理活性に供する物質を添加した方が好ましい。十分に含浸させるために、該過冷却液を注入した後に所定時間冷所で放置する。
該過冷却液の必要とされる特質は、その凝固点が−50℃内外以下であり、毒性が低いことである。
【0049】
(3) 該器官や組織の冷凍工程
以下の3方式の冷凍方式で細胞の蘇生を確認した。冷媒の温度が−30℃内外以下になるリキッドフリーザー、冷気の温度が−40℃内外以下になるエアーブラストフリーザー、電磁場によって過冷却を該器官や組織に起こす過冷却フリーザー。冷凍方式には様々あり、請求項1の冷凍条件はその冷凍方式には拘束されない。
【0050】
(4) 該器官や組織の冷凍保存工程
保存温度や保存方式によって、保存期間が決定される。その方式は様々あり、その方式には拘束されない。
【0051】
(5) 該器官や組織の解凍工程
請求項20では本発明者の開発した、減圧マイクロ波解凍システムを採用している。将来過冷却液を使用しない過冷却装置が開発されれば、当該解凍システムはさらに優位に立つものと考えられるが、解凍方式は様々考えられ、請求項1の要件を満たす解凍方式であればよいので、請求項1は解凍方式に拘束されない。
【0052】
(6) 該器官や組織のプラス温度化する工程
解凍温度が−2℃であっても凍結は解除されない。したがって、次の工程である過冷却液の排除を行うためには、全体を早急にプラス温度化する必要がある。そのために−20℃〜−30℃に保つことのできる恒温温浴を使用した。−2℃の該器官または組織の全域を+2℃にする方法はその他にも様々考えられるので請求項1はその方式に拘束されない。
【0053】
(7) 細胞の生理活性の判定工程
光酵素反応を用いた。その他の方法に電気反応判定等があるが、その方法は様々考えられるので、請求項1はその方式に拘束されない。
【0054】
(8) 過冷却液の除去工程
プラス温度化した該器官または組織から過冷却液を除去する工程であって、その方法は(1)の、血液除去の方法に順ずる。
【0055】
(9) 細胞の生理活性に供する液剤の投与工程
過冷却液を除去した後には、細胞の生理活性に供する物質を添加した生理的食塩水またはリンゲル液を、該解凍器官または組織に投与する。
【0056】
(10) 培養工程
所定の温度、所定のPh値、所定の炭酸ガス濃度、および所定の湿度等を有する細胞培養液組成の至適培養環境下で、細胞修復剤または細胞活性補助剤等を用い、所定の時間の細胞の培養を行うという生理活性調製手段を施し、細胞培養を行う。
【実施例】
【0057】
実施例1
食用豚の腎臓をと殺10分後に採取した。腎臓の大きさは、平均で約幅70mm、約厚さ40mm、約長さ100mmであった。採取直後に動脈に生理的食塩水を注入し血液除去を行った。静脈から輩出される液体に血液色が消失した段階を血液除去作業の完了基準とした。次いで、抗血液凝固剤、抗酸化剤、抗生物質を添加した過冷却液を注入し、4℃の冷蔵庫に30分間保存した。過冷却液のポリエチレングリコール濃度は31%として、該腎臓が−6℃までは凍結しない設計とした。採取60分後に、過冷却液を注入した腎臓を、無菌袋に入れ脱気して封印し、−30℃の冷却したエタノールを冷媒とするリキッドフリーザーに搭載して冷凍した。中心部の温度が−10℃以下となるのには約30分を要した。
全体が−25℃に到達した45分後には−60℃の冷凍庫に移動して120時間保存した。
【0058】
次いで解凍を行った。冷凍した腎臓5個を、マイクロ波出力0.5kw出力にて、15torrの圧力下で60秒間加熱し、マイクロ波加熱を停止してから1.5torrの圧力まで減圧を進めた。次いで15torrまで復圧し、再度マイクロ波加熱を30秒間行った。次いでマイクロ波を停止して減圧を行うという工程を4回繰り返して解凍を終了した。取り出した段階の腎臓の温度は、中心部が−2.5℃、表層部が−2.8℃であった。
【0059】
解凍機から取り出した直後に生理的食塩水を25℃に保った恒温槽に投入した。25分後に該腎臓全体がプラス温度化したので、引き上げ、動脈から生理的食塩水を注入して過冷却液の除去を行った。この際には、血液除去をおこなった約2倍の液量を用い腎臓全体に生理食塩水が行き渡るように配慮した。次いで、細胞の生理活性に供する物質として、抗酸化剤を添加した生理的食塩水を注入した。1時間後に分散培養を開始した。図1、および図2のように培養開始後10日目に細胞分裂をおこし、次いでコロニーを形成した。
【比較例】
【0060】
実施例1の比較例として、以下のテストを行ったが、いずれも細胞は蘇生しなかった。
比較例1
血液除去なし、過冷却液なし、 他は実施例1と同様
【0061】
比較例2
血液除去あり、過冷却液なし、 他は実施例1と同様
【0062】
比較例3
血液除去なし、過冷却液あり、 他は 実施例1と同様
【0063】
比較例4
冷凍庫で緩慢凍結、冷蔵庫で緩慢解凍 他は実施例1と同様
【0064】
比較例5
−40℃の冷凍庫で緩慢凍結 他は実施例1と同様
【0065】
比較例6
+4℃の冷蔵庫で緩慢解凍 他は実施例1と同様
【0066】
比較例7
過冷却液濃度 36% 他は実施例1と同様
【0067】
比較例8
過冷却液濃度 14% 他は実施例1と同様
【0068】
比較例9
液体窒素に浸漬凍結 他は実施例1と同様
【0069】
実施例2
実施例1で行った方法に加えて、解凍後の過冷却液除去段階で細胞修復に供する物質としてアロエベラ高分子パウダーを添加した。実施例1と同様の手続きで培養を開始したところ、9日目に細胞分裂を開始し、コロニーを形成した。実施例1よりも約1日早い細胞分裂を記録した。
【0070】
実施例3
実施例2で行った方法に加えて、凍結前の血液除去液および過冷却液にもアロエベラ高分子パウダーを添加した。実施例1と同様の手続きで培養を開始したところ、8日目に細胞分裂を開始し、コロニーを形成した。
【0071】
このことから推察されることは、細胞が冷凍・解凍という工程から損傷を受けているために細胞分裂の開始に時間を要したということである。実施例1、実施例2、実施例3の結果比較から、アロエベラ高分子パウダーの糖タンパクによる炎症治癒作用、および高分子多糖体の細胞活性作用が認められる。
【0072】
以下のケースでは、いずれも細胞分裂とコロニー形成を記録している。
比較例10
エアーブラストフリーザーを使用 他は実施例1と同様
過冷却液濃度;31% 細胞分裂開始;11日目
【0073】
比較例11
電磁場過冷却フリーザーを使用 他は実施例1と同様
過冷却液濃度;20% 細胞分裂開始;11日目
【0074】
比較例12
エアーブラストフリーザーを使用 他は実施例3と同様
過冷却液濃度;31% 細胞分裂開始;10日目
【0075】
比較例13
電磁場過冷却フリーザーを使用 他は実施例3と同様
過冷却液濃度;20% 細胞分裂開始;10日目
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】細胞の培養状態を示す顕微鏡写真
【図2】細胞分裂を示す顕微鏡写真
【図3】細胞のCa反応を示す顕微鏡写真
【図4】細胞のCa反応による明るさ強度の経時変化を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体または動物から採取した器官または組織であって、凍結時における該器官または組織の細胞が自らの氷晶拡大を起こさない凍結状態で、かつ冷凍保存時には該器官または組織の細胞に劣化が発生しない保存状態で、かつ解凍時における該器官または組織はその中心部と表層部で解凍温度が近似し自らの氷晶拡大を起こさない解凍状態であり、該器官または組織の細胞の損傷、破壊が進まないように、解凍後の該器官または組織に生理活性作用または生体応答作用を生起せしめたことを特徴とする生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織。
【請求項2】
請求項1で得た解凍器官または組織から採取された細胞は、生理活性調製手段が施されていることを特徴とする生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍細胞群。
【請求項3】
請求項1で採取した器官または組織は、出産時に廃棄される臍帯、胎盤または羊膜、または採取された皮膚、口内粘膜、実質臓器等の幹細胞等の生理活性を豊富に有する器官または組織であることを特徴とする請求項1記載の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織。
【請求項4】
請求項2記載の細胞群は、出産時に廃棄される臍帯、胎盤または羊膜、または採取された皮膚、口内粘膜、実質臓器等の幹細胞を豊富に有する解凍器官または組織から採取された細胞群であって、生理活性調整手段が施されたことを特徴とする、請求項2記載の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍細胞群。
【請求項5】
請求項1または請求項3における器官または組織の凍結前における該器官または組織に含浸せしめる過冷却液は、該器官または組織の凍結点を−6℃内外以下にし、かつ該器官または組織に対し毒性が微少であることを特徴とする生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織に用いる過冷却液。
【請求項6】
請求項5記載の過冷却液であって、その成分として分子量が200±30g/molのポリエチレングリコールと、生理的食塩水、または生理食塩水に生理活性に供する物質を細胞破壊が生起しない所定量添加した液体、またはリンゲル液、またはリンゲル液に生理活性に供する物質を細胞破壊が生起しない所定量添加した液体とを、所定の割合で混合した液であることを特徴とする生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織に用いる過冷却液。
【請求項7】
請求項5または請求項6記載の過冷却液であって、分子量が200±30g/molのポリエチレングリコールと、生理的食塩水、または生理的食塩水に生理活性に供する物質を細胞破壊が生起しない所定量添加した液体、またはリンゲル液、またはリンゲル液に生理活性に供する物質を細胞破壊が生起しない所定量添加した液体とを混合する際に、該ポリエチレングリコール濃度を15〜35%とし、該器官または組織の凍結点が−6℃内外以下であることを特徴とする請求項5または請求項6記載の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織に用いる過冷却液。
【請求項8】
請求項5、請求項6または請求項7記載の過冷却液であって、該過冷却液に、抗酸化剤、糖タンパク剤、高分子多糖体剤、抗生物質等の細胞の生理活性に供する物質を細胞破壊が生起しない所定量添加したことを特徴とする請求項5、請求項6または請求項7記載の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織に用いる過冷却液。
【請求項9】
請求項5、請求項6、請求項7、または請求項8記載の過冷却液であって、該過冷却液に、抗酸化剤、抗生物質等の細胞の生理活性に供する物質の他に、天然物質で糖タンパクと高分子多糖体を含有するアロエベラ高分子パウダーを、他の細胞の生理活性に供する物質との組み合わせを行って細胞破壊が生起しない所定量添加したことを特徴とする請求項5、請求項6、請求項7または請求項8記載の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織に用いる過冷却液。
【請求項10】
請求項1または請求項3における解凍器官または組織の製造方法であって、人体または動物から採取した器官または組織の血液および混雑物の除去を行い、次いで過冷却液を器官または組織に含浸させ自らの細胞に氷晶拡大が起きないようにして凍結し、次いで細胞破壊が生起しない温度で所定期間該器官または組織に劣化が起きない状態で冷凍保存した後に、該器官または組織の中心部と表面部の解凍温度を近似させて−0度に近い温度域まで急速に解凍したことによって解凍においても自らの細胞に氷晶拡大が起きないように解凍を終了し、次いで該器官または組織の温度をプラス温度に転換した後に、該器官または組織から過冷却液を除去し、次いで生理活性に供する液体を該器官または組織に含浸せしめて、当該解凍器官または組織に生理活性作用または生理応答作用を生起せしめたことを特徴とする請求項1または請求項3記載の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法。
【請求項11】
請求項1または請求項3記載の解凍器官または組織から採取した請求項2または請求項4の解凍細胞群の製造方法であって、解凍後に細胞破壊が生起しない温度、pH値、炭酸ガス濃度、および湿度を有する細胞培養液組成の至適培養環境下で、細胞修復剤および/または細胞活性補助剤等を用い、所定時間の修復および /または生育を行うという生理活性調整手段を施し、該細胞群に生理活性作用または生理応答作用を生起せしめたことを特徴とする請求項2または請求項4の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍細胞群の製造方法。
【請求項12】
請求項11における細胞培養時に、細胞修復剤および/または細胞活性補助剤として、天然物質で糖タンパクと高分子多糖体を含有するアロエベラ高分子パウダーを細胞破壊が生起しない所定量添加し、所定時間の修復および/または生育を行うという生理活性手段を施し、該細胞群に生理活性作用または生理応答作用を生起せしめたことを特徴とする請求項2、請求項4または請求項11の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍細胞群の製造方法。
【請求項13】
請求項10における人体または動物から採取した器官または組織の血液および混雑物の除去方法であって、生理的食塩水、または生理的食塩水に抗血液凝固剤や抗酸化剤や抗生物質等の生理活性に供する物質を任意に組み合わせて細胞破壊が生起しない所定量添加した溶液、またはリンゲル液、またはリンゲル液に抗血液凝固剤や抗酸化剤や抗生物質等の生理活性に供する物質を任意に組み合わせて細胞破壊が生起しない所定量添加した溶液を、該器官または組織の血管または細胞や細胞支持体等の間隙から注入し、血液および混雑物を押し出して除去することを特徴とする請求項10記載の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法。
【請求項14】
請求項10における人体または動物から採取した器官または組織の血液および混雑物の除去方法であって、生理的食塩水、または生理的食塩水に抗血液凝固剤や抗酸化剤や抗生物質等の生理活性に供する物質を任意に組み合わせて細胞破壊が生起しない所定量添加した溶液、またはリンゲル液、またはリンゲル液に抗血液凝固剤や抗酸化剤や抗生物質等の生理活性に供する物質を任意に組み合わせて細胞破壊が生起しない所定量添加した溶液の所定量を、該器官または組織と共に無菌袋に入れてから真空封印装置に搭載し、該無菌袋の内外を減圧し、次いで減圧下で無菌袋を封印し、さらに次いで大気圧に復圧することで発生する無菌袋の内部と外部との圧力差によって血液および混雑物と該生理的溶液を置換して血液および混雑物を除去することを特徴とする請求項10記載の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法。
【請求項15】
請求項10における人体または動物から採取した器官または組織に、凍結前に用いる過冷却液の含浸方法であって、該器官または組織の血管または細胞や細胞支持体等の間隙から過冷却液を注入して該器官または組織の全体に含浸せしめたことを特徴とする請求項10記載の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法。
【請求項16】
請求項10における人体または動物から採取した器官または組織に、凍結前に用いる過冷却液の含浸方法であって、該器官または組織と細胞破壊が生起しない所定量の該過冷却液とを無菌袋に入れ、次いで真空封印装置に搭載し、該無菌袋内外を減圧し、次いで減圧下で無菌袋を封印し、さらに次いで大気圧に復圧することで発生する無菌袋の内部と外部との圧力差によって該過冷却液を該器官または組織に浸透せしめることを特徴とする請求項10記載の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法。
【請求項17】
請求項10における人体または動物から採取した器官または組織の凍結方法であって、該器官または組織に細胞破壊が生起しない濃度の該過冷却液を含浸せしめた後に、該器官または組織を無菌袋に搭載し、次いで無菌袋内を脱気して封印した後に、−30℃以下に冷却された液体に浸漬して該器官、組織、または該細胞群の全体を急速凍結したことを特徴とする請求項10記載の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法。
【請求項18】
請求項10における人体または動物から採取した器官または組織の凍結方法であって、該器官または組織に細胞破壊が生起しない濃度の該過冷却液を含浸せしめた後に、該器官または組織を無菌袋に搭載し、次いで無菌袋内を脱気して封印した後に、−40℃以下の冷気を放出する冷凍装置に搭載して該器官または組織の全体を急速凍結したことを特徴とする請求項10記載の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法。
【請求項19】
請求項10における人体または動物から採取した器官または組織の凍結方法であって、該器官または組織に細胞破壊が生起しない濃度の該過冷却液を含浸せしめた後に、槽内に電磁場環境をつくる過冷却凍結装置に搭載して凍結したことによって、該過冷却液の濃度を15〜25%に低減して該器官または組織の全体を凍結したことを特徴とする請求項10記載の生体供給用、生体移植用または生体添加用の解凍器官または組織の製造方法。
【請求項20】
請求項10における冷凍保存した該器官または組織の解凍方法であって、該凍結器官または組織を減圧槽に搭載し、減圧をすすめ、マイクロ波加熱の可能な減圧圧力で所定時間、所定出力のマイクロ波照射を行い、ついでマイクロ波加熱を停止してから該凍結器官または組織の表層部に昇華が発生する圧力に減圧をすすめ、該凍結器官または組織の表層部に昇華を発生せしめて表層部の温度を低下せしめることで内部と表層部の温度差を近似せしめ、次いで圧力を再度マイクロ波加熱の可能な圧力に復圧し再度マイクロ波加熱を行い、さらに次いで再度マイクロ波加熱を停止してから再度該凍結器官または組織の表層部に昇華が発生する圧力に減圧をすすめ表層部の温度を低下せしめることで内部と表層部の温度を再度近似せしめるという工程を複数回繰り返すことで、内部と表層部の温度を近似せしめ、かつ−0℃に接近した温度帯で解凍を終了するということを特徴とする請求項10記載の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法。
【請求項21】
請求項10における解凍した該器官または組織のプラス温度への転換方法であって、−0℃に接近した温度帯で解凍を終了した後に、20℃〜30℃の温度域に保たれた生理的食塩水またはリンゲル液に、該器官または組織を浸漬してプラス温度化することを特徴とする請求項10記載の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法。
【請求項22】
請求項10における解凍器官または組織の過冷却液の除去方法であって、生理的食塩水、または生理的食塩水に抗酸化剤等の生理活性に供する物質を細胞破壊が生起しない所定量添加した溶液、またはリンゲル液、またはリンゲル液に抗酸化剤等の生理活性に供する物質を細胞破壊が生起しない所定量添加した溶液を、該解凍器官または組織の血管または細胞や細胞支持体の間隙から注入し、過冷却液を押し出して除去することを特徴とする請求項10記載の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法。
【請求項23】
請求項10における解凍器官または組織の過冷却液の除去方法であって、生理的食塩水、または生理的食塩水に抗酸化剤等の生理活性に供する物質を細胞破壊が生起しない所定量添加した溶液、またはリンゲル液、またはリンゲル液に抗酸化剤等の生理活性に供する物質を細胞破壊が生起しない所定量添加した溶液の所定量を、該器官または組織と共に無菌袋に入れてから真空封印装置に搭載し、該無菌袋の内外を減圧し、次いで減圧下で無菌袋を封印し、さらに次いで大気圧に復圧することで発生する無菌袋の内部と外部との圧力差によって過冷却液と該生理的溶液を置換して過冷却液を除去することを特徴とする請求項10記載の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法。
【請求項24】
請求項10における過冷却液除去後の解凍器官または組織への生理活性に供する液体の含浸方法であって、該液体を該解凍器官または組織の血管または細胞や細胞支持体の間隙から注入して含浸せしめることを特徴とする請求項10記載の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法。
【請求項25】
請求項10における過冷却液除去後の解凍器官または組織への生理活性に供する液体の含浸方法であって、所定量の該液体と該解凍器官または組織を無菌袋に入れてから真空封印装置に搭載し、該無菌袋の内外を減圧し、次いで減圧下で無菌袋を封印し、さらに次いで大気圧に復圧することで発生する無菌袋の内部と外部との圧力差によって含浸せしめることを特徴とする請求項10記載の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官または組織の製造方法。
【請求項26】
請求項10または請求項11における解凍器官、組織または細胞群の生理活性を判定する手段であって、該解凍器官、組織または細胞群そのものからまたは一部抽出したものからの電気応答によるか、またはプローブを負荷したものからの光信号変化によるか、または培養による細胞分裂、細胞増殖やコロニー形成によって生理活性を判定することを特徴とする請求項10または請求項11記載の生体供給用、生体移植用、生体添加用または生体投与用の解凍器官、組織または細胞群の製造方法。
【請求項27】
請求項1または請求項3における解凍器官または組織の製造システムであって、血液や混雑物を除去し、過冷却液を含浸せしめ、次いで無菌袋に脱気封入した人体または動物から採取した器官または組織を搭載するシステムは、(1)急速冷凍を可能とするリキッドフリーザー、またはエアーブラストフリーザー、または電磁場を用いた過冷却フリーザーと、(2)−60℃以下の温度で該冷凍器官または組織を所定期間保存する冷凍庫と、(3)該冷凍器官または組織の中心部と表層部の解凍温度を近似にして、かつ終了温度を−0℃に接近せしめることを可能とする急速解凍装置と、(4)該解凍器官または組織のプラス温度への転換装置と、(5)細胞の生理活性判定装置とを備えたシステムであって、解凍後の該器官または組織の生理活性作用または生体応答作用を生起せしめることを特徴とする請求項1または請求項3記載の解凍器官または組織の製造装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−247276(P2009−247276A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98782(P2008−98782)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(397015175)エリー株式会社 (3)
【Fターム(参考)】