説明

生体信号検出装置

【課題】簡単な構成で、利用者の心拍、体動および呼吸等の生体信号を正確に検出できる生体信号検出装置を提供する。
【解決手段】棒状の振動伝達ピン19を圧電素子2の径方向に突出させて金属薄板11に取り付ける。振動伝達ピン19に加わった上下方向の力を、振動伝達ピン19が有する弾性力によって、圧電素子2の圧電体12に伝達して増幅でき、圧電体12に加わる力に応じて変換される電荷をより大きくできる。圧電素子2の金属薄板11と金属薄膜13との間に生じる電圧変化を大きくでき、この電圧変化を信号処理回路17にて信号処理することにより、この電圧変化に基づく生体信号の検出をより正確にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の心拍、体動および呼吸の少なくともいずれかの生体信号を検出するための生体信号検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の生体信号検出装置としては、例えば下記特許文献1に記載のように、利用者の生体活動により生じる体表面の音や圧変化を検出するセンサパッドを、生体を横切るように複数配置するとともに、これらセンサパッド内の空気圧の変化を感知するセンサを各々のセンサパッドに接続し、このセンサからの出力信号を複数のA/D変換回路でA/D変換し、このA/D変換結果を加算手段でリアルタイム加算し、この加算結果を用いて周期算出手段で周期を算出して、この算出周期をそのまま外部へとデータ出力し、単位時間当たりの心拍数・呼吸数・体動数・ゆらぎに変換するものが知られている。
【0003】
また、この種の生体信号を抽出する方法としては、例えば下記特許文献2に記載のように、心拍呼吸生体信号などの時系列信号(アナログ信号)をA/D変換手段によりデジタル信号に変換し、信号レベル値が同一で変化傾向(上昇傾向または下降傾向)が同一であり、かつ、時間軸上で一番近い二つの点(同位相点)を同位相点検出手段で検出し、この二つの同位相点の距離(同位相点ランニング距離)を同位相点ランニング距離検出手段により検出した後、同位相点ランニング距離検出手段が検出した情報を統計処理手段により統計処理し、統計処理手段の情報を発生回数測定手段により解析し同一ランニング距離の発生回数を測定し、発生回数測定手段の測定結果を解析し発生回数の一番多いランニング距離を主要周期出力手段によって主要周期として出力することで、心拍や呼吸等の生体信号を検出するものが知られている。
【0004】
さらに、例えば下記特許文献3ないし5に記載のように、使用者の体表面から発生した振動加速度を検出する圧電センサとして、高分子圧電材料を薄膜状にし両側に電極を付着させたものを用い、体動に伴う振動成分だけを抽出し体動信号を時系列データとして出力したり、ベッドへの入床、離床、寝返りなどに伴う大きな体動があるか心拍や呼吸などに伴う微小震動があるのかを大別したり、着床した人の心臓の活動や呼吸活動により発生した寝具を伝搬する微小な振動を検出して人体の位置を特定したりするものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4423481号公報
【特許文献2】特許第4122003号公報
【特許文献3】特開平8−080285号公報
【特許文献4】特開平7−204166号公報
【特許文献5】特開平6−165770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1にかかる従来技術によれば、利用者の生体活動により生じる体表面の音や圧変化を検知するセンサパッド内の空気圧の変化に基づいて、利用者の単位時間当たりの心拍数・呼吸数・体動数・ゆらぎを検知するものであるため、これら心拍数・呼吸数・体動数・ゆらぎ等について正確に測定できるものの、これらセンサパッド内の空気圧の変化を正確に検出する必要があるため、これらセンサパッド内の空気圧の変化を感知するセンサの精度を高める必要があるとともに、これらセンサからの出力信号をA/D変換してリアルタイム加算し、この加算結果を用いて周期を算出し、この算出周期をそのまま外部へとデータ出力しなければならず、生体信号検出装置の構成が複雑であり、簡略化が容易ではない。
【0007】
また、上記特許文献2にかかる従来技術においては、心拍呼吸生体信号などの時系列信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、信号レベル値が同一で変化傾向が同一であり、かつ、時間軸上で一番近い二つの点(同位相点)を検出し、この二つの同位相点の距離(同位相点ランニング距離)を検出して統計処理して解析し、発生回数の一番多いランニング距離を主要周期として出力することによって、心拍や呼吸等の生体信号を検出するものであるから、これら心拍や呼吸等の生体信号を正確に検出することが可能であるものの、これら心拍や呼吸等の生体信号の検出をするための制御が容易でない。
【0008】
さらに、上記特許文献3ないし5に係る従来技術によれば、高分子圧電材料を薄膜状にし両側に電極を付着させた圧電センサを用いて、体動に伴う振動成分だけを抽出し体動信号を時系列データとして出力したり、ベッドへの入床、離床、寝返りなどに伴う大きな体動があるか心拍や呼吸などに伴う微小震動があるのかを大別したり、着床した人の心臓の活動や呼吸活動により発生した寝具を伝搬する微小な振動を検出して人体の位置を特定したりしており、大型のものを用いなければ、圧電センサの感度を向上させることが容易でなく、生体信号を正確に検知することが容易ではない。
【0009】
そこで本発明は、従来技術における上記問題を解決し、簡単な構成で生体信号を正確に検出できる生体信号検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するため、請求項1にかかる本発明は、利用者の心拍、体動および呼吸の少なくともいずれかの生体信号を検出するための生体信号検出装置であって、一対の電極、およびこれら一対の電極間に設けられた圧電体を有し、この圧電体に加わる力を電荷に変換して前記一対の電極に電圧変化を生じさせる板状の圧電素子と、この圧電素子の面方向に沿って突出して設けられ前記圧電体にて変換される電荷を増幅させる弾性を有する棒状の圧力伝達手段と、前記圧電素子の一対の電極間の電圧変化を検知し、この電圧変化に基づいて前記生体信号を検出する検出部と、を具備した、ことを特徴とした生体信号検出装置である。
【0011】
請求項2は、請求項1の生体信号検出装置において、圧電素子は、圧電体が厚さ方向に分極された円板状に形成され、この圧電体の両面に電極が設けられ、これら電極の周方向に離間されて複数の圧力伝達手段が取り付けられている、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3は、請求項2の生体信号検出装置において、圧力伝達手段は、圧電体の周方向に等間隔に離間された位置に、この圧電体の径方向に突出して取り付けられている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4は、請求項1ないし3いずれかの生体信号検出装置において、複数の圧電素子を具備し、これら複数の圧電素子の一方の電極は、圧力伝達手段である線状の導電線にて電気的に直列接続されている、ことを特徴とする。
【0014】
請求項5は、請求項1ないし4いずれかの生体信号検出装置において、圧電素子は、一方の電極が平板状に形成され、この一方の電極の両面に圧電体がそれぞれ設けられ、これら各圧電体の表面に他方の電極がそれぞれ設けられている、ことを特徴とする。
【0015】
請求項6は、請求項1ないし4いずれかの生体信号検出装置において、一対の圧電素子を具備し、これら一対の圧電素子は、一方の電極が平板状に形成され、この電極の一面に圧電体が設けられ、この圧電体の表面に他方の電極が設けられ、これら一対の圧電素子の圧電体が設けられている側を相対させた状態で重ねられて設置されている、ことを特徴とする。
【0016】
請求項7は、請求項1ないし6いずれかの生体信号検出装置において、圧力伝達手段の少なくとも先端部を外部に突出させた状態で、この圧力伝達手段を介して圧電体に加わる力が電荷に変換可能となるように圧電素子を覆って保護するカバー部材を具備した、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、圧電素子の面方向に沿って突出して設けられた棒状の圧力伝達手段によって、この圧力伝達手段に加わった力が圧電素子に伝達されるため、この圧電素子の圧電体に加わる力を増幅でき、この圧電体にて変換される電荷を大きくできるから、この圧電素子の一対の電極間の電圧変化を検出することによって、この電圧変化に基づく生体信号の検出をより正確にできる。特に、圧電素子に棒状の圧力伝達手段を取り付けた構成であるため、例えば空気圧の変化を感知して生体信号を検出する場合等に比べ、簡単な構成でより正確に生体信号を検出できる。
【0018】
また、円板状の圧電体の周方向に離間されて複数の圧力伝達手段が取り付けられているため、これら複数の圧力伝達手段によって圧電素子による電圧変化をより効率良く確実に増幅でき、この圧電素子の一対の電極間の電圧変化に基づく利用者の生体信号の検出をより正確にできる。
【0019】
特に、これら複数の圧力伝達手段を、圧電体の周方向に等間隔に離間された位置に、この圧電体の径方向に向けて取り付けることにより、これら圧力伝達手段を介した圧電素子の一対の電極間の電圧変化を、圧電体の周方向に亘ってより均等に増幅できるから、この圧電素子の一対の電極間の電圧変化に基づく利用者の生体信号の検出を簡単な構成でより正確にできる。
【0020】
さらに、複数の圧電素子の一方の電極のそれぞれを、圧力伝達手段である直線状の導電線にて電気的に直列接続させることにより、この導電線にて各圧電素子の間隔を保持できるとともに、この導電線をグラウンド線として用いることができ、この導電線にて圧電体に加わる力を増幅できるから、簡単な構成で、圧電素子の一対の電極間の電圧変化に基づく利用者の生体信号の検出をより正確にできる。
【0021】
また、平板状の一方の電極の両面に圧電体がそれぞれ設けられ、これら各圧電体の表面に他方の電極がそれぞれ設けられた圧電素子とし、この圧電素子の一方の圧電体と他方の圧電体とを交流接続することにより、これら一方の圧電体にて生じる電圧変化と、他方の圧電体にて生じる電圧変化とが逆転して生じ、これら圧電体から生じるノイズを打ち消し合わせて小さくできるから、この圧電素子の電圧変化に基づく利用者の生体信号の検出をより正確にできる。
【0022】
同様に、平板状の一方の電極の一面に圧電体が設けられ、この圧電体の表面に他方の電極が設けられた一対の圧電素子の圧電体が設けられている側を相対させた状態で重ねて設置し、これら一対の圧電素子それぞれの圧電体を交流接続することにより、これら一方の圧電素子の圧電体にて生じる電圧変化と、他方の圧電素子の圧電体にて生じる電圧変化とが逆転して生じ、これら圧電素子の各圧電体にて生じる電圧変化のノイズを打ち消し合わせて小さくできるため、これら圧電素子の電圧変化に基づく利用者の生体信号の検出をより正確にできる。
【0023】
さらに、圧電素子の圧力伝達手段の少なくとも先端部を外部に突出させた状態で、この圧力伝達手段を介して圧電体に加えられた力が電荷に変換可能となるようにカバー部材にて圧電素子を覆って保護することにより、これら圧力伝達手段を介した圧電体への力の伝達を抑制することなく圧電素子を保護できるため、この圧電素子による生体信号の検出精度を維持しつつ、この圧電素子の耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態による生体信号検出装置を示す概略図である。
【図2】上記生体信号検出装置の一部を示す断面図である。
【図3】上記生体信号検出装置の圧電素子を示す底面図である。
【図4】上記生体信号検出装置の設置状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態による生体信号検出装置を示す概略図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態による生体信号検出装置の一部を示す概略図である。
【図7】本発明の第4の実施に形態による生体信号検出装置の一部を示す概略図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態による生体信号検出装置の圧電素子の概要を示す正面図である。
【図9】上記圧電素子の概要を示す斜視図である。
【図10】本発明の第6の実施の形態による生体信号検出装置の概略図であり、(a)は平面図で、(b)正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の第1の実施の形態による生体信号検出装置について図1ないし図4を参照して説明する。
【0026】
この生体信号検出装置1は、例えば利用者(検体)の心拍、脈拍、呼吸、体動、ゆらぎ等の生体信号に加え、利用者の有無等を、利用者に非装着かつ非拘束な状態で検出するためのベッドセンサーである。具体的に、この生体信号検出装置1は、例えば、利用者のベッドaのベッドマットbとシーツcとの間に設置され、このベッドaを利用する利用者の生体信号を検出するものである。なお、この生体信号検出装置1としては、図4に示す一般的な成人用のベッドaの他、ベビーベッド、布団、毛布、マットレス、椅子、便座、カーペット、浴槽、自動車の座席等に取り付けて用いることもできる。
【0027】
そして、この生体信号検出装置1は、図1に示すように、複数、例えば3個の略円板状の可撓性を有する圧電素子(ピエゾ素子)2を備えている。これら圧電素子2は、振動にて変形して圧電効果によって電荷を生じ電極間に電圧変化を生じさせるものであり、電気的に直列接続された状態で、細長矩形平板状の弾性シート3上に設置されて保護されている。この弾性シート3は、図2に示すように、この弾性シート3が収容可能な平面視細長矩形状であるセンサ収容ケースとしての中空なスポンジ状マット4内に収容されており、例えば敷布団やベッドマット等の幅寸法より若干小さい程度の長さ寸法のセンサマット5として構成されている。
【0028】
具体的に、圧電素子2は、例えばユニモルフ(Unimorph)型のピエゾ電気を発生させるピエゾ電気素子としての圧電センサであって、導電性および可撓性を有する金属製の薄い円板状に形成された一方の電極としての弾性板である金属薄板11を備えている。この金属薄板11は、例えば3cm〜5cm程度の直径寸法を有しており、この金属薄板11の一面である表面には、厚さ方向に分極された円板状の圧電体12が同心状に設けられている。この圧電体12は、金属薄板11の径寸法より小さな、例えば2分の1程度の径寸法に形成されている。また、この圧電体12は、例えばポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride:PVDF)等の高分子電圧材料を薄膜化したものが用いられて形成されており、この圧電体12に少なくとも上下方向の成分を有する力が加わると、この圧電体22を構成する材料のひずみによってイオンの相対位置が変化することに基づいて、その力に比例した電荷が生じるように構成されている。さらに、この圧電体12の表面には、他方の電極となる導電性を有する金属薄膜13が積層されて設けられており、この圧電体12にて生じた電荷を金属薄板11と金属薄膜13との間に生じさせ電圧変化を生じさせる。ここで、この金属薄膜13としては、例えば銀ペースト等を圧電体12の表面に塗布等して形成されている。
【0029】
そして、これら圧電素子2が設置されている弾性シート3は、例えば合成樹脂やゴム等の弾性を有する平面視細長矩形状のシート体にて形成されており、この弾性シート3の表面上に、例えば3つの圧電素子2a,2b,2cが直線状に並べられて設置されている。これら圧電素子2a,2b,2cは、図1に示すように、弾性シート3の長手方向に沿って並べられており、この弾性シート3の幅方向の中央に位置するように、これら各圧電素子2a,2b,2cの圧電体12が設けられている側を弾性シート3の表面側に向けた状態で設置されている。
【0030】
具体的に、弾性シート3の長手方向の一端寄りに位置する圧電素子2aは、この弾性シート3の長手方向の一端縁から所定距離ほど他端側に離間させた位置に設置されており、この圧電素子2aの金属薄板11には、この圧電素子2aの取り付け位置を保持するための保持手段としての位置決めフック14が取り付けられている。この位置決めフック14は、導電性を有する金属製の薄板にて形成され、圧電素子2aの金属薄板11の裏面の縁部に溶接等されて接続されており、先端側が凹弧状に湾曲されてフック部15が設けられている。そして、この位置決めフック14は、この位置決めフック14のフック部15を弾性シート3の長手方向の一端縁に引掛けて位置決めされた状態として取り付けられている。
【0031】
さらに、各圧電素子2a,2b,2cのそれぞれは、弾性シート3の長手方向に沿って配線された導電性を有する導電線としてのグラウンド線16にて直列接続されている。このグラウンド線16は、各圧電素子2a,2b,2cの金属薄板11の裏面の中心位置を通過するように配線されており、圧電素子2aにおいては、この圧電素子2aの金属薄板11の裏面における位置決めフック14が取り付けられている位置とは反対側の縁部に、このグラウンド線16の先端部が半田付け等されて取り付けられて電気的に接続されている。また、この圧電素子2aを除く、弾性シート3の長手方向の略中間に位置する圧電素子2bおよび、弾性シート3の長手方向の他端寄りに位置する圧電素子2cのそれぞれは、これら圧電素子2b,2cの各金属薄板11の裏面の中央位置においてグラウンド線16が半田付け等されて取り付けられて電気的に接続されている。
【0032】
そして、このグラウンド線16の他端部には、検出部としての信号処理回路17に電気的に接続されている。この信号処理回路17は、アンプ(図示せず)が内蔵されており、各圧電素子2a,2b,2cの金属薄板11と金属薄膜13との間の電圧変化を検知し、この電圧変化に基づいて、利用者の心拍、脈拍、体動、呼吸、体動、ゆらぎ等の生体信号や、利用者の有無等を検出し、例えばこの信号処理回路17に接続された通報装置または安否確認通報装置等の緊急管理装置(図示せず)を介して、利用者の生体信号に関する情報や、例えば利用者の生体信号が所定時間、例えば30分間感知できない場合に発信される安否情報等の、安否に関する情報が電話や電子メール等の伝達手段を介して、予め登録した相手先に送信されるように構成されている。
【0033】
また、この信号処理回路17には、ACアダプタ(図示せず)が接続されており、このACアダプタを介して信号処理回路17へ電力が供給されるように構成されている。ここで、この信号処理装置17の内部に電池等を内蔵させて、ACアダプタを不要にすることもできる。また、この信号処理装置17をワイヤレスの構成とし、この信号処理装置17と緊急管理装置とをワイヤレス接続とすることもできる。
【0034】
さらに、各圧電素子2a,2b,2cの金属薄板11には、図1および図3に示すように、別個の検出配線としてのリード線18の一端部が半田付け等されて取り付けられて電気的に接続されている。すなわち、これら圧電素子2a,2b,2cは、これら圧電素子2a,2b,2cそれぞれの金属薄板11の裏面の外周縁に、対応するリード線18a,18b,18cの一端部が接続されている。さらに、これら各リード線18a,18b,18cそれぞれの他端部は、信号処理回路17に電気的に接続されて取り付けられている。そして、この信号処理回路17は、弾性シート3の長手方向の他端部に設置されており、この弾性シート3および各圧電素子2a,2b,2cとともにスポンジ状マット4内に収容されて取り付けられている。
【0035】
一方、これら各圧電素子2a,2b,2cの金属薄板11の裏面の縁部には、振動をピックアップして伝達するための圧力伝達手段としての細長棒状の可撓性を有する振動伝達ピン19がそれぞれ、複数、例えば2本ずつ取り付けられている。これら振動伝達ピン19は、例えばギター線やピアノ線等の柔軟性および復元力を有する素材にて形成されており、生体信号検出装置1上に載った利用者の人体の生体信号を増幅させて精度良く検出可能にするために取り付けられている。そして、これら振動伝達ピン19は、各圧電素子2a,2b,2cの金属薄板11の直径寸法に略等しい長さ寸法を有しており、これら各圧電素子2a,2b,2cの金属薄板11の中心を通過する径方向に沿って対向させて取り付けられている。すなわち、これら振動伝達ピン19は、グラウンド線16の長手方向に直交する径方向に向けて取り付けられており、各圧電素子2a,2b,2cの金属薄板11の面方向に沿って突出させて取り付けられている。言い換えると、これら振動伝達ピン19は、弾性シート3の幅方向に沿って突出しており、これら振動伝達ピン19の先端部が、弾性シート3の幅方向の両側縁近傍に位置する程度の長さ寸法に形成されている。さらに、これら振動伝達ピン19は、各圧電素子2a,2b,2cの周方向に等間隔に離間された位置に、これら圧電素子2a,2b,2cの径方向に向けて取り付けられている。
【0036】
そして、これら各振動伝達ピン19は、これら振動伝達ピン19自体にて感知する振動を圧電素子2の金属薄板11に伝達するものである。具体的に、これら振動伝達ピン19は、これら振動伝達ピン19が設けられていることによって、これら振動伝達ピン19が設けられていない場合に比べ、これら振動伝達ピンに加わる力を金属薄板11に伝達して金属薄板11をより大きく振動させて変形させ、これら振動伝達ピン19が取り付けられた圧電素子の圧電体12により大きな力を加えさせ、この圧電体12にて変換される電荷をより大きくするものであり、例えば金属線材等の弾性を有する素材にて構成されている。ここで、各圧電素子2に接続されているグラウンド線16もまた、振動伝達ピン19と同様に圧力伝達手段として機能するように構成されている。すなわち、このグラウンド線16もまた、このグラウンド線16自体にて感知する振動を圧電素子2の金属薄板11に伝達し、このグラウンド線16が設けられていない場合に比べ、金属薄板11をより大きく変形させ、このグラウンド線16が接続された圧電素子2の圧電体12にて変換される電荷を大きくし、金属薄板11と金属薄膜13との間の電圧変化を増幅させる。
【0037】
次に、上記生体信号検出装置1の作用について説明する。
【0038】
<設置>
例えば、利用者のベッドaの幅方向に、生体信号検出装置1のセンサマット5の長手方向を沿わせ、この状態で、利用者のベッドaのベッドマットbとシーツcとの間に生体信号処理装置1を設置してセットする。
【0039】
次いで、必要に応じ、この生体信号検出装置1の信号処理回路17に、緊急管理装置を接続し、この緊急管理装置を電話回線またはインターネット回線に接続するとともに、この緊急管理装置から発信される種々の情報や、電話番号または電子メールアドレス等の送信先等を適宜設定する。
【0040】
さらに、この生体信号検出装置1の信号処理回路17にACアダプタを接続し、このACアダプタを介して信号処理回路17へ電力を供給する。
【0041】
<動作>
この状態で、生体信号検出装置1が設置されたベッドaに利用者が載る等して、この生体信号検出装置1の少なくともいずれか一つの圧電素子2の金属薄板11、振動伝達ピン19またはグラウンド線16のいずれかに、少なくとも上下方向の力成分を有する圧力が加わると、これら金属薄板11、振動伝達ピン19またはグラウンド線16に加わった力が圧電素子2の圧電体12へ伝達し、この圧電体12に力が加わって変形する。
【0042】
このとき、この圧電素子2の金属薄板11に直接力が加わった場合には、この金属薄板11の厚さ方向の変形によって、圧電体12が厚さ方向に変形する。また、この圧電素子2に取り付けられているいずれかの振動伝達ピン19に力が加わった場合には、この振動伝達ピン19が変形し、この振動伝達ピン19の変形が振動として金属薄板11へと伝わり、この金属薄板11を厚さ方向に変形させ、この金属薄板11を介して圧電体12を厚さ方向に変形させる。さらに、グラウンド線16に力が加わった場合には、このグラウンド線16が変形し、このグラウンド線16の変形が、このグラウンド線16に力が加わった位置に近接して位置する圧電素子2の金属薄板11へ振動として伝わり、この金属薄板11を厚さ方向に変形させ、この金属薄板11を介して圧電体12を厚さ方向に変形させる。
【0043】
すなわち、これら振動伝達ピン19およびグラウンド線16が、圧電素子2の径方向に突出している構成としたことにより、これら振動伝達ピン19およびグラウンド線16の可撓性、すなわち弾性変形によって、圧電素子2自体に掛る力がある程度小さい場合であっても、これら振動伝達ピン19およびグラウンド線17に加わる力が振動として金属薄板11に伝達されて増幅され、これら振動伝達ピン19およびグラウンド線16が接続されている圧電素子2の金属薄板11を大きく弾性変形させ、この金属薄板11の弾性変形を介して圧電体12に大きな力が加わって変形させる。そして、この圧電体22を構成する材料のひずみによってイオンの相対位置が変化し、その力に比例した電荷が生じて、この圧電体12を挟んで位置する金属薄板11と金属薄膜13との間に比較的大きな電圧変化が生じる。
【0044】
そして、これら金属薄板11と金属薄膜13との間の電圧変化が、リード線18を介して信号処理回路17へ伝達され、生体信号処理装置1上に載った利用者の心拍、脈拍、呼吸、体動、ゆらぎ等の生体信号や、利用者の有無等が信号処理回路17での信号処理によって検出される。
【0045】
さらに、必要に応じ、この信号処理回路17に接続された緊急管理装置を介して、利用者の生体信号に関する情報や、例えば利用者の生体信号が所定時間、例えば30分間感知できない場合に発信される安否情報等の安否に関する情報が、電話または電子メール等によって電話回線またはインターネット回線を介して、予め登録した電話番号または電子メールアドレス等に送信される。
【0046】
前述のように、生体信号検出装置1上に利用者が載る等して、この生体信号検出装置1のいずれかの圧電素子2の面方向に沿って突出して設けられた棒状の振動伝達ピン19に、少なくとも上下方向の成分を含む力が加わると、この振動伝達ピン19の変形が振動として金属薄板11へ伝達され、この振動が金属薄板11から圧電体12へ伝達される。
【0047】
したがって、この振動伝達ピン19が圧電素子2の径方向に突出して設けられているため、これら振動伝達ピン19が設けられていない場合に比べ、この圧電素子2の圧電体12に加わる力をより大きく増幅でき、この圧電体12に加わった力に応じて変換される電荷をより大きくできる。よって、これら電圧素子2の金属薄板11と金属薄膜13との間に生じる電圧変化を大きくでき、この電圧変化を信号処理回路17にて信号処理することによって、この電圧変化に基づく生体信号の検出をより正確にできる。
【0048】
このため、生体信号検出装置1をベッドマットbとシーツcとの間に介在させて設置して利用者の検知信号が小さくなり、浮遊雑音が大きくなり誤作動を起こす可能性がある場合であっても、この生体信号検出装置1の圧電素子2にて利用者の生体信号を増幅させて検出できるため、利用者の生体信号の検出を正確にできる。
【0049】
すなわち、比較的安価な径寸法の小さい小型の圧電素子2を用いた場合であっても、この小型の圧電素子2の金属薄板11に振動伝達ピン19を取り付けることによって、この小型の圧電素子2の振動伝達ピン19を含んだ見掛け上の径方向の大きさを大きくでき、これら振動伝達ピン19に掛った力を金属薄板11に伝達して増幅できるため、結果として、この圧電素子2の感度を向上できる。したがって、これら振動伝達ピン19を圧電素子2に取り付けるという簡単な構成で、この圧電素子2の感度を向上できるため、感度の良い生体信号検出装置1を安価に製造可能となり、生産性を向上できる。
【0050】
特に、各圧電素子2の金属薄板11に棒状の振動伝達ピン19を取り付けた構成としたため、例えば空気圧の変化を感知して生体信号を検出する場合等に比べ、簡単な構成でより正確に利用者の生体信号を検出できるとともに、呼吸と脈拍との相関関係から得られる様々な症状を予見することが可能となる。すなわち、無呼吸症候群や熟睡状態の把握、認知症発症等の予見が可能になる。
【0051】
また、圧電素子2の円板状の金属薄板11の周方向に離間させて、互いに相対する方向に複数の振動伝達ピン19を突出させて取り付けたことにより、これら複数の振動伝達ピン19の少なくともいずれか1つに力が加わるだけで、この振動伝達ピン19に加わった力を金属薄板11に伝達して増幅でき、この増幅させた力を金属薄板11から圧電体12に伝達できる。したがって、この圧電体12にて生じる電荷を効率良く確実に増幅できるため、各圧電素子2の金属薄板11と金属薄膜13との間の電圧変化に基づいた信号処理回路17による、利用者の生体信号の検出をより正確にできる。
【0052】
特に、これら振動伝達ピン19を圧電素子2の金属薄板11の周方向に等間隔に180°離間させた位置に、この金属薄板21の径方向に向けて突出させて取り付け、さらに、これら振動伝達ピン19を弾性シート3の幅方向に沿わせた状態で、これら圧電素子2のそれぞれを弾性シード3上に設置した構成としたことにより、これら圧電素子2の振動伝達ピン19によって、弾性シート3の両側域に加わる力も検知でき、かつ、これら振動伝達ピン19を介した圧電素子2の圧電体12への力の伝達、及び金属薄板11と金属薄膜13との間の電圧変化を、この圧電素子2の周方向に亘ってより均等に増幅できるから、この圧電素子2の金属薄板11と金属薄膜13との間の電圧変化に基づく利用者の生体信号の検出を簡単な構成でより正確かつ確実にできる。
【0053】
さらに、複数の圧電素子2a,2b,2cそれぞれの金属薄膜11を、振動伝達ピン19と同様の振動伝達機能を有するグラウンド線16にて直線状に電気的に直列接続させたため、これら各圧電素子2a,2b,2cの間隔がグラウンド線16によって確実に保持され、これら各圧電素子2a,2b,2cのずれを確実に防止できると同時に、このグラウンド線16にて各圧電素子2a,2b,2cのそれぞれをグラウンドしてノイズを少なくできるとともに、振動伝達ピン19と同様に、このグラウンド線19に加わる力を振動として金属薄板11へ伝達して増幅できるため、簡単な構成で、圧電素子2の圧電体12を挟んで位置する金属薄板11と金属薄膜13との間の電圧変化に基づく利用者の生体信号の検出をより正確かつ確実にできる。
【0054】
以上のように、ベッドaに寝転んだ利用者の生体信号を正確かつ確実に検出できるため、独居老人や自宅非介護者等の睡眠状態をチェックしてベッドaへの着床および離床を正確に把握することが可能となる。このため、生体信号検出装置1をアパートやマンションの各部屋に設置して一元管理等することによって、独居老人や非介護者の入居が促進できるとともに、孤独死や無縁死などを防止できる。また、生体信号検出装置1の信号処理回路17を、医療機関や介護ステーション等に接続して遠隔モニタしたり、社会福祉ネットワークへ接続したりできる可能性があるため、社会福祉に特に有効である。
【0055】
なお、上記第1の実施の形態では、図1に示すように、各圧電素子2の振動伝達ピン19を、弾性シート3の幅方向に沿った、相対する方向に突出させた構成としたが、図5に示す本発明の第2の実施の形態のように、各圧電素子2の金属薄板11に、例えば4本の振動伝達ピン19を取り付け、これら4本の振動伝達ピン19を金属薄板11の表面に周方向に向けて90°間隔の等間隔で取り付けた構成とすることもできる。
【0056】
具体的に、これら各圧電素子2は、弾性シート3の長手方向に沿って計4個の圧電素子2a,2b,2c,2dが等間隔に並べられて設置されており、これら圧電素子2a,2b,2c,2dの金属薄板11のそれぞれがグラウンド線16に電気的に接続されて直列接続されている。さらに、これら圧電素子2a,2b,2c,2dの金属薄膜11には、それぞれリード線18a,18b,18c,18dが接続されており、これらリード線18a,18b,18c,18dのそれぞれは、信号処理回路17に電気的に接続されている。
【0057】
そして、これら各圧電素子2a,2b,2c,2dの振動伝達ピン19は、弾性シートの3長手方向に対してそれぞれ45°の角度をなして設置されており、これら各圧電素子2a,2b,2c,2dの金属薄板11の裏面の中心上を通過するようにグラウンド線16が配線され、これら各圧電素子2a,2b,2c,2dの金属薄板11の裏面の中心位置とグラウンド線16とが半田付け等されて電気的に接続されて直列接続されている。
【0058】
したがって、前述のように、各圧電素子2に取り付ける振動伝達ピン19の数を2本から4本に増やし、これら4本の振動伝達ピン19を金属薄板11の周方向に向けてバランスよく等間隔に設置することにより、これら4本の振動伝達ピン19のいずれか1つに加わる力であっても、このいずれか1つの振動伝達ピン19から圧電素子2の金属薄板11へ振動を伝達して増幅させて、圧電体12を変形でき、この圧電体12を挟んで位置する金属薄板11と金属薄膜13との間に確実に電圧変化を生じさせることができる。すなわち、センサマット5上のより広範囲に亘る力を振動伝達ピン19を介して圧電素子2にて感知できるようになるため、これら圧電素子2による利用者の生体信号の検出を簡単な構成でより感度良く正確にできる。
【0059】
さらに、図6に示す本発明の第3の実施の形態のように、金属薄板11の両面に圧電体12a,12bをそれぞれ設け、これら圧電体12a,12bそれぞれの表面に金属薄膜13a,13bを積層させたバイモルフ(Bimorph)型の圧電素子2Aを用いることもできる。この圧電素子2Aは、耐ノイズ性に優れた平衡(バランス)型のピアゾ電気素子であって、圧電体12a,12bのそれぞれは、同一材料および同一材質にて形成され、同一の特性を有するように構成されている。すなわち、この圧電素子2Aは、金属薄板11の両面に設けられている圧電体12a,12bにて生じる電荷の変位が対称的になるように構成されている。
【0060】
そして、この圧電素子2Aは、金属薄膜13a,13bのそれぞれに、リード線18d,18eの一端部が半田付け等されて電気的に接続されており、この圧電素子2Aの金属薄板11にグラウンド線16の一端部が半田付け等されて電気的に接続されている。そして、これらリード線18d,18eおよびグラウンド線16の他端部が信号処理回路17に電気的に接続されており、これらリード線18dおよびグラウンド線16の間の電圧変化と、リード線18eおよびグラウンド線16の間の電圧変化とのそれぞれが、信号処理回路17にてそれぞれ信号処理され、利用者の生体信号が検出される。このとき、これらリード線18d,18eおよびグラウンド線16としては、三芯シールド線等を用いることができる。
【0061】
このとき、この圧電素子2Aは、例えば金属薄板11が、図6に示す凹弧状に湾曲した状態Aにおいては、この圧電素子2Aの圧電体12a側の金属薄膜13aがプラス(+)に帯電し、金属薄板11がマイナス(−)に帯電すると同時に、この圧電素子2Aの圧電体12b側の金属薄膜13bがマイナス(−)に帯電し、金属薄板11がプラス(+)に帯電して、これら金属薄膜13a,13bと金属薄板11との間に逆転した電界、すなわち電圧変化を生じさせる。この逆に、例えば金属薄板11が、図6に示す凸弧状に湾曲した状態Bにおいては、この圧電素子2Aの圧電体12a側の金属薄膜がマイナス(−)に帯電し、金属薄板11がプラス(+)に帯電すると同時に、この圧電素子2Aの圧電体12b側の金属薄膜13bがプラス(+)に帯電し、金属薄板11がマイナス(−)に帯電して、これら金属薄膜13a,13bと金属薄板11との間に逆転した電界、すなわち電圧変化を生じさせる。
【0062】
したがって、この圧電素子2Aの一方の圧電体12aを挟んで位置する金属薄膜13aおよび金属薄板11の間の電圧変化と、この圧電素子2の他方の圧電体12bを挟んで位置する金属薄膜13bおよび金属薄板11の間の電圧変化とが、逆転した平衡な状態で生じる。よって、この圧電素子2Aの一方の圧電体12aと他方の圧電体12bとを交流接続することにより、これら一方の圧電体12aにて生じる電圧変化と、他方の圧電体12bにて生じる電圧変化とが逆転して逆相として現れ、これら各圧電体12a,12bに電荷が生成される際に生じるノイズ(浮遊雑音)が同相として現れて打ち消し合ってキャンセルされて小さくでき、雑音を低減できる。このため、圧電素子2AのSN比を大きくでき、この圧電素子2Aの雑音特性を向上できるから、この圧電素子2Aの電圧変化に基づく利用者の生体信号の検出をより精度良く正確にできる。
【0063】
また、図7に示す本発明の第4の実施の形態のように、上記第3の実施の形態の圧電素子2Aの代わりに、上記第1の実施の形態のユニモルフ型の圧電素子2a,2bの金属薄板11a,11b側を重ね合わせ、両面に圧電体12a,12bが設けられた態様の圧電素子としての圧電装置21を用いることもできる。この圧電装置21は、各圧電素子2a,2bの圧電体12a,12bのそれぞれが、同一材料および同一材質にて形成されており、同一の特性を有するように構成されている。また、これら圧電素子2a,2bの金属薄板11a,11bは、圧電体12a,12bが設けられていない側である裏面同士を対向させて位置させた状態、すなわち圧電体12a,12bが設けられている側を相対させた状態で、これら圧電体12a,12bにて生じる電荷の変化が対称的になるように構成されている。この場合も、上記第3の実施の形態と同様に、各圧電素子2a,2bの圧電体12a,12bを覆う各金属薄膜13a,13bにリード線18d,18eを接続し、これら圧電素子2a,2bの各金属薄板11a,11bにグラウンド線16を接続することによって、一方の圧電素子2aの圧電体12aを挟んで位置する金属薄膜13aおよび金属薄板11aの間の電圧変化と、他方の圧電素子2bの圧電体12bを挟んで位置する金属薄膜13bおよび金属薄板11bの間の電圧変化とが、逆転した平衡な状態で生じる。
【0064】
したがって、この圧電装置21の各圧電素子2a,2bの金属薄膜13a,13b間を交流接続することにより、一方の圧電素子2aの圧電体12aにて生じる電圧変化と、他方の圧電素子2bの圧電体12bにて生じる電圧変化とが逆転して現れ、これら各圧電素子2a,2bの圧電体12a,12bに電荷が生成される際に生じるノイズを打ち消し合わせて小さくできるから、上記第3の実施の形態と同様の作用効果を奏することができるとともに、一般的なユニモルフ型の圧電素子2a,2bを重ね合わせて設置しただけの構成であるから、信号処理回路17での利用者の生体信号の検出を簡単な構成でより精度良く正確にできる。
【0065】
さらに、この圧電装置21の各圧電素子2a,2bの金属薄膜13a,13bに接続されたリード線18d,18eとしては、二芯シールド線を用いることができ、これらリード線18d,18eと信号処理回路17との間には、これらリード線18d,18e間に生じるノイズを遮断するためのノイズ遮断手段としてのバランスアンプ22を電気的に取り付けることもできる。このバランスアンプ22は、演算増幅器であるオペアンプ23を備えており、このオペアンプ23のプラス(+)端子である非反転入力端子24が、一方の圧電素子2bの金属薄膜13b電気的に接続されており、この金属薄膜13bと非反転入力端子24との間に抵抗R1が電気的に直列接続されている。また、このオペアンプ23のマイナス(−)端子である反転入力端子25は、他方の圧電素子2aの金属薄膜13aに電気的に接続されており、この金属薄膜13aと反転入力端子25との間に抵抗R2が電気的に直列接続されている。さらに、この抵抗R2および反転入力端子25の間と、オペアンプ23の出力端子26との間には、抵抗R3が電気的に並列接続されている。
【0066】
よって、圧電装置21の各圧電素子2a,2bの金属薄膜13a,13b間にバランスアンプ22を接続することによって、これら圧電素子2a,2bの金属薄板11a,11bと金属薄膜13a,13bとの間に生じる電圧変化に伴のノイズをさらに抑制できるから、これら圧電素子2a,2bの電圧変化に基づく圧電装置21を用いた利用者の生体信号の検出をより精度良く正確にできる。
【0067】
さらに、図8および図9に示す本発明の第5の実施の形態のように、生体信号検出装置1の各圧電素子2を、この圧電素子2の破損等を防止するカバー部材としての保護ケース31にて覆って収容した状態で、弾性シート3上に設置することもできる。この保護ケース31は、例えばアルミニウム等の金属にて形成されており、一対の平面視正方形板状の下ケース32と上ケース33とで構成されている。これら下ケース32および上ケース33は、同じ大きさの矩形平板状に形成されており、圧電素子2の金属薄板11の幅寸法より大きく、この圧電素子2から相対する方向に突出している振動伝達ピン19の先端間の長さ寸法より小さな大きさに形成されている。
【0068】
具体的に、下ケース32は、上面および下面のそれぞれが平坦な面とされており、この下ケース32の各角部に、厚さ方向に貫通したねじ挿通孔34が設けられている。この下ケース32のねじ挿通孔34が設けられている位置の下面側には、これらねじ挿通孔34に挿通されるねじ41の頭部42、またはこのねじの軸部43にねじ止めされるねじ止め部材としてのナット44が嵌合される嵌合凹部35がそれぞれ設けられている。
【0069】
次いで、上ケース33は、表面が平坦な面とされており、この上ケース33の下面中央部には、圧電素子2が嵌合されて位置決め保持される平面視円形状かつ側面視凹状の収容凹部36が設けられている。この収容凹部36は、圧電素子2の金属薄板11の外径寸法より大きな内径寸法を有しており、この圧電素子2の最も厚い、金属薄板11上に圧電体12および金属薄膜13が積層されている中心位置の厚さ寸法より大きな深さ寸法に形成されている。すなわち、この収容凹部36は、下ケース32上に設置された圧電素子2の金属薄板11、圧電体12および金属薄膜13のいずれもが接触しない、無変形の状態、すなわち圧電体12に電荷が生じない状態で、この圧電素子11を収容凹部36内に収容できるように構成されている。
【0070】
さらに、この上ケース33の各角部には、この上ケース33を下ケース32に重ねた状態で、この下ケース32のねじ挿通孔34に連通するねじ挿通孔37が、厚さ方向に貫通して設けられている。そして、この上ケース33のねじ挿通孔37が設けられている位置の上面側にもまた、これらねじ挿通孔37に挿通されるねじ41の頭部42またはナット44が嵌合される嵌合凹部38がそれぞれ設けられている。
【0071】
そして、これら上ケース33および下ケース32は、この上ケース32の収容凹部36に圧電素子2が収容され、この圧電素子2に取り付けられている各振動伝達ピン19が、これら上ケース33と下ケース32との間を通って、これら上ケース33および下ケース32の縁部から外側に突出するように圧電素子2が設置されて取り付けられている。さらに、これら上ケース33および下ケース32の連通したねじ挿通孔34,37間にねじ41がそれぞれ挿入されてナット44にてそれぞれねじ止めされて、このねじ41の頭部42およびナット44のそれぞれが上ケース33または下ケース32のいずれかの嵌合凹部34,37内に収容されて、これら上ケース33の上面または下ケース32の下面から突出していない状態とされて取り付けられている。
【0072】
このとき、これらねじ41とナット44とによって、上ケース33の収容凹部36から、これら上ケース33の下面と下ケース32の上面との間を通過して外部へ突出している振動伝達ピン19に、いずれの力も掛らないようにするため、これら振動伝達ピン19の厚さ寸法、すなわち外径寸法より大きくなるように、上ケース33の下面と下ケース32の上面との間の間隔が位置決め保持されている。さらに、これら振動伝達ピン19は、上ケース33および下ケース32のいずれかの辺に長手方向を沿わせた状態で、これら上ケース33および下ケース32の一辺の中間位置から垂直に突出するように取り付けられている。
【0073】
以上から、生体信号検出装置1の弾性シート3上に設置されてスポンジ状マット4に収容される各圧電素子2の振動伝達ピン19の先端部を外部に突出させつつ、この圧電素子2の金属薄板11、圧電体12および金属薄膜13のそれぞれに圧力が直接掛らないように、この圧電素子2を上ケース33の収容凹部36に収容させた状態で、この生体信号検出装置1のセンサマット5のいずれかの位置に加わった力を、振動伝達ピン19を介して金属薄板11から圧電体12に加えられ、この力が圧電体12にて電荷に変換されて、金属薄板11と金属薄膜13との間に電圧変化が生じるように、各圧電素子2を保護ケース31に収容させて保護することとした。
【0074】
この結果、この保護ケース31の上ケース33と下ケース32とによるサンドイッチ構造によって、圧電素子2が外部からの力を直接受けないフリーな状態となって保護されるから、各圧電素子2の振動伝達ピン19を介した圧電体12への力の伝達を抑制することなく、この圧電素子2の金属薄板11、圧電体12および金属薄膜13そのものへの力の付加を保護ケース31にて防止でき、これら金属薄板11、圧電体12および金属薄膜13への過度の加圧や弾性変形、すなわち機械的なストレスの付加を防止できるから、これら金属薄板11、圧電体12および金属薄膜13を確実に保護できる。したがって、この保護ケース31に圧電素子2を収容させて保護することによって、この圧電素子2へのノイズバランスを向上でき、この圧電素子2による利用者の生体信号の検出精度を維持しつつ、この圧電素子2の耐久性を向上できるから、生体信号検出装置1の耐久性を向上でき、使用者の使い勝手を向上できる。
【0075】
さらに、図10(a)および図10(b)に示す本発明の第6の実施の形態のように、生体信号検出装置1の圧電素子2を1個のみとし、この生体信号検出装置1の信号処理回路17を無線方式にすることもできる。この信号処理回路17には、電波送信手段としての微弱電流送信機51が取り付けられており、この微弱電流送信機51に送信アンテナ52が取り付けられている。さらに、信号処理回路17には、この信号処理回路17を駆動させるための電源となる電池53が取り付けられており、これら信号処理回路17、微弱電流送信機51および電池52のそれぞれは、ケース体としての本体ケース54内に収容されている。この本体ケース54は、例えばプラスチック等の合成樹脂にて構成されており、スポンジ状マット4の上面側を盛り上げさせて取り付けられている。
【0076】
また、このスポンジ状マット4内には、一つの圧電素子2が収容されており、この圧電素子2は、平衡型のセンサーとして構成されている。この圧電素子2は、リード線である信号線55を介して信号処理回路17に接続されており、スポンジ状マット4の長手方向および幅方向のそれぞれにおける中心位置に設置されている。そして、この圧電素子2の各振動伝達ピン19は、スポンジ状マット4の各角部に向けて突出して設けられている。
【0077】
この結果、生体信号検出装置1に微弱電流送信機51および送信アンテナ52を取り付けるとともに電池53を取り付けることによって、この生体信号検出装置1を、例えば通報装置または安否確認通報装置等の緊急管理装置に無線接続することが可能となり、商用電源等に接続する必要がなくなるから、この生体信号検出装置1を有線接続する場合等に比べ、この生体信号検出装置1自体のの使い勝手を向上できる。
【0078】
なお、上記各実施の形態においては、圧電素子2に2本または4本の振動伝達ピン19を取り付けた構成としたが、これら振動伝達ピン19は、必要に応じ圧電素子2に何本取り付けても良い。また、振動伝達ピン19と同様に作用するグラウンド線16を用いたが、このグラウンド線16として弾性および可撓性を有さない電線等を用いて単なるグラウンド用とし、振動伝達ピン19と同様の作用を生じない構成とすることもできる。
【0079】
また、圧電素子2の圧電体12としては、例えば水晶、ロッシェル塩、チタン酸バリウム、ニオブ酸リチウム等の様々な結晶や圧電セラミックスを用いて構成することもでき、厚さ方向に分極された圧電体12の他、径方向に分極されたものを用いることもできる。また、この圧電素子2としては、上述したユニモルフ型およびバイモルフ型のほか、単板型、積層型、ムーニ型、シンバル型、モノモルフ(Monomorph)型、マルチモルフ(Multimorph)型等のいずれのタイプのピエゾ電気素子であっても、対応させて用いることができる。
【0080】
さらに、上記第6の実施の形態において、生体信号検出装置1の信号処理回路を無線接続としたが、この信号処理回路に、外部と電話回線接続可能な端末回路やLAN接続可能な端末回路を組み込んだ一体的な構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0081】
1 生体信号検出装置
2,2a,2b,2c,2d,2A 圧電素子
3 弾性シート
4 スポンジ状マット
5 センサマット
11 金属薄板(電極)
12,12a,12b 圧電体
13,13a,13b 金属薄膜(電極)
14 位置決めフック
15 フック部
16 グラウンド線
17 信号処理回路(検出部)
18,18a,18b,18c,18d,18e リード線
19 振動伝達ピン(圧力伝達手段)
21 圧電装置(圧電素子)
22 バランスアンプ
23 オペアンプ
24 非反転入力端子
25 反転入力端子
26 出力端子
31 保護ケース(カバー部材)
32 下ケース
33 上ケース
34 ねじ挿通孔
35 嵌合凹部
36 収容凹部
37 ねじ挿通孔
38 嵌合凹部
41 ねじ
42 頭部
43 軸部
44 ナット
51 微弱電流送信機
52 送信アンテナ
53 電池
54 本体ケース
55 信号線
a ベッド
b ベッドマット
c シーツ
A 凹弧状に湾曲した状態
B 凸弧状に湾曲した状態
R1,R2,R3 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の心拍、体動および呼吸の少なくともいずれかの生体信号を検出するための生体信号検出装置であって、
一対の電極、およびこれら一対の電極間に設けられた圧電体を有し、この圧電体に加わる力を電荷に変換して前記一対の電極に電圧変化を生じさせる板状の圧電素子と、
この圧電素子の面方向に沿って突出して設けられ前記圧電体にて変換される電荷を増幅させる弾性を有する棒状の圧力伝達手段と、
前記圧電素子の一対の電極間の電圧変化を検知し、この電圧変化に基づいて前記生体信号を検出する検出部と、
を具備したことを特徴とした生体信号検出装置。
【請求項2】
圧電素子は、圧電体が厚さ方向に分極された円板状に形成され、この圧電体の両面に電極が設けられ、前記圧電体の周方向に離間されて複数の圧力伝達手段が取り付けられている
ことを特徴とした請求項1記載の生体信号検出装置。
【請求項3】
圧力伝達手段は、圧電体の周方向に等間隔に離間された位置に、この圧電体の径方向に突出して取り付けられている
ことを特徴とした請求項2記載の生体信号検出装置。
【請求項4】
複数の圧電素子を具備し、
これら複数の圧電素子の一方の電極は、圧力伝達手段である線状の導電線にて電気的に直列接続されている
ことを特徴とした請求項1ないし3いずれかに記載の生体信号検出装置。
【請求項5】
圧電素子は、一方の電極が平板状に形成され、この一方の電極の両面に圧電体がそれぞれ設けられ、これら各圧電体の表面に他方の電極がそれぞれ設けられている
ことを特徴とした請求項1ないし4いずれかに記載の生体信号検出装置。
【請求項6】
一対の圧電素子を具備し、
これら一対の圧電素子は、一方の電極が平板状に形成され、この電極の一面に圧電体が設けられ、この圧電体の表面に他方の電極が設けられ、これら一対の圧電素子の圧電体が設けられている側を相対させた状態で重ねられて設置されている
ことを特徴とした請求項1ないし4いずれかに記載の生体信号検出装置。
【請求項7】
圧力伝達手段の少なくとも先端部を外部に突出させた状態で、この圧力伝達手段を介して圧電体に加わる力が電荷に変換可能となるように圧電素子を覆って保護するカバー部材を具備した
ことを特徴とした請求項1ないし6いずれかに記載の生体信号検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−19847(P2012−19847A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158378(P2010−158378)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(509152415)株式会社キャスコム (4)
【Fターム(参考)】