説明

生体分子の反応用チップ

【課題】短時間かつ容易に、また、正確に生体分子の反応及び洗浄を行うことができる手段を提供する。
【解決手段】分注チップは、ピペット、自動分注チップ等の分注器具に装着して用いることができ、生体反応、通常の生体分子の分析等の条件に耐えうるものであり、また、前記分注チップの内部に収容された、核酸、蛋白質、酵素、抗原、抗体、糖から選ばれる生体分子が固定化された支持体とを含むことにより、短時間かつ容易に生体分子の反応及び洗浄を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体分子の反応用チップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生化学分野等における分析検査・実験等の際、種々の手動又は自動の分析装置が使用されている。自動分析装置には、検体や試薬等の液体をノズルで自動的に採取し、これを所定の測定シーケンスに従い処理する装置がある。一般に広く用いられている装置としては、その処理に用いられているノズルの先端に分注チップを装着し、分注チップの先端より液体を吸入・吐出する方式の自動分析装置である。この分注チップは、一般に使い捨てのものであり、使用の都度ノズルに着脱して用いられる。手動分析でも同様に、分注ピペットなどが用いられ、液体を吸入・吐出し、使用の都度使い捨てとなる。
【0003】
また、特異的な反応により検出可能な生体物質の検出には、従来マイクロアレイが用いられている。マイクロアレイとは、微量のDNA等の生体分子を固相上に配置したものであり、サンプルを蛍光色素等で標識し、その標識したサンプルを固相上の生体分子に反応させるものである。それにより、サンプル中の生体分子の同定と定量を行うことができる。
マイクロアレイとしては、例えば、複数の塩基配列における変異を高精度で解析を行い、試料を低減化し、迅速に効率よく解析を行う手段として、キャピラリ構造を複数備えたアレイ基板と、前記キャピラリ構造の内面に核酸プローブが固相化された検出部とを具備したマイクロアレイが知られている(特許文献1)。
また、生体物質検出に関する一連の作業の自動化に適用可能なマイクロアレイ用基材として、生体試料を複数箇所に固定できる平面上の底部および底部の周縁に立設する壁部を少なくとも有する容器上の試料固定部と底部が水平になるように試料固定部を所定の高さに支持する支持部を有するマイクロアレイ用基材が知られている(特許文献2)。
更に、二次元シグナルを検出することによって行う生体分子の分析を、簡便かつ定量的に行う方法として、生体分子を固相上に局在化させ、二次元的に走査して得た固相上の二次元画像を読みとるスキャナを用いて読み取り、得られた二次元画像データを解析することも知られている(特許文献3)。
【0004】
しかしながら、従来のマイクロアレイを用いた核酸やタンパク質を検出する手法では、各工程を操作者が直接管理し、操作するものであったため、操作者の操作能力の有無に処理結果が大きく依存すると共に、操作者に大きな負担をかけ、また、処理に時間がかかると共に、クロスコンタミネーションが生ずるおそれがあるという問題点を有していた。
一方、これらの問題点を克服するために、自動ハイブリダイゼーション装置が各メーカーから市販されている。しかしながら、これらの装置は、精密水流ポンプ、変温槽等を必要とするため、装置規模が拡大するという問題点、装置自体が高価であるという問題点を有していた。更に、これらの装置を用いると、一度に処理できる検体数は通常4検体前後であり、多検体の同時検出には、装置規模を大幅に拡大(拡張ユニット増設)することによってのみ可能となる。また、マイクロアレイの洗浄工程では、一枚当たりのスライドに対して大量の洗浄溶液(Lオーダー)が必要であることも問題点として指摘されてきた。
【特許文献1】特開2004−191254号公報
【特許文献2】特開2004−45179号公報
【特許文献3】特開2003−207505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生体分子の反応及び洗浄を正確かつ簡便に行う手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、分注チップと、前記分注チップの内部に収容された、生体分子が固定化された支持体とを含むことにより、短時間かつ容易に生体分子の反応及び洗浄を行い得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)分注チップと、前記分注チップの内部に収容された、生体分子が固定化された支持体とを含む、生体分子の反応用チップ。
(2)自動分注機に用いるものであることを特徴とする、(1)に記載の生体分子の反応用チップ。
(3)前記生体分子が核酸、蛋白質、酵素、抗原、抗体、糖から選ばれる(1)又は(2)に記載の生体分子の反応用チップ。
(4)前記支持体の構成材質がプラスチック、無機高分子、金属、天然高分子、セラミックから選ばれる(1)〜(3)のいずれか一つに記載の生体分子の反応用チップ。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、短時間かつ容易に生体分子の反応及び洗浄を行うことができる。また、正確に生体分子の反応及び洗浄を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、分注チップ(tip)と、前記分注チップの内部に収容された、生体分子が固定化された支持体とを含む、生体分子の反応用チップに関する。以下に、本発明を詳細に説明する。
【0009】
分注チップは、ピペット、自動分注チップ等の分注器具に装着して用いることができ、生体反応、通常の生体分子の分析等の条件に耐えうるものであれば、形状、材質、大きさ等は、特に制限はない。
分注チップは、両端が開口した筒形状であり、分注チップの一端は分注器具のノズルに装着され、他端は試料液、検出試薬・洗浄液などの液体を吸入・吐出する。本発明における分注チップの形状としては、特に制限はない。分注チップ内部の容積を小さくし、反応などに要する試薬の量を減らしつつ、内部の支持体全体に試薬が行き渡るように、分注チップの中央部の、分注チップの吸い上げ方向に対して垂直な断面の形状を、円ではなく、細長い楕円や細長い長方形等にすることが好ましい。また、本願発明の分注チップは、例えば、分注チップと分注器具のノズルの密封性向上の為に、分注チップの分注器具のノズルへの装着面に円周状の突起部を設けたもの、ヘッドピース、フィルター、Oリング等のシール部材が装着されたもの等でもよい。例えば、図1に示すように、生体分子が固定化された支持体をヘッドピースに保持させ、ヘッドピースにフィルターを装着して、これを分注チップのノズルチャンバーと接合することによって、本発明の生体分子反応用チップを得ることもできる。
分注チップの材質としては、例えば、生体分子の固定化及び生体反応などに用いられる溶剤に不溶であり、かつ常温もしくはその付近の温度範囲内、例えば0℃〜100℃、で固体であるものが挙げられる。また、分注チップ内部に含まれる本発明の支持体をサンプルと反応及び洗浄させた後、シグナルを容易に感度良く検出するために、分注チップの材質は透明材質であることが好ましい。更に、現在知られていなくても、本発明を適用することができる分注チップであれば、採用することができる。
【0010】
本発明における生体分子は特に制限されず、例えば、核酸、蛋白質、酵素、抗原、抗体、糖等が挙げられる。核酸としては、天然もしくは合成DNA(オリゴデオキシリボヌク
レオチドを含む)、またはRNA(オリゴリボヌクレオチドを含む)等が挙げられ、これらの核酸は1本鎖でも2本鎖でもよい。また、生体分子は、検出しようとする未知物質でもよいし、未知物質を検出するための既知物質でもよい。更に、生体分子は、蛍光色素等で標識されていてもよい。
【0011】
本発明における生体分子の支持体への固定化は特に制限されず、例えば、化学的又は物理的結合によって固定化されていてもよいし、ゲルマトリクス等によって固定化されていてもよい。また、生体分子は、直接支持体に固定化されていてもよいし、生体分子に結合性を有するリガンド(生体分子固定試薬)等を介して間接的に固定化されてもよい。更に、本発明の支持体に固定化される生体分子は、一種であってもよく、二種以上であってもよい。複数種の生体分子を固定する場合の配置などについては、生体分子の種類、検出方法、用途等により適宜選択されうる。
さらに、Spot synthesis法(Heine N, Germeroth L, Schneider-Mergener J, Wenschuh H: A modular approach to the spot synthesis of 1,2,5-trisubstituted hybridizations on cellulose membranes. Tetrahedron Lett 2001, 42:227-230.)、フォトリソグラフィー技術(Fodor SPA, Read JL, Pirrung LC, Stryer L, Lu AT, Solas D: Light-directed, spatially addressable parallel chemical synthesis. Science 1991, 251:767-773.)やFmoc法(Hasegawa K, Sha YL, Bang JK, Kawakami T, Akaji K, Aimoto S: Preparation of phosphopeptide thioesters by Fmoc- and Fmoc(2-F)-solid phase synthesis. Lett Pept Sci 2002, 8:277-284.)、アミダイト法[特許第3129723号(P3129723)]等を用いて、支持体又は支持体上の担体上に固定した生体分子に新たに複数の任意の生体分子を結合(伸長)させることもできる。
【0012】
本発明における支持体(又は担体あるいはスライドともいう)としては、生体分子を固定化することができ、生体反応、例えばハイブリダイゼーション等、通常の生体分子の分析の条件に耐えうるものであれば、特に制限はない。例えば、固定化および生体反応などに用いられる溶剤に不溶であり、かつ常温もしくはその付近の温度範囲内、例えば0℃〜100℃、で固体又はゲル状であるものが挙げられる。
上記支持体の材質として、例えば、プラスチック、無機高分子、金属、天然高分子、セラミックなどが挙げられる。
上記プラスチックとして、例えば、合成樹脂(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、共重合体等)及び天然樹脂を挙げることができる。
前記熱可塑性プラスチックとしては、例えば、ポリカルボジイミド、アイオノマー(スチレン系、オレフィン系)、ポリノルボルネン、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシメチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリパラメチルスチレン、ポリアリルアミン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリブタジエン、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシベンゾイル、ポリオキシエチレン、酢酸セルロース、ポリジメチルシロキサン、ポリイソブチレン、セルローストリアセテート、ポリ−p−フェニレンテレフタラミド、ポリイソプレン、ポリアクリロニトリル、塩素プラスチック(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化エチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン)、フッ素プラスチック(テトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン)、ニトロセルロース、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66)、ポリアミドイミド、ポリイミド(熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド)、ポリエチレンプラスチック(塩素化、高密度、低密度)、ポリビニルプラスチック(ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリパラビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール)、液晶ポリマー(ポリエステル系液晶高分子)、アクリレートプラスチック(アミノポリアクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリメチルメタクリレート、エチルポリメタクリレート、ブチ
ルポリメタクリレート)、熱可塑性エラストマー(スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、1,2−ポリブタジエン系、塩化ビニル系、フッ素系、ポリアイオノマー系、塩素化ポリエチレン系、シリコーン系)等を具体的に挙げることができる。
また、前記熱硬化性プラスチックとしては、例えば、エポキシ、ポリキシレン、ポリグアナミン、ポリジアリルフタレート、ポリビニルエステル、ポリフェノール、不飽和ポリエステル、ポリフラン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリマレイン酸、メラミン、ユリア、アルキド、ベンゾグアナミン、ポリシアナート、ポリイソシアナート等を具体的に挙げることができる。
また、前記共重合体プラスチックとしては、例えば、イソブチレン無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリルアクリレートスチレン共重合体、アクリロニトリルEPDMスチレン共重合体、アクリロニトリルスチレン共重合、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、ブタジエンスチレンメチルメタクリレート共重合体、エチレン塩化ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−ブタジエンスチレン共重合体、ポリエーテルエーテルケトン共重合体、フッ化エチレンポリプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンパーフロロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレンエチレン共重合体等を具体的に挙げることができる。
さらに、天然樹脂としては、例えば、セルロース、ロジン、コーバル、ダンマル、カナダバルサム、エレミ、サンダラック、グッタベルカ、ウルシ、シュラック、コハク、じん皮繊維、葉脈繊維、果実繊維、獣毛繊維、繭繊維、羽毛繊維、キチン、キトサン、石綿、アスベスト及びこれらの誘導体等を具体的に挙げることができる。
また、上記合成樹脂に、染料、発色剤、可塑剤、顔料、重合禁止剤、表面改質剤、安定剤、密着性付与剤、熱硬化剤、分散剤、紫外線劣化防止剤等を必要に応じて添加した合成樹脂を用いることができる。さらに、前記合成樹脂としては、形状を保持するために異なる種類の前記合成樹脂を積層させていてもよく、単一合成樹脂であってもよい。また、前記合成樹脂を2種類以上混合したポリマーアロイであってもよい。
また、上記無機高分子としては、例えば、ガラス、水晶、カーボン、シリカゲル及びグラファイト等を具体的に挙げることができる。
また、上記金属としては、本発明に用いることができる限り、特に制限はないが、周期律表第2周期〜第7周期のI、II、III、IV、V、VI、VII、VIII族および遷移元素から選ばれる金属、又は同金属を含む合金が好ましく挙げられ、アルミニウム、チタン、白金、タングステン、モリブデン、金、銅、ニッケル等が特に好ましく挙げられる。
また、上記合金としては、例えば、洋白(成分:Cu, Ni, Zn)、真鍮(成分:Cu, Zn)、ブロンズ(成分:Cu, Be)、モネル(成分:Cu, Ni, Fe, Mn)、ニッケルコバルト合金(成分:Ni, Co)、ニッケルクロム合金(成分:Ni, Cr)、コバルト合金(成分:Co, Ni, Cr)、ステンレス(成分:Ni, Cr, Fe)、銀タングステン(成分:Ag, W)、bチタン(成分:Ti, V, Al)、abチタン(成分:Ti, V, Al)、NT合金(成分:Ti, Ni)、アルミニウム合金(成分:Al, Cu, Mg, Si, Mn, Zn)、ジュラルミン(成分:Al, Cu, Si, Fe, Mn, Mg, Zn)、マグネシウム合金(成分:Mg, Al, Zn)、K24(成分:Au)、K18(成分:Au, Ag, Cu)、ベリリウム銅(成分:Cu, Be)、鋳鉄(成分:Fe, Mn, S, C)、炭素鋼(成分:Fe, C, Si, Mn, P, S)、青銅鋳物(成分:Cu, Sn, Zn, Pb)、りん青銅鋳物(成分:Cu, Zn, P)、黄銅鋳物(成分:Cu, Zn, Pb)、マンガン黄銅(成分:Cu, Zn, Mn, Fe,Al)、シルジン青銅鋳物(成分:Cu, Si, Zn)、アルミニウム青銅鋳物(成分:Cu, Al,Fe, Ni, Mn)、エリンバー(成分:Ni, Cr, Mn)、エリンバーエクストラ(成分:Ni, Cr,Co, Mn)、インバー(成分:Ni, Fe)、スーパーインバー(成分:Fe, Ni, Co)、ステンレスインバー(成分:Fe, Co, Cr)、Malottes(成分:Sn, Bi, Pb)、リポウィッツ(Lipowitz)(成分:Sn, Bi, Pb, Cd)、ウッズ(Wood's)(成分:Sn, Bi, Pb, Cd)、マンガニン(成分:Cu, Mn, Ni, Fe)、イザベリン(成分:Cu, Mn, Al)、コンスタンタン(成分:Cu, Ni)、アルクレス(成分:Fe, Cr, Al)、カンタル(成分:Cr, Fe, Al, Co)
、アルメル(成分:Ni, Al)、磁性材料(Fe, Ni, Co等強磁性遷移元素を含む材料)、パーマロイ(成分:Fe, Ni)、アルパーム(成分:Fe, Al)、フェライト(Fe2O3を主成分とする複合酸化物)、センダスト(成分:Fe, Si, Al)、スーパーセンダスト(成分:Fe, Si, Al, Ni,)、アルニコ(成分:Fe, Al, Ni, Co)、水素吸蔵金属(ランタンニッケル合金(成分:La, Ni)等)、Co-Cr系合金、SnO2系酸化物、Nb-Ti合金、制振合金(振動を低減もしくは吸収、振動の伝播を遮断する合金材料、Al-Zn超塑性合金、サイレントアロイ、ニチノール等)、電極用材料、半導体材料(シリコン、ゲルマニウム、カリウムヒ素等)等が具体的に挙げられる。
また、前記金属は、他の金属で蒸着又はメッキ処理(加工)されていなくてもよいが、他の金属で蒸着又はメッキ処理(加工)されていてもよい。さらに、前記金属は、単一金属であってもよいが、形状を保持するために異なる種類の前記金属を積層させていてもよい。
本発明における支持体として上記金属を用いる場合、支持体が金属のみから構成されていてもよいし、非金属材料上に金属が接着、蒸着又はメッキ等により積層されていてもよい。
また、上記セラミックとしては、例えば、アパタイト、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素及び炭化ホウ素等が具体的に挙げられる。
【0013】
上記支持体の形状は、特に問われないが、箔(フォイル)状、平板(プレート)状、薄片(ウェーハ)状、フィルター状、ビーズ状等が挙げられる。また、マイクロタイタープレートのような形状であってもよい。さらに、得られる結果の保存を容易にするため、平板等の裏面をシール等に使用できる材料(接着剤等)を塗布、コート等をすることによって、シールとしても使用することもできる。また、それらの大きさについては、特に制限は無い。
【0014】
生体分子が固定化された支持体が分注チップ内部に収容されたとは、分注チップ内部の空間に支持体が存在することを意味し、分注チップの液体などを吸入・吐出する開口部から支持体が落下しない限り、分注チップ内部に支持体が固定化されずに単に挿入されているだけでもよく、分注チップ内部に支持体が固定化されていてもよい。分注チップ内部に支持体を固定化する態様としては、図1のように支持体をヘッドピースなどの部品にはめ込むことによって固定化する態様や、支持体をチップ内に設けられた突起部にはめ込んで固定化する態様などが挙げられる。また、1つの分注チップに含まれる支持体の数は、生体分子の分析及び洗浄を行うことができる限り、特に制限はない。
【0015】
分注チップが吸入・吐出する試料溶液は、生体分子を含んでいれば、特に制限はなく、例えば、核酸抽出液や蛋白質抽出液、生体試料から調製されたcDNA溶液等でもよい。また、試料溶液中の生体分子は蛍光色素等で標識されていてもよい。
【0016】
本発明の生体分子の反応用チップの使用方法は特に制限されないが、試料液、洗浄液又は反応基質液などを、支持体上の生体分子固定化部がこれらの液に浸漬されるようノズルから吸引し、チップ内で、支持体に固定化された生体分子と試料中の生体分子との反応、洗浄、及び前記反応の検出を行うことが好ましい。例えば、支持体に固定化された生体分子と反応する生体分子が試料中に存在するかどうかを、自動分注機を用いて解析する場合は、本発明の生体分子の反応用チップを例えば以下のような方法で使用することができる。
試料中の生体分子をビオチン、ジゴキシゲニンなどのハプテン、または蛍光色素等で標識する。標識された生体分子が固定化された支持体を分注チップ内に収容して得られた生体分子反応用チップを、自動分注機にセットする。ここで用いる自動分注機は、本発明の生体分子の反応用チップを用いることができれば特に制限はない。マイクロタイタープレートなどの容器に、試料溶液、洗浄バッファー、反応バッファーなどを分注しておく。自
動分注機が所定の順序で所定の試薬を所定量、所定のタイミングで吸入・吐出するように、自動分注機のプログラムを設定し、それを実行する。試料中の生体分子に由来する標識であって、支持体に固定化された生体分子と反応しているものの有無を検出する。
このように、支持体に固定化された生体分子と反応する生体分子が試料中に存在するかどうかを解析することができる。また、試料中の生体分子に由来する標識であって、支持体に固定化された生体分子と反応しているものの量を検出することで、支持体に固定化された生体分子と反応する生体分子が試料中にどれくらい含まれるか定量することもできる。更に、同様の方法により、支持体に固定化された生体分子と反応する生体分子を試料中から単離することもできる。また、同様の方法により、生体分子の多型を解析することもできる。また、上記検出は、標識の種類に応じて通常用いられる方法を使用することができる。例えば、蛍光、酵素反応等を利用することによって検出できる。
また、自動分注機が自動で行うこれらの工程を手動で行うことにより、手動の分注機を用いて、本発明の生体分子の反応用チップを使用することができる。
【0017】
上記のように本発明の生体分子の反応用チップは、ハイブリダイゼーションなどの生体分子間の反応、洗浄、標識の検出反応等を分注チップ内部で行う。このような生体分子の反応用チップを用いることによって実験を行う操作者の負担が軽減されてクロスコンタミネーションの危険性が減少すると共に、操作者の操作能力にあまり依存することなく、生体分子の反応及び洗浄を正確かつ簡便に行うことが可能となった。また、本発明の生体分子の反応用チップを用いると使用する試薬量及び洗浄液量を最小限に抑えることができる。
【0018】
また、本発明の生体分子の反応用チップは、手動の分注機等で用いることもできるが、自動分注機で用いることが好ましい。自動分注機を用いた場合には、更に以下のようなメリットがある。これまで、ハイブリダイゼーション等の反応を自動で行うためには、自動分注装置などの大規模で高価な装置が必要であった上、多検体を同時に検出する場合には、より大規模な装置を必要としていた。また、一枚当たりのスライドに対して大量の洗浄溶液が必要であった。本発明の生体分子の反応用チップを自動分注機で用いると、従来の大規模な装置を要することなく、極めて多数の試料について、より短時間でより正確かつ簡便に生体分子の反応及び洗浄を行うことができ、かつ、反応及び洗浄に使用する試薬量及び洗浄液量も最小限に抑えることができる。
【0019】
以下に本発明の実施例を示す。
【実施例1】
【0020】
[DNAオリゴマーの担体への固定化、ビオチン標識DNAオリゴマーを用いたハイブリダイゼーションによる評価]
配列番号1〜4に示すオリゴヌクレオチド(10塩基)を45mMクエン酸二アンモニウム水溶液に溶解して、オリゴヌクレオチド溶液(50pmol/μl)を調整した。
ポリカルボジイミドコートスライド(6.5×15×1mm)(日清紡績株式会社)の所定の位置に、前記オリゴヌクレオチド溶液およびバッファーをPixsys DNA microarray spotter ( Cartesian Technologies社製)を用いて3箇所ずつスポットした。スポットの大きさは直径250μmであった。次いで、Uvstratalinker 2400(ストラタジーン社製、中心波長254nm)を用い、スライドから16cm離れた地点から、前記スライドに400mJ/cm2の紫外線を150秒間照射した。その後、前記スライドを水中で30分間振とうし、洗浄した後に乾燥させた。
上記DNAオリゴマーを固定したスライド(4枚)を、図1に示すように、透明なポリプロピレン製のチップ(4個)(株式会社中島製作所に作製依頼)内にそれぞれ挿入した。これらチップを自動分注機(Magtration System 12GC 、プレシジョンシステムサイエンス社製)の所定の位置(4箇所)にセットした。また、マイクロタイタープレート(丸
底型72−wellポリスチレン製、ロシュダイアグノスティックス社製)の所定の位置(4箇所ずつ)に、減菌水(1ml)、0.9%NaCl溶液(1ml)、1×洗浄バッファー(1ml、ロシュダイアグノスティックス社製)、AV−HRPコンジュゲート溶液(1ml、ロシュダイアグノスティックス社製)およびTMB Stabilized Substrate forHRP(1ml、プロメガ社製)をそれぞれ分注した。さらに、配列番号5〜8に示す5'末端ビオチン標識オリゴヌクレオチド(10塩基)を、終濃度35ng/350μlとなるように80%UniHyb Hybridization Buffer (Telechem International 社製)にそれぞれ溶解し、それら溶液を上記マイクロタイタープレートの所定の位置(4箇所)にそれぞれ分注した。そのマイクロタイタープレートを前述の自動分注機の所定の位置にセットした。次いで、その自動分注機を用いて、前記4種類のターゲットDNA(ビオチン標識オリゴヌクレオチド)を用いたハイブリダイゼーション、洗浄および発色反応を行うため、以下に示すような自動分注機のプログラムを作成した。
(プログラム)
(1)ターゲットDNA溶液(300μl)を100μl/secの流速でチップ内に吸い上げ、37℃にて30分間保持後、100μl/secの流速でチップから排出する。(2)1×洗浄バッファー(300μl)を100μl/secの流速でチップ内に吸い上げ、室温にて30秒間保持後、100μl/secの流速でチップから排出する。
(3)AV−HRPコンジュゲート溶液(500μl)を100μl/secの流速でチップ内に吸い上げ、室温にて30分間保持後、100μl/secの流速でチップから排出する。
(4)1×洗浄バッファー(300μl)を100μl/secの流速でチップ内に吸い上げ、室温にて30秒間保持後、100μl/secの流速でチップから排出する。
(5)TMB Stabilized Substrate for HRP(500μl)を100μl/secの流速でチップ内に吸い上げ、室温にて15分間保持後、100μl/secの流速でチップから排出する。
(6)1×洗浄バッファー(300μl)を100μl/secの流速でチップ内に吸い上げ、室温にて30秒間保持後、100μl/secの流速でチップから排出する。
(7)0.9%NaCl溶液(500μl)を100μl/secの流速でチップ内に吸い上げ、室温にて30秒間保持後、100μl/secの流速でチップから排出する。
4種類のターゲットDNAを用いて、上記のプログラムを実行し、ハイブリダイゼーション、洗浄および発色反応を行った。これに要した時間は約1時間半であった。発色は、ペルオキシターゼで標識したストレプトアビジンとTMB(テトラメチルベンジジン)を用いて行った。
【0021】
得られた検出結果を表1に示す。表1の結果から明らかなように、固定したオリゴヌクレオチドに対してターゲットDNAが完全に相補的な配列を有している場合にのみ、特異的なハイブリダイゼーションシグナルが非常に明瞭に検出された。
【0022】
【表1】

【実施例2】
【0023】
[ペプチドのポリカーボネート担体への固定化、ペプチド固定化担体の酵素反応による評価]
ペプチド合成機を用いて、配列番号9及び配列番号10に示すアミノ酸配列を有するペプチド(6残基及び8残基)を合成した。特願2004−319087(PCT/JP2005/1882)の方法に準じて、前記合成ペプチド及び配列番号11に示すオリゴヌクレオチド(14塩基)の5'末端にアミノ基を導入したオリゴヌクレオチド(グレンリサーチ社製)を、等モルずつ0.1M 炭酸水素ナトリウムバッファー(pH8.0)に溶解し、DMF(ジメチルホルムアミド)に溶解した10倍モルのDSS(Disuccinimidyl suberate:ピアス社製)を加えて、37℃にて2時間インキュベートして、2種類の溶液を得た。次いで、前記溶液を逆相HPLC (Waters社製, μBondasphere,C8 300A,3.9×150)を用いて精製した後に濃縮し、45mMクエン酸二アンモニウム水溶液に溶解して2種類のペプチド溶液(5pmol/μl)を調製した。
Pixsis microarray spotter (Cartesian Technologies社製)を用いて、前記ペプチド溶液をポリカーボネートスライド(日本高分子社製)表面上にスポットした。スポット径の大きさは直径0.3mmであった。次いで、Uvstratalinker 2400(ストラタジーン社製,中心波長254nm)を用い、スライドから16cm離れた地点から、前記スライドに60mJ/cm2の紫外線を24秒間照射した。その後、前記スライドを水中で30分間振とうし、洗浄した後に乾燥させた。
上記ペプチドを固定したスライド(2枚)を、図1に示すように、透明なポリプロピレン製のチップ(2個)(株式会社中島製作所に作製依頼)内にそれぞれ挿入した。これらチップを自動分注機(Magtration System 12GC、プレシジョンシステムサイエンス社製)の所定の位置(2箇所)にセットした。また、マイクロタイタープレート(丸底型72−wellポリスチレン製、ロシュダイアグノスティックス社製)の所定の位置(2箇所ずつ)に、洗浄バッファー(1×PBS−0.2% Tween 20溶液)、チロシンキナーゼを含む反応バッファー1 [2 U/50μl p60c-src kinase (Upstate社製)、25mM Tris(pH7.4)、15mM MgCl2、7mM MnCl2、0.5mM EGTA、100μM ATP]、セリンキナーゼを含む反応バッファー2[セリンPKA kinase(Upstate社製) 、25mM Tris(pH7.4)、15mM MgCl2、1mM DTT、2mM EGTA、100μM ATP、2U
PKA]、FITC標識anti-phosphotyrosine 抗体(シグマアルドリッチ社製)を含む検
出バッファー1(1μg/100μl抗体、1×PBS、0.2% Tween 20,1%BSA)、ローダミン標識anti-phosphoserine抗体を含む検出バッファー2(1μg/100μl抗体、1×PBS、0.2% Tween 20,1%BSA)を分注した。そのマイクロタイタープレートを前述の自動分注機の所定の位置にセットした。ローダミンNHS(モレキュラープローブス社製)を用いて0.1M NaHCO3(pH9.0)中でローダミンを抗リン酸化アミノ酸抗体(コスモバイオ社製)に導入することによって、ローダミン標識抗リン酸化アミノ酸抗体を作成し、これをローダミン標識抗リン酸化アミノ酸抗体として用いた。次いで、その自動分注機を用いて、前記キナーゼを用いたリン酸化反応、洗浄および検出を行うため、以下に示すような自動分注機のプログラムを作成した。
(プログラム)
(1)反応バッファー溶液(300μl)を100μl/secの流速でチップ内に吸い上げ、30℃にて45分間保持後、100μl/secの流速でチップから排出する。
(2)洗浄バッファー(300μl)を100μl/secの流速でチップ内に吸い上げ、室温にて30秒間保持後、100μl/secの流速でチップから排出する。
(3)検出バッファー溶液(500μl)を100μl/secの流速でチップ内に吸い上げ、室温にて45分間保持後、100μl/secの流速でチップから排出する。
(4)洗浄バッファー(300μl)を100μl/secの流速でチップ内に吸い上げ、室温にて30秒間保持後、100μl/secの流速でチップから排出する。上記のプログラムを実行し、リン酸化反応、洗浄および抗体反応を行った。これに要した時間は約1時間半であった。次いで、FLA 5000(富士写真フィルム社製)を用いて蛍光を測定した。
【0024】
得られた検出結果を表2に示す。表2の結果から明らかなように、固定したペプチドに対してチロシンキナーゼがチロシンを有しているペプチドにのみ、特異的なリン酸化反応を非常に明瞭に検出できた。
【0025】
【表2】

【実施例3】
【0026】
[糖の担体への固定化、糖固定化担体のレクチンを用いた相互作用による評価]
特願2004−319087(PCT/JP2005/1882)の方法に準じて、2−アミノエチル−β−D−ガラクトピラノシド(三谷産業株式会社製)、2−アミノエチル−β−D−グルコ
ピラノシド(三谷産業株式会社製)及び配列番号11に示すデオキシチミジル酸とデオキシシチジル酸から構成されるポリマーの5'末端にアミノ基を導入したオリゴヌクレオチド(グレンリサーチ社製:10塩基)を、メタノール:イソプロピルアルコール:滅菌水:DMSO(5:5:5:1)に溶解し、トリブチルアミン溶液(和光純薬社製)を加えてpHを8.0に調整した。次いで、2倍モルのDSS(ピアス社製)を加えて、42℃にて5時間インキュベートした。次いで、逆相HPLC(Waters社製, μBondasphere,C8 300A、3.9×150)を用いて精製した後に濃縮し、45mMクエン酸二アンモニウム水溶液に溶解して糖溶液(1pmol/μl)を調製した。
Pixsis microarray spotter (Cartesian Technologies社製)を用いて、前記糖溶液をポリカルボジイミドコートスライド(日清紡績社製)表面上にスポットした。スポット径の大きさは直径0.15mmであった。次いで、Uvstratalinker 2400(ストラタジーン社製,中心波長254nm)を用い、スライドから16cm離れた地点から、前記スライドに120mJ/cm2の紫外線を50秒間照射した。その後、前記スライドを水中で30分間振とうし、洗浄した後に乾燥させた。
上記糖を固定したスライド(1枚)を、図1に示すように、透明なポリプロピレン製のチップ(1個)(株式会社中島製作所に作製依頼)内にそれぞれ挿入した。これらチップを自動分注機(Magtration System 12GC、プレシジョンシステムサイエンス社製)の所定の位置(1箇所)にセットした。また、マイクロタイタープレート(丸底型72−wellポリスチレン製、ロシュダイアグノスティックス社製)の所定の位置(1箇所ずつ)に、FITC標識レクチン(Sophora japonica由来)を1%BSAを含む1×PBST(1×PBS-0.2% Tween 20)溶液に1mMの濃度で溶解した反応溶液、洗浄バッファー(1×PBST溶液)を分注した。FITC標識レクチンはA. McPherson等(McPherson,A.; Hankins, C. N.; Shannon, L. J. Biol. Chem. 1987, 262, 1791-1794)の方法に準じて作製した。次いで、その自動分注機を用いて、前記レクチンを用いた相互作用、洗浄および検出を行うため、以下に示すような自動分注機のプログラムを作成した。
(プログラム)
(1)レクチン溶液(300μl)を100μl/secの流速でチップ内に吸い上げ、30℃にて90分間保持後、100μl/secの流速でチップから排出する。
(2)洗浄バッファー(300μl)を100μl/secの流速でチップ内に吸い上げ、室温にて30秒間保持後、100μl/secの流速でチップから排出する。
上記のプログラムを実行し、レクチンとの相互作用、洗浄および抗体反応を行った。これに要した時間は約1時間半であった。次いで、FLA 5000(富士写真フィルム社製)を用いて蛍光を測定した。
【0027】
得られた検出結果を表3に示す。表3の結果から明らかなように、ガラクトースを含むスポットのみにシグナルが明瞭、かつ、特異的に検出されたことから、相互作用が特異的に行なわれていることが示された。
【0028】
【表3】

【実施例4】
【0029】
[ハプテンのアガロース担体への固定化、ハプテン固定化担体の抗体を用いた相互作用による評価]
配列番号12記載のオリゴヌクレオチドの5'末端に、C6アルキル基スペーサーを介してビオチン(biotin:化合物1)及びジゴキシゲニン(DIG:化合物2)を市販のDNA合成器を用いて合成した。得られた化合物を45mMクエン酸二アンモニウム水溶液に溶解して、オリゴヌクレオチド溶液(0.5pmol/μl)を調整した。
V. Afanassiev等の方法(Nucleic Acids Res., 2000; 28: e66)に準じて表面をアガロースゲルでコートして作製したスライドガラス(6.5×15×1mm)の所定の位置に、前記オリゴヌクレオチド溶液およびバッファーをPipette Man(Gibco社製)を用いて2箇所ずつスポットした。スポットの大きさは直径1 mmであった。次いで、Uvstratalinker
2400(ストラタジーン社製、中心波長254nm)を用い、スライドから16cm離れた地点から、前記スライドに400mJ/cm2の紫外線を150秒間照射した。その後、前記スライドを水中で2分間振とうし、洗浄した後に室温にて乾燥させた。
上記オリゴヌクレオチドを固定したスライド(1枚)を、図1に示すように、透明なポリプロピレン製のチップ(1個)(株式会社中島製作所)内に挿入した。このチップを自動分注機(Magtration System 12GC、プレシジョンシステムサイエンス社製)の所定の位置(1箇所)にセットした。また、マイクロタイタープレート(丸底型72−wellポリスチレン製、ロシュダイアグノスティックス社製)の所定の位置(1箇所ずつ)に、Cy3標識したanti-biotin antibody(goat由来)(RockLand社製)を1%BSAを含む1×PBST溶液に1mMの濃度で溶解した反応溶液、洗浄バッファー(1×PBST溶液)を分注した。Cy3標識anti-biotin antibodyは、Cy3 Ab Labelling Kit(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて標識した。次いで、その自動分注機を用いて、前記抗体を用いた相互作用、洗浄および検出を行うため、以下に示すような自動分注機のプログラムを作成した。
(プログラム)
(1)抗体溶液(300μl)を100μl/secの流速でチップ内に吸い上げ、30℃にて5分間保持後、100μl/secの流速でチップから排出する操作を2回繰り返す。
(2)洗浄バッファー(300μl)を100μl/secの流速でチップ内に吸い上げ、室温にて30秒間保持後、100μl/secの流速でチップから排出する操作を4回繰り返す。
上記のプログラムを実行し、抗体との相互作用および洗浄を行った。これに要した時間は約12分であった。次いで、FLA 5000(富士写真フィルム社製)を用いて蛍光を測定した。
【0030】
得られた検出結果を表4に示す。表4の結果から明らかなように、ビオチンを含むスポットのみにシグナルが明瞭、かつ、特異的に検出されたことから、相互作用が特異的に行なわれていることが示された。
【0031】
【表4】

【実施例5】
【0032】
[ハプテンの金担体への固定化、ハプテン固定化担体の抗体を用いた相互作用による評価]
配列番号12記載のオリゴヌクレオチドの5'末端に、C6アルキル基スペーサーを介してビオチン(biotin:化合物1)及びジゴキシゲニン(DIG:化合物2)を市販のDNA合成器を用いて合成した。得られた化合物を45mMクエン酸二アンモニウム水溶液に溶解して、オリゴヌクレオチド溶液(0.5pmol/μl)を調整した。
真空蒸着装置(VPC-260、真空機工株式会社)を用いて、金を蒸着させたスライドガラス(6.5×15×1mm)の所定の位置に、前記オリゴヌクレオチド溶液およびバッファーをPipette Man(Gibco社製)を用いて2箇所ずつスポットした。スポットの大きさは直径1 mmであった。次いで、Uvstratalinker 2400(ストラタジーン社製、中心波長254nm)を用い、スライドから16cm離れた地点から、前記スライドに400mJ/cm2の紫外線を150秒間照射した。その後、前記スライドを水中で2分間振とうし、洗浄した後に室温にて乾燥させた。
上記オリゴヌクレオチドを固定したスライド(1枚)を、図1に示すように、透明なポリプロピレン製のチップ(1個)(株式会社中島製作所)内に挿入した。このチップを自動分注機(Magtration System 12GC、プレシジョンシステムサイエンス社製)の所定の位置(1箇所)にセットした。また、マイクロタイタープレート(丸底型72−wellポリスチレン製、ロシュダイアグノスティックス社製)の所定の位置(1箇所ずつ)に、Cy3標識したanti-DIG antibody(sheep由来)(RockLand社製)を1%BSAを含む1×PBST溶液に1mMの濃度で溶解した反応溶液、洗浄バッファー(1×PBST溶液)を分注した。Cy3標識anti-DIG antibodyは、Cy3 Ab Labelling Kit(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて標識した。次いで、その自動分注機を用いて、前記抗体を用いた相互作用、洗浄および検出を行うため、以下に示すような自動分注機のプログラムを作成した。
(プログラム)
(1)抗体溶液(300μl)を100μl/secの流速でチップ内に吸い上げ、30℃にて5分間保持後、100μl/secの流速でチップから排出するする操作を4回繰り返す。
(2)洗浄バッファー(300μl)を100μl/secの流速でチップ内に吸い上げ
、室温にて30秒間保持後、100μl/secの流速でチップから排出する操作を4回繰り返す。
上記のプログラムを実行し、抗体との相互作用および洗浄を行った。これに要した時間は約22分であった。次いで、FLA 5000(富士写真フィルム社製)を用いて蛍光を測定した。
【0033】
得られた検出結果を表5に示す。表5の結果から明らかなように、ジゴキシゲニンを含むスポットのみにシグナルが明瞭、かつ、特異的に検出されたことから、相互作用が特異的に行なわれていることが示された。
【0034】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の生体分子反応用チップの一例を示す模式図である。左が生体分子反応用チップの作製工程、右が作製された生体分子反応用チップの側面図及び上面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分注チップと、前記分注チップの内部に収容された、生体分子が固定化された支持体とを含む、生体分子の反応用チップ。
【請求項2】
自動分注機に用いるものであることを特徴とする、請求項1に記載の生体分子の反応用チップ。
【請求項3】
前記生体分子が核酸、蛋白質、酵素、抗原、抗体および糖から選ばれる請求項1又は2に記載の生体分子の反応用チップ。
【請求項4】
前記支持体の構成材質がプラスチック、無機高分子、金属、天然高分子およびセラミックから選ばれる請求項1〜3のいずれか一項に記載の生体分子の反応用チップ。

【図1】
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【公開番号】特開2007−147600(P2007−147600A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287938(P2006−287938)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】