生体器官拡張器具
【課題】2つの自己拡張型ステントを備え、かつ、それぞれのステントを良好に目的部位に留置することが可能な生体器官拡張器具を提供する。
【解決手段】生体器官拡張器具1は、自己拡張型の第1のステント3および第2のステント4と、ガイドワイヤルーメン21を有するチューブ状本体と、ステント3、4を先端部内に収納し、基端側に移動させることにより、ステント3、4を露出させるステント収納用筒状部材5とを備え。第2のステント4は、第1のステント3より所定長基端側に配置されている。生体器官拡張器具1は、第1のステント3の後端に近接もしくは当接しかつ造影性を有する第1の基端方向移動抑制部31と、第2のステント4の後端に近接もしくは当接しかつ造影性を有する第2の基端方向移動抑制部41とを備えている。
【解決手段】生体器官拡張器具1は、自己拡張型の第1のステント3および第2のステント4と、ガイドワイヤルーメン21を有するチューブ状本体と、ステント3、4を先端部内に収納し、基端側に移動させることにより、ステント3、4を露出させるステント収納用筒状部材5とを備え。第2のステント4は、第1のステント3より所定長基端側に配置されている。生体器官拡張器具1は、第1のステント3の後端に近接もしくは当接しかつ造影性を有する第1の基端方向移動抑制部31と、第2のステント4の後端に近接もしくは当接しかつ造影性を有する第2の基端方向移動抑制部41とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、胆管、気管、食道、尿道、消化管その他の臓器などの生体内に形成された狭窄部または閉塞部に、ステントを留置するための生体器官拡張器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、血管、胆管、食道、気管、尿道、消化管その他の臓器などの生体管腔または体腔の狭窄部あるいは閉塞部にステントを留置して、管腔または体腔空間を確保する生体器官拡張器具が提案されている。
上記生体器官拡張器具により配送されるステントとしては、機能および留置方法によって、バルーン拡張型ステントと自己拡張型ステントとがある。
バルーン拡張型ステントは、ステント自身に拡張機能はなく、ステントを目的部位に留置するには、例えばステントを目的部位まで挿入した後、ステント内にバルーンを位置させてバルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを拡張(塑性変形)させ目的部位の内面に密着させて固定する。
このタイプのステントは上記のようなステントの拡張作業が必要であるが、収縮したバルーンにステントを直接取り付けて留置することもできるので、留置に関してはさほど問題がない。
【0003】
これに対して、自己拡張型ステントは、ステント自身が収縮および拡張機能を有している。このステントを目的部位に留置するためには、収縮させた状態にて目的部位に挿入した後、収縮状態の維持のために負荷した応力を除去する。例えば、目的部位の内径より小さい外径のシース内にステントを収縮させて収納し、このシースの先端を目的部位に到達させた後、ステントをシースより押し出す。押し出されたステントは、シースより解放されることにより応力負荷が解除され、収縮前の形状に復元し拡張する。これにより、目的部位の内面に密着し固定する。
このタイプのステントは、ステント自身が拡張力を有しているので、バルーン拡張型ステントのような拡張作業は必要なく、血管の圧力等によって径が次第に小さくなり再狭窄を生じるといった問題もない。
血管内の狭窄部は、短い領域において発症する場合が多いが、所定長の領域にて発生する場合、また、近接して2カ所発生する場合などがある。
特開2005−118571号公報(特許文献1)のように複数のステントにより1つのステントが構成されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−118571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のものでは、複数のステントに分離するものの個々のステントを任意の部位に留置することは困難であり、また、生体内留置作業時におけるステントの把握が容易ではなく、目的部位に良好に配置することが困難であった。
本発明の目的は、2つの自己拡張型ステントを備える生体器官拡張器具であって、それぞれのステントを良好に目的部位に留置することが可能な生体器官拡張器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張可能な第1および第2のステントと、ガイドワイヤルーメンを有するチューブ状本体と、前記第1および第2のステントを先端部内に収納したステント収納用筒状部材とを備え、かつ前記第1および第2のステントが前記チューブ状本体の先端部を覆うように配置され、かつ前記ステント収納用筒状部材を前記チューブ状本体に対して基端側に移動させることにより、前記第1および第2のステントを露出可能である生体器官拡張器具であって、
前記第2のステントは、前記第1のステントより所定長基端側に配置されており、前記生体器官拡張器具は、前記第1のステントの後端に近接もしくは当接しかつ造影性を有する第1の基端方向移動抑制部と、前記第2のステントの後端に近接もしくは当接しかつ造影性を有する第2の基端方向移動抑制部とを備えている生体器官拡張器具。
【0007】
(2) 前記チューブ状本体は、該チューブ状本体の先端側に位置し、前記第1のステントの先端に近接もしくは当接する第1のステント用の先端方向移動抑制部を備えている上記(1)に記載の生体器官拡張器具。
(3) 前記チューブ状本体は、該チューブ状本体の先端側に位置し、前記第2のステントの先端に近接もしくは当接する第2のステント用の先端方向移動抑制部を備えている上記(1)または(2)に記載の生体器官拡張器具。
(4) 前記チューブ状本体は、前記第1の基端方向移動抑制部より所定長基端方向に延びる補強部を備えている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(5) 前記チューブ状本体は、前記第2の基端方向移動抑制部より所定長基端方向に延びる補強部を備えている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(6) 前記チューブ状本体は、前記第1の基端方向移動抑制部から前記第2のステントの先端部付近もしくは先端部内に到達する補強部を備えている上記(3)ないし(5)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(7) 前記第1の基端方向移動抑制部および/または前記第2の基端方向移動抑制部の後端部は、基端方向に向かって縮径するテーパー部となっている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(8) 前記ステント収納用筒状部材の先端部は、造影性を有するものとなっている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(9) 前記ステント収納用筒状部材は、前記第1のステントを収納する部分と前記第2のステントを収納する部分間が柔軟部となっている上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(10) 前記第1のステントと前記第2のステントは、前記拡張時の外径が異なるものである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【0008】
(11) 前記チューブ状本体は、ガイドワイヤルーメンを有する先端側チューブと、基端側チューブと、前記先端側チューブの基端部および前記基端側チューブの先端部が固定されるとともに前記ガイドワイヤルーメンと連通する開口を備える固定チューブとを備えるものである上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(12) 前記生体器官拡張器具は、前記ステント収納用筒状部材に一端部が固定され、前記チューブ状本体内を延びるとともに該チューブ状本体の基端側に牽引することにより、前記ステント収納用筒状部材を基端側に移動させるための少なくとも一つの牽引ワイヤを備えている上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(13) 前記チューブ状本体には、前記牽引ワイヤを巻き取り、前記ステント収納用筒状部材を基端側に移動させるための牽引ワイヤ巻取機構を備える操作部を有する上記(12)に記載の生体器官拡張器具。
(14) 前記生体器官拡張器具は、前記基端側チューブ内を通り、前記固定チューブ内に侵入する線状剛性付与体を備えている上記(11)ないし(13)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(15) 前記操作部は、前記牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構を備えている上記(14)に記載の生体器官拡張器具。
(16) 前記操作部は、前記牽引ワイヤ巻取機能の前記牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構を備えている上記(14)または(15)に記載の生体器官拡張器具。
(17) 前記牽引ワイヤ巻取機構は、操作用回転ローラと、該操作用回転ローラと同軸的かつ一体的に設けられるとともに、該操作用回転ローラより小径の巻取シャフト部を備え、該巻取シャフト部に前記牽引ワイヤの基端部が固定されている上記(14)ないし(16)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【発明の効果】
【0009】
本発明の生体器官拡張器具は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能な第1および第2のステントと、ガイドワイヤルーメンを有するチューブ状本体と、第1および第2のステントを先端部内に収納したステント収納用筒状部材とを備え、かつ第1および第2のステントがチューブ状本体の先端部を覆うように配置され、かつステント収納用筒状部材をチューブ状本体に対して基端側に移動させることにより、第1および第2のステントを露出可能である。第2のステントは、第1のステントの後端部に近接しかつ所定長基端側に配置されている。そして、生体器官拡張器具は、第1のステントの後端に近接もしくは当接しかつ造影性を有する第1の基端方向移動抑制部と、第2のステントの後端に近接もしくは当接しかつ造影性を有する第2の基端方向移動抑制部とを備えているので、造影性を有する第1の基端方向移動抑制部を用いることにより、第1のステントを良好に目的部位に配置することができ、さらに、第2のステントは、造影性を有する第1の基端方向移動抑制部と造影性を有する第2の基端方向移動抑制部との間に位置するので、その位置把握が容易でありかつ第2のステントの後端付近に位置する造影性を有する第2の基端方向移動抑制部を用いることにより、良好に目的部位に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の部分省略外観図である。
【図2】図2は、図1の生体器官拡張器具の先端部の拡大外観図である。
【図3】図3は、図1の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。
【図4】図4は、図1の生体器官拡張器具のステント収納用筒状部材付近の拡大断面図である。
【図5】図5は、図1の生体器官拡張器具のスライドチューブ付近の拡大断面図である。
【図6】図6は、図1の生体器官拡張器具の固定チューブ付近の拡大断面図である。
【図7】図7は、図2のA−A線断面拡大図である。
【図8】図8は、図2のB−B線断面拡大図である。
【図9】図9は、図2のC−C線断面拡大図である。
【図10】図10は、図1の生体器官拡張器具のステント収納用筒状部材の基端部およびスライドチューブの先端部付近の拡大断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の作用を説明するための説明図である。
【図12】図12は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の作用を説明するための説明図である。
【図13】図13は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。
【図14】図14は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。
【図15】図15は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。
【図16】図16は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。
【図17】図17は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。
【図18】図18は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。
【図19】図19は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具のステント収納用筒状部材の基端部付近の拡大断面図である。
【図20】図20は、本発明の生体器官拡張器具に使用されるステントの一例の外観図である。
【図21】図21は、本発明の生体器官拡張器具の操作部付近の拡大正面図である。
【図22】図22は、図21に示した生体器官拡張器具の操作部付近の拡大背面図である。
【図23】図23は、図21に示した生体器官拡張器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
【図24】図24は、図21に示した生体器官拡張器具の操作部分のみの右側面図である。
【図25】図25は、図21に示した生体器官拡張器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の生体器官拡張器具について実施例を用いて説明する。
本発明の生体器官拡張器具1は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能な第1のステント3および第2のステント4と、ガイドワイヤルーメン21を有するチューブ状本体と、第1のステント3および第2のステント4を先端部内に収納したステント収納用筒状部材5とを備え、かつ第1のステント3および第2のステント4がチューブ状本体の先端部を覆うように配置され、かつステント収納用筒状部材5をチューブ状本体に対して基端側に移動させることにより、第1のステント3および第2のステント4を露出可能となっている。第2のステント4は、第1のステント3より所定長基端側に配置されている。生体器官拡張器具1は、第1のステント3の後端に近接もしくは当接しかつ造影性を有する第1の基端方向移動抑制部31と、第2のステント4の後端に近接もしくは当接しかつ造影性を有する第2の基端方向移動抑制部41とを備えている。
【0012】
本発明の生体器官拡張器具1は、ガイドワイヤルーメン21を有するチューブ状本体と、自己拡張型の第1のステント3および自己拡張型の第2のステント4を収納したステント収納用筒状部材5とを備える。
そして、この実施例の生体器官拡張器具1では、チューブ状本体は、ガイドワイヤルーメン21を有する先端側チューブ2と、基端側チューブ9と、先端側チューブ2の基端部および基端側チューブ9の先端部が固定されるとともにガイドワイヤルーメン21と連通する開口23を備える固定チューブ8とにより構成されている。なお、チューブ状本体の構成としては、このようなものに限定されるものではない。また、この実施例の生体器官拡張器具1では、ステント収納用筒状部材5に一端部が固定され、チューブ状本体内を延びるとともに基端側に牽引することにより、ステント収納用筒状部材5を基端側に移動させるための移動手段を構成する牽引ワイヤ6(6a,6b)を備えている。さらに、この実施例の生体器官拡張器具1は、チューブ状本体の基端部には、牽引ワイヤ6を巻き取り、ステント収納用筒状部材5を基端側に移動させるための牽引ワイヤ巻取機構を備えている。
【0013】
この実施例の生体器官拡張器具1は、先端側チューブ2、第1のステント3、第2のステント4、基端側チューブ9、ステント収納用筒状部材5、牽引ワイヤ6、スライドチューブ7,固定チューブ8および牽引ワイヤ6の巻取機構を有する操作部10を備えている。そして、固定チューブ8は、先端側チューブ2と基端側チューブ9を接続するとともに、先端側チューブ2の基端部と連通する開口23を備えている。
【0014】
先端側チューブ2は、図1ないし図10に示すように、先端から基端まで貫通するガイドワイヤルーメン21を有するチューブ体であり、先端に固定された先端部材25により、先端部が形成されており、その先端に、先端開口25aを備えている。なお、先端部は、先端側チューブと一体に形成してもよい。そして、先端側チューブ2は、基端部において、固定チューブ8に固定されている。また、先端側チューブ2の基端は、固定チューブ8に形成された開口23と連通している。また、先端側チューブ2の基端部は、図6に示すように、湾曲している。また、開口23は、図1および図6に示すように、基端側に向かって傾斜するように斜めに形成されている。これにより、ガイドワイヤの誘導を容易にしている。
【0015】
先端側チューブ2は、図に示すように、先端から基端まで貫通したガイドワイヤルーメン21を有するチューブ体である。先端側チューブ2としては、外径が0.3〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.5mmであり、内径が0.2〜1.5mm、好ましくは0.3〜1.2mm、長さが、20〜700mm、好ましくは30〜550mmである。
【0016】
そして、先端部材25は、ステント収納用筒状部材5の先端より先端側に位置し、かつ、図1ないし図4に示すように、先端に向かって徐々に縮径するテーパー状に形成されていることが好ましい。このように形成することにより、狭窄部への挿入を容易なものとする。また、先端側チューブ2は、第1のステント3よりも先端側に設けられ、ステント収納用筒状部材の先端方向への移動を阻止するストッパーを備えることが好ましい。この実施例では、先端部材25の基端は、ステント収納用筒状部材5の先端と当接可能なものとなっており、上記のストッパーとして機能している。
なお、先端部材(先端部)25の最先端部の外径は、0.5mm〜1.8mmであることが好ましい。また、先端部材(先端部)25の最大径部の外径は、0.8〜4.0mmであることが好ましい。さらに、先端側テーパー部の長さは、2.0〜20.0mmが好ましい。
【0017】
また、先端側チューブ2は、図1ないし図4に示すように、第1のステント3の基端側への移動を規制するために、チューブ2の先端より所定距離基端側となる位置に設けられた第1のステント基端方向移動抑制部(第1の基端方向移動抑制部)31と、この第1のステント基端方向移動抑制部31よりも所定距離基端側となる位置に設けられた第2のステント基端方向移動抑制部(第2の基端方向移動抑制部)41を備えている。
ステント基端方向移動抑制部31,41は、環状突出部であることが好ましい。そして、第2のステント基端方向移動抑制部41より先端側が、ステント収納部位となっている。第1の基端方向移動抑制部31の外径は、圧縮された第1のステント3の基端と当接可能な大きさとなっている。そして、ステント収納用筒状部材5が、基端側に移動しても、第1の基端方向移動抑制部31によりステント3は配置位置を維持するため、ステント収納用筒状部材5より、結果的に放出される。同様に、ステント基端方向移動抑制部41の外径は、圧縮されたステント4の基端と当接可能な大きさとなっている。そして、ステント収納用筒状部材5が、基端側に移動しても、第2の基端方向移動抑制部41によりステント4は配置位置を維持するため、ステント収納用筒状部材5より、結果的に放出される。
【0018】
第1の基端方向移動抑制部31は、造影性(具体的には、X線造影性、超音波造影性)を備えている。第1の基端方向移動抑制部31は、その全体が造影性を有することが好ましいが、第1の基端方向移動抑制部31の先端側部分が少なくとも造影性を有することが必要である。さらに、この実施例では、第1の基端方向移動抑制部31は、ほぼ同一外径にて延びる筒状部分とこの筒状部分より基端方向に向かって縮径するテーパー部とを有するものとなっている。
同様に、第2の基端方向移動抑制部41は、造影性(具体的には、X線造影性、超音波造影性)を備えている。第2の基端方向移動抑制部41は、その全体が造影性を有することが好ましいが、第2の基端方向移動抑制部41の先端側部分が少なくとも造影性を有することが必要である。さらに、この実施例では、第2の基端方向移動抑制部41は、ほぼ同一外径にて延びる筒状部分とこの筒状部分より基端方向に向かって縮径するテーパー部とを有するものとなっている。
【0019】
そして、第1の基端方向移動抑制部31および第2の基端方向移動抑制部41への造影性の付与は、例えば、それら係止部の外面への造影性部材の被嵌、係止部を造影性剤材料による形成、さらには、係止部形成材料中への造影剤の添加などにより行うことができる。造影性部材もしくは造影性剤材料に用いられるX線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、タンタル、ステンレス、白金、あるいはそれらの合金等が好適である。そして、造影性部材としては、X線造影性材料によりワイヤを形成し先端側チューブの外面に巻きつけること、もしくはX線造影性材料によりパイプを形成し、かしめる又は接着することにより取り付けられる。また、造影性付与を係止部形成材料中への造影剤の添加により行う場合には、31,41をX線造影剤を含有する合成樹脂にて形成する。X線造影剤としては、例えば、タングステン、硫酸バリウム、ビスマス、酸化ビスマス、金、白金等の微粉末が好ましい。
【0020】
さらに、この実施例では、チューブ状本体(具体的には、先端側チューブ2)は、第1の基端方向移動抑制部31より所定長基端方向に延びる補強部43を備えている。この実施例では、補強部43は、先端側チューブ2の外面に固定された薄肉チューブにより形成されている。補強部43の基端部は、後述する第2の先端方向移動抑制部42に到達するものとなっている。また、補強部43の先端部は、第1の基端方向移動抑制部31よりも先端側に突出している。よって、補強部43は、第1の基端方向移動抑制部31の前後の所定長部分を補強している。また、この実施例では、第1の基端方向移動抑制部31は、補強部43に固定されたものとなっている。
【0021】
また、この実施例では、チューブ状本体(具体的には、先端側チューブ2)は、第2の基端方向移動抑制部41より所定長基端方向に延びる補強部44を備えている。この実施例では、補強部44は、先端側チューブ2の外面に固定された薄肉チューブにより形成されている。また、補強部44の先端部は、第2の基端方向移動抑制部41よりも先端側に突出している。よって、補強部44は、第2の基端方向移動抑制部41の前後の所定長部分を補強している。また、この実施例では、第2の基端方向移動抑制部41は、補強部44に固定されたものとなっている。
補強部43,44を構成する薄肉チューブの形成材料としては、ある程度の硬度を有することが望ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどの硬質もしくは半硬質材料が好適である。
【0022】
そして、この実施例の生体器官拡張器具1では、先端側チューブ2は、図3および図4に示すように、第1の基端方向移動抑制部31より所定長(ほぼ第1のステント3の軸方向長)先端側となる位置に設けられた第1の先端方向移動抑制部(第1のステント先端方向移動抑制部)32を備えている。第1の先端方向移動抑制部32は、図3および図4に示すように、ステント収納用筒状部材5の先端より、若干基端側に位置している。第1の先端方向移動抑制部32は、環状突出部であることが好ましい。そして、この第1の先端方向移動抑制部32と上述した第1の基端方向移動抑制部31間が、第1のステント収納部位となっている。第1の先端方向移動抑制部32の外径は、圧縮された第1のステント3の先端と当接可能な大きさとなっている。また、第1の先端方向移動抑制部32は、基端面が基端方向に向かって縮径するテーパー面となっている。このため、ステント放出時において、第1の先端方向移動抑制部32が障害となることがなく、また、ステント3の放出後の生体器官拡張器具1の基端側への引き戻し及びリリース後の取り出しが容易となる。
【0023】
さらに、この実施例の生体器官拡張器具1では、先端側チューブ2は、図3および図4に示すように、第2の基端方向移動抑制部41より所定長(ほぼ第2のステント4の軸方向長)先端側となる位置に設けられた第2の先端方向移動抑制部(第2のステント先端方向移動抑制部)42を備えている。第2の先端方向移動抑制部42は、図3および図4に示すように、ステント収納用筒状部材5の先端より、所定長基端側に位置している。第2の先端方向移動抑制部42は、環状突出部であることが好ましい。そして、この第2の先端方向移動抑制部42と上述した第2の基端方向移動抑制部41間が、第2のステント収納部位となっている。第2の先端方向移動抑制部42の外径は、圧縮された第2のステント4の先端と当接可能な大きさとなっている。また、第2の先端方向移動抑制部42は、基端面が基端方向に向かって縮径するテーパ面となっている。このため、ステント放出時において、第2の先端方向移動抑制部42が障害となることがなく、また、ステント4の放出後の生体器官拡張器具1の回収(具体的には、ガイディングカテーテルあるいはシース内への収納)が容易となる。また、この実施例では、第2の先端方向移動抑制部42は、上述した第1の基端方向移動抑制部31より所定長基端側となる位置に設けられている。このため、ステント収納用筒状部材5は、第1のステント収納部位と第2のステント収納部位間に位置するステント非収納部を備えている。第1の基端方向移動抑制部31と第2の先端方向移動抑制部42間の距離としては、2〜20mmが好ましく、特に、5〜15mmが好ましい。
【0024】
ステント基端方向移動抑制部31、41およびステント先端方向移動抑制部32、42の外径は、0.8〜4.0mmであることが好ましい。なお、移動抑制部31,32,41,42は、図示するような環状突出部が好ましいが、ステントの移動を規制し、かつ、押出可能であればよく、例えば、先端側チューブ2に一体にあるいは別部材で設けられた1つまたは複数の突起であってもよい。また、ステント先端方向移動抑制部32、42は、造影性(具体的には、X線造影性、超音波造影性)を有するものであってもよい。ステント先端方向移動抑制部32、42への造影性付与は、ステント基端方向移動抑制部31、41にて説明したものが好適に利用できる。
【0025】
先端側チューブの形成材料としては、硬度があってかつ柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。特に、上記の樹脂のうち、熱可塑性を有する樹脂が好ましい。なお、先端側チューブの露出する外面には、生体適合性、特に抗血栓性を有する樹脂をコーティングしてもよい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが好適に使用できる。
【0026】
また、先端部をチューブと別部材により構成する場合には、先端部(先端部材)25としては、柔軟性を有する材料を用いることが好ましい。例えば、オレフィン系エラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)、ポリアミドエラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレンブチレン−スチレンコポリマー)、ポリウレタン、ウレタン系エラストマー、フッ素樹脂系エラストマーなどの合成樹脂エラストマー、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ラテックスゴムなどの天然ゴムなどのゴム類が使用される。
【0027】
特に、この実施例の生体器官拡張器具1では、先端側チューブ2と先端部材25は、別部材にて形成されているとともに、先端側チューブ2は、先端部に、ストッパー部材27が固定されている。ストッパー部材27は、先端側チューブ2に固定された筒状部とこの筒状部より、テーパー状に広がるスカート部を備えている。そして、ストッパー部材27は、先端部材25内に埋設された状態となっており、先端部材25の離脱および先端側への移動を防止している。ストッパー部材27は、金属(例えば、ステンレス鋼)により形成することが好ましい。
基端側チューブ9は、図1、図2および図6に示すように、先端から基端まで貫通したチューブ体であり、基端に固定された操作部10を備えている。基端側チューブ9の先端部は、固定チューブ8に、固定部材84により、接合されている。基端側チューブ9は、内部に牽引ワイヤ6を挿通可能な牽引ワイヤ用ルーメンを備えている。
基端側チューブ9としては、長さが300mm〜1500mm、より好ましくは、800〜1300mmであり、外径が0.5〜1.5mm、好ましくは0.6〜1.3mmであり、内径が0.3〜1.4mm、好ましくは0.5〜1.2mmである。
基端側チューブ9の中心軸と先端側チューブ2の中心軸とのずれの距離としては、0.1〜2.0mmが好ましく、特に、0.5〜1.5mmが好ましい。
【0028】
基端側チューブの形成材料としては、硬度があってかつ柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。なお、基端側チューブの外面には、生体適合性、特に抗血栓性を有する樹脂をコーティングしてもよい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが使用できる。また、基端側チューブ9の形成材料としては、比較的剛性の高い材質を用いることが好ましい。例えばNi−Ti、真鍮、ステンレス鋼、アルミ等の金属、さらには、比較的剛性の高い樹脂、例えば、ポリイミド、塩化ビニル、ポリカーボネート等を用いることもできる。
【0029】
ステント収納用筒状部材5は、図1ないし図4に示すように所定長を備える管状体である。先端および後端は開口している。先端開口は、第1のステント3および第2のステント4を体腔内の狭窄部に留置する際、ステントの放出口として機能する。ステント3およびステント4は、図11および図12に示すように、ステント収納用筒状部材5が基端側に移動することにより、この先端開口より放出され、応力負荷が解除されて拡張し圧縮前の形状に復元する。
ステント収納用筒状部材5の長さとしては、30mm〜220mmが好ましく、特に、50mm〜180mmが好ましい。また、外径としては、1.0〜4.0mm程度が好ましく、特に、1.2〜3.0mmが好ましい。また、ステント収納用筒状部材5の内径としては、1.0〜2.5mm程度が好ましい。
【0030】
そして、このステント収納用筒状部材5は、基端部に設けられた小径部51aを備える筒状部材本体部51と、この小径部51aを被包するように設けられた筒状部52を備えている。なお、小径部51aの基端部は、筒状部52より突出している。具体的には、牽引ワイヤ6(6a、6b)の先端部69(69a,69b)は、小径部51aと筒状部52間に形成された空隙内に侵入し、空隙に充填された固定剤53により、ステント収納用筒状部材5に固定されている。小径部51aは、外径が基端側に向かって縮径するテーパー部とこのテーパー部より基端側に延びる短い円筒部を備えている。そして、筒状部材本体部51の縮径部(小径部)51aを被包するように筒状部52は、筒状部材本体部51の基端部に固定されている。このため、筒状部材本体部51の小径部51aは、筒状部材5の内方かつ基端方向に突出する環状突出部を構成している。そして、この環状突出部とステント収納用筒状部材5(具体的には、基端側筒状部の先端部)内面間により、環状空隙部が形成されている。そして、この実施例では、牽引ワイヤ6(6a、6b)の先端部69(69a,69b)は、小径部51aの外面にて固定されている。そして、この空隙部には、接着剤が充填されており、筒状部材本体部51と基端側筒状部52を一体化している。また、環状空隙部に充填された固定剤等により、後述する牽引ワイヤ6(6a,6b)の先端部(固定点)69(69a,69b)は、筒状部材5に固定されている。固定剤としては、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂、シアノアクリレート系樹脂などの接着剤を用いることが好ましいが、熱融着であってもよい。
【0031】
そして、この実施例において用いられているステント収納用筒状部材5では、筒状部材本体部51および筒状部52は、ほぼ同じ外径を有するものとなっている。筒状部材本体部の外径としては、1.0〜4.0mm程度が好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、筒状部材本体部51の長さとしては、30〜220mm程度が好ましく、特に、50mm〜180mmが好ましく、基端側筒状部52の長さとしては、3〜20mm程度が好ましく、特に、5mm〜15mmが好ましい。
なお、ステント収納用筒状部材5としては、上述したような筒状部材本体部51と基端側筒状部52からなるものに限定されるものではなく、一体物であってもよい。
【0032】
スライドチューブ7は、図3ないし図5に示すように、その先端が、ステント収納用筒状部材5の基端に近接するように配置されている。また、スライドチューブ7は、その基端側より固定チューブ内に収納可能なものとなっている。なお、スライドチューブ7は、基端側より固定チューブ8に被嵌可能なものであってもよい。スライドチューブ7は、牽引ワイヤ6の牽引によりステント収納用筒状部材5とともに基端側に移動可能であり、かつ、ステント収納用筒状部材5に固定されていないものとなっている。
そして、この実施例における生体器官拡張器具1では、スライドチューブ7内に非固定状態にて収納されかつスライドチューブ7とともに移動するリング状部材75を備え、牽引ワイヤ6a,6bは、リング状部材75の内面に固定されている。
特に、この実施例の生体器官拡張器具1では、リング状部材75は、スライドチューブ7内に非固定状態にて収納されている。このため、固定部が牽引ワイヤの牽引の障害となることなく、また、生体器官拡張器具の基端部にて付与された捻り力が、スライドチューブに伝達されたとしても、スライドチューブに固定されていないため、捻れ等を生じることがなく、良好な状態を保持できる。
そして、スライドチューブ7は、リング状部材75の回動を許容し、かつ軸方向への移動を実質的に阻止するリング状部材保持部を備えている。このように、リング状部材75が、スライドチューブ7に対して、回動可能であることにより、スライドチューブ7の回動に対して、リング状部材75、牽引ワイヤの固定部および牽引ワイヤ自体も追従しにくいものとなる。
【0033】
スライドチューブ7は、具体的には、図2ないし図10に示すように、スライドチューブ本体71と、その先端に固定され、スライドチューブ本体71より外径および内径が大きい先端側部材を備えている。そして、この実施例では、スライドチューブ7の先端側部材は、図10に示すように、第1の筒状部材72とこの第1の筒状部材72とほぼ同じ外径および内径を備える第2の筒状部材73とから構成される外側チューブ部と、第1の筒状部材72の基端部および第2の筒状部材73の先端部内に配置された第3の筒状部材74により構成される内側チューブ部と、外側チューブと内側チューブを固定する、言い換えれば、第1の筒状部材72と第2の筒状部材73と第3の筒状部材74を固着する固着部76とを備えている。そして、外側チューブである第2の筒状部材73の基端部は、固着部77により、スライドチューブ本体71の先端部に固定されている。また、スライドチューブ本体71の先端部は、外側チューブである第2の筒状部材73の基端部内に侵入するとともに、内側チューブ部を構成する第3の筒状部材74の基端部と所定距離離間している。これにより、スライドチューブ本体71の先端部と、外側チューブである第2の筒状部材73の内面と、内側チューブ部を構成する第3の筒状部材74の基端部により、リング状部材保持部を構成する環状凹部が形成されている。そして、リング状部材保持部であるこの環状凹部内に、リング状部材75が、収納されている。リング状部材75は、スライドチューブ本体71、第2の筒状部材73および第3の筒状部材74のいずれにも固定されていないため、回動可能である。しかし、スライドチューブ7内における軸方向への移動は、クリアランスを除き不能となっている。リング状部材75としては、金属リングまたはプラスチック筒状部材(後述する実施例の生体器官拡張器具110にて説明する)が好適である。そして、牽引ワイヤ6a,6bは、図10に示すように、リング状部材75の内面に固定部75a、75bにより固定されている。固定部としては、溶接、接着剤などが好ましい。そして、このリング状部材75に牽引ワイヤ6a,6bが固定されているため、牽引ワイヤ6a,6bを牽引することにより、リング状部材75も牽引され、そして、リング状部材75により先端側より押されることにより、スライドチューブ7も生体器官拡張器具1の基端側に移動する。
スライドチューブ本体71の外径としては、0.8〜4.0mm程度が好ましく、特に、1.1〜3.3mmが好ましい。また、スライドチューブ本体71の長さとしては、30〜300mm程度が好ましく、特に、50mm〜250mmが好ましい。
【0034】
また、スライドチューブ7は、その先端部が、ステント収納用筒状部材5の小径部51aの基端部を被包していることが好ましい。また、スライドチューブ7とステント収納用筒状部材5は、接合されていないことが好ましい。この実施例では、図10に示すように、接合されることなく、さらには、実質的に接触することなく、スライドチューブ7の先端部は、ステント収納用筒状部材5の小径部51aの基端部を被包している。具体的には、外側チューブ部を構成する第1の筒状部材72の先端部が、ステント収納用筒状部材5の小径部51aの基端部を実質的に接触することなく被包している。
さらに、この実施例では、スライドチューブ7は、スライドチューブ本体71の全体にわたり補強層78を備えている。このような補強層を設けることにより、耐キンク性が向上し、スライドチューブ7のスライドが良好なものとなる。補強層は、網目状の補強層であることが好ましい。網目状の補強層は、ブレード線で形成することが好ましい。例えば、ワイヤブレードであり、線径0.01〜0.2mm、好ましくは0.02〜0.15mmのステンレス、弾性金属、超弾性合金、形状記憶合金等の金属線で形成することができる。または、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維で形成してもよい。
【0035】
固定チューブ8は、この実施例の生体器官拡張器具1では、図2、図6、図9に示すように、外径の大きい先端側固定チューブ81と、この先端側固定チューブ81の基端部に固定された基端側固定チューブ82を備えている。そして、先端側固定チューブ81は、先端縮径部81aを備えており、先端縮径部81aの内面は、スライドチューブ7の基端部の外面に接触している。そして、スライドチューブ7は、先端側固定チューブ81に固定されておらず、基端側に摺動することにより、先端側固定チューブ81内に侵入し、収納される。
この実施例のように、スライドチューブ7が、固定チューブ8内にスライド収納されるタイプのものであることが好ましいが、これに限定されるものではなく、スライドチューブを基端側にスライドすることにより、固定チューブがスライドチューブにより被嵌されるタイプのものであってもよい。
【0036】
基端側固定チューブ82の先端部は、先端側固定チューブ81の基端内に侵入し、固定部81bにより固定されている。また、先端側チューブ2の外面には、固定チューブ8内、具体的には、図6に示すように、先端側固定チューブ81の基端部となる位置に、スライドチューブ係止部24が設けられている。スライドチューブ7は、このスライドチューブ係止部24に当接するまで、基端側にスライド可能となっている。言い換えれば、スライドチューブ7は、このスライドチューブ係止部24に当接することにより、それ以上の基端側への移動が規制されている。
先端側固定チューブ81の外径としては、1.0〜4.0mm程度が好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、先端側固定チューブ81の長さとしては、30〜300mm程度が好ましく、特に、50mm〜250mmが好ましい。
【0037】
さらに、この実施例では、図6に示すように、固定チューブ8の先端側部分、具体的には、先端側固定チューブ81は、そのほぼ全体にわたり補強層85を備えている。補強層としては、網目状のもの、螺旋状のものなどが好ましい。特に、網目状補強層であることが好ましい。網目状補強層としては、金属細線により網状に形成されたものが好適である。金属細線としては、ステンレス鋼が好ましい。さらに、図6に示すように、基端側固定チューブ82との接続部となる部分には、補強層が存在しないものとすることが好ましい。
先端側チューブ2の基端部には、その基端部を収納した筒状固着部材83が設けられており、また、基端側チューブ9の先端には、筒状固定部材84が設けられている。そして、図6および図9に示すように、基端側固定チューブ82に、筒状固着部材83および筒状固定部材84が固着されている。
【0038】
また、図2および図3に示すように、この生体器官拡張器具1では、複数(具体的には、2本)の牽引ワイヤ6a,6bを備えており、牽引ワイヤ6a、6bは、上述した筒状部材5が備える空隙部にて、固定点69a、69b部分が、固定剤53により、ステント収納用筒状部材5の小径部の外側に固定されている。また、牽引ワイヤ6a,6bおよびこの固定点69a、69bは、所定長離間している。
【0039】
ステント収納用筒状部材5(筒状部材本体部51、基端側筒状部52)、スライドチューブ7(スライドチューブ本体71)、固定チューブ8(先端側固定チューブ81、基端側固定チューブ82)の形成材料としては、ステント収納用筒状部材に求められる物性(柔軟性、硬度、強度、滑り性、耐キンク性、伸縮性)を考慮して、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、PEEK、ポリイミド、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマー、さらには、熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ナイロン系(例えば、ポリアミドエラストマー)、ウレタン系(例えば、ポリウレタンエラストマー)、ポリエステル系(例えば、ポリエチレンテレフタレートエラストマー)、オレフィン系(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)の中から適宜選択される。
さらに、ステント収納用筒状部材5の外面には、潤滑性を呈するようにするための処理を施すことが好ましい。このような処理としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーをコーティング、または固定する方法などが挙げられる。また、ステント収納用筒状部材5の内面に、ステントの摺動性を良好なものにするため、上述のものをコーティング、または固定してもよい。
また、ステント収納用筒状部材5は、上記のようなポリマーの2層構造(例えば、外面はナイロン、内面はPTFE)の組み合わせで形成しても良い。
【0040】
そして、生体器官拡張器具1は、ステント収納用筒状部材5の基端部に一端部が固定され、ステント収納用筒状部材5の基端を越え、スライドチューブ7,固定チューブ8を貫通し、基端側チューブ9内を延びる牽引ワイヤ6を備えている。そして、この牽引ワイヤ6を基端側チューブの基端側に牽引することにより、ステント収納用筒状部材5およびスライドチューブ7は、基端側に移動する。
そして、図1ないし図5、図7ないし図12に示すように、この生体器官拡張器具1では、複数(具体的には、2本)の牽引ワイヤ6a,6bを備えており、牽引ワイヤ6a、6bは、かなりステントに近い部分に設けられた固定点69a、69bにより、ステント収納用筒状部材5の基端部に固定されている。また、牽引ワイヤ6a,6bおよびこの固定点69a、69bは、所定距離離間するように配置されている。
【0041】
さらに、この実施例では、図10に示し、また、上述したように、牽引ワイヤ6a,6bは、スライドチューブ7が備えるリング状部材75の内面に、固定点75a,75bにより固定されている。このため、この実施例の生体器官拡張器具1では、牽引ワイヤ6a,6bが、基端側に牽引されることにより、リング状部材75も基端側に牽引され、このリング状部材75にスライドチューブ7(スライドチューブ本体71)が当接することにより、スライドチューブも基端側に牽引される。よって、この実施例では、ステント収納用筒状部材5とスライドチューブ7とは、両者それぞれが別個に牽引されるものとなっており、牽引時に、ステント収納用筒状部材5とスライドチューブ7が当接しないものとなっている。また、牽引ワイヤ6a,6bの牽引時の力は、固定点69a、69bとリング状部材75の固定点75a,75bとに分散されるため、固定点69a、69bにおける牽引ワイヤ6a,6bとステント収納用筒状部材5間の固定が解除されることを確実に防止する。
【0042】
この実施例の生体器官拡張器具1では、牽引ワイヤ6は、図1に示すように、基端側チューブ9を貫通し、基端側チューブの基端より延出するものとなっている。
牽引ワイヤの構成材料としては、線材もしくは複数本の線材を撚ったものが好適に使用できる。また、牽引ワイヤの線径は、特に限定されないが、通常、0.01〜0.55mm程度が好ましく、0.1〜0.3mm程度がより好ましい。
また、牽引ワイヤ6の形成材料としては、ステンレス鋼線(好ましくは、バネ用高張力ステンレス鋼)、ピアノ線(好ましくは、ニッケルメッキあるいはクロムメッキが施されたピアノ線)、または超弾性合金線、Ni−Ti合金、Cu−Zn合金、Ni−Al合金、タングステン、タングステン合金、チタン、チタン合金、コバルト合金、タンタル等の各種金属により形成された線材や、ポリアミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素系樹脂等の比較的高剛性の高分子材料、あるいは、これらを適宜組み合わせたものが挙げられる。
また、牽引ワイヤの側面に滑性を増加させる低摩擦性樹脂を被覆してもよい。低摩擦性樹脂としては、フッ素系樹脂、ナイロン66、ポリエーテルエーテルケトン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。この中でも、フッ素系樹脂がより好ましい。フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン、パーフロロアルコキシ樹脂等が挙げられる。またシリコンや各種親水性樹脂によるコーティングであってもよい。
【0043】
さらに、この実施例の生体器官拡張器具1では、上述した牽引ワイヤとは別に、剛性付与体11が設けられている。剛性付与体11は、図1ないし図3,図5、図6および図9に示すように、生体器官拡張器具1の基端側より延び、基端側チューブ9内を通り、さらに、固定チューブ8に侵入している。そして、剛性付与体11の先端11aは、図6に示すように、スライドチューブ係止部24に固定されている。剛性付与体11の先端11aをスライドチューブ係止部24の形成材料に埋設することにより固定することが好ましい。なお、牽引ワイヤ6a、6bは、図5に示すように、スライドチューブ係止部24に固定されておらず、スライドチューブ係止部24に形成された通路24a、24bを通過している。
【0044】
さらに、この実施例の生体器官拡張器具1では、図6に示すように、剛性付与体11は、固定チューブ8に固定される筒状固定部材84にも固定されている。筒状固定部材84には、図6に示すように、軸方向に所定長のびる剛性付与体固定部84aが形成されている。このように、剛性付与体11の先端部を2カ所において固定することにより、剛性付与体11の先端部による強い補強効果を発揮する。特に、スライドチューブ係止部24へのスライドチューブ7の当接時において、スライドチューブ係止部24を補強する。
そして、剛性付与体11は、基端部にて基端側チューブ9の基端部もしくは後述する操作部10に固定されていることが好ましい。このような剛性付与体11を設けることにより、牽引部材(牽引ワイヤ)の牽引時における生体器官拡張器具の変形を抑制できる。また、剛性付与体11の先端部11aは、スライドチューブ係止部24による固定を確実にするために、平坦部となるように形成してもよい。さらに、側面に波状部分を形成して固定部材からの抜け止めを設けてもよい。
【0045】
剛性付与体11としては、線材もしくは複数本の線材を撚ったものが好適に使用できる。また、剛性付与体11の太さは、特に限定されないが、通常、0.01〜1.5mm程度が好ましく、0.1〜1.0mm程度がより好ましい。
また、剛性付与体11としては、本体側部分(具体的には、基端側チューブ内となる部分)が剛性が高く(例えば、線径が太い)、先端側部分が剛性が低い(具体的には、線径が細い)ものであることが好ましい。さらに、両者の変化点は、線径がテーパー状に変形するテーパー部となっていることが好ましい。
また、剛性付与体11の形成材料としては、ステンレス鋼線(好ましくは、バネ用高張力ステンレス鋼)、ピアノ線(好ましくは、ニッケルメッキあるいはクロムメッキが施されたピアノ線)、または超弾性合金線、Ni−Ti合金、Cu−Zn合金、Ni−Al合金、タングステン、タングステン合金、チタン、チタン合金、コバルト合金、タンタル等の各種金属により形成された線材が挙げられる。また、剛性付与体11は、牽引部材(牽引ワイヤ)より、硬質であることが好ましい。
【0046】
ステント収納用筒状部材5内には、第1のステント3および第2のステント4が収納されている。
ステント3、4としては、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なもの(いわゆる自己拡張型ステント)であればどのようなものであってもよい。
そして、第1のステント3と第2のステント4は、圧縮前の形状に復元した時(拡張時、非圧縮時)の外径が異なるものであってもよい。具体的には、非圧縮時の外径が、第2のステント4より第1のステント3のほうが小さいものであることが好ましい。通常、生体器官拡張器具が挿入される血管は、挿入方向(進行方向)に行くほど血管径が細くなる。このため、生体器官拡張器具の先端側に位置する第1のステント3を細径のものとすることにより、細径の血管部位の拡張に対応することができ、かつ、第2のステントを第1のステントより大径(太径)のものとすることにより、第1のステント配置部位より太い血管部位に良好に対応でき、1本の生体器官拡張器具により、径の異なる血管部位の改善を行うことができる。
そして、第1のステントの非圧縮時の外径としては、2〜10mmが好ましく、特に、3〜8mmが好ましい。また、第1のステントの長さは、10〜120mm、より好ましくは、20〜100mmである。第2のステントの非圧縮時の外径としては、4〜12mmが好ましく、特に、5〜10mmが好ましい。また、第2のステントの長さは、10〜120mm、より好ましくは、20〜100mmである。
そして、上述したように、非圧縮時の外径が、第2のステントより第1のステント3のほうが小さいものとする場合には、両者の非圧縮時の外径の差は、1〜5mmであることが好ましい。
ステント3、4の形態としては、例えば、図20(拡張して圧縮前の形状に復元した状態を示している)に示すような形状を有しているものが好適に使用できる。この例のステント3は、円筒状フレーム体30と、この円筒状フレーム体30を構成するフレーム36a,36bにより区画(囲撓)された開口34およびフレーム36aにより区画された切欠部35を有しており、フレーム体30は両端部33a,33bを有している。
【0047】
ステントの形成材料としては、合成樹脂または金属が使用される。合成樹脂としては、ある程度の硬度と弾性を有するものが使用され、生体適合性合成樹脂が好ましい。具体的には、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート),フッ素樹脂(例えば、PTFE、ETFE)、若しくは生体内吸収材料であるポリ乳酸、ポリグリコール酸、又はポリ乳酸とポリグリコール酸の共重合体などである。また、金属としても生体適合性を有するものが好ましく、例えば、ステンレス、タンタル、ニッケルチタン合金などがある。特に、超弾性金属が好ましい。ステント3は、全体において物性の急激な変更点が形成されることなく一体に形成されていることが好ましい。ステントは、例えば、留置される生体内部位に適合した外径を有する金属パイプを準備し、金属パイプの側面を、切削加工(例えば、機械的切削、レーザ切削)、化学エッチングなどにより部分的に除去して、側面に複数の切欠部または複数の開口を形成することにより作製される。
【0048】
このステント3はフレーム体30の端部に切欠部35を有するので、ステント3の端部33a,33bの変形が容易となり、特に、端部の部分的変形が可能となり、留置される血管の変形時に対する応答が良好である。また、端部33は、複数のフレーム36aの端部により形成されているため、つぶれにくく、十分な強度を有する。また、両端部間には、フレーム36a,36bにより囲まれた開口34が形成されており、この開口34は、フレーム36aの変形により容易に変形する。このため、ステント3はその中央部(フレーム体30の中央部)での変形も容易である。なお、切欠部および開口は図示した形状および個数に限定されるものではなく、切欠部としては、3〜10個、開口としては、3〜10個程度が好適である。
フレーム体30は、外径が2.0〜30mm、好ましくは、2.5〜20mm、内径が1.4〜29mm、好ましくは1.6〜28mmのものであり、長さは、10〜300mm、より好ましくは15〜200mmである。
【0049】
なお、ステントの形状は、図20に示すものに限定されるものではない。例えば、両端部に台形状の切欠部が形成されるとともに、中央部にハニカム状に複数の六角形の開口が形成されているもの、また、両端部に長方形状の切欠部が形成され、中央部に複数の長方形状(切欠部の二倍の長さを有する)の開口が形成されているものなどであってもよい。さらに、ステント3、4の形状は、挿入時に縮径可能であり、かつ、体内放出時に拡径(復元)可能なものであればよく、上述の形状に限定されるものではない。例えば、コイル状のもの、円筒状のもの、ロール状のもの、異形管状のもの、高次コイル状のもの、板バネコイル状のもの、カゴまたはメッシュ状のものでもよい。
【0050】
ステントを形成する超弾性金属としては、超弾性合金が好適に使用される。ここでいう超弾性合金とは一般に形状記憶合金といわれ、少なくとも生体温度(37℃付近)で超弾性を示すものである。特に好ましくは、49〜53原子%NiのTi−Ni合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性金属体が好適に使用される。特に好ましくは、上記のTi−Ni合金である。また、Ti−Ni合金の一部を0.01〜10.0%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Co,Fe,Mn,Cr,V,Al,Nb,W,Bなど)とすること、またはTi−Ni合金の一部を0.01〜30.0%原子で置換したTi−Ni−X合金(X=Cu,Pb,Zr)とすること、また、冷間加工率または/および最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。また、上記のTi−Ni−X合金を用いて冷間加工率および/または最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。
【0051】
使用される超弾性合金の座屈強度(負荷時の降伏応力)は、5〜200kgf/mm2(22℃)、より好ましくは、8〜150kgf/mm2、復元応力(除荷時の降伏応力)は、3〜180kgf/mm2(22℃)、より好ましくは、5〜130kgf/mm2である。ここでいう超弾性とは、使用温度において通常の金属が塑性変形する領域まで変形(曲げ、引張り、圧縮)させても、変形の解放後、加熱を必要とせずにほぼ圧縮前の形状に回復することを意味する。
また、本発明の生体器官拡張器具に使用されるステントは、略円筒形状に形成された縮径可能なステント本体と、ステント本体の側面を封鎖する筒状カバー(図示せず)を備えるものであってもよい。
【0052】
そして、上述したすべての実施例において、図13に示す生体器官拡張器具20のようなものであってもよい。この実施例の生体器官拡張器具20では、第1の基端方向移動抑制部31部分を補強する補強部43aは、第2の先端方向移動抑制部42内に侵入しているものであってもよい。このようにすることにより、第1の基端方向移動抑制部31と第2の先端方向移動抑制部42間に補強部不存在部分が形成されることがなく、当領域でのキンクをより確実に防止する。
【0053】
また、上述したすべての実施例において、図14に示す生体器官拡張器具30のようなものであってもよい。この実施例の生体器官拡張器具30では、ステント収納用筒状部材5の先端もしくはその付近に、造影部54(X線造影部もしくは超音波造影部)が設けられている。造影部54は、ステント収納用筒状部材5の外面への造影性部材の埋設により形成することが好ましい。造影部を形成するX線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、ステンレス、白金、あるいはそれらの合金等が好適である。そして、造影性部材としては、X線造影性材料によりワイヤを形成し先端側チューブの外面に巻きつけること、もしくはX線造影性材料によりパイプを形成しかしめる又は接着することにより取り付けられる。
【0054】
さらに、上述したすべての実施例において、図15に示す生体器官拡張器具40のようなものであってもよい。この実施例の生体器官拡張器具40では、ステント収納用筒状部材5の中央部分、具体的には、筒状部材本体部51の中央部分は、他の部分に比べて柔軟部となっている。具体的には、第1のステントの収納部と第2のステントの収納部間となるステント収納用筒状部材5の中央部分が柔軟部となっている。具体的には、柔軟部となる部分の筒状部材本体部51は、外径が縮径した肉薄部となっているとともに、その外面には、柔軟性材料により形成された被覆部材55が設けられている。このため、生体器官拡張器具40では、第1のステントの収納部と第2のステントの収納部間が第1のステントの収納部および第2のステントの収納部より柔軟となるため、変形を許容するため、生体器官拡張器具の先端部の操作性が向上する。また、筒状部材本体部51としては、柔軟部の内径および外径は他の部分と実質的に同じとなっており、また、内面には段差部等もなく、柔軟部に起因するステント収納用筒状部材5の移動時の障害もない。
柔軟性を有する被覆部材の形成材料としては、ナイロン系(例えば、ポリアミドエラストマー)、ウレタン系(例えば、ポリウレタンエラストマー)、ポリエステル系(例えば、ポリエチレンテレフタレートエラストマー)、オレフィン系(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)、シリコーンゴムなどが使用できる。
さらに、上述したすべての実施例において、図16に示す生体器官拡張器具60のようなものであってもよい。この実施例の生体器官拡張器具60では、第1の基端方向移動抑制部と第2の先端方向移動抑制部とが一体物となった移動規制31aとなっている。そして、この移動規制31aにおいても基端部は、テーパ状となっている。
【0055】
さらに、上述したすべての実施例において、図17に示す生体器官拡張器具100のようなものであってもよい。
上述した実施例の生体器官拡張器具では、固定チューブ8は、牽引時において、スライドチューブ7を基端側より収納するタイプ、言い換えれば、スライドチューブ7のスライドチューブ本体71が、基端より、固定チューブ8内に侵入するタイプのものとなっている。
これに対して、この実施例の生体器官拡張器具100では、牽引時において、スライドチューブ7が基端側より固定チューブ8を被嵌するタイプ、言い換えれば、スライドチューブ7のスライドチューブ本体71bが、基端より、固定チューブ8の先端側固定チューブ81cを被包するものとなっている。
このため、スライドチューブ本体71bの内径は、固定チューブ8の先端側固定チューブ81cの外径とほぼ等しい、もしくは、若干大きいものとなっている。先端側固定チューブ81cは、固定部81bにより、その基端部において、基端側固定チューブ82の先端部に固定されている。また、この実施例では、部材24は、スライドチューブ係止部として機能しない。
さらに、上述したすべての実施例において、図18に示す生体器官拡張器具110のように、第2の先端方向移動抑制部を持たないものであってもよい。そして、この場合には、チューブ状本体は、第1の基端方向移動抑制部31から第2のステント4の先端部付近もしくは先端部内に到達する補強部43を備えることが好ましい。特に、補強部43の端部は、第2のステント4の先端部内に到達していることが好ましい。
【0056】
さらに、上述したすべての実施例において、図19に示す生体器官拡張器具120のようなものであってもよい。
図19は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具のステント収納用筒状部材の基端部付近の拡大断面図である。
この実施例の生体器官拡張器具120では、図19に示すように、スライドチューブ7は、スライドチューブ本体71と、スライドチューブ本体71の先端部に固定され、スライドチューブ本体71の先端を覆い、かつスライドチューブ本体71の先端より生体器官拡張器具120の先端側に延びる先端側筒状部材170とを備えている。そして、先端側筒状部材170は、先端側筒状部材170の先端と基端間に位置しかつ少なくとも内径が縮径した縮径部171を有する一体成形筒状体となっている。そして、この実施例では、縮径部171の内径は、スライドチューブ本体71の内径とほぼ等しいまたは若干大きいもしくは若干小さいものとなっている。さらに、この実施例の生体器官拡張器具120では、図19に示すように、先端側筒状部材170は、少なくとも縮径部171以外の部分の外径および内径が、スライドチューブ本体71より大きいものとなっている。そして、縮径部171は、先端側筒状部材170の先端と基端間、具体的には、先端より若干基端側に位置するものとなっている。
そして、先端側筒状部材170の縮径部171の内径は、先端側チューブ2の外径より大きいものとなっている。このため、先端側筒状部材170は、先端側チューブ2に接触することなく、基端側に移動可能となっている。
そして、スライドチューブ本体71の先端間には、樹脂リング176が配置されている。樹脂リング176は、固着部77を形成する接着剤の先端側筒状部材170内への流入を防止する。樹脂リングとしては、摩擦抵抗の少ないものが好ましい。樹脂リングとしては、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。
そして、この実施例における生体器官拡張器具120では、スライドチューブ7内に非固定状態にて収納されかつスライドチューブ7とともに移動するリング状部材180を備え、牽引ワイヤ6a,6bは、リング状部材180に固定されている。
リング状部材180は、プラスチック製外筒部材181とこのプラスチック製外筒部材181内に挿入されたプラスチック製外筒部材182と、プラスチック製外筒部材181とプラスチック製外筒部材182間に充填された接着剤183により構成されている。そして、牽引ワイヤ6a,6bは、プラスチック製外筒部材181とプラスチック製外筒部材182間を貫通するとともに、接着剤183によりリング状部材180に固定されている。プラスチック製外筒部材181およびプラスチック製外筒部材182としては、摩擦抵抗の少ないものが好ましい。樹脂リングとしては、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。
【0057】
そして、本発明の生体器官拡張器具1は、図1,図21ないし図25に示すように、基端側チューブ9の基端に固定された操作部10を備えている。
図21は、本発明の生体器官拡張器具の操作部付近の拡大正面図である。図22は、図21に示した生体器官拡張器具の操作部付近の拡大背面図である。図23は、図21に示した生体器官拡張器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。図24は、図21に示した生体器官拡張器具の操作部分のみの右側面図である。図25は、図21に示した生体器官拡張器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
この実施例の生体器官拡張器具1における操作部10は、牽引ワイヤ巻取機構に加えて、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構および牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構を備えている。
【0058】
操作部10は、図21ないし図25に示すように、操作部ハウジング50を備える。操作部ハウジング50は、第1ハウジング50aと第2ハウジング50bにより構成されている。操作部ハウジング50は、基端側および中央部が屈曲しかつ丸みを帯びた形状となっており、把持しやすく、かつ、把持した状態におけるローラの操作を容易なものとしている。
そして、図23に示すように、基端側チューブ9の基端には、筒状コネクタ45の先端部が固定されている。また、操作部ハウジング50内には、コネクタ45の基端部に接続されたシール機構が収納されている。このシール機構は、図23に示すように、コネクタ45の後端部に固定される先端部を備えるシール機構筒状本体部材70と、筒状本体部材70の基端に固定されたキャップ部材70aと、筒状本体部材70とキャップ部材70a間に配置されたシール部材70bと、筒状本体部材内に収納された剛性付与体固定用部材70cを備えている。本体部材70およびキャップ部材70aは、貫通する開口部を備えている。シール部材70bは、牽引ワイヤ6(6a,6b)を液密状態かつ摺動可能に貫通させるための孔部もしくはスリットを備えている。また、剛性付与体固定用部材70cには、剛性付与体11の基端部が固定されている。そして、剛性付与体固定用部材70cは、筒状本体部材70内に固定されている。コネクタの構成材料としては、上述したものと同じである。シール部材の構成材料としては、弾性材料が使用される。弾性材料としては、上述したものと同じである。シール部材70bの構成材料としては、弾性材料が使用される。弾性材料としては、上述したものと同じである。
【0059】
ハウジング50は、図21ないし図24に示すように、操作用回転ローラ61を部分的に突出させるための開口部58、ローラ61に設けられた歯車部62の突出部と係合するロック用リブ(図示せず)、ローラ61の回転軸の一端64bを収納する軸受部94b、ローラ61の回転軸の他端64aを収納する軸受部94aを備えている。ロック用リブは、ローラ61の歯車部62に形成された突起部間に侵入可能な形状となっている。また、軸受部94a、94bは、図21および図22に示すように、ローラ61の回転軸の一端64bおよび他端64aを収納するとともに、上述の開口部と離間する方向に延びる瓢箪状のものとなっている。なお、軸受部94a、94bは、瓢箪状に限定されるものではなく、ロック用リブとの係合が解除できる距離移動できるものであればよい。例えば、軸受部94a、94bの形状は、長円、矩形、楕円状などであってもよい。特に、この実施例の操作部10では、上記の軸受部94a、94bは、図21および図22に示すように、瓢箪状のものとなっている。このため、操作用回転ローラ61を押し、軸受部94a,94bの一端側空間に収納されているローラ61の回転軸の端部64a,64bを、軸受部94a,94bの中央部内側面に形成された向かい合うリブ部分を乗り越えさせることにより、ローラ61の回転軸の端部64a,64bは、軸受部94a,94bの他端側空間に収納された状態となる。図23に示す状態が、ローラ61が押圧された状態である。そして、この状態において、ローラ61は、付勢部材により押圧されるが、ローラ61の回転軸の端部64a,64bは、軸受部94a,94bの中央部内側面に形成された向かい合うリブ部分に当接するため、軸受部94a,94bの一端側空間に移動しない。このため、ローラ61は、回転可能な状態を維持するものとなっている。
【0060】
そして、この実施例では、図22および図25に示すように、操作部10は、カラー部材12を備えている。カラー部材12は、巻取シャフト部63を収納するとともに、巻取シャフト部63との間に環状空間を形成するカラー部14を有する。このカラー部14により、巻取シャフト部63に巻き取られた牽引ワイヤのゆるみが防止される。また、カラー部材12は、回転ローラの押圧時の移動の誘導および回転ローラのガタツキを抑制する機能も有する。カラー部材12のピン13が、第1ハウジング50aの突出部(軸受部)59および第2ハウジング50bの凹部(軸受部)158によって軸支されている。そして、軸受部94a、94bは、図21および図22に示すように、ピン13(軸受部59、158)を中心とする緩やかな円弧状に形成されており、かつ、ローラ61が、ロック用リブの高さ以上の距離を移動可能な長さを有するものとなっている。また、カラー部材12は、図25に示すように、側面よりカラー部14内の空間に到達する向かい合う2つの切欠部15を備えている。牽引ワイヤ6は、一方の切欠部15を貫通し、巻取シャフト部63に固定されている。
【0061】
そして、牽引ワイヤ巻取機構は、ローラ61と、このローラ61の回転により回転する巻取シャフト部63とにより構成されている。巻取シャフト部63は、牽引ワイヤ6の基端部を把持もしくは固定している。具体的には、図22に示すように、牽引ワイヤ6の基端部には、ワイヤ6より大きく形成されたアンカー部65を備えており、巻取シャフト部63には、牽引ワイヤ6の収納可能なスリット63aが設けられている。そして、アンカー部65がスリット63aの基端外方に位置するように、巻取シャフト部63のスリット63aに、牽引ワイヤ6の基端部が収納されている。これにより、巻取シャフト部63が回転することにより、ワイヤ6は、巻取シャフト部63外面に巻き取られる。なお、牽引ワイヤ6の巻取シャフト部63への把持もしくは固定は、上述のものに限定されるものではなく、どのような方式のものであってもよい。例えば、牽引ワイヤ6の基端もしくは基端部を直接、巻取シャフトに固定してもよい。
【0062】
また、牽引ワイヤ6の巻き取られる基端部は、巻取を容易なものとするために、柔軟なものとなっていることが好ましい。このような柔軟なものとする方法としては、牽引ワイヤ6の基端部を柔軟な材料により形成する方法、牽引ワイヤ6の基端部を細径とする方法などにより行うことができる。
そして、この実施例では、巻取シャフト部63は、回転ローラ61と同軸となるように一体化されている。さらに、図21、図23および図24に示すように、巻取シャフト部63は、回転ローラ61の一方の側面側に設けられている。そして、回転ローラ61を回転させることにより、巻取シャフト部63も同時に回転する。そして、回転ローラの回転操作量に比べて、牽引ワイヤの巻取量が少ないことが好ましい。このようにすることにより、ゆっくりとした巻取を行うことができ、ステント収納用筒状部材の基端側への移動もゆっくりかつ良好なものとなる。この実施例では、巻取シャフト部の外径は、回転操作用ローラより小径となっているため、回転ローラの回転操作量に比べて、牽引ワイヤの巻取量が少ないものとなっている。
【0063】
また、巻取シャフト部63の外径としては、1〜60mm程度が好適であり、特に、3〜30mmが好ましく、回転ローラの外径としては、巻取シャフト部の外径の1〜20倍程度が好適であり、特に、1〜10倍が好ましい。また、回転ローラの外径としては、10〜60mm程度が好適であり、特に、15〜50mmが好ましい。
なお、回転ローラと巻取シャフト部は、このような一体的なものに限定されるものではなく、回転ローラが回転することにより、追従して回転する別部材により構成したものであってもよい。回転ローラの回転の伝達方式としては、ギア形式のもの、ベルト形式などどのようなものであってもよい。また、ローラ61の操作する際に接触する可能性のある表面部位は、滑りにくい表面となっていることが好ましい。例えば、ローラ61の操作する際に接触する可能性のある表面部位には、ローレット処理、エンボス処理、高摩擦材料被覆などを行うことが好ましい。
【0064】
そして、この実施例の操作部10は、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構を備えている。
操作用回転ローラ61は、図21ないし図23に示すように、同軸にかつ一体的に回動するように設けられた歯車部62を備えている。さらに、図22、図24に示すように、歯車部62は、回転ローラ61の他方の側面側(言い換えれば、巻取シャフト部63が設けられた面と反対側の面)に設けられている。よって、歯車部62と巻取シャフト部63は、操作用ローラ部が構成する壁により仕切られた状態となっている。
また、操作用回転ローラ61は、部分的に開口部より露出しており、この部分が操作部となる。そして、回転ローラは、一方の側面(具体的には、歯車部の側面)に設けられた回転軸の他端64aおよび他方の側面(具体的には、巻取シャフトの側面)に設けられた回転軸の一端64bを備えている。
【0065】
さらに、ハウジング50内には、回転ローラ61をハウジングの開口部方向に付勢する付勢手段(付勢部材)80を備えている。具体的には、付勢手段80により、ローラ61は、付勢されている。さらに、ハウジング50には、付勢部材80により付勢された回転ローラ61の歯車部62の突起部間に侵入可能なロック用リブ(図示せず)が設けられている。このため、回転ローラ61は、付勢部材80により付勢された状態では、図22に示す状態となり、ロック用リブが歯車部62の突起部と係合するため、回転不能となっている。そして、回転ローラ61をロック用リブと離間する方向に押すと、回転ローラの回転軸の一端64bおよび他端64aは、ハウジング50に設けられた軸受部94aおよび94b内を移動し回転可能となる。よって、この実施例の操作部10は、回転ローラ61を押圧しない状態での回転を規制しており、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構を有するものとなっている。
【0066】
さらに、この実施例の操作部では、上記の付勢手段80と上述した歯車部62により、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構が構成されている。
操作用回転ローラ61は、図21ないし図24に示すように、同軸にかつ一体的に回動するように設けられた歯車部62を備えている。さらに、図24に示すように、歯車部62は、回転ローラ61の巻取シャフト部63が設けられた面と反対側の面に設けられている。よって、歯車部62と巻取シャフト部63は、操作用ローラ部が構成する壁により仕切られた状態となっている。
操作部10内には、図21ないし図23に示すように、逆回転規制機構を備えている。この操作部10では、付勢部材80に逆回転規制機構が設けられており、付勢部材80は、逆回転規制部材でもある。逆回転規制機構は、逆回転規制部材(付勢部材でもある)80の先端部の上記操作用回転ローラ61の歯車部62と向かい合う部分に設けられ、歯車部と噛合可能な噛合部88と、弾性変形可能部86と、ハウジングへの装着部87を備えている。また、第1ハウジング50aは、内面に形成された第1の突出部(軸受部)59および第2の突出部79を備えている。第1の突出部59は、逆回転規制部材(付勢部材)80の弾性変形可能部86内に侵入するとともに、弾性変形可能部86の内面形状に対応した外面形状を有するものとなっている。具体的には、弾性変形可能部86の内面形状は、円弧状となっており、第1の突出部59は、その円弧形状に対応した円筒状となっている。そして、逆回転規制部材(付勢部材)80の装着部87は、第1ハウジング50aに形成された第1の突出部59と第2の突出部79間に装着可能な形状となっている。そして、逆回転規制部材(付勢部材)80は、その装着部87が、第1ハウジング50aの第1の突出部59と第2の突出部79間に装着されることにより、回動不能に装着されるとともに、弾性変形可能部86の弾性力により、操作用回転ローラ61を開口部58方向に付勢するものとなっている。また、逆回転規制部材(付勢部材)80の装着部87は、カラー部材12に設けられた円盤状の突出部13aにより、側面方向への移動が規制されている。
【0067】
そして、上述したように、ローラ61を押圧することにより、ローラは回転可能となる。しかし、図23の矢印方向(牽引ワイヤを巻き取る方向)への回転は可能であるが、逆方向にローラ61を回転させようとすると、歯車部62の1つの歯部と逆回転規制部材(付勢部材)80の噛合部88とが係合し、その回転を阻止する。これにより、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向へのローラの回転を規制する。また、この操作部10では、図24に示すように、逆回転規制部材(付勢部材)80は、第1ハウジング50aの内面と回転ローラ61の側面間に配置されている。このため、逆回転規制部材(付勢部材)80の横方向(水平方向)への動きが、第1ハウジング50aの内面と回転ローラ61の側面により規制されるものとなっている。
【0068】
歯車部62は、回転ローラより小径のものとなっており、歯車部62の外径としては、10〜60mm程度が好適であり、特に、15〜50mmが好ましく、歯数としては、4〜200程度が好適であり、特に、4〜70が好ましい。
そして、操作部10が備えるカラー部材12は、一端部がピン13により軸支されているとともに、他端側のカラー部14は、巻取シャフト部63を収納するとともに、巻取シャフト部63との間に環状空間を形成する。この環状空間はあまり大きな空間ではなく、巻き取ったワイヤの外面間により狭小な環状空間を形成するものである。
【0069】
次に、本発明の生体器官拡張器具1の使用方法について図面を用いて説明する。
まず、図1および図2に示す生体器官拡張器具の先端部材の開口部25aに、多くの場合は既に体内に留置されているガイドワイヤの末端を挿入し、開口23よりガイドワイヤ(図示せず)を出す。次に、生体内に挿入されているガイディングカテーテル(図示せず)内に挿入し、ガイドワイヤに沿わせて生体器官拡張器具1を押し進め、目的とする狭窄部内にステント収納用筒状部材5のステント収納部位を位置させる。
次に、操作部10の操作用回転ローラ61を押圧した後、ローラ61を図23の矢印方向に回転させる。これにより、牽引ワイヤ6は、巻取シャフト63の外周面に巻き取られるとともに、ステント収納用筒状部材5およびスライドチューブ7は、軸方向基端側に移動する。この時、第1のステント3はその後端面が第1の基端方向移動抑制部31の先端面に当接し係止されるので、ステント収納用筒状部材5の移動に伴って、ステント収納用筒状部材5の先端開口より放出される。この放出により、第1のステント3は、図11に示すように、自己拡張し狭窄部を拡張するとともに狭窄部内に留置される。
そして、生体器官拡張器具1を造影性を有する第1の基端方向移動抑制部31および第2の基端方向移動抑制部41を指標として用いて操作し第1の基端方向移動抑制部31および第2の基端方向移動抑制部41間、すなわち第2のステント4を目的留置部位に配置する。そして、操作部10の操作用回転ローラ61を押圧した後、ローラを図23の矢印方向に回転させる。これにより、牽引ワイヤ6は、巻取シャフト63の外周面に巻き取られるとともに、ステント収納用筒状部材5およびスライドチューブ7は、軸方向基端側に移動する。この時、第2のステント4はその後端面が第2の基端方向移動抑制部41の先端面に当接し係止されるので、ステント収納用筒状部材5の移動に伴って、ステント収納用筒状部材5の先端開口より放出される。この放出により、第2のステント4は、図12に示すように、自己拡張し狭窄部を拡張するとともに狭窄部内に留置される。
【符号の説明】
【0070】
1 生体器官拡張器具
2 先端側チューブ
3 第1のステント
4 第2のステント
5 ステント収納用筒状部材
6 牽引部材
10 操作部
31 第1の基端方向移動抑制部
32 第1の先端方向移動抑制部
41 第2の基端方向移動抑制部
42 第2の先端方向移動抑制部
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、胆管、気管、食道、尿道、消化管その他の臓器などの生体内に形成された狭窄部または閉塞部に、ステントを留置するための生体器官拡張器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、血管、胆管、食道、気管、尿道、消化管その他の臓器などの生体管腔または体腔の狭窄部あるいは閉塞部にステントを留置して、管腔または体腔空間を確保する生体器官拡張器具が提案されている。
上記生体器官拡張器具により配送されるステントとしては、機能および留置方法によって、バルーン拡張型ステントと自己拡張型ステントとがある。
バルーン拡張型ステントは、ステント自身に拡張機能はなく、ステントを目的部位に留置するには、例えばステントを目的部位まで挿入した後、ステント内にバルーンを位置させてバルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを拡張(塑性変形)させ目的部位の内面に密着させて固定する。
このタイプのステントは上記のようなステントの拡張作業が必要であるが、収縮したバルーンにステントを直接取り付けて留置することもできるので、留置に関してはさほど問題がない。
【0003】
これに対して、自己拡張型ステントは、ステント自身が収縮および拡張機能を有している。このステントを目的部位に留置するためには、収縮させた状態にて目的部位に挿入した後、収縮状態の維持のために負荷した応力を除去する。例えば、目的部位の内径より小さい外径のシース内にステントを収縮させて収納し、このシースの先端を目的部位に到達させた後、ステントをシースより押し出す。押し出されたステントは、シースより解放されることにより応力負荷が解除され、収縮前の形状に復元し拡張する。これにより、目的部位の内面に密着し固定する。
このタイプのステントは、ステント自身が拡張力を有しているので、バルーン拡張型ステントのような拡張作業は必要なく、血管の圧力等によって径が次第に小さくなり再狭窄を生じるといった問題もない。
血管内の狭窄部は、短い領域において発症する場合が多いが、所定長の領域にて発生する場合、また、近接して2カ所発生する場合などがある。
特開2005−118571号公報(特許文献1)のように複数のステントにより1つのステントが構成されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−118571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のものでは、複数のステントに分離するものの個々のステントを任意の部位に留置することは困難であり、また、生体内留置作業時におけるステントの把握が容易ではなく、目的部位に良好に配置することが困難であった。
本発明の目的は、2つの自己拡張型ステントを備える生体器官拡張器具であって、それぞれのステントを良好に目的部位に留置することが可能な生体器官拡張器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張可能な第1および第2のステントと、ガイドワイヤルーメンを有するチューブ状本体と、前記第1および第2のステントを先端部内に収納したステント収納用筒状部材とを備え、かつ前記第1および第2のステントが前記チューブ状本体の先端部を覆うように配置され、かつ前記ステント収納用筒状部材を前記チューブ状本体に対して基端側に移動させることにより、前記第1および第2のステントを露出可能である生体器官拡張器具であって、
前記第2のステントは、前記第1のステントより所定長基端側に配置されており、前記生体器官拡張器具は、前記第1のステントの後端に近接もしくは当接しかつ造影性を有する第1の基端方向移動抑制部と、前記第2のステントの後端に近接もしくは当接しかつ造影性を有する第2の基端方向移動抑制部とを備えている生体器官拡張器具。
【0007】
(2) 前記チューブ状本体は、該チューブ状本体の先端側に位置し、前記第1のステントの先端に近接もしくは当接する第1のステント用の先端方向移動抑制部を備えている上記(1)に記載の生体器官拡張器具。
(3) 前記チューブ状本体は、該チューブ状本体の先端側に位置し、前記第2のステントの先端に近接もしくは当接する第2のステント用の先端方向移動抑制部を備えている上記(1)または(2)に記載の生体器官拡張器具。
(4) 前記チューブ状本体は、前記第1の基端方向移動抑制部より所定長基端方向に延びる補強部を備えている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(5) 前記チューブ状本体は、前記第2の基端方向移動抑制部より所定長基端方向に延びる補強部を備えている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(6) 前記チューブ状本体は、前記第1の基端方向移動抑制部から前記第2のステントの先端部付近もしくは先端部内に到達する補強部を備えている上記(3)ないし(5)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(7) 前記第1の基端方向移動抑制部および/または前記第2の基端方向移動抑制部の後端部は、基端方向に向かって縮径するテーパー部となっている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(8) 前記ステント収納用筒状部材の先端部は、造影性を有するものとなっている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(9) 前記ステント収納用筒状部材は、前記第1のステントを収納する部分と前記第2のステントを収納する部分間が柔軟部となっている上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(10) 前記第1のステントと前記第2のステントは、前記拡張時の外径が異なるものである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【0008】
(11) 前記チューブ状本体は、ガイドワイヤルーメンを有する先端側チューブと、基端側チューブと、前記先端側チューブの基端部および前記基端側チューブの先端部が固定されるとともに前記ガイドワイヤルーメンと連通する開口を備える固定チューブとを備えるものである上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(12) 前記生体器官拡張器具は、前記ステント収納用筒状部材に一端部が固定され、前記チューブ状本体内を延びるとともに該チューブ状本体の基端側に牽引することにより、前記ステント収納用筒状部材を基端側に移動させるための少なくとも一つの牽引ワイヤを備えている上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(13) 前記チューブ状本体には、前記牽引ワイヤを巻き取り、前記ステント収納用筒状部材を基端側に移動させるための牽引ワイヤ巻取機構を備える操作部を有する上記(12)に記載の生体器官拡張器具。
(14) 前記生体器官拡張器具は、前記基端側チューブ内を通り、前記固定チューブ内に侵入する線状剛性付与体を備えている上記(11)ないし(13)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(15) 前記操作部は、前記牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構を備えている上記(14)に記載の生体器官拡張器具。
(16) 前記操作部は、前記牽引ワイヤ巻取機能の前記牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構を備えている上記(14)または(15)に記載の生体器官拡張器具。
(17) 前記牽引ワイヤ巻取機構は、操作用回転ローラと、該操作用回転ローラと同軸的かつ一体的に設けられるとともに、該操作用回転ローラより小径の巻取シャフト部を備え、該巻取シャフト部に前記牽引ワイヤの基端部が固定されている上記(14)ないし(16)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【発明の効果】
【0009】
本発明の生体器官拡張器具は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能な第1および第2のステントと、ガイドワイヤルーメンを有するチューブ状本体と、第1および第2のステントを先端部内に収納したステント収納用筒状部材とを備え、かつ第1および第2のステントがチューブ状本体の先端部を覆うように配置され、かつステント収納用筒状部材をチューブ状本体に対して基端側に移動させることにより、第1および第2のステントを露出可能である。第2のステントは、第1のステントの後端部に近接しかつ所定長基端側に配置されている。そして、生体器官拡張器具は、第1のステントの後端に近接もしくは当接しかつ造影性を有する第1の基端方向移動抑制部と、第2のステントの後端に近接もしくは当接しかつ造影性を有する第2の基端方向移動抑制部とを備えているので、造影性を有する第1の基端方向移動抑制部を用いることにより、第1のステントを良好に目的部位に配置することができ、さらに、第2のステントは、造影性を有する第1の基端方向移動抑制部と造影性を有する第2の基端方向移動抑制部との間に位置するので、その位置把握が容易でありかつ第2のステントの後端付近に位置する造影性を有する第2の基端方向移動抑制部を用いることにより、良好に目的部位に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の部分省略外観図である。
【図2】図2は、図1の生体器官拡張器具の先端部の拡大外観図である。
【図3】図3は、図1の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。
【図4】図4は、図1の生体器官拡張器具のステント収納用筒状部材付近の拡大断面図である。
【図5】図5は、図1の生体器官拡張器具のスライドチューブ付近の拡大断面図である。
【図6】図6は、図1の生体器官拡張器具の固定チューブ付近の拡大断面図である。
【図7】図7は、図2のA−A線断面拡大図である。
【図8】図8は、図2のB−B線断面拡大図である。
【図9】図9は、図2のC−C線断面拡大図である。
【図10】図10は、図1の生体器官拡張器具のステント収納用筒状部材の基端部およびスライドチューブの先端部付近の拡大断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の作用を説明するための説明図である。
【図12】図12は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の作用を説明するための説明図である。
【図13】図13は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。
【図14】図14は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。
【図15】図15は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。
【図16】図16は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。
【図17】図17は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。
【図18】図18は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。
【図19】図19は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具のステント収納用筒状部材の基端部付近の拡大断面図である。
【図20】図20は、本発明の生体器官拡張器具に使用されるステントの一例の外観図である。
【図21】図21は、本発明の生体器官拡張器具の操作部付近の拡大正面図である。
【図22】図22は、図21に示した生体器官拡張器具の操作部付近の拡大背面図である。
【図23】図23は、図21に示した生体器官拡張器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
【図24】図24は、図21に示した生体器官拡張器具の操作部分のみの右側面図である。
【図25】図25は、図21に示した生体器官拡張器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の生体器官拡張器具について実施例を用いて説明する。
本発明の生体器官拡張器具1は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能な第1のステント3および第2のステント4と、ガイドワイヤルーメン21を有するチューブ状本体と、第1のステント3および第2のステント4を先端部内に収納したステント収納用筒状部材5とを備え、かつ第1のステント3および第2のステント4がチューブ状本体の先端部を覆うように配置され、かつステント収納用筒状部材5をチューブ状本体に対して基端側に移動させることにより、第1のステント3および第2のステント4を露出可能となっている。第2のステント4は、第1のステント3より所定長基端側に配置されている。生体器官拡張器具1は、第1のステント3の後端に近接もしくは当接しかつ造影性を有する第1の基端方向移動抑制部31と、第2のステント4の後端に近接もしくは当接しかつ造影性を有する第2の基端方向移動抑制部41とを備えている。
【0012】
本発明の生体器官拡張器具1は、ガイドワイヤルーメン21を有するチューブ状本体と、自己拡張型の第1のステント3および自己拡張型の第2のステント4を収納したステント収納用筒状部材5とを備える。
そして、この実施例の生体器官拡張器具1では、チューブ状本体は、ガイドワイヤルーメン21を有する先端側チューブ2と、基端側チューブ9と、先端側チューブ2の基端部および基端側チューブ9の先端部が固定されるとともにガイドワイヤルーメン21と連通する開口23を備える固定チューブ8とにより構成されている。なお、チューブ状本体の構成としては、このようなものに限定されるものではない。また、この実施例の生体器官拡張器具1では、ステント収納用筒状部材5に一端部が固定され、チューブ状本体内を延びるとともに基端側に牽引することにより、ステント収納用筒状部材5を基端側に移動させるための移動手段を構成する牽引ワイヤ6(6a,6b)を備えている。さらに、この実施例の生体器官拡張器具1は、チューブ状本体の基端部には、牽引ワイヤ6を巻き取り、ステント収納用筒状部材5を基端側に移動させるための牽引ワイヤ巻取機構を備えている。
【0013】
この実施例の生体器官拡張器具1は、先端側チューブ2、第1のステント3、第2のステント4、基端側チューブ9、ステント収納用筒状部材5、牽引ワイヤ6、スライドチューブ7,固定チューブ8および牽引ワイヤ6の巻取機構を有する操作部10を備えている。そして、固定チューブ8は、先端側チューブ2と基端側チューブ9を接続するとともに、先端側チューブ2の基端部と連通する開口23を備えている。
【0014】
先端側チューブ2は、図1ないし図10に示すように、先端から基端まで貫通するガイドワイヤルーメン21を有するチューブ体であり、先端に固定された先端部材25により、先端部が形成されており、その先端に、先端開口25aを備えている。なお、先端部は、先端側チューブと一体に形成してもよい。そして、先端側チューブ2は、基端部において、固定チューブ8に固定されている。また、先端側チューブ2の基端は、固定チューブ8に形成された開口23と連通している。また、先端側チューブ2の基端部は、図6に示すように、湾曲している。また、開口23は、図1および図6に示すように、基端側に向かって傾斜するように斜めに形成されている。これにより、ガイドワイヤの誘導を容易にしている。
【0015】
先端側チューブ2は、図に示すように、先端から基端まで貫通したガイドワイヤルーメン21を有するチューブ体である。先端側チューブ2としては、外径が0.3〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.5mmであり、内径が0.2〜1.5mm、好ましくは0.3〜1.2mm、長さが、20〜700mm、好ましくは30〜550mmである。
【0016】
そして、先端部材25は、ステント収納用筒状部材5の先端より先端側に位置し、かつ、図1ないし図4に示すように、先端に向かって徐々に縮径するテーパー状に形成されていることが好ましい。このように形成することにより、狭窄部への挿入を容易なものとする。また、先端側チューブ2は、第1のステント3よりも先端側に設けられ、ステント収納用筒状部材の先端方向への移動を阻止するストッパーを備えることが好ましい。この実施例では、先端部材25の基端は、ステント収納用筒状部材5の先端と当接可能なものとなっており、上記のストッパーとして機能している。
なお、先端部材(先端部)25の最先端部の外径は、0.5mm〜1.8mmであることが好ましい。また、先端部材(先端部)25の最大径部の外径は、0.8〜4.0mmであることが好ましい。さらに、先端側テーパー部の長さは、2.0〜20.0mmが好ましい。
【0017】
また、先端側チューブ2は、図1ないし図4に示すように、第1のステント3の基端側への移動を規制するために、チューブ2の先端より所定距離基端側となる位置に設けられた第1のステント基端方向移動抑制部(第1の基端方向移動抑制部)31と、この第1のステント基端方向移動抑制部31よりも所定距離基端側となる位置に設けられた第2のステント基端方向移動抑制部(第2の基端方向移動抑制部)41を備えている。
ステント基端方向移動抑制部31,41は、環状突出部であることが好ましい。そして、第2のステント基端方向移動抑制部41より先端側が、ステント収納部位となっている。第1の基端方向移動抑制部31の外径は、圧縮された第1のステント3の基端と当接可能な大きさとなっている。そして、ステント収納用筒状部材5が、基端側に移動しても、第1の基端方向移動抑制部31によりステント3は配置位置を維持するため、ステント収納用筒状部材5より、結果的に放出される。同様に、ステント基端方向移動抑制部41の外径は、圧縮されたステント4の基端と当接可能な大きさとなっている。そして、ステント収納用筒状部材5が、基端側に移動しても、第2の基端方向移動抑制部41によりステント4は配置位置を維持するため、ステント収納用筒状部材5より、結果的に放出される。
【0018】
第1の基端方向移動抑制部31は、造影性(具体的には、X線造影性、超音波造影性)を備えている。第1の基端方向移動抑制部31は、その全体が造影性を有することが好ましいが、第1の基端方向移動抑制部31の先端側部分が少なくとも造影性を有することが必要である。さらに、この実施例では、第1の基端方向移動抑制部31は、ほぼ同一外径にて延びる筒状部分とこの筒状部分より基端方向に向かって縮径するテーパー部とを有するものとなっている。
同様に、第2の基端方向移動抑制部41は、造影性(具体的には、X線造影性、超音波造影性)を備えている。第2の基端方向移動抑制部41は、その全体が造影性を有することが好ましいが、第2の基端方向移動抑制部41の先端側部分が少なくとも造影性を有することが必要である。さらに、この実施例では、第2の基端方向移動抑制部41は、ほぼ同一外径にて延びる筒状部分とこの筒状部分より基端方向に向かって縮径するテーパー部とを有するものとなっている。
【0019】
そして、第1の基端方向移動抑制部31および第2の基端方向移動抑制部41への造影性の付与は、例えば、それら係止部の外面への造影性部材の被嵌、係止部を造影性剤材料による形成、さらには、係止部形成材料中への造影剤の添加などにより行うことができる。造影性部材もしくは造影性剤材料に用いられるX線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、タンタル、ステンレス、白金、あるいはそれらの合金等が好適である。そして、造影性部材としては、X線造影性材料によりワイヤを形成し先端側チューブの外面に巻きつけること、もしくはX線造影性材料によりパイプを形成し、かしめる又は接着することにより取り付けられる。また、造影性付与を係止部形成材料中への造影剤の添加により行う場合には、31,41をX線造影剤を含有する合成樹脂にて形成する。X線造影剤としては、例えば、タングステン、硫酸バリウム、ビスマス、酸化ビスマス、金、白金等の微粉末が好ましい。
【0020】
さらに、この実施例では、チューブ状本体(具体的には、先端側チューブ2)は、第1の基端方向移動抑制部31より所定長基端方向に延びる補強部43を備えている。この実施例では、補強部43は、先端側チューブ2の外面に固定された薄肉チューブにより形成されている。補強部43の基端部は、後述する第2の先端方向移動抑制部42に到達するものとなっている。また、補強部43の先端部は、第1の基端方向移動抑制部31よりも先端側に突出している。よって、補強部43は、第1の基端方向移動抑制部31の前後の所定長部分を補強している。また、この実施例では、第1の基端方向移動抑制部31は、補強部43に固定されたものとなっている。
【0021】
また、この実施例では、チューブ状本体(具体的には、先端側チューブ2)は、第2の基端方向移動抑制部41より所定長基端方向に延びる補強部44を備えている。この実施例では、補強部44は、先端側チューブ2の外面に固定された薄肉チューブにより形成されている。また、補強部44の先端部は、第2の基端方向移動抑制部41よりも先端側に突出している。よって、補強部44は、第2の基端方向移動抑制部41の前後の所定長部分を補強している。また、この実施例では、第2の基端方向移動抑制部41は、補強部44に固定されたものとなっている。
補強部43,44を構成する薄肉チューブの形成材料としては、ある程度の硬度を有することが望ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどの硬質もしくは半硬質材料が好適である。
【0022】
そして、この実施例の生体器官拡張器具1では、先端側チューブ2は、図3および図4に示すように、第1の基端方向移動抑制部31より所定長(ほぼ第1のステント3の軸方向長)先端側となる位置に設けられた第1の先端方向移動抑制部(第1のステント先端方向移動抑制部)32を備えている。第1の先端方向移動抑制部32は、図3および図4に示すように、ステント収納用筒状部材5の先端より、若干基端側に位置している。第1の先端方向移動抑制部32は、環状突出部であることが好ましい。そして、この第1の先端方向移動抑制部32と上述した第1の基端方向移動抑制部31間が、第1のステント収納部位となっている。第1の先端方向移動抑制部32の外径は、圧縮された第1のステント3の先端と当接可能な大きさとなっている。また、第1の先端方向移動抑制部32は、基端面が基端方向に向かって縮径するテーパー面となっている。このため、ステント放出時において、第1の先端方向移動抑制部32が障害となることがなく、また、ステント3の放出後の生体器官拡張器具1の基端側への引き戻し及びリリース後の取り出しが容易となる。
【0023】
さらに、この実施例の生体器官拡張器具1では、先端側チューブ2は、図3および図4に示すように、第2の基端方向移動抑制部41より所定長(ほぼ第2のステント4の軸方向長)先端側となる位置に設けられた第2の先端方向移動抑制部(第2のステント先端方向移動抑制部)42を備えている。第2の先端方向移動抑制部42は、図3および図4に示すように、ステント収納用筒状部材5の先端より、所定長基端側に位置している。第2の先端方向移動抑制部42は、環状突出部であることが好ましい。そして、この第2の先端方向移動抑制部42と上述した第2の基端方向移動抑制部41間が、第2のステント収納部位となっている。第2の先端方向移動抑制部42の外径は、圧縮された第2のステント4の先端と当接可能な大きさとなっている。また、第2の先端方向移動抑制部42は、基端面が基端方向に向かって縮径するテーパ面となっている。このため、ステント放出時において、第2の先端方向移動抑制部42が障害となることがなく、また、ステント4の放出後の生体器官拡張器具1の回収(具体的には、ガイディングカテーテルあるいはシース内への収納)が容易となる。また、この実施例では、第2の先端方向移動抑制部42は、上述した第1の基端方向移動抑制部31より所定長基端側となる位置に設けられている。このため、ステント収納用筒状部材5は、第1のステント収納部位と第2のステント収納部位間に位置するステント非収納部を備えている。第1の基端方向移動抑制部31と第2の先端方向移動抑制部42間の距離としては、2〜20mmが好ましく、特に、5〜15mmが好ましい。
【0024】
ステント基端方向移動抑制部31、41およびステント先端方向移動抑制部32、42の外径は、0.8〜4.0mmであることが好ましい。なお、移動抑制部31,32,41,42は、図示するような環状突出部が好ましいが、ステントの移動を規制し、かつ、押出可能であればよく、例えば、先端側チューブ2に一体にあるいは別部材で設けられた1つまたは複数の突起であってもよい。また、ステント先端方向移動抑制部32、42は、造影性(具体的には、X線造影性、超音波造影性)を有するものであってもよい。ステント先端方向移動抑制部32、42への造影性付与は、ステント基端方向移動抑制部31、41にて説明したものが好適に利用できる。
【0025】
先端側チューブの形成材料としては、硬度があってかつ柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。特に、上記の樹脂のうち、熱可塑性を有する樹脂が好ましい。なお、先端側チューブの露出する外面には、生体適合性、特に抗血栓性を有する樹脂をコーティングしてもよい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが好適に使用できる。
【0026】
また、先端部をチューブと別部材により構成する場合には、先端部(先端部材)25としては、柔軟性を有する材料を用いることが好ましい。例えば、オレフィン系エラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)、ポリアミドエラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレンブチレン−スチレンコポリマー)、ポリウレタン、ウレタン系エラストマー、フッ素樹脂系エラストマーなどの合成樹脂エラストマー、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ラテックスゴムなどの天然ゴムなどのゴム類が使用される。
【0027】
特に、この実施例の生体器官拡張器具1では、先端側チューブ2と先端部材25は、別部材にて形成されているとともに、先端側チューブ2は、先端部に、ストッパー部材27が固定されている。ストッパー部材27は、先端側チューブ2に固定された筒状部とこの筒状部より、テーパー状に広がるスカート部を備えている。そして、ストッパー部材27は、先端部材25内に埋設された状態となっており、先端部材25の離脱および先端側への移動を防止している。ストッパー部材27は、金属(例えば、ステンレス鋼)により形成することが好ましい。
基端側チューブ9は、図1、図2および図6に示すように、先端から基端まで貫通したチューブ体であり、基端に固定された操作部10を備えている。基端側チューブ9の先端部は、固定チューブ8に、固定部材84により、接合されている。基端側チューブ9は、内部に牽引ワイヤ6を挿通可能な牽引ワイヤ用ルーメンを備えている。
基端側チューブ9としては、長さが300mm〜1500mm、より好ましくは、800〜1300mmであり、外径が0.5〜1.5mm、好ましくは0.6〜1.3mmであり、内径が0.3〜1.4mm、好ましくは0.5〜1.2mmである。
基端側チューブ9の中心軸と先端側チューブ2の中心軸とのずれの距離としては、0.1〜2.0mmが好ましく、特に、0.5〜1.5mmが好ましい。
【0028】
基端側チューブの形成材料としては、硬度があってかつ柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。なお、基端側チューブの外面には、生体適合性、特に抗血栓性を有する樹脂をコーティングしてもよい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが使用できる。また、基端側チューブ9の形成材料としては、比較的剛性の高い材質を用いることが好ましい。例えばNi−Ti、真鍮、ステンレス鋼、アルミ等の金属、さらには、比較的剛性の高い樹脂、例えば、ポリイミド、塩化ビニル、ポリカーボネート等を用いることもできる。
【0029】
ステント収納用筒状部材5は、図1ないし図4に示すように所定長を備える管状体である。先端および後端は開口している。先端開口は、第1のステント3および第2のステント4を体腔内の狭窄部に留置する際、ステントの放出口として機能する。ステント3およびステント4は、図11および図12に示すように、ステント収納用筒状部材5が基端側に移動することにより、この先端開口より放出され、応力負荷が解除されて拡張し圧縮前の形状に復元する。
ステント収納用筒状部材5の長さとしては、30mm〜220mmが好ましく、特に、50mm〜180mmが好ましい。また、外径としては、1.0〜4.0mm程度が好ましく、特に、1.2〜3.0mmが好ましい。また、ステント収納用筒状部材5の内径としては、1.0〜2.5mm程度が好ましい。
【0030】
そして、このステント収納用筒状部材5は、基端部に設けられた小径部51aを備える筒状部材本体部51と、この小径部51aを被包するように設けられた筒状部52を備えている。なお、小径部51aの基端部は、筒状部52より突出している。具体的には、牽引ワイヤ6(6a、6b)の先端部69(69a,69b)は、小径部51aと筒状部52間に形成された空隙内に侵入し、空隙に充填された固定剤53により、ステント収納用筒状部材5に固定されている。小径部51aは、外径が基端側に向かって縮径するテーパー部とこのテーパー部より基端側に延びる短い円筒部を備えている。そして、筒状部材本体部51の縮径部(小径部)51aを被包するように筒状部52は、筒状部材本体部51の基端部に固定されている。このため、筒状部材本体部51の小径部51aは、筒状部材5の内方かつ基端方向に突出する環状突出部を構成している。そして、この環状突出部とステント収納用筒状部材5(具体的には、基端側筒状部の先端部)内面間により、環状空隙部が形成されている。そして、この実施例では、牽引ワイヤ6(6a、6b)の先端部69(69a,69b)は、小径部51aの外面にて固定されている。そして、この空隙部には、接着剤が充填されており、筒状部材本体部51と基端側筒状部52を一体化している。また、環状空隙部に充填された固定剤等により、後述する牽引ワイヤ6(6a,6b)の先端部(固定点)69(69a,69b)は、筒状部材5に固定されている。固定剤としては、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂、シアノアクリレート系樹脂などの接着剤を用いることが好ましいが、熱融着であってもよい。
【0031】
そして、この実施例において用いられているステント収納用筒状部材5では、筒状部材本体部51および筒状部52は、ほぼ同じ外径を有するものとなっている。筒状部材本体部の外径としては、1.0〜4.0mm程度が好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、筒状部材本体部51の長さとしては、30〜220mm程度が好ましく、特に、50mm〜180mmが好ましく、基端側筒状部52の長さとしては、3〜20mm程度が好ましく、特に、5mm〜15mmが好ましい。
なお、ステント収納用筒状部材5としては、上述したような筒状部材本体部51と基端側筒状部52からなるものに限定されるものではなく、一体物であってもよい。
【0032】
スライドチューブ7は、図3ないし図5に示すように、その先端が、ステント収納用筒状部材5の基端に近接するように配置されている。また、スライドチューブ7は、その基端側より固定チューブ内に収納可能なものとなっている。なお、スライドチューブ7は、基端側より固定チューブ8に被嵌可能なものであってもよい。スライドチューブ7は、牽引ワイヤ6の牽引によりステント収納用筒状部材5とともに基端側に移動可能であり、かつ、ステント収納用筒状部材5に固定されていないものとなっている。
そして、この実施例における生体器官拡張器具1では、スライドチューブ7内に非固定状態にて収納されかつスライドチューブ7とともに移動するリング状部材75を備え、牽引ワイヤ6a,6bは、リング状部材75の内面に固定されている。
特に、この実施例の生体器官拡張器具1では、リング状部材75は、スライドチューブ7内に非固定状態にて収納されている。このため、固定部が牽引ワイヤの牽引の障害となることなく、また、生体器官拡張器具の基端部にて付与された捻り力が、スライドチューブに伝達されたとしても、スライドチューブに固定されていないため、捻れ等を生じることがなく、良好な状態を保持できる。
そして、スライドチューブ7は、リング状部材75の回動を許容し、かつ軸方向への移動を実質的に阻止するリング状部材保持部を備えている。このように、リング状部材75が、スライドチューブ7に対して、回動可能であることにより、スライドチューブ7の回動に対して、リング状部材75、牽引ワイヤの固定部および牽引ワイヤ自体も追従しにくいものとなる。
【0033】
スライドチューブ7は、具体的には、図2ないし図10に示すように、スライドチューブ本体71と、その先端に固定され、スライドチューブ本体71より外径および内径が大きい先端側部材を備えている。そして、この実施例では、スライドチューブ7の先端側部材は、図10に示すように、第1の筒状部材72とこの第1の筒状部材72とほぼ同じ外径および内径を備える第2の筒状部材73とから構成される外側チューブ部と、第1の筒状部材72の基端部および第2の筒状部材73の先端部内に配置された第3の筒状部材74により構成される内側チューブ部と、外側チューブと内側チューブを固定する、言い換えれば、第1の筒状部材72と第2の筒状部材73と第3の筒状部材74を固着する固着部76とを備えている。そして、外側チューブである第2の筒状部材73の基端部は、固着部77により、スライドチューブ本体71の先端部に固定されている。また、スライドチューブ本体71の先端部は、外側チューブである第2の筒状部材73の基端部内に侵入するとともに、内側チューブ部を構成する第3の筒状部材74の基端部と所定距離離間している。これにより、スライドチューブ本体71の先端部と、外側チューブである第2の筒状部材73の内面と、内側チューブ部を構成する第3の筒状部材74の基端部により、リング状部材保持部を構成する環状凹部が形成されている。そして、リング状部材保持部であるこの環状凹部内に、リング状部材75が、収納されている。リング状部材75は、スライドチューブ本体71、第2の筒状部材73および第3の筒状部材74のいずれにも固定されていないため、回動可能である。しかし、スライドチューブ7内における軸方向への移動は、クリアランスを除き不能となっている。リング状部材75としては、金属リングまたはプラスチック筒状部材(後述する実施例の生体器官拡張器具110にて説明する)が好適である。そして、牽引ワイヤ6a,6bは、図10に示すように、リング状部材75の内面に固定部75a、75bにより固定されている。固定部としては、溶接、接着剤などが好ましい。そして、このリング状部材75に牽引ワイヤ6a,6bが固定されているため、牽引ワイヤ6a,6bを牽引することにより、リング状部材75も牽引され、そして、リング状部材75により先端側より押されることにより、スライドチューブ7も生体器官拡張器具1の基端側に移動する。
スライドチューブ本体71の外径としては、0.8〜4.0mm程度が好ましく、特に、1.1〜3.3mmが好ましい。また、スライドチューブ本体71の長さとしては、30〜300mm程度が好ましく、特に、50mm〜250mmが好ましい。
【0034】
また、スライドチューブ7は、その先端部が、ステント収納用筒状部材5の小径部51aの基端部を被包していることが好ましい。また、スライドチューブ7とステント収納用筒状部材5は、接合されていないことが好ましい。この実施例では、図10に示すように、接合されることなく、さらには、実質的に接触することなく、スライドチューブ7の先端部は、ステント収納用筒状部材5の小径部51aの基端部を被包している。具体的には、外側チューブ部を構成する第1の筒状部材72の先端部が、ステント収納用筒状部材5の小径部51aの基端部を実質的に接触することなく被包している。
さらに、この実施例では、スライドチューブ7は、スライドチューブ本体71の全体にわたり補強層78を備えている。このような補強層を設けることにより、耐キンク性が向上し、スライドチューブ7のスライドが良好なものとなる。補強層は、網目状の補強層であることが好ましい。網目状の補強層は、ブレード線で形成することが好ましい。例えば、ワイヤブレードであり、線径0.01〜0.2mm、好ましくは0.02〜0.15mmのステンレス、弾性金属、超弾性合金、形状記憶合金等の金属線で形成することができる。または、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維で形成してもよい。
【0035】
固定チューブ8は、この実施例の生体器官拡張器具1では、図2、図6、図9に示すように、外径の大きい先端側固定チューブ81と、この先端側固定チューブ81の基端部に固定された基端側固定チューブ82を備えている。そして、先端側固定チューブ81は、先端縮径部81aを備えており、先端縮径部81aの内面は、スライドチューブ7の基端部の外面に接触している。そして、スライドチューブ7は、先端側固定チューブ81に固定されておらず、基端側に摺動することにより、先端側固定チューブ81内に侵入し、収納される。
この実施例のように、スライドチューブ7が、固定チューブ8内にスライド収納されるタイプのものであることが好ましいが、これに限定されるものではなく、スライドチューブを基端側にスライドすることにより、固定チューブがスライドチューブにより被嵌されるタイプのものであってもよい。
【0036】
基端側固定チューブ82の先端部は、先端側固定チューブ81の基端内に侵入し、固定部81bにより固定されている。また、先端側チューブ2の外面には、固定チューブ8内、具体的には、図6に示すように、先端側固定チューブ81の基端部となる位置に、スライドチューブ係止部24が設けられている。スライドチューブ7は、このスライドチューブ係止部24に当接するまで、基端側にスライド可能となっている。言い換えれば、スライドチューブ7は、このスライドチューブ係止部24に当接することにより、それ以上の基端側への移動が規制されている。
先端側固定チューブ81の外径としては、1.0〜4.0mm程度が好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、先端側固定チューブ81の長さとしては、30〜300mm程度が好ましく、特に、50mm〜250mmが好ましい。
【0037】
さらに、この実施例では、図6に示すように、固定チューブ8の先端側部分、具体的には、先端側固定チューブ81は、そのほぼ全体にわたり補強層85を備えている。補強層としては、網目状のもの、螺旋状のものなどが好ましい。特に、網目状補強層であることが好ましい。網目状補強層としては、金属細線により網状に形成されたものが好適である。金属細線としては、ステンレス鋼が好ましい。さらに、図6に示すように、基端側固定チューブ82との接続部となる部分には、補強層が存在しないものとすることが好ましい。
先端側チューブ2の基端部には、その基端部を収納した筒状固着部材83が設けられており、また、基端側チューブ9の先端には、筒状固定部材84が設けられている。そして、図6および図9に示すように、基端側固定チューブ82に、筒状固着部材83および筒状固定部材84が固着されている。
【0038】
また、図2および図3に示すように、この生体器官拡張器具1では、複数(具体的には、2本)の牽引ワイヤ6a,6bを備えており、牽引ワイヤ6a、6bは、上述した筒状部材5が備える空隙部にて、固定点69a、69b部分が、固定剤53により、ステント収納用筒状部材5の小径部の外側に固定されている。また、牽引ワイヤ6a,6bおよびこの固定点69a、69bは、所定長離間している。
【0039】
ステント収納用筒状部材5(筒状部材本体部51、基端側筒状部52)、スライドチューブ7(スライドチューブ本体71)、固定チューブ8(先端側固定チューブ81、基端側固定チューブ82)の形成材料としては、ステント収納用筒状部材に求められる物性(柔軟性、硬度、強度、滑り性、耐キンク性、伸縮性)を考慮して、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、PEEK、ポリイミド、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマー、さらには、熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ナイロン系(例えば、ポリアミドエラストマー)、ウレタン系(例えば、ポリウレタンエラストマー)、ポリエステル系(例えば、ポリエチレンテレフタレートエラストマー)、オレフィン系(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)の中から適宜選択される。
さらに、ステント収納用筒状部材5の外面には、潤滑性を呈するようにするための処理を施すことが好ましい。このような処理としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーをコーティング、または固定する方法などが挙げられる。また、ステント収納用筒状部材5の内面に、ステントの摺動性を良好なものにするため、上述のものをコーティング、または固定してもよい。
また、ステント収納用筒状部材5は、上記のようなポリマーの2層構造(例えば、外面はナイロン、内面はPTFE)の組み合わせで形成しても良い。
【0040】
そして、生体器官拡張器具1は、ステント収納用筒状部材5の基端部に一端部が固定され、ステント収納用筒状部材5の基端を越え、スライドチューブ7,固定チューブ8を貫通し、基端側チューブ9内を延びる牽引ワイヤ6を備えている。そして、この牽引ワイヤ6を基端側チューブの基端側に牽引することにより、ステント収納用筒状部材5およびスライドチューブ7は、基端側に移動する。
そして、図1ないし図5、図7ないし図12に示すように、この生体器官拡張器具1では、複数(具体的には、2本)の牽引ワイヤ6a,6bを備えており、牽引ワイヤ6a、6bは、かなりステントに近い部分に設けられた固定点69a、69bにより、ステント収納用筒状部材5の基端部に固定されている。また、牽引ワイヤ6a,6bおよびこの固定点69a、69bは、所定距離離間するように配置されている。
【0041】
さらに、この実施例では、図10に示し、また、上述したように、牽引ワイヤ6a,6bは、スライドチューブ7が備えるリング状部材75の内面に、固定点75a,75bにより固定されている。このため、この実施例の生体器官拡張器具1では、牽引ワイヤ6a,6bが、基端側に牽引されることにより、リング状部材75も基端側に牽引され、このリング状部材75にスライドチューブ7(スライドチューブ本体71)が当接することにより、スライドチューブも基端側に牽引される。よって、この実施例では、ステント収納用筒状部材5とスライドチューブ7とは、両者それぞれが別個に牽引されるものとなっており、牽引時に、ステント収納用筒状部材5とスライドチューブ7が当接しないものとなっている。また、牽引ワイヤ6a,6bの牽引時の力は、固定点69a、69bとリング状部材75の固定点75a,75bとに分散されるため、固定点69a、69bにおける牽引ワイヤ6a,6bとステント収納用筒状部材5間の固定が解除されることを確実に防止する。
【0042】
この実施例の生体器官拡張器具1では、牽引ワイヤ6は、図1に示すように、基端側チューブ9を貫通し、基端側チューブの基端より延出するものとなっている。
牽引ワイヤの構成材料としては、線材もしくは複数本の線材を撚ったものが好適に使用できる。また、牽引ワイヤの線径は、特に限定されないが、通常、0.01〜0.55mm程度が好ましく、0.1〜0.3mm程度がより好ましい。
また、牽引ワイヤ6の形成材料としては、ステンレス鋼線(好ましくは、バネ用高張力ステンレス鋼)、ピアノ線(好ましくは、ニッケルメッキあるいはクロムメッキが施されたピアノ線)、または超弾性合金線、Ni−Ti合金、Cu−Zn合金、Ni−Al合金、タングステン、タングステン合金、チタン、チタン合金、コバルト合金、タンタル等の各種金属により形成された線材や、ポリアミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素系樹脂等の比較的高剛性の高分子材料、あるいは、これらを適宜組み合わせたものが挙げられる。
また、牽引ワイヤの側面に滑性を増加させる低摩擦性樹脂を被覆してもよい。低摩擦性樹脂としては、フッ素系樹脂、ナイロン66、ポリエーテルエーテルケトン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。この中でも、フッ素系樹脂がより好ましい。フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン、パーフロロアルコキシ樹脂等が挙げられる。またシリコンや各種親水性樹脂によるコーティングであってもよい。
【0043】
さらに、この実施例の生体器官拡張器具1では、上述した牽引ワイヤとは別に、剛性付与体11が設けられている。剛性付与体11は、図1ないし図3,図5、図6および図9に示すように、生体器官拡張器具1の基端側より延び、基端側チューブ9内を通り、さらに、固定チューブ8に侵入している。そして、剛性付与体11の先端11aは、図6に示すように、スライドチューブ係止部24に固定されている。剛性付与体11の先端11aをスライドチューブ係止部24の形成材料に埋設することにより固定することが好ましい。なお、牽引ワイヤ6a、6bは、図5に示すように、スライドチューブ係止部24に固定されておらず、スライドチューブ係止部24に形成された通路24a、24bを通過している。
【0044】
さらに、この実施例の生体器官拡張器具1では、図6に示すように、剛性付与体11は、固定チューブ8に固定される筒状固定部材84にも固定されている。筒状固定部材84には、図6に示すように、軸方向に所定長のびる剛性付与体固定部84aが形成されている。このように、剛性付与体11の先端部を2カ所において固定することにより、剛性付与体11の先端部による強い補強効果を発揮する。特に、スライドチューブ係止部24へのスライドチューブ7の当接時において、スライドチューブ係止部24を補強する。
そして、剛性付与体11は、基端部にて基端側チューブ9の基端部もしくは後述する操作部10に固定されていることが好ましい。このような剛性付与体11を設けることにより、牽引部材(牽引ワイヤ)の牽引時における生体器官拡張器具の変形を抑制できる。また、剛性付与体11の先端部11aは、スライドチューブ係止部24による固定を確実にするために、平坦部となるように形成してもよい。さらに、側面に波状部分を形成して固定部材からの抜け止めを設けてもよい。
【0045】
剛性付与体11としては、線材もしくは複数本の線材を撚ったものが好適に使用できる。また、剛性付与体11の太さは、特に限定されないが、通常、0.01〜1.5mm程度が好ましく、0.1〜1.0mm程度がより好ましい。
また、剛性付与体11としては、本体側部分(具体的には、基端側チューブ内となる部分)が剛性が高く(例えば、線径が太い)、先端側部分が剛性が低い(具体的には、線径が細い)ものであることが好ましい。さらに、両者の変化点は、線径がテーパー状に変形するテーパー部となっていることが好ましい。
また、剛性付与体11の形成材料としては、ステンレス鋼線(好ましくは、バネ用高張力ステンレス鋼)、ピアノ線(好ましくは、ニッケルメッキあるいはクロムメッキが施されたピアノ線)、または超弾性合金線、Ni−Ti合金、Cu−Zn合金、Ni−Al合金、タングステン、タングステン合金、チタン、チタン合金、コバルト合金、タンタル等の各種金属により形成された線材が挙げられる。また、剛性付与体11は、牽引部材(牽引ワイヤ)より、硬質であることが好ましい。
【0046】
ステント収納用筒状部材5内には、第1のステント3および第2のステント4が収納されている。
ステント3、4としては、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なもの(いわゆる自己拡張型ステント)であればどのようなものであってもよい。
そして、第1のステント3と第2のステント4は、圧縮前の形状に復元した時(拡張時、非圧縮時)の外径が異なるものであってもよい。具体的には、非圧縮時の外径が、第2のステント4より第1のステント3のほうが小さいものであることが好ましい。通常、生体器官拡張器具が挿入される血管は、挿入方向(進行方向)に行くほど血管径が細くなる。このため、生体器官拡張器具の先端側に位置する第1のステント3を細径のものとすることにより、細径の血管部位の拡張に対応することができ、かつ、第2のステントを第1のステントより大径(太径)のものとすることにより、第1のステント配置部位より太い血管部位に良好に対応でき、1本の生体器官拡張器具により、径の異なる血管部位の改善を行うことができる。
そして、第1のステントの非圧縮時の外径としては、2〜10mmが好ましく、特に、3〜8mmが好ましい。また、第1のステントの長さは、10〜120mm、より好ましくは、20〜100mmである。第2のステントの非圧縮時の外径としては、4〜12mmが好ましく、特に、5〜10mmが好ましい。また、第2のステントの長さは、10〜120mm、より好ましくは、20〜100mmである。
そして、上述したように、非圧縮時の外径が、第2のステントより第1のステント3のほうが小さいものとする場合には、両者の非圧縮時の外径の差は、1〜5mmであることが好ましい。
ステント3、4の形態としては、例えば、図20(拡張して圧縮前の形状に復元した状態を示している)に示すような形状を有しているものが好適に使用できる。この例のステント3は、円筒状フレーム体30と、この円筒状フレーム体30を構成するフレーム36a,36bにより区画(囲撓)された開口34およびフレーム36aにより区画された切欠部35を有しており、フレーム体30は両端部33a,33bを有している。
【0047】
ステントの形成材料としては、合成樹脂または金属が使用される。合成樹脂としては、ある程度の硬度と弾性を有するものが使用され、生体適合性合成樹脂が好ましい。具体的には、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート),フッ素樹脂(例えば、PTFE、ETFE)、若しくは生体内吸収材料であるポリ乳酸、ポリグリコール酸、又はポリ乳酸とポリグリコール酸の共重合体などである。また、金属としても生体適合性を有するものが好ましく、例えば、ステンレス、タンタル、ニッケルチタン合金などがある。特に、超弾性金属が好ましい。ステント3は、全体において物性の急激な変更点が形成されることなく一体に形成されていることが好ましい。ステントは、例えば、留置される生体内部位に適合した外径を有する金属パイプを準備し、金属パイプの側面を、切削加工(例えば、機械的切削、レーザ切削)、化学エッチングなどにより部分的に除去して、側面に複数の切欠部または複数の開口を形成することにより作製される。
【0048】
このステント3はフレーム体30の端部に切欠部35を有するので、ステント3の端部33a,33bの変形が容易となり、特に、端部の部分的変形が可能となり、留置される血管の変形時に対する応答が良好である。また、端部33は、複数のフレーム36aの端部により形成されているため、つぶれにくく、十分な強度を有する。また、両端部間には、フレーム36a,36bにより囲まれた開口34が形成されており、この開口34は、フレーム36aの変形により容易に変形する。このため、ステント3はその中央部(フレーム体30の中央部)での変形も容易である。なお、切欠部および開口は図示した形状および個数に限定されるものではなく、切欠部としては、3〜10個、開口としては、3〜10個程度が好適である。
フレーム体30は、外径が2.0〜30mm、好ましくは、2.5〜20mm、内径が1.4〜29mm、好ましくは1.6〜28mmのものであり、長さは、10〜300mm、より好ましくは15〜200mmである。
【0049】
なお、ステントの形状は、図20に示すものに限定されるものではない。例えば、両端部に台形状の切欠部が形成されるとともに、中央部にハニカム状に複数の六角形の開口が形成されているもの、また、両端部に長方形状の切欠部が形成され、中央部に複数の長方形状(切欠部の二倍の長さを有する)の開口が形成されているものなどであってもよい。さらに、ステント3、4の形状は、挿入時に縮径可能であり、かつ、体内放出時に拡径(復元)可能なものであればよく、上述の形状に限定されるものではない。例えば、コイル状のもの、円筒状のもの、ロール状のもの、異形管状のもの、高次コイル状のもの、板バネコイル状のもの、カゴまたはメッシュ状のものでもよい。
【0050】
ステントを形成する超弾性金属としては、超弾性合金が好適に使用される。ここでいう超弾性合金とは一般に形状記憶合金といわれ、少なくとも生体温度(37℃付近)で超弾性を示すものである。特に好ましくは、49〜53原子%NiのTi−Ni合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性金属体が好適に使用される。特に好ましくは、上記のTi−Ni合金である。また、Ti−Ni合金の一部を0.01〜10.0%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Co,Fe,Mn,Cr,V,Al,Nb,W,Bなど)とすること、またはTi−Ni合金の一部を0.01〜30.0%原子で置換したTi−Ni−X合金(X=Cu,Pb,Zr)とすること、また、冷間加工率または/および最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。また、上記のTi−Ni−X合金を用いて冷間加工率および/または最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。
【0051】
使用される超弾性合金の座屈強度(負荷時の降伏応力)は、5〜200kgf/mm2(22℃)、より好ましくは、8〜150kgf/mm2、復元応力(除荷時の降伏応力)は、3〜180kgf/mm2(22℃)、より好ましくは、5〜130kgf/mm2である。ここでいう超弾性とは、使用温度において通常の金属が塑性変形する領域まで変形(曲げ、引張り、圧縮)させても、変形の解放後、加熱を必要とせずにほぼ圧縮前の形状に回復することを意味する。
また、本発明の生体器官拡張器具に使用されるステントは、略円筒形状に形成された縮径可能なステント本体と、ステント本体の側面を封鎖する筒状カバー(図示せず)を備えるものであってもよい。
【0052】
そして、上述したすべての実施例において、図13に示す生体器官拡張器具20のようなものであってもよい。この実施例の生体器官拡張器具20では、第1の基端方向移動抑制部31部分を補強する補強部43aは、第2の先端方向移動抑制部42内に侵入しているものであってもよい。このようにすることにより、第1の基端方向移動抑制部31と第2の先端方向移動抑制部42間に補強部不存在部分が形成されることがなく、当領域でのキンクをより確実に防止する。
【0053】
また、上述したすべての実施例において、図14に示す生体器官拡張器具30のようなものであってもよい。この実施例の生体器官拡張器具30では、ステント収納用筒状部材5の先端もしくはその付近に、造影部54(X線造影部もしくは超音波造影部)が設けられている。造影部54は、ステント収納用筒状部材5の外面への造影性部材の埋設により形成することが好ましい。造影部を形成するX線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、ステンレス、白金、あるいはそれらの合金等が好適である。そして、造影性部材としては、X線造影性材料によりワイヤを形成し先端側チューブの外面に巻きつけること、もしくはX線造影性材料によりパイプを形成しかしめる又は接着することにより取り付けられる。
【0054】
さらに、上述したすべての実施例において、図15に示す生体器官拡張器具40のようなものであってもよい。この実施例の生体器官拡張器具40では、ステント収納用筒状部材5の中央部分、具体的には、筒状部材本体部51の中央部分は、他の部分に比べて柔軟部となっている。具体的には、第1のステントの収納部と第2のステントの収納部間となるステント収納用筒状部材5の中央部分が柔軟部となっている。具体的には、柔軟部となる部分の筒状部材本体部51は、外径が縮径した肉薄部となっているとともに、その外面には、柔軟性材料により形成された被覆部材55が設けられている。このため、生体器官拡張器具40では、第1のステントの収納部と第2のステントの収納部間が第1のステントの収納部および第2のステントの収納部より柔軟となるため、変形を許容するため、生体器官拡張器具の先端部の操作性が向上する。また、筒状部材本体部51としては、柔軟部の内径および外径は他の部分と実質的に同じとなっており、また、内面には段差部等もなく、柔軟部に起因するステント収納用筒状部材5の移動時の障害もない。
柔軟性を有する被覆部材の形成材料としては、ナイロン系(例えば、ポリアミドエラストマー)、ウレタン系(例えば、ポリウレタンエラストマー)、ポリエステル系(例えば、ポリエチレンテレフタレートエラストマー)、オレフィン系(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)、シリコーンゴムなどが使用できる。
さらに、上述したすべての実施例において、図16に示す生体器官拡張器具60のようなものであってもよい。この実施例の生体器官拡張器具60では、第1の基端方向移動抑制部と第2の先端方向移動抑制部とが一体物となった移動規制31aとなっている。そして、この移動規制31aにおいても基端部は、テーパ状となっている。
【0055】
さらに、上述したすべての実施例において、図17に示す生体器官拡張器具100のようなものであってもよい。
上述した実施例の生体器官拡張器具では、固定チューブ8は、牽引時において、スライドチューブ7を基端側より収納するタイプ、言い換えれば、スライドチューブ7のスライドチューブ本体71が、基端より、固定チューブ8内に侵入するタイプのものとなっている。
これに対して、この実施例の生体器官拡張器具100では、牽引時において、スライドチューブ7が基端側より固定チューブ8を被嵌するタイプ、言い換えれば、スライドチューブ7のスライドチューブ本体71bが、基端より、固定チューブ8の先端側固定チューブ81cを被包するものとなっている。
このため、スライドチューブ本体71bの内径は、固定チューブ8の先端側固定チューブ81cの外径とほぼ等しい、もしくは、若干大きいものとなっている。先端側固定チューブ81cは、固定部81bにより、その基端部において、基端側固定チューブ82の先端部に固定されている。また、この実施例では、部材24は、スライドチューブ係止部として機能しない。
さらに、上述したすべての実施例において、図18に示す生体器官拡張器具110のように、第2の先端方向移動抑制部を持たないものであってもよい。そして、この場合には、チューブ状本体は、第1の基端方向移動抑制部31から第2のステント4の先端部付近もしくは先端部内に到達する補強部43を備えることが好ましい。特に、補強部43の端部は、第2のステント4の先端部内に到達していることが好ましい。
【0056】
さらに、上述したすべての実施例において、図19に示す生体器官拡張器具120のようなものであってもよい。
図19は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具のステント収納用筒状部材の基端部付近の拡大断面図である。
この実施例の生体器官拡張器具120では、図19に示すように、スライドチューブ7は、スライドチューブ本体71と、スライドチューブ本体71の先端部に固定され、スライドチューブ本体71の先端を覆い、かつスライドチューブ本体71の先端より生体器官拡張器具120の先端側に延びる先端側筒状部材170とを備えている。そして、先端側筒状部材170は、先端側筒状部材170の先端と基端間に位置しかつ少なくとも内径が縮径した縮径部171を有する一体成形筒状体となっている。そして、この実施例では、縮径部171の内径は、スライドチューブ本体71の内径とほぼ等しいまたは若干大きいもしくは若干小さいものとなっている。さらに、この実施例の生体器官拡張器具120では、図19に示すように、先端側筒状部材170は、少なくとも縮径部171以外の部分の外径および内径が、スライドチューブ本体71より大きいものとなっている。そして、縮径部171は、先端側筒状部材170の先端と基端間、具体的には、先端より若干基端側に位置するものとなっている。
そして、先端側筒状部材170の縮径部171の内径は、先端側チューブ2の外径より大きいものとなっている。このため、先端側筒状部材170は、先端側チューブ2に接触することなく、基端側に移動可能となっている。
そして、スライドチューブ本体71の先端間には、樹脂リング176が配置されている。樹脂リング176は、固着部77を形成する接着剤の先端側筒状部材170内への流入を防止する。樹脂リングとしては、摩擦抵抗の少ないものが好ましい。樹脂リングとしては、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。
そして、この実施例における生体器官拡張器具120では、スライドチューブ7内に非固定状態にて収納されかつスライドチューブ7とともに移動するリング状部材180を備え、牽引ワイヤ6a,6bは、リング状部材180に固定されている。
リング状部材180は、プラスチック製外筒部材181とこのプラスチック製外筒部材181内に挿入されたプラスチック製外筒部材182と、プラスチック製外筒部材181とプラスチック製外筒部材182間に充填された接着剤183により構成されている。そして、牽引ワイヤ6a,6bは、プラスチック製外筒部材181とプラスチック製外筒部材182間を貫通するとともに、接着剤183によりリング状部材180に固定されている。プラスチック製外筒部材181およびプラスチック製外筒部材182としては、摩擦抵抗の少ないものが好ましい。樹脂リングとしては、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。
【0057】
そして、本発明の生体器官拡張器具1は、図1,図21ないし図25に示すように、基端側チューブ9の基端に固定された操作部10を備えている。
図21は、本発明の生体器官拡張器具の操作部付近の拡大正面図である。図22は、図21に示した生体器官拡張器具の操作部付近の拡大背面図である。図23は、図21に示した生体器官拡張器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。図24は、図21に示した生体器官拡張器具の操作部分のみの右側面図である。図25は、図21に示した生体器官拡張器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
この実施例の生体器官拡張器具1における操作部10は、牽引ワイヤ巻取機構に加えて、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構および牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構を備えている。
【0058】
操作部10は、図21ないし図25に示すように、操作部ハウジング50を備える。操作部ハウジング50は、第1ハウジング50aと第2ハウジング50bにより構成されている。操作部ハウジング50は、基端側および中央部が屈曲しかつ丸みを帯びた形状となっており、把持しやすく、かつ、把持した状態におけるローラの操作を容易なものとしている。
そして、図23に示すように、基端側チューブ9の基端には、筒状コネクタ45の先端部が固定されている。また、操作部ハウジング50内には、コネクタ45の基端部に接続されたシール機構が収納されている。このシール機構は、図23に示すように、コネクタ45の後端部に固定される先端部を備えるシール機構筒状本体部材70と、筒状本体部材70の基端に固定されたキャップ部材70aと、筒状本体部材70とキャップ部材70a間に配置されたシール部材70bと、筒状本体部材内に収納された剛性付与体固定用部材70cを備えている。本体部材70およびキャップ部材70aは、貫通する開口部を備えている。シール部材70bは、牽引ワイヤ6(6a,6b)を液密状態かつ摺動可能に貫通させるための孔部もしくはスリットを備えている。また、剛性付与体固定用部材70cには、剛性付与体11の基端部が固定されている。そして、剛性付与体固定用部材70cは、筒状本体部材70内に固定されている。コネクタの構成材料としては、上述したものと同じである。シール部材の構成材料としては、弾性材料が使用される。弾性材料としては、上述したものと同じである。シール部材70bの構成材料としては、弾性材料が使用される。弾性材料としては、上述したものと同じである。
【0059】
ハウジング50は、図21ないし図24に示すように、操作用回転ローラ61を部分的に突出させるための開口部58、ローラ61に設けられた歯車部62の突出部と係合するロック用リブ(図示せず)、ローラ61の回転軸の一端64bを収納する軸受部94b、ローラ61の回転軸の他端64aを収納する軸受部94aを備えている。ロック用リブは、ローラ61の歯車部62に形成された突起部間に侵入可能な形状となっている。また、軸受部94a、94bは、図21および図22に示すように、ローラ61の回転軸の一端64bおよび他端64aを収納するとともに、上述の開口部と離間する方向に延びる瓢箪状のものとなっている。なお、軸受部94a、94bは、瓢箪状に限定されるものではなく、ロック用リブとの係合が解除できる距離移動できるものであればよい。例えば、軸受部94a、94bの形状は、長円、矩形、楕円状などであってもよい。特に、この実施例の操作部10では、上記の軸受部94a、94bは、図21および図22に示すように、瓢箪状のものとなっている。このため、操作用回転ローラ61を押し、軸受部94a,94bの一端側空間に収納されているローラ61の回転軸の端部64a,64bを、軸受部94a,94bの中央部内側面に形成された向かい合うリブ部分を乗り越えさせることにより、ローラ61の回転軸の端部64a,64bは、軸受部94a,94bの他端側空間に収納された状態となる。図23に示す状態が、ローラ61が押圧された状態である。そして、この状態において、ローラ61は、付勢部材により押圧されるが、ローラ61の回転軸の端部64a,64bは、軸受部94a,94bの中央部内側面に形成された向かい合うリブ部分に当接するため、軸受部94a,94bの一端側空間に移動しない。このため、ローラ61は、回転可能な状態を維持するものとなっている。
【0060】
そして、この実施例では、図22および図25に示すように、操作部10は、カラー部材12を備えている。カラー部材12は、巻取シャフト部63を収納するとともに、巻取シャフト部63との間に環状空間を形成するカラー部14を有する。このカラー部14により、巻取シャフト部63に巻き取られた牽引ワイヤのゆるみが防止される。また、カラー部材12は、回転ローラの押圧時の移動の誘導および回転ローラのガタツキを抑制する機能も有する。カラー部材12のピン13が、第1ハウジング50aの突出部(軸受部)59および第2ハウジング50bの凹部(軸受部)158によって軸支されている。そして、軸受部94a、94bは、図21および図22に示すように、ピン13(軸受部59、158)を中心とする緩やかな円弧状に形成されており、かつ、ローラ61が、ロック用リブの高さ以上の距離を移動可能な長さを有するものとなっている。また、カラー部材12は、図25に示すように、側面よりカラー部14内の空間に到達する向かい合う2つの切欠部15を備えている。牽引ワイヤ6は、一方の切欠部15を貫通し、巻取シャフト部63に固定されている。
【0061】
そして、牽引ワイヤ巻取機構は、ローラ61と、このローラ61の回転により回転する巻取シャフト部63とにより構成されている。巻取シャフト部63は、牽引ワイヤ6の基端部を把持もしくは固定している。具体的には、図22に示すように、牽引ワイヤ6の基端部には、ワイヤ6より大きく形成されたアンカー部65を備えており、巻取シャフト部63には、牽引ワイヤ6の収納可能なスリット63aが設けられている。そして、アンカー部65がスリット63aの基端外方に位置するように、巻取シャフト部63のスリット63aに、牽引ワイヤ6の基端部が収納されている。これにより、巻取シャフト部63が回転することにより、ワイヤ6は、巻取シャフト部63外面に巻き取られる。なお、牽引ワイヤ6の巻取シャフト部63への把持もしくは固定は、上述のものに限定されるものではなく、どのような方式のものであってもよい。例えば、牽引ワイヤ6の基端もしくは基端部を直接、巻取シャフトに固定してもよい。
【0062】
また、牽引ワイヤ6の巻き取られる基端部は、巻取を容易なものとするために、柔軟なものとなっていることが好ましい。このような柔軟なものとする方法としては、牽引ワイヤ6の基端部を柔軟な材料により形成する方法、牽引ワイヤ6の基端部を細径とする方法などにより行うことができる。
そして、この実施例では、巻取シャフト部63は、回転ローラ61と同軸となるように一体化されている。さらに、図21、図23および図24に示すように、巻取シャフト部63は、回転ローラ61の一方の側面側に設けられている。そして、回転ローラ61を回転させることにより、巻取シャフト部63も同時に回転する。そして、回転ローラの回転操作量に比べて、牽引ワイヤの巻取量が少ないことが好ましい。このようにすることにより、ゆっくりとした巻取を行うことができ、ステント収納用筒状部材の基端側への移動もゆっくりかつ良好なものとなる。この実施例では、巻取シャフト部の外径は、回転操作用ローラより小径となっているため、回転ローラの回転操作量に比べて、牽引ワイヤの巻取量が少ないものとなっている。
【0063】
また、巻取シャフト部63の外径としては、1〜60mm程度が好適であり、特に、3〜30mmが好ましく、回転ローラの外径としては、巻取シャフト部の外径の1〜20倍程度が好適であり、特に、1〜10倍が好ましい。また、回転ローラの外径としては、10〜60mm程度が好適であり、特に、15〜50mmが好ましい。
なお、回転ローラと巻取シャフト部は、このような一体的なものに限定されるものではなく、回転ローラが回転することにより、追従して回転する別部材により構成したものであってもよい。回転ローラの回転の伝達方式としては、ギア形式のもの、ベルト形式などどのようなものであってもよい。また、ローラ61の操作する際に接触する可能性のある表面部位は、滑りにくい表面となっていることが好ましい。例えば、ローラ61の操作する際に接触する可能性のある表面部位には、ローレット処理、エンボス処理、高摩擦材料被覆などを行うことが好ましい。
【0064】
そして、この実施例の操作部10は、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構を備えている。
操作用回転ローラ61は、図21ないし図23に示すように、同軸にかつ一体的に回動するように設けられた歯車部62を備えている。さらに、図22、図24に示すように、歯車部62は、回転ローラ61の他方の側面側(言い換えれば、巻取シャフト部63が設けられた面と反対側の面)に設けられている。よって、歯車部62と巻取シャフト部63は、操作用ローラ部が構成する壁により仕切られた状態となっている。
また、操作用回転ローラ61は、部分的に開口部より露出しており、この部分が操作部となる。そして、回転ローラは、一方の側面(具体的には、歯車部の側面)に設けられた回転軸の他端64aおよび他方の側面(具体的には、巻取シャフトの側面)に設けられた回転軸の一端64bを備えている。
【0065】
さらに、ハウジング50内には、回転ローラ61をハウジングの開口部方向に付勢する付勢手段(付勢部材)80を備えている。具体的には、付勢手段80により、ローラ61は、付勢されている。さらに、ハウジング50には、付勢部材80により付勢された回転ローラ61の歯車部62の突起部間に侵入可能なロック用リブ(図示せず)が設けられている。このため、回転ローラ61は、付勢部材80により付勢された状態では、図22に示す状態となり、ロック用リブが歯車部62の突起部と係合するため、回転不能となっている。そして、回転ローラ61をロック用リブと離間する方向に押すと、回転ローラの回転軸の一端64bおよび他端64aは、ハウジング50に設けられた軸受部94aおよび94b内を移動し回転可能となる。よって、この実施例の操作部10は、回転ローラ61を押圧しない状態での回転を規制しており、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構を有するものとなっている。
【0066】
さらに、この実施例の操作部では、上記の付勢手段80と上述した歯車部62により、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構が構成されている。
操作用回転ローラ61は、図21ないし図24に示すように、同軸にかつ一体的に回動するように設けられた歯車部62を備えている。さらに、図24に示すように、歯車部62は、回転ローラ61の巻取シャフト部63が設けられた面と反対側の面に設けられている。よって、歯車部62と巻取シャフト部63は、操作用ローラ部が構成する壁により仕切られた状態となっている。
操作部10内には、図21ないし図23に示すように、逆回転規制機構を備えている。この操作部10では、付勢部材80に逆回転規制機構が設けられており、付勢部材80は、逆回転規制部材でもある。逆回転規制機構は、逆回転規制部材(付勢部材でもある)80の先端部の上記操作用回転ローラ61の歯車部62と向かい合う部分に設けられ、歯車部と噛合可能な噛合部88と、弾性変形可能部86と、ハウジングへの装着部87を備えている。また、第1ハウジング50aは、内面に形成された第1の突出部(軸受部)59および第2の突出部79を備えている。第1の突出部59は、逆回転規制部材(付勢部材)80の弾性変形可能部86内に侵入するとともに、弾性変形可能部86の内面形状に対応した外面形状を有するものとなっている。具体的には、弾性変形可能部86の内面形状は、円弧状となっており、第1の突出部59は、その円弧形状に対応した円筒状となっている。そして、逆回転規制部材(付勢部材)80の装着部87は、第1ハウジング50aに形成された第1の突出部59と第2の突出部79間に装着可能な形状となっている。そして、逆回転規制部材(付勢部材)80は、その装着部87が、第1ハウジング50aの第1の突出部59と第2の突出部79間に装着されることにより、回動不能に装着されるとともに、弾性変形可能部86の弾性力により、操作用回転ローラ61を開口部58方向に付勢するものとなっている。また、逆回転規制部材(付勢部材)80の装着部87は、カラー部材12に設けられた円盤状の突出部13aにより、側面方向への移動が規制されている。
【0067】
そして、上述したように、ローラ61を押圧することにより、ローラは回転可能となる。しかし、図23の矢印方向(牽引ワイヤを巻き取る方向)への回転は可能であるが、逆方向にローラ61を回転させようとすると、歯車部62の1つの歯部と逆回転規制部材(付勢部材)80の噛合部88とが係合し、その回転を阻止する。これにより、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向へのローラの回転を規制する。また、この操作部10では、図24に示すように、逆回転規制部材(付勢部材)80は、第1ハウジング50aの内面と回転ローラ61の側面間に配置されている。このため、逆回転規制部材(付勢部材)80の横方向(水平方向)への動きが、第1ハウジング50aの内面と回転ローラ61の側面により規制されるものとなっている。
【0068】
歯車部62は、回転ローラより小径のものとなっており、歯車部62の外径としては、10〜60mm程度が好適であり、特に、15〜50mmが好ましく、歯数としては、4〜200程度が好適であり、特に、4〜70が好ましい。
そして、操作部10が備えるカラー部材12は、一端部がピン13により軸支されているとともに、他端側のカラー部14は、巻取シャフト部63を収納するとともに、巻取シャフト部63との間に環状空間を形成する。この環状空間はあまり大きな空間ではなく、巻き取ったワイヤの外面間により狭小な環状空間を形成するものである。
【0069】
次に、本発明の生体器官拡張器具1の使用方法について図面を用いて説明する。
まず、図1および図2に示す生体器官拡張器具の先端部材の開口部25aに、多くの場合は既に体内に留置されているガイドワイヤの末端を挿入し、開口23よりガイドワイヤ(図示せず)を出す。次に、生体内に挿入されているガイディングカテーテル(図示せず)内に挿入し、ガイドワイヤに沿わせて生体器官拡張器具1を押し進め、目的とする狭窄部内にステント収納用筒状部材5のステント収納部位を位置させる。
次に、操作部10の操作用回転ローラ61を押圧した後、ローラ61を図23の矢印方向に回転させる。これにより、牽引ワイヤ6は、巻取シャフト63の外周面に巻き取られるとともに、ステント収納用筒状部材5およびスライドチューブ7は、軸方向基端側に移動する。この時、第1のステント3はその後端面が第1の基端方向移動抑制部31の先端面に当接し係止されるので、ステント収納用筒状部材5の移動に伴って、ステント収納用筒状部材5の先端開口より放出される。この放出により、第1のステント3は、図11に示すように、自己拡張し狭窄部を拡張するとともに狭窄部内に留置される。
そして、生体器官拡張器具1を造影性を有する第1の基端方向移動抑制部31および第2の基端方向移動抑制部41を指標として用いて操作し第1の基端方向移動抑制部31および第2の基端方向移動抑制部41間、すなわち第2のステント4を目的留置部位に配置する。そして、操作部10の操作用回転ローラ61を押圧した後、ローラを図23の矢印方向に回転させる。これにより、牽引ワイヤ6は、巻取シャフト63の外周面に巻き取られるとともに、ステント収納用筒状部材5およびスライドチューブ7は、軸方向基端側に移動する。この時、第2のステント4はその後端面が第2の基端方向移動抑制部41の先端面に当接し係止されるので、ステント収納用筒状部材5の移動に伴って、ステント収納用筒状部材5の先端開口より放出される。この放出により、第2のステント4は、図12に示すように、自己拡張し狭窄部を拡張するとともに狭窄部内に留置される。
【符号の説明】
【0070】
1 生体器官拡張器具
2 先端側チューブ
3 第1のステント
4 第2のステント
5 ステント収納用筒状部材
6 牽引部材
10 操作部
31 第1の基端方向移動抑制部
32 第1の先端方向移動抑制部
41 第2の基端方向移動抑制部
42 第2の先端方向移動抑制部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張可能な第1および第2のステントと、ガイドワイヤルーメンを有するチューブ状本体と、前記第1および第2のステントを先端部内に収納したステント収納用筒状部材とを備え、かつ前記第1および第2のステントが前記チューブ状本体の先端部を覆うように配置され、かつ前記ステント収納用筒状部材を前記チューブ状本体に対して基端側に移動させることにより、前記第1および第2のステントを露出可能である生体器官拡張器具であって、
前記第2のステントは、前記第1のステントより所定長基端側に配置されており、前記生体器官拡張器具は、前記第1のステントの後端に近接もしくは当接しかつ造影性を有する第1の基端方向移動抑制部と、前記第2のステントの後端に近接もしくは当接しかつ造影性を有する第2の基端方向移動抑制部とを備えていることを特徴とする生体器官拡張器具。
【請求項2】
前記チューブ状本体は、該チューブ状本体の先端側に位置し、前記第1のステントの先端に近接もしくは当接する第1のステント用の先端方向移動抑制部を備えている請求項1に記載の生体器官拡張器具。
【請求項3】
前記チューブ状本体は、該チューブ状本体の先端側に位置し、前記第2のステントの先端に近接もしくは当接する第2のステント用の先端方向移動抑制部を備えている請求項1または2に記載の生体器官拡張器具。
【請求項4】
前記チューブ状本体は、前記第1の基端方向移動抑制部より所定長基端方向に延びる補強部を備えている請求項1ないし3のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項5】
前記チューブ状本体は、前記第2の基端方向移動抑制部より所定長基端方向に延びる補強部を備えている請求項1ないし4のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項6】
前記チューブ状本体は、前記第1の基端方向移動抑制部から前記第2のステントの先端部付近もしくは先端部内に到達する補強部を備えている請求項3ないし5のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項7】
前記第1の基端方向移動抑制部および/または前記第2の基端方向移動抑制部の後端部は、基端方向に向かって縮径するテーパー部となっている請求項1ないし6のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項8】
前記ステント収納用筒状部材の先端部は、造影性を有するものとなっている請求項1ないし7のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項9】
前記ステント収納用筒状部材は、前記第1のステントを収納する部分と前記第2のステントを収納する部分間が柔軟部となっている請求項1ないし8のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項10】
前記第1のステントと前記第2のステントは、前記拡張時の外径が異なるものである請求項1ないし9のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項11】
前記チューブ状本体は、ガイドワイヤルーメンを有する先端側チューブと、基端側チューブと、前記先端側チューブの基端部および前記基端側チューブの先端部が固定されるとともに前記ガイドワイヤルーメンと連通する開口を備える固定チューブとを備えるものである請求項1ないし10のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項12】
前記生体器官拡張器具は、前記ステント収納用筒状部材に一端部が固定され、前記チューブ状本体内を延びるとともに該チューブ状本体の基端側に牽引することにより、前記ステント収納用筒状部材を基端側に移動させるための少なくとも一つの牽引ワイヤを備えている請求項1ないし11のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項13】
前記チューブ状本体には、前記牽引ワイヤを巻き取り、前記ステント収納用筒状部材を基端側に移動させるための牽引ワイヤ巻取機構を備える操作部を有する請求項12に記載の生体器官拡張器具。
【請求項14】
前記生体器官拡張器具は、前記基端側チューブ内を通り、前記固定チューブ内に侵入する線状剛性付与体を備えている請求項11ないし13のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項15】
前記操作部は、前記牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構を備えている請求項14に記載の生体器官拡張器具。
【請求項16】
前記操作部は、前記牽引ワイヤ巻取機能の前記牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構を備えている請求項14または15に記載の生体器官拡張器具。
【請求項17】
前記牽引ワイヤ巻取機構は、操作用回転ローラと、該操作用回転ローラと同軸的かつ一体的に設けられるとともに、該操作用回転ローラより小径の巻取シャフト部を備え、該巻取シャフト部に前記牽引ワイヤの基端部が固定されている請求項14ないし16のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項1】
略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張可能な第1および第2のステントと、ガイドワイヤルーメンを有するチューブ状本体と、前記第1および第2のステントを先端部内に収納したステント収納用筒状部材とを備え、かつ前記第1および第2のステントが前記チューブ状本体の先端部を覆うように配置され、かつ前記ステント収納用筒状部材を前記チューブ状本体に対して基端側に移動させることにより、前記第1および第2のステントを露出可能である生体器官拡張器具であって、
前記第2のステントは、前記第1のステントより所定長基端側に配置されており、前記生体器官拡張器具は、前記第1のステントの後端に近接もしくは当接しかつ造影性を有する第1の基端方向移動抑制部と、前記第2のステントの後端に近接もしくは当接しかつ造影性を有する第2の基端方向移動抑制部とを備えていることを特徴とする生体器官拡張器具。
【請求項2】
前記チューブ状本体は、該チューブ状本体の先端側に位置し、前記第1のステントの先端に近接もしくは当接する第1のステント用の先端方向移動抑制部を備えている請求項1に記載の生体器官拡張器具。
【請求項3】
前記チューブ状本体は、該チューブ状本体の先端側に位置し、前記第2のステントの先端に近接もしくは当接する第2のステント用の先端方向移動抑制部を備えている請求項1または2に記載の生体器官拡張器具。
【請求項4】
前記チューブ状本体は、前記第1の基端方向移動抑制部より所定長基端方向に延びる補強部を備えている請求項1ないし3のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項5】
前記チューブ状本体は、前記第2の基端方向移動抑制部より所定長基端方向に延びる補強部を備えている請求項1ないし4のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項6】
前記チューブ状本体は、前記第1の基端方向移動抑制部から前記第2のステントの先端部付近もしくは先端部内に到達する補強部を備えている請求項3ないし5のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項7】
前記第1の基端方向移動抑制部および/または前記第2の基端方向移動抑制部の後端部は、基端方向に向かって縮径するテーパー部となっている請求項1ないし6のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項8】
前記ステント収納用筒状部材の先端部は、造影性を有するものとなっている請求項1ないし7のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項9】
前記ステント収納用筒状部材は、前記第1のステントを収納する部分と前記第2のステントを収納する部分間が柔軟部となっている請求項1ないし8のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項10】
前記第1のステントと前記第2のステントは、前記拡張時の外径が異なるものである請求項1ないし9のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項11】
前記チューブ状本体は、ガイドワイヤルーメンを有する先端側チューブと、基端側チューブと、前記先端側チューブの基端部および前記基端側チューブの先端部が固定されるとともに前記ガイドワイヤルーメンと連通する開口を備える固定チューブとを備えるものである請求項1ないし10のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項12】
前記生体器官拡張器具は、前記ステント収納用筒状部材に一端部が固定され、前記チューブ状本体内を延びるとともに該チューブ状本体の基端側に牽引することにより、前記ステント収納用筒状部材を基端側に移動させるための少なくとも一つの牽引ワイヤを備えている請求項1ないし11のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項13】
前記チューブ状本体には、前記牽引ワイヤを巻き取り、前記ステント収納用筒状部材を基端側に移動させるための牽引ワイヤ巻取機構を備える操作部を有する請求項12に記載の生体器官拡張器具。
【請求項14】
前記生体器官拡張器具は、前記基端側チューブ内を通り、前記固定チューブ内に侵入する線状剛性付与体を備えている請求項11ないし13のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項15】
前記操作部は、前記牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構を備えている請求項14に記載の生体器官拡張器具。
【請求項16】
前記操作部は、前記牽引ワイヤ巻取機能の前記牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構を備えている請求項14または15に記載の生体器官拡張器具。
【請求項17】
前記牽引ワイヤ巻取機構は、操作用回転ローラと、該操作用回転ローラと同軸的かつ一体的に設けられるとともに、該操作用回転ローラより小径の巻取シャフト部を備え、該巻取シャフト部に前記牽引ワイヤの基端部が固定されている請求項14ないし16のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
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【図9】
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【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2011−15811(P2011−15811A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162251(P2009−162251)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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